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【「隠蔽人類」映画版(想像)のポスターをROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

NHKスペシャル「人類誕生」第1集が放映されたのが2018年4月8日のこと。
ヒトはどのように進化していったのかを探る全3回のシリーズである。
録画しておいた番組を鑑賞し、CGとは思えないほどのリアルな映像に驚く。
「人類誕生」第2集の放映も楽しみだね!

「人類誕生」を鑑賞して、しばらく経ったある日、ROCKHURRAHが興奮気味に叫んだのである。
「鳥飼先生の新作が出るよ!」
電子書籍「ジャーロ」に連載されている時は我慢して、1冊にまとまるのを待っていた小説の刊行である。
待ちかねていた、その時がやってきたのだ!
タイトルは「隠蔽人類」。
前述のNHKスペシャルとのシンクロを感じてしまうよね。
NHKスペシャルは恐らく多くの人が目にする番組だと思うし、日頃から人類について考えたり、思いを馳せる人ばかりではないはず。
大勢の人が日頃ほとんど耳にすることがないであろう「ホモ・サピエンス」という単語を意識した後、鳥飼先生の「隠蔽人類」が発売されるなんて、まるでNHKスペシャルとのコラボみたいじゃない!(笑)
鳥飼先生に追い風が吹いているように感じて嬉しくなる。
嬉しいサプライズにより新作を入手したことは、先週の冒頭でも書いていたね。
本当にありがとうございました!(笑)

鳥飼先生の新作「隠蔽人類」はどんなお話なんだろう?
光文社の紹介ページに載っていたあらすじを引用させて頂こう。

形質人類学者の日谷隆一率いる日本人学者の調査団は、アマゾン奥地の未接触民族キズキ族の村で世紀の大発見をした。
DNA分析から、彼らがホモ・サピエンスではない別種の人類、隠蔽種の可能性が見つかったのだ。
しかし沸き立つのもつかの間、調査団メンバーの一人が首を切断され、発見された。
調査団以外の全員にアリバイが。
犯人は──!? 
さらに、隠蔽人類と殺人の「秘密」は日本へ。
殺戮の連鎖が巻き起こり、探偵役が次々に死んでいく。
ことごとく読者の予想を裏切り、皮肉と逆説をはらんで疾走していく事件の展開。
誰にも結末を読ませない、圧倒的に面白い驚愕ミステリー!

アマゾン奥地で大発見、なんてワクワクするよ。(笑)
ROCKHURRAHは、タイトルと冒頭のシチュエーションから香山滋の「オラン・ペンデクの復讐」や昔の探偵小説でいう「魔境冒険物」を連想したらしい。 
SNAKEPIPEが思い出したのは、 鳥飼先生の「桃源郷の惨劇」。
外国を舞台にしていて、新種の鳥「ミカヅキキジ」を追うミステリーだったからね!
それにしても「隠蔽種」ってなんだろうね?

隠蔽種とは本来は別種であるが、外見上の区別がつかず、同一種として扱われていた種。
遺伝子の塩基配列などを調べる分子系統学的な手法で、別種の存在が明らかになることが多い。

似ていたから気付かなかったけど、よく調べてみたら別物だったということだね。 
簡単に説明し過ぎ?(笑)
本当はDNAやRNAやヌクレオチドとか遺伝子が、などと書くべきなんだろうけどね。
詳しく知りたい方は専門家の文章を参照してちょ。
「隠蔽人類」とは、人のように見えるけど、実は「ホモ・サピエンス」ではなかった人類ということなんだね。

「隠蔽人類」は5章からなる連作短編。
章ごとに感想をまとめていこうと思うんだけど、果たしてうまく書けるかどうか。(笑)
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

隠蔽人類の発見と殺人
綾鹿科学大学の形質人類学者である日谷隆一教授他、4人の日本人がアマゾンに行くところから話が始まる。
ということは「隠蔽人類」は「綾鹿市シリーズ」ってことで良いんだろうね?
「綾鹿市」という架空の地域で起こるミステリーは「綾鹿市シリーズ」と呼ばれ、鳥飼先生の代表的なシリーズとして有名なのである。
鳥飼先生のWikipediaがまだ更新されていないようなので確認できなかったけれど、新作は「綾鹿市シリーズ」だね!
綾鹿市は架空の都市だけど、地図が欲しくなるほどだよ。(笑)
何故、綾鹿科学大学の学者がアマゾンに行くことになったのか?
それはアメリカ人冒険家クリス・グロールの手記により、未接触部族の存在が明らかになったためである。
クリス・グロールにより、その部族はキズキ族と名付けられていた。
クリス・グロールが濁流に飲まれ不慮の死をとげたことにより、キズキ族についての詳細は不明なまま。
世界各国の人類学者がこぞってアマゾンに向かい、調査を開始するも発見には至っていなかったのである。

クリス・グロールというのはニルヴァーナだね、ROCKHURRAHが言う。 
アメリカのバンド、ニルヴァーナのメンバーだったクリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールの名前を組み合わせるとクリス・グロールになっちゃうよ! (笑)
よく分かったね、と感心するSNAKEPIPEに「初心者レベル」との返答!
鳥飼先生の小説には、名前の由来を解く楽しみも隠されていて、「痙攣的」や「爆発的」では夜な夜な謎解きに明け暮れたっけ。
「隠蔽人類」の登場人物も試行錯誤して考え続けていたけれど、日本の城や半島の名前が多い、ということしか見いだせなかった。
全員が城の名前じゃなかったので、恐らく不正解だろうな。(笑)

世界中の調査団はキズキ族を発見することができなかったのに、日谷チームは見事に発見し接触に成功する。
これだけでも充分な成果だけれど、日谷チームはキズキ族のDNAサンプルの入手にも成功し、驚くべき結果を目にするのである。
あらすじにもあるように、そこで事件が起こってしまうんだよね。

キズキ族は白人のような容姿で、アスリートのような引き締まった体型をしているという。
菜食主義で性格は温厚、富を蓄えるという概念がないなんて、それだけでもう人間じゃないかも。(笑)
部族の全員がお釈迦様みたいだよね。
キズキ族の一員になりたいかと聞かれたら迷ってしまうかもしれない。
ええ、SNAKEPIPEは欲にまみれて生きてますから。(笑)

綾鹿科学大学の准教授である尾崎が殺されてからの展開には驚いた!
まさかそんな秘密が隠されているとは。 

隠蔽人類の衝撃と失踪

日谷教授は、キズキ族の女性・ミラを伴って帰国した。
未接触部族というだけでも衝撃的なのに、ミラは美しくモデル並のスタイルの持ち主。
衣服を身に着ける習慣がないため真っ裸だというのもセンセーショナルだよね。
学術目的以上に、男性陣がこぞって見物にやってくるのも仕方ないかもしれないね?(笑)

そんなミラをイメージしてROCKHURRAHが作成してくれたのが一番上の画像。
「隠蔽人類」が映画になったら、という想定なので真っ裸にはしなかったという。
ジャングルと塩基配列をバックにした半裸体美女とはニクい演出だね。(笑)
いつも作成してくれてありがとう! 

第2章は密室に関するトリックが使われる。
完璧に思われたセキュリティを突破することができたのは何故か、という点がポイントかな。
第1章でも予想外の展開に付いて行かれるか不安になりながら読み進めてきたけれど、第2章でまたもや先が全く分からない展開になっていく。
SNAKEPIPEの頭で理解できるだろうか?(笑)

隠蔽人類の絶滅と混乱

混乱してしまったSNAKEPIPEは第3章を読んで安心する。 
第2章の顛末が説明されていたからだ。
内容を理解しないと読み進めることができないという、当たり前のことを改めて認識したよ。(笑)
これですっきりした気分で第4章に進むことができるね!

第3章にはロバート・ハンダという外国人留学生が登場する。
日本語が堪能な日系アメリカ人で、形質人類学を専攻している。 
日谷教授を紹介する時にも何気なく形質人類学と書いてしまったけれど、やっぱり調べてみようね。

人類やチンパンジーやゴリラなどヒト科の共通祖先からどのように原生人類が進化してきたのかを解明する学問である。
主に発掘された霊長類や人類の化石を対象に、その形態を分析する。
骨や歯の形態からその古人類の運動様式・食性・性・生活環境・社会構造などを明らかにする。

まさにNHKスペシャルの「人類誕生」なんだね。
どうしてロバート・ハンダが日本の大学に籍をおいているのかは不明だけど、第3章では大活躍する。
片言の日本語かと思いきや、かなり長いセリフを喋ってるんだよね。
ロバートのパートはカタカナ表記されているので、いつの間にか変なアクセントを付けて読み進めていることに気付く。
ケント・デリカットが喋ってるみたいな、ね。(笑)

いやはや、こんなにハチャメチャになってしまうなんて!
「芸のためなら女房も泣かす」(浪花恋しぐれ!古い!)
じゃないけど、善悪は後回しになっちゃうものなのかなあ?
成果を求めるあまり、行き過ぎた行動に出るジャーナリストを描いた映画「ナイトクローラー」を思い出したSNAKEPIPE。
「ナイトクローラー」のジャーナリストには共感する部分もあったから、そう考えると「隠蔽人類」での行動も納得できるかもしれない。
そうだよね、自分なりの目的あったら普通じゃないこともやっちゃうかもね。(笑)

隠蔽人類の発掘と真実

舞台は再びアマゾンへ。 
スペイン語が堪能で、生物に詳しい宮路司という翻訳家が登場する。
元・形質人類学教授だった父親と共に、キズキ族の村を探すためである。
恐ろしい鳴き声の正体をホエザルだと見抜いたり、飛んでいる鳥の名前を言ったりするシーンはまるで「観察者シリーズ」のトビさんが出てきたようで嬉しくなるね。
「観察者シリーズ」は2015年の「生け贄」が最後の刊行なので、3年前になるんだね。
またトビさんやネコに会える日が来ると良いな!(笑)

手がかりを得て帰国した宮路親子は驚愕の事実を知ることになる。
いや、驚いたのは宮路親子ばかりではない。
読んでいるSNAKEPIPEも顎が外れるほどだった。(大げさ)

ここまで「どんでん返し」が繰り広げられる鳥飼先生の作品は初めてだよ!

隠蔽人類の絶望と希望

最終章では綾鹿市を離れて、世界規模にまで広がりを見せる壮大なストーリーになっていた。
この章で、今までの疑問が解決することになる。 
まさかそんな事実が隠蔽されていたなんて!
「隠蔽人類」は章ごとの殺人事件と共に「DNA」に関するミステリーを合わせ持った小説だったんだね。
 生物学meetsミステリー、最後はSFになった感じかな?

実際に「ホモ・サピエンス」ではない、別種の人類が隣にいたらどうなるんだろう。
想像しようとしてもできないのは、全く経験がないからだろうね。
世界中の人が温和なキズキ族のようだったら、何の問題もなく全ての人類を受け入れるだろうけど。(笑)
隔離したり殲滅させようとする意見が出るのも納得できる。
前から虫が好かなかったとしたら尚更だろうね。

次々と探偵役がいなくなってしまう(光文社のあらすじより)「隠蔽人類」は、鳥飼先生の作品では初の試みかも?
アマゾンから始まり綾鹿市に移って、最終章ではインターナショナルな舞台に発展するなんて思いもよらなかったよ。

ROCKHURRAHが連想していた「オラン・ペンデク」や「魔境冒険物」とは全く違う作品だったね。
読み進める程に混乱し、死体はどんどん増えていく!
分かったと安心するのも束の間、新たな疑問にぶつかる、どんでん返しの連続だったね。
展開は急だったけれど、決して奇想天外ではない。
本当にこんな状況が訪れたら、と想像してROCKHURRAHとの議論が白熱したのは言うまでもない。(おおげさ)
驚愕しながら一気に読み進めた鳥飼先生の新作、楽しかった! (笑)


【「紅城奇譚」のイメージ画像をROCKHURRAHが作成。よくできてるなあ】

SNAKEPIPE WROTE:

よく夢を見て、それを記憶しているSNAKEPIPE。
先日の夢は疑似体験ができるゲームに参加している、というもの。
体験しているのは恐竜ティラノサウルス(実物大と思われる)から逃げる、というバーチャル・ゲームだった。
背後に気配を感じたので、目を合わせないように壁にへばりつき、じっと耐える。
荒い鼻息が聞こえてくる。
震えを抑えながらティラノサウルスが行き過ぎるのを待つ。
この時間の長いこと!
ゲームだと分かっていても、本当に怖かったよ。(笑)
なんでこんな夢を見たのか?と考えて、思い当たった。
大ファンの作家、鳥飼先生の新作をまとめさせて頂くことを考えていたため、前回の感想文を読み返したのが原因ではないかと思われる。
鳥飼否宇先生の作品を紹介していくシリーズである「トリカイズム宣言」で前回書いたのが「T-REX失踪」だったからではないだろうか。
夢は不思議なことが多いけど、チラッと思考を横切っただけの事柄がSNAKEPIPEの脳内で、おかしな物語を制作してしまったみたいだね。(笑)

前フリが長くなってしまった!
そう、鳥飼先生の新作なんだよ!(笑)
タイトルは「紅城奇譚」。
「紅城」と聞くとROCKHURRAHが大好きな国枝史郎の「神州纐纈城」 を連想してしまう。
纐纈城に出てくる纐纈布が真紅だからね。
もしくは「クリムゾン・キングの宮殿」からの連想かな?
「奇譚」と聞けば「パノラマ島」と、つい答えてしまうね。(笑)
こんな条件反射をしてしまうのはROCKHURRAH RECORDSだけかな?
鳥飼先生の新作「紅城奇譚」は、タイトルだけでも「おどろおどろしい」「凶々しい」イメージを感じてしまうね。
新作の紹介ページからあらすじを引用させて頂こう。

織田信長が天下統一をもくろみ、各地の戦国大名を次々と征伐していた16世紀中頃。
九州は大友、龍造寺、島津の三氏鼎立状態となっていた。
そんななか、三氏も手を出せない国ー勇猛果敢で「鬼」と恐れられた鷹生氏一族の支配地域があった。
その居城、血のように燃える色をした紅城で、次々と起こる摩訶不思議な事件。
消えた正室の首、忽然と現れた毒盃、殺戮を繰り返す悪魔の矢、そして天守の密室……。
眉目秀麗な、鷹生氏の腹心・弓削月之丞が真相解明に挑む!

なんと!鳥飼先生が今回舞台設定されたのは戦国時代とは!
戦国時代のミステリーなんて読んだことないよ。
SNAKEPIPEは時代小説ですら、吉川英治の「宮本武蔵」と「新書太閤記」、「三国志」や「水滸伝」くらいしか読んだことないんだよね。
ROCKHURRAHからの勧めで読んだ、前述の「神州纐纈城」は伝奇小説になるらしい。
どちらにしても古い時代を舞台にした小説だけど、ミステリーものは初めてだよ。
これは期待しちゃうね!(笑)

発売日当日、ROCKHURRAHが鳥飼先生の新作を入手してくれていた!
本屋に面出しされていた最後の1冊だったという。
手に入って良かった!(笑)
感想を担当するのはSNAKEPIPEなので、最初に読んで欲しいと言われる。
あらま、済みませんね、いつも。(笑)
読み進めようとするけれど、「序」でつまずく。

戦国時代の力関係は、相関図などで武将の名前、地理や地位などの位置を把握しないと、なかなか理解できないんだよね。
何度か読み返して、ある程度理解する。
最近好きで観ている番組がNHK BSプレミアムの「英雄たちの選択」 。
学校の歴史の授業では習っていない、今まで知らなかった歴史上の出来事を知り、驚いたり感心している。
その番組でも戦国時代の武将やら「○○の戦い」を深く掘り下げて考察するのを観たことがある。
そのおかげで、以前よりは多少歴史に対しての興味や想像力は持っているはずなんだけどね。(笑)
SNAKEPIPEみたいな「つまずく」人には、「紅城奇譚」の家系図あったら良いなあ。
そう話すと、ROCKHURRAHが作成してくれた。
さすが、ROCKHURRAH!やるなあ!(笑)
クリックで大きくなるので、見てみてね。

鳥飼先生の小説といえば、登場人物の名前に、何かしらの符号があることが多いよね?
今回はどうだろう。
龍政の側室である「雪」「月」「花」は、会田誠の「犬」シリーズに登場する美少女達の名前と同じかも!(笑)
かなり物議を醸した会田誠の作品だけど、この記事に画像を載せている。
鳥飼先生からのコメントも頂戴しているね。(笑)
他には何かないだろうか?
ROCKHURRAHが「利賀野」と「弓削」は「リガーノ」と「ユーゲン」と読めそうで、怪しいと言う。
そう聞けば「椎葉」も「シーヴァ」とか?
あっ、ヒンズー教のシヴァはどうだ!
などと勝手に想像しまくる始末。(笑)
急にヒンズー教が入ってくるわけないよねえ。
「鶴」「鳰」「鷹」「龍」「熊」「牛」と並べると生きものの名前だね。(「龍」は伝説上での生きものだけど)
何も符号や「もじり」が見いだせない!
こうして悶々としながら考えるのも、鳥飼先生の小説の楽しみ方なんだよね。(笑)

「紅城奇譚」はSNAKEPIPEがつまずいた「序」から始まり、4編から成る「破」、そして最後に「急」という章で構成されている。
「破」の章にある4編について、それぞれの感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

破の壱 妻妾の策略
紅城主である鷹生龍政の正室、鶴と三人の側室の間での確執が題材になっている。
鶴の首なし死体が発見された直後に、龍政の子を宿す側室である雪が櫓から落下して命を落としているところを発見されるのである。
正室、側室という呼び方では分かり辛いので、本妻と妾に置き換えたほうが良いかもね?
「大奥」と呼ばれる女だらけの場所が江戸城にあったことは、歴史に詳しくない人でも知っているよね。
戦国時代にも側室がいて、家系を絶やさないようにしていたんだね。
ハーレム状態で跡取りを作ることが目的と聞くと、まるで女性は子供を作るためのマシーンみたいだけど、当時の女性にとっては「選ばれし者」という感じでエリート意識があったのかもしれないね?

「紅城奇譚」の城主である龍政にも3人の妾がいて、そのうちの1人、雪が妊娠しているのである。
すでに龍政には、本妻・鶴との間に熊千代という息子がいるけれど、雪から生まれる子供に期待をよせている。
何故ならば熊千代は武芸よりも虫や花に興味を示す、優しい心の持ち主だったため、世継にしては頼りないと考えたからである。
ここでSNAKEPIPEは思い出す。
BSプレミアム「英雄たちの選択」で観た春日局の回のことを。
徳川家光の幼名は竹千代、幼い頃は病弱で内気だったため、世継候補からは外れていたという話を思い出したのである。
この設定はそのまま「紅城奇譚」の熊千代にもあてはまりそうじゃない?(笑)

本妻と妾1人がほとんど同時に死亡する不思議な事件は、「紅城奇譚」での探偵役となる龍政の家臣・弓削月之丞と龍政の妾である花を助手として解明されるのである。
弓削月之丞は椎葉氏の兵だったけれど、その美貌に惹かれた龍政が側近にすることを決めたという。
容姿端麗なだけではなく、月之丞は武芸にも秀で知恵者でもあったため、龍政から信頼されるようになった人物である。

この事件、タイトルは書けないけど、横溝正史の小説を思い出したよ! (笑)

破の弐 暴君の毒死
龍政には弟・龍貞がいる。
冷酷無比と恐れられている龍政が呆れてしまうほどの残忍さと、女と見ればすぐに手を出す獣のような男。
戦で負傷したせいで右半分は醜い傷跡があり、右目は潰れているというから、女は悲鳴を上げるに違いない。
そんな龍貞が宴会の席で酒を飲んだ途端、急死してしまうのである。

その宴で龍貞は、龍政の家臣である牛山武兵衛の妹にちょっかいを出し、龍政の娘・鳰(にお)を舌なめずりしながら見つめる。
鳰はまだ幼女だよ!
龍貞の好色ぶりには、読んでいるSNAKEPIPEまで腹が立ってしまった。
誰もが「こんなヤツいなくなれば良いのに」と思ってしまう龍貞の毒殺!
一体誰が起こした犯行だったのか?

いつの間にか探偵役になってしまった月之丞と、これまた側室でありながら助手の役割を果たしている花はここでも事件を解決する。
のだけれど…。
仰天の展開に「えっ、ちょっちょっと待って」 と誰に言うでもなく声を上げ、付いていかれないSNAKEPIPE。
もう少し整理しないと。
再び数ページ戻り、もう一度読み返す。
読みながら自分の体の「ある部分」をしっかり押さえていることに気付く。
うっ、痛い、、、。
戦国時代だからねえ。
どうなんだろう、「あり」だったのかなあ?

この話でギリシャ映画「籠の中の乙女」を思い出したSNAKEPIPE。
ある一部、似たところがあるんだよね。
あの映画、とても不思議だったなあ。
結局分からず仕舞だったっけ。(笑)

破の参 一族の非業
毎年紅城では「弓比べ」という行事があるという。
その「弓比べ」で自分の息子・熊千代が紅城の跡取りに相応しいことを見せつけたいと考える龍政。
ところが、そんな父親の期待に応えられそうにない熊千代。
熊千代は体育会系ではなく、勉学を得意とする文化系の子供だったからね。
それでも紅城主であり封建的な父親には逆らえないので、やるっきゃない!(笑)
ライバルとして龍政の家臣・利賀野玄水の息子・彦太夫があてがわれる。
熊千代と同い年の彦太夫は弓の腕前に優れていて、昨年は堂々と優勝しているほどである。
彦太夫に負けるな、という龍政の叱咤にも関わらず、散々な結果しか残せない熊千代。
龍政は自分の父親・龍久に弓術を伝授してもらうよう熊千代に命じる。
今ではすっかり隠居してしまった龍久だけれど、鷹生家を一代で築き上げたのはこの龍久。
武芸に秀でた息子の龍政ですら、弓術に関してだけは龍久には及ばなかったという。
その弓の達人に教えを乞うため、熊千代が龍久の元を訪れるのである。

熊千代の境遇には同情してしまうSNAKEPIPE。
それでもこの時代は、世継として生まれたなら学業よりも武芸だったんだろうね。
まあ、今でも世襲制を採っている職業や家筋はあるだろうけど。
そして「ふふん」とばかりに弓の腕前を披露するライバル・彦太夫が、少し憎らしく感じてしまったのも事実。
SNAKEPIPEが文化系だから余計かもしれないね。(笑)

この章では、龍久と熊千代が弓で射られて死亡する事件が発生してしまう。
「破の壱」に続いてのダブル殺人事件!
おお、これはタイトル通り一族の非業だよ。
だってもう鷹生家は…。

「破の参」の中で印象的だったのは、銀杏の葉が風に舞い、幻想的な光景を見せるシーン。
SNAKEPIPEは京極夏彦の「絡新婦の理」にある桜吹雪の場面を思い出したよ。
どちらも映像化されたら美しいだろうなあ!
ROCKHURRAHが「紅城奇譚」のイメージ画像を作成してくれるというので、銀杏の葉をリクエストした。
トップにあるのがその画像なんだけど、とてもキレイに仕上がっているよね!

破の肆 天守の密室
猛将と恐れられていた龍政が、その姿を想像できない程げっそりやつれている。
これまでの事件に加えて、龍政自身も寝込みを襲われたのである。
命の危険を感じた龍政は天守閣に立てこもる。
籠城戦に適していると言われる紅城の中で、最も安全な場所だからである。
ところが事件は起きてしまうのである。
密室殺人事件なんだよね!

なんともスケールが大きく、驚愕してしまった。
SNAKEPIPEの脳内には、完全に映像が映し出されている。
思いもよらない展開にはびっくり仰天!
まさか、そんな!ねえ?(笑)

それにしても一番驚いたのは、命の危険にさらされてげっそりしているのにも関わらず、妾の花に挑むいつもと変わらない龍政の精力旺盛なところ!
「甘い物は別腹」のような感覚だろうか。
そっちに気が回るなら、もっと別のこと考えれば良いのに。(笑)

この新作は、今まで読んでいた鳥飼先生のどの作品とも違っていた。
動植物に関する記述もなく、音楽的な要素もなく、プッと吹いてしまう笑いの要素もない。
鳥飼先生らしさが表れていたとすると、花のセリフかな。
ネコ(観察者シリーズ)にも宮藤希美(妄想女刑事)にも通じるタイプなんだよね。(笑)
側室だけあって、したたかさを秘めていながらも、少しボケが入るキャラクター。
あまりお色気ムンムンな雰囲気は感じなかったけれど、龍政からの寵愛を受けているんだよね。
花が妊娠することはなかったのかなあ?
そうしたら世継ができたかもしれないのにね。(笑)

鳥飼先生の新たな一面を見せてもらったように思う。
この小説、映像化して欲しい。
実写では難しいシーンがあると思うので、アニメでいかがでしょう!
もちろんリアルな絵柄で、大人っぽいアニメでね。

将来的に、また別の鳥飼先生の新しい引き出しが見られるんじゃないか、という期待と共に、今まで読み進めてきたいつも通りの「鳥飼節」も楽しみに待っていよう!
鳥飼先生、いつも応援しています!

 

 

 

【今回のブログ用にROCKHURRAHがプロモビデオを作成(意味不明)】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンであるミステリー作家、鳥飼否宇先生の作品を再読し、感想をまとめていく「トリカイズム宣言」!
前回は鳥飼先生の綾鹿市シリーズより「逆説的」を書かせて頂いた。

「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。

と最後に書いていたけれど、今回は鳥飼先生の「ノンシリーズ」から2作品について書いていきたいと思う。
「ノンシリーズ」とはシリーズの名前ではなく、シリーズ化されていない=単独作品という意味なんだよね。
「ノンシリーズ」では例えば「昆虫探偵」や「異界」など、鳥飼先生の世界観を満喫できる素敵な作品があって、以前感想をまとめさせて頂いている。
鳥飼先生の「ノンシリーズ」も大好きで、どの作品も続編を待ち望んでいるSNAKEPIPEなんだよね。
はっ、続編ができたとしたらもう「ノンシリーズ」とは言えなくなるのかっ! (笑)

では「 激走 福岡国際マラソン」から始めようか。
2005年に発売された時には副題として「42.195キロの謎」が入っていたけれど、文庫化された2010年には現在のタイトル「激走」になっているようだね。

2007年師走、福岡国際マラソン。
トップランナーの思惑、ペースメーカーの野望は交錯していた…。
マラソンを舞台に駆け巡るノンストップ・ミステリー。

販売しているページから簡単なあらすじを引用させてもらったよ。
福岡国際マラソンの間に事件が起こるなんて、前代未聞のミステリー小説だよね。
テレビ中継もされているし、沿道には人が大勢いる場所で?
そんなあり得ないような状況を舞台にしたのが「 激走」なんだよね!

ちなみに左の画像が「福岡国際マラソン」のコース。
昔ROCKHURRAHが住んでいたという姪浜や、SNAKEPIPEも多少は知っている地名が並んでいるね。
きっと鳥飼先生にも馴染みのある場所がたくさんあることでしょう!

SNAKEPIPEは学生の頃から運動が苦手で、できれば体育の授業は見学していたいタイプだった。
子供の頃から読書や絵を描くのを好む、いわゆるインドア派!
そんなSNAKEPIPEが唯一(?)運動で賞を獲ったことがあるのが、マラソンだった。
SNAKEPIPEが通っていた小学校では、毎年冬にマラソン大会が行われていた。
完走するのが目的の、心身を鍛えるのが目的の恒例行事だ。
何故だか覚えていないけれど、その年のSNAKEPIPEはアイデアがあった。
スタートの合図でダッシュし、先頭のチームに入り、そのままゴールまで走る作戦である。
走り続けるのは誰にとっても苦しいもの。
途中からスパートをかけて先頭集団に追いつくのは難しいけれど、最初から先頭にいれば多少の遅れは取り戻せると考えたのである。
結果は10位以内に入る自己ベスト!(笑)
家の中にいるのが好きな子にしては、上出来だよね。

子供だったSNAKEPIPEが考えついた作戦だけれど、実際に同じように考えるランナーもいるようだ。
「激走 」はマラソンを題材にしたミステリー小説だけれど、SNAKEPIPEが感じた一番の醍醐味はランナー達の思惑だった。
自分の体調とペース配分のバランスを取りながら競争相手との駆け引きを考える。
それぞれのランナーが考えていることが文章化されているのが、非常に興味深かった。

テレビのアナウンサーがランナー達の状況を伝える。
実際にレースを観戦しているような気分でページをめくっていく。
思惑を覗かせてくれるのは市川尚久、ペースメーカーとしてレースに参加している。
「激走 」を読むまでペースメーカーの存在を知らなかったSNAKEPIPE。
「高水準かつ均等なペースでレースや特定の選手を引っ張る役目の走者のこと」とWikipediaに書いてあるように、先頭を走る目的で採用されているんだよね。
もちろんそれなりの実績がないと採用されないし、そのまま走って優勝しても良いらしい。
ペースメーカーの市川は「ある思い」を持って走っている。

2人目は小笠原寛明、日本期待の優勝を狙うランナーである。
この小笠原は学生時代にアイアンマスクと影で呼ばれていたほどの冷酷無比な人物だ。
自分のことしか考えない利己主義な性格のため、どんな手段を使っても他人を蹴落とし自分の利益を優先させる。
この小笠原の思惑も描かれていて、こうした人物の物の考え方を知るのは興味深かった。
これくらい強気じゃないと世界に立ち向かえないだろうな、と思ったよ。

ここまで利己主義を全面に打ち出す日本人は少ないし、かなり極端な例だから全面的に賛成するとまでは言わないけれど、実はSNAKEPIPEは小笠原の気持ちが分かるんだよね。
例えば駅伝だったら、メンバー全員の総力で100にしようと考える日本人が多いんじゃないかな?
小笠原の考えでは各メンバーがそれぞれ100を出し合って、総計で600にしようとする「個人の力」重視なんだよね。
チームプレーの考え方自体が違うので、小笠原が浮いてしまうのは理解できる。
そしてSNAKEPIPEもROCKHURRAHもこのタイプなので、幼少期から単独行動派!
個人作業を好む傾向にあるので、「みんなで頑張ろう」のようないわゆる日本人的な集団とはソリが合わないことが多いかも。(笑)
何年か前にサッカー選手の本田圭佑が似たコメントを話していたように記憶しているけれど、本田圭佑の意見に同意できない人が多数いたもんね。
小笠原や本田に共感できる人は、なるべく個人で行動したほうがベターだろうね。
小笠原は駅伝をやめて正解だったみたいね。(笑)

日本人選手の中では他に優勝候補として、ナルキッソス化粧品の二階堂公治がいる。
まるでアイドルのようなルックスで、女性ファンが多いらしい。
ちやほやされる様子は、他の選手には苦々しくうつっている。
福岡出身、地元の谷口鉄夫にも声援が多い。
全国的には二階堂ファンが圧倒的に多いだろうけれど、さすがに地元では谷口が優位に立っている。
「谷口、男ば見せちゃらんね」
さすがに博多らしい応援だよね。(笑)

市川尚久の後輩である在日韓国人の洪康彦も良い位置で走っている。
国籍の問題で、日本でも韓国でも差別やいじめを経験してきたらしい。
どこの国の人間か、なんて問題じゃない。
「俺は俺なんだ」というアイデンティティも欲しかっただろうし、市川尚久への憧れもあり、洪は厳しい練習に耐え実力を付けて福岡国際マラソンに臨んでいるのである。

一般参加の選手もいる。
ペースメーカーを希望したけれど、過去の実績と面接で落選した岡村雪則である。
応募の動機が「目立ちたい」だったという、これまた変わったタイプの日本人。(笑)
人それぞれ何かしらの理由を持って大会に参加していると思うけど、ここまで単純な理由を軽々しく口にするとは!
岡村は我流走法でレースに臨んでいて、走り方に特徴があるという。
苦しそうな顔をして、隣を走るランナーの邪魔になるくらい肘を左右に振る独特のスタイルだという。
この特徴から、ROCKHURRAHが「ザトペック走法」を連想したという。
はしるーはしるー おれーたーちー!(爆風スランプ)
そして「ザトペック」というノイエ・ドイッチェ・ヴェレのバンドの曲をチョイスした、オリジナルのビデオを制作してくれた!
ザトペック走法というのが「人間機関車」と呼ばれていた、というところからビデオにはROCKHURRAHが連想した意味不明の映像も混ざっているんだよね。
ROCKHURRAHの連想だから、「これは何?」と聞いてやっとザトペックとのつながりが分かったシーンもいっぱいだよ!
オリジナル・ビデオ、短時間で良く出来てるよね。
さすがROCKHURRAH!(笑)

日本人選手だけでも、これだけの顔ぶれだけれど、実力が上なのは海外勢だ。
特にアフリカ勢には、過去にも好成績を獲得している最有力候補がいる。
緊迫するレース展開にどんどん引き込まれていく。

「激走 」はミステリー小説として括られているし、実際に事件が起こる。
ミステリー小説は謎の解明と共に犯人探しをするのが目的の場合が多いと思うけれど、この小説に関しては選手それぞれの思惑と、目が離せないレース展開が魅力だ。
もちろんミステリー部分も、ラストの大どんでん返しも見逃せないけどね!

続いては「人事系シンジケート―T-REX失踪」をまとめてみよう。
韻を踏んだタイトルは、まるで1つの決まった単語のように発音しやすい。
そしてそのタイトルが表している通り、主人公はおもちゃメーカーの人事部に所属する物部真治。
入社して3年の、まだ経験の浅い社員である。
人事部に所属しているとはいっても、実際には何でも屋のような仕事がほとんど。
その日も部長に呼び出された物部は、ある指示を受ける。
無断欠勤している総務部の女性社員、田尻優についての調査だった。
その司令が、あんな事件に発展するとは!

大手玩具メーカー・トリストイに勤める物部真治の名刺には、「人事部」としかない。
それは、普通の社員には解決できない特殊事案を「秘密裏に」担当するためだ。
そんな彼のもとに、社の命運を賭けた新商品<ハイパーT-REX>が盗まれたとの報告が!
極秘に捜索を進めるうちに、関係者の1人が謎の転落死を遂げる……

講談社ノベルスのあらすじを引用させてもらったよ。
特殊案件を処理できる能力を保持している物部だけれど、外見的に際立った特徴はないみたい。
人当たりは良いけれど、あまりパッとしない地味な男、という印象を持ったSNAKEPIPE。
物部は福岡県の大牟田の出身だ、というところが鳥飼先生の作品だよね!
不遇な子供時代の影響で、特殊能力が身に付いたらしい。
その物部を自分の部下に抜擢した、人事部の部長峯岸史子の能力もすごいと思ってしまったけどね!(笑)
部長である峯岸はショーカットに縁無しメガネをかけ、正義感に溢れた人物だという。
公正な判断力がある女性の上司というのは、あまり聞いたことがない気がするよ。
どうしても女性の場合は個人的な感情によって、相手に対して態度が変化することが多いようなイメージがあるんだよね。
SNAKEPIPEの偏見かもしれないけどね。(笑)
そんな上司の元で働ける物部は、恵まれていると思うよ。

この小説の魅力の1つは、キャラクター設定だと思う。
物部の先輩であり、社内一の美女とされる坂巻亜季は見た目とは裏腹に短気で勝ち気な性格だという。
凛とした美人というのならハンサム・ウーマンとして評価されるけれど、怒りっぽいだけの女性だと敬遠されちゃうだろうね?
何か心に問題があったり、ストレスを抱えているのかもしれないね?(勝手に分析)

調査対象である田尻優の同僚で、物部の調査に付き合うことになった東郷麻紀も総務部所属だ。
田尻も東郷も物部の一つ後輩にあたるという。
田尻は「令嬢」と呼びたくなるようなお嬢様タイプ、それに引き換え東郷はまるでキャバクラに勤めているような派手な出で立ち。
休日にはコスプレまでしてるという、目立つのが好きなタイプなんだね。(笑)
軽そうな雰囲気だと思っていたのに「人事系シンジケート」の名付け親は、彼女!
物部を中心とした謎の解決に当たるチーム、という意味なんだよね。

派手な東郷の出番が多いのでどんな人なのか良く分かるんだけど、物部がほのかな想いを寄せている今井佳子の登場が少なかったかな?
物部と同期で第二営業部に所属しているセミロングの美人で、高校時代は弓道部だったサッパリした性格、くらいか。
あまり物部には関心がない様子だけど、恋の行方はいかに?って感じだね。

物部の同僚として登場する総務部の常呂政臣はトトロの愛称で親しまれている。
ラグビーをやっていただけあって、背が高くガタイも良いけれど、性格がおっとりしているらしい。
物部のことをモン、と呼んでいて仲の良さが分かるよね。
優しい力持ちだから、どこの会社にも一人いて欲しいと思う人物だよね。
何かお願いしたら、すぐに引き受けてくれそうだもん。(笑)
ROCKHURRAHは「痙攣的 モンド氏の逆説」「このどしゃぶりに日向小町は」に登場するバンド「鉄拳」のメンバーのザッポを思い出したらしい。
体が大きくて面倒見が良いところが似てる感じだもんね!

無断欠勤の話以外に、会長夫人からペットの捜索を依頼されてしまう展開も面白かったね。
ポチという名前のヨークシャーテリアを休日返上で探すことになるんだけど…。
この犬の捜索を手伝ってくれたのは、人事部の物部の先輩で社内一の変わり者と称されている清水竜一。
休日に清水と待ち合わせた物部は、清水のファッションに愕然とする。
鋲ジャン、革パン、ツンツンヘアとくればパンクの正装なんだけど、物部には分からなかったみたいだね。
この清水が良い味出してるんだよね。
清水と物部のコンビが「観察者シリーズ」でいうところのトビさんとネコみたいな関係になるのかな。

鳥飼先生の著作で東京の企業が舞台になっている作品はこれだけでは?
会社員の会話のせいか、普段に比べると生物に関する記述も少なめだったのも特徴だと思う。
おもちゃのメーカーという設定も良かったし、50分の1の大きさで再現されたティラノサウルス・レックスがリモコンで動くおもちゃなんて興味をそそられるよね。
そしてなんとティラノサウルス・レックスもプロモーション・ビデオに取り込んでしまったROCKHURRAH!
様々なレックスが入っているね。
これにより更に意味不明のビデオになったことは間違いないね!(笑)

新作のティラノサウルス・レックスが盗まれだけでなく、無断欠勤の女性社員の話、会長夫人のペットの失踪といった問題が発生するけれど「人事系シンジケート」が活躍するところが見どころなんだよね!
登場人物のキャラクターがはっきりしていて想像しやすかったし、実際にいそうなので親しみを感じやすいと思った。
会社内での事件というのは、まだ他にもアイデアが浮かびそうだし、清水と物部コンビで続編読みたかったなあ!

次回の「トリカイズム宣言」は何にしようか?
今度こそ「本格的」かな!(笑)

【作中に登場するエンジェル友清の作品をROCKHURRAHが再現!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のブログは、本格ミステリ大賞受賞作家である鳥飼否宇先生の著作を読み返して感想をまとめていくトリカイズム宣言
以前読んでいても、再読して新しい発見をするSNAKEPIPE。
何度読んでも楽しいんだよね!(笑)

鳥飼先生の作品には、「観察者シリーズ」の他にもいくつかのシリーズがある。
綾鹿市(あやかし)という架空の地域で起こる事件シリーズ、その名もズバリ「綾鹿市シリーズ」も、鳥飼先生の代表作の一つだ。
今までトリカイズム宣言の中で、「綾鹿市シリーズ」の中から「太陽と戦慄」「痙攣的」「爆発的」「このどしゃぶりに日向小町は」について拙い感想を書かせて頂いている。
そして鳥飼先生ご自身から、コメントまで頂戴するファン冥利に尽きる体験をさせて頂いた。
鳥飼先生、いつもありがとうございます!
今回はその「綾鹿市シリーズ」から「逆説的」について書いてみよう。

「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」は2005年に刊行された時には「逆説探偵 13人の申し分なき重罪人」だったらしい。
改題されて「逆説的」になったのね!
SNAKEPIPEの手元にあるのは「逆説的」だから改題後ということなんだね。
文庫版のあとがきで知ったけれど、「逆説的」は「小説推理」という月刊誌に毎月掲載されていた短編だったという。
それをまとめた13編それぞれに別の事件が起こる、連作短編集なのである。
今まで読んできた鳥飼先生の短編より短めな印象なのは、そのせいだったのね。(笑)

いつもは短編毎の感想を書く手法(というほどのものではないけど)だったけれど、「逆説的」に関しては1編が短いのでネタバレしないように書いていくのは難しいかもしれないな。
今回は主に「逆説的」の登場人物についてまとめてみよう。
鳥飼先生らしい、魅力的な人物が多かったからね!

「逆説的」は綾鹿署に勤務する、五龍神田(ごりゅうかんだ)の語りで進行する。
五龍神田の階級は巡査部長、年齢は43歳。
本人曰く「冴えない風貌の中年」という設定で、本人が語り部なので、あまり詳しい描写はない。
五龍神田の目で見た他の人物評には詳細な記述があるんだけどね。
鳥飼先生の著作「妄想女刑事」の主人公である宮藤希美のような妄想癖があるけれど、宮藤希美とは正反対の結果をもたらすのが特徴か。(笑)
それにしても五龍神田って名前、ものすごくインパクトあるよね?
鳥飼先生の創作なのかと思ったら、本当に存在する姓みたいだね。
うそっ?って思うような仰天名字って意外と多いことに驚くよ。

五龍神田巡査部長のことを「リュウの旦那」と呼んでいるのが、「たっちゃん」である。
「たっちゃん」こと田中辰也は、「逆説的」第1話冒頭から登場するホームレスだ。
西野中央公園を根城にして、およそ10年「公園の主」として君臨しているベテランのホームレスなのである。
「たっちゃん」はまるでギリシャの哲学者のような容姿で、五龍神田に様々な有益な情報をもたらしてくれる貴重な協力者なんだよね!
ギリシャの哲学者みたい、ということでエピクロス画像をチョイスしてみたよ!
この風貌ならスーツも似合いそうだもんね。(笑)
SNAKEPIPEが「逆説的」の中で一番興味を持ったのが「たっちゃん」かな。
「『太陽と戦慄』にも登場してるよ」
なんとROCKHURRAHから情報が!
SNAKEPIPEの貴重な情報源はROCKHURRAHだね。(笑)
鳥飼先生の著作「太陽と戦慄」も「 綾鹿市シリーズ」だから西野中央公園が登場して「たっちゃん」も出てきたわけね。
鳥飼ワールドには揺るぎない「綾鹿市」があって、地名や生活する人が確実に存在していることがよく分かる。
「 綾鹿市」のマップ欲しいなあ。(笑)

西野中央公園に出入りするようになった新入りホームレスが登場する。
「たっちゃん」の弟子みたいに行動を共にする、十(つなし)徳次郎、通称「じっとく」である。
それを聞いた五龍神田は、拾得(じっとく)を思い出す。
拾得とは中国、唐代の僧で普賢菩薩 の化身とされ、禅画にも描かれる人物だという。
右がその描かれた禅画で、左側のほうきを持っているのが拾得、右側が寒山(かんざん)という僧。
西野中央公園にいる「じっとく」は猫背で、もじゃもじゃの蓬髪をした薄汚れた男。
いわゆるホームレスらしい男だけれど、僧の拾得と同じように愚者のフリをしているだけなのだろうか?
「じっとく」の発する不思議な言葉が五龍神田にヒントを与えるところが面白いね!(笑)

五龍神田の同僚、綾鹿署に勤務する面々も他の鳥飼先生の著作に登場している。
五龍神田が主役として登場する「逆説的」は「綾鹿市シリーズ」のスピンオフ作品という認識で良いのかな?
五龍神田の上司である谷村警部補と南巡査部長のコンビはほとんどの「綾鹿市シリーズ」に登場している常連だからね。
谷村警部補はキューピー人形のような童顔なのに、ダミ声で下品、という特徴がある。
こんなギャップがある人、本当にいそうだよね!
あえて例えれば「Ted」みたいな感じかな?(笑)
そして南巡査部長は谷村警部補の腰巾着で、特徴は赤ら顔だという。
この2人組と五龍神田が競うように事件を解決していくのである。

もう一人、探偵として登場する星野万太郎についても書いておこうか。
星野万太郎も他の「綾鹿市シリーズ」でお馴染みの人物なんだよね。
黒縁メガネをかけた、特徴のない男とされる。
この特徴の無さが探偵にはもってこい、ということなんだけど…?(笑)
星野万太郎という名前は、元中日監督の星野仙一から来ているのでは?と推測。
仙を千として万に置き換え、一を太郎にして。(笑)
鳥飼先生の作品中に出てくる名前には、ヒネリがあることが多いので、勝手に深読みしちゃうよね!

「逆説的」にある13編はそれぞれ、非常に興味深い事件を扱っている短編なんだけど、その中でも特に印象に残った作品について書いてみよう。
SNAKEPIPEは鳥飼先生の作品中に現代アートが登場するのが大好き!
今回は「堕天使はペテン師」に現代アートが出てきたよ。
エンジェル友清というアーティスト名からして、「ちょっといかがわしい」雰囲気がよく表れているし、その作品も「いかにもありそう」で嬉しくなってしまった。(笑)
あやか市美術館(美術館もある!)の学芸員による「贋作/パロディ/オマージュ」に関する説明は、「痙攣的」の「闇の舞踏会」にもあった「盗用と流用」にも通じていて現代アートの核心に迫る話だよね!
そして結論は好き嫌いで良いのでは?で落ち着いていた。
これにはSNAKEPIPEも大賛成!
何回読んでも分からない難解な文章を理解せんでも、よかと!(笑)
己の直感で楽しめたらそれで良いもんね。
エンジェル友清の師匠である杉田悪鬼(すごい名前)が住んでいる双頂山は「本格的」「太陽と戦慄」にも出てきたよ、と再びROCKHURRAHからの指摘があったよ。(笑)
そしてROCKHURRAHがエンジェル友清の作品を動画にしてくれた。
TOP画像に載せてあるんだけど、こんな感じじゃないかな?
非常によく再現できているように思うよ!

敬虔過ぎた狂信者」は、事件現場がまるで作品のようで、脳内に映像が再現できるようだった。
事件の現場はカトリック綾鹿教会、被害者がその教会の神父だという。
つい最近読んだ小栗虫太郎の「後光殺人事件」を思い出してしまったSNAKEPIPE。
宗教絡みだからね!
この短編の中で面白かったのは、教会に住む遊佐という軽度の知的障害がある男が「うう」としか喋らないのに、「じっとく」が通訳として完璧に遊佐の言葉を翻訳するところ。
しかも「じっとく」はそれまでは、ワンフレーズ程しか喋らなかったのに、通訳になった途端ペラペラ喋り出すんだよね。(笑)
谷村警部補が看破した謎も秀逸!
鳥飼先生らしいトリックだよね。

探偵の星野万太郎が初登場した「目立ちたがりなスリ師」は変わった動機を扱っていたね。
虫が好かないテロリスト」は、これまでにないスケールの大きな作品で、まるで「相棒」や「踊る大捜査線」のような刑事ドラマみたいだった。
短編だけど、この映像化された作品を観たかったな!(笑)

前述したように月刊誌に連載されていたというだけあって、短編は5月から順番に月日の経過が共に描かれていた。
綾鹿市ではこんなに事件が起こるんだね。(笑)
毎回の構成として、「じっとく」がヒントをボソリと呟き、それを五龍神田が早とちりしてしまうところが「逆説的」というタイトルに絡んでいる部分なんだよね!
読んでいるこちらまで踊らされてしまわないように注意!(笑)

毎月締め切りが決まった中で、書き続けていくことの難しさが「あとがき」に記されていたけれど、鳥飼先生の作品には苦し紛れで完成させた感じは全くなかったね。
どの短編もとても楽しく読ませて頂いた。
「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!