Monthly Archives: 5月 2015

【画像では解り辛い!目の前に立つと吸い込まれそうになるAnish Kapoorの中が空洞の作品void】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで何度読み返したのか覚えていない。
次に何を読もうか迷った時に、必ず手に取ってしまうのが鳥飼否宇先生の「中空」である。
この小説は先生の名前を世に知らしめるきっかけになった、2001年に横溝正史ミステリー賞優秀賞を獲得した鳥飼先生のデビュー作だ。
以前より何度も先生の著作について拙い感想を書かせて頂いている中に、「痙攣的」をまとめた記事もある。
その記事の中で、「中空」や「非在」も面白い、なんて書いておきながら感想をまとめていなかったんだよね!
好き好きアーツ!#30 鳥飼否宇 part9–生け贄–」の最後で触れていたように、鳥飼先生の旧作を改めて再読し、感想を書いてみようと思ったのである。

「痙攣的」ですっかり先生の虜になったSNAKEPIPEは、「中空」でも魅力的な登場人物と出会うことになる。
先生の分身のような存在である(鳥飼先生ご自身は否定されているけれど)鳶山久志、通称トビさんを探偵役に据えた「観察者シリーズ」は、2015年の今年にも新刊が出た、現在も続く大人気シリーズである。
そしてトビさんに探偵役をさせるきっかけを作るのが猫田夏海、通称ネコである。

「中空」は、植物写真家であるネコが、屋久杉の撮影を終え、鹿児島在住のトビさんと待ち合わせ、居酒屋で飲んでいるところに耳寄り情報をもたらす人物と出会ったことから始まる。
行商人である旅庵から、滅多にお目にかかれない竹の花に関する話を聞くのである。

かつてSNAKEPIPEの祖母の家は茨城県にあり、農家だった。
昔話に出てくるような藁葺き屋根。
庭には柿の木やビワの木があって、木の下にはガチャコンと組み出す井戸があり、トイレは外の掘っ立て小屋だった。
トイレ、というよりは厠という呼び方のほうが適切だね。
いわゆるボットン式だったから。
夜、そこに行くのは大変な勇気が必要だったものだ。
もし今、またあの場所にいったとしても、あの厠はかなり怖いだろうな。

そして、裏庭は見事な竹林だった。
サワサワと風に揺れる竹の葉の音。
見上げると全く空が見えないほど高さのあった竹は、日差しを遮り涼しい空間を作っていた。
物心つく前の記憶だから全く当てにはならないけど、竹の花を見たことはないはずだ。
多分、そう、だと思う。
この一文を書くために、かなりの行数を費やしたね。(笑)

左の画像が竹の花らしいけど?
あんまり花って感じには見えないよね。
作中にもあったように、竹の花は60年から120年の周期で咲くと言われている。
見たことがないのも当たり前だね。
そのため開花を鑑賞できるのは、本当に稀なことなので、植物写真家のネコが話に食いつくのもうなずける。
ただし竹の花に関するもう一つの情報については知らなかったようだ。
開花が珍事だからか、不吉なことが起きるという噂のことである。

旅庵さんに教えてもらった道を行き、トビさんとネコは奥深い山道を延々と歩き、ようやく目的地である「竹茂村」に到着する。
架空の村という設定だけれど、鹿児島県の大隅半島の先端近くの田舎とのことで方言は鹿児島弁である。
文章として読んでいるから、理解できる範囲の方言だと感じるけれど、ネコが言っていたように、ヒアリングだけでは会話を成立させるのは難しそうだ。
SNAKEPIPEは「じゃっどん」がお気に入りで、ROCKHURRAH相手に使用することがある。
福岡や長崎でいうところの「ばってん」と同じだね。(笑)

会話に不自由を感じながらも、旅庵さんから村の住人を紹介してもらう。
「竹茂村」は7世帯が、共同生活を送っている自給自足の村だった。
桐野夏生の小説「ポリティコン」(2011年)ではトルストイの「イワンのばか」から命名した「唯腕村」という自給自足の村が舞台だったけれど、「竹茂村」では「老荘思想」の小国寡民の考えを実践した理想郷を目指してきたという。

孔子ならば多少は教科書にも載っていたので知っているけれど、老子や荘子、ましてその思想についての知識は皆無といって良いSNAKEPIPE。
ちなみに小国寡民とは「国土が小さくて、人口が少ないこと。老子が理想とした国家の姿」だという。
小国寡民には続きの漢文があり、その中で「足るを知る」ことや「穏やかに生活する」というようなことも書かれている。
村人以外の人との関係を築かないことも重要とされている。

自給自足といえば、かつてアメリカでヒッピー達がコミューンを作っていた話を読んだことがあるSNAKEPIPE。
良いな、と憧れたことがあったけれど、農作業やら家畜の世話、水を組んできたり、川で洗濯したり、藁でカゴを編んだり、干し芋を作ったり!
こう書いてるだけでも大変そうだよね。(笑)
桐野夏生の「唯腕村」では、目指していたはずの理想郷とは別の、ドロドロした人間臭い村に成り果てていたね。
恐らく最初はユートピア建設に向けて、村人全員が同じ方向を向いていただろうけど、やっぱり人間だもの。みつを。
桐野夏生は人のいや〜な部分を描くのが上手いよね!

一方、鳥飼先生の「竹茂村」は、創始者達が理想としたままの信念を貫いて生活をしているという。
完全に封鎖された村というわけにはいかないため、旅庵さんのような行商人が出入りすることになったというのである。
その説明を聞いて、トビさんが驚くのも無理はないよね!

20年前の事件だけは、理想郷に似つかわしくない、汚点とでもいうのだろうか。
現在は7世帯が住んでいる「竹茂村」は、8世帯だったという。
村人7名が惨殺され、1世帯がなくなってしまう大事件は、「八つ墓村」を思い出させるよね。
「8」の字と村人虐殺という点から、だろうね!
そんな忌まわしい過去があるにも関わらず、「竹茂村」は「老荘思想」を軸に存続し続けているという。
そして竹の花が咲いた時、また凶事が起きてしまうのである。

西荻窪にあるバー「ネオフォビア」には、トビさんとネコの行方を案じている2人がいた。
トビさんとネコと同じ大学で野生生物研究会のメンバーだった神野良、通称神野先輩と後輩の高階甚平、通称ジンベーである。
トビさんからの意味深なメールを受け取り、「竹取物語」を読んでいたという神野先輩。
「竹取物語の旅に出る」
というのがその内容なのである。
竹取物語といえば「かぐや姫」だよね!
確かに翁が竹を切ったら、中からかぐや姫が出てきたという話は有名だけど、「竹取物語」は読んだことないなあ。
離れた場所にいながらも、かつてのサークル仲間も竹に関して格闘している様が面白いね!
更に神野先輩の作詞作曲で弾き語りまで披露されるとは!
神野先輩は歌が上手いんだね。(笑)
「太陽と戦慄」の中でも鳥飼先生の作詞があったけれど、今回のかぐや姫の詩も良い感じ!
夢野久作の「白髪小僧」を思い出したSNAKEPIPEだよ。

そして「ネオフォビア」での選曲もファンには見逃せないシーンだよね。
ホークウィンド、ユーライア・ヒープ、キング・クリムゾン、スパークス。
SNAKEPIPEにはほとんど馴染みのないアーティストだけれど、ROCKHURRAHはさすがに知ってたよ。
「人が読んで分かる範囲の割とメジャーな選曲にしたのかな?」
とROCKHURRAHが言う。
その後の鳥飼先生の作品では、もっと一般的に馴染みのないアンダーグラウンドなアーティスト名がジャンジャン登場するから、というのが理由らしい。
デビュー作だからマニアックさを控えめにしていたのでは?と予想していた。
えー!メジャーなのー!知らなかった!(笑)

ほんとだ!ザ・ピーナッツまでカヴァーしてるし。(笑)

60年代から70年代のブリティッシュ・ロックだけを選曲しているという、神野先輩の趣味が全面に押し出された店「ネオフォビア」、実在してたら行ってみたいな。(笑)

「中空」は竹と荘子と「竹取物語」が混在し、「八つ墓村」のような残酷な事件があったかと思えば、スギ老人のボケぶりにプッと吹いてしまうシーンもある、非常に魅力的な小説であると再確認した。
ネコの大学時代のエピソードも、一見突き放したように見えるけれど、実は愛情を持って接してくれているトビさんの人柄も。
第4章の最後で「衝立に芭蕉の俳句が記されているのでは?」とネコが思う場面は、「獄門島」を指していることに気付いたよ。(笑)
やっぱり良いね!
何度読み返しても新しい発見があるもんね!
次は「非在」を読み返してみよう。
また何か発見がありそうだよね!

【極彩色に目が覚める!赤と緑のコントラストが秀逸な作品「Afronirvana, 2002」】

SNAKEPIPE WROTE:

まるでアンリ・ルソーの絵の色相を変化させたような鮮やかさに目を奪われる。
このアーティストは一体誰?
調べてみるとクリス・オフィリというナイジェリア系のイギリス人の作品だった。
1968年生まれの46歳。
更に調べてみると黒人初のターナー賞受賞者とのこと。
えっ?まさか前回の「SNAKEPIPE MUSEUM #31 Malcolm Morley」でも書いたように「ターナー賞の歩み展」で既に彼の作品に触れていたってこと?
2回連続でターナー賞関連のアーティストを紹介することになるとはね!
ターナー賞受賞者がSNAKEPIPEの好みということが判ったし、観ていたはずなのにすっかり忘れていることも確認できたね。(笑)

どうやら鑑賞していたのは左の作品「No Woman No Cry」だったみたい。(完全に忘れてる)
1998年のターナー賞受賞作品なんだね。
タイトルではボブ・マーリィの曲を思い出すし、 黒人女性が涙を流している様子はそのまんまだから素通りしていたのかもしれない。
台座と女性のネックレスの飾りになっているのが象の糞らしい。
クリス・オフィリはこの象の糞で有名になったようなんだけど。
象の糞は人種差別への反発として使用しているのかな?
更に調べると、「No Woman No Cry」は1993年に人種差別が原因で殺されたStephen Lawrenceへ捧げる作品になっているという。
そういった解説を読むことで作品への理解は深まると思うけれど、SNAKEPIPEの鑑賞基準とはちょっと違うんだよね。
あんまり思想を知らないでも良い気がして。
もっと直感的に「好き!」と思える作品を集めていくのが「SNAKEPIPE MUSEUM」だからね!(笑)

最近のSNAKEPIPEに多いのが、黒人のアーティストの紹介なんだよね。
何故なんだろうと理由を考えてみると、一番は色彩だと思う。
黒人はどんなに派手な色も上手に着こなしてしまうセンスがあるからね!
作品でも非常に斬新な色使いで驚かせてくれる。
左の作品も非常に大胆な構図に、不調和とも感じるような色彩が素晴らしいよね!
SNAKEPIPEは70年代の日本のアニメ「哀しみのベラドンナ」や「クレオパトラ」を思い出してしまった。
ちょっと雰囲気似てるよね?
この作品のシリーズが数枚並べて展示してあったら見事だろうな!

大胆構図だけではなくて、細かく描きこんでいる作品もあるんだよね。
なんともサイケデリックな印象の、吸い込まれてしまいそうな素敵な絵画!
サイズが大きくないので分かり辛いけれど、一番上に載せた画像もかなり細かく描きこまれている作品なんだよね。
アフリカよりはアジアを連想してしまうね!
こんなクッションカバー欲しいな。(笑)
ネット上にある大きめの画像でも、そのタッチの細かさが分かるほどなので、実際に作品を直に鑑賞してみたいと思ってしまう。
クリス・オフィリは他にも「にじんだ」水彩画だったり、彫刻なども手掛けていて、それぞれがまるで別のアーティストの作品のように見えてしまうほど。

そんなクリス・オフィリの個展がロンドンはもちろんだけれど、ニューヨークでも昨年開催されていたらしい。
是非日本でも開催して欲しいよね!
黒人系の展覧会というと数人のアーティストをまとめて、作品を少しずつ展示するようなタイプになってしまいそうだけど、個展として全体像を見せて欲しいものだ。
美術館のキュレーターの方、企画をお願いします!(笑)

【実際に販売されているピカソをモチーフにした椅子!日本円で6万円也】

SNAKEPIPE WROTE:

前回までの「収集狂時代」は現代アートの高額取引についての紹介記事だったけれど、アートに限定してしまうと一年に一度の更新しかできない企画になってしまうことに今更ながら気付いたSNAKEPIPE。
もう少し幅を拡げてみよう、と調べたのが椅子!
何故だか「ビザール・グッズ選手権」でも一番多く紹介しているのが椅子なんだよね。
何故そこまで椅子にこだわるのか全く自覚がないんだけど、心理分析すると何か出てくるのかな?(笑)

「収集狂時代」というカテゴリーでの特集なので、世界で最も高額の椅子ベスト5を紹介してみよう。
もちろんこの金額は将来的には変動するはずなので、2015年4月時点でのランキングということで4649!

では5位からいってみようか。
デンマークの有名な家具デザイナーフィン・ユールがデザインした「Chieftains Chair」である。
1949年にコペンハーゲンで開催されたデザイン・フェアでお披露目された際、当時のデンマーク国王であったフレゼリク9世が腰掛けたことにより「King’s Chair」とメディアが命名したけれど、後にフィン・ユール自身が「Chieftains Chair」に改名したとのこと。
翻訳すると「指導者椅子」といったところか?
素材はチーク材とクルミを使用し、革張りのシートになっている。
一見すると「ちょっと地味目の椅子」という感想を持ってしまうけれど、恐らく座り心地は最高なんだろうね?
正面からの写真1枚では判り辛いけれど、背中のカーブや肘掛け部分の曲線が美しいよね!
さて、気になるお値段は$15,970、日本円に換算すると約190万円!
これは2015年5月のレートね。
「 収集狂時代」は今まで現代アートを特集してたせいで、金額の桁数が少なく感じてしまったよ。(笑)
世界の名品の椅子1脚190万円。
手が届きそうな金額に思えてしまう。
換算、間違ってないよね?(笑)


続いては4位!
建築家のフェルナンドと法律家のウンベルトは、カンパーナ兄弟として有名なブラジルのデザイナーデュオである。
木片、パイプ、ゴムホース、ティッシュペーパー、綱線、紐、梱包材、ぬいぐるみなどの日常にありふれた材料を使った椅子やランプなどの家具デザインは、奇想天外な作品ばかり!
上のパンダちゃんがいっぱいの椅子も、一目見て「カンパーナ兄弟の作品」として認識されるほど、ぬいぐるみ椅子はインパクトが強い彼らのトレードマーク的な作品のようだね。
この椅子は限定品なので、ナンバリングがされ「Pandas Chair, Limited Edition, Campana Brothers」と刺繍が施されているとのこと。
気になるお値段は$85,000、日本円で約1,018万円也!
おお、第5位と第4位にかなりの金額差があるようで、4位で1000万円を超えてきたね!(笑)
こんなにかわいいパンダちゃんの上には座れないよねえ?
1000万円で購入しても座れないなんてね!


それでは第3位!
オーストラリアのプロダクトデザイナー、マーク・ニューソンがデザインした「Lockheed Lounge」ね。
プロダクトデザイナーって聞き慣れない言葉。
調べてみると「プロダクトデザインを手がけるデザイナーのこと」と当たり前の回答がWikipediaに載っていた。(笑)
プロダクトデザイナーには、いわゆる工業製品のインダストリアルデザイナー(工業デザイナー)だけでなく、食器パッケージなどのデザイナーも含まれるらしい。
マーク・ニューソンがデザインした商品の中には「味の素」のパッケージやauの携帯電話talbyのデザインもしていたようなので、知らぬ間に秀逸なデザインを目にしていたみたいだね!(笑)

今回の目的である椅子に話を戻そうか。

「Lockheed Lounge」はマドンナの「rain」のPVにも登場していることで有名だと言う。
少し横になるように椅子の上でくつろぐマドンナを見ることができるね。
こうしてみると、椅子の大きさがよく分かるよ。
関係ないけど、PVには坂本龍一が登場していたり、日本人をスタッフに仕立てていたりして日本を強く意識していたみたいだね?
この曲は1993年にアルバム「エロティカ」からシングルカット。
「Lockheed Lounge」は2006年のサザビーズで$968,000の値段が付いたことでランキング3位になってるんだよね。
マドンナが座ってから13年後、ということになるのかな?(笑)
日本円に換算すると約1億1600万円!
おー、ついに出ました億超え!(笑)
素材はファイバーグラス補強されたプラスチックとのこと。
なんともいえない曲線が印象的で、金属的な輝きがとっても素敵!SNAKEPIPEもちょっと欲しくなったよ。(笑)
えっ、金額が「ちょっと」じゃないって?


第2位はなんとオフィス用の椅子!
ピニンファリーナはイタリア最大のカロッツェリアである、という説明に「カロッツェリアって何?」と思ったSNAKEPIPE。
カロッツェリアはイタリア語で乗用車のボディをデザイン・製造する業者、もしくはボディ修理業者とのこと。
最近は車だけではなく、鉄道や飛行機、家電や家具、装飾品までデザインの幅を拡げているという。
そのピニンファリーナ製である「Aresline Xten」 はオリンピック選手のためにデザインされた布地を使用し、座る人の体の形に合わせて変化するクッションが特徴だという。
原動力同期傾きシステムにより、傾けられる角度も個々に調整できる。
うーむ?読んでいるだけだとその良さは分からないなあ。
お値段は、というと$1,500,000、日本円で約1億8000万円!
ひー!ほとんど2億円だよね。(だんだん金銭感覚がおかしくなっている)
上の写真で4脚あるから1.8☓4で7.2、7億2000万円だね。(笑)
見る限りでは、2億円近い金額の椅子には思えないんだけど?
もちろんスタイリッシュでシンプルで、素敵だなと思うけどね。
座ってみないと分からないよね。
いや、もし座った時に何かこぼしたりして布地にシミなんか作っちゃったらと思うと怖くて座れないよね。(笑)
こんな椅子をオフィスにおける会社なんてあるのかなあ。
もしかしたらピニンファリーナの社員は全員この椅子だったりして!?


堂々の第1位にランクインしたのはこちら!
アイルランドの女流インテリア・プロダクト・デザイナーであるアイリーン・グレイの1971年の作品「Dragons Chair」である。
1920年代に活躍していた女流デザイナーがいたことを全く知らなかったSNAKEPIPE。
アイリーン・グレイの作品はどれもモダンでシンプル、現代のデザインの先駆けだったことが良く解るね。
代表作のサイドテーブルはニューヨーク近代美術館の永久コレクションにもなっているというから、彼女の偉大さが伝わるよね!
そのアイリーン・グレイの作品が、クリスティーズのオークションでファッション・デザイナーであるイブ・サンローランによって競り落とされたというのだ。
そしてその金額が$27,800,000、日本円にしてなんと、33億1500万円!
おおっ、ついにここまでの高額が出てきたね。
それにしてもイブ・サンローラン、金持ちなんだね。(笑)

「Dragons Chair」と名前が付いているけれど、どこにドラゴンがいるんだろう?
上の画像では判り辛かったので、違う画像を検索してみたよ。
左の画像が肘掛け部分のクローズアップなんだけど、肘掛けの先にドラゴンの頭があるんだね。
西洋人が憧れを持って東洋文化をミックスさせたような雰囲気が、この椅子の魅力を更にアップさせているよね!
シノワズリとかオリエンタリズムということなのかな?
椅子本体はレザー張りで、重厚感があるね。
イブ・サンローランはこの椅子に座って、新たなデザインを考察するんだろうか?(笑)

今回の「収集狂時代」は、椅子の高額ランキングだったけれど、また別のモチーフも検索してみようかな!
今まで知らなかったデザイナーの世界、とても楽しみだ。

【映画に使われた80年代音楽特集号 その1】

ROCKHURRAH WROTE:

このシリーズ記事を発案したにも関わらず、わずか二回だけしか担当してないROCKHURRAHが久々に書いてみよう。

映画がものすごく好きなマニアというわけでもないし、よほど観たい映画以外は映画館にも行かないんだが、DVDとかで毎週2本は観てるから面白い映画もどうでもいい映画もそれなりには知ってるつもり。

そんな中から今回は「映画に使われた70年代パンクや80年代ニュー・ウェイブ」といういかにもROCKHURRAHらしい話題で選んでみようか。

まずはカナダの若手映画監督、グザヴィエ・ドランの2012年作品「わたしはロランス」から。

1989年生まれ、すでにカンヌ映画祭などでも絶賛された映画を何本か撮っていて、現在でもまだ二十代半ばというから驚きの早熟。若手監督の中でもとびっきりの若さなのではなかろうか?
映画の世界に詳しいわけじゃないからわからんが、よほどの天才性を発揮しない限りは俳優やスタッフも付いて来ないんじゃないか?などと想像してしまうよ。
そのドラン監督の三作目がこの映画なんだが、まだ二十代そこそこの若造が作った映画とは思えない出来。登場人物も監督より年上ばかりだし。
写真の主人公とヒロインの10年間に渡る恋愛を3時間弱というかなりの長さで綴った問題作だ(長すぎ)。
主人公ロランスは女性になりたいという願望を持つ教師。そういう嗜好を持ちながらも女性の恋人(写真下)がいる両性愛者だ。そして彼女フレッドにその真実を打ち明けるのだが、当然理解されない。二人は全然違う考えを持っているんだが、お互いを理解しようと努力してやっぱり叶わなかったり。結局、別れてそれぞれの人生を歩んでゆくんだけど、ロランスの方は執拗に元恋人を追い続け、そしてまた再会、というような話だ。

映画については公開当時、話題になったし色んな人が詳しく書いてるのでウチとしては大筋とは全然関係ないところに焦点を当てたい。
関係ないと言えば、ロランスの母親役で出てくる人、フランスの痛快スポ根映画「ママはレスリングクイーン」でもいい味出してたよ。人の顔や名前が覚えられないROCKHURRAHは全然気づかなかったのだが、SNAKEPIPEが見事に指摘してくれた。

90年代のカナダが舞台との事だが、この映画にはキュアーやデュラン・デュラン、デペッシュ・モードなど80年代を感じさせる楽曲が使われていて、その中でも最も印象的なのがパーティ・シーンでヴィサージの「Fade To Grey」がかかるところ。

ヴィサージは1980年代初頭にイギリスで大流行したニュー・ロマンティックというムーブメントの中心的な存在だった。ブリッツというナイトクラブの仕掛け人だったスティーブ・ストレンジが率いていたんだが、メンバーが当時のニュー・ウェイブ界の豪華連合軍だった事でも有名だ。
元リッチ・キッズ、スキッズのラスティ・イーガン、マガジンからジョン・マクガフ、バリー・アダムソン、デイブ・フォーミュラという主要メンバーが参加し、ウルトラヴォックスのビリー・カーリー、元リッチ・キッズでウルトラヴォックスのミッジ・ユーロまでいた。これはすごいメンツとしか言いようがない。

ニュー・ロマンティックは化粧をして着飾った男たちが流行らせたニュー・ウェイブの1ジャンルなのだが、70年代の同じ系列グラム・ロックをより繊細にしたムーブメントだと思える。この「わたしはロランス」に出てくる夜会のような時のBGMとして最も正しい使われ方をしてるな。

スティーブ・ストレンジは今年の2月に心臓発作で亡くなったそうだが、実は今回の記事を書くまでその事を知らなかったのでビックリしてしまったよ。情報に疎すぎ?
出てきた当初はほんのその場限りの流行りだと思っていたこのジャンルは意外にも1980年代を代表するようなミュージシャンを多数輩出し、現在に至るまでにさまざまな影響を与えてるのは確か。
80年代が一番軽くて薄っぺらな時代だと言う人もいるが、個人的には90年代以降の行き詰まったような音楽よりもよほど創造性に満ち溢れてた、輝ける時代だったと思っているよ。

しかしニュー・ロマンティックだのグラムロックだのにやたら理解を示してるROCKHURRAHだが、本人はそういうのとは真逆の風貌をしていて、 マカロニ・ウェスタン調。荒野で孤独にしてるのがよく似合うな。しかし服装は全然ウェスタンじゃないし、先の尖ったウェスタンブーツだと足が痛くてたまらないタイプだ。ん?そんな事どうでもいいか?

次は2013年の「LIFE!」。これは大昔の小説「虹をつかむ男」の映画化・・・をリメイクした作品だそう。原題は「The Secret Life of Walter Mitty」なんだが、日本では誰でもわかるようにこの邦題がついていたな。
正直言って原作も元の映画も知らないがイマドキのアレンジがされていて面白かった。
監督・主演は「ズーランダー」などのコメディで活躍していたベン・スティラーだが、「ナイト・ミュージアム」の人と言った方がわかりやすいか?今回はギャグも控えめで地味な男を熱演している。

LIFE誌はフォト・エッセイというスタイルを確立させた、1930年代から続く伝統の雑誌だった。アメリカ文化を象徴するグラフ誌だね。
しかしデジタル化の風潮で長い歴史を持つ雑誌は経営難となり休刊。編集部にも大幅なリストラが行われようとしていた。現実ではこれが2007年の事だが、映画の舞台もおそらくその頃だろうと思う。
主人公のウォルターはそのLIFE誌で写真のネガ・フィルムを保管するという業務をやっている、地味で冴えない中年男という設定。しかし妄想、空想の世界でさまざまな自分になりきるという特技(?)を持っていて、予告編などに出てくる大冒険の映像はその妄想モードの中の出来事なのだ。
ある時、LIFEの最終号の表紙を飾る写真のネガが紛失している事に気付いたウォルターだったが、そのネガを探して妄想ではなく、今度は自分自身が大冒険の旅に出る。

あらすじとしてはこういう感じなんだが、この冒険の途中、異国の寂れすぎた酒場で酔っぱらいがカラオケで歌っているのがヒューマン・リーグの大ヒット曲「Don’t You Want Me (愛の残り火)」だ。物語の大筋とは関係ないし、ほとんどの人は無反応だったシーンだろうが、これをなぜここで?しかも映画の挿入歌ではなくカラオケというすっとぼけた演出にSNAKEPIPEと二人で大ウケだった。

ヒューマン・リーグは最近別の記事でも書いたが1970年代末にデビューしたイギリスのバンドだ。クラフトワークやウルトラヴォックスを元祖としてチューブウェイ・アーミー(ゲイリー・ニューマン)、デペッシュ・モードにニュー・オーダー、ヤズー、ビル・ネルソンなどなど、80年代初期に隆盛を誇ったエレクトロニクス・ポップスという分野で活躍した。
そこまで大好きなバンドではなかったが1stアルバムをちゃんとオリジナル盤で所有してたので、好きになる意気込みは充分にあったらしい。1曲目の「Almost Medieval」や「Empire State Human」などは結構好きだったよ。

彼らは単なるエレポップで終わっておけば良かったのに、上の方で書いたニュー・ロマンティック方面にも進出した。ニュー・ロマンティックというのは音楽の形態ではなくてどちらかというとファッションや風俗のひとつ、着飾ったという点に重点を置く。で、実際にやってる音楽の大半はエレポップに近いものだったから、両方に位置するバンドがあるのは当然なんだが。
ヴォーカルのフィル・オーキーはデビュー当時は片側だけ伸ばした髪型でいわゆるワンレンっぽかったのだが、これで化粧したらかなり気色悪い。しかも目つきがダランとしたタレ目で「お人好し」に見えて仕方ないのだ。化粧して着飾ったニューロマンティックのバンド達の中では色物扱いされても仕方ないなあ。曲はいいんだけどね。近年は変な髪形もやめてスキンヘッドにしてるようだが、この目つきだとお人好しの和尚にしか見えないんだよな。小坊主たちにいつもダマされてそう。
このバンドの事を書く時、毎回髪型と気色悪さについてばかり言ってしまってファンや本人に申し訳ない。

もう一つ、今回の記事の趣旨とは関係ないが、ウォルターが所属するネガ管理部門の同僚として出てきたのがウィル・フェレル主演の「俺たちサボテン・アミーゴ」にも出ていた太った男。ウィル・フェレルもベン・スティラーもジム・キャリーもアメリカのコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」 で大人気になったので、周辺の俳優も含めて色々な映画で共演しているな。この辺の同窓会感覚も好きなところ。

さて、意外と長くなってしまったからまた次回にパート2を書くというつもりで、今回の最後はこれにしよう。
「ゾンビ革命 フアン・オブ・ザ・デッド」は2011年のキューバ映画だ。社会主義国でゾンビ映画とは何となくビックリ。
キューバ情勢について全然詳しくないのに、なぜか最近キューバについてどうでもいい発言をしてるな。ウチのブログのこんな記事でも書いてたよ。
しかしキューバでこんな娯楽映画が出てきて、そこそこ話題になったらしいというから、時代が変わったなあと実感するよ。
ROCKHURRAHは大昔はゾンビ映画通だったけど最近はほとんど観てないから他の映画と比較は出来ないが、これはホラーというよりはコメディに近いノリの良い痛快ゾンビ映画だった。さすがカリブ海の真珠と称されるだけある。ん?関係ないか?

ファンではなくフアンというのは主人公の名前ね。ドンファンのファンと同じ綴りだがスペイン系によくある名前らしい。舞台は現代のキューバ、主人公のフアンは40歳過ぎても定職についてないニートおやじだ。不安はないのかね?
ある時、相棒のニート仲間と海で釣りをしていてゾンビに襲われるが、何だかわからないうちに撃退。
ハバナに帰ってみるといつの間にやら街はゾンビのようなものに溢れて異常事態になってしまってる。

ここでゾンビものとしては定番のパニック&サバイバルが始まるんだが、守るべきものが非常に少ないその日暮らしの主人公だから、そこまで危機感もない。
元軍人だったらしいがとにかくメチャメチャに強い男でゾンビを倒しまくる。同じような境遇の強い仲間たちを集めて、これをチャンスに金儲けの事業を始めた。
ゾンビになってしまった家族をやっつける事に躊躇するのがこの手の映画としてはお決まりだが、その代わりに殺戮をしてあげようというゾンビ・バスターズのチームを作るのだ。このチーム、とにかく強いし個性もあっていいね。最初からずっと相棒だったラサロという腹の出た中年男、すっとぼけてていい味出してるね。スペイン映画で言うならサンティアゴ・セグーラ(「トレンテ」最高)のノリに近いよ。「つい殺しちゃった」みたいなブラックなノリが満載で、ゾンビとの戦闘シーンもかなりバカっぽくて笑える。
タイトルに革命などとつくからキューバ=革命という社会情勢なども織り交ぜた内容のようだが、その辺は全然気にならないほど娯楽性の高い映画でスカッとする。

この映画の最後、ゾンビの大群に立ち向かうフアン達の映像がなかなかスタイリッシュで格好良い。キューバ映画、なめてたけど思ったよりずっとレベル高いなあ。
ここでエンディング・テーマとなったのがシド・ヴィシャスの代表曲「My Way」だ。

元はフレンチポップスの曲なんだがフランク・シナトラのヒット曲として有名になった。人生の最後に自分を振り返る歌だね。麻薬で死んだシドやこの映画のラストとしては相応しい内容だと言えるか。

いまさらヘタなコメントも要らないが1970年代ロンドン・パンクの代名詞、セックス・ピストルズの二代目ベーシストとして参加したのが暴れん坊でやんちゃ、ヘロイン漬けのシド・ヴィシャスだ。ロクに演奏も出来ずにステージでいいかげんにしてるだけの男だったがルックスと生き様、死に様がパンクそのものだったので、これ以降のパンク・ロッカーに多大な影響を与えた。
ロックの歴史を変えた巻き舌ヴォーカルのジョニー・ロットンとは対照的にシドの歌は舌っ足らずで迫力ないけど、その実力の伴ってないイキガリもパンクの真骨頂と言える。

1980年代のリアルタイムに80年代の音楽が使われるのは当たり前で面白くないから、あえて最近の映画なのに音楽は80年代テイストというのを選んでみた。まだもう一回書ける分くらいはあるので、次の機会に書いてみたい。