ROCKHURRAH紋章学 化学工業ロゴ編

【化学工業編には、もちろんケミカル・ブラザーズ!陳腐過ぎ!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

「ROCKHURRAH紋章学」は前回、重工業のロゴを紹介する、本来の目的通りの記事を書くことに成功した。(大げさ!)
今回もそれに倣って、また会社のロゴを特集してみたいと思う。
じゃーん!なんと化学工業編!(笑)
重工業から化学工業に変わっただけじゃない、という声が聞こえてくるけれど、やっぱりロゴとして面白いんだよね。
秀逸なロゴ・デザインを選んでみたよ。
では早速いってみよう!

一番初めはこちらのロゴ!
OXEA はドイツのオキソ誘導品メーカーだという。
なーんて知ったように書いてみたけれど、化学のことはチンプンカンプンなので、日本語に訳すのが大変なんだよね。(笑)
英語が読めても化学に関する部分の日本語訳が難しいんだよ。
間違った紹介をしていると思うので、最初に謝っておきましょ。
ごめんなさい!
この記事はロゴの秀逸さをまとめていて、会社紹介じゃないということで許してね!

化学のことが分からないのに、何故か化学実験用の道具には胸躍るSNAKEPIPE。
フラスコとか試験官とかね。(笑)
シャーレ、なんてホントにおしゃーれだし!(ぷぷぷ!)
OXEAのOがコポコポと沸騰している、今まさに薬品を数種類混ぜている実験段階のように見えるロゴに目が釘付け!
塵ひとつ落ちていない、 ものすごく清潔な工場がイメージできる、ちょっと細めのレタリング。
色が濃い目のブルーグレーがそう見せるのか?
バランスの良い、秀逸なデザインだと思うね。

OXEAはどうやら新宿にも支社(?)があるようだけど、ビルの中みたいなんだよね。
化学実験が行われているんだろうか?
気になるところだね!

続いてはこちら!
KIALAB は化粧品、薬品や洗剤などの成分に関するイタリアのコンサルタント業を営む会社である。
あ、また断定的な文章にしちゃったけど!
実ははっきり分かっていないから許してね。(笑)
化学の構造式の輪郭を少しボカし、化学=硬いという印象を和らげている。
レタリングを細くしているのも女性らしい雰囲気だよね。
Kの文字が人で、構造式に手を伸ばしているように見えるのはSNAKEPIPEだけかな?
人の手が加わっていますよという、機械的なイメージの払拭につながっているように感じられる。

この会社のHPがロゴを使った面白いリンクを貼っているので、それも見どころの一つ。
効果的にロゴを使用しているのは、いつか真似てみたいな!(笑)


紺色とゴールドが美しいHADSELL CHEMICAL PROCESSINGのロゴは、ワッペンにしたくなるようなデザインだよね!
特殊化学薬品のパッケージングや化学処理を行うアメリカの会社とのこと。
かなり大がかりな機械を使っている様子が、HPのビデオで観ることができるよ!
その機械とフラスコに、グローバルを表現した「輪っか」を組み合わせたデザインにして、会社のイメージを視覚的に見せているところが秀逸だよね。
ビデオの造りもなかなか凝っているし、中に「ブレイキング・バッド」のウォルターのそっくりさんが出演しているところも見どころ。(笑)

以前仕事の関係で、毎日のように日本の企業や会社のHPを検索していたことがあるSNAKEPIPEだけど、海外の企業のHPの素晴らしさには驚かされるね!
ロゴに気を配る会社だったら、HPにも気を遣うのは当たり前かも。
日本は広告という点で遅れてるなあと実感しちゃうね!

最後もドイツの企業で締めようか!
MERCKはドイツのダルムシュタットを本拠とする、世界で最も古い化学品医薬品メーカーだという。
MERCKに関してはWikipediaに記事があったので、上の紹介文は大丈夫なはずだよ。
日本にもMERCK JAPANがあるようで、ちゃんと日本語HPがあったから、これで読むほうが分かるよね。(笑)
ただし本家(?)のHPの造りに比べると、少しぞんざいな感じになっているのが残念!

ロゴのデザインは、MERCKのMが途切れている部分がポイント。
カプセルに見立てて会社のイメージを表しているとは、これは一本取られましたなあ!(笑)
それが左隣りのカプセルに同調していて、世界との関わりを感じさせるんだよね。
えっ、深読みし過ぎ?(笑)
こういったグラフィックデザインは、さすがバウハウス・デザインの国だけあって素晴らしいよね!
洗練された秀逸なロゴだと思う。

今回は4つのデザインを紹介してみたよ!
前述したように、ロゴは会社のイメージを決める重要なポイントだと思うので、ロゴが素晴らしい会社や企業は大抵HPにも力を入れてることが多いように感じられた。
会社や企業自体については知らなくても、デザインという点から注目するのも面白い試みだと思う。
また次回の「ROCKHURRAH紋章学」では別の分野を特集してみよう!

「マスク展」鑑賞

【庭園美術館入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

マスク、と聞いて初めに思い浮かべるのは医療用の白いアレだろうか。
韓国で猛威をふるっている、MERSウイルスのニュースを連日聞いているせいかもしれない。
今回話題にしたいと思っているマスクは、そのマスクのことではない。
仮面を意味するマスクのことである。
仮面といえば。
三島由紀夫の「仮面の告白」、江戸川乱歩の「黄金仮面」などの文学作品に登場したり、スタンリー・キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」では謎の秘密集会に集うために、仮面を着用していたことなどを即座に思い出す。
そう、仮面には秘密めいた、今の自分ではない別人になるための装飾という意味合いが強いんだよね。
最もこれは現代人が持つ認識で、古代の人間にとっての仮面にはまた違った意味があったようだね。

そのヒントになりそうな展覧会情報をROCKHURRAHと、長年来の友人Mの2人から寄せられた。
2人共SNAKEPIPEの貴重な情報源で、面白そうな企画があると
「こんなのあるよ」
と教えてくれるのである。
鋭いアンテナを持つ2人から別々に寄せられた同じ情報!
東京都庭園美術館で開催されている「マスク展」である。
庭園美術館に行ったのは何十年前のことだろう。(遠い目)
何を観に行ったのかすら覚えていない、かなり昔のことだ。
ROCKHURRAHは一度も行ったことがないという。
この展覧会はフランス国立ケ・ブランリ美術館所蔵作品を約100点展示しているという。
きっとマスク展は面白いに違いないね!

情報はかなり早い時期に教えてもらっていたけれど、期間が長い展覧会にありがちな「まだ時間がある」という思い込み。
そうこうしているうちに会期の終了が迫ってきて、慌てて予定を立てる。
今回もまさにその「いつものパターン」になってしまい、終了間際に出かけることにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
情報を教えてくれた長年来の友人Mとは日程が合わず、別々に鑑賞することになった。

梅雨の晴れ間だったせいもあり、お出かけには良い日和だったのかもしれない。
目黒駅を降りてから、庭園美術館へと続く道に人が多く感じられる。
まさか、という予想は当たり。
意外にもかなりの人が庭園美術館を目指しているではないか!
「マスク展」ってそんなに人気あるのー?

庭園美術館の敷地内に入ってから美術館までの道のりをゆっくり歩く。
途中長い長い蟻の行列を発見して驚いたり、ミノムシに遭遇したり、生えてるキノコを目撃して「つかの間」の自然体験をする。
5分程で美術館に到着。
この庭園美術館というのは、宮家が元々使用していた洋館だったんだね。
そして東京都指定有形文化財になっている歴史的建造物だったとは知らなかった。
そのため美術館という形式ではあるけれど、その洋館自体を展示する、というのも庭園美術館の目的になるようだね。

洋館の中の仮面は一体どんな感じだろうか。
会場は地域別に「アフリカ」「アジア」「オセアニア」「アメリカ」と分かれて展示されていた。
最初がアフリカ。
アフリカ、と聞いて想像した通りの原始的な仮面が並ぶ。
説明に「結社で使用」という文章が多く、アフリカにはそんなに結社が多かったのか、と驚く。
ここで言う「結社」というのはフリーメイソンに代表されるような秘密結社とは意味合いが違う。
村の儀式に参加する、という感じになるのかな。
仮面の主な目的が死者の魂をあの世に送り届けることだったらしい。
税金の取り立て用に怖い仮面を着けた、なんていうのもあったけどね!
写真上は木製の仮面が多い中、珍しいビーズ細工の仮面である。
細かい手作業にびっくり!
丸いのは象の耳なんだって。

制作年度がいつなのか不明の展示物が多いし、全然聞いたことがない国名が書いてあったりして少し戸惑う。
プリミティブ・アートをほとんど鑑賞したことがないSNAKEPIPEなので、仕方ないかもしれないね。
ROCKHURRAHは大阪の国立民族学博物館にも行ったことがあり、意外とその手の展示が好きらしい。
民族学博物館で楽器を買った、と聞いたことがあるよ。
一体いつ使うつもりだったんだろうね?(笑)
写真はナイジェリアの仮面。
斜め横からの写真なので判り辛いけれど、真正面から観ると仮面の鼻と象の鼻をイメージしたという上の垂れた部分がきっちり重なる仕様なんだよね。
この立体の捉え方が素晴らしかった!
ピカソがアフリカの彫刻から影響を受けた、というのが良く解るね!

「アジア」と大雑把に括られると、タイや中国、日本まで対象になってしまうんだよね。
日本からは能面が展示されていた。
以前記事にした「「驚くべきリアル」展鑑賞」で紹介したハビエル・テジェスの「保安官オイディプス」を思い出す。
能面着けたウエスタン調のオイディプスの悲劇ね。(ややこしい)

インドネシアは以前好きで何度も行ったことがある国である。
ワヤン・クリッのような影絵劇は今でも上映されているはずだし、ワヤン・トペンという仮面を着けた劇もあるという。
それはまるで日本の能と同じ感じだよね。
その仮面も展示されていたよ。
インドネシアの仮面で一際目を引いたのが左の写真。

耳にあたる部分の精細さ!
ROCKHURRAHが推理したように蝶のイメージだったのかもしれないね。
顔の部分はガスマスクを思わせる馬面仕様。
色使いから全体的なバランスから、全てが素晴らしい!
この仮面をかぶってみたいかって?
いや、それは遠慮しときます。(笑)

アラスカの仮面は見ていて笑ってしまったね。
なんともユーモラスな顔立ち。
歯は最初から欠けていたのか、それとも途中で抜けてしまったのか。
この顔の形からダイキン工業のマスコット、ぴちょんくんを思い出してしまった。
SNAKEPIPEは、アラスカの人は厳しい自然を相手にしてるから険しい顔だろう、と勝手に思い込んでいたけど、違うかもしれないね?(笑)

収集狂時代 第1巻」を書いた時に、オークションで高額取引された美術品の中に「作者不詳」の紀元前の彫刻があったんだよね。
ネット上での写真でしか観ていないにもかかわらず、作品の力強さに圧倒されたSNAKEPIPE。
今回鑑賞した「マスク展」にも同じような「太古の人類が持っていた想い」を感じることができた気がする。
上述したようにピカソを彷彿させる仮面や、実際モディリアーニの絵のようだ、なんて説明も書いてあったように、現代アートにつながる系譜を観たように思う。

ただし。
庭園美術館での展示には少し無理があったように感じるね。
先にも書いたように「洋館の展示」にも意味を持たせているため、仮面を「◯◯の間」の隅っこに展示し、鑑賞するための通路は往路と復路の2人分確保されていない。
順路が非常に分り難く、部屋毎に分かれて展示されているため、美術館の見張り役の人とぶつかりそうになったり。
次回庭園美術館に行くのはいつになるのか分からないけど、日を選んでなるべく人が少ない時にしようと思う。

本家のケ・ブランリ美術館には30万点の所蔵品があるという。
その中の約100点が展示されてたってわけね。(笑)
フランスには行ってみたい博物館や美術館がいっぱいあって羨ましいね。
いつかは本場で鑑賞してみたいな!

CULT映画ア・ラ・カルト!【16】「Holy Motors」「TOKYO!」

【ROCKHURRAH制作。「merde!」連発のPere Ubuとのコラボ】

SNAKEPIPE WROTE:

前回「 CULT映画ア・ラ・カルト!」を書いたのが2013年10月だったので、このカテゴリーは約1年半ぶりの記事ということになるんだね。
久しぶりに「これは!」と思える狂気の人物を観ることができたので、まとめておきたいと思う。
何を持ってCULTと断定するのかは個人的な判断で良いよね?(笑)

レオス・カラックス監督についての記憶は曖昧で、確かに1980年代に話題になったし映画も観ていたはず。
当時はレオス・カラックス以外にもリュック・ベッソンアレックス・コックスジム・ジャームッシュなど、インディーズ出身の若手監督が台頭していた時代だったんだよね。
新作は必ずチェックしていたし、新しくてカッコ良い映像を知ることがお洒落だと思っていたし。(笑)
情報を得るのに貪欲だった少女時代のSNAKEPIPEなので、レオス・カラックスも観ているはずなのに全く覚えていないんだよね。
TSUTAYAの良品発掘でレオス・カラックスの3部作が復刻された時にも、それほどの興味を示さなかった。
ROCKHURRAHにとってはかなり懐かしい監督の一人のようで、レオス・カラックスの3部作に加え「ポーラX」も映画館まで観に行ったという。
その「ポーラX」から13年の時を経て、新作が発表された。
それが今回紹介する「ホーリー・モーターズ」(原題:Holy Motors 2012年)である。

ROCKHURRAH RECOREDSでは毎週2本は映画を鑑賞しているので、 近いうちに観ようと軽い気持ちで借りていたそうだ。
「面白いかどうか分からないけど」
何の予備知識もないまま映画が始まった。
リムジンが舞台になっているという設定はデヴィッド・クローネンバーグの「コズモポリス」(原題:Cosmopolis 2012年)に似ているね。
どちらの作品も2012年だったとは!
リムジンに乗る人物が流行だったのかしら?(笑)
更に調べてみると両作品とも「パルム・ドールを競った」なんて書いてあるから、カンヌ映画祭で上映されたことも同じなんだね。
実は「コズモポリス」は映画館で鑑賞したSNAKEPIPEだけど、今から思えば「ホーリー・モーターズ」のほうが映画館向きだったかも?

簡単にあらすじを書いてみようか。

ひとつの人生からもうひとつの人生へ、旅を続けるオスカーの1日。
ある時は富豪の銀行家、またある時は殺人者、物乞いの女、怪物、そして父親へと、次々に姿を変えてゆく。
オスカーはそれぞれの役になりきり、演じることを楽しんでいるように見える。
ブロンドの運転手セリーヌを唯一の供に、オスカーはメイク道具を満載した舞台裏のような白いリムジンで、パリの街中を移動する。

最初は一体何が起こっているのか分からない。

ドニ・ラヴァン演じる主人公のオスカーは手渡されたファイルを元に「誰か」に成り切って演じているからだ。
一つの人格が終わったと思うと、また別の「誰か」になっている。
一体何のために?
誰のために?
などいくつもの「?」が頭をよぎっていく。
そしてその中に登場した強烈なキャラクターが緑色のスーツの男だった。

マンホールのアップ。
場所は墓場のようである。
どんどんマンホールにカメラが近付いていく。
蓋が少しズレると、中から人が出てくる。
緑色のスーツを着た、片目が濁った赤毛の男。
裸足なのに墓石をひょいひょい軽く飛び越え、献花を奪い取っては食べている。
なんだ、この狂人は!(笑)
かなりメチャクチャで、いわゆる一般常識なんてものは通用しない傍若無人タイプ!
意味不明の行動を起こし、 何がなんだか分からないうちに緑色の男のチャプターが終わってしまった。
「ホーリー・モーターズ」では最も印象に残る「人生」だったね!

長い一日が終わって、リムジンが駐車場に戻ってくる。
いくつもの人格を演じ終えたオスカーは自宅(?)で休養するようだ。
そしてリムジン同士が話をするシーンで映画が終わるんだけど。
上に3行書いた部分がなかったほうが良かったのに、と残念に思ってしまうSNAKEPIPE。
何がなんだか分からないうちに映画が終わってしまったら、CULT映画として素晴らしかったのに!(笑)
えっ、ほとんどの人は映画に意味を求めてしまうって?
確かにそうなのかもしれないけどね。
この部分が追加されているために、ちょっと陳腐になってしまう気がする。

それにしても緑色のスーツの男があまりに印象的だったので、鑑賞後に早速調べてみる。
レオス・カラックスの「アレックス3部作」と呼ばれる、熱狂的な支持を集めた作品の主役だったドニ・ラヴァンの怪演ったら!
「すごい!」としか言いようがないほどの奇人・変人ぶりだよ。(笑)
このキャラクターはフランス語で「糞」の意味である「メルド」という名前だという。
ミシェル・ゴンドリー、ポン・ジュノとのオムニバス映画「TOKYO!」(原題:TOKYO! 2008年)に出ているらしい。
これは早速観なければ!(笑)

それぞれの監督が「東京」を舞台に、日本人の俳優を起用して撮影をしている。
ミシェル・ゴンドリーの「インテリア・デザイン」は、自分の存在価値を見出す女性の話。
ポン・ジュノの「シェイキング東京」は引きこもりの男とピザ配達人の話。
そしてレオス・カラックスは「メルド」だった。

怪人「メルド」がマンホールから現れる。
そしてなんと!銀座の中央通りを裸足で闊歩!
あの異様な風体で、通行人にぶつかったり、タバコを乳母車に投げ捨てたり、札束を奪い取り口に入れたり!
大部分は雇われたエキストラだと思うけど、もしかしたら本当の通行人もいたかもしれないよね?
あんな怪人「メルド」に街中で遭遇したら、かなり怖いはず!
更に渋谷の交差点でのテロ行為。
撮影だと知っていても怖いだろうし、知らないで近くを通りかかったとしたら、なんて考えただけでも恐怖だね。

オムニバス映画の「メルド」も「ホーリー・モーターズ」と同じように、裁判のシーンがなくても良かったのでは?と思ってしまうSNAKEPIPE。
この短編も「意味不明だった」という感想で充分印象的だと思うからね。
拘置所の所長役に嶋田久作の姿を発見したのは嬉しかった!


「メルド」は何語なのか分からない、不思議な言語を使う。
前歯を指で小突いたり、自分の頬を張ったりしながら、妙な高音のカワイイ声で話す。
同じ言語を使うことができる弁護士というのが、「メルド」と似た濁った片目や特徴的なアゴ髭。
2人の会話しているシーンはまるでギャグ!
「メルド」を擁護する人が出てくるのも面白かったし、「メルド・フィギュア」のシーンはYMOの「増殖」を思い出してしまったよ。(笑)
この「メルド・フィギュア」あったら欲しかったな!

「メルド」は次回ニューヨークに出没、なんて最後に予告されていたけれど、ニューヨークでのテロ行為はいくら撮影でも難しいかな?
SNAKEPIPEが鑑賞した順番が逆だったけれど、「TOKYO!」の次に出没したのが「ホーリー・モーターズ」のパリ、ということになるんだろうね。
また別の土地で「メルド」に再会したいね!(笑)

映画の殿 第15号 映画の中のニュー・ウェイブ02

【今回は絶体絶命の男たち特集?】

ROCKHURRAH WROTE:

前に予告した通り「映画に使われた70年代パンク、80年代ニュー・ウェイブ」という企画の第二弾を書いてみよう。
やっぱり似たような音楽ネタばかりやってしまうなあ。
映画を観て感想はこれだけ、というほどじゃないんだが、真面目な感想を書くとなるとおそろしく時間がかかってしまうのがROCKHURRAHのいつものパターン。
だから評論でも感想でもない、違った視点で映画を語ってみようというのがこのシリーズの主旨なのだ。

さて今回、最初に語ってみたいのがいきなり映画じゃなくて、しょっぱなから視点が違いすぎという気がするが「ブレイキング・バッド」から。
数年前に大ヒットしたアメリカのTVドラマで日本でも中毒者が続出した、きわめて毒性の高い作品だ。
「ツイン・ピークス」以外の海外ドラマに見向きもしなかったし、日本のTVドラマはなおさら観ないSNAKEPIPEとROCKHURRAHが毎週末を楽しみにして(リアルタイムではない)観たのも記憶に新しい。
結局、まとまった感想はブログでは書かなかったが、前に書いたこの記事で少しだけ触れているね。

ガンを宣告された高校の化学教師ウォルターが、生きている間に家族に財産を残すために考えたのがメタンフェタミンという覚せい剤を製造、販売する裏事業。
元、教え子のジェシーを勧誘してトレイラーでこっそり作りまくる週末。
このジェシーが問題児でトラブルメイカー、ことあるごとに反発してくる。コンビとしては最低の結束力でスタートをする。
ウォルターは今でこそしがない教師だが、過去には素晴らしい業績を残した優秀な科学者という設定だ。だからメス(メタンフェタミン)を作るのも完璧にこなし、純度の高いメスは「ブルー・メス」と呼ばれ市場に出回り、口コミで評判を得てゆく。
作ったメスはさばかなきゃ商売にならない。その売人として現れるのが最低の奴ら。
物語の終了までに売人どもの元締めが何人か現れ、大掛かりな組織も出てくるが、ビジネスの常でどんどん敷居が高くなってゆき、欲に目が眩んだ売人たちとの抗争はエスカレートしてゆく。
ボンクラ弟子のジェシーとも毎回のように争いが絶えず、付いたり離れたりという展開に目が離せない。
こういう裏稼業を家族に内緒で始めて、表向きはいい夫、いい父親でいようとするんだが、いつかは破綻するに決まってるよね。妻や息子に隠すために毎回ウソをついて、そのウソによって自分ががんじがらめになってゆく。おまけにウォルターの義弟ハンクは麻薬取締局DEAのリーダー格であり、ものすごい執念でブルー・メスとそれを作った謎の存在(つまりウォルターなのだが)を追い詰めてゆく。
こういうのが幾重にもからみ合って複雑なドラマになってゆくんだが、最後の方はもう後戻り出来ないところまで行って、共感出来るどころかTVドラマ史上最も憎まれるキャラクターにまでなってゆく過程がすごい。
善良な市民だった主人公が一番の怪物になってしまうというわけ。

このドラマは映像や音楽も色々と凝ってて興味深いけど、今回紹介したいのはこれ。

これは一体何のシーンなのか観たことない人にはさっぱりわからないだろうが、左のハゲが主人公のウォルター。ベッドに座っているのが息子、右のハゲがDEAの義弟ハンク。そしてみんなで観てるのが変な男の変な映像というシーンだ。本来なら家族なごみの時間というシーンなのになぜウォルターはこんなに苦悩の表情なのか?関係ないけどこのドラマ、主要登場人物のハゲ率高すぎ。

途中からジェシーの代わりに麻薬密造の弟子になるゲイルという男がカラオケで歌っているのがピーター・シリングの大ヒット曲「Major Tom」だ。日本ではほとんどこの曲だけでしか知られてない一発屋だな。

「ロックバルーンは99」を大ヒットさせたネーナ、「ロック・ミー・アマデウス」や「秘密警察」を大ヒットさせたファルコなど、80年代初期になぜか英米ではなく、ドイツ語圏から世界的にポツッとヒットしたシンガーが何人か現れていて、この曲もそのひとつだと言える。
ROCKHURRAHがよく語ってるドイツ産のニュー・ウェイブ、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレをすでに聴いてしまった後ではドイツ語のロックもポップスも特に目新しいものではなかったが、一般的にはドイツ語の違った語感が斬新に感じられたのかも知れないね。
ちなみにファルコはドイツではなくオーストリアのシンガーだが、ROCKHURRAHがかつて所有していたノイエ・ドイッチェ・ヴェレの三枚組アルバムには堂々と収録されていたな。
さて、この一発屋のヒット曲、メロディーに聴き覚えはあったのだが、歌っているピーター・シリングについてはほとんど知らなかったな。今回の記事を書くために改めて見なおしたがうーん、印象希薄。ここまで歌と歌手の顔が一致しない曲は珍しいかも。曲は有名なんだけどね。

デヴィッド・ボウイが名曲「Space Oddity」で創作した宇宙飛行士、トム少佐は宇宙の彼方に行ってしまったが、この曲でのトム少佐は帰還したというような内容らしい。
ニュー・ウェイブの世界の人ではないのだろうけど、曲調やSFっぽい歌詞などのムードは明らかにその路線を狙ったものだと思える。取ってつけたようなバックバンドの宇宙服と全員で首を振るヘンな振り付けはクラフトワークとDEVOとゲイリー・ニューマンあたりを意識したつもりか?
演奏は別にテクノでもエレポップでもなくa-haとかの路線。
その辺をごちゃまぜにした「なんちゃって感」が満載という気がするが、肝心の本人がブレザーに白パンツという周りを無視した若大将並みの姿。

「ブレイキング・バッド」に出てくるゲイルはウォルターと同じ化学者だが、変なこだわりと趣味を持つオタクみたいな描かれ方をしている。自撮りで陶酔したカラオケの映像を録画してたら、そりゃ大抵の人間は引いてしまうよな。しかし、そこまで重要人物とは思わなかった彼が思わぬところでドラマのキー・パーソンになるという展開は面白かった。

ひとつ目が長くなりすぎたからすでに疲れてしまったが、次はこれ。
1990年代以降のイギリス映画をリードしたのがダニー・ボイル監督。
大ヒットした「トレインスポッティング」や「スラムドッグ$ミリオネア」「28日後…」などで知られた監督なんだが、この映画はそこまで話題にならなかったのかな?「127時間(2010年 )」という作品だ。

この監督は毎回違った題材で映画を撮っていて、一貫した作風もないのに、スピード感ある演出と映像という点でダニー・ボイルっぽさを感じてしまうというのが特徴だと、ROCKHURRAHは勝手に解釈している。
具体的には走ってるシーンがとにかく多い印象。

「127時間」は実在する登山家、アーロン・ラルストンの体験を原作とした映画でストーリー自体は実に単純そのもの。
主人公はユタ州の広大な峡谷でキャニオニングというアウトドア・スポーツを楽しんでいる。個人的にはあまり耳慣れない言葉だけどトレッキングと様々なスポーツが合体したようなものか?要するに峡谷の中に入り込んで楽しむためにはそういうハードな難関を突破する技術が必要ということだろうね。しかし自然の事故で大岩に片腕を挟まれて身動きが取れなくなってしまう。
誰にも行き先を告げずに来た深い谷の中、ここを偶然に通りかかる人などいるはずもない。そういう絶体絶命で死を覚悟した彼は、持っていたビデオカメラの電池が尽きるまでメッセージ(というより日記)を残す。

広大な自然の中の密室劇で観ている方も息詰まるような緊迫感、絶望感。
たったこれだけの内容で90分ほども飽きずに見せるのは難しいと思うが、想像しただけでその恐怖はわかるだけに目が離せない。
そんなに大げさなものじゃなくても誰にだって何かに挟まって抜けなくなって焦ったような経験はあるだろう。ん?ない?ROCKHURRAHは大昔に狭い隙間に半身を入れたが抜けなくなってものすごく焦った経験があるよ。たぶん落とした何かを拾うためにやったんだと思うが、この程度でも恐怖が脳裏に焼き付いているほど。人里離れた山の中でそんなことになってしまったらどうなるだろうか?

映画の中で主人公が回想する、楽しかった思い出のシーンで使われているのがこれ。

ベルギーの70年代パンク・バンド、プラスティック・ベルトランの大ヒット曲「Ça plane pour moi」だ。
プラスティック・ベルトラン率が非常に高いと一部で有名なウチのブログだが、またまた書いてしまうな。しかもいつどの記事を読んでも同じような事しか書いてないよ。

元々はベルギー産パンク・バンドとしてかなり早い時代から活動していたハブル・バブルのメンバーだったのがロジェ・ジューレ、この人のソロ活動がプラスティック・ベルトランという事になるのか。
「Ça plane pour moi」はベルギー、フランスだけでなく世界中で大ヒットして日本でもプラスティック・ベルトランのアルバムは発売された。
アルバムのタイトル曲は「恋のウー・イー・ウー」だったがシングルではなぜか「恋のパトカー」という邦題がついてたな。どっちも同じヴァージョンなのにね。しかもどっちもどうでもいい、ぞんざいなタイトル。
とにかくものすごい数のカヴァー曲が存在していて英語版の替え歌(?)「Jet Boy Jet Girl」なども含めると星の数ほど(大げさ)。
曲自体はとてもシンプルなロックンロールなのになぜここまで多くの人の心を掴んだのか?奇跡の大ヒットとしか言いようがないけど、誰でも覚えられるキャッチーさあってこその大ヒットというわけかな。

実はこの曲、本人が歌ってなくてプロデューサーだか何だかが歌ったのを口パクしてただけというような情報もあったんだが、そんな事はどうでもいいと思えるハッピーさが炸裂する名曲だなあ。
うんちくやオタクみたいな考察は抜きにして楽しめばいいのだ、と思ってしまう。プロデューサーが歌って本人がTVに出るよりも、見栄えがしたからプラスティック・ベルトラン名義にした。そういう戦略だったのかも知れないし。
ちょっと前のゴーストライター騒動で正義感ぶってたような人間が読んだら「とんでもない詐欺師だ」などと言われてしまうかな?

前に一回書いたけど個人的な思い出としては、ROCKHURRAHがまだ故郷である小倉の住人だった頃、レコード探しにちょくちょく福岡まで出かけて行って、チマチマとパンクやニュー・ウェイブのレコードを買い漁っていた。なぜかベスト電器という家電量販店の中にすごいパンクのコーナーがあって、そこのスタンプ・カードが満タンになって獲得したのがこのプラスティック・ベルトランのアルバム「An 1」だった。いや、別にどのレコードでも良かったんだが、たまたま探してたのが見つかったから。

それから何十年経つだろうか?おとといも昨日も今日もプラスティック・ベルトランを聴いている、精神的にまるで何も変わってない自分がいる。たかが音楽だけど音楽の持つ力は偉大なり、と思うよ。プラスティック・ベルトランだけじゃなくてROCKHURRAHが普段聴いてる音楽は全てあの頃のまんまなんだよ。

今日はえらく長くなってしまったからたった2つだけでカンベンしてね。
「映画の中で使われたパンクやニュー・ウェイブについて」というテーマはいいかげんに書けるとは思ったけど結構難しい部分もあるな。もっといっぱい映画を観ないとな。
さて、今日は何を観ようかな。