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【「隠蔽人類」映画版(想像)のポスターをROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

NHKスペシャル「人類誕生」第1集が放映されたのが2018年4月8日のこと。
ヒトはどのように進化していったのかを探る全3回のシリーズである。
録画しておいた番組を鑑賞し、CGとは思えないほどのリアルな映像に驚く。
「人類誕生」第2集の放映も楽しみだね!

「人類誕生」を鑑賞して、しばらく経ったある日、ROCKHURRAHが興奮気味に叫んだのである。
「鳥飼先生の新作が出るよ!」
電子書籍「ジャーロ」に連載されている時は我慢して、1冊にまとまるのを待っていた小説の刊行である。
待ちかねていた、その時がやってきたのだ!
タイトルは「隠蔽人類」。
前述のNHKスペシャルとのシンクロを感じてしまうよね。
NHKスペシャルは恐らく多くの人が目にする番組だと思うし、日頃から人類について考えたり、思いを馳せる人ばかりではないはず。
大勢の人が日頃ほとんど耳にすることがないであろう「ホモ・サピエンス」という単語を意識した後、鳥飼先生の「隠蔽人類」が発売されるなんて、まるでNHKスペシャルとのコラボみたいじゃない!(笑)
鳥飼先生に追い風が吹いているように感じて嬉しくなる。
嬉しいサプライズにより新作を入手したことは、先週の冒頭でも書いていたね。
本当にありがとうございました!(笑)

鳥飼先生の新作「隠蔽人類」はどんなお話なんだろう?
光文社の紹介ページに載っていたあらすじを引用させて頂こう。

形質人類学者の日谷隆一率いる日本人学者の調査団は、アマゾン奥地の未接触民族キズキ族の村で世紀の大発見をした。
DNA分析から、彼らがホモ・サピエンスではない別種の人類、隠蔽種の可能性が見つかったのだ。
しかし沸き立つのもつかの間、調査団メンバーの一人が首を切断され、発見された。
調査団以外の全員にアリバイが。
犯人は──!? 
さらに、隠蔽人類と殺人の「秘密」は日本へ。
殺戮の連鎖が巻き起こり、探偵役が次々に死んでいく。
ことごとく読者の予想を裏切り、皮肉と逆説をはらんで疾走していく事件の展開。
誰にも結末を読ませない、圧倒的に面白い驚愕ミステリー!

アマゾン奥地で大発見、なんてワクワクするよ。(笑)
ROCKHURRAHは、タイトルと冒頭のシチュエーションから香山滋の「オラン・ペンデクの復讐」や昔の探偵小説でいう「魔境冒険物」を連想したらしい。 
SNAKEPIPEが思い出したのは、 鳥飼先生の「桃源郷の惨劇」。
外国を舞台にしていて、新種の鳥「ミカヅキキジ」を追うミステリーだったからね!
それにしても「隠蔽種」ってなんだろうね?

隠蔽種とは本来は別種であるが、外見上の区別がつかず、同一種として扱われていた種。
遺伝子の塩基配列などを調べる分子系統学的な手法で、別種の存在が明らかになることが多い。

似ていたから気付かなかったけど、よく調べてみたら別物だったということだね。 
簡単に説明し過ぎ?(笑)
本当はDNAやRNAやヌクレオチドとか遺伝子が、などと書くべきなんだろうけどね。
詳しく知りたい方は専門家の文章を参照してちょ。
「隠蔽人類」とは、人のように見えるけど、実は「ホモ・サピエンス」ではなかった人類ということなんだね。

「隠蔽人類」は5章からなる連作短編。
章ごとに感想をまとめていこうと思うんだけど、果たしてうまく書けるかどうか。(笑)
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

隠蔽人類の発見と殺人
綾鹿科学大学の形質人類学者である日谷隆一教授他、4人の日本人がアマゾンに行くところから話が始まる。
ということは「隠蔽人類」は「綾鹿市シリーズ」ってことで良いんだろうね?
「綾鹿市」という架空の地域で起こるミステリーは「綾鹿市シリーズ」と呼ばれ、鳥飼先生の代表的なシリーズとして有名なのである。
鳥飼先生のWikipediaがまだ更新されていないようなので確認できなかったけれど、新作は「綾鹿市シリーズ」だね!
綾鹿市は架空の都市だけど、地図が欲しくなるほどだよ。(笑)
何故、綾鹿科学大学の学者がアマゾンに行くことになったのか?
それはアメリカ人冒険家クリス・グロールの手記により、未接触部族の存在が明らかになったためである。
クリス・グロールにより、その部族はキズキ族と名付けられていた。
クリス・グロールが濁流に飲まれ不慮の死をとげたことにより、キズキ族についての詳細は不明なまま。
世界各国の人類学者がこぞってアマゾンに向かい、調査を開始するも発見には至っていなかったのである。

クリス・グロールというのはニルヴァーナだね、ROCKHURRAHが言う。 
アメリカのバンド、ニルヴァーナのメンバーだったクリス・ノヴォセリックとデイヴ・グロールの名前を組み合わせるとクリス・グロールになっちゃうよ! (笑)
よく分かったね、と感心するSNAKEPIPEに「初心者レベル」との返答!
鳥飼先生の小説には、名前の由来を解く楽しみも隠されていて、「痙攣的」や「爆発的」では夜な夜な謎解きに明け暮れたっけ。
「隠蔽人類」の登場人物も試行錯誤して考え続けていたけれど、日本の城や半島の名前が多い、ということしか見いだせなかった。
全員が城の名前じゃなかったので、恐らく不正解だろうな。(笑)

世界中の調査団はキズキ族を発見することができなかったのに、日谷チームは見事に発見し接触に成功する。
これだけでも充分な成果だけれど、日谷チームはキズキ族のDNAサンプルの入手にも成功し、驚くべき結果を目にするのである。
あらすじにもあるように、そこで事件が起こってしまうんだよね。

キズキ族は白人のような容姿で、アスリートのような引き締まった体型をしているという。
菜食主義で性格は温厚、富を蓄えるという概念がないなんて、それだけでもう人間じゃないかも。(笑)
部族の全員がお釈迦様みたいだよね。
キズキ族の一員になりたいかと聞かれたら迷ってしまうかもしれない。
ええ、SNAKEPIPEは欲にまみれて生きてますから。(笑)

綾鹿科学大学の准教授である尾崎が殺されてからの展開には驚いた!
まさかそんな秘密が隠されているとは。 

隠蔽人類の衝撃と失踪

日谷教授は、キズキ族の女性・ミラを伴って帰国した。
未接触部族というだけでも衝撃的なのに、ミラは美しくモデル並のスタイルの持ち主。
衣服を身に着ける習慣がないため真っ裸だというのもセンセーショナルだよね。
学術目的以上に、男性陣がこぞって見物にやってくるのも仕方ないかもしれないね?(笑)

そんなミラをイメージしてROCKHURRAHが作成してくれたのが一番上の画像。
「隠蔽人類」が映画になったら、という想定なので真っ裸にはしなかったという。
ジャングルと塩基配列をバックにした半裸体美女とはニクい演出だね。(笑)
いつも作成してくれてありがとう! 

第2章は密室に関するトリックが使われる。
完璧に思われたセキュリティを突破することができたのは何故か、という点がポイントかな。
第1章でも予想外の展開に付いて行かれるか不安になりながら読み進めてきたけれど、第2章でまたもや先が全く分からない展開になっていく。
SNAKEPIPEの頭で理解できるだろうか?(笑)

隠蔽人類の絶滅と混乱

混乱してしまったSNAKEPIPEは第3章を読んで安心する。 
第2章の顛末が説明されていたからだ。
内容を理解しないと読み進めることができないという、当たり前のことを改めて認識したよ。(笑)
これですっきりした気分で第4章に進むことができるね!

第3章にはロバート・ハンダという外国人留学生が登場する。
日本語が堪能な日系アメリカ人で、形質人類学を専攻している。 
日谷教授を紹介する時にも何気なく形質人類学と書いてしまったけれど、やっぱり調べてみようね。

人類やチンパンジーやゴリラなどヒト科の共通祖先からどのように原生人類が進化してきたのかを解明する学問である。
主に発掘された霊長類や人類の化石を対象に、その形態を分析する。
骨や歯の形態からその古人類の運動様式・食性・性・生活環境・社会構造などを明らかにする。

まさにNHKスペシャルの「人類誕生」なんだね。
どうしてロバート・ハンダが日本の大学に籍をおいているのかは不明だけど、第3章では大活躍する。
片言の日本語かと思いきや、かなり長いセリフを喋ってるんだよね。
ロバートのパートはカタカナ表記されているので、いつの間にか変なアクセントを付けて読み進めていることに気付く。
ケント・デリカットが喋ってるみたいな、ね。(笑)

いやはや、こんなにハチャメチャになってしまうなんて!
「芸のためなら女房も泣かす」(浪花恋しぐれ!古い!)
じゃないけど、善悪は後回しになっちゃうものなのかなあ?
成果を求めるあまり、行き過ぎた行動に出るジャーナリストを描いた映画「ナイトクローラー」を思い出したSNAKEPIPE。
「ナイトクローラー」のジャーナリストには共感する部分もあったから、そう考えると「隠蔽人類」での行動も納得できるかもしれない。
そうだよね、自分なりの目的あったら普通じゃないこともやっちゃうかもね。(笑)

隠蔽人類の発掘と真実

舞台は再びアマゾンへ。 
スペイン語が堪能で、生物に詳しい宮路司という翻訳家が登場する。
元・形質人類学教授だった父親と共に、キズキ族の村を探すためである。
恐ろしい鳴き声の正体をホエザルだと見抜いたり、飛んでいる鳥の名前を言ったりするシーンはまるで「観察者シリーズ」のトビさんが出てきたようで嬉しくなるね。
「観察者シリーズ」は2015年の「生け贄」が最後の刊行なので、3年前になるんだね。
またトビさんやネコに会える日が来ると良いな!(笑)

手がかりを得て帰国した宮路親子は驚愕の事実を知ることになる。
いや、驚いたのは宮路親子ばかりではない。
読んでいるSNAKEPIPEも顎が外れるほどだった。(大げさ)

ここまで「どんでん返し」が繰り広げられる鳥飼先生の作品は初めてだよ!

隠蔽人類の絶望と希望

最終章では綾鹿市を離れて、世界規模にまで広がりを見せる壮大なストーリーになっていた。
この章で、今までの疑問が解決することになる。 
まさかそんな事実が隠蔽されていたなんて!
「隠蔽人類」は章ごとの殺人事件と共に「DNA」に関するミステリーを合わせ持った小説だったんだね。
 生物学meetsミステリー、最後はSFになった感じかな?

実際に「ホモ・サピエンス」ではない、別種の人類が隣にいたらどうなるんだろう。
想像しようとしてもできないのは、全く経験がないからだろうね。
世界中の人が温和なキズキ族のようだったら、何の問題もなく全ての人類を受け入れるだろうけど。(笑)
隔離したり殲滅させようとする意見が出るのも納得できる。
前から虫が好かなかったとしたら尚更だろうね。

次々と探偵役がいなくなってしまう(光文社のあらすじより)「隠蔽人類」は、鳥飼先生の作品では初の試みかも?
アマゾンから始まり綾鹿市に移って、最終章ではインターナショナルな舞台に発展するなんて思いもよらなかったよ。

ROCKHURRAHが連想していた「オラン・ペンデク」や「魔境冒険物」とは全く違う作品だったね。
読み進める程に混乱し、死体はどんどん増えていく!
分かったと安心するのも束の間、新たな疑問にぶつかる、どんでん返しの連続だったね。
展開は急だったけれど、決して奇想天外ではない。
本当にこんな状況が訪れたら、と想像してROCKHURRAHとの議論が白熱したのは言うまでもない。(おおげさ)
驚愕しながら一気に読み進めた鳥飼先生の新作、楽しかった! (笑)

20180211 top
【リンチが手がけるパリにある「Silencio Club」の内部 】

SNAKEPIPE WROTE:

先週は敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを追ったドキュメンタリー映画について特集した。
その中で、子供時代に父親と毎週のようにDIYで何かを作っていた、という話があったことも書いたっけ。
デヴィッド・リンチは自分の映画のセットを作っている、というのは前に聞いた(読んだ)ことがあった。
例えば映画「ロスト・ハイウェイ」では、ジャズ・ミュージシャンのフレッドと妻レネエの室内に置いてあったランプと台をリンチが作成した、とかね。
それを聞いた時には驚いたけれど、「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を鑑賞して、DIYが得意だということを知って納得する。
ところがリンチのDIYは映画だけにとどまっていないことをROCKHURRAHが調べてくれた。
なんと、様々な家具のデザインを手がけていたんだよね。
検索すると出てくる出てくる!(笑)
今回はリンチがデザインした家具を特集してみよう。

このテーブルの雰囲気は、前述した「ロスト・ハイウェイ」のランプに似ているね。
1988年製で、100点のみの限定販売だったみたい。 
素材はバーチ材合板、スチール、ターンバックル付き鋼線だという。
「エスプレッソ・テーブル」と名前が付いているところが、いかにもコーヒー好きのリンチらしいね。(笑)
このテーブルはオークションで販売されていて、$2,188、日本円で約24万円だったようで。
ちゃんとリンチの手書きサインも入っているんだよね。
こんな値段でリンチの作品が手に入るなんて驚き!
ファンにはたまらない逸品だよ!

次もテーブルにしてみようか。
ランプが接続されたキャスター付きのサイドテーブルだね。
真ん中あたりにあるのはリモコンやメガネ、奥にはティッシュも見えるよ。
きっとリンチ自身がパッと手に取れるように設計したんじゃないかな?
テレビショッピングで見たたことがある多機能テーブルみたいな感じ?(笑)
「ツイン・ピークス The Return」の最終回近くを放映していた頃作ったような記事を読んだけど、このサイドテーブルについての詳しい話は書いてなかった。
 販売されているのかどうかも不明だけど、ランプの雰囲気がリンチらしいなと感じるよ。

引き出しがいっぱいあるキャビネット。
中に入っている写真(?)が謎なんだよね。
あまり大きな画像がなくて、何が映っているのか不明だけど、不気味に感じてしまう。
この作品は「Do It: How To Make A Ricky Board」というんだけど、20ある引き出しの名前がリッキーなんだって。
それぞれのリッキーに別の名前を付けることで、20の人格ができあがるという。
元はすべて同じだけれど、名前から変化が現れるでしょう、なんて書いてあるよ。
これは2012年の作品で、Gund Galleryで展示されていたみたい。
人格が変わるというのはリンチの映画では定番のテーマ(?)なので、余程気に入っているんだろうね。
この家具はサイズ調整もできるというので、どんな変化が起こるのか実際に観てみたいよ!

これはもしかしたらリンチ・デザインの家具というよりはアート作品になるのかもしれないけどね?
コードが伸びているので、赤い部分が光るライトだと思われるんだけど。
ぐんにゃりした形状と、色使い、中から飛び出している黒い棒状の物、というモチーフは「いかにも」リンチ!(笑)
リンチの絵画作品「I See My Love」の別バージョンに見えるなあ。
これは2011年の作品で、William Griffin Galleryで展示されたという。
リンチは絵画作品にもライトを取り入れたり、立体感を出しているので、オブジェも得意なんだね。

次もランプにしてみよう。
高さがあって、少しぐんにゃりして、ライト部分が小さめ。
実用性というよりは、オブジェなんだろうね。
このライトもリンチの絵画作品「Boy Lights Fire」に近いと感じるよ。
どんな絵画なのか載せておこうか。

少年が火遊びをしているところを描いているんだろうけど、不自然に長い腕、絵画の中に実際のライトを点けているところが特徴なんだよね。
この少年の腕部分を切り取って立体にしたら、上のライトにならないかな?
ライトといえば、「ツイン・ピークス The Return」に出てきたコンビニエンスストアの2階に住んでいる黒い男の「gotta light?」を思い出してしまうね。(笑)
「Fire Walk With Me」もそうだけど、リンチにとっては火は重要な意味があるんだろうね?

映画の音響にもこだわり、「ブルーベルベット」ではカイル・マクラクラン演じるジェフリーが野原で切り取られた耳を拾うシーンがあったことから、リンチと耳を結びつけて語る人が多いんだよね。
「耳の監督」なんて言われていたもんね。
リンチ自身もCDデビューを果たしているし、音楽への「こだわり」が強いことは知られている。
「ツイン・ピークス The Return」でも毎回必ずライブシーンが収められていたしね。
そのリンチがデザインしたスピーカーがこちら!
タールとラッカーでペイントされているという。
さすがにタバコ好きのリンチ、タールだって。(笑)
土台の部分が幾何学的で面白いんだよね。
一体どんな音が出るんだろう。
タールで塞いだせいで、音が歪んだりしないのかな?
それがリンチの狙いかもしれないけどね!

リンチのデザインについて調べていたら、2011年にリンチがパリのナイトクラブをプロデュースした話が出てきて驚いた!
クラブの名前は「Silencio」、そう「マルホランド・ドライブ」に出てきた劇場と同じ名前なんだよね。(笑)
クラブのオーナーはリンチの作品のファンで、「マルホランド・ドライブ」の雰囲気を打ち出したナイトクラブをイメージしていたのかもしれない。
アートを理解する大人のためのクラブなんて、リンチにとっても楽しい仕事だったんじゃないかな?
そのクラブでは映画の視聴もできるようで、シネマ・シートのデザインをリンチが担当したという。
人間工学的に設計されているようで、快適に映画鑑賞できるようだよ。
このシートが「Silencio Club」に並ぶと左の画像のようになるんだね。
これはすごい! (笑)
どんな座り心地なのか気になるよね。
それにしてもその「Silencio Club」は一体どんなシステムなんだろう?
700㎡の敷地に1階ギャラリー、24座席あるシネマ、図書室、喫煙室、黒幕、2つのバー、1つのステージがあるという。
黒幕ってなんだろうね?(笑)
毎週土曜日は一般でも入れるようだけど、通常は会員制を取ってるみたい。
どんな人が集い、どんな文化的な交流が図れるのか?
非常に気になる場所だよね! 

きっとリンチは自分の居心地を良くするために、オリジナルの家具をDIYで作成していたんだろうね。
そのデザインが、他の人にとっても使い勝手の良い家具として商品化されていると知って驚いたよ!
好きなことが商売になるなんて、アーティストとして最高だろうね。
今回はリンチの別の側面を知ることができて、とても楽しかった!
絵画、映画、音楽、家具デザインと多岐に渡る活動を観て、益々ファンになったよ。(笑)
また別のリンチ特集を組んでみたいね! 

【「ユートピア」シーズン2のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週楽しみに観戦しているPGAゴルフツアーは、11月後半から正月明けまで試合がなくなってしまう。
映画とゴルフ鑑賞が休日の習慣になっているROCKHURRAH RECORDSにとって、寂しい時期が年末なんだよね。
特に2017年の年末近くは、念願だった「ツイン・ピークス The Return」も終了してしまい、体から空気が抜けて萎んでいたっけ。(笑)
そこで以前より気になっていた海外ドラマを試してみることに。
まずは第1話を観て、それから続きを観るかどうか決めようと思ったのである。
実はあんまり期待していなかったんだよね!

ところがなんということでしょう。
「しんなり」していたSNAKEPIPEがまた膨らんでしまったのである。(笑)
チョイスしたのはイギリスのドラマ「UTOPIA」。
トマス・モアの「ユートピア」でも、ホープとピースの2人からなる芸人「ゆーとぴあ」でもないからね!(ぷっ)
このドラマはイギリスでは2013年1月に放映が開始され、シーズン2が終了したのが2014年8月とのこと。
日本でDVDが発売されたのが2016年4月なので、 約3年経過してようやく観られるようになってる計算だね。
そこから更に遅れて鑑賞しているROCKHURRAH RECORDS。(笑)
最新という言葉も良いけど、あまり気にしてないのがこのブログだからね!

第1話からSNAKEPIPEの目が釘付けになってしまった「ユートピア」(ここからはカタカナ表記に変更)とは一体どんなドラマなのか。
簡単なあらすじをAmazonの商品販売ページから引用させてもらおう。

20世紀に起きる地球上の大災害を予言してるとされる、カルトコミック「ユートピア」。
極秘で描かれたとされる、その続編の原稿を手に入れたコミック愛好家の5人組が、次々と謎の組織ネットワークの殺し屋に追われ始めるのだった。
この「ユートピア」は、誰が何の目的で描いたのか?
ネットワークとは、どんな組織なのか?
訳も分からないまま、逃亡生活を始める彼らが辿り着くのは…

※「ネタバレ」を含みますので、未鑑賞の方はご注意ください。

「ユートピア」というのはコミックの名前なんだよね。
この絵が素晴らしくて、SNAKEPIPEもこのコミック欲しくなっちゃったくらい。(笑)
これはコミックというよりは一枚毎に完結した絵をまとめて一冊にした本のようで、物語性があるのかどうかは不明。
だからこそ謎解きや解釈の仕方をネット上で話し合っていたのかな、と想像する。
「ユートピア」をトピックにした掲示板で知り合った5人の男女。
続編を入手したから会おう、ということになったところから話が始まるんだよね。
ネット上でだけの付き合いだったので、当然のように皆さん初対面。
○○のバーで17時にブルーの服を目印にね、のようなアバウトな約束が、あんな展開になっていくとは!
どこにでもいる普通の人、というイメージで選ばれたのかなと思う俳優が主役級になっている。
SNAKEPIPEが知らないだけでイギリスでは有名俳優だったらごめんなさい!(笑)
一般ピープルが「こんな事態に巻き込まれる」という現実味を帯びたシチュエーションにしたかったのかもね。

掲示板で知り合った5人の中の紅一点ベッキーは大学院を卒業したばかりの、ディール症というドラマ上での架空の病気に罹っている女性。
ベッキーが10代後半の頃、父親が謎の病気になり死亡する。
この病気とコミック「ユートピア」に関連を見出し、謎を究明したいと考えていたので、掲示板に参加していたんだね。
ドラマの中では非常に魅力的な女性として扱われていることが多かったんだけど???
ちょっと理解に苦しんでしまったSNAKEPIPE。(笑)
イギリスでは美人に分類されるのかなあ?
何故だか短パンだったりミニスカートだったり足を露出するファッションがお好みだったベッキー。
初対面のイアンと意気投合してベッドインするほどの尻軽ぶり!
ディール症については詳しく語られなかったけど、そんなに重症じゃなかったようで何より。
最終話で自殺を図ったけど、息を吹き返したからきっと大丈夫なんだろうね?

ITコンサルタントを職業にしているイアン。
考え方はノーマルで、過激思想も持っていないタイプ。
どうしてイアンがコミック「ユートピア」に惹かれていたのか不思議なくらい。
優しい人、というのが理由なのか不明だけど、ドラマの中では後述するジェシカからも好意を持たれるモテ男だったよ?
SNAKEPIPEは、どちらかと言えば優柔不断で決定力に欠けるように感じたけどね。
最終話まで登場する主要人物だったけど、ドラマの中ではそこまで強いキャラクターはなかったかな。

第1話から印象に残ったのはウィルソン。
「ユートピア」を巡って逃亡生活を強いられる前から、自分なりにシュミレーションして、様々な危機に対応する準備をしていたオタクなんだよね。
指の関節を外し縄抜けまで訓練していて、「何の役に立つの?」と笑われていたウィルソン。
まさか実際にその技を駆使する必要性があるとはね!(笑)
ネットを自在に操りハッキングなどもするけど、決して痕跡は残さない程の腕前。
このウィルソンが拷問を受けて片目になってしまうシーンが第1話で出てくる。
これがすごいんだよね!
よくもこんな方法を考えたものだ、と息を呑んでしまったよ。
ところがウィルソンは、拷問していた「ネットワーク」側と手を組むことを決意する。
連中の考えに同意したからなんだけど、拷問した相手とペアを組まされるのは相当な苦痛だったろうね。
ウィルソンだけをテーマにしたスピンオフ・ドラマがあっても良いくらい、興味のあるキャラクターだったよ。

「ユートピア」を巡るネット上の掲示板では24歳と偽っていたグラントは、本当は11歳の少年なんだよね。
スポーツカーを乗り回すセレブ、という設定にしていたようなんだけど。(笑)
続編の原稿に興味があっても、子供だから1人でパブに入れなかったんだろうね。
ちょっと悪ガキのグラントは、「ユートピア」続編の原稿を持っていて、パブへ集合を呼びかけた5人目の人(名前忘れた)の自宅に無断で忍び込む。
そこで殺人を目撃し、更に「ユートピア」の続編を持ち去ってしまう。
パブに集ったベッキー達と合流し、皆と同様逃亡生活を余儀なくされてしまうのである。
シーズン1の時は華奢な少年だったのに、シーズン2になったら顔や体型が少し変わっていて、成長ぶりが伺えたよ。
画像はシーズン1の時のもの。
この頃のほうがかわいかったかも。(笑)

第1話でウィルソンに拷問した男、リー。
必ず毎回黄色のスーツを着用し、髪はリーゼント。
職業は殺し屋なのに、まるで訪問販売に来たかのような自然な会話をするんだよね。
ウィルソンへの拷問をする時も、丁寧に拷問の手順を説明する。
それが余計に残酷に聞こえる。
黄色のスーツも、まるでコメディアンみたいだし。
ギャップがある設定は好きなので、リーのキャラクターも際立っていたと思う。
撃たれていなくなったと思ったら、再登場したのも良かったね!

黄色いスーツのリーとペアを組んでいる殺し屋アービー(のちに本名ピエトレと判明)。
SNAKEPIPEがドラマ「ユートピア」の中で、一番気になった存在だよ!
ドラマが始まってからのセリフは当分の間、「Where is Jessica Hyde?」だけ。 
落ち着いた口調で拷問を続けるリーと、「ジェシカ・ハイドはどこにいる?」しか喋らないピエトレの組み合わせは恐怖以外の何物でもなかったよ。(笑)
小太りで、片足を少し引きずるような変な歩き方、少し歩くと息が切れてしまう運動不足ぶりを見ている限りでは一流の殺し屋(?)とは程遠い印象なんだけどね。
人を殺すことに何の躊躇もなく「コーラの栓を開けるのと同じ」だと言うから恐れ入る。
射撃の腕はピカイチだったしね。
実はピエトレは赤ん坊の頃から、父親の実験台にされていたんだよね。
ドラマ「ユートピア」は視聴者からの苦情が多かったという記事を読んだけど、よちよち歩きのピエトレがペットのウサギを惨殺するのには驚いた。
実際の映像はなかったけど、そういう設定だったんだよね。
小学校での乱射シーンなどもあったから、抗議を受けたんだろうね。
それでも放映したイギリスのチャンネルってすごいな、と感心してしまった。
リーとピエトレだけで一体何人殺害したことでしょう。
ピエトレが必ず持ち歩いているバッグがド派手な黄色のダッフルバッグ。
この中にはピエトレの商売道具、つまりは殺人に必要な用具が入っているんだよね。
回を重ねていくと、黄色いバッグを見ただけで怖くなるほどのインパクトがあったよ!
そのうちに、この黄色いバッグが欲しくなってきてしまったSNAKEPIPE。
ネットで販売してるのを見つけたけど、€90.00だって。
日本円で約12,000円くらいかな。
旅行用に良いかも!(笑)

ピエトレが散々探し回っていたジェシカ・ハイド。
彼女も子供の頃から訓練を受けて育った女性なんだよね。
ピエトレは生まれた時からの実験台だったけど、ジェシカは訓練しないと生きて行かれない運命を背負っていたからね。
そんな悲劇のヒロイン、ジェシカなんだけど、かなり不気味な女優さんだったんだよね。
ROCKHURRAHは「パティ・スミスを彷彿とさせる」と話していたけど、確かに女性を全く感じさせないタイプなんだよね。
それなのにまるで子供みたいなミニスカート穿いたりして、ミスマッチ感がすごい!
全然かわいくないんだよね。
なんでイアンのことが好きだったのか不明だけど、誘われてイアンも関係持つとは驚きだったよ。
行動力があって、動きも俊敏、頭の回転も速く戦闘能力に優れたジェシカは、戦いになった時には心強かったけどね。
ジェシカも父親が原因で、追われる身になっている。
父親を憎みながらも慕っているジェシカ。
子供の頃に悲惨な体験をすると、ピエトレ同様、心のどこかが欠けてしまうのか。
表情が乏しい演技がリアルで、上手だったと思う。

ピエトレとジェシカの父親、フィリップ・カーヴェル。
そう、ピエトレとジェシカは兄妹だったんだよね!
2人共父親が原因で不幸な人生を歩むことになってしまった被害者と言えるね。
父親フィリップは優秀な科学者で、1970年代にMI5に勤務するミルナーと壮大な世界レベルの計画を立てることから悲劇が始まる。 
夢物語で終わらなかったのは、フィリップが計画を実現させることができるだけの頭脳の持ち主だったからなんだよね。
ミルナーとは理想(ユートピア)を追い求める同士として、お互い尊敬し合い惹かれていたんだろうね。
コミック「ユートピア」を描いたのもフィリップ。
科学だけじゃなくて、絵の才能もあるとは羨ましいね。(笑)

フィリップと計画を立て、実行するために画策したMI5勤務のミルナー。
イギリスは女王もいるし、「鉄の女」と呼ばれたサッチャー首相なども知っているので、女性が強い印象があるんだよね。
ミルナーにも強くて怖い印象があるよ。 
理想の実現のためには手段を選ばず、何人もの人を粛清してきたという。
自ら汚れ役を買って、地球の未来を考えるってすごいことだと思うよ。
最後はあっけなかったけど、「ネットワーク」という謎の巨大組織を作り上げ「ヤヌス計画」実行直前までこぎつけることができたのはミルナーがいたからだね。

政府の役人で保健省に勤務するマイケルは、「ヤヌス計画」について「たまたま」知ってしまう。
成り行きでベッキーらと「ヤヌス計画」阻止に向けて、行動を共にする。
そうかと思えば「ネットワーク」に寝返ったりする自分本位の小心者。
結局は自分が大事だからね。
最終的には「ネットワーク」の手中に収まってしまったのか。
家族思いの良い人だったので、疑似家族でも幸せに暮らして欲しいよね!

謎の巨大組織「ネットワーク」が計画していた「ヤヌス計画」とは一体なんだったのか。
それは増え続ける人口問題に対する解決策だったんだよね。
資源に限りがあるのに、人口が増え続けると争いが起こる。
本気で地球の未来を考えると、最善の方法は人口を減らすことだという理論なんだよね。
これって前にもブログで書いたことがある映画「キングスマン」 と同じ。
あれもイギリス映画だったね。
「キングスマン」ではスマートフォンに仕組まれた信号を受けると、人が凶暴になり殺し合うというものだった。
この殺し合いで人口を減らす、という過激な方法だったんだよね。
それに比べて「ユートピア」の「ヤヌス計画」は、ワクチン接種により不妊にさせる方法だった。
殺戮ではなく、最初から増やさせないという逆転の発想なんだよね。 
「環境問題を考える」というと、CO2を減らすことやエネルギーの問題、ECO活動などという単語がいくつも出てくるけど、もうそれでは間に合わないという説得力のある説明がされている。
実際に世界の人口は増えているので、こういう方法も現実的なのかもしれないと思わされてしまうよ。
「ヤヌス計画」が前提なので、リーやピエトレが犯した殺人なんて、「ネットワーク」という組織から見たら大したことがない人口の減少なんだろうね?

「 ユートピア」の魅力はストーリー展開やキャラクターの設定だけではなく、映像の美しさにもあったんだよね。
コントラストを強めにした鮮やかな色彩、写真集にして欲しいような風景に目を奪われる。
ピエトレの黄色いバッグやリーのスーツの原色使いも効いていたね。
好きなシーンをまとめてデジタルフォトフレームで飾りたいくらいだよ。
イギリスで撮影したから完成した風景なのか、映像スタッフの腕なのか?
目を見張る完成度の高さは、一見の価値ありだね!

もう1つ、ドラマを盛り上げていたのが音楽だったよ。

様々な音のミクスチャーは、不穏な雰囲気を醸し出してドラマにぴったり合っていたと思う。
何かが起こりそうな、しかもそれは決してハッピーではない何かを感じることができる音楽。
「雑多」や「カオス」といった単語が浮かぶ。
音楽を担当したのはチリのCristobal Tapia de Veer。
2013年に「ユートピア」のサントラでRTS Craft&Design Awardを受賞しているらしい。
カナダで活躍している作曲家なんだね。

「ネットワーク」という組織の実体は輪郭は語られても、どこまで巨大で何人が所属しているのか、どれくらいの力があるのかなどの詳細は不明なまま。
誰を信じたら良いのか分からなくなるドラマの内容とリンクして、視聴者の不安を煽るのに最適(?)なBGMだったね。
ドラマと音楽が一致して記憶に残るのは「ツイン・ピークス」も同じなんだけど、音楽も重要な要素だと思う。

記憶に残るドラマというのは、ストーリー、キャラクター、映像、音楽と総合的に高いレベルが必要なんだね。
ドラマ「ユートピア」が2014年の国際エミー賞ベストドラマシリーズで賞を獲得しているのも大いに納得!
観て良かったドラマだった。
シーズン3の制作はないという正式見解が発表されているけど、シーズン2の、あのラストで良かったのかもしれない。
結局は誰かが「兎」になって「ネットワーク」を引き継いでいくということなんだろうね。

さすがパンクが生まれた国、イギリス!
過激な表現や思想が発達する土壌があって、表現をすることもできる環境なのかもしれないね? 
他にも興味を持ちそうなドラマや映画があるかもしれないので、探してみよう! 


【「ツイン・ピークス The Return」に出演の俳優陣とリンチの記念写真】

SNAKEPIPE WROTE:

2017年はSNAKEPIPEにとってワクワクするイベント続きの年になった。
1982年公開の映画「ブレードランナー」の35年後を描いた「ブレードランナー2049」が今年の10月に公開され、アレハンドロ・ホドロフスキーの自伝小説を元に映画化された「エンドレス・ポエトリー」は11月に鑑賞済。
そして3つ目のイベント、「ツイン・ピークス The Return」も全て鑑賞し終わってしまったのである。

「ツイン・ピークス The Return」とは1991年に終了したテレビドラマの後、1992年に公開された映画「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」から25年後の世界を描いた全18章のテレビドラマである。
殺害された女子高生ローラ・パーマーに瓜二つの女性が、通称レッドルームと呼ばれる赤い部屋で「25年後にお会いしましょう」とクーパー捜査官に言うシーンがある。
それで実際に25年経った2017年に続編の企画が持ち上がったようで。
まさか、あのセリフから続編の制作が実行されるとは思ってもみなかったよ!
1991年のシリーズは章によって監督が変わる持ち回り制だったけれど、「ツイン・ピークス The Return」は全編リンチが監督だという。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては、んもぉ〜願ったり叶ったりの嬉しいお知らせ!(笑)
8月よりWOWOWで放映が開始され、最終話が12月で終了。
ROCKHURRAH RECORDSは字幕版で鑑賞していたので、二ヶ国語版で鑑賞していた方より少し遅いんだよね。
毎週楽しみに展開を追っていたので、終了してしまった今となっては少し体がしぼんでしまったような感じ。
気合入れて息を溜め込んでいたのが、すっかり吐き出されたような感覚かな。

25年前のテレビドラマ「ツイン・ピークス」の最後の章で、クーパー捜査官は既に2人存在していたんだよね。
レッドルームにいるクーパーと、現実世界にいるクーパー。
そして現実のクーパーは、なんとキラー・ボブに乗っ取られた「悪いクーパー」になっていた。
洗面台の鏡にヒビが入る程、強く額を打ち付けて血を流しながら鏡を見るクーパー。
映る姿はボブだったからね。
テレビドラマはそこで終わってしまい「クーパー、一体どうなるんだろう」と不安な気持ちでいっぱいになってしまった。
その後の世界が「ツイン・ピークス The Return」で描かれていたのである。
なんと!クーパーは更に分身を増やして3人になってたんだよね。
それは「悪いクーパー」「バカなクーパー」「普通のクーパー」とでもいおうか。
まるで「欽ドン!良い子悪い子普通の子」の「イモ欽トリオ」みたい。(古い!)
ミスターCとして、肩にかかる長さの髪にレザージャケットを着ているのが、ボブに乗っ取られた状態のクーパー。(画像の一番左)
ダギー・ジョーンズという名前で、また別の世界で生きていた保険会社に勤める男が、途中で「バカなクーパー」に様変わりする。(画像の真ん中)
このクーパーがずっとバカなままで、見ている側がヤキモキしてしまうんだよね。
それにしても3人を演じ分けたカイル・マクラクラン、大変だっただろうね。(笑)
「バカなクーパー」のような役は初めてじゃないかな?

「ツイン・ピークス The Return」の感想をまとめたいと思って書き始めたけれど、あまりにエピソードが多過ぎているし、それぞれ謎が残ったまま展開していないシーンがてんこ盛り!
リンチらしいと言えばそうなんだけど、文章にしようとすると困ってしまうね。
それぞれのエピソードについては「ネタバレ」というタイトルを付けて詳細を書いている方がいらっしゃるようなので、SNAKEPIPEは気になったシーンを書いていこうかな。
本当は1回のブログでは全然足りないんだけどね。(笑)

リンチが「もう映画を撮らない」と宣言した理由が「映画の商業主義化」だというのは、ホドロフスキーも同感のようで、アートな映画は一切評価されないのが現代みたいなんだよね。
良いとか悪いとかではないけれど、大抵のことはCG(コンピュータグラフィック)使って、あり得ないような状況をいとも簡単に映像化してしまう映画が多いのが最近の傾向かもしれない。
リンチは「ツイン・ピークス The Return」で、その2つにあえてアナログな手法で対抗しようとしたんじゃないかな。
リンチが得意にしているフィルムの逆回し、少しコマをずらしてわざとギクシャクした動きを見せたりする、まるで1920年代のSF映画みたいな方法ね。
それはまるで学生が一生懸命知恵を絞って実験映画作りました、みたいな感じ。
そう、結局は「イレイザーヘッド」なんだよね!(笑)
70歳をとうに過ぎたリンチが、原点である「イレイザーヘッド」精神を持ち続け、ハリウッドに感化されずに映像作品を制作しているところが素晴らしい!
今だったらCGだろう、というのを「あえて」稚拙に見せるところがポイントなんだよね。
もしかしたらその「ズレ」やバレバレの「逆回し」もCGでできるのかもしれないけど、「ギクシャク」させないと思うよ。(笑) 

レッドルームの「The Arm」の存在も「いかにもリンチ」だったね。
25年前に印象的なダンスを披露した小人の代わりみたいだけど、このオブジェクトはリンチが作ったに違いないよ。
「イレイザーヘッド」の赤ん坊も似た感じだし、リンチの絵画作品にも近いし。
レッドルームの特徴的な幾何学模様の床から、にょっきり生えている「The Arm」の存在自体がシュールだからね。
「ツイン・ピークス The Return」でのレッドルームの役割が謎だったな。
まるでクーパー捜査官を助けるための舞台みたいに見えたからね。 

リンチらしい映像ということで付け加えると、「ボブの誕生秘話」だった第8章。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては至福の時だったけれど、テレビドラマの映像ではないよ。(笑)
こんな実験映像を観て喜ぶのは、ほんの一握りだろうなと想像する。
リンチはカラー作品ももちろん素敵だけど、モノクロームの映像が素晴らしいよね。
最近はリトグラフ版画を手がけているリンチなので、やっぱりモノクロームに魅力を感じているのかもしれないね。
また「あえて」モノクロームの映像で、リンチの作品観たいなあ!
1945年に始まったボブの誕生物語は、この1回だけで終わってしまい、あの変な虫のような蛙みたいな物体を飲み込んでしまった少女の運命についての言及はなし!
謎は謎のままで良い、はリンチの言葉だからね。(笑)

その関連ということになるのか、ローラのお母さんのエピソードも尻切れトンボだったんだよね。
25年前に夫と娘を亡くし、あの家で一人暮らしをしているローラの母セーラ。
相変わらずのヘビースモーカーで、更にアルコールも相当飲んでいるみたい。
何かが映っていれば良いと思っているのか、意味のないテレビばかり観ているね。
そんなセーラがショットバーに行った時の怖いシーン。
これも説明なく、ここで終わってるんだよね。
やっぱりあの虫みたいな蛙飲んだの、セーラだったのかなあ。

これもアンチ・ハリウッドかなと思ったのは、ワン・シーンの長さ。
最近の映画だったらカット数が多くて、Aの顔、Bの顔のアップ、手の動き、なんて感じでカメラの動きが速いよね。
それを「あえて」間を取る、セリフがなくてもカメラが回っているような無駄な時間の多さに感心してしまった。
元々「ツイン・ピークス」の面白さは、無数に張り巡らされた伏線にあったので、まるで無駄のように思えるシーンやセリフの1つ1つにまで気を配り神経を集中させることだったので、「The Return」も同じような鑑賞法が必要なんだろうね。
リンチの部屋にいる女性がFBI同士の話があるから、部屋を出てバーで待っててと促されたシーンなどは、リンチのギャグなんだろうなあ。
切羽詰まった状況と、のんびり化粧してる女性の対比みたいな感じの。
それにしてもリンチは「ツイン・ピークス」の時にはダブルRダイナーのウエイトレスであるシェリーとキスしてたり、今回も美女をはべらせ、更にはモニカ・ベルッチとの共演も果たしている。
この助平根性がリンチらしさの秘訣なんだろうね。(笑)
リンチの俳優としての出番も多い「The Return」はリンチ・ファンには嬉しい限りだったね! 

どんなにキレイで可愛かった女性でも、25年経つと変わってしまうのか…。
それにしても目の当たりにするとショック大きいんだよね。
ダブルRダイナーのシェリーとノーマは、別人に見えるほどではなかったように思う。
ローラも少しふくよかになってるけど、そこまでの変化ではなかった。
えっ、うそ?と目を疑ってしまったのはオードリー!
オリジナルのドラマは90年代だったのに、まるで50年代の女優のような雰囲気を持ち、コケティッシュで少し生意気な美人だったオードリー。
きっとリンチもお気に入りだったに違いない。
確かリンチとの噂もあったように記憶しているよ。(笑)
ところが今はかなり残念な結果に。
25年前の「ツイン・ピークス」では、爆発した銀行にいたところで終わっていたっけ。
突然出て来たかと思うと話していることは支離滅裂で意味不明。
本当にあの小男が旦那なのかな?
最後にオードリーが出てきた時は鏡を見ながら泣き叫んでいるシーン。
一体どうしちゃったんだろうね?
それなのに、息子がいる設定なんだよね。
そして息子も極悪非道な悪いヤツ。
この点についての説明はドラマの中では全くされていないので、想像するしかないよね。 

「インランド・エンパイア」でちょい役だった裕木奈江が、大役もらっていたのには驚いた。
「ツイン・ピークス The Return」では印象に残る存在だったと思うよ。
とは言っても、、、誰だか分からない状態だったけどね?
顔は見えない、セリフといえるようなセリフはない。
「Naido」という名前で、後半にも登場してくる重要な役割なんだよね。
リンチ作品に出演した日本人は裕木奈江だけだと思うし、2作品に選ばれるなんてすごい! 
調べてみたら現在47歳だって。
その年でフルヌードとは、裕木奈江頑張ったね!(笑) 

25年前にも出演していた俳優の懐かしい顔が見られたのも嬉しかったね。
ツイン・ピークス保安官事務所のホーク、アンディ、ルーシーは相変わらず勤務していて、ローラの同級生だったボビーが保安官事務所に勤めていたのは意外だった。
精神科医のジャコビーは自らの意志や主義を訴えるための海賊放送(?)をしていて、その訴えに共感する片目のネイディーンは、外見が25年前と変化がなかったよ。
ネイディーンは音がしないカーテンの特許取得したのかもしれないね?(笑)
ジェームズは25年前に歌った曲「Just You」を披露し、エドは念願だったノーマとの再婚が果たせそうで良かった。
残念だったのは、ピート役だったジャック・ナンスと「丸太おばさん」役だったキャサリン・コウルソンが既に亡くなっていること。
「丸太おばさん」は「The Return」が遺作になったのかな。
2人共リンチとはゆかりのある人物だったし、「ツイン・ピークス」でも存在感がある俳優だったからね。
今調べて初めてピートと「丸太おばさん」が実生活で夫婦だったと知り驚いた! 

「ツイン・ピークス」に出演はしていなかったけれど、リンチ組と言って良いであろう女優が「The Return」には登場していたのも注目だったね。
ナオミ・ワッツは「マルホランド・ドライブ」で主役を演じ、その後から知名度がアップした女優。
「インランド・エンパイア」ではラビットの声を担当してたよね。
「The Return」ではダギー・ジョーンズの妻という役どころで、出演回数が多かったね。
気が強くてせっかちな妻を上手に演じていたよ。

ーラ・ダーンは「ブルーベルベット」で、恐らく「変な口の形」が気に入られ、キャスティングされたのではないかとSNAKEPIPEは予想しているけれど、その後も「インランド・エンパイア」では主役を勤めている女優ね。
リンチとは長い付き合いのようだけど、まさか「The Return」でダイアンとして登場するとは思わなかった!
「ツイン・ピークス」でクーパーが「ダイアン」とレコーダーに呼びかけていた、あのダイアンである。
本当にダイアンが存在しているのかどうかが不明だったのに、「The Return」で実在の人物として描かれることになるとはびっくり!
ローラ・ダーンも裕木奈江と同じようにヌードを披露してたけど、こちらは50歳!
熟女のヌード、多かったなあ。 

「ロスト・ハイウェイ」「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」の3作品、SNAKEPIPEが「迷宮系3部作」と名付けた作品に共通するもう1つの世界という概念が「ツイン・ピークス The Return」にも継承されているので、理解できないような事がいっぱいなんだよね。
舞台が1つだけじゃないし、登場人物もドッペルゲンガー状態。
リンチが瞑想の中で思いついたか、夢で見たストーリーなのかもしれない。
以前「マルホランド・ドライブ」の感想をまとめた時に書いた文章。

自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!

もしかしたら「ツイン・ピークス The Return」にもあてはまるのかもしれないなあ。

最終話は一体どんな展開になるのだろうとドキドキしていたけれど、なんとまあ!
こんな終わり方で良いの???
あっけにとられてしまったSNAKEPIPE。
この終わり方では次を期待してしまうんだよね。(笑)

まずは「The Return」を鑑賞し直してみよう。
前述したようにちょっとした会話や意味がないと思われた伏線に気付くかもしれないしね?
あれはどんな意味だろうと思い巡らせるのが「ツイン・ピークス」の醍醐味。
もし謎が解けなくても全く問題ない。
リンチが監督した映像を鑑賞できるだけで、SNAKEPIPEは幸せだから!(笑)