好き好きアーツ!#55 鳥飼否宇 part24−指切りパズル-


【「指切り」から連想してROCKHURRAHが制作したイメージ・ビデオ】

SNAKEPIPE WROTE:

ついに待ちに待った我らが鳥飼先生の新作が発売された!
タイトルは「指切りパズル」。
事前に得た情報では発売日が9月29日だったため、「整形水」を観に行った池袋で新刊を手にする予定だったんだよね。
ジュンク堂の検索機で確認すると「発売前 10月1日発売予定」になってるじゃないの!
Amazonの嘘つき!とブツブツ言いながら、書店を後にしたSNAKEPIPE。
10月1日に、まずは電子書籍を手に入れたのである。
あとで保存用に書籍も手に入れる予定だよ!

まずは出版元である南雲堂のサイトから、あらすじを転載させて頂こう。 

綾鹿市動物園で行われるチタクロリンのコンサート。
予想以上の集客で混乱する中メンバーの飯岡十羽が撫でようとしたレッサーパンダに指をかみ切られてしまう。
チーフ警備員の古林新男は綾鹿署の刑事・谷村の聴取に応じるうちになし崩し的捜査に協力していく。
そして関係者次々に襲われて指を切断される事件が続いていく。

今回の舞台は綾鹿市!
やったー!「綾鹿市シリーズ」だ!(笑)
 2018年の「隠蔽人類」以来になるんだね?
あらすじには、谷村警部補の名前もあり、ますます嬉しくなってしまう。
寝る間も惜しみながら、一気に読み進めたSNAKEPIPE。
ページをめくるごとに、顔がニヤニヤしてしまう。
なぜって、デヴィッド・リンチが「ストレイト・ストーリー」の後、「マルホランド・ドライブ」を発表した時みたいな感じだから!(笑)
分かりづらい例えかもしれないけど、一言でまとめると「戻ってきた!」かな?
ROCKHURRAH RECORDSでは、鳥飼先生の小説を2倍以上楽しむ秘訣があることは、今までまとめてきた「トリカイズム宣言」でも実証済。
鳥飼先生の小説に登場する人物名が、実在するミュージシャン(主にニュー・ウェイヴ系、ノイズやアヴァンギャルド、プログレなど)からの名前のパロディで、解明することに喜びを感じているんだよね。(笑)
「指切りパズル」では、「名前ミステリー」が数多く存在していたので、「戻ってきた!」という第一声が飛び出した、というわけ。
ここまで「名前ミステリー」があったのは、2008年の「爆発的」以来かもしれないね? 

鳥飼先生の小説は、章ごとに感想を書くことが多かったけれど、「指切りパズル」は登場人物ごとにまとめていこうかな。
そして「名前ミステリー」の解読も併せて書いてみよう!
ROCKHURRAHが解いたので、SNAKEPIPEはお役に立ってないんだけど。(笑)
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください! 

「指切りパズル」 の舞台となるのは、綾鹿市動物園。
チーフ警備員である古林新男(こばやしあらお)の目線で話が進められていく。
58歳の古林はいたって真面目な性格で、趣味は推理小説を読むこと。
特徴的なのは、「笑っていいとも」にクイズに出演していた佐野量子みたいに「人を動物に例えて」表現するところじゃないかな?(笑)
そして古林自身はラクダ、もしくはロバに似ているらしい。
今回は、古林が例えた通りの動物画像を載せながら、人物をまとめていこうと思っている。
そして古林新男を「こりん」と読み、新しい男を「ニューマン」にすると、ワイヤーのコリン・ニューマンになったよ!(笑)
ワイヤーってどんなバンドなの?とROCKHURRAHに聞いてみようか。

ワイヤー(WIRE)は、70年代パンクの時代に出てきたバンド。
パンクから初期ニュー・ウェイヴに移行していく時に重要な役割を果たし、数多くのミュージシャンや後に出てくる音楽ジャンルに多大な影響を与えたユニークな存在。
同時代の日本ではそこまで有名な人気バンドではなかったけれど、独特のセンスがある曲が多く、ROCKHURRAHも大好きだったという。
そんなワイヤーのメンバーの名前がパロディとなっているなんて、嬉しくなっちゃうね。(笑)

デビュー当時の珍しい動画があったので、載せてみようか。 

荒削りでパンクっぽいよね!
さすが1977年のイギリスだね。 

動物園関係者で進めていこう。
綾鹿市動物園の園長である田名仁久(たなひとひさ)は、ヒグマに似ているらしい。
こぐまちゃんたち、なんてかわいいんでしょ!(笑)
田名園長も動物の赤ちゃんをSNSで配信するなど工夫をして、動物園の集客に努め、成功しているという。
動物アイドルグループ、TiCrP(チタクロリン)を綾鹿市動物園に呼び寄せたのも園長とは、勉強熱心さに恐れ入るよ。
チタクロリンについての説明はあとにして、田名仁久の名前を解読してみようか。
仁久を音読みして「にく」にすると、ホークウィンドのニック・ターナーになるよ!(笑)

再びホークウィンドってどんなバンド?とROCKHURRAHに聞いてみる。
1970年にデビューしたイギリスのバンド。
なんと50年以上経った現在でも活動している長寿バンドなのだ!
極悪レミーでお馴染み、モーターヘッドのレミーが元在籍していたことでも知られている。
サイケデリックやスペース・ロックなどと呼ばれているけれど、ヌードダンサーがステージで踊ったりパフォーマンス的な要素のあるバンドとしても有名。
ではホークウィンド、1972年のヒット曲「Silver Machine」をどうぞ!(笑)

この曲は割とポップで聴きやすいロックだね。
途中のギター・ソロがサイケっぽいのかな。

手足をバタつかせながら話をする様子がペンギンに似ているというのは、飼育員の霧師レミ(きりしれみ)。
慌てふためく、ちょっとおっちょこちょいな雰囲気がよく分かるよね。
名前については、前述したホークウィンドのレミー・キルミスターで間違いないでしょう。 
レミは、そのまんまだしね。(笑)
霧師レミはレッサーパンダの世話をしている。
その時、事故が起きてしまうのである。

ひゃー!かわいいっ!(笑)
鳥飼先生の「パンダ探偵」にもレッサーパンダのミンミンが登場したっけ。 
綾鹿市動物園のレッサーパンダは3匹いて、名前がルイス、グレイ、ギルバートなんだって。
なんと、これがワイヤーのメンバーであるグレアム・ルイス、ロバート・グレイ 、ブルース・ギルバートから来ているんだね。
コリン・ニューマンは人間だったけど、他の3人はレッサーパンダとは!(笑)
こんなにかわいいレッサーパンダでも、人間の指を食いちぎることができるんだね。
調べてみると食肉類とのことなので、撫でたりするのは厳禁だよ!

動物園の警備員である泥部武六(どろべたけろく)は、精悍な顔立ちでジャッカルのようだという。 
警察官や警備員のような人を守る職業の人は、強そうな顔だと安心感が増すよね。
制服というのも武器の一つだと思うけど、体格とか顔も重要なポイントだから。
それにしても名前で「泥部」っていうのはあるのかな?
どうやら山形県に「どろぶ」と読む村があったようだけど、現在は廃村となっているようだね。
 泥部を音読みすると「でいぶ」で武六は「ぶろく」。
ホークウィンドのデイヴ・ブロックのでき上がり!(笑)
このパロディ、すごく好き!

もう一人の警備員はティモシー・ブレイク。
イギリス人で、今年採用になったばかりの新人警備員だという。
どういう経緯で日本に来ていて警備員になったのか不明だけど、意思の疎通に全く不便がない流暢な日本語を話しているよ。
ラブラドールレトリバーに似ているらしいので、ブレイクも見た目、合格だね!(笑)
ブレイクは、ホークウィンドのティム・ブレイクでどうだ!
同じイギリス人なので、さほどの違和感もなかったね。

ロシアのフィギュアスケート選手である、ザギトワが溺愛していることで有名になった秋田犬。
その秋田犬に似ているのは、綾鹿市動物園の副園長である一日市愛(すていちあい)。
一日市は地名で新潟や岡山に「ひといち」や「していち」として存在するようだけど、「すていち」は珍しいんじゃないかな?
この名前には頭を悩ませたROCKHURRAH。
そしてついに解答を発見!
なんと先に載せたホークウィンドの動画で、前衛アートのパフォーマンスみたいなことをやってる女性の名前がステイシアと気付いたらしい。
「すていちあい」とステイシア。
いい線いってるんじゃないかな?(笑)

綾鹿市動物園の創設者であるムアコック博士の銅像は、正門に建っているという。
ムアコックとは、イギリスの有名なファンタジー・SF作家であるマイケル・ムアコックで間違いないね。
エルリック・シリーズなどで日本でも人気だけど、ホークウィンドのメンバーとしても活動していたロック好きの作家なんだとか。
二足のわらじ、今だったら二刀流と言うべきか?(笑)

続いて動物アイドルグループ、TiCrP(チタクロリン)のメンバーを紹介しよう。
メンバーそれぞれのイニシャルからチタクロリンというグループ名ができているとのこと。
Tiは飯岡十羽(いいおかとわ)、ニックネームはトワワ。
元素記号ではチタンを意味し、そこから連想される動物としてTiger(トラ)をマスコットに設定してるんだとか。
最近のアイドルだったらこうした「こじつけ」での命名もしてるのかもしれないね?
それにしても飯岡十羽という名前は、何かのパロディなのかな。
トワワと聞いて連想したのは、テイ・トウワとか、トワ・エ・モワくらい。(笑)
どちらも違うだろうなあ。
ROCKHURRAHも思いつかないと言う。

ハーフで帰国子女である六本木キャサリンのイニシャルはCr。
元素ではクローム、マスコットはCrocodile(ワニ)とは!
ワニをペットにしていたのは「コインロッカー・ベイビーズ」のアネモネだったね。(笑)
六本木キャサリンにいたっては、参考にする人名すら思い浮かばないよ。
そもそも名字で六本木ってあるのかな?(笑)
調べてみたら、全国に2400人実在するとは驚き!
いるんだね、六本木さん!

丹波凛(たんばりん)の愛称はリンリン。
これはもうリンリン・ランランしか浮かばないよ。(古い!)
調べてみると、実在している丹波凛さんが複数人いて、びっくり!
丹波凛の場合はイニシャルを無視し、リンの元素記号であるPが採用されている。
そのためマスコットはパンダなんだって。
パンダといえば、「パンダ探偵」のナンナン、元気かなあ?  
最近話題の上野動物園の双子のパンダ、シャオシャオとレイレイもかわいいよね。
映像が流れると、顔がニンマリしちゃうもん。
動物の癒やし効果は絶大だね!

チタクロリンのマネージャーは、スローロリスに似ている出口美紅(でぐちみく)。
スローロリスというのはリスではなくて、ロリスという夜行性の猿の一種なんだね。
えっ、わざわざ書かなくてもみんな知ってるって?(笑)
出口美紅は、ホークウィンドのディック・ミックのパロディで間違いないでしょう!

チタクロリン(通称チタクリ)は以上3名で構成されるアイドル・グループなんだよね。 
全国の動物園でプロモーション活動を行い、ファンを増やしているという。
チタクリには「ピンクの旗」「消えた椅子」「わたしはハエ」などの曲があるようで、これらは全てワイヤーの曲やアルバムのタイトルなんだよね。
ROCKHURRAHはこれらの曲から即座にワイヤーを連想し、そこから「名前のパロディ」を解明していったらしいよ。

チタクリには熱狂的なファンがいるので、続けて紹介していこう。

マレーグマに似ているとされたのは多門悦治(たもんえつじ)。
トワワのファンらしい。
声が野太くて顔がコレとは、あまり関わりたくないタイプに見えるよね。
それでアイドルの追っかけとは、ちょっとびっくり。
多門悦治は、クロームのダモン・エッジだろう、とROCKHURRAHが言う。
ここで3つ目のバンドが登場したよ。

クロームは1970年代後半に登場したサンフランシスコのバンドで、暴力的で歪んだノイズが散りばめられたような音楽を得意としていた、とはROCKHURRAHによる説明ね。
SNAKEPIPEもインターネット・ラジオで聴いて「この曲いいね」と話すと、「クロームだよ」と教えてもらったことがあるよ。
ガレージとインダストリアルのミクスチャーみたいでカッコいいんだよね!(笑) 

ファンのもう一人はコモドドラゴン似の栗戸縁男(くりどへりお)。
獰猛そうで、危険な雰囲気を感じる男なんだろうね。
実際コモドドラゴン(コモドオオトカゲ)は、強力な歯を持ち歯の間から毒の注入ができる構造を持っているらしいよ。
コモドドラゴンには出会わないほうが良いね!
栗戸縁男も上述したクロームのメンバーであるヘリオス・クリードのパロディで良いみたいね?

綾鹿中央病院の看護師長は西紋菫(さいもんすみれ)。
画像はマヌルネコで、寒冷地に住む野生のネコとのこと。
スナネコは知っていたけれど、マヌルネコは見たことないかも。
この動物に似てると言われても、即座に「あの雰囲気ね!」と反応できないなあ。(笑)
そしてこの西紋菫、音読みにすることで謎解きできたよ。
「さいもんきん」にすると、ホークウィンドのサイモン・キングのパロディと判明!
スミレの漢字がこの字とは知らなかったなあ。

義指製作者の針金一五四(はりがねいつよ)はコツメカワウソに似てるんだとか。
とてもカワイイ動物だけど、人間の顔になったらどうなんだろう?(笑)
最近はペットとしての人気もあると聞くけれど、同時に密輸事件も摘発されているよね。
密輸の途中で死亡する報道もあり、聞くたびに怒りがこみ上げてくる。
本当にこんなことはやめて欲しいよね!
話を針金一五四に戻すと、「これはそのままワイヤーだね」とROCKHURRAHが言う。
針金がワイヤーで、一五四はワイヤーの3rdアルバム「154」とのこと。
それにしても針金さん、実在する名字なのね。(笑)

「綾鹿市シリーズ」で、以前より馴染みのある綾鹿警察署の谷村警部補も登場する。
古林から見た谷村警部補は、笑っているように見える顔から「世界一しあわせな動物」と呼ばれるクオッカに似ているそうだよ。
クオッカ、とてもカワイイね!
逆説的」では、谷村警部補はキューピー人形に似ている、とされていたっけ。
どっちにしても童顔の「とっちゃん坊や」(死語?)ってことだね。
だみ声が特徴とされていた点が、「指切りパズル」には書かれていなかったよ。
かわいい顔でだみ声っていうギャップが面白かったんだけどね。(笑)

谷村警部補とコンビの南巡査部長も登場してるよ!
赤ら顔をした南巡査部長は、ニホンザルにされてしまった。(笑)
この特徴は「逆説的」にも描かれているね。
谷村警部補と南巡査部長は、動物園のチーフ警備員である古林に捜査の協力を求め、事件の解決に挑む。
チタクリがアイドル3人組なら、こっちはおっさん3人組ってとこだね。(笑)

「指切りパズル」は、連続指切断事件という猟奇的な題材を扱っているけれど、「親指がなくなったらヒッチハイクできない」や「中指がなくなったらファックサインができない」などの例えに笑ってしまう。
残酷な事態なのに笑いが出る、というセンス、最高なんだよね!(笑)
谷村警部補がわざとなのか、いつまでたっても「チタクリ」を言い間違えるところには、プッと吹いてしまった。
きっと社内で変な人だと思われてしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)

動物園とアイドルとミステリー、そして名前のパロディまでミックスされた「指切りパズル」の世界に、ぐんぐん引き込まれた。
連続切断事件の途中で、ROCKHURRAHが「わかった!」と言う。
何が分かったのかを聞き、「そんなバカな」と答えたSNAKEPIPE。
ところが読了して、ROCKHURRAHの「そんなバカな」意見通りだったことに驚いてしまった。
まさかそんな結末?と腰を抜かすこと間違いないね!
そして鳥飼先生の作品に慣れ親しんでいるために、結末を予想してしまったROCKHURRAHにも拍手だよ。(笑)
「指切りパズル」の「名前パロディ」に関しては、SNAKEPIPEの出る幕一切なし。
双頂山(ふたかぐめやま)は、「もしかしてツイン・ピークス?」って思ったけど。(笑)

現在ROCKHURRAHと2巡目の読書中。
鳥飼先生の著作って、何度読んでも面白いんだよね。
今回も楽しませて頂き、ありがとうございました! 

好き好きアーツ!#56 鳥飼否宇 part23−パンダ探偵-

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【絶滅危惧種をモデルにしたアンディ・ウォーホル、1983年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

5月22日、恐る恐る郵便受けを確認する。
あっ!あったーーー!(笑)
2周間ほど前「官能的」 について書いた冒頭、「パンダ探偵」について触れたSNAKEPIPE。
ついに鳥飼先生の新作が発売されたのである。
ネット予約注文をしていたSNAKEPIPEは、発売日当日に自宅で受け取ることができ、満面の笑みを浮かべる。

パンダといえば。
上野動物園でパンダを見たことがないROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
動物園には行ったけれど、残念ながらパンダ不在だったんだよね。
ぎゃっ、11年も前のことだったとは!
ニュースなどで「パンダの赤ちゃん動画」などを見かけると
「かわいい〜!」
と2人で目を細め、ほっこりした気分になる。
癒し効果バツグンだよね!(笑)

SNAKEPIPEの長年来の友人Mは、黒柳徹子に負けないくらいパンダが大好きで、パンダが描かれたグッズを見つけると必ず駆け寄り、商品を手に取る。 
グッズを見つける度に毎回同じ行動を繰り返す友人Mの先手を打って、「ほらパンダ!」「あそこにも!」とパンダ探しに付き合うSNAKEPIPE。
結局悩んでも購入することはほとんどないんだけどね。(笑)

パンダはWorld Wide Fund for Nature(世界自然保護基金)のシンボル・マークにもなっているよね。
地球上の生物の代表に選出されたと言っても過言ではないよ。
そして誰もが知っている動物ということになるんだね。
そんなかわいいパンダが探偵だって?(笑)

最初にタイトルを知った時、鳥飼先生の「昆虫探偵」を思い出したSNAKEPIPE。
「昆虫探偵」は、ある朝目覚めると人間から昆虫になっていたという、まるでカフカの「変身」のような書き出しから始まっていたね。
「パンダ探偵」に登場するナンナンは、変身することなく最初からジャイアントパンダだよ!
講談社のHPに載っているあらすじを転載させていただこう。 

「シロクロはっきりつけてやる!」
傍若無人に世界を支配していたヒトという種が絶滅して200年。
アフラシア共和国は動物たちのユートピアとなっていた。
ジャイアントパンダの若雄(わかもの)ナンナンは、先輩探偵であり、ライオンの父とトラの母から生まれたライガーのタイゴに憧れ、探偵事務所に所属することに! 
白黒ツートーンの動物誘拐事件、密室から消えた草食動物の干し草の謎、共和国大統領暗殺事件など、動物の国で起こる様々な事件に立ち向かう!

ユーラシア大陸とアフリカ大陸と呼ばれていた地域は、アフラシア共和国になっているんだね。
人間がウイルスによって絶滅した、なんてどこかで聞いたことがあるじゃない!
鳥飼先生がいつ構想を練られたのかは不明だけれど、予知能力をお持ちなのかもしれない。
もしくはタイムワープで直近の未来をご覧になったとか?

動物達は人類と同じように、いつしか二足歩行をして言葉を話す。
肉食動物は草食動物を襲うことはなく、平和に暮らしているという設定。
動物達が悠々自適な生活を送っている世界ってどんなだろうね。
そんなアフラシア共和国にある「アニマ探偵事務所」に依頼される事件が「パンダ探偵」が描かれている。

「パンダ探偵」の主人公ナンナン。
とても小柄で運動が苦手だという。
それでこの画像を選んでみたけど、ナンナンのイメージに近いかな?(笑)
自分は非力でできることは少ない、と自覚しながらも見た目のキュートさと頭の回転の良さを武器に探偵として成長していく。
ここまでかわいいと「雄性(だんせい)」として意識されるのは難しいかもしれないね?
美しい「雌性(じょせい)」に心が揺らいでも、相手から頭を撫でられて終わりそう。(笑)
雄(おとこ)らしさに憧れるのも無理ないかも。 

上述のあらすじにも登場したライガーのタイゴ。
「アニマ探偵事務所」のエースだという。
無知をさらけ出すのは恥ずかしい限りだけど、ライガーの存在を知らなかったSNAKEPIPE。
てっきり鳥飼先生の創作だと思っていたよ。
調べてびっくり、本当にいるとは!(笑)
凛々しい顔立ちに、縞模様のある足。
ライオンとタイガーでライガーなんだね。
ちょっと荒っぽいけど頼りがいがあるタイプ。
ナンナンが慕うのも納得だね!

「アニマ探偵事務所」の所長であるアフリカゾウのロックス。
ロックスが本気を出すと、ライガーのタイゴでもタジタジになるんだね。
力はあるけど、気も優しい。
「昆虫探偵」の時にはクマバチが所長だったので、似た雰囲気に感じるよ。
ドーンと腰を据えて構えているアンカーとして、所長にピッタリだよね!
「パンダ探偵」は3つの章から成る連作短編集で、全編通して登場するのはこの3獣(にん)。
どんな事件が待ち構えているのか?
章ごとに感想をまとめていこうかな! 
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

第一話 ツートーン誘拐事件

子牛の失踪事件が発生し、「アニマ探偵事務所」に捜索依頼がくる。
その事件を皮切りに、次々と誘拐事件が連続する。
狙われるのは、何故かツートーンの動物ばかり!
これは一体何故なのか?

ツートーンと聞いて、一番最初に連想するのはやっぱりSKA!

この曲をよく聴いたのはツバキハウスの火曜日、ロンドンナイト!
踊りまくってたなあ!(遠い目)
このツートーンではない?およびでない?(笑)

第一話に登場するツートーン・カラーの動物達。
左上はホルスタイン、右はマレーバク。
その下はパンダだけど、左下は一体なんだろう?
これはラーテルというイタチの仲間だという。
背中の白い毛が生えている部分が非常に硬いらしい。
コブラなどの毒にも耐性があり、何でも食べることから「世界一怖いもの知らずの動物」と呼ばれているとか?
あまり遭遇したくない動物かもね。 

ツートーン誘拐事件は、タイゴの鋭い勘により無事に解決する。
動物や生物、それぞれの事情があることが分かるね。
それにしても一体誰が目隠しをしたのか気になるSNAKEPIPEだよ。

第二話 キマイラ盗難事件

いつの間にか探偵事務所で探偵になっているナンナン。
仕事も板についてきて、一頭(ひとり)でも事件を解決できるほどになっている。
アフラシア警察が手一杯のため、「アニマ探偵事務所」は大忙し。
今回先輩探偵のタイゴと新入りナンナンが担当するのは、保管庫にあった備蓄草の盗難事件である。 

そもそもキマイラってなんだろう? 
調べてみるとギリシア神話に登場する怪物とのこと。
「ライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ。それぞれの頭を持つとする説もある。強靭な肉体を持ち、口からは火炎を吐く。」とWikipediaに書いてあるね。
載せた画像は、スペインのプラド美術館が所蔵しているJacopo Ligozziが描いたキマイラのドローイング(1590 – 1610作成)。
後ろはドラゴンになっているんだね。
複数の動物が合体していることから、種や品種が異なる植物や動物から生まれた子孫であるハイブリッドもキマイラと言えるのかな。
例えばライガーのタイゴもライオンと虎の子供だからキマイラ(ハイブリッド)なんだね。 

日本でキマイラと言えば「鵺」になるのかな。 
鵺とは、平安時代後期に出現したとされる妖怪だという。
猿の顔、狸の胴体、虎の手足を持ち、尾は蛇という姿だと平家物語に書かれているんだって。
その姿を歌川国芳が浮世絵にした画像がこれ。
ギリシア神話は紀元前に文字として記録されていたというので、平家物語のほうが2000年くらい後の文章だけど、発想は似てるよね。
ギリシア神話を読んで真似たとは考えにくいので、きっと鵺は実在したんだろうね!(笑)

話を「キマイラ盗難事件」に戻そうか。
第二話に登場する動物たちがこちら。 
何故か皆様、右を向いてるんだよね。(笑)
左上のラバは雄のロバと雌のウマから生まれたハイブリッド種。 
タイゴの仲間ってことだね。
ちなみに雄のウマと雌のロバとの間に生まれるとケッティと呼ぶことに決定してるんだって。(ぷぷぷ!)
その下は立派な角のあるサンバーで、隣は美しい馬!
右上はご存知カバなんだけど、カバについて説明されているところが興味深かったよ。
カバは獰猛で、草食とされているけれど肉も食べるという。
更に汗が赤色というのも知らなかったよ!
えっ、常識なの?(笑)

第二話で美獣(びじん)警部、レッサーパンダのミンミンが登場する。
ジャイアントパンダと同じで、タケを食べるんだね。
こんなにキュートなミンミンなのに、狐や狼を部下に従えているとは、アンバランスさが一層魅力的!
ナンナンがポーッとしちゃうのは当然かも。(笑)

備蓄草が盗まれた事件についても、タイゴが真相を明かし一件落着!
物知りじゃないと解決できない事件だったよね。
SNAKEPIPEはそういう知識がなかったので、読後検索して納得したよ!(笑)

第三話 アッパーランド暗殺事件

ついに最終話である。
アフラシア共和国の大統領である、チンパンジーのボノが暗殺されてしまう。
犯獣(はんにん)と疑われ、逮捕されてしまったタイゴを救うべく、ナンナンが奮闘するのである。

アフラシア共和国は3つの地域に分かれているという。
庶民が暮らすロウアーランド、非居住地区で政府の施設が建つミドルランド。
そして枢機院に所属する動物達が住むアッパーランドである。 

そのアッパーランドに住む動物達がこちら!
左上のチンパンジー、時計回りにゲラダヒヒ(用心棒)、ゴリラ、マントヒヒだね。
まるで「猿の惑星」みたいだけど、もちろん他にも枢機院に属する動物はいる。
アジアゾウが大統領だったこともあるし、ヒグマの名前も出てくるね。
枢機院のシステムはよく分からないけれど、アフラシア共和国には階級がある、ということは理解できるね。

アッパーランドには厳重な見張りが置かれているという。
日中、空からの監視はイヌワシ。
夜間にはガラガラヘビとワシミミズクが目を光らせる。
とても外部からアッパーランドへの侵入は不可能と思われるのに、ボノ大統領が殺されてしまうのである。
第一発見鳥(しゃ)はコクマルガラスのジャッキー。(画像右上)
ツートーン仲間のため、ナンナンに情報を与えてくれるのである。
ナンナンは、タイゴを助け出すことができるだろうか?

ナンナンの活躍はとても気になるところだけど、SNAKEPIPEが興味を持ったのはバーバリーシープのダッド!
カプリ教の教祖であり、アフラシア共和国に革命を起こすべく活動しているという。
バーバリーシープの画像を検索すると、教祖にピッタリの風貌!
穏やかな眼差しを持ち、まるで涅槃の境地に達しているようじゃない?
ダッドが教祖だったら人気あるだろうね。(笑)

ナンナンの頑張りが役に立ち、事件は無事に解決する。
第三話は密室殺獣(さつじん)に加え、幾重にもなるトリックもあり、読み応え充分!
なるほどねえ!と感心することしきりのSNAKEPIPE。
「いかに早くトリックを見抜くか」に重きを置いて推理小説を読む人がいるようだけど、そんな方々の中に解けた人はいたのかな?
やっぱり「かなりの物知り」じゃないと難しいだろうね。(笑)

「パンダ探偵」はほのぼのした雰囲気の中に、ナンナンやタイゴの個性が確立されていて、読み進めるうちにどんどん引き込まれていく。
2頭(ふたり)とは、すっかり知り合いになった気分だもんね!
今まで聞いたことがない動物を知ることができたのも楽しかった。
SNAKEPIPEもアフラシア共和国に住みたいな、と思ってしまうほどだよ。
何の動物になろうか、思案中である。 (笑)
もしかしたらまたナンナンに会えるのかな?
そんな日が来ることを期待して待っていよう! 

好き好きアーツ!#55 鳥飼否宇 part22−官能的-

【増田米尊の視線はこんな感じ?Tバックはダメだったね!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSに衝撃が走ったのは、先月のことだ。
大ファンの作家、鳥飼否宇先生の新作が発売されるニュースを知ったからである!
タイトルは「パンダ探偵」、発売予定日は5月22日だという。
狂喜乱舞しながらも、すぐにネット予約をするSNAKEPIPE。
これで発売と同時に発送、もしくは発売日の前日には手元に到着するかも、などとほくそ笑む。
ひとまずは安心、安心!(笑)
 
予約完了で胸は撫で下ろしたけれど、5月22日発売予定だからね。
もう少しの辛抱と分かっていても、待ちきれない!
そこで今週は鳥飼先生の著作を振り返る企画「トリカイズム宣言」を書いてみよう。

2016年11月「逆説的」について感想をまとめた時、

「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!

と書いているSNAKEPIPE。
そうなのよ、感想を書いていない過去の鳥飼先生の著作は残り2冊だけなんだよね。
発表された順番とは逆になってしまうけれど、 今回は「官能的」について書いていこうかな!

「官能的」は、「綾鹿市」という架空の場所が舞台になっている4つの連作短編集なんだよね。
主人公は増田米尊(ますだよねたか)。
名を訓読みではなく音読みにすると、本質がはっきりする「名は体を表す」抜群の命名法!
ちょっと「なまるように」発音すると、あーら不思議。
意味のある言葉に聞こえてくるじゃない?(笑)
増田米尊については、「絶望的」をまとめた際、詳しく説明をしたSNAKEPIPEだけれど、今一度紹介しておこう。

綾鹿科学大学大学院数理学研究科(長い!)の助教授(現在は准教授?)という肩書を持つ増田米尊だけれど、研究内容に難がある。
「月経周期が性的欲求に及ぼす影響のフーリエ解析によるアプローチ」のような、増田米尊が個人的に興味を持つ題材について論文を発表しているんだよね。 
フィールドワークと称して、論文を書くための証拠固めをする。
つまり「覗き」や「女性宅のゴミを漁ったりする」ような犯罪者スレスレ(犯罪確定?) の行動を取るのである。
増田米尊の特徴はそれだけではない。
性的に興奮するとアドレナリンが脳内をかけめぐり、天才的頭脳の持ち主に(生物学的)変態するんだよね!
その変態(メタモルフォーゼ)のおかげで、 綾鹿市で起きた事件を解決へと導くのである。
(性的)変態が(生物学的)変態をするのが増田米尊、ということになるね。(笑)
では「官能的」の章ごとに感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

夜歩くと……漸変態に関する考察

フィールドワークに関しても少し語られただけなので、「これぞ増田米尊!」という変態行為が少なかったのもファンとしてはちょっと物足りない。

前述した「絶望的」の感想の中でこのような発言をしているSNAKEPIPE。
増田米尊は変態だ、という公式ができあがっているからね。
「官能的」は1ページ目の1行目から、変態性が露出している。
そうよ、これ、これ!(笑)
増田米尊は研究対象として女性のあとをつけまわす、いわゆるストーカー行為に及んでいるのである。
ターゲットにした理由は、女性のヒップが好みだったから!(笑)

増田米尊には好みに関する明確な基準があるようで、女性の下着はシンプルで色は白が望ましいとのこと。
そして下着で最も重要なのはクロッチで、その線(縫い目?)を偏愛していると聞くと、本物だわ!と感心してしまうSNAKEPIPE。
ここまで「こだわり」を持っている人こそ、変態と呼ぶにふさわしい!(笑)
増田米尊が夜な夜な、本当の意味での尻を3日もかけて追いかけた後、殺人事件が起こってしまう。
なんとターゲットにしていた女性が殺されてしまうのだ!

「綾鹿市シリーズ」ではお馴染みの谷村警部補と南巡査部長が登場する。
「逆説的」で語り部だった五龍神田巡査部長もいるね。
見覚え(聞き覚え)のある名前を発見すると、昔からの知り合いって気分になるのが不思議だよ。
そして容疑者となってしまった増田米尊、綾鹿署で取り調べを受けてしまう。
谷村警部補と増田米尊って同類だったっけ?(笑)

「官能的」の登場人物は他に、千田まり(血溜まり?)という、増田助教授の応用数理学を選択している学生がいる。
千田は「増田米尊の変態様式論」を書き上げるため、増田米尊の取材を続けているという変わり者なんだよね。
増田米尊を知り尽くしている女学生がいるとは!
そして千田といつも行動を共にしているのが、マクロリンコスという日本人ではない研究生待遇、通称クロちゃんである。 
増田米尊の変態による謎解きに加え、千田とクロちゃんの手助けにより事件は解決するのである。

孔雀の羽に……過変態に関する研究

増田米尊が双眼鏡を覗いている。
もちろん言葉通り「覗き」のためである。
「知り合いのバードウォッチャー」から勧められたスワロフスキー社製の双眼鏡だって?
その記述から思い当たる人物は「観察者シリーズ」の鳶さんしかいないよね。(笑)
ちなみにEL42 SWAROVISION WB(8.5×42)の定価325,000円(税別)ね。
かつて写真撮影が趣味だったSNAKEPIPEなので、カメラにもピンきりの値段があることは重々承知している。
双眼鏡も同様なんだろうね。
やっぱり高いのには理由があるったい。(笑)
調べてみるとスワロフスキーの双眼鏡、動画があったので載せておこうね。 

こんなに素晴らしい双眼鏡を研究費で購入できるとは、大学教授(もしくは助教授)って、良い身分だよね。
本来の目的とは別の増田米尊の趣味のためなのにね。
一文に何度も「の」 を書いてしまったよ。(笑)
筒井康隆の小説「大いなる助走」に登場する山中道子みたいだね。

そして増田米尊は偶然、向かいのビルにいる初恋の相手を発見してしまうのである。
高校の同級だった都美也子(段田男、みたいな命名法?)を執拗に追いかけ、「ミヤコちゃんに関する調査と研究」と題した「ミヤコちゃんレポート」を作成していたという。
その傾向は助教授になった今と同じだよね。(笑)
増田米尊は50代の設定なので、およそ30年以上前に想いを寄せた女性との再会は、胸ときめくものだったはず。
それにしても…。
30年以上前の同級生に会って、分かるかな?
見目姿がすっかり変わってしまうのではなかろうか。
増田米尊は特殊な嗅覚を持っていそうなので、ミヤコを見間違うことはなかったんだね!

そしてまたミヤコを追いかける行動に出た増田米尊は、殺人事件に巻き込まれてしまうのである。
谷村、南の警察関係者が登場、千田とクロちゃんのヘルプにより増田米尊が変態後、事件の鍵を発見するという構図は同じで、事件は無事解決。
あんなにご執心だったミヤコを失ったのに、増田米尊がさほど悲しんでいないことに違和感があったかな。
最後のセリフは「いかにも増田米尊!」だから、これで良いんだろうね。(笑)

この章の中で印象的だったのは「インスペクション・パラドックス」と、「6人の人間を介すると世界中の人につながる」という「六次の隔たり」について言及しているところ。
まるで松井冬子の代表作「世界中の子と友達になれる」みたいだけど、SNSはこの理論をもとにしているんだって?
Facebookで実際に検証が行ったところ、4.74人で世界中の人とつながることが判明したとか。
こういう学問、非常に興味深いよ!

囁く影が……完全変態に関する洞察

増田米尊のパソコンに添付ファイル付のメールが送られてくる。
添付されていたのは増田米尊の同僚(というのか)で、同じ大学に助教授として勤務している島谷香織の性交中画像だったのである!
ここで増田米尊が、相手の男が写っている画像には見向きもせず、自らの妄想を発展させることができる画像のみに集中しているところに「増田米尊らしさ」を感じるね。(笑)

添付ファイルで痴態を晒された島谷香織が、自殺を図ろうと高所に上る。
それを下から見上げていた増田米尊、下着の色について説教を始めるのである。
ブラック・ユーモアというのか、このシーンは秀逸だよね!
的外れに聞こえるけれど、気をそらすには「もってこい」の話題だったはず。
ところが島谷香織は身を投げてしまうのだ。
果たして本当に自殺だったのだろうか?

この章で注目したいのは「ハイパーソニック・サウンド」について説明されているところ。
環境省のページによると、人間の耳では聴き取れない超高周波を体感することにより、リラックス効果を得ることができるという。
楽器ではガムランや尺八、場所では熱帯雨林に超高周波成分が含まれているんだって。 
ジャワ島のジャングルに行ったことはあるけれど、リラックス効果を得た覚えはないな。(笑) 
昨年ROCKHURRAHと一緒に西東京方面に出かけて、アウトドアの真似事(?)を経験した時には開放的な気分になり、心身ともにリフレッシュできたっけ。
あれが「ハイパーソニック・エフェクト」なのかもしれないね?
1 / fゆらぎ、また体験したいなあ!(笑) 

この章で衝撃的だったのは、増田米尊を興奮状態にさせるために、千田自らスカートをたくし上げ、下着とヒップを見せつけるところ!
さすがに増田米尊を研究しているだけあって、ツボを心得てるよね。(笑)
千田の作戦は見事に成功し、 増田米尊は「変態ちゃん」と呼ばれながら天才科学者に完全変態する。
そしてまた事件の謎を解き明かすのである。
完全変態した増田米尊が、同類と思しき谷村刑事を「たわけ!」呼ばわりし、変態レベルに差があることを叱責するシーンが印象的だね。
なんだかこれってジョン・ウォーターズ監督の映画「ピンク・フラミンゴ(原題:Pink Flamingos 1972年)」で、「お下劣世界一」を競い合っている感覚に近いような?(笑)

四つの狂気 無変態に関する補足

最終章で、突然探偵である星野万太郎が登場する。
星野万太郎は「爆発的」や「逆説的」でお馴染みのキャラクターなんだよね。
このチャプターで大団円、一件落着なのでキモには触れないことにしよう。
SNAKEPIPEもクロちゃんと友達になりたいな、と思ったことだけ書いておこうかな。(笑) 

「官能的」は、 増田米尊が天才科学者へ変態することにより、謎解きする趣向なんだけど、その解き方がなんとも奇天烈なんだよね。
数学的な理論に加えダジャレや「こじつけ」から解答を得る、前代未聞の方法が素晴らしい!
そして今中、三沢、牛島、都、小松、李、藤波、正岡、木俣という登場人物の名前が、全て中日ドラゴンズに関係した名前のようなんだけど、違うかな?

久しぶりに「官能的」を読み返し、 改めて増田米尊という濃いキャラクターに魅力を感じたよ。
ということはやっぱりSNAKEPIPEも「変態」の仲間なのかもしれないね。(笑)

好き好きアーツ!#52 鳥飼否宇 part21−天災は忘れる前にやってくる-

【タイトルに因んだ映像。音が出るよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

「ゔぁっ!」
何やら言葉にならない声でROCKHURRAHが叫ぶ。
一体どうしたの?何があったの?
「鳥飼先生の新作が出るよっ!」
「ええーっ!」
きちんとした言葉で大反応するのはSNAKEPIPE。
いつも同じパターンだけど、ROCKHURRAH RECORDS内での事実なんだよね。(笑)

大ファンの作家・鳥飼否宇先生の新作とは、なんというビッグ・ニュース!
2018年に刊行された「隠蔽人類」以来の作品になるんだね。
およそ1年間、待ち望んでいた鳥飼先生の新作とご対面できるとは嬉しい限り!(笑)
明日にでも本屋に行くか、と鼻息を荒くしたSNAKEPIPEだったけれど、今の御時世、通信販売が一番早いよね。
その日の注文で、翌日には新作を手にすることができたよ!

今回のタイトルは「天災は忘れる前にやってくる」だという。
天災って自然災害のことだよね?
光文社の紹介ページからあらすじを紹介させて頂こう。

眉唾の噂やホラばなしをネット配信して生計を立てている「特ダネ ゴーダニュース」の目玉企画は、社長の郷田とバイトの智己の災害現場への突撃ルポだ。
しかし、二人の行くところ、なぜかいつも災害の陰に怪しい事件が待っている!
ブラックなギャグとダークな欲望が軽快に展開し、意表を突くトリックと鋭い推理もたっぷり盛り込んだ、サービス満点の傑作。

有料会員向けのネット配信だけで生計を立てる人物が主人公とは、今どきだよね。(笑)
「眉唾の噂やホラばなし」とは、例えば「目から鱗、夜尿症にはナマズエキスが効く!」や「不忍池に半魚人が出現!!」といった類のものらしい。
「絶対うそでしょ」と思ってしまうヘッドラインだけど、お金払っても読む人がいるみたいなんだよね。
この手の会員費って月額いくらなんだろう。
例えば月額100円で3万人の会員なら月収300万円!
「特ダネ ゴーダニュース」には、それくらいの読者が存在しているとの記述があるので、そこまで違った数字ではないよね。
取材費とアルバイト代を支払ったとしても、良い収入になりそうだよ。
よし、これから当ブログも有料にしてみるか。(笑)

冗談はさておき、鳥飼先生の新作に話を戻そう。
「特ダネ ゴーダニュース」の社長である郷田俊男とアルバイトの三田村智己が、災害地域を取材中、事件に遭遇する。
それらの事件を連作短編にした小説が、「天災は忘れる前にやってくる」なんだよね!
さて、彼らはどんな事件に遭遇したのか?
小説の順番通りに感想をまとめていこう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

天網恢々疎にして漏らさず

いきなり難しい文章から始まったけど、「天災は忘れる前にやってくる」では、タイトルに名言や格言が採用されている。
最初のタイトルは中国の思想家である老子の言葉だという。

天網は目があらいようだが、悪人を漏らさず捕らえる。
天道は厳正で悪事をはたらいた者には必ずその報いがある。

こんな意味だったんだね。
恥ずかしながらSNAKEPIPEは初めて知った言葉だよ。
鳥飼先生のデビュー作「中空」でも老子や莊子の思想について触れられているので、特に違和感もなくすんなり本文を読み進めることができた。
画像は牛に乗った老子だよ。(笑)

第1インシデントは地震!
震度7の地震が発生、死者・行方不明者合わせて約2,300人、負傷者は7,000人以上の甚大な被害が報告されたのである。
そんな被災地にネタ探しに乗り込む「郷田プロダクション」の郷田とアルバイトのトモミ。
ボランティアとして活動するため、ではないんだよね。
あくまでも「特ダネ ゴーダニュース」のネタを探すため、ジャーナリストとしての使命だ、と主張する郷田だけれど、実態は行き当たりばったり。
眉唾もののフェイク・ニュースで、読者の興味を煽る文章を捏造するのが得意な郷田は、地震からどんなニュースを創り出すんだろうね?
胡散臭い人物だけれど、何万人もの人が食いつく記事を書くことができるというのは、やっぱり才能だろうなあ。(笑)

2人が足として使用しているのは「ジムニー」だという。
SUZUKIのジムニーって名前は聞いたことあるけど、どんな車だったかな?
おお、改めて検索してみると、とってもカワイイじゃない!(笑)
色によっては軍用車両にも見えそうで、ちょっとジープっぽい感じ。
ミリタリー好きのROCKHURRAH RECORDSでは大好評だよ!
ただし大の男2人、しかも少し太り気味の郷田が隣では、窮屈になるかもしれないね。

郷田の年齢は50代のようだけど、トモミはいくつなんだろう。
郷田にコキ使われているアルバイトなので、20代から30代だと思われる。
南国生まれで、現在は一人暮らしをしているとのことだから、アルバイトでもそれなりの収入を得ているんだろうね。
こんなデコボココンビだけど、一応「阿吽の呼吸」で行動しているみたいだよ。

郷田の小さな「気付き」から犯人が割れる。
タイトルの「天網恢々疎にして漏らさず」と絡んで、見事にまとまったよ!
それにしても郷田が探偵役とはね?
己の欲を優先させる、いかにも人間臭い人物で、今までの鳥飼先生の著作では見かけなかったタイプなんだよね。

大山鳴動して鼠一匹

事前の騒ぎばかりが大きくて、実際の結果が小さいこと

これよくあるよね!
鳴り物入りで登場したけど、結果はまるでダメダメっていう話ね。
ラテン語のことわざが元になっているようだけど、この文言も初めて知ったSNAKEPIPE。
こんなところで無知を自慢してどうする。(笑)
ROCKHURRAHが「ことわざ」を分かりやすく画像にしてくれたよ。
あの山からこのネズミが!
なんてキュートなんでしょ。(笑)

第2インシデントは浅間山の噴火!
浅間山と聞いて連想するのは「浅間山荘事件」だね。
1972年2月、長野県北佐久郡軽井沢町にある河合楽器の保養所「浅間山荘」において連合赤軍が人質をとって立てこもった事件(Wikipediaより)である。 
あまり事件について詳しくないSNAKEPIPEは、だいぶ前にROCKHURRAHと一緒に「光の雨(2001年)」という映画を観て、連合赤軍について少し知ったくらい。
私刑による支配での団結は難しいこと、そして人間の残酷さを見たことを覚えている。
そんな浅間山が噴火し、その現場にネタ探し目的で訪れる郷田とトモミ。
命の危険を顧みず、よく頑張るよね。(笑)

郷田は一応(?)ジャーナリストなので、ドキュメンタリー映画も観ているんだね。
感銘を受けた映画としてヴェルナー・ヘルツォークの「ラ・スフリュール(原題:La Soufrière 1977年)を挙げる。
ヘルツォークといえば、2019年5月に「デヴィッド ・ リンチ_精神的辺境の帝国展 鑑賞」の中で、「狂気の行方(原題: My Son, My Son, What Have Ye Done (2009年)」の感想をまとめたっけ。
デヴィッド・リンチが製作総指揮だったために鑑賞したんだけどね。(笑)
記事にも「そんなに詳しくない監督」と書いているヘルツォークなので、「ラ・スフリュール」も知らなかったよ。
映像があったので、載せておこうか。(29分)

郷田とトモミ以外にも、命知らずの登山家がいる。
台風で波が大荒れの時にサーフィンやるような人がいるけど、似た感じかな?
そこで事件が起きるのである。

まさかそんな動機だったとは!
あっさり郷田が解き明かしたのは、年の功か?
そしてあんな結末とは、ね。
それにしても特に女性にとって、1歳の年齢間違いは大問題よねっ!(笑)

我が物と思えば軽し笠の雪

自分の利益になることならば、苦労を苦労と思わない。

これは松尾芭蕉に弟子入りした其角の句「わが雪と思へば軽し笠の上」からできた「ことわざ」だという。
この画像が其角のようだけど、ほとんど漫画だね。(笑)
酒豪だったという俳人だけれど、芭蕉からも才能を認められていたという。
なんだかドラマの主人公になりそうなタイプじゃない?

第3のインシデントは豪雪!
雪で閉ざされた地域での事件といえば、やっぱり映画「シャイニング」を思い出してしまうね。
建物に取り憑いている霊的な存在もさることながら、精神に変調をきたしたジャック・ニコルソンが怖くて!
あ、ジャック・ニコルソンの演技が素晴らしくて、に変えないとおかしな文章になってしまうね。(笑)

新年早々、豪雪地帯に取材に行く郷田とトモミ。
孤立した集落を目指して、雪道を車で移動する。
いわゆるジャーナリズムの精神を持つ人であれば、「眼の前にある現実」を報道したい、いやしなければならないという正義感が原動力になり、どんなに危険な場所にでも赴くだろう。
郷田の場合は動機が不純で、災害をネタにした記事を書き、会員数を増やし利益アップを狙っているにもかかわらず、目的地は正統派ジャーナリストと同じように危険な地域、というところにギャップを感じるんだよね。
ガセネタを書くなら、そこまでやらなくても良いような?(笑)

「我が物と思えば軽し笠の雪」は、またもや郷田が犯人を特定し、事件としての決着はついているけれど。
犯人の心境が腑に落ちないんだよね。
珍しく「おあとがよろしくなかった」作品かな。

善人なおもて往生をとぐ

善人でさえ救われるのだから、悪人はなおさら救われる。

親鸞の「歎異抄」に出てきた、非常に解釈が難しい言葉なんだよね。
タイトルでは「善人なおもって往生を遂ぐ」までだけれど、親鸞は「いわんや悪人をや。」と続ける。
意味を調べると「逆じゃない?」と感じてしまう不思議な言葉、どうやら「善人」と「悪人」の定義から勉強したほうが良さそうね。
しっかり文章にする力がSNAKEPIPEにはなさそうなので、親鸞について詳しい方のサイトをご参照くだされ!(笑)

第4のインシデントは離島での台風と火事。
郷田とトモミの当初の目的は、島で目撃されたジュゴンを撮影する、というものだった。
ジュゴンは人魚のモデルとされているので、眉唾もののニュースを発信している「特ダネ ゴーダニュース」では、格好のネタだろうと容易に推測できるよね。
ところが予想に反して、ジュゴンは現れず、郷田とトモミは火事の現場を撮影することに成功するのである。

臨場感あふれる動画をアップロードすると、たちまちアクセス数が増える。
「特ダネ ゴーダニュース」のフェイクではないニュースも人気があるんだね。(笑)
現場にいたからこその成果だけど、災害と聞くと「ほいきた!」とばかりに喜ぶ郷田は、非人道的とも言える。
そしてまた事件に遭遇するのである。

人それぞれに理由があるので、コメントが難しい事件だったね。
なんともやりきれない気分になってしまったよ。

株を守りて兎を待つ

古い習慣にとらわれて、時の変化に適応しないこと。
また、偶然の幸運を当てにする愚かさ。

中国春秋時代、ひとりの農夫が目前で木の切り株にぶつかって死んだウサギを手に入れ、それから毎日その切り株のところで見張りをしたという故事からできた中国のことわざみたいだね。
こういうタイプの人、今でもいるだろうな。
そんな話をしていると、急にROCKHURRAHが歌い出すではないの!

北原白秋作詞、山田耕筰作曲の歌だったとは!
静止画像がうさぎになってるし。
それにしても子供の頃の記憶により、ROCKHURRAHが2番まで歌い続けることに驚いたよ。(笑)
SNAKEPIPEは習った全く覚えがないんだけど、九州地方とは音楽の教科書が違ってたのかもね。

第5のインシデントは豪雨による川の氾濫である。
災害を取材し、有料サイトの会員数を増やすことで収入をアップさせた実績を持つ郷田は、新たな災害ネタを求めて水害に見舞われた地域に赴いていた。
自然災害が利益を生み出すことってあるんだけど、これを特需と言ってはバチが当たるよね。
郷田のような「人の不幸をネタにした記事を書く」タイプは気にしないどころか「ラッキー」くらいに思っているんだろうけど。

人間的には疑問を感じることが多い郷田だけど、推理力はあるんだよね。(笑)
かなり複雑なシチュエーションだったのに、今回の事件も見事に解決!
郷田はここまででいくら稼いだんだろう?

前門の虎、後門の狼

一つの災いを逃れても別の災いにあうたとえ。

中国の元代の学者である趙弼が記した書「評史」に書かれている「ことわざ」だという。
「ことわざ」に因んだ画像をROCKHURRAHが用意してくれたんだけど、なんてカワイイんでしょ!(笑)
こんな虎と狼だったら、大歓迎じゃない?
子供の頃から一緒にいたら、ずっと仲良しのままなのかな。
なんでこんなにカワイイ画像を選ぶか、ROCKHURRAH?(笑)

第6のインシデントは竜巻!
銀行強盗事件を取材するために訪れたのに、竜巻に遭遇する郷田とトモミ。
竜巻を間近で撮影した緊迫の動画だったら、かなりのアクセス数を稼げるだろうね。(笑)
郷田とトモミが乗っているジムニーまで、竜巻で車体が浮くほどの威力だったというから、自然の力は本当に恐ろしいよ。

この章では、なんと猟奇殺人を連想させる死体が登場する。
現場を想像すると、かなり怖い状態だよ。
郷田とトモミは平然と観察しているようなので、肝が据わってるのかな。

郷田の推理により、いくつかのパーツがカチッとはまりパズルが解けた。
人は土壇場になると、思いもよらない大胆な行動に出るのかもしれないね。
SNAKEPIPEにはできないだろうな。(笑)

同じ穴の狢

一見関係がないようでも実は同類・仲間であることのたとえ。
多くは悪事を働く者についていう。

さすがにこの「ことわざ」は聞いたことも、使ったこともあるよ。
「ことわざ」は知っていても、ムジナってどんな動物なの?
どうやらアナグマのことをいうんだね。
画像で見る限りでは、ハクビシンと区別がつかないよ。
「ことわざ」に動物が入っていることが多くて、今回の記事の画像だけみると何の記事を書いているのか不思議に思うかもね。(笑)

第7のインシデントは台風。
丁度この記事を書いている頃、台風6号が関東地方を直撃すると予想されていた。
現在では熱帯低気圧に変わったため、局地的な大雨に警戒する必要があるという。
ほとんど東京近辺から出たことがないSNAKEPIPEは、台風による被害という経験がないんだよね。
もちろん台風直撃で電車が動かない、ということはあるけれど、家の屋根が飛んだり窓ガラスが割れるというレベルの被害はないね。 
北九州出身のROCKHURRAHも、ほとんど被害に遭ったことがないという。

小説本文中の台風は猛威を振るっていて、傘が全く役に立たないほどの大雨と暴風の中、撮影に挑む郷田とトモミ。
「郷田が歩けば二次災害が起きる」じゃないけれど、 土砂崩れまで経験することになる。
これをまた好機と考え、取材を開始する郷田の根性は見上げたものだよ。

スクープを物にするために危険と隣合わせの行動をするジャーナリストといえば、戦場カメラマンなども同じだろうね。
SNAKEPIPEも写真の勉強をしている頃、その手の本を読んで刺激を受けたことがあるので、気持ちは分かる。
実際に行動に移すことができるかどうかが、ジャーナリストとしての資格だろうから、郷田は合格だね。(笑)

ペットのヨークシャーテリアが機動隊員によって助け出されるシーンがある。
ヨークシャーテリアといえば、鳥飼先生の「人事系シンジケート―T-REX失踪」 にも社長夫人のペットとして登場しているね。
好き好きアーツ!#44 鳥飼否宇 part18−激走&T-REX失踪−」 として感想をまとめているので、ご参照あれ!

まさかそんな展開になるとは!
そして「同じ穴の狢」がそういう意味で使われることになるとは思ってもみなかったよ。
「そんな」とか「そういう」といった「濁した」物言いしかできないのが歯痒いけど、仕方ないね。(笑)

鳥飼先生の新作は、今までの先生の著作である「逆説的」、「ブッポウソウは忘れない」や「激走」と上にも登場した「人事系シンジケート―T-REX失踪」などと同様、「実際に起こり得る状況」を背景にした小説だったね。
語り部であるトモミに関する記述があまりなかったので、特徴を捉えることが難しかったかな。
ROCKHURRAH RECORDSが得意としている、マニアックなミュージシャンから名付けた登場人物当てや、アート系の話題を見つけることができなかったのは残念。

天災をキーワードにした小説とはどんな感じだろう、と少し不安を感じながら読み進めた。
どうして不安だったかというと日本で実際に起こっている災害なので、被害状況を生々しく感じてしまうのではないか、と想像したからなんだよね。
郷田の視点が、有料会員獲得に向けスクープを狙っているという、ヒューマニズム寄りではないのは前にも書いたよね。
それが冷静なカメラのレンズ的な役割を果たしていたようで、被害が甚大であっても重たい文章になっていなかったように感じる。
読むのが辛い小説になっていなかったのは、さすがに鳥飼先生だよね!
最近の鳥飼先生の著作は「〜シリーズ」ではないので、また懐かしい登場人物に再会したいと思ってしまうのはSNAKEPIPEだけかな?(笑)