箱根初上陸続編!ガラスの森美術館 鑑賞

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【箱根ガラスの森美術館前を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は「箱根初上陸!ポーラ美術館」の続編を書いていこう。

ポーラ美術館をあとにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、予約していた温泉宿へ。
露天風呂付き客室をチョイスしてもらったので、宿に着くなり体を温めることにする。
首から下はじんわり温かくて、頭は冷風に当たっていると「これぞ温泉」と感じるね。(笑)

旅館というのはどこも同じだけど、通常生活しているよりも夕食時間が早いよね。
この日も18時前には食事がスタート。
刺し身の舟盛りやしゃぶしゃぶ、キンメダイの煮付など、お腹がパンパンになるほど食べてしまった。
どうして旅館のご飯は進んでしまうんだろうね。(笑)
そんなに晩ごはんを食べたのにもかかわらず、翌日の朝食もおかわりして食べているし。
金沢に行った時もお米が美味しかったんだけど、旅行の時は食べ過ぎ注意だね。

10時のチェックアウトで、次に向かったのは「箱根ガラスの森美術館」。
ガラスに特別な興味があるわけではないけれど、宿からのアクセスが良かったんだよね。
今まで観たことがない作品に出会えることを楽しみに、行ってみることにしたのである。

歴史を感じさせる石造りの建物にエントランスがあり、チケットを購入する前にコインロッカーについて尋ねる。
ガラスの作品が多い中、荷物が少ないほうが良いからね!
「ロッカーはそちらです」と指し示されたのが、細い階段を降りた地下の場所。
ちょっと謎めいていて怖い雰囲気だったよ。(笑)
館内に入ってすぐ、見えてきたのがこの光景。
中央の池に、不思議な造形物があるよ。
これはデイル・チフーリの「パラッツォ・ドゥカーレ・シャンデリア」という作品とのこと。
タイトルにシャンデリアとあるけれど、SNAKEPIPEには未知の生命体のように見えたよ。
増殖していきそうな不気味さがとても良かった!(笑)

中庭の池を眺めながら道に沿って歩いていくとヴェネチアン・グラス美術館の館に到着する。
入ってすぐ目に入ったのが画像のヴェネチアン・マスク!
この仮面を見ると、スタンリー・キューブリック監督の映画「アイズ・ワイド・シャット(原題:Eyes Wide Shut 1999年)」を連想しちゃうんだよね。
ROCKHURRAHと交互に仮面で変装し、写真を撮る。
一番右端の仮面をかぶったROCKHURRAHが怖くて怖くて!
一瞬で別人になってしまう効果に驚いたよ。

散々撮影し合った後、ヴェネチアン・グラスの逸品が展示されている会場を歩く。
どの作品も美しくてドラマチックなんだよね!
本来の用途を超えて「これでもか」というくらい装飾し、技工を競い合っていて素晴らしい。
無駄な要素を剥ぎ取ったバウハウスも大好きだけど、TOO MUCHなデザインも良いよね!
例えるならばドラァグ・クイーンみたいな感じかな。(笑)

2つの作品を並べて載せているよ。
左のランプの豪華さったら!
土台まで贅を凝らしているのが分かるね。
右は大杯と書かれていたので置物なのかな。
ピンクと水色の色合わせが見事。
細工も細かくて匠の技を見せてくれてるね。
ガラスの森美術館は背景にも気配りされていて、タイムスリップしたような気分になったよ。

子供の道化師をモチーフにした作品。
手にランプを持ち、壁から半身を出している。
いたずらっ子みたいな無邪気さを装っているけれど、笑っている顔が非常に怖い!
このランプが似合う屋敷は、ゴシック様式だろうね。
古いタイプのホラー映画の中で、子供の目が動いたり表情が変わったりする想像をしてしまうよ。
SNAKEPIPEは「あげる」と言われても欲しくないかも。(笑)

アーティストの作品も展示されていたよ。
上がマックス・エルンストの「鵞鳥(ガチョウ)」、左下がシャガールの「農夫」、右下はピカソの「雄牛」で、それぞれデザインを担当している。
ガラスの制作はエジディオ・コスタンティーニによるもの。
エジディオ・コスタンティーニは「ガラス彫刻」の第一人者で、その創作プロジェクトはジャン・コクトーにより「フチーナ・デリ・アンジェリ(天使の窯)」と命名された、とガラスの森美術館に説明があったよ。
コクトーの働きかけでアーティストのデザインが集まったらしい。
錚々たるメンバーにより、ガラス彫刻が発展していったんだね!

ヴェネチアン・グラス美術館の鑑賞を終え、続いて現代ガラス美術館へ。
リヴィオ・セグーゾの作品は、非常にシンプルで洗練されていた。
光の当たり方で作られる影や反射はガラスならでは、だね。
大理石とガラスを使ったり、ワイヤーで吊るされた作品などもあったよ。
豪邸やホテルなど、広い空間に一点だけ飾っておきたいなあ。
もちろん適正な照明を当ててね!

モノトーンだったリヴィオ・セグーゾの展示室からカラフルな世界へ。
デイル・チフーリの作品はオレンジや黄色、深いブルーなど色とりどりで華やかだった。
画像右上は、まるで岡本太郎!
赤と緑という組み合わせとニョキニョキ生えているような形状が面白いよね。
一番最初に紹介した池に浮かんでいる「シャンデリア」もチフーリの作品だったわ!
呼吸しているような生命力を感じる作風が新鮮だね。

ミュージアム・ショップに立ち寄ってみる。
ヴェネチアン・グラスの素晴らしいランプや仮面などが販売されていたよ。
いくら気に入っても、ROCKHURRAH RECORDSの事務所にヴェネチアの仮面は似合わないなあ。(笑)
何も買わずに庭園を散歩する。
クリスタル・ガラスの粒が飾り付けられたオブジェが、そこかしこに点在している。
光が当たるとキラキラしてとてもキレイ。
雪が残る地面も良い感じだね!

「箱根ガラスの森美術館」は、来館数が多い人気のスポットなんだね。
たまたま訪れたROCKHURRAHとSNAKEPIPEも楽しんだよ!
バス乗り場まで歩いてから、ガラスの森美術館正面の写真を撮り忘れたことに気付く。
慌てて撮ったのが一番上の画像。
手前のライオンが主役みたいだよね。(笑)

一泊二日の箱根旅行、存分に満喫したよ!
憧れのポーラ美術館にも行かれたし、温泉に入って癒やされたし。
素敵なプレゼントをしてくれたROCKHURRAH、ありがとう。(笑)
またどこか旅行に行こうね!

箱根初上陸!ポーラ美術館 鑑賞

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【ポーラ美術館入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSでは3月にイベントがあるよ。
これまで何度も書いているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
そう、SNAKEPIPEの誕生日!(笑)
ちなみにSNAKEPIPEが4日、ROCKHURRAHのお兄さんが5日、そして大ファンの鳥飼否宇先生が6日なんだよね。
遅ればせながら、お兄さん、鳥飼先生、おめでとうございます!(笑)

SNAKEPIPEの誕生日プレゼントとして、箱根温泉旅館とポーラ美術館を巡る旅行プランを提案してくれたROCKHURRAH。
「えぇーっ!嬉しいっ!ありがとーっ!」
絶叫に近い声を出し、全身で喜びを表すSNAKEPIPE。
2022年6月に書いた「金沢初上陸!金沢21世紀美術館」続く「金沢初上陸続編!KAMU kanazawa」のように、観光とアートが融合した素敵な旅になること間違いなし。
ポーラ美術館では、5月29日まで「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」が開催されていて、とても気になっていたんだよね。
3月中に行かれるなら、展覧会の鑑賞も可能じゃないの!
温泉旅館の予約やポーラ美術館のチケット手配を完了し、旅行の日を迎えたのである。

箱根に行く、というのが「遠い場所を旅行する」ことだと思っていたSNAKEPIPE。
昨年10月、神奈川県に新事務所を構えたことで移動距離が変わったことを失念していた。
横浜〜小田原は1時間。
小田原〜箱根湯本は約15分!
箱根湯本〜強羅で37分くらいなので、2時間もあれば観光旅行できてしまうんだね。
「踊り子号」みたいな特別な電車に乗らなくて行かれるというのもビックリ。
旅行慣れしていらっしゃる方からみると、バカなことを言ってる、と思われるかもしれない。
神奈川県民になって約半年、車に乗ることもなく地理は苦手なSNAKEPIPEなので、驚くのも無理はないのさ。(笑)
それにしても強羅って地名、強い羅生門と連想してしまう。
いつの時代からある地名なんだろうね。

旅行の2日前には、東京でもみぞれが降っていたけれど、当日は快晴!
日頃の行いが良いからだね。(笑)
温泉旅館のチェックイン時間から逆算して、11時頃に箱根湯本に到着するような予定を組む。
来た電車に乗るだけだから、とても気楽な旅行だよ。
旅館に行く前にポーラ美術館に立ち寄ることにしよう。
ポーラ美術館には、箱根湯本、もしくは強羅からバスを利用する必要があるんだよね。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも乗り物に弱いので、少しでもバスの乗車時間が短い強羅ルートを選択したよ。
すんなり箱根湯本に到着し、一旦下車。
「ぶらり途中下車の旅」みたいだよね。(笑)
駅近くの食堂で早めのランチにする。
籠清の揚げたてかまぼこ、美味しかったー!
お腹いっぱいで強羅に向かい、バスで無事にポーラ美術館に到着。

まだ雪が残る景色の中に「POLA MUSEUM OF ART」の看板が堂々と立っている。
来たかったポーラ美術館だっ!
感激して何枚も記念撮影してしまったよ。(笑)
渡り廊下を歩き正門へ。
敷地内には彫刻が点在していたよ。
近寄って観られないのが残念だね。

ポーラ美術館のチケットは予約していたので、そのまま入ろうとすると
「お荷物をロッカーにお願いします」
美術館スタッフから呼びかけられる。
会場に入る前に荷物を置く必要があるとのこと。
美術館によってロッカーの場所が違うからね。
身軽になったところで入場する。
会場は地下にあるんだね。

エスカレーターで下ると、最初に見えてきたのがこちらの作品。
これってマルセル・デュシャンの「何か」だったはず。
あやふやな記憶を頼りに発言したSNAKEPIPEだったけれど、それは正解だったみたい。(笑)
ポーラ美術館に展示されていたのは、ケリス・ウィン・エヴァンスの「照明用ガス…(眼科医の証人による)」とのことだけど、元ネタはやっぱりマルセル・デュシャンで「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)」の中にあるモチーフ。
このモチーフは「眼科医の証人」と名付けられているんだとか。
2022年11月にアーチゾン美術館で「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」を鑑賞した時にも似た作品があったことを思い出した。
瀧口修造と岡崎和郎の連名で「檢眼圖」(画像左)というタイトルが付いていたよ。
確かに眼科の検査で「どの線が強く見えますか?」と質問される時、線で描かれた円を見たような?
およそ100年前に発表されたデュシャンの大ガラスが、現代にも影響を与えているんだね。

会場に入ってみよう。
「機械時代のアートとデザイン」というサブタイトルが付いている展覧会なので、1925年の機械類も展示されている。
手前の車は、まるで玩具みたいでとてもキュート!
その後ろには、当時のポスターが展示されている。
ほとんどの作品が撮影オッケーだったのに、カッサンドルのポスターは禁止されていたよ。
可/不可の基準は不明だね。

ROCKHURRAHと「とても好き!」とうなずきあったのがフェルナン・レジェの作品。
1920年から1950年代までの7点が並んでいる。
くっきりした線と美しい色使いが楽しい。
左の画像はポップで遊び心が感じられるよね!
レジェの作品は恐らく今までもどこかで鑑賞しているはずだけど、今回の展示は強く印象に残ったよ。
カンディンスキーやモホリ=ナギなどの大御所の作品を観ながら会場を歩く。
やっぱり1920年代いいよね!

中央に円形の展示コーナーがあり、中にはルネ・ラリックの香水瓶がたくさん並んでいた。
どれも美しくて一つずつ撮影していたSNAKEPIPEに「まだ先があるよ」とROCKHURRAHから少し急ぐようにと指示を受ける。
展示の前半に時間を割き過ぎて、後半は駆け足になるパターンが多かったからね。
ラリックの作品を何枚も撮ったけれど、載せたのはこれ。
人の形をした謎の香水瓶を選んでしまった!
しかもピンボケじゃないか。(笑)

マックス・エルンスト、キリコ、ダリ、ポール・デルヴォー、ハンス・ベルメールの作品が並んでいる。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの大好物だらけ!
残念ながら撮影禁止だったけれど、2人でヒーヒー言いながら楽しく鑑賞したよ。
シュルレアリスム、いいよね!

マルセル・デュシャン監督、マン・レイ撮影の興味深い動画があったよ。
アネミック・シネマ(貧血症の映画)」というタイトルで1925年の作品。
Youtubeを載せておこうか。

アニメーションで制作されたのかと思ったら、Wikipediaに「回転する円盤を撮影」と書いてあったよ。
実験映画という響きだけでも惹かれてしまうSNAKEPIPE。
ぐるぐるを観続けていると「貧血」というよりは「めまい」を感じるけど、夢のコラボ作品を鑑賞できて嬉しいよ!(笑)

別会場に移動すると、今度は日本の1920年代が展示されていた。
1925年は大正14年、モダニズムの時代だよね!
杉浦非水の作品がたくさん並んでいる。
絵画の中でひときわ目を引いたのが、古賀春江の「現実線を切る主智的表情」(1931年)だったよ。
国立近代美術館に所蔵されている「海」に似たタッチなので、キャプションを確認しなくても古賀春江の作品だと分かるね。
中央に間をもたせた斬新な構図と、馬をあやつるロボットが斬新!

瑛九のフォト・コラージュも素敵だったね。
2019年3月に庭園美術館で鑑賞した「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」は、1950年代に制作されたフォト・コラージュで、当時の雑誌を素材にした切り抜きだったっけ。
瑛九の作品は1937年に制作されているので、何を素材にしたのか想像するのも面白い。
フォトグラムも制作していたとのことなので、自らの作品を切り取った可能性もあるし。
実験的でダダイズムを感じるよ!

2016年12月に鑑賞した「宇宙と芸術展」で対面したことがある空山基のセクシー・ロボットが3体展示されている。
宙返りしたり伸び上がったりするロボットは、鏡で増幅して見えて面白い。
シルバー色でピカピカ光る物が大好きなSNAKEPIPEにとっては、垂涎の的!
セクシー・ロボットが自宅に飾ってあったら嬉しいだろうね。
ありゃ、同じことを2016年の記事にも書いてるわ。(笑)

鑑賞し終えて帰ろうとした時、別の展示室があることに気付く。
展示室が5つあったとはね。
展示室4に入ると、そこはなんとリヒター・ルーム!
真っ暗な会場にポワッとライトが当たり、作品を照らしている。
リヒターを鑑賞せずに帰るところだったとは!
「グレイ・ハウス」「アブストラクト・ペインティング」「ストリップ」の3作品が並んでいたよ。
2022年7月に東京国立近代美術館で鑑賞した「ゲルハルト・リヒター展」の感想で「迫力がある作品ばかりが並んでいると、一点ごとの凄味が軽減されてしまう」と書いたSNAKEPIPE。
ポーラ美術館のリヒターはそれぞれタイプが異なる展示だったため、一点ごとの作品の重さや凄みを体感できて新鮮だったよ。
「ストライプ」が浮き上がってくるように見える効果は抜群で、ポーラ美術館の演出(?)に拍手だね。

以前よりずっと気になっていたポーラ美術館を訪れることができて大満足!
また別の企画の時に鑑賞したいと思う。
次回は近隣の散策もしてみたいな。
以前「ポーラ美術館気になるよね」と話していた、現代アート好きの友人Hにも是非お勧めよ!(笑)

ポーラ美術館鑑賞後、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは温泉旅館に向かう。
この続きは次週にしよう。
どうぞお楽しみに!(笑)

ザ・ホーンテッド・コレクション 鑑賞

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【地下にあるヴァニラ画廊に降りる階段途中のポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

先週の「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio」で銀座を訪れた時、もう一つの展覧会を鑑賞していたんだよね。
それはヴァニラ画廊で開催されている「ザ・ホーンテッド・コレクション -HNコレクション奇妙な書斎-」。
2016年6月の「シリアルキラー展」、その6年後になる2022年7月の「シリアルキラー展2022」で、モノホン(!)の連続殺人鬼、いわゆるシリアルキラーが描いた絵画を鑑賞した画廊だよね。
作品を所持していたのがHN氏というコレクター。
今回は「シリアルキラー展」の範疇に収まらないHN氏のコレクションを展示する企画だという。
どんな作品に出会えるのか期待しちゃうね!(笑)

「シリアルキラー展」は大盛況で、コロナ渦で人数制限されていた会場だったのに、作品鑑賞するために順番待ちする必要があったことを思い出す。
これは2016年の時も同様で、キャプションと作品を見比べようと、あちらこちらで渋滞するんだよね。
ヴァニラ画廊は、かなり小さめの会場なので、少しストレスを感じてしまう。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」は、事前予約なくて当日券のみ販売とのこと。
「シリアルキラー展」のように大混雑もあるかもしれない。

12時の開場時間少し前にヴァニラ画廊に到着。
行列ができているかと思いきや、地下への階段を降りていくと、なんと一番乗りだった。
大混雑の懸念はなくなったので、安心したよ。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHの後ろに4,5人が並んだくらいで、「シリアルキラー展」ほどの人気ではないみたい。
ゆっくり観て回れるのは良いことだね。(笑)

ヴァニラ画廊は撮影禁止なので、今回も別の場所で画像を集めてみたよ!
感想をまとめていこう。

ヴァニラ画廊は会場がAとBに分かれていて、小さめの会場Bから鑑賞してみる。
ここには怪奇・ホラー漫画の原画が展示されていた。
水木しげるをはじめ、花輪和一、古賀新一、楳図かずお、つのだじろうなどの漫画家の作品が並んでいる。
元古本屋だったROCKHURRAHが、ほとんどの漫画家を知っているのはさすが!
壁に展示された漫画の原画の前に、ガラスケースが置いてある。
「わっ!黒死館だっ!」
ROCKHURRAHが驚いて声を出す。
小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」の初版本が展示されていた。
ROCKHURRAHが偏愛する作品なんだよね。
SNAKEPIPEもお勧めされて読んだことを思い出す。
黒死館と呼ばれる屋敷に関係する人は、召使ですら相当な知識人で文化的素養もあり、すべての会話についていかれることに驚いたっけ。(笑)
漫画の展示よりも本に大反応していたROCKHURRAHは、貴重な初版本が欲しかったのかもしれない。
昭和10年、1935年というと約90年前の初版本、一体おいくらなんだろうね?
はっきりした色使いと、アール・デコの影響を受けているような装丁が美しかったよ。

会場Aに移動して、一番最初に目を引いたのはピエール・モリニエの作品。
Wikipediaに「フェティシズムとエロティシズムを表現した官能的な作風」と書かれていて、ザッツ・ライト!(笑)
木炭を使ったような太くて黒い線で、女性を描いた作品が並んでいる。
これがとても小さくて!
近づかないとよく見えないほどだったよ。

写真も展示されていた。
モリニエが尻、足、ストッキングと靴のフェチだということがよく分かる。
倒錯者と敬遠されてしまうのも納得かも。
今回の「ザ・ホーンテッド・コレクション」では、作品リストがなかったので、タイトルや制作年についての情報がないんだよね。
「シリアルキラー展」では小冊子付きで親切だったのにな。
画家、写真家、人形作家と紹介されているので、モリニエの展覧会で全貌を観てみたいと思ったSNAKEPIPEだよ!

モリニエを鑑賞後、壁づたいに作品を観ていく。
「サーカスコレクション」として、古い時代のサーカス団員を撮影した写真が展示されている。
これはまるで映画「フリークス(原題:Freaks 1932年)」(画像左)や「エレファント・マン(原題:The Elephant Man 1980年)」みたいに、見世物小屋と曲芸などを披露するショーが合体しているサーカス団の写真なんだよね。
すでに衝撃的な映画を鑑賞していたせいか、「サーカスコレクション」に驚くことはなかったなあ。

「ザ・ホーンテッド・コレクション」で最も多く展示されていたのが、映画監督ティム・バートンのドローイングだったよ。
インクで線を引いたあと、水彩で色をつけている作品で、人物や謎の生物(?)が生き生きと描かれている。
ティム・バートン、絵が上手いなあ!
元アニメーターなので、サラサラと描けるのかもね?
作品はネットでも販売されていて、左の作品「On Pins and Needles」は、$8,775(約130万円)とのこと。
これが最も高額だったので載せてみたよ。
HN氏はたくさん購入しているので、お金持ちだよね!

映画監督で絵も描いているといえば!
敬愛するデヴィッド・リンチのリトグラフも展示されていたよ。
リンチ教という宗教あったらとっくに入っているSNAKEPIPEだけど、この作品は初めて観たかも。
右側の顔に斑点があり、左の額には「D.L.」の文字があるね。
リンチの頭文字だ!(笑)
どうやらこれは自画像みたい。
あまり意味は考えなくて良い気がするよ。
そしてこちらもネットで販売されていたようで、お値段$300、日本円で約45,000円だった。
リンチの作品がこんなにお手頃だったと知ってショックを受けたSNAKEPIPEだよ。
一桁間違ってない?

ROCKHURRAHと別に作品を鑑賞していたSNAKEPIPE。
慌てた様子でROCKHURRAHが駆け寄ってくる。
「イレイザー・ヘッドの赤ん坊が展示されているよ!」
えっ、嘘だ、そんなはずはない。
「イレイザー・ヘッド」の赤ん坊(通称スパイク)については、リンチが絶対に口を割らなかったとして有名だからね。
どんな仕掛けになっていたのか、未だに謎のまま。
展示品を観てみると、確かに「あの赤ん坊」によく似ている人形(?)がケースの中に横たわっているけれど、「実物」というキャプションはなかった。
帰宅後調べてみると、赤ん坊のレプリカを手作りして販売しているサイトを発見!
頭部はシリコン製で、注文を受けてから1週間で発送とのこと。
お値段はアメリカからの送料込みで約5万円くらい。
いくらリンチ教信者のSNAKEPIPEでも、赤ん坊のスパイクを可愛がる自信はないなあ。(笑)
HN氏のようなコレクター向けなのかもね?

他にも「羊たちの沈黙(原題:The Silence of the Lambs 1991年)」に出てきた髑髏の柄が入ったメンガタスズメの標本や、「シリアルキラー展」でも紹介されていたクレイ兄弟が描いた絵などの展示もあった。
クレイ兄弟の絵は、あの時と同じ作品だったのかどうかは覚えていないけどね。(笑)
全体的に「ホーンテッド(恐怖や不気味さ)」とタイトルにするほどの内容ではなかったように感じた。
期待していただけに、落胆も大きい。
リンチ関連の作品がなかったら、かなり不満だったかも。
行って観たから言える感想だ、ということにしておこう。(笑)

YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio 鑑賞

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【gggの旗を撮影。よく晴れた冬の空】

SNAKEPIPE WROTE:

2023年2月に「横尾忠則 銀座番外地」を鑑賞して以来、約半年ぶりにギンザ・グラフィック・ギャラリー(通称ggg)を訪れたSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
第400回の企画展として「YOSHIROTTEN Radial Graphics Bio ヨシロットン 拡張するグラフィック」が開催されているんだよね。

ヨシロットン、という名前は初耳だけれど「ロットン」の文字に反応しちゃったわけ。
セックス・ピストルズのヴォーカル、ジョニー・ロットン(ジョン・ライドン)から取られていることが明白だからね!
まさかアメリカの映画評論サイト「Rotten Tomatoes」からヒントを得ていたりして?(笑)
展覧会の案内文をみてみよう。

「R.G.B.」は光で色を表現する際の「3原色」。
パンク・ロックはたった「3コード」で世界を変えた

やっぱりパンクのほうだったね!(笑)
YOSHIROTTENについて調べてみようか。
1983年生まれの魚座。
2015年にクリエイティブ・スタジオを設立。
ファインアートと商業美術、デジタルと身体性、都市のユースカルチャーと自然世界など、複数の領域を往来するアーティスト(YOSHIROTTENのサイトより)だという。
一体どんな作品なんだろう?

今年の2月は雪が降ったかと思うと夏日に迫る気温の高さだったり、不安定だよね。
出かけた日は予報通りの晴れ!
風が強いから寒かったけれど、お出かけ日和だったよ。

gggはいつでも撮影許可してくれるありがたい場所のうちのひとつ。
念のため撮影について尋ねると、写真も動画もオッケーだけど、風景として撮って欲しいとのこと。
一枚だけをアップで撮影しないで、と理解したよ!

壁一面にモニターが並んでいる。
それぞれ別のスクリーンセーバーが流れていて圧巻の光景!
これは「Signal RGB」という作品で、「RGB PUNK」シリーズ最初の作品だという。
「どれか一つを選ぶなら?」
ROCKHURRAHから質問され、じっくり観察する。
出した結論は「60台という集合体だからこその迫力」だということ。(当たり前?)
一つには絞れなかったよ。(笑)

レトロな雰囲気の作品が展示されている。
わざと昔っぽいイメージにしていることは明白だね。
「RGB Machine」という作品で、鑑賞者が操作ができることを帰宅後に知ったSNAKEPIPE。
自動的に画面が切り替わっていたので、画像を映すための装置だと思っていたんだよね。
ボタンを押すとどんなことが起こったのか、体験しなかったのが悔やまれる。

「RGB Blueprint Series」という作品は、スクリーンセーバーの作品をプリントしたものらしい。
近寄って観ると、ところどころがシールみたいに盛り上がっていたので、てっきりコラージュだと勘違いしていたよ。
最近のアーティストは切り貼りなんかしないのか。
デジタルだもんね。(笑)

黒い壁に発光するように展示された1階から地下会場に移動する。
途中の階段はオレンジ色の光に包まれていて異空間のよう。
とてもキレイ!と見惚れながら降りていたSNAKEPIPEは、足を踏み外し転びそうになる。
たまたますれ違ったgggのスタッフの女性の腕をつかみ、コケずに済んだよ。
スタッフの方、助けてくれてありがとう!(笑)

地下は眩しいくらいの光の空間が広がっていた。
大小様々なディスプレイが並び、YOSHIROTTENの過去10年に及ぶ「全仕事」が映し出されている。
まるでパラパラ漫画のように、目まぐるしく画面が変わっていく。
「さっきの瞬間が良かったのに」
とシャッターチャンスを待っていても、同じ組み合わせにはならないんだよね。
動画で記録すれば良いのに、写真にこだわってしまうところがSNAKEPIPEらしいけど。(笑)

YOSHIROTTENの作品を観て、2021年3月に鑑賞した「佐藤可士和展」を思い出した。
有名な企業がこぞって起用するデザイナーというところに共通点があるからね。
グラフィック・デザインやディレクションという仕事は、キャプションがついて誰の作品なのかを初めて知ることが多いはず。
今回初めてYOSHIROTTENの作品を鑑賞したと思っているけれど、どこかで目にしていた可能性もあるよね。

YOSHIROTTENのカラフルな作品を満喫できたよ。
入場料フリーで素晴らしい企画を見せてくれるgggに感謝だね!