Monthly Archives: 10月 2009

【屋根裏の散歩者に出演の個性派俳優達】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、今まで何度も読み返している作家の一人が江戸川乱歩である。
乱歩の作品は何本も映画化されている。
今年(2009年)も若松孝二監督が「芋虫」を映画化、なんてニュースがあった。
乱歩の作品は製作者の創作魂に火を点ける要素があるのかな。(笑)
今回取り上げる「屋根裏の散歩者」も今までに4回制作されているようである。
そして実際鑑賞したのはそのうちの2本。
CULT映画の「くくり」に入れていいのかどうかは疑問だけど、まあいいか。

最初は1970年、木俣堯喬監督で映画化されているようだけど詳細は不明。
調べてはみたけれど情報がほとんどなくて、出演者が誰だったのかも全然分からない。
当然のように観ていない。

続いて1976年版、田中登監督。
タイトルは「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者」。
日活宮下順子、とくればそれだけである年代の方には内容が想像できるというもの。(笑)
にっ、日活ロ・マ・ン・ポ・ル・シェ!じゃなくてポ・ル・ノ!(ボケ)
そして実際観てみると、やっぱり想像通りだったのである。
原作には全くなかった設定、清宮美那子(お金持ちの奥様)こと宮下順子が主人公の物語。
この奥様が人目を忍んで「自分の快楽のため」にお出かけするアパートがある。
黒塗りの車から降りて、まっすぐ前を向きヒラヒラのついた日傘をさし、颯爽と歩く姿は秘密の場所に行くには派手過ぎる。
とても「こそこそ」しているようには見えず、かなり目立ってると思うけどいいのかなあ?(笑)
そのアパートには「奥様専用」の情人がピエロの扮装で待っている、という寸法。
このピエロってところが乱歩っぽい設定でなかなか良かった。
いつでも帽子と手袋を着けたまま狂態を魅せる宮下順子もいい味だしてるし。(笑)
そして奥様とピエロの様子を屋根裏から覗き見しているのが本来は小説の主人公、石橋蓮司演じる郷田三郎である。
石橋蓮司にはアブノーマルのイメージが強いので、覗き見をしている姿に全く違和感を感じなかった。

原作とはかなりかけ離れたストーリーが大部分を占めていて、宮下順子主体の展開については「日活だからいいのか」と思うけど、一つ重要だと思ったのは毒薬を使う場面。
映画だけ観ているとあまりに唐突に殺人計画を実行してるんだよね。
原作を読んでいるから理解できるけど、ちょっとその部分の説明が足りない気がした。
かなり無理のあるお話になってるから仕方ないのかな?
ま、それを言ってしまうとラストシーンなどはハチャメチャだし!
こんなのアリ?
時代考証されてるの?
なんてあまり深く考えなくていいのかな。
ラストの井戸のシーンが一番怖かったね!

1992年版はウルトラマンで有名な実相寺昭雄監督。
主演は三上博史演じる郷田三郎。
大抵の乱歩作品の映画化というと上述した1976年版にも「人間椅子」が、以前記事にした「 CULT映画ア・ラ・カルト!<02>石井輝男」にも「盲獣VS一寸法師」があるように2つ以上の物語がミックスされる傾向が強い。
そんな中、この作品は他をミックスさせずに純粋に「屋根裏の散歩者」に迫っているという時点で素晴らしい。(笑)
退屈を持て余した三上博史が女装して遊ぶシーンもあったりして、かなり原作に忠実に映像化されていることが分かる。
そして三上博史もとても良かった。

原作と違う点は、明智小五郎が同じ下宿にいること。
推理するためと考えてみれば、そんなにおかしな設定ではないか。
この明智小五郎を嶋田久作が演じている。
おお!嶋田久作!懐かしき東京グランギニョル!(笑)
怪優のイメージがある嶋田久作だけど、意外にも明智小五郎が似合ってたね。
それにしても天井から逆さになってニタニタ笑う嶋田久作、怖っ!

下宿には様々な芸術活動を行う人がたむろしていて、その雰囲気は面白そうだった。
創作活動だけで食べていかれたのかな、などと想像するのも面白い。
それらの芸術家達に混ざって、またもや原作にはない設定の宮崎ますみが登場するけれど、あんまり意味がなかったような気がする。
ちょっときれいどころ入れときましたから、ってな具合か?(笑)

総合的に判断すると乱歩作品の映画化として「かなりいい線いってる」作品だと思う。

そして2007年版「エロチック乱歩 屋根裏の散歩者」、三原光尋監督。
ズバリ「エロチック」とタイトルに入ってるし!
本来の主人公である郷田三郎の「ご」の字も見当たらない「屋根裏の散歩者」ってどうなの?
全く原作からかけ離れた話になってるんじゃなかろうか、と推測。
あまり観る気がしない。

「屋根裏の散歩者」はどうしても「覗き」という犯罪行為を主題にした物語のため、R-18指定になってしまうようで。
そのため「皆様是非ご鑑賞ください」とお薦めはできないけどね!

【現在でも充分斬新的!なCAN。一番右がダモ鈴木。クリックで音が鳴ります。】

SNAKEPIPE WROTE:

以前にも「お気に入りの作家」として記事にしたことがある鳥飼否宇
すべてを読破したわけではないけれど、中でも一番のお気に入りの作品「痙攣的 モンド氏の逆説」を読み返し改めてその面白さを実感した次第である。
「痙攣的」は全部で5章から成る小説で、それぞれが独立した短編でありながらも最後には種明かしがある連作短編である。
ただ「痙攣的」は殺人事件を扱うミステリー小説であるにも関わらず、あまり一般的ではない音楽や芸術を主題に置いた日本唯一(?)の作品なのである。
今回はその「痙攣的」の中で使われているパロディについて書いてみたいと思う。

と言ってはみたものの、どうやら鳥飼否宇が詳しい音楽の分野はジャーマン・プログレッシブ・ロック。
クラウト(酢漬けのキャベツ)ロックとも言われているそうで。
このジャンルに関するパロディを多様しているため、この手の音楽について知らない人にとっては全然分からない話になってしまう。
かくゆうSNAKEPIPEもはっきりと自分で分かったのは1名のみ!(笑)
パロディなんだな、と分からなくても充分楽しめる小説である。
が、パロディだということが分かると更に面白さ倍増。
一粒で二度おいしい、になると思う。
ミステリーファンよりもジャーマンロックファンの人にお薦めの小説といえるのかもしれないね。
SNAKEPIPE一人ではとても追いつかないので、ROCKHURRAHにも協力してもらい解読(?)してみた。
「多分こうなんじゃないか」と予測して書いているので、これが正解なのかどうかは分からないけどね!(笑)

第1章 廃墟と青空(ファウスト
音楽に関連したミステリー。
これから先に何度も漢字を変えて出演する相田彰(あいだあきら)。
これはもうそのもの、間章(音楽評論家)の「もじり」だろう。

ロック雑誌を主宰していた宇部譲(うべゆずる)。
これはロックマガジンの編集長だった 阿木譲とドイツのバンド、ファウストの仕掛け人ウーヴェ・ネテルベックを足した感じか?
ウーヴェを宇部にしちゃうのってすごい!(笑)

宇部譲がメンバー募集して作ったロックバンドの名前が「鉄拳」。
これは前述したドイツのバンド、ファウストからのものか?
ドイツ語で「ファウスト」とは「げんこつ」を意味するとのこと。
なるほどね!(笑)

宇部譲に見出されてメジャーデヴューした「ファンク・ポテト」のメンバーの名前が京都ヨシミ(みやこよしみ)。
これは「じゃがたら」の江戸アケミのパロディか?

「鉄拳」のメンバー入村徹(いりむらとおる)。
これはファウストのメンバー、ハンス・ヨアヒム・イルムラーから来てるのか?

実在する伝説となったバンドについての解説などがさらっと書いてあり、それも面白い。
ミステリーとしても「ほほう」と感心する成り行きになっていて、音楽とミステリーの融合がいい感じだ。

第2章 闇の舞踏会(CAN
現代アートに関連したミステリー。
またもや間章(音楽評論家)をもじった会田昶(あいだあきら)が登場。

キュレーターとして登場する檐木貫(ひさしぎかん)。
もう名前が「かん」なので、すでにCANをもじってる!

舞踏で登場するのは掘賀舟海(ほるがしゅうかい)。
これはCANのメンバーだったホルガー・シューカイからの引用だね。
まんまだし!(笑)

「ミサ」と呼ばれるパフォーマンスを行うのはウム鈴木(うむすずき)。
こちらもCANのメンバーであったダモ鈴木をもじったようで。
これもかなり大笑いのパロディだ。(笑)

「十牛図」を使ったパフォーマンスをするのが現代アート界のドン、伴鰤人(ばんぶりと)。
これはアメリカのミュージシャン、ドン・ヴァン・ヴリートことキャプテン・ビーフハートか!
だから牛だし、ドンなのね。(笑)

土方巽から始まる暗黒舞踏の歴史や現代アートにおける「盗用と盗作」の違いについて書いてあり、これらもなかなか興味深い。
パフォーマンスもデジタルアートも本当にありそうな作品だった。
一番笑わせてくれたのは「レディメイド」かな。傑作!
SNAKEPIPE個人的には「痙攣的」の中で一番好きな短編がこれ。

第3章 神の鞭(アモン・デュールII
イリュージョンアートに関連したミステリー。
気象学者として登場する英田暁(あいだあきら)。
この漢字で「あいだ」って読むのかな?

イリュージョニストとして栗須賀零流(くりすかれいる)という名前がある。
これはアモン・デュールIIのメンバー、クリス・カレールでは?
クリス、と区切らないで「くりすか」を苗字にしたところが秀逸!(笑)

アースワークやランドアートといった壮大なスケール感を持つ現代アートについても簡単に説明されている。
実際に目にすることがなく航空写真での作品群が多いため、抽選で1名だけご招待というこの小説の企画は本当にありそうな話だと思った。
SNAKEPIPEは怖いから、あまりこのイリュージョンアートは見たくないなあ。(笑)

第4章 電子美学(ノイ!
この章でいきなり話はイカになる。
イカを研究する研究所が舞台のミステリー。
綾鹿イカ学研究所の副所長としてまたもや愛田亮(あいだあきら)。
ここまでこの名前にこだわるのってすごい!
それにしても4回も漢字を変えながらも登場してくるので、余程気に入ってるんだろうね。

綾鹿イカ学研究所員に老田美香(ろうたみか)。
これはクラフトワーク、ノイ!のメンバーだったミヒャエル・ローターか。
ローターが老田。(笑)

老田美香と同じく研究員の砂井田(すないだ)。
これもクラフトワークのフローリアン・シュナイダーから来てるのか。
シュナイダーを「すないだ」ね。

研究所所長の名前がクラウス殿下。
クラフトワーク、ノイ!のメンバー、クラウス・ディンガーからの命名ね。
これ、やっぱり最高!(大笑い)

研究所で使われているシステムの名前が「ハローガロ」。
これはノイ!の曲名のようね。

突然話が「イカ」になってしまい、あまりの展開の唐突さに付いて行かれない読者が続出じゃないかと思う。
ただし、上にも書いたように同じ名前が出てくるため「ああ、やっぱり続いてるんだ」と確認ができるけど。
ここからの章はミステリーの本質に迫ってしまうので、あまり詳しく語るのはやめる。
SNAKEPIPEはイカ皮スーツは着たくないな。
そんな「いかがわしい」もの!(プッ)

第5章 人間解体(クラフトワーク
この章は第4章からの続きなので、イカの話である。
イカの知能指数の高さを示すお話が綴られていて、確かにイカってちょっと不思議な生物だよね。
先日も巨大なダイオウホウズキイカが発見された、なんてニュースもあったし。
謎が多い生物としてみるとミステリーにはもってこい、かな?(笑)

こんな感じで「痙攣的」はミステリーの領域だけにとどまらず、音楽やアートに興味がある鳥飼否宇の好きなモノ満載の小説でとっても面白いのである。
この作品以外にも横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した「中空」や「非在」などに登場する鳶さんとカメラマンの猫田のシリーズも面白い。
鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。
ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。(笑)
今回特集した「痙攣的」のような「~的」シリーズも好き。
「爆発的」と「官能的」は未読なので、早く手に入れないと!(笑)

鳥飼否宇は九州大学理学部生物学科卒業、というインテリ!
ジャーマンロックのような難解な音楽を好むかと思えば、「昆虫探偵」のような作品を書く生物好きでもあるとても不思議な人だ。
現在は奄美大島在住で奄美野鳥の会の会長やってるらしい。
アドレスに「シナプス」が入ってるところが「らしい」よね。(笑)
なんと「奄美大島ツアーで夜の森の特別ガイド」もやってるみたいだから、奄美大島に行って是非とも鳥飼ガイドの説明を聞いてみたいね!

【巣作りをしていた愛らしいプレーリードック達】

SNAKEPIPE WROTE:

10月10日、久しぶりに社会科見学と称して上野動物園に行ってきた。
大人社会科見学は産業科学館に行って以来のことなので約1年ぶりだ。
そして前回動物園に行ったのがいつのことなのか思い出せないほど昔のため、ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも子供みたいにワクワクしていた。
ROCKHURRAHは「お洒落なチンピラ」といった風情、SNAKEPIPEは「ウエスタンショップの店員」のような服装でとても動物園向きではない。(笑)
ライブに行くのと同じくらい気合を入れて、上野へ。

当日は午前中が曇り、少し雨もパラついていた。
せっかくお弁当まで持って行ったのに、ちょっと残念・・・と思っていたら午後にはすっきり晴れて社会科見学日和になっていた。
やっぱり日頃の行いが良いせいか?(笑)

上野にはたまに行くけれど、大抵向かうのはアメ横方面。
公園側を歩くのは本当に久しぶり。
動物園までの道のりを地図で確認してしまった。
傍から見たらすっかり「おのぼりさん」みたい。(笑)
ゆるゆる歩いていると無事に動物園へ到着。
えっ、入場料大人600円!二人で1200円!
すごいリーズナブルだなあ!
さすが歴史のある動物園だね、などと言いながら園内マップを確認。
特にどの動物と目的がある社会化見学ではないので、一通り歩くことにする。

まずはフクロウがお出迎え。
真っ白いフクロウってかわいい!(笑)
ワシやタカの壮観なこと!
あんなに狭い場所じゃ羽を充分に広げることもできないだろうなあ。
などと感想を言い合いながら歩いていくと
前はここにパンダがいた場所、に出た。
そうか、今は上野にパンダがいないんだね。
代わりに、という感じでレッサーパンダがスター扱いされているようだったけれど、なぜか姿を確認することができなかった。
ライオンもメスしかいなかったようで、オスは見当たらない。
動物園って「つがい」でいるわけじゃないんだ?
一匹だけじゃちょっとかわいそうな気がするな。

結構な距離を歩き、まずは前半戦とでも言うべき東園を歩き終える。
ゾウやゴリラ、トラといった「いかにも動物園に来た」と思える動物は、その大きさに圧倒され怖かった。
子供の頃は「わあ、すごい」だった感想が「怖い」に変化している。
いつの間にかいろんな想像してるんだろうね。
「こっちに緑モヒカンの鳥がいる!」
「こっちはグラムロックか越地吹雪みたい!」
などと言い合い、自然の造形や色彩に目を奪われる。
東園の中で一番SNAKEPIPEが反応した動物が上の写真「プレーリードック」だ。
テレビで見たことはあるけれど、実際に見るとそのなんとも愛くるしい姿に思わずにっこりしてしまうほど!(笑)
とってもかわいかった。

さてそろそろお腹も空いてきたしお弁当の時間にするか、という時に上野動物園はもってこいだ。
そこかしこにベンチや水飲み場、手を洗う場所、トイレなどが完備されている。
場所を探してウロウロする、という時間のロスが全くない。
テーブルと椅子がある休憩所も多く、見渡すとほとんど皆さんお弁当持参。
飲み物だけ買ってのんびりしている様子。
これまた非常にリーズナブル。(笑)
撮影禁止や持込禁止、など「禁止事項」が多い公共施設が多い中、上野動物園の「ゆるさ」は今時珍しいほど素晴らしい!
とても気持ちが良かった。

お腹も満足して、続いては「いそっぷ橋」を渡り西園に向かう。
西園の半分は不忍池が占領しているためやや「こじんまり」している。
こちらの目玉は恐らく珍獣のオカピやコビトカバ、キリンなんだろうな。
「両生は虫類館」にはワニやヘビ、イグアナ、カエルなどの人によっては身の毛もよだつほど大嫌い!というような動物がいっぱいなのにもかかわらず、意外なほど大人気!
押せ押せの人だかりにびっくりしてしまう。
世界最大にして凶暴なイリエワニがいる水槽が一番人気で、なんとワニの顔(というか頭)が水槽にぴったり貼り付いている!
寝ていたのかもしれないが、70~80cmの巨大なワニ頭をどアップで目にする機会はあまりないと思う。
あまりの大きさと迫力に腰を抜かす人が続出!(大げさ)

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが反応したのは「小獣館」という小さい動物を展示している場所。
ネズミやリスのいろんな種類が見られる場所で、とってもかわいい動物がいっぱいだった。
いい年した大人が「かわいい~!」と「うっとり」しちゃう光景はやや不気味だけれど、本当にかわいいんだから仕方ない。(笑)
西園では「小獣館」がお薦め!

特別なスター動物不在だったせいか、もしかしたら入場者数も少なかったのかもしれないが、人混みをなるべく避けたいと思っているROCKHURRAHとSNAKEPIPには都合が良かった。
そしてパンダがいなくても充分楽しかった。
あちこち見ていると、結構な距離を歩いていたと思う。
ちっ、万歩計でも買って試してみれば良かったな。(笑)
童心に返ることもできて、健康にもなる一石二鳥!
また大人社会科見学したいと思う。

【テコの原理を応用してSNAKEPIPEが作成したテクノ画像(ウソ)】

ROCKHURRAH WROTE:

今どきじゃない人々に毎回焦点を当てる不定期連載「時に忘れられた人々」シリーズも五回目を迎える事となった。好評なのか不評なのか全然わからないけど、ROCKHURRAH RECORDSの基本ポリシーがそこにあるので、これからも続けてゆきたい。
ちなみに前にポジパン特集書いた後はウチのポジパン在庫がゴソッと売れてウハウハ状態(死語?)だったものよ。
さて、今回取り上げる旬じゃない者どもはテクノポップ、あるいはエレポップと呼ばれた音楽を操るバンド達だ。1970年代後半に始まったニュー・ウェイブの中の1ジャンルとして発生した音楽なんだが、要するにこの時代にはまだ目新しかったシンセサイザーを音作りの中心に据えたバンドがウヨウヨ出てきたのが70年代後半というわけだ。それまでにもプログレッシブ・ロックやユーロ・ロックと一般的に呼ばれてるジャンル、特にジャーマン・ロックなどはいち早く電子的な音楽をロックの世界に取り入れたんだが、誰でも知る親しみやすい音楽とは言い難かった。それをポピュラーの世界に持ち込んだのがエレポップというわけ。テクノポップもエレポップも括りとしては大体同じようなものだが、微妙なニュアンスの違いもあるにはあるので、その辺は言葉と言うより感覚でわかってもらうしかない。

まあポジパンの時にも書いたが発生や歴史といった部分まで書くと長くなり過ぎるから自分の知ってる範囲で順不同、敬称略でテキトウに書いてゆこう。

<註:リンク文字は全て音が鳴ります>

Kraftwerk

誰でも知ってる元祖といえばドイツの巨匠、このクラフトワークだろうか。1970年から活動していて最初は電子楽器によるインプロビゼーション的な割と実験的作風だったが70年代半ばから非人間的ヴォイスと極端に無機的な音作りを会得してから、この手の音楽としては奇跡的とも言えるヒットを放った。真っ赤なシャツにネクタイ、そして耳の横の鬢をスパッと切り落としたテクノ刈りなど音楽以外にもさまざまな分野に影響を与えたところが他のジャーマン・ロックよりも目新しかった部分かな。江口寿史の漫画でもパロディ化されたりしたなあ。

Bill Nelson

日本ではあまり一般的ではないが、元々は74年にデビューしたビー・バップ・デラックスを率いていた人。デビュー当時はグラム・ロック寄りのハード・ロックといった路線だったが40〜50年代の人が考えたB級SF的近未来、という個人的趣味を大々的に取り入れたコンセプトの音楽を発表し続けた功績は大きい。ビー・バップ・デラックス解散後にソロとなってYMOのツアーにもギタリストとして参加したり驚異の一発屋フロック・オブ・シーガルズを見出したり日本人の奥さんを娶ったり多方面で活躍したが、最も好きだったのは79年のビル・ネルソンズ・レッド・ノイズ時期のエレクトリック・パンクな頃だ。映像はオフィシャルなものではないがビル・ネルソンという人が目指したものが一目瞭然でわかる構成となっていてヘタな文章よりは説得力があるもの。

Yellow Magic Orchestra

テクノと言えば真っ先に誰もが思い浮かべるのが外国のどのバンドよりもこのYMOだろう。クラフトワークの持つコンセプトを東洋に置き換えてさらにわかりやすく大ヒットさせたという功績は大きい。欧米と違いヒットチャートも音楽番組も歌謡曲中心、ロック出身者にとっては不利だった当時の日本でほとんど歌なしの「テクノポリス」や「ライディーン」がヒットした現象もたぶん前代未聞。

Ultravox

パンク以前から活動していたバンドでビル・ネルソンなどと同様、英国ニュー・ウェイブの元祖的存在がウルトラヴォックスだろう。テクノポップとかエレポップという分野で語るのは少しお門違いかも知れないくらいにエレクトロニクスは多用してないんだが、ちょっとだけ使うのがいいのよん。いかに効果的かは聴いてみるとよくわかる。ジョン・フォックス在籍時の初期は荒々しく性急な音楽性とヨーロッパ的耽美世界がクロスオーバーした音楽で(何じゃこの陳腐な表現は?)まさにこれこそ先駆的、とマニア受けするバンドだったがエラが張ったオバチャン顔のジョン・フォックス(♂)の風貌のせいか一般的な人気にはならなかった。その後のミッジ・ユーロの時期に大ヒットして日本でもサントリーCMなどであまねく知られる存在となった。当然、個人的にはジョン・フォックス時代が好き。このウルトラヴォックスの手法(荒々しい歌と演奏+ちょっとだけキーボード)をうまく進化させたのが少し後に登場したXTCやこの次に挙げる人だと言える。

Tubeway Army

このバンド名で書くよりもゲイリー・ニューマンと言った方がピンとくるか。ニュー・ウェイブ初期にウルトラヴォックスの音楽性を換骨奪胎した幻想アンドロイドが彼だ。タカラの変身サイボーグやSF映画のアンドロイドを思わせる風貌とウルトラヴォックスよりはエレクトロニクスをやや駆使した音楽が受けて数曲大ヒットしたがその後は失速。ROCKHURRAHブログでも前に登場していて(「軟弱ロックにも栄光あれ」)同じような事書いてるな。

Plastics

YMOを元祖とする日本のテクノポップは当時のニュー・ウェイブ・カルチャーの中で浸透してゆき、日本独自の発展をした。音楽一筋の生き方をしてたわけではないカタカナ職業(またしても死語か?)の人たちが集まって遊びのように始めたこのプラスティックスも「こんなのありなんだ」という世界で非常に面白かった。ヴィジュアルも音楽も30年後の今でも通用するクオリティだね。というか音楽もファッションも個性も三流だと思える現代日本のポップス界と比べるのも意味のない行為か。

ヒカシュー

21世紀の今でも彼らの代表作「20世紀の終わりに」を聴いてノリノリのROCKHURRAH一家だ。ヒカシューの場合はテクノポップという分野に演劇、そして奇妙で気色悪いものを取り入れたのが新しいと思える。石井輝男監督の大傑作「江戸川乱歩の恐怖奇形人間」の主役と似た巻上公一のインパクトある顔立ち、そして「ぴろぴろ」に「プヨプヨ」だもんな。一般人にゃとても真似出来ません。

Der Plan

最初の方でも書いたがドイツは80年代には日本と並ぶテクノ先進国だった。本家クラフトワークや脱退組によるノイ!、ラ・デュッセルドルフなどという先例もあったが70年代後半から俗に言うノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ドイツのニュー・ウェイブ)のバンド達が次々と意欲的に活動していたからだ。ただし伝統と言うべきか電子楽器を使ってもどちらかと言うと実験的なバンドが多かった分野なわけだが、その中にあってこのデア・プランは日本のテクノにも通じるわかりやすいエレクトロニクスで人気があった。代表作「グミツイスト」などは歌詞もすばらしくチープなテクノ・クラシックスの名曲。今回は誰でも知ってるようなバンド達が多かったから敢えてここに書いてみた。

Depeche Mode
テクノという自信ありげな響きと違いエレポップというのはいかにも頼りなげで取って付けたかのようなネーミングの軟弱感がある。その辺の微妙な色彩を体現した代表選手と言えばこのデペッシュ・モード(初期)が真打ちだろう。あどけない顔立ちにチェックシャツ、そして吹けば飛ぶようなチープなエレクトロニクスの単音、何と親しみやすいメロディだろうか。特別な才能を持ったアーティストというよりは隣の弟分が作ったハンドメイドの音楽という感じが初期デペッシュ・モードの良さだった。しかしその後には随分と力をつけて独自の路線を見出したようで、逆に素人臭さが抜けた彼らにあまり興味を持てなくなった。あのチェックシャツはどこに行ったんでしょうか?

???

長くなったし書いてる今は午前3時。最後はこの人で締め括ろう。この一曲のみなんだがちゃんとリッパに「テクノ」と明言しているからこれでいいのだ。作曲は「東京ワッショイ」で有名な遠藤賢司、バックを東京おとぼけキャッツが務めているのもマニアックだな。「テクノポップやエレポップでももっと有名なバンドあるじゃないか」などという意見もあるかも知れないが思いついた順なので、時間切れになってしまい申し訳ない。まとめの言葉も何もないけど、ではみなさんおやすみなさい。