逸品制作日誌 ピンクライダースジャケット

【ロビン用に制作したライダースとプレゼントのヒップバッグ(どちらも私用)】

SNAKEPIPE WROTE:

先週参戦したROBINのライブ前、SNAKEPIPEが行っていたのは制作であった。
ROBIN用にライダースを作っていたのである。

革は以前、革イイ!ベイビー!(中尾ミエ?)の時に書いたことがあるショッキングピンクの革を使用。
今度のROBINに着て行こうと制作を思い立ったのが2月の中旬。
材料を揃え裁断を始めたのが2月最終日。
3月からミシンを使い始めて21日に間に合わせる、という強行スケジュールである。
デザインは材料屋でジッパーを手にした瞬間に閃いていたし、前回ライダースを制作した手順を大体覚えていたので、前回よりは楽だった。
ROCKHURRAHからは
「80年代っぽいね」
と言われたが、SNAKEPIPE自身のコンセプトはサイバーパンクなんだけどね。
ってやっぱり80年代じゃん。(笑)
革質が柔らかで縫い易かったのも勝因の一つだろう。
袖部分には羊革を使い、柔らかさのバランスを取った。
ROCKHURRAHの協力があったからこそ、予定通りに完成させることができたと感謝している。
ありがとう!ROCKHURRAH!

なかなか良い出来に大満足。
薄手なのでカーディガン代わりに着用できそうである。
そして今年の誕生日プレゼントとしてROCKHURRAHからもらった手作りヒップバッグと組み合わせてみると、なんとぴったり!(笑)
コーディネイトはこうでねいと!(ぷっ)

ROBINライブまでに、と集中して制作に打ち込んでいたため、完成した後はちょっと脱力してしまった。
次は何を制作しようか、と思案中。
自分用ばっかり作ってないで、販売用を制作しないとね!

ROBIN LIVE DVD 先行発売LIVE参戦!

【お馴染みライブ告知看板と入手したDVDとオマケのシート】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年12月26日「ROBIN 4THアルバム発売記念ワンマンライブ」の時に告知されていたROBINのDVD発売記念ライブに行ってきた。
場所は渋谷CLUB CRAWL

今回は残念ながら(?)ワンマンではなく、他に3つバンドが出るとのこと。
そしてDVDの販売はライブ会場での物販かネット通販のみ、との情報を知る。
更に今回の会場で先着50名にオリジナルカッティングシートのオマケがあるらしい。
DVDは必ず手に入れたい!と思っているSNAKEPIPEなので、これは是非ともオマケ付きがいいなー!

久しぶりに会った友人達との会合もそこそこに
「オマケのために先に行ってるから!」
と早々に会場入りしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
OPEN18時、に合わせて行ったのに予定変更で30分程度待たされてしまう。
がっ、待ってる間に収穫あり。
「ファンです!」
と話しかけたROCKHURRAHのおかげでROBINのベース・YASU氏に握手してもらった!
以前のHELL-RACERの時もROCKHURRAHが写真のお願いをしてくれて記念撮影が実現したし、なかなかやってくれるなROCKHURRAH!(笑)
カメラマンのSHIGEO JONES氏も何度も行ったり来たりしてて、知り合いの人とロメロ監督の話をしてるのが聞こえた。
ホラー好きのROCKHURRAHが「俺も話に参加したい!」と言ってたのもうなずける。

そんな感じで30分の待ち時間は観察してるうちに終わり、やっと開場。
1番でDVDをGET!
オマケも手に入れることに成功!(笑)
待ってた甲斐があったね!

30分程度遅れてライブがスタート。
最初はHAT TRICKERS
メンバーだと情報を得ていたHELL-RACERのギター・CHIYO-Xが会場をウロウロしてる。
あれ、ライブに出ないのかな?
などと思っているうちにスタート。
なんとなくバンドメンバーの人数が少なくなっているような?
お客さんの入りもまだ半分以下という状態だったし、大抵の場合がそうだけどトップは難しいことが多いよね。
会場全体がまだ全然盛り上がってないし。
特に今回のHAT TRICKERSは一度もスポットライトを浴びることがなく、薄暗い赤い光にモクモクとスモークを焚く演出だったため、余計にノリにくかった。
トーンが一定になっちゃうというのかな。
ほとんど盛り上がることがなく終了。
ちょっと残念だった感じ。

2番目、LINK13。
以前はLINK13企画のライブに年に4、5度は必ず参加していたので、毎回トリを飾るLINK13を観ていたけれど、企画が終わってしまってから2年以上が経過しているため久しぶりのLINK13である。
そして千葉ルック以外の場所でLINK13を観た記憶がないため、なんだかとても新鮮に感じてしまう。
おや、登場の曲がお馴染みのROLLING STONES「悪魔を憐れむ歌」から「ジャンピング・ジャック・フラッシュ」になってる。
前にもこんなことあったかな?
身長の高いベース・TEZUKA氏とギター・MITOME氏は後方からでもバッチリ確認ができる存在感。
LINK13はいつもよりも更に音のキレが良かった。
全くMCはなく曲から曲へと連続していくうちに、観客もノッてきた。
さすがだね、LINK13!
そして3曲目の後にお決まりの「後ろ向きでのTEZUKA氏へアセット」も観られて大満足。(笑)
今回のLINK13ものすごく良かった!

3番目、名古屋のバンドNEW DAWN
初めて観るバンド。
見かけがスキンヘッド集団でOi!のようだけど、音は全く違っていた。
日本語を重視したメロディアスなヘヴィメタル、とでも言おうか。
わざと逆らって長髪やめて坊主にしたような印象。
今回のセレクトはどういう基準だったのかよく分からないけれど、かなり浮いてたように思った。

そしてROBIN。
もちろんお目当てはROBINだったので、ステージ近くに移動。
バッチリ観られる良い位置を確保し安心、安心。(笑)
いよいよROBIN登場。
登場の曲が以前の曲に戻ってて良かった。(去年12月には違う曲だった)
最初の曲が「My Way」とはびっくり!
通常ならアンコールでやる曲だよ!
そして新旧織り交ぜての曲展開。
相変わらずのパンチ合戦、ものすごい盛り上がり!
前のほうで観て(聴いて)いたせいかもしれないけど、YASUのウッドベースがよく聴こえてとても迫力があった。
後で確認してみると今回の曲はほとんど発売されたDVDに収録されているもので、「発売記念」ということを意識してセレクトしてあるようだった。
そしてラストの曲は「Never Mind」。
ワンマンじゃないため、ちょっと物足りなさを感じながらも「腹八分目」ってことで納得。(笑)

やっぱりROBINのライブは汗だくになっちゃうね!(笑)
強い風の中、急に重たくなった足や冷えていく汗を感じながら渋谷に向かうROCKHURRAHとSNAKPIPE。
春はもう少し先だね!

【追記&訂正 3/23】
ROBINのライブ1曲目が「My Way」と書いてしまったけれど、「BATTLE GOES TO BLACKOUT」だったことが判明。(ROBINのHPで確認)
そうだった…。間違っていたので訂正の追記です。

ビハインド・ザ・マスク

【蟹江敬三が天知茂に早変わり!んなバカな!】

ROCKHURRAH WROTE:

あまり旬な話題もなく単に自分たちの中の好みだけをさまざまな切り口で紹介しているこのROCKHURRAH WEBLOGだが、今回書きたいのはたぶん誰でも知ってる有名な作家、江戸川乱歩について。
と思ったがこの偉大な作家をたかがブログ程度の文章量で語るのは大変すぎる。そこで乱歩の作品についてはまた別の機会という事にして今回は70〜80年代に人気だった「江戸川乱歩の美女シリーズ」という一連のTVドラマについて書いてみよう。

そもそも江戸川乱歩は探偵小説の世界で日本を代表するメジャーな作家である事は誰にも異存はないはず。そして乱歩が創り上げた明智小五郎は金田一耕助と並んで誰でも知ってる名探偵なのも確かだろう。
大正13年「D坂の殺人事件」で登場して以来、現代でもこの名前を知らない大人は限りなく少ないと思える。ただし作者や探偵の知名度の高さとは裏腹に、熱心に乱歩作品を読み漁っている現代人は案外少ないのかも知れない。少年探偵団世代は遠い昔の話、映像化された乱歩の映画も一部を除いてロクなものがないしなあ。
そう言って嘆く人にオススメ出来るかどうかは抜きにしてROCKHURRAHとSNAKEPIPEが週末の楽しみにしていたのがこのTV版乱歩シリーズ。いや、単にDVDレンタル屋のサービス・デーに一気に借りてきて休みの間に観てただけなんだけどね。
大昔には確かに人気作家で大衆に読まれていたに違いないが、実際に読まずに知ったつもりになってる世代にも広く乱歩とは明智小五郎とは、という事を知らしめたのが70年代のこのシリーズだろう。

知ってる人はとうに知ってるだろうがこれは77年からテレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」でやってた天知茂主演のTVドラマだ。天知茂が主演を務めた8年間で何と25作も作られていて乱歩の主要長編のうち映像化可能な作品はほとんど網羅されてる。
ウチの場合は正月くらいから週末限定で18作目くらいまでまとめて観たけどリアルタイムのファンにとっては「次はいつ?」と待ち焦がれる作品だったろうな。この辺は京極堂シリーズのファンも同じようなもんだろうか。

さて、このシリーズをそれぞれ少年少女時代に観ていたROCKHURRAHとSNAKEPIPEは近所のレンタル屋で見つけ大喜び、あやふやな記憶をもとに順序もメチャクチャにこれを観始める。 昔は原題ではなく「○○の美女」などというタイトルがついたこれらのドラマ、単に入浴シーンとか子供っぽい荒唐無稽な部分ばかり記憶に残っていて「バカらしいけど観るか」程度で借りてみたんだが、改めて得た感想は「やっぱりすんごく面白い」と一致したわけだ。
子供っぽい荒唐無稽な部分は乱歩の作品ではむしろ作者が好んで仕掛けるエッセンスで読者もそれを楽しむわけだから、全然マイナス要素じゃなかったという事だね。

このシリーズは大まかに言えば「黄金仮面」「黒蜥蜴」「地獄の道化師」「魔術師」「緑衣の鬼」など原作でもお馴染みの派手な怪人物が明智小五郎に挑戦して戦ってゆくというもの、あまりこけおどしの部分がなく一般的な殺人事件とその解決というもの、そういうふたつのパターンがあってそのどちらにも違った面白さがある。この辺はいわゆる通俗物と呼ばれた大人向け明智シリーズの原作と同じだね。

この手のTVドラマとしては意外なことに原作に割と忠実に作ってる部分も多く、どちらかと言うと原作至上主義のROCKHURRAHでも納得出来る範囲の脚色、割愛がされていて非常に高得点。たまに原作とはまるで違うものもあるけど乱歩の個性や作風をヘタに曲解してなくて、その辺に好感が持てる。
原作では明智小五郎が出てこない作品もTVシリーズでは無理やり明智の事件として扱われているというような強引な力技もなぜか許せてしまう。
そういう良い脚本もあるけど、このドラマに関しては明智小五郎役をやっている天知茂の素晴らしさに尽きる。

原作としては明智小五郎が活躍したのは大正末期から昭和30年までなんだが、この「美女シリーズ」は放映していたのと同時期、つまり昭和50年代という舞台設定に置き換えている。その現代(昭和50年代当時の)に活躍する明智小五郎=天知茂とは・・・。
眉毛の間の深いシワに代表されるニヒルさと当時のダンディな中年を誇張し過ぎたキザな部分だけを見れば、この名優に馴染みのない世代の人は「何じゃこのオッサンは?」と思えるかも知れないが、これが一般的に考えられる名探偵の理路整然とした推理、というイメージを軽く超越してしまってるところがすごい。
たまに007並のアクションもこなして我々もビックリの大活躍をする。事件を解決するためには常識人が恥ずかしいと思えるような事も平気でする。要するにかなり常識外れな部分も併せ持った超探偵なのだ。
極め付けは毎回恒例となっているラスト近くの明智による変装。真犯人が明智を陥れ勝利の凱歌をあげているような時に最も効果的に犯人を告発するため?なのかどうかはわからないが、ここ一番で明智は巧妙な変装を解き、真犯人だけが「あっと驚く」という仕掛け。
ほとんどの場合、見ている人には明智が誰に化けているかは事前にわかってるのにね。

ちなみに変装以外でも天知茂版明智は住み込みの庭師とか工事人夫とか、天知茂本来のイメージからはかけ離れた人物になりすまして犯人を探るといったような傾向にある。このあたりの部分は明智役の天知茂自身が楽しんでやってるとしか思えないバカばかしさに溢れていて大笑い出来る。
文章でこの面白さを伝えるのは難しいのでまだこのシリーズを観た事ない人は是非ご覧になって頂きたい。

あと、天知茂の70年代ファッションも毎回凄過ぎる。派手な水玉のスーツに水玉のネクタイなどが代表的明智スタイル、襟はきわめて大きく裾はナチュラルに広がっている。正式名称はよくわからないが関西とかで70年代のヤンキーたちに人気だったニュートラ(本来のニュートラとは別もの)と呼ばれていたものと酷似している。オフの時はこういったスーツにキャプテン帽(それじゃ横山やすしでしょう)を合わせたり、もう毎回目が釘付けとなる事まちがいなし。
もしかしたら和製アラン・ドロンといった線を狙ってたつもりなのかも知れないが、このシリーズの天知茂も作者の江戸川乱歩同様に暴走しまくってるよ。

こういうわけで天知茂はウチのアイドルとなったわけだが共演もなかなか味があってよろしい。

まずは明智の相棒役、波越警部を演じる荒井注の独特なとぼけた味。原作ではあんまり出て来なかったような気がしたが石坂浩二版金田一耕助シリーズにおける間抜けな警部役、加藤武みたいなもんだろう。

そして原作では明智夫人となる文代。本当は「魔術師」の娘として登場するんだがこのシリーズでは最初から明智探偵事務所の助手として登場する。この役を「ムー」や「さかなちゃん」で人気あった五十嵐めぐみがやっている。
明智に憧れ、美女になぜかいつもモテてしまう明智に焼きもち、という役柄。この五十嵐めぐみと天知茂のやり取りも毎回の楽しみのひとつだ。

明智小五郎と言えば忘れちゃならないのが少年探偵団という別シリーズでも活躍する小林少年。何とこの役を第一回「吸血鬼」では大和田獏、それ以降はよく知らないんだが柏原貴なる人がやってる。原作ではよく「りんごのようなほっぺ」の少年として出てくるが、このTV版の配役はどう見ても少年じゃないだろ、とツッ込んだ人も多いだろう。

明智を含めたこの4人が犯人に対するのが黄金パターンなんだが「○○の美女」とタイトルにあるように毎回必ず美女役が出てきてこれもなかなか豪華。
※ここまで律義にリンク付けてたがもう面倒なので以後省略。
由美かおる、小川真由美、ジュディ・オング、古手川祐子、岡田奈々に片平なぎさなどなど、思いっきり70年代を満喫出来る。
ほとんどの作品では入浴シーンがあるんだが、ほぼ全て吹き替え。わざわざ体だけ別の人間が吹き替えして多くの人にスタイルが良くないとか誤解されるくらいなら本人がそのままやった方がいいんじゃないの?とも思ってしまうが。

ある意味かなりカルトな作品もあるしウソっぽいけど猟奇的描写もお色気もある。幅広い層が楽しめるエンタティンメント要素を凝縮したシリーズで人気があったのも頷ける。
何しろ25作もあるから全部の感想を書いていたらキリがないし、まとめの要約と言っても「みんな大体似たようなパターンで面白い」としか書きようがなくて結構難しいんだけど、食わず嫌いでこのシリーズを素通りしていた乱歩ファンも観たら目からウロコが堕ちる事間違いなし。

実は近所のレンタル屋ではなぜかシリーズのうち最後の数本だけ置いてなくてこの「美女シリーズ」を二人ともコンプリート出来てない状況で、それが残念。いつごろDVD化されたのかは全然知らないけど、あと少しなんだから何とか入荷してもらえないものかね。

カルトは儲かると?(博多弁)

【「ピンクフラミンゴ」、「イレイザーヘッド」、「リキッドスカイ」より】

SNAKEPIPE WROTE:

4日はSNAKEPIPEの誕生日!
おめでとう、SNAKEPIPE!(笑)
いくつになっても「誕生日は嬉しい日」と言い続けていこう!
ROCKHURRAHから手作りヒップバッグのプレゼント!
春夏用、作ろうと思ってたんだよねー!
さすがに良く分かってるね!どうもありがとう!(笑)
今回は一つ年をとったSNAKEPIPEが、10代の頃から好きな分野について熱く語ってみたい。

まだカルト映画、というジャンルが確立される前、レイトショーでロングランされていた映画がある。
「イレイザーヘッド」、「リキッドスカイ」、「ピンクフラミンゴ」が代表的な作品であった。
(他にもアレハンドロ・ホドロフスキーが有名だけれど、これはまた別の機会にまとめたいと思っている。)
情報だけが先行して実際に上映されるのはごく限られた、ある一部の劇場でだけ。
もしくは上映すらされなかったのかもしれない。
今のようにネットで簡単に情報が手に入る時代ではなかったので、情報を集めるのは大変だった。
本屋で仕入れる、レンタルビデオ屋で探す、映画館での予告、など実際に足を使って調べていた。
似た趣味の友人から今度どこそこでこんな企画があるらしい、という耳よりニュースもあった。
当時の記憶が定かではないため、どのようにして実際にそれらの映画を観ることに成功したのかはっきりしない。
ただ後のSNAKEPIPEに多大な影響をもたらしたことは確実である。(大げさ)

「イレイザーヘッド」(1977年)はこのブログに何度も書いているけれど、敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの初長編映画。
フィラデルフィアの重くどんよりした空気を上手く伝えるモノクロ映像である。
主役のジャック・ナンスが若い。
そして、あの髪型。
リンチがこの映画の完成に5年近くの年月をかけたことは有名な話だが、ナンスはその間ずっとあの髪型だったとは!
改めて観直してみると、リンチがこだわりを持って映像を作り上げていったのがよく解る。
モノクロームの美学。
それは光と影を使ったグラデーション。
室内の撮影はライトで調整できるだろうが、屋外では自然光のため、思い通りの映像に仕上げるのは難しいだろう。
映画開始から約10分程度の完成までに1年半かかっている、という記事を読んだ。
ものすごい執念、物凄い情熱!
粗筋として物語を語ると平凡な男に奇妙な子供ができた話になるが、この映画はそんなに単純ではない。
本筋以外の奇妙な出来事や脇役が映画をより効果的に盛り上げているように感じる。
出口がない閉鎖的な空気、将来が予想できない奇妙な赤んぼう。
いや、果たしてアレを子供と呼べるのか?
未だにあの赤んぼうの撮影秘話は語られていないそうだが、さすがは秘密を大事にするリンチ。
謎は謎のままでイイ。
あの話を現実のものと考える、もしくは誰かの頭の中の脳内映像(もしくは夢)と考えるなどの解釈は鑑賞者の好きでいいのだろう。

リンチは恐らく子供の頃に観たモノクロホラー映画の影響を受けているのだろう。
先日観た「ドラキュラ」に「イレイザーヘッド」によく似たショットがあった。
ドラキュラも影の表現が秀逸な作品で、モノクロのエンターテインメントを堪能することができる作品である。。
写真もそうだけど、色のない世界を表現するほうが難しいだけに練られている感じがする。
ムードも抜群だしね。
もちろん好みの問題もあるけれど。
以前紹介したプレイステーション2のCFでのニック・ケイブ版はまるでイレイザーヘッドだった。
異形の出現。
なんだか分からない未知の世界に迷いこんだ恐怖。
あり得ない光景を目にして、何が真実なのか分からなくなり自分の存在自体を疑ってしまうような精神の揺れ。

近所のレンタル屋では「イレイザーヘッド」をホラーのくくりに入れてるのに違和感を感じていたけれど、実はその見識は鋭かったりして?(笑)
というよりもカルトコーナーがないのがおかしいんだけどね!

ファンならサントラも持ってて当然なんだけど、これが効果音とか赤んぼうの泣き声などが収録されている代物で。
とても夜中に聴けないよー。えーん、こわいよー!
唯一音楽といえるのはラジエーターの中で少女が歌うリンチ作詞の「In Heaven」だけ。
これは後にジュリー・クルーズに提供した詩の雰囲気と同じで、ふわふわとした浮遊感とけだるさを同時に体感できる不思議な曲である。
やっぱりリンチの主題は「夢と現実の曖昧な境界」なんだね。

「ピンクフラミンゴ」(1972年)もかなり衝撃を受けた作品である。
今まで何度観直したことだろう。
一番最初に観たのがいつのことだったか全く記憶にない。
ディバインの圧倒的な存在感とキテレツな主題だけが印象に残っていた。
ディバインのチームと、我々こそが一番と名乗りをあげたマーブル夫婦とが最低人間世界一を競うというのがテーマ。
なんとおバカでお下劣なんでしょ!(笑)
そこがこの映画の醍醐味であり魅力なんだけどね。
ディバインの派手な化粧や衣装、音楽もオシャレで悪趣味な部分以外を楽しむこともできる。
公開当時はかなりショッキングだったであろうこの映画も、今ではMOMA美術館に永久保存される栄誉を獲得したらしい。
前述のイレイザーも同様に永久保存認定。(ちなみにロメロ監督の「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」トビー・フーパー監督の「悪魔のいけにえ」も永久保存だって)
人の価値観が変わったのか、アートの領域が広がったのか。
今ではバッドテイストやB級というのは宣伝文句になってるしね。
インディーズ、というジャンルと同じ運命をたどっているのが残念な感じ。
昔を懐かしむつもりはないけれど、あまりになんでもアリでオープンな状態は面白味に欠ける気がしちゃう。
2008年にはノーカット・無修正版も登場!
ずーっと昔に新宿で掘っ立て小屋みたいなモグリの上映でノーカットを観た時以来の無修正版鑑賞となった。
日本も随分コードがゆるくなったもんだね!(笑)

「ピンクフラミンゴ」はサントラも素晴らしい!
前に書いたことがあるけれど、「サーフィンバード」が非常に効果的に使用されていたり、全体にガレージ色の強いノリがいい音楽満載。
ラストの問題のシーンで使用されている「(How Much Is) That Doggie in the Window?」はご愛嬌だね。(笑)
誰にでもお勧めできる映画ではないがSNAKEPIPEにとっては重要な一本である。

最後に紹介するのは「リキッドスカイ」(1982年)。
ニューヨークを舞台にナイトクラブに集う若者たちを描いた作品である。
音楽、ファッション、部屋の装飾、途中で挿入される商業写真など、全てがスタイリッシュ。
主人公が住んでいるような屋上テラス付きのマンションにどれだけ憧れたことだろう。以前まではレンタルで簡単に観られたのに、今では入手困難。
元々DVD化はされてないため、ビデオにプレミアが付いてる模様。
待ってるファンも多いはずだけど、何か問題があって再発できないとか?
欲しいと思ってる人、多いだろうにね?
サントラだけは再発され、当然のように入手。
監督自身も参加した完全なオリジナル曲は、ニューウェイブというよりインダストリアル・テクノと言ったほうがいいかもしれない。
かなり独創的で、音楽も強烈な印象を持つ。
劇中エイドリアンが歌う曲は、ほとんどラップ!
歌詞はパンクでなかなか面白い。
亡くなった教授に向かっても「you go to hell!」って呪いのラップを捧げてたしね。(笑)

自分の生い立ちから始まりどうしてNYに来たのかを語る主人公マーガレット。
最先端を行く飛んでる女(古い)にもこんな一面があったとは。
いや、もしかしたら現代の都心部で生活している人たちも似たような心情を持つのかもしれない。
結局自分の絶対的な理解者が一人いれば、その他大勢の視線や噂に名前が上ることでの存在確認は必要がなかったはずだ。
存在価値を見出すための他者がすべていなくなってしまった後、エイリアンに救いを求めてしまうマーガレット。
この人は自分を理解し必要としてくれる、と勘違いしちゃったんだね。
まるでウェディングドレスのような裾の長いドレスを着て、旅立って行くマーガレットは美しいけれど、切なく哀しい。

それにしてもこの映画を観た後って必ずアップルパイが食べたくなっちゃうんだよね!(笑)

上記3本が10代の頃から大好きなカルト映画である。
最近のカルト事情をよく知らないなあ。
どうやらかなりカルトの範囲が広がってるようなのでこれもカルトと呼ぶのか、と思ってしまうこともしばしば。
なんかこうグッと来るようなカルト作品にめぐり会いたいなあ!
ひとまずはリンチの新作に期待かな。(笑)