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【「紅城奇譚」のイメージ画像をROCKHURRAHが作成。よくできてるなあ】

SNAKEPIPE WROTE:

よく夢を見て、それを記憶しているSNAKEPIPE。
先日の夢は疑似体験ができるゲームに参加している、というもの。
体験しているのは恐竜ティラノサウルス(実物大と思われる)から逃げる、というバーチャル・ゲームだった。
背後に気配を感じたので、目を合わせないように壁にへばりつき、じっと耐える。
荒い鼻息が聞こえてくる。
震えを抑えながらティラノサウルスが行き過ぎるのを待つ。
この時間の長いこと!
ゲームだと分かっていても、本当に怖かったよ。(笑)
なんでこんな夢を見たのか?と考えて、思い当たった。
大ファンの作家、鳥飼先生の新作をまとめさせて頂くことを考えていたため、前回の感想文を読み返したのが原因ではないかと思われる。
鳥飼否宇先生の作品を紹介していくシリーズである「トリカイズム宣言」で前回書いたのが「T-REX失踪」だったからではないだろうか。
夢は不思議なことが多いけど、チラッと思考を横切っただけの事柄がSNAKEPIPEの脳内で、おかしな物語を制作してしまったみたいだね。(笑)

前フリが長くなってしまった!
そう、鳥飼先生の新作なんだよ!(笑)
タイトルは「紅城奇譚」。
「紅城」と聞くとROCKHURRAHが大好きな国枝史郎の「神州纐纈城」 を連想してしまう。
纐纈城に出てくる纐纈布が真紅だからね。
もしくは「クリムゾン・キングの宮殿」からの連想かな?
「奇譚」と聞けば「パノラマ島」と、つい答えてしまうね。(笑)
こんな条件反射をしてしまうのはROCKHURRAH RECORDSだけかな?
鳥飼先生の新作「紅城奇譚」は、タイトルだけでも「おどろおどろしい」「凶々しい」イメージを感じてしまうね。
新作の紹介ページからあらすじを引用させて頂こう。

織田信長が天下統一をもくろみ、各地の戦国大名を次々と征伐していた16世紀中頃。
九州は大友、龍造寺、島津の三氏鼎立状態となっていた。
そんななか、三氏も手を出せない国ー勇猛果敢で「鬼」と恐れられた鷹生氏一族の支配地域があった。
その居城、血のように燃える色をした紅城で、次々と起こる摩訶不思議な事件。
消えた正室の首、忽然と現れた毒盃、殺戮を繰り返す悪魔の矢、そして天守の密室……。
眉目秀麗な、鷹生氏の腹心・弓削月之丞が真相解明に挑む!

なんと!鳥飼先生が今回舞台設定されたのは戦国時代とは!
戦国時代のミステリーなんて読んだことないよ。
SNAKEPIPEは時代小説ですら、吉川英治の「宮本武蔵」と「新書太閤記」、「三国志」や「水滸伝」くらいしか読んだことないんだよね。
ROCKHURRAHからの勧めで読んだ、前述の「神州纐纈城」は伝奇小説になるらしい。
どちらにしても古い時代を舞台にした小説だけど、ミステリーものは初めてだよ。
これは期待しちゃうね!(笑)

発売日当日、ROCKHURRAHが鳥飼先生の新作を入手してくれていた!
本屋に面出しされていた最後の1冊だったという。
手に入って良かった!(笑)
感想を担当するのはSNAKEPIPEなので、最初に読んで欲しいと言われる。
あらま、済みませんね、いつも。(笑)
読み進めようとするけれど、「序」でつまずく。

戦国時代の力関係は、相関図などで武将の名前、地理や地位などの位置を把握しないと、なかなか理解できないんだよね。
何度か読み返して、ある程度理解する。
最近好きで観ている番組がNHK BSプレミアムの「英雄たちの選択」 。
学校の歴史の授業では習っていない、今まで知らなかった歴史上の出来事を知り、驚いたり感心している。
その番組でも戦国時代の武将やら「○○の戦い」を深く掘り下げて考察するのを観たことがある。
そのおかげで、以前よりは多少歴史に対しての興味や想像力は持っているはずなんだけどね。(笑)
SNAKEPIPEみたいな「つまずく」人には、「紅城奇譚」の家系図あったら良いなあ。
そう話すと、ROCKHURRAHが作成してくれた。
さすが、ROCKHURRAH!やるなあ!(笑)
クリックで大きくなるので、見てみてね。

鳥飼先生の小説といえば、登場人物の名前に、何かしらの符号があることが多いよね?
今回はどうだろう。
龍政の側室である「雪」「月」「花」は、会田誠の「犬」シリーズに登場する美少女達の名前と同じかも!(笑)
かなり物議を醸した会田誠の作品だけど、この記事に画像を載せている。
鳥飼先生からのコメントも頂戴しているね。(笑)
他には何かないだろうか?
ROCKHURRAHが「利賀野」と「弓削」は「リガーノ」と「ユーゲン」と読めそうで、怪しいと言う。
そう聞けば「椎葉」も「シーヴァ」とか?
あっ、ヒンズー教のシヴァはどうだ!
などと勝手に想像しまくる始末。(笑)
急にヒンズー教が入ってくるわけないよねえ。
「鶴」「鳰」「鷹」「龍」「熊」「牛」と並べると生きものの名前だね。(「龍」は伝説上での生きものだけど)
何も符号や「もじり」が見いだせない!
こうして悶々としながら考えるのも、鳥飼先生の小説の楽しみ方なんだよね。(笑)

「紅城奇譚」はSNAKEPIPEがつまずいた「序」から始まり、4編から成る「破」、そして最後に「急」という章で構成されている。
「破」の章にある4編について、それぞれの感想を書いてみよう。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

破の壱 妻妾の策略
紅城主である鷹生龍政の正室、鶴と三人の側室の間での確執が題材になっている。
鶴の首なし死体が発見された直後に、龍政の子を宿す側室である雪が櫓から落下して命を落としているところを発見されるのである。
正室、側室という呼び方では分かり辛いので、本妻と妾に置き換えたほうが良いかもね?
「大奥」と呼ばれる女だらけの場所が江戸城にあったことは、歴史に詳しくない人でも知っているよね。
戦国時代にも側室がいて、家系を絶やさないようにしていたんだね。
ハーレム状態で跡取りを作ることが目的と聞くと、まるで女性は子供を作るためのマシーンみたいだけど、当時の女性にとっては「選ばれし者」という感じでエリート意識があったのかもしれないね?

「紅城奇譚」の城主である龍政にも3人の妾がいて、そのうちの1人、雪が妊娠しているのである。
すでに龍政には、本妻・鶴との間に熊千代という息子がいるけれど、雪から生まれる子供に期待をよせている。
何故ならば熊千代は武芸よりも虫や花に興味を示す、優しい心の持ち主だったため、世継にしては頼りないと考えたからである。
ここでSNAKEPIPEは思い出す。
BSプレミアム「英雄たちの選択」で観た春日局の回のことを。
徳川家光の幼名は竹千代、幼い頃は病弱で内気だったため、世継候補からは外れていたという話を思い出したのである。
この設定はそのまま「紅城奇譚」の熊千代にもあてはまりそうじゃない?(笑)

本妻と妾1人がほとんど同時に死亡する不思議な事件は、「紅城奇譚」での探偵役となる龍政の家臣・弓削月之丞と龍政の妾である花を助手として解明されるのである。
弓削月之丞は椎葉氏の兵だったけれど、その美貌に惹かれた龍政が側近にすることを決めたという。
容姿端麗なだけではなく、月之丞は武芸にも秀で知恵者でもあったため、龍政から信頼されるようになった人物である。

この事件、タイトルは書けないけど、横溝正史の小説を思い出したよ! (笑)

破の弐 暴君の毒死
龍政には弟・龍貞がいる。
冷酷無比と恐れられている龍政が呆れてしまうほどの残忍さと、女と見ればすぐに手を出す獣のような男。
戦で負傷したせいで右半分は醜い傷跡があり、右目は潰れているというから、女は悲鳴を上げるに違いない。
そんな龍貞が宴会の席で酒を飲んだ途端、急死してしまうのである。

その宴で龍貞は、龍政の家臣である牛山武兵衛の妹にちょっかいを出し、龍政の娘・鳰(にお)を舌なめずりしながら見つめる。
鳰はまだ幼女だよ!
龍貞の好色ぶりには、読んでいるSNAKEPIPEまで腹が立ってしまった。
誰もが「こんなヤツいなくなれば良いのに」と思ってしまう龍貞の毒殺!
一体誰が起こした犯行だったのか?

いつの間にか探偵役になってしまった月之丞と、これまた側室でありながら助手の役割を果たしている花はここでも事件を解決する。
のだけれど…。
仰天の展開に「えっ、ちょっちょっと待って」 と誰に言うでもなく声を上げ、付いていかれないSNAKEPIPE。
もう少し整理しないと。
再び数ページ戻り、もう一度読み返す。
読みながら自分の体の「ある部分」をしっかり押さえていることに気付く。
うっ、痛い、、、。
戦国時代だからねえ。
どうなんだろう、「あり」だったのかなあ?

この話でギリシャ映画「籠の中の乙女」を思い出したSNAKEPIPE。
ある一部、似たところがあるんだよね。
あの映画、とても不思議だったなあ。
結局分からず仕舞だったっけ。(笑)

破の参 一族の非業
毎年紅城では「弓比べ」という行事があるという。
その「弓比べ」で自分の息子・熊千代が紅城の跡取りに相応しいことを見せつけたいと考える龍政。
ところが、そんな父親の期待に応えられそうにない熊千代。
熊千代は体育会系ではなく、勉学を得意とする文化系の子供だったからね。
それでも紅城主であり封建的な父親には逆らえないので、やるっきゃない!(笑)
ライバルとして龍政の家臣・利賀野玄水の息子・彦太夫があてがわれる。
熊千代と同い年の彦太夫は弓の腕前に優れていて、昨年は堂々と優勝しているほどである。
彦太夫に負けるな、という龍政の叱咤にも関わらず、散々な結果しか残せない熊千代。
龍政は自分の父親・龍久に弓術を伝授してもらうよう熊千代に命じる。
今ではすっかり隠居してしまった龍久だけれど、鷹生家を一代で築き上げたのはこの龍久。
武芸に秀でた息子の龍政ですら、弓術に関してだけは龍久には及ばなかったという。
その弓の達人に教えを乞うため、熊千代が龍久の元を訪れるのである。

熊千代の境遇には同情してしまうSNAKEPIPE。
それでもこの時代は、世継として生まれたなら学業よりも武芸だったんだろうね。
まあ、今でも世襲制を採っている職業や家筋はあるだろうけど。
そして「ふふん」とばかりに弓の腕前を披露するライバル・彦太夫が、少し憎らしく感じてしまったのも事実。
SNAKEPIPEが文化系だから余計かもしれないね。(笑)

この章では、龍久と熊千代が弓で射られて死亡する事件が発生してしまう。
「破の壱」に続いてのダブル殺人事件!
おお、これはタイトル通り一族の非業だよ。
だってもう鷹生家は…。

「破の参」の中で印象的だったのは、銀杏の葉が風に舞い、幻想的な光景を見せるシーン。
SNAKEPIPEは京極夏彦の「絡新婦の理」にある桜吹雪の場面を思い出したよ。
どちらも映像化されたら美しいだろうなあ!
ROCKHURRAHが「紅城奇譚」のイメージ画像を作成してくれるというので、銀杏の葉をリクエストした。
トップにあるのがその画像なんだけど、とてもキレイに仕上がっているよね!

破の肆 天守の密室
猛将と恐れられていた龍政が、その姿を想像できない程げっそりやつれている。
これまでの事件に加えて、龍政自身も寝込みを襲われたのである。
命の危険を感じた龍政は天守閣に立てこもる。
籠城戦に適していると言われる紅城の中で、最も安全な場所だからである。
ところが事件は起きてしまうのである。
密室殺人事件なんだよね!

なんともスケールが大きく、驚愕してしまった。
SNAKEPIPEの脳内には、完全に映像が映し出されている。
思いもよらない展開にはびっくり仰天!
まさか、そんな!ねえ?(笑)

それにしても一番驚いたのは、命の危険にさらされてげっそりしているのにも関わらず、妾の花に挑むいつもと変わらない龍政の精力旺盛なところ!
「甘い物は別腹」のような感覚だろうか。
そっちに気が回るなら、もっと別のこと考えれば良いのに。(笑)

この新作は、今まで読んでいた鳥飼先生のどの作品とも違っていた。
動植物に関する記述もなく、音楽的な要素もなく、プッと吹いてしまう笑いの要素もない。
鳥飼先生らしさが表れていたとすると、花のセリフかな。
ネコ(観察者シリーズ)にも宮藤希美(妄想女刑事)にも通じるタイプなんだよね。(笑)
側室だけあって、したたかさを秘めていながらも、少しボケが入るキャラクター。
あまりお色気ムンムンな雰囲気は感じなかったけれど、龍政からの寵愛を受けているんだよね。
花が妊娠することはなかったのかなあ?
そうしたら世継ができたかもしれないのにね。(笑)

鳥飼先生の新たな一面を見せてもらったように思う。
この小説、映像化して欲しい。
実写では難しいシーンがあると思うので、アニメでいかがでしょう!
もちろんリアルな絵柄で、大人っぽいアニメでね。

将来的に、また別の鳥飼先生の新しい引き出しが見られるんじゃないか、という期待と共に、今まで読み進めてきたいつも通りの「鳥飼節」も楽しみに待っていよう!
鳥飼先生、いつも応援しています!

 

 

 

【今回のブログ用にROCKHURRAHがプロモビデオを作成(意味不明)】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンであるミステリー作家、鳥飼否宇先生の作品を再読し、感想をまとめていく「トリカイズム宣言」!
前回は鳥飼先生の綾鹿市シリーズより「逆説的」を書かせて頂いた。

「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。

と最後に書いていたけれど、今回は鳥飼先生の「ノンシリーズ」から2作品について書いていきたいと思う。
「ノンシリーズ」とはシリーズの名前ではなく、シリーズ化されていない=単独作品という意味なんだよね。
「ノンシリーズ」では例えば「昆虫探偵」や「異界」など、鳥飼先生の世界観を満喫できる素敵な作品があって、以前感想をまとめさせて頂いている。
鳥飼先生の「ノンシリーズ」も大好きで、どの作品も続編を待ち望んでいるSNAKEPIPEなんだよね。
はっ、続編ができたとしたらもう「ノンシリーズ」とは言えなくなるのかっ! (笑)

では「 激走 福岡国際マラソン」から始めようか。
2005年に発売された時には副題として「42.195キロの謎」が入っていたけれど、文庫化された2010年には現在のタイトル「激走」になっているようだね。

2007年師走、福岡国際マラソン。
トップランナーの思惑、ペースメーカーの野望は交錯していた…。
マラソンを舞台に駆け巡るノンストップ・ミステリー。

販売しているページから簡単なあらすじを引用させてもらったよ。
福岡国際マラソンの間に事件が起こるなんて、前代未聞のミステリー小説だよね。
テレビ中継もされているし、沿道には人が大勢いる場所で?
そんなあり得ないような状況を舞台にしたのが「 激走」なんだよね!

ちなみに左の画像が「福岡国際マラソン」のコース。
昔ROCKHURRAHが住んでいたという姪浜や、SNAKEPIPEも多少は知っている地名が並んでいるね。
きっと鳥飼先生にも馴染みのある場所がたくさんあることでしょう!

SNAKEPIPEは学生の頃から運動が苦手で、できれば体育の授業は見学していたいタイプだった。
子供の頃から読書や絵を描くのを好む、いわゆるインドア派!
そんなSNAKEPIPEが唯一(?)運動で賞を獲ったことがあるのが、マラソンだった。
SNAKEPIPEが通っていた小学校では、毎年冬にマラソン大会が行われていた。
完走するのが目的の、心身を鍛えるのが目的の恒例行事だ。
何故だか覚えていないけれど、その年のSNAKEPIPEはアイデアがあった。
スタートの合図でダッシュし、先頭のチームに入り、そのままゴールまで走る作戦である。
走り続けるのは誰にとっても苦しいもの。
途中からスパートをかけて先頭集団に追いつくのは難しいけれど、最初から先頭にいれば多少の遅れは取り戻せると考えたのである。
結果は10位以内に入る自己ベスト!(笑)
家の中にいるのが好きな子にしては、上出来だよね。

子供だったSNAKEPIPEが考えついた作戦だけれど、実際に同じように考えるランナーもいるようだ。
「激走 」はマラソンを題材にしたミステリー小説だけれど、SNAKEPIPEが感じた一番の醍醐味はランナー達の思惑だった。
自分の体調とペース配分のバランスを取りながら競争相手との駆け引きを考える。
それぞれのランナーが考えていることが文章化されているのが、非常に興味深かった。

テレビのアナウンサーがランナー達の状況を伝える。
実際にレースを観戦しているような気分でページをめくっていく。
思惑を覗かせてくれるのは市川尚久、ペースメーカーとしてレースに参加している。
「激走 」を読むまでペースメーカーの存在を知らなかったSNAKEPIPE。
「高水準かつ均等なペースでレースや特定の選手を引っ張る役目の走者のこと」とWikipediaに書いてあるように、先頭を走る目的で採用されているんだよね。
もちろんそれなりの実績がないと採用されないし、そのまま走って優勝しても良いらしい。
ペースメーカーの市川は「ある思い」を持って走っている。

2人目は小笠原寛明、日本期待の優勝を狙うランナーである。
この小笠原は学生時代にアイアンマスクと影で呼ばれていたほどの冷酷無比な人物だ。
自分のことしか考えない利己主義な性格のため、どんな手段を使っても他人を蹴落とし自分の利益を優先させる。
この小笠原の思惑も描かれていて、こうした人物の物の考え方を知るのは興味深かった。
これくらい強気じゃないと世界に立ち向かえないだろうな、と思ったよ。

ここまで利己主義を全面に打ち出す日本人は少ないし、かなり極端な例だから全面的に賛成するとまでは言わないけれど、実はSNAKEPIPEは小笠原の気持ちが分かるんだよね。
例えば駅伝だったら、メンバー全員の総力で100にしようと考える日本人が多いんじゃないかな?
小笠原の考えでは各メンバーがそれぞれ100を出し合って、総計で600にしようとする「個人の力」重視なんだよね。
チームプレーの考え方自体が違うので、小笠原が浮いてしまうのは理解できる。
そしてSNAKEPIPEもROCKHURRAHもこのタイプなので、幼少期から単独行動派!
個人作業を好む傾向にあるので、「みんなで頑張ろう」のようないわゆる日本人的な集団とはソリが合わないことが多いかも。(笑)
何年か前にサッカー選手の本田圭佑が似たコメントを話していたように記憶しているけれど、本田圭佑の意見に同意できない人が多数いたもんね。
小笠原や本田に共感できる人は、なるべく個人で行動したほうがベターだろうね。
小笠原は駅伝をやめて正解だったみたいね。(笑)

日本人選手の中では他に優勝候補として、ナルキッソス化粧品の二階堂公治がいる。
まるでアイドルのようなルックスで、女性ファンが多いらしい。
ちやほやされる様子は、他の選手には苦々しくうつっている。
福岡出身、地元の谷口鉄夫にも声援が多い。
全国的には二階堂ファンが圧倒的に多いだろうけれど、さすがに地元では谷口が優位に立っている。
「谷口、男ば見せちゃらんね」
さすがに博多らしい応援だよね。(笑)

市川尚久の後輩である在日韓国人の洪康彦も良い位置で走っている。
国籍の問題で、日本でも韓国でも差別やいじめを経験してきたらしい。
どこの国の人間か、なんて問題じゃない。
「俺は俺なんだ」というアイデンティティも欲しかっただろうし、市川尚久への憧れもあり、洪は厳しい練習に耐え実力を付けて福岡国際マラソンに臨んでいるのである。

一般参加の選手もいる。
ペースメーカーを希望したけれど、過去の実績と面接で落選した岡村雪則である。
応募の動機が「目立ちたい」だったという、これまた変わったタイプの日本人。(笑)
人それぞれ何かしらの理由を持って大会に参加していると思うけど、ここまで単純な理由を軽々しく口にするとは!
岡村は我流走法でレースに臨んでいて、走り方に特徴があるという。
苦しそうな顔をして、隣を走るランナーの邪魔になるくらい肘を左右に振る独特のスタイルだという。
この特徴から、ROCKHURRAHが「ザトペック走法」を連想したという。
はしるーはしるー おれーたーちー!(爆風スランプ)
そして「ザトペック」というノイエ・ドイッチェ・ヴェレのバンドの曲をチョイスした、オリジナルのビデオを制作してくれた!
ザトペック走法というのが「人間機関車」と呼ばれていた、というところからビデオにはROCKHURRAHが連想した意味不明の映像も混ざっているんだよね。
ROCKHURRAHの連想だから、「これは何?」と聞いてやっとザトペックとのつながりが分かったシーンもいっぱいだよ!
オリジナル・ビデオ、短時間で良く出来てるよね。
さすがROCKHURRAH!(笑)

日本人選手だけでも、これだけの顔ぶれだけれど、実力が上なのは海外勢だ。
特にアフリカ勢には、過去にも好成績を獲得している最有力候補がいる。
緊迫するレース展開にどんどん引き込まれていく。

「激走 」はミステリー小説として括られているし、実際に事件が起こる。
ミステリー小説は謎の解明と共に犯人探しをするのが目的の場合が多いと思うけれど、この小説に関しては選手それぞれの思惑と、目が離せないレース展開が魅力だ。
もちろんミステリー部分も、ラストの大どんでん返しも見逃せないけどね!

続いては「人事系シンジケート―T-REX失踪」をまとめてみよう。
韻を踏んだタイトルは、まるで1つの決まった単語のように発音しやすい。
そしてそのタイトルが表している通り、主人公はおもちゃメーカーの人事部に所属する物部真治。
入社して3年の、まだ経験の浅い社員である。
人事部に所属しているとはいっても、実際には何でも屋のような仕事がほとんど。
その日も部長に呼び出された物部は、ある指示を受ける。
無断欠勤している総務部の女性社員、田尻優についての調査だった。
その司令が、あんな事件に発展するとは!

大手玩具メーカー・トリストイに勤める物部真治の名刺には、「人事部」としかない。
それは、普通の社員には解決できない特殊事案を「秘密裏に」担当するためだ。
そんな彼のもとに、社の命運を賭けた新商品<ハイパーT-REX>が盗まれたとの報告が!
極秘に捜索を進めるうちに、関係者の1人が謎の転落死を遂げる……

講談社ノベルスのあらすじを引用させてもらったよ。
特殊案件を処理できる能力を保持している物部だけれど、外見的に際立った特徴はないみたい。
人当たりは良いけれど、あまりパッとしない地味な男、という印象を持ったSNAKEPIPE。
物部は福岡県の大牟田の出身だ、というところが鳥飼先生の作品だよね!
不遇な子供時代の影響で、特殊能力が身に付いたらしい。
その物部を自分の部下に抜擢した、人事部の部長峯岸史子の能力もすごいと思ってしまったけどね!(笑)
部長である峯岸はショーカットに縁無しメガネをかけ、正義感に溢れた人物だという。
公正な判断力がある女性の上司というのは、あまり聞いたことがない気がするよ。
どうしても女性の場合は個人的な感情によって、相手に対して態度が変化することが多いようなイメージがあるんだよね。
SNAKEPIPEの偏見かもしれないけどね。(笑)
そんな上司の元で働ける物部は、恵まれていると思うよ。

この小説の魅力の1つは、キャラクター設定だと思う。
物部の先輩であり、社内一の美女とされる坂巻亜季は見た目とは裏腹に短気で勝ち気な性格だという。
凛とした美人というのならハンサム・ウーマンとして評価されるけれど、怒りっぽいだけの女性だと敬遠されちゃうだろうね?
何か心に問題があったり、ストレスを抱えているのかもしれないね?(勝手に分析)

調査対象である田尻優の同僚で、物部の調査に付き合うことになった東郷麻紀も総務部所属だ。
田尻も東郷も物部の一つ後輩にあたるという。
田尻は「令嬢」と呼びたくなるようなお嬢様タイプ、それに引き換え東郷はまるでキャバクラに勤めているような派手な出で立ち。
休日にはコスプレまでしてるという、目立つのが好きなタイプなんだね。(笑)
軽そうな雰囲気だと思っていたのに「人事系シンジケート」の名付け親は、彼女!
物部を中心とした謎の解決に当たるチーム、という意味なんだよね。

派手な東郷の出番が多いのでどんな人なのか良く分かるんだけど、物部がほのかな想いを寄せている今井佳子の登場が少なかったかな?
物部と同期で第二営業部に所属しているセミロングの美人で、高校時代は弓道部だったサッパリした性格、くらいか。
あまり物部には関心がない様子だけど、恋の行方はいかに?って感じだね。

物部の同僚として登場する総務部の常呂政臣はトトロの愛称で親しまれている。
ラグビーをやっていただけあって、背が高くガタイも良いけれど、性格がおっとりしているらしい。
物部のことをモン、と呼んでいて仲の良さが分かるよね。
優しい力持ちだから、どこの会社にも一人いて欲しいと思う人物だよね。
何かお願いしたら、すぐに引き受けてくれそうだもん。(笑)
ROCKHURRAHは「痙攣的 モンド氏の逆説」「このどしゃぶりに日向小町は」に登場するバンド「鉄拳」のメンバーのザッポを思い出したらしい。
体が大きくて面倒見が良いところが似てる感じだもんね!

無断欠勤の話以外に、会長夫人からペットの捜索を依頼されてしまう展開も面白かったね。
ポチという名前のヨークシャーテリアを休日返上で探すことになるんだけど…。
この犬の捜索を手伝ってくれたのは、人事部の物部の先輩で社内一の変わり者と称されている清水竜一。
休日に清水と待ち合わせた物部は、清水のファッションに愕然とする。
鋲ジャン、革パン、ツンツンヘアとくればパンクの正装なんだけど、物部には分からなかったみたいだね。
この清水が良い味出してるんだよね。
清水と物部のコンビが「観察者シリーズ」でいうところのトビさんとネコみたいな関係になるのかな。

鳥飼先生の著作で東京の企業が舞台になっている作品はこれだけでは?
会社員の会話のせいか、普段に比べると生物に関する記述も少なめだったのも特徴だと思う。
おもちゃのメーカーという設定も良かったし、50分の1の大きさで再現されたティラノサウルス・レックスがリモコンで動くおもちゃなんて興味をそそられるよね。
そしてなんとティラノサウルス・レックスもプロモーション・ビデオに取り込んでしまったROCKHURRAH!
様々なレックスが入っているね。
これにより更に意味不明のビデオになったことは間違いないね!(笑)

新作のティラノサウルス・レックスが盗まれだけでなく、無断欠勤の女性社員の話、会長夫人のペットの失踪といった問題が発生するけれど「人事系シンジケート」が活躍するところが見どころなんだよね!
登場人物のキャラクターがはっきりしていて想像しやすかったし、実際にいそうなので親しみを感じやすいと思った。
会社内での事件というのは、まだ他にもアイデアが浮かびそうだし、清水と物部コンビで続編読みたかったなあ!

次回の「トリカイズム宣言」は何にしようか?
今度こそ「本格的」かな!(笑)

【作中に登場するエンジェル友清の作品をROCKHURRAHが再現!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のブログは、本格ミステリ大賞受賞作家である鳥飼否宇先生の著作を読み返して感想をまとめていくトリカイズム宣言
以前読んでいても、再読して新しい発見をするSNAKEPIPE。
何度読んでも楽しいんだよね!(笑)

鳥飼先生の作品には、「観察者シリーズ」の他にもいくつかのシリーズがある。
綾鹿市(あやかし)という架空の地域で起こる事件シリーズ、その名もズバリ「綾鹿市シリーズ」も、鳥飼先生の代表作の一つだ。
今までトリカイズム宣言の中で、「綾鹿市シリーズ」の中から「太陽と戦慄」「痙攣的」「爆発的」「このどしゃぶりに日向小町は」について拙い感想を書かせて頂いている。
そして鳥飼先生ご自身から、コメントまで頂戴するファン冥利に尽きる体験をさせて頂いた。
鳥飼先生、いつもありがとうございます!
今回はその「綾鹿市シリーズ」から「逆説的」について書いてみよう。

「逆説的 十三人の申し分なき重罪人」は2005年に刊行された時には「逆説探偵 13人の申し分なき重罪人」だったらしい。
改題されて「逆説的」になったのね!
SNAKEPIPEの手元にあるのは「逆説的」だから改題後ということなんだね。
文庫版のあとがきで知ったけれど、「逆説的」は「小説推理」という月刊誌に毎月掲載されていた短編だったという。
それをまとめた13編それぞれに別の事件が起こる、連作短編集なのである。
今まで読んできた鳥飼先生の短編より短めな印象なのは、そのせいだったのね。(笑)

いつもは短編毎の感想を書く手法(というほどのものではないけど)だったけれど、「逆説的」に関しては1編が短いのでネタバレしないように書いていくのは難しいかもしれないな。
今回は主に「逆説的」の登場人物についてまとめてみよう。
鳥飼先生らしい、魅力的な人物が多かったからね!

「逆説的」は綾鹿署に勤務する、五龍神田(ごりゅうかんだ)の語りで進行する。
五龍神田の階級は巡査部長、年齢は43歳。
本人曰く「冴えない風貌の中年」という設定で、本人が語り部なので、あまり詳しい描写はない。
五龍神田の目で見た他の人物評には詳細な記述があるんだけどね。
鳥飼先生の著作「妄想女刑事」の主人公である宮藤希美のような妄想癖があるけれど、宮藤希美とは正反対の結果をもたらすのが特徴か。(笑)
それにしても五龍神田って名前、ものすごくインパクトあるよね?
鳥飼先生の創作なのかと思ったら、本当に存在する姓みたいだね。
うそっ?って思うような仰天名字って意外と多いことに驚くよ。

五龍神田巡査部長のことを「リュウの旦那」と呼んでいるのが、「たっちゃん」である。
「たっちゃん」こと田中辰也は、「逆説的」第1話冒頭から登場するホームレスだ。
西野中央公園を根城にして、およそ10年「公園の主」として君臨しているベテランのホームレスなのである。
「たっちゃん」はまるでギリシャの哲学者のような容姿で、五龍神田に様々な有益な情報をもたらしてくれる貴重な協力者なんだよね!
ギリシャの哲学者みたい、ということでエピクロス画像をチョイスしてみたよ!
この風貌ならスーツも似合いそうだもんね。(笑)
SNAKEPIPEが「逆説的」の中で一番興味を持ったのが「たっちゃん」かな。
「『太陽と戦慄』にも登場してるよ」
なんとROCKHURRAHから情報が!
SNAKEPIPEの貴重な情報源はROCKHURRAHだね。(笑)
鳥飼先生の著作「太陽と戦慄」も「 綾鹿市シリーズ」だから西野中央公園が登場して「たっちゃん」も出てきたわけね。
鳥飼ワールドには揺るぎない「綾鹿市」があって、地名や生活する人が確実に存在していることがよく分かる。
「 綾鹿市」のマップ欲しいなあ。(笑)

西野中央公園に出入りするようになった新入りホームレスが登場する。
「たっちゃん」の弟子みたいに行動を共にする、十(つなし)徳次郎、通称「じっとく」である。
それを聞いた五龍神田は、拾得(じっとく)を思い出す。
拾得とは中国、唐代の僧で普賢菩薩 の化身とされ、禅画にも描かれる人物だという。
右がその描かれた禅画で、左側のほうきを持っているのが拾得、右側が寒山(かんざん)という僧。
西野中央公園にいる「じっとく」は猫背で、もじゃもじゃの蓬髪をした薄汚れた男。
いわゆるホームレスらしい男だけれど、僧の拾得と同じように愚者のフリをしているだけなのだろうか?
「じっとく」の発する不思議な言葉が五龍神田にヒントを与えるところが面白いね!(笑)

五龍神田の同僚、綾鹿署に勤務する面々も他の鳥飼先生の著作に登場している。
五龍神田が主役として登場する「逆説的」は「綾鹿市シリーズ」のスピンオフ作品という認識で良いのかな?
五龍神田の上司である谷村警部補と南巡査部長のコンビはほとんどの「綾鹿市シリーズ」に登場している常連だからね。
谷村警部補はキューピー人形のような童顔なのに、ダミ声で下品、という特徴がある。
こんなギャップがある人、本当にいそうだよね!
あえて例えれば「Ted」みたいな感じかな?(笑)
そして南巡査部長は谷村警部補の腰巾着で、特徴は赤ら顔だという。
この2人組と五龍神田が競うように事件を解決していくのである。

もう一人、探偵として登場する星野万太郎についても書いておこうか。
星野万太郎も他の「綾鹿市シリーズ」でお馴染みの人物なんだよね。
黒縁メガネをかけた、特徴のない男とされる。
この特徴の無さが探偵にはもってこい、ということなんだけど…?(笑)
星野万太郎という名前は、元中日監督の星野仙一から来ているのでは?と推測。
仙を千として万に置き換え、一を太郎にして。(笑)
鳥飼先生の作品中に出てくる名前には、ヒネリがあることが多いので、勝手に深読みしちゃうよね!

「逆説的」にある13編はそれぞれ、非常に興味深い事件を扱っている短編なんだけど、その中でも特に印象に残った作品について書いてみよう。
SNAKEPIPEは鳥飼先生の作品中に現代アートが登場するのが大好き!
今回は「堕天使はペテン師」に現代アートが出てきたよ。
エンジェル友清というアーティスト名からして、「ちょっといかがわしい」雰囲気がよく表れているし、その作品も「いかにもありそう」で嬉しくなってしまった。(笑)
あやか市美術館(美術館もある!)の学芸員による「贋作/パロディ/オマージュ」に関する説明は、「痙攣的」の「闇の舞踏会」にもあった「盗用と流用」にも通じていて現代アートの核心に迫る話だよね!
そして結論は好き嫌いで良いのでは?で落ち着いていた。
これにはSNAKEPIPEも大賛成!
何回読んでも分からない難解な文章を理解せんでも、よかと!(笑)
己の直感で楽しめたらそれで良いもんね。
エンジェル友清の師匠である杉田悪鬼(すごい名前)が住んでいる双頂山は「本格的」「太陽と戦慄」にも出てきたよ、と再びROCKHURRAHからの指摘があったよ。(笑)
そしてROCKHURRAHがエンジェル友清の作品を動画にしてくれた。
TOP画像に載せてあるんだけど、こんな感じじゃないかな?
非常によく再現できているように思うよ!

敬虔過ぎた狂信者」は、事件現場がまるで作品のようで、脳内に映像が再現できるようだった。
事件の現場はカトリック綾鹿教会、被害者がその教会の神父だという。
つい最近読んだ小栗虫太郎の「後光殺人事件」を思い出してしまったSNAKEPIPE。
宗教絡みだからね!
この短編の中で面白かったのは、教会に住む遊佐という軽度の知的障害がある男が「うう」としか喋らないのに、「じっとく」が通訳として完璧に遊佐の言葉を翻訳するところ。
しかも「じっとく」はそれまでは、ワンフレーズ程しか喋らなかったのに、通訳になった途端ペラペラ喋り出すんだよね。(笑)
谷村警部補が看破した謎も秀逸!
鳥飼先生らしいトリックだよね。

探偵の星野万太郎が初登場した「目立ちたがりなスリ師」は変わった動機を扱っていたね。
虫が好かないテロリスト」は、これまでにないスケールの大きな作品で、まるで「相棒」や「踊る大捜査線」のような刑事ドラマみたいだった。
短編だけど、この映像化された作品を観たかったな!(笑)

前述したように月刊誌に連載されていたというだけあって、短編は5月から順番に月日の経過が共に描かれていた。
綾鹿市ではこんなに事件が起こるんだね。(笑)
毎回の構成として、「じっとく」がヒントをボソリと呟き、それを五龍神田が早とちりしてしまうところが「逆説的」というタイトルに絡んでいる部分なんだよね!
読んでいるこちらまで踊らされてしまわないように注意!(笑)

毎月締め切りが決まった中で、書き続けていくことの難しさが「あとがき」に記されていたけれど、鳥飼先生の作品には苦し紛れで完成させた感じは全くなかったね。
どの短編もとても楽しく読ませて頂いた。
「綾鹿市シリーズ」で、まだまとめていないのは「本格的」と「官能的」だね。
また再読してみよう!

【ポプラ社の乱歩シリーズ風にROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンである鳥飼否宇先生の新作が刊行された。
鳥飼先生の名義としては2015年3月の「生け贄」以来ということになるんだね。
そして本格ミステリ大賞受賞後初の作品、お待ちしておりました!(笑)

タイトルは「ブッポウソウは忘れない」。
出版社であるポプラ社に情報が載っていたので転用させて頂こう。

目撃者はインコ?

大学の鳥の研究室を舞台に巻き起こる不思議な事件の数々。 そこに隠された「とリック」の秘密とは!?

第16回「本格ミステリ大賞」受賞作家が挑む 草食系ミステリ!

鳥の研究室・宝満研に所属する大学4年の野鳥翼。
平凡な大学生の彼の周りでは、ちょっと不思議な事件が巻き起こる。
鳥たちもまきこんで、へっぽこな推理を繰り広げる翼。
そんな中、彼の片思い中の先輩・室見春香が突然姿を消して――。

ありゃ?
主人公の名前、間違ってない?
野鳥じゃなくて宗像だよね。
ポプラ社に連絡しないと。(笑)
と思ったら、帯にも同じ文言が書いてあるよ?
あれー?

購入後すぐに読み始めるSNAKEPIPE。
今までの鳥飼先生の作風とは一味違うね。
主人公が大学生だからかな?

では感想をまとめていこう!
「ブッポウソウは忘れない」は連作短編なので、それぞれの短編について書いていこうと思う。
※ネタバレしないように書いているつもりですが、未読の方はご注意ください!

第一話 慈悲心鳥の悲哀
大学の理学部生物学科に所属する宗像翼は動物生態学を研究している。
日本における鳥類学の第一人者である宝満教授が指導しているので、宝満研と呼ばれているらしい。
画像左のサンコウチョウという鳥を観察しているところから物語が始まる。
宝満研にいる学生達は、それぞれ研究テーマを持っていて、観察を続けデータをまとめているようだ。

同じ学年で宝満研にいるのが曽根みやこという美貌のお嬢様。
曽根の研究対象はオオルリという鳥。
せっかく観察しようとしたのに、ジュウイチという鳥に邪魔されてしまったと憤慨する。

ジュウイチには托卵という習性があるという。
托卵とは卵の世話を他の個体に托すること、つまり卵を他の巣に産み、温めてもらい子育てまでお願いしちゃうことを指すらしい。
自分の子(ヒナ)じゃないことに気付かない親鳥(仮親)にも驚くけれど、他人(他鳥)任せで育児(育鳥)放棄するのが当たり前になっている種類がいることにもびっくりしちゃうよね。
そのジュウイチの別名がタイトルの慈悲心鳥だという。(画像右)
鳴き声からその名前が付いたというけれど、 托卵の習性と慈悲という単語が結びつかないなあ。
ジュウイチのヒナの知恵もまた、慈悲とは正反対だしね?
第一話はジュウイチのヒナにまつわるミステリーだった。
話の食い違い、先入観、思い込みといった、誰にでも色んなシチュエーションで起こり得る話だと思う。
よく読まないと「こんがらかりそう」になるので注意が必要!(笑)

第二話 三光鳥の恋愛

第一話から登場していた古賀先輩のことを書いていなかったね。
古賀富吉は宝満研の修士課程2年で、甘い物とミステリーが好きな先輩だという。
丸々した体型と性格の先輩だというから、相談事をするのはもってこいの人物だよね。
古賀先輩はほとんど全ての話に絡んでくる。
さすがにミステリー好きだからね。(笑)
古賀先輩、なかなか良い味出してるんだよね!
登場するとホッとするタイプの好人物だね!

上に載せたサンコウチョウの尾の長さの違いについて観察と考察を続けている宗像翼。
この尾の長さとモテ度合いには関連性があるのかどうか?
先日たまたまライオンの立髪が男らしさのアピールなのかどうかを考察するテレビを観た。
ライオンの生息する地域とライオンの種類によって違う、というのが結論だった。
動物界にはそれぞれのルールがあるだろうからね。

サンコウチョウの恋の季節に対応したかのように、ある人物が書いたと思われるラブレターを発見してしまう宗像翼。
一体誰が誰に宛ててラブレターを書いたのか、というミステリー。
第二話が、もしかしたら1番今までの鳥飼先生っぽい雰囲気なのかもしれないね?

第三話 耳木菟の救済

本来であれば宝満研の先輩である修士課程2年の門司が世話をしているはずのオオコノハズク(画像左)。
ところが面倒を見ているのは宗像翼。
門司が入院しているからだという。
第三話はどうして門司が入院することになったのかというミステリーだ。

ミステリーもさることながら、この門司という人物がほとんど喋らないという設定が面白い。
ものすごく頭が良いとされる門司だけれど、大抵の会話を「あ行」で済ませるという。
「ああ」とか「うう」という程度なんだよね。
こういう人って実際にいそうだから、門司さんが返答する度に何度も笑いそうになってしまった。(笑)
そして中に登場する装置にも興味が湧いた。
ちょっと試してみたいよね!

ROCKHURRAHが気付いた誤字だと思われる箇所をメモ書き。
208ページ、14行目。(あえて伏せ字にして記述)

まさか古賀さんと◯◯さんが付き合っていたとは。

これ違うよね?(笑)

第四話 鸚哥の告発

宝満研の助教である九千部響が意識をなくして、机に突っ伏しているところを古賀先輩と宗像翼が発見する。
意識を失ったのは、誰かに首を絞められたせいだという。
その場にいた唯一の目撃者は、研究対象だったインコ!
文中に出てきたヨウムという種類は、アフリカ原産のインコなんだよね。(画像右)
このインコは頭の回転がよく、状況に応じた言葉を喋るという。
そのインコが発した言葉から、犯人を割り出そうとするミステリーである。

宗像翼と同学年の曽根みやこも美貌の女性、宗像翼憧れの室見春香もマドンナ、九千部響はメガネを外すと驚く程美しい目を持った女性、九千部響と同学の元ミス・キャンバス、芦屋日登美は今でも男子学生の憧れの的といった具合に、作中に登場する女性は皆揃って美女ばかり!
キレイな人が多いと、頑張れそうだよね!
きっと古賀先輩はあまり気にせず、何か食べながら読書してそうだけど。(笑)

この話も鳥飼先生らしい展開で、読みながら笑ってしまったSNAKEPIPE。
電車の中では、危ない人に間違われそうだから気を付けないと。(笑)

第五話 仏法僧の帰還

左の画像が本のタイトルになっている「ブッボウソウ」なんだよね。
なんて可愛らしいんでしょう!(笑)
そして賢そうな顔立ち。
カメラに向かってポーズを決めているように見えるほどじゃない?
この写真を見て、一目惚れしてしまったSNAKEPIPEだよ。(笑)
このブッポウソウが一年経って同じ巣に戻ってきたことから、「ある謎」が解決するのが最終話だった。
読み進めていく間、なんだかモヤモヤしていた霧がサッと晴れてスッキリすることができた!
良かった!(笑)

SNAKEPIPEには分からなかったけれど、鳥飼先生と同郷のROCKHURRAHは、読み始めてすぐに気付いたことがあるという。
人名が福岡県の地名になっているというのだ。

* 宗像市
* 小倉南区曽根
* 宝満山
* 室見川
* 那珂川
* 古賀市
* 遠賀郡岡垣町
* 田川郡添田町
* 北九州市門司区
* 福智山
* 糸島市
* 大野城市
* 九千部山
* 朝倉市
* 嘉穂郡
* 春日市
* 糟屋郡須恵町
* 北九州市若松区
* 飯塚市
* 大川市
* 遠賀郡芦屋町
* 周防灘
* 北九州市小倉北区富野

さすがによく知ってるね!(笑)
なるほど、見比べてみると納得できるね。
どこにどの地名があるのかを確認するのも楽しそう!
大野城市が大野譲先輩の名前になっているところが、鳥飼先生らしいよね、とROCKHURRAHが笑っている。
ニック・メイソンの久米一村みたいだもんね。(笑)
大野城市には小学校時代まで住んでいたというROCKHURRAH。
他にも縁のある地名があったようで、懐かしそうに思い出話を語ってくれたよ!

鳥飼先生の「ブッポウソウは忘れない」に関連するような映画をROCKHURRAHが用意してくれた。

映画の殿 第19号」でも特集した我らがジャック・ブラック主演の「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」(原題: The Big Year 2011年)である。

1年間に北米大陸で見つけた野鳥の種類の数を競う、アメリカ探鳥協会主催の記録会は「ザ・ビッグイヤー」と呼ばれる。
それは私たちが想像する「バード・ウォッチング」とは大きく異り、出場者はみな仕事や家庭生活に支障をきたすほどの時間と大金を注ぎ込み、1年間に40万キロ以上を移動して鳥探しにあけくれる。
大人になりきれない「ビッグ・ボーイズ」たちが、北米の雄大で美しい自然の中を、幸せを追い求めて奔走する様を爽やかに描いた「バード」フル・コメディ

「ザ・ビッグイヤー」と呼ばれる大会は実在していて、そのルポルタージュを元に映画化されているという。
鳥好きの人にとってはたまらない世界だろうね!

そろそろ40歳も目前という年齢にも関わらず、両親と同居。
どうやらバツイチらしいけれど、未だに夢を見ている、ジャック・ブラック演じるブラッド・ハリス。
その夢とはズバリ、「ザ・ビッグイヤー」で記録を更新すること。
探鳥の間は仕事ができないので、借金をしながら移動し、寝泊まりできる施設を渡り歩くことになる。
母親の援助で可能になった「ザ・ビッグイヤー」の参加。
正直なところ、親が甘いなと思ってしまう。
最近はどこの国でもこんな感じなのかな?

観ている途中で、SNAKEPIPEのスマートフォンが鳴った。
電話に出ようとスマートフォンを手にするけれど、着信していない!
なんとそれは、劇中のジャック・ブラックの着信だったんだよね。
偶然にも着信音が同じだったとは。(笑)

鳥好きだから「バード」と付く曲にしたかったんだろうね。(笑)

「ザ・ビッグイヤー」の記録保持者であるケニー・ボスティックを演じたのがオーウェン・ウィルソン
記録のためなら手段を選ばない悪辣ぶりは、嫌う人も多いはず。
それでもやっぱりこの人も、鳥が好きという気持ちが強いんだよね。
奥さんよりもずっと好きだというからすごいよね。(笑)
探鳥界ではトップの座に君臨しているので、様々な雑誌の表紙になっているところが、まるで「ズーランダー」のモデルの時みたいで面白かった。
「ズーランダー2」、そろそろ出るから楽しみだ!(笑)

もう一人、ずっと「ザ・ビッグイヤー」を夢見ていたのが実業家のステュ・プライスラー。
演じたのがスティーブ・マーティン
「サタデー・ナイト・ライヴ」に出演したり、脚本を手掛けていた俳優・コメディアンだから、ベン・スティラーやウィル・フェレルの大先輩になるんだね。
この3人が同じ年に「ザ・ビッグイヤー」の記録更新を狙って奮闘する物語なのである。

「ザ・ビッグイヤー」に参戦していることは内緒にして、自分が何種類の鳥を見ているか言わない。
探鳥の世界といっても、かなり激しいバトルが繰り広げられるんだね。
そして気象条件にも詳しくないと、いつどこでどんな鳥に出会えるかを予測できない。
偶然出会うだけでは記録を更新するほどの種類を確認することができないことが分かる。
時間とお金だけではなく、様々な知識、体力、気力など本当に探鳥って大変なのね!(笑)

上の画像で3人が並んで見ているのはハクトウワシ。
ハクトウワシのペアが手をつないで急降下していくシーンには驚いた!
とてもロマンチックな行動だよね。

鳥を求めて実際に撮影を行ったと思われるので、スタッフはかなり苦労したんじゃないかな?
製作費に対して興行収入が少な過ぎる数字みたい。
それでも「ザ・ビッグイヤー」と同じように、お金では買えない素晴らしい経験ができたのではないかと想像する。
鳥を探す旅、なんて実際にはなかなかできないからね。
きっと鳥が好きで、いろんな種類に詳しい人だったら、もっと楽しめるんだろうね?
映画を観ているうちにSNAKEPIPEも冒険している気分になっていたよ!

SNAKEPIPEもROCKHURRAHもバードウォッチングをしたことがないので、この映画を観て宗像翼やトビさんの姿を想像しやすくなったかもしれない。
そしてもちろん鳥飼先生も、同じように鳥を探して観察、研究されていることでしょう。
「ブッポウソウは忘れない」はもしかしたら、鳥飼先生が実際に大学時代に経験されたTrue Storyが元になっているのかもしれない。
そんな想像をしながら読むと面白いよね。
一体鳥飼先生は登場人物の中の誰なのか?
宝満教授?古賀先輩?門司先輩?主役の宗像翼?(笑)
「観察者シリーズ」とは違ったネイチャー・ミステリー、楽しかった!