Monthly Archives: 4月 2016

【私市康男の作品「冬至」をROCKHURRAHが作成】

SNAKEPIPE WROTE:

大ファンであるミステリー作家・鳥飼否宇先生の作品を再読して、感想をまとめるシリーズの続きを書いてみよう。
今回は2006年に発表された「観察者シリーズ」の「樹霊」!
今までに書いた鳥飼先生の作品に関する記事をまとめたカテゴリー「トリカイズム宣言」を読んでもらうとご理解頂けるのだけれど。
簡単に説明させてもらうと「観察者シリーズ」とは、大学サークルの野生生物研究会に所属していた4人が、卒業して何年(何十年?)経っても連絡を取り合い、奇妙な事件に巻き込まれる話なのである。

自称「観察者(ウォッチャー)」、通称トビさんこと鳶山久志が「観察者シリーズ」での探偵役として活躍する。
事件となる題材を拾ってくるのは、植物写真家である通称ネコこと猫田夏海、野生生物研究会メンバーの中での紅一点である。
売れっ子イラストレーターで、佐賀県生まれなのにベタベタの博多弁を話すジンベーこと高階甚平。
そして西荻窪で親からの遺産を相続し、マンションのオーナー兼「ネオフォビア」というバーの経営者である神野良。
この「付かず離れず」の良い距離感を保った4人が、摩訶不思議な自然現象だと思われた事象や事件を解決していくのが「観察者シリーズ」なのである。

今回の舞台は北海道!
「でっかいどう、北海道」の北海道である。
ん?わざわざ言うほどのことじゃない?
しかも古過ぎ?(笑)

植物写真家のネコが、北海道にある巨木の撮影をしているところから物語が始まる。
撮影していたのは「ミズナラ」という樹木。
推定樹霊1200年以上という非常に長生きの「ミズナラ」だという。
本当は文中に登場した「最上のミズナラ」や「双葉のミズナラ」の画像を載せたかったんだけど、著作権の問題を考慮して同種の「ミズナラ」画像(左)にしてみたよ。
長寿の巨木というと、例えばゲーム「ゼルダの伝説」に登場するような「デクの樹」様みたいに、なんでも知っている穏やかな賢人(賢木?)という印象があるよね。
長寿の巨木を前にしたら、霊験あらたかな気分で、知らず知らずのうちに手を合わせてしまいそうだもん。
きっとネコも撮影しながら巨木と対話していたんだろうね。

撮影終了後、ネコは「ミズナラ」のある場所を案内してくれた役場の職員から「古冠のミズナラが動いた」話を聞くのである。
ここで、SNAKEPIPEの自慢できないコーナー!(パチパチ!)
以前にも何度かブログに書いたことがあるけれど、関東地方(東京近辺)からほとんど出たことのないSNAKEPIPE。
授業での地理も苦手だったっけ。
そのため(?)地名も致命的に知らないことだらけ。(ぷっ!)
フルカップ(ブラ?)、振るカップ(揺らしてどうする?)と、全く違う想像をしてしまうのである。
どこにあるんだろう、と検索してみたけれど占冠はあっても古冠は出てこないなあ。
文中に北海道の日高地方とあったので、それで良いことにしよう!

好奇心旺盛なネコが「木が移動した」なんて話に飛びつかないわけがないよね。(笑)
更なる情報を得るために古冠村役場に向かうのである。
ここから先のあらすじはAmazonの商品紹介から引用してみよう。

役場の青年の案内でネコが目にしたのは、テーマパークのために乱開発された森だった。
その建設に反対していたアイヌ代表の道議会議員が失踪する。
折しも村では、街路樹のナナカマドが謎の移動をするという怪事が複数起きていた。
30メートルもの高さの巨樹までもが移動し、ついには墜落死体が発見されたとき、ネコは旧知の「観察者」に助けを求めるのだった。

「ミズナラ」に続いて「ナナカマド」(画像右)も移動するという謎を追いかけているうちに、失踪事件や殺人事件に巻き込まれ、古冠に足止めされてしまうネコ。
最初のうちはアイヌの方の自宅で手料理を頂いたり、アイヌの話を聞いたりして楽しそうだったのに。
もっと早く古冠を離れていれば良かったと後悔しているネコは、本当にかわいそうだった。
「樹霊」でのネコは今までにない「女性らしい」部分が表現されていて、ちょっとびっくりしちゃうんだよね。
そして長い付き合いだから分かるのか、ジンベーにあっさりと見抜かれていたところは、読んでいて微笑ましかった。
それにしても夜のホテルでネコとジンベーが2人きりになった時、ジンベーに強く腕を掴まれた瞬間、男女の関係を想像してしまった勘違いネコに笑ってしまったよ。(笑)
ジンベーとロマンチックなことが起こる確率は低いと思うけどね!

あらすじにある「30メートルもの高さの巨樹」というのが「ハルニレ」という樹木。
これもまた同種の画像を左に乗せてみたよ。
「フチ」と呼ばれている「ハルニレ」 だと文中にある。
「フチ」とはアイヌの言葉で「おばあさん」を意味するというから、これもまた長生きの樹木なんだろうね。
「樹霊」には植物の名前以外にアイヌの言葉がカタカナ表記されているので、植物の名前すら覚束ないSNAKEPIPEはたまに混乱することがあった。
もしかしたらSNAKEPIPEだけなのかも。(笑)

心細くなっているところへ、長い付き合いのトビさんやジンベーがかけつけてくれる。
トビさんは相変わらずトビさんらしい対応だったけれど、最終的には謎を解決しちゃうんだよね。
その語りは淀みなく、スラスラ読んでしまうんだけど、実は1回目に読んだ時にはトリックが難しくて理解し難かったことを告白しよう。
今回はその時の反省を活かして、脳内映像を混ぜながら注意深く読んでみたよ。
あれがこうなって、こうなるからと想像しながら読むと、なるほど!
そういうことだったのね! (笑)

トリックに関しては理解できたけれど、犯人の動機は難しかった。
理解や共感なんて簡単には言えない次元の話だと思うから。
そして他に方法はなかったんだろうか?とも考えてしまった。
非常に深刻で重いテーマだよね。
本当は誰もが考えなければいけない重要事項なんだと思う。
SNAKEPIPEには何ができるだろう?

「樹霊」では最後のほうにトビさんの珍しいシーンもあるんだよね。
飄々とした人間嫌いのトビさんらしからぬ、かなりレアな場面にも驚いてしまったSNAKEPIPE。
再読する度に新しい発見をして、嬉しいね!
いや、単なる物忘れ、とも言えるのか。(笑)

大好きなジンベーのファッションも素敵だったね!
レザーの上下にピンクのサングラスとは。
体型が小熊のジンベーなのに「好いとうもん、着とるだけっちゃ」の心意気が好きだよ。
このSNAKEPIPEが作った偽物の博多弁どうなの?(笑)

トビさんとネコが登場する「観察者シリーズ」は「中空」「非在」に続いての3作目になる。
読んでいる順番もまちまちで何度も読んでいる場合もあるので、SNAKEPIPEにとって「観察者シリーズ」の面々は旧知の仲のような存在。
そして鳥飼先生の著作から教えてもらうことが多いのも魅力なんだよね。
「樹霊」ではアイヌの文化や風習に関しての記述が興味深かった。
「カムイ」についての考え方は、例えばアメリカ先住民族であるインディアンが精霊に祈祷するのに近いように感じた。
森羅万象の全てに霊が宿っていて、その霊を敬い感謝することで共存していく、という解釈で良いのかな。
現代社会に生きていると難しいけれど、羨ましいと思ってしまう。
非常にシンプルだからね!
きっと鳥飼先生は奄美大島で、「カムイ」を体感なさっているのではないでしょうか。

次回のトリカイズム宣言は「昆虫探偵―シロコパκ氏の華麗なる推理」にしよう!
これもまた再読するのが楽しみ!(笑)

【海外では4冊に分かれて出版されたんだね】

SNAKEPIPE WROTE:

まさにホドロフスキー・イヤーだった2014年。
23年ぶりに映画監督としてホドロフスキーの自伝小説「リアリティのダンス」を題材にした映画「リアリティのダンス」が公開され、ホドロフスキーの来日もあった。
製作が途中で頓挫してしまった幻の映画「DUNE」についてのドキュメンタリー映画の公開もあった。
更に秋にはホドロフスキーの妻パスカルとの共作「2人のホドロフスキー展」があったよね。
それらの全てを鑑賞することができて大満足だったSNAKEPIPE!

2014年7月の記事「「リアリティのダンス」鑑賞」の最後に

「フアン・ソロ」(原題:Juan Solo)というホドロフスキー監督が原作で、1995年からシリーズとして刊行されたバンド・デシネを原作としたアクション映画を計画しているという。
底辺の中にいる一人の人間が犯罪に巻き込まれながら、自分が人間であることを発見していく物語とのこと。
日本でも「フアン・ソロ」は今秋出版予定とのことなので、それも楽しみ!(笑)

と書いていたんだよね。
ホドロフスキーが23年ぶりに映画監督として復活した時、様々なメディアで取り上げられたのが、次回作についてだった。
そのインタビューで答えていたのが「フアン・ソロ」!
ホドロフスキーは、バンド・デシネと呼ばれるベルギーやフランスの漫画の原作者としても有名なんだよね。
ホドロフスキーと漫画との関わりは1960年代からで、ホドロフスキー自身が描いていたこともあるし。
新聞に掲載されていた「Fabulas pánicas」は、2014年9月の「二人のホドロフスキー 愛の結晶展 鑑賞」で鑑賞済み!
モチーフも構図も色彩も独創的で、とても興味深かったことを思い出す。
ホドロフスキー自身が描いていたのは恐らくその時だけで、それ以降はバンド・デシネの原作者として活躍している。
有名な「アンカル」(原題:L’Incal )は1981年に刊行されているんだね。
「アンカル」はホドロフスキー原作、作画をメビウスが担当しているバンド・デシネで、日本でも大友克洋や寺田克也など名だたるマンガ家たちにも影響を与えた作品なんだよね。
上にも書いたけれど、次回作とされている「フアン・ソロ」は1995年から始まったホドロフスキーが原作の4部作で、日本では発売されていなかったんだよね。
ところが「フアン・ソロ」の発売予定があることが分かり、心待ちにしていたのである。
1995年に発売されてから約20年も経って、日本に入ってくるとは!
それも、もしかしたら2014年がホドロフスキー・イヤーだったせいかもしれないね?

バンド・デシネに詳しいサイトを定期的にチェックして、「フアン・ソロ」の発売を心待ちにする。
当初は2014年11月予定とされていた発売日を過ぎても、全く店頭に並ぶ気配はなし!
そのうち2015年になってしまい、SNAKEPIPEが発売日をチェックする回数も減っていた。
更に「フアン・ソロ」がホドロフスキーの次回作である、という情報が飛び交っていたはずなのに、いつの間にか「リアリティのダンス」の続編の情報が入ってくるようになっていた。
次回作は「エンドレス・ポエトリー 」って、はっきり出てるもんね!
「リアリティのダンス」の小説の中でも、最も面白かった部分がホドロフスキーの青年期の話だったので、それももちろん楽しみ!(笑)

つい最近、ふと「そういえばフアン・ソロはどうなったんだろう?」と思い出した。
検索してみると、驚いたことに既に発売されてたんだよね!(笑)
2015年の12月に!
最初に知った発売日よりも1年遅れとは。
ホドロフスキーの次回作でなくても良い。
楽しみにしていたホドロフスキー原作のバンド・デシネだもん。
慌てて本屋に走ったのである。

軍事政権下のメキシコ、ウアトゥルコ・シティ。
この町で娼婦として働くおかまの小人が、ある日、ゴミ箱に捨てられた尻尾の生えた赤ん坊を発見する。
フアンと名づけられた赤ん坊は、やがて育ての親であるおかまの小人と別れる時がくる。
フアンは形見としてもらった拳銃を手に、裏社会でのしあがっていく。
しかし、彼を待ち受けていたのは、思いもよらぬ運命のいたずらだった。

簡単なあらすじを書いてみたけれど、これだけではもちろん良く分からないよね。(笑)
ネタバレになるようには書かないけれど、もう少しだけ詳しく書いてみようか。

上の赤ん坊を抱いた画像は、「おちょこ」という名前の「娼婦」で「おかま」で「小人」が赤ん坊を見つけたところ。
犬の餌にくれてやろうとするけれど、尻尾が生えていることに気付き、自分の息子として育てることを決意するところが面白い。
「異形」という点に共感を覚えたんだろうね。
ホドロフスキーの映画には今までにもたくさんの「異形」いわゆるフリークスが出演しているよね。
「異形は自然の想像力が生んだ遺伝子の想像力だ」と言い切っているホドロフスキーにとって、フリークスは特別な存在だからね!

フリークスのフアンはいじめの対象になるが、力でねじ伏せる。
盗むことでやっと生きていかれるような世界。
他の子供達も似たような「食うか食われるか」という境遇なんだろうね。
人のことなんか構っていられるか!って感じね。

物は盗む、女は犯す。
今が楽しくて自分勝手に生きていかれれば良い、というまさに「その日暮らし」のフアン。
子分を従えてやりたい邦題。
言い方悪いけど、いかにもメキシコ!って感じなんだよね。(笑)
ロバート・ロドリゲス監督の映画のワンシーンみたいな雰囲気。
ホドロフスキーが映像にしたら違っていたのかな?

それにしても「フアン・ソロ」って名前、まるでスター・ウォーズの「ハン・ソロ」みたいじゃない?
人によってはスペイン語読みにした「ハン・ソロ」の話なのかと勘違いしそうだもんね。(笑)
調べてみたけど、「ハン・ソロ」はジョージ・ルーカスのオリジナルで、特にルーツがある名前ではないみたい。
「フアン・ソロ」の「フアン」はJuanなんだけど、これはプレイボーイの代名詞として有名な「ドン・ファン」と同じスペル。
「ソロ」の由来はバンド・デシネ中に出てきたように「天涯孤独」の意味だというから「独りぼっちのフアン」という名前ということになるね。
ということで「ハン・ソロ」の話ではないので、お間違いのないように!

フアンは勉強したことないはずなんだけど、悪知恵が働くというのか。
悪事にかけては天才的だったので、すぐに「その道」のプロになり金持ちの用心棒として頭角を現す。
ついにはメキシコ首相の身辺警護まで請負うことになり、首相の自宅に配属されるのである。
首相夫人と息子がいる邸宅に住み込むフアン。

首相夫人の部屋にあるキリスト像。
「いかにもホドロフスキー」だよね!
ホーリー・マウンテン」を思い出すね。

この邸宅であらすじにあった「思いもよらぬ運命のいたずら」を知ることになるフアン。
テーマになり易い話だけど、まさかそんなことだったとは!
自らの意思ではなく、「運命のいたずら」から開放されたフアンは、また別の「運命」へと導かれていく。
あらゆる蛮行を尽くしたフアンを、聖者として崇める村に辿り着いたのである。

この村でフアンは今までの自分と決別する。
残忍で身勝手だったフアンが他人のために思いやる気持ちを持つのである。
村人の勘違いから聖者とみなされていたけれど、今までの悪行を悔い改め村人のために祈りを捧げる。
その姿はまさにキリスト!
ホドロフスキーの代表作である「エル・トポ」で主人公エル・トポは「砂漠にいる4人の銃の達人」を卑怯な方法で殺害した後、絶望し死んでしまう。
その後フリークスの村で聖者として蘇る、その話をそっくり同じなんだよね。
俗物が聖者になる、という極端な話の展開。
「フアン・ソロ」の転換は唐突で、「なんで急に?」と思ってしまったSNAKEPIPEだったよ。

前述したように「フアン・ソロ」は1995年から始まった、今から約20年前に刊行されたバンド・デシネ。
この20年の間で映画はかなり変わったと思う。
タランティーノ以降、暴力表現は、それ以前より過激になったからね。
「レザボア・ドッグス」が1992年とのことなので、それが境目ということになるのかな。
そのため暴力的な表現にそれほど驚かなくなってしまっているんだよね。
「エル・トポ」は1970年の作品。
暴力的な表現の残酷さと映像の美しさのアンビバレントが秀逸なので、「フアン・ソロ」がソフトに感じてしまうのかもしれない。
ぷっ!アンビバレントだって。(笑)

もし「フアン・ソロ」が映画化されたとしたら、どんな映像になっていたんだろう。
バンド・デシネとしてみるのと違う感想になっていたかもしれないね?
バンド・デシネの紹介文に「主演俳優の死によってお蔵入りとなった、ホドロフスキーによる映画シナリオ」と書かれているんだけど。
ほとんど皆コピペして文章にしてるみたいで、それ以上突っ込んだ情報は皆無みたい。

ここでSNAKEPIPEの予想を書いてみようかな。
1995年にホドロフスキーの3男であるテオ・ホドロフスキーが交通事故のため24歳という若さで他界してるんだよね。
テオ・ホドロフスキーは「サンタ・サングレ」でチンピラ役でチラッと出演していたので、記憶している人もいると思う。
あの雰囲気だったら「フアン・ソロ」役はピッタリだったかも!と勝手に想像してしまった。
そのためホドロフスキーが息子のために書いたシナリオかも、と思ったんだよね。
ホドロフスキーの映画の主役は、息子達が演じているし。

1995年以前 ホドロフスキーが「フアン・ソロ」のシナリオ執筆
1995年 テオ・ホドロフスキー他界
1995年 バンド・デシネとして「フアン・ソロ」刊行される
2014年「リアリティのダンス」の次回作として「フアン・ソロ」が挙がる

時系列にするとこうなるんだけど、1995年以前に一度断念した映画化をもう一度構想したのが2014年なんじゃないかな、と思ったけど。
勝手な想像なので気にしないで。(笑)
それにしてもテオは24歳で亡くなってしまうなんて、早過ぎるよね。

今回のバンド・デシネ「フアン・ソロ」は作画担当のジョルジュ・ベスも素晴らしかった。
1コマ1コマが、まるでポストカードになりそうな出来栄え。
色使いも構図もバッチリで、まるで映画用の絵コンテみたい。
「フアン・ソロ」以外にもホドロフスキー☓ベスの「バンド・デシネ」があるようなので、また日本で発売して欲しいよね!

SNAKEPIPEが触れたホドロフスキー原作のバンド・デシネは、「アンカル」「メタバロンの一族」(原題:La Caste des Méta-Barons)に続いて3作目になる。
本当は他にもいっぱい原作として出版されているのあるんだよね。
全部集めて読みたいな!
そしてホドロフスキーの新作映画「エンドレス・ポエトリー」も楽しみだ!
情報検索を忘れないようにしないと。(笑)

【「城」と聞いてパッと浮かんだマン・レイの描いたサド侯爵の肖像】

SNAKEPIPE WROTE:

夏の暑さに嫌気がさし、「どこかに行きたい」 と物件を探し、想像の世界に浸ることが多かった昨今。
今回は夏の暑さのせいでも、ジャンボ宝くじを購入したわけではないけれど、久しぶりに「SNAKEPIPE SHOWROOM」を書いてみたいと思う。
心の何処かに「ここではない場所」への憧れがあるんだろうね。(笑)
憧れ、と書いてはみたものの、特集するのは全く考えたこともなかった「城」なんだよね。
「城」に住みたい、王様になりたいって人、いるかしら?
検索してみると、意外にも「城」の物件あるんだよね。
気になる物件を紹介してみよう!

城が似合いそうな場所と考えた場合、一番初めに思いつくのはヨーロッパだよね。
その中でもやっぱりフランス、と想像する人は多いはず。
予想通り、売りに出されている城の大半がフランスだったよ!
SNAKEPIPEが厳選した結果、今回の城は13世紀に建てられたこちらにしてみたよ!

「森と泉に〜か〜こ〜まれて〜」と歌いたくなるような、城!
のどかな風景にみえるけど、どうなんだろうね?
学生時代に習った世界史というのは、◯◯事件とか戦争などの変事が起きないと飛ばされてるからね。
調べてみたけど、13世紀フランスの歴史では漠然としていて、これといった出来事はなかった模様。
だからこそ城がキレイに残っているんだろうね。(写真①)

当然ながら当時のままの造りではなくて、リノベーションされている。
プールやテニスコート、礼拝堂まであるというから至れり尽くせり!(写真②)
城の面積は180坪、土地全体では1040坪とのこと。

離れは客室として整備されているという。
一体何棟あるんだろう?(写真③)
定年したら田舎でのんびり暮らしたい、なんて人にはもってこいかもしれないよね!

部屋数は全部で15室。
大きいリビング・ルーム、ラウンジ、ライブラリ、ダイニング・ルーム、ホール、キッチン、洗濯室などなど、個人が所有するには充分過ぎるほどの広さ!
当然ながら管理人も在中しているし、お手伝いさんも必要だろうね。
庭の手入れも必要だから、庭師も雇わないと!(写真④)

この物件はパリまで220km、モンパルナス駅まで55分だというから驚き!
新宿や渋谷に出るのに1時間と言ってるのと変わらない感覚だもんね。(笑)
さて気になるお値段は?
1,785,000€、現在のレートで約2億2千万!
城を買う、と思ってみるとお手頃に感じてしまうけどね?
都会と田舎の両方を味わえる物件、なかなかお買い得かも? (笑)

続いてはイギリスの城をご紹介してみよう。
まるでマンディアルグの「城の中のイギリス人」だね!(笑)

築200年のウェールズ城。
いかにも貴族が所有していたという雰囲気だよね!(写真①)
よく旅行のサイトで見かける「隠れ家」という言葉がよく似合う。
うーん、本人は隠れていても、こんな城に住んでたら目立つと思うけどね?(笑)

晩餐会用の部屋があるというのも、さすがに貴族!
石の暖炉がある、この部屋では映画で観るようなダンスパーティとか、立食パーティが似合いそうだもんね。
使用人が何人必要なんだろう?

さすがに城にはあるよね、甲冑が!(写真③)
こういう写真を見ると、どうしても「江戸川乱歩の美女シリーズ」を思い出してしまうSNAKEPIPE。
あの甲冑の中に犯人が潜んでいた、とかね。
もしくは手前のソファに人が入っていた「人間椅子」とか。(笑)

なんでしょうか、この広いバスルームは!(写真④)
しかもあの赤い椅子は何のためのものなのか。
バスルームと言っても20畳以上ありそうだもんね。
日本人だとどうしても畳で換算してしまうね。(笑)

外観はそのままに、内装に関しては歴史を感じさせる家具や調度品はそのまま残し、傷んでいる箇所はリノベーションしたという。
さて気になるお値段は?
£5million、日本円で約6億1500万円也!
リノベーションするのに£2million、約2億4600万円かかっているというのから仕方ないかな?
世界のセレブなら6億くらい、どうってことないもんね。
隠れ家用におひとついかが?(笑)

最後にゴシック様式の素晴らしい城を紹介しよう。
今度はスペインね!

 

SNAKEPIPEが「城」と聞いて想像するのは「おどろおどろしい」城なんだよね。
例えばシャルル・ペローの「青ひげ」や、フランツ・カフカの「城」、ROCKHURRAHは国枝史郎の「神州纐纈城」だと言うし、どれも「何か秘密を抱えている」感じなんだよね。
そのイメージに近い雰囲気の城が、こちら!

1275年に建てられたのはアルカンタラ軍の要請によるものだったというから、もしかしたら要塞として使用する目的だったのかもしれないね?
その頑強な印象がより一層「何か秘密がありそう」に見えるのか。
まるでジョルジオ・デ・キリコに描かれたような城。(写真①)
かなりグッと来るよね!

450ヘクタールの敷地と言われても全然分からないので、坪にしてみると136万坪?
よく換算される東京ドームでは、なんと約97個分!(笑)
ものすごく広いということがよく分かるね!
その広大な敷地には良い豚が育つ牧草が茂り、8つの池があるという。
モリバト、キジバト、ツグミ、イノシシ、および鹿を撃つことができる猟場でもあるというから、その道に興味がある人必見だね!(写真②)

城の中にある調度品その他は、現在のオーナーと話し合って買うかどうか決めてちょーだい、とも書いてあるんだよね。
13世紀の歴史ある品々がこれでもか!というくらいに飾ってあるのが、素敵なのよ。
それらを全部含めるとお値段に違いが出そうだよね。
この赤い天蓋付きベッドも、壁の十字架もセットが良いなあ!(写真③)

階段の間に甲冑!
夜に遭遇したら「ひー」と声を出してしまいそうだけど。(笑)
ゴシック様式には欠かせないアイテムのひとつ。
この城に魅せられたであろう、不動産屋さんが驚くほど大量の写真をアップしているので、セレクトに困ったんだよね。
実は他にも別のゴシックな部屋や、刃物が所狭しと壁に飾られているような部屋の写真とか、不気味が人形がある部屋とかあって。
ものすごく「怪しげ」な城で気に入ってしまった!(写真④)

ポルトガル国境に近いバダホスにある、こちらの城!
スペインのマドリードからは車で3時間、ポルトガルのリスボンには2時間半という立地も素敵だよね!
さて気になるお値段は?
おおっ、なんと「お問い合わせ下さい」としか書かれていない!
このままでは眠れないから問い合わせてみるか!(うそ)
分かった方は教えて下さい。(笑)

全く現実的ではない物件というのも、なかなか面白かった。
ただしSNAKEPIPEの学生時代の友達は、イギリスの古城に住んでいる、と聞いたことがあるからね。
売ってる、ということは買い手もいるってことだから。
また企画考えて特集してみよう!次回もお楽しみに。(笑)

【ド派手なパフォーマンスの王者、Tenpole Tudorの勇姿】

ROCKHURRAH WROTE:

最近、ブログの記事では出番がなく、かなりのご無沙汰だったけど、久しぶりに何か書いてみるか。
何をやってたかと言うとブログをリニューアルするために奮闘・・・ってほどには大した事はしてないけど、まあそのような事を陰でやってたわけ。

ROCKHURRAH RECORDSのブログは2006年、何と10年前に始めて、その時からずっと何も変わってないんだよね。WEBの世界で10年といえばかなりの大昔、今は技術も可能性もずっと進んでるしもっと便利になっているはず。
そんな中、昔に作られたテーマ(ブログの外観や操作性)のまんまじゃいくら何でも古臭さ過ぎだったと気付いたが、あまりそういう知識もないので現状維持のままやってたのが実情。
たぶん言葉で書くほど良くはならないし、今と比べてそんなに変わったものを作るつもりもないけど、近いうちに少しリニューアルしてみるよ。

さて、今回はこれまた久しぶりだが、70〜80年代バンドの遺したちょっと意味不明なパフォーマンスを見ながら安易なコメントをしてみよう。
ちなみにこのシリーズの12というのもあるので、書きたい事の概要はわかってもらえよう。
かつてのMTVとかの時代、英米のメジャーなアーティストが作り上げた質の高い、金のかかったプロモーション・ビデオとかではなく、そこまで大ヒットが期待出来ないようなアーティストの埋もれてしまったような映像を中心にピックアップしてゆくのがROCKHURRAHの目指すところ。
では意味不明の情熱パフォーマンスを見てゆこうか。

【つるむ!】
Virgin Prunes / Walls Of Jericho

「つるむ」という言葉自体が情熱的とは言い難いし「!」マークも似合わない気がするが、気のせいか?

ヴァージン・プルーンズは1980年代初頭にデビューしたアイルランドのバンド。パンクからニュー・ウェイブに移り変わった時代、チャートの表側ではエレクトロニクス・ポップ(エレポップ)やニュー・ロマンティック、ファンカ・ラティーナなど流行の音楽が続々と生まれていたが、ちょっとアンダーグラウンドの世界でもネオ・サイケやポジティブ・パンクのような暗い音楽も同時に発達していた。
というような時代背景、 ヴァージン・プルーンズはゴシックやポジティブ・パンクと呼ばれたムーブメントの中で有名になっていった。

音だけで聴かせるようなバンドも色々とはいたけど、やはりこの手のジャンルと言えば厚塗りのやり過ぎ化粧、そして大仰なパフォーマンスといった下品な側面が最も目立つ部分だ。中でもこのプルーンズは異様さで抜きん出た存在だった。

ドギツイ化粧におばちゃんのようなスカート姿で歌うギャビン・フライデーとグッギという強烈なヴィジュアルの男2人が繰り広げる狂的な掛け合い、これはまるでホラー映画に出てくるような世界で圧倒されてしまう。パフォーマンスもアングラ劇団っぽい雰囲気で素晴らしいね。
声がまたこの姿にピッタリのいやらしさ、変態っぽく見せかけてるような無理がなく、自然体の変態なんだろうね。

このバンドをやる前の少年時代はU2のボノとも悪ガキ仲間としてつるんでいて、メンバー間も血縁関係があることから「裏U2」というような呼ばれ方もしていたな。U2の初期のアルバム・ジャケットに写ったきれいな少年もグッギの弟という深い関係。がしかし、見た目も音楽も方向性が違いすぎ。同じホームグラウンドで過ごした少年達が随分かけ離れた世界に行ってしまったもんだよ。

【舞う!】
The Icicle Works / Whisper To A Scream (Birds Fly)

舞う、とは言っても踊ったり宙を舞ってるわけでもない。舞ってるのはおびただしい量の枯れ葉みたいなものだ。情熱パフォーマンスは彼らではなく枯れ葉だという点で、すでに書き始めた事が失敗だったと気付いたよ。

アイシクル・ワークスは英国リヴァプール出身のバンドで1980年代前半にデビューした。
リヴァプールと言えば70年代半ばのデフ・スクール、後半のビッグ・イン・ジャパンなどから有名ミュージシャンが続々と登場して、彼らの周辺から実に多くのバンドが生まれ、ひしめき合っていた時代があった。それが80年代のリヴァプールの音楽シーンを盛り上げていたわけだ。
有名なところで言うとエコー&ザ・バニーメンやオーケストラル・マヌヴァース・イン・ザ・ダーク、デッド・オア・アライブ、フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなどなど、みんな名前長いな。
このように音楽界のビッグネームを数多く輩出したのもリヴァプール。もう少しマイナーなものも含めるとその何十倍もニュー・ウェイブ・バンドを産出してたのがリヴァプールだったのだ。しかもどこかで誰かが関わってるという複雑な人間関係なもんで、専門書まで出ていたくらいだ。

アイシクル・ワークスはその辺のリヴァプール関係でゆくと「元どこそこのバンドにいた」などという経歴はあまりなくて誰も知らないような出身。がしかし、1983年に出たアルバムとシングルだったこの曲は結構なヒットをして、日本盤もちゃんと出ていたな。 枯れ葉だか木の幹だか知らないが、とてもウッドな感じのジャケットも有名だしメンバーも何となく林業系な見た目。そんな事実はたぶんないと思うが。

ビデオがリアルタイムの枯れ葉吹雪の中なのか映像をかぶせてるだけなのかわからないが、もし本当にこれだけ吹き荒れてる中の撮影だったら目鼻口に入ってきて大変だったろうな。花粉症の人にはとても出来ない技。

【漕ぐ!】
King Trigger / River

ROCKHURRAHは以前はかなりの分量のレコードを集めていたんだが、いわゆるマニア的な気質はあまりなくて、いつも何かテキトウに買っていた。それが後に伝説の名盤になったりして自分の先見の明に驚いたりもしたが、反対に何で買ったのか不明、というレコードもたくさん持っていた。
その時持っていた何かの情報で買ってるんだろうけど後で思い返しても何で持ってるのかわからないというシロモノ。
これは好きなタイプの音楽だったから結果的には持ってて良かったモノ、という事になるんだが、一体何を根拠に買ったものなのか?

キング・トリッガーの活躍したのはほとんど1982年の一年間限定の情報しかない。要するに一発屋だったんだろうが、この一曲だけでちゃんとしたプロモーション・ビデオが作られているのも不思議だ。何か大いに売る気があったのに頓挫してしまったバンドなのだろうか?
音楽の方はジャングルっぽいトライバルなビートに割と骨太の歌、ビッグ・カントリーやバウ・ワウ・ワウ、アダム&ジ・アンツあたりとも少しは相通じる世界なのか、個人的には心地良いタイプ。
それにしてもこの黒人女性メンバーの目つきや表情、動き。ものすごいインパクトだね。 周りのメンバーがかすんでしまうよ。まさにシャーマニック!
ビデオもタルコフスキーの「ストーカー」を思わせる地下水道で雰囲気的にはかなり良いね。「ストーカー」は眠くなってしまったが(笑)。

【浮かれる!】
Eddie Tenpole Tudor / The Hayrick Song

イングランドやスコットランド、アイルランドなどの歴史や風俗には詳しくないんだが、このプロモーションに出てくるような服装はどの時代なんだろうか?近世のペザント(農民)・ルックだと思えるが、全然根拠はないので大嘘だったらごめん。
日本でも鎌倉時代の農民と室町時代の農民の区別なんか、よほどの大河ドラマ・マニアじゃない限りわからないはず。一般的にはほとんど知られてないんじゃなかろうか?え?みんなわかる?

この民族衣装に身を包みゴキゲンに浮かれて踊っているのがエディ・テンポール・テューダーとその仲間たちだ。ウチのブログで何度も登場しているから何度も書いてるけど、もう一度おさらいしておくか。
エドワード・テューダーポールは元々はコメディアンで役者だったようだが、セックス・ピストルズの映画「グレート・ロックンロール・スインドル」に出演して注目されるようになった。映画の中でも数曲歌っているな。
その彼のバンドがテンポール・テューダーというわけだ。バンド名とソロの時の名義が若干違うけどあまり気にはならない程度。
バンドはパンクの時代から存在していたがレコード・デビューは結構遅くて、主に活動していたのは1980年代になってからだった。
パンクとテディ・ボーイ(テッズ)、そしてスコットランド民謡を取り入れたような壮大で元気の良い音楽と中世騎士などの独特なコスプレ、そしてコミカルで勢いあり過ぎなステージ・パフォーマンスで唯一無二の個性を発揮した、個人的に大好きなバンドだった。うーん、何かいつも同じような事ばかり書いてるなあ。

その彼のソロ名義で出したシングルがこの曲「The Hayrick Song」だ。
アコースティック・ギターとフィドルが印象的な音楽はこれまでのテンポール・テューダーの楽曲よりもずっとトラディショナルで、この少し前のスキッズから少し後でデビューしたポーグスあたりに通じるもの。

プロモーションでは相変わらず大げさな身振りのテューダーポールがとにかくハッピーそうに歌って踊る。この曲にこの衣装、映像は最適のマッチングだと言える。細身で手足の長いスタイルだからタータンチェックのスカートの着こなしもバッチリだね。
このド派手な身振り手振り、まさに情熱パフォーマンス大賞間違いなし。
しかし見ている分にはコミカルだが、もし近場にいたらかなり鬱陶しい存在だろうね。

以上、何だか情熱の意味がよくわからない映像ばかりをよりによって選んでしまったが、懲りずにまた色々ピックアップしてみたい。
それではスラーナグット(ゲール語で「さようなら」)。