Monthly Archives: 8月 2017


【イタリアのラ・スペコラ博物館、是非訪れたいね】

SNAKEPIPE WROTE:

今はもう社会人になってしまったので、夏休みとは縁のない生活を送っている。
お盆休みも関係なく仕事をしているし。
そこで今回はバーチャルな旅行気分で博物館巡りをしてみたよ!
百聞は一見にしかず、という言葉があるけど、画像だけ見てもやっぱりダメで、現物を自分の目で見ることが大事だと考えている。
(できれば現地で)現物を見るというのは視覚以外の情報も伴った感想を持つことになると思うから。
そうは言っても実際に世界の博物館や美術館巡りは難しいよね。
ということで、今回はもし行かれたら嬉しいな、と思う博物館特集だよ!
バーチャルだから、時間や距離やお金の束縛は一切なし。
シンプルに「ここ行ってみたい」と思う博物館を集めてみたよ!
それでは早速紹介してみようか。

Museum Of Modern Art通称MOMAはニューヨークにある現代美術館で、世界的にも有名だよね。
その名称をもじった美術館MOBAがマサチューセッツ州にあるという。
これは一体何の略語だろう?
正解はMuseum Of Bad Art
悪いアート、というより駄作と訳したほうが良さそうだよね。
無名な人が描いたり創作したトホホ系のアートばかりを展示している美術館のようで。
設立は1994年、ゴミの中から発見された一枚の絵画がきっかけになったという。
捨てられていた作品に価値を見出した、ということなんだね。
この美術館は非常に人気があって、鑑賞する側も創作する側からも支持を得ているという。
MOBAに展示される、というのが名誉になるのかどうか?
どうやら「誰かが芸術の名のもとで真面目に取り組んだ作品であること」が第一の基準であり、更に「なんてこった」というクオリティーのアートである必要があるとWikipediaに書いてあったよ。
結局映画監督のジョン・ウォーターズが提唱した(?)「バッド・テイスト」、いわゆるB級礼賛のような感じなんだろうね?
2つの作品を載せてみたけど、どうだろう。
選んだのがたまたま犬になってしまったけれど、上が「DOG」で作者不詳、左は「DOG BITES MAN」でスウェーデンのVlademar Cherが描いたもの。
一生懸命描いたけど、方向性が違っていたり、技術的に問題があるというのが良くわかるかも。
トホホな脱力系は好きなので、この美術館は楽しそうだよね!(笑)

ケンタッキー州フォートミッチェルにあるVENT HAVEN MUSEUMは世界で唯一の腹話術の人形を集めた博物館のようで。
ロゴだけ見ても、腹話術に関係していることがよくわかる。
ロゴは企業イメージだから、これで良いのだ!(笑)
博物館の中には様々なタイプの人形が並んでいるんだよね。
その数なんと800体以上!
それだけの数の人形が勢揃いしている様は、かなり不気味。
腹話術の人形を間近で見たことはないけれど、恐らく1体でもインパクトがあるんじゃないかな?
目がキョロキョロ動くことが多いし、口も開くよね。
そして可愛らしさや美しさを追求して作られていないので、余計に一般人に似ている姿なのが怖い理由なのかもしれない。
この感覚は江戸川乱歩っぽいね。
この写真のどこかに実は本物の死体が潜んでいるんだよ、みたいな感じ。
この博物館は5月から9月までの期間限定、要予約でお値段は10ドルとのこと。
ケンタッキーに行った際には、是非訪れてみたいね!

次はフランスはパリにある博物館にしてみようか。
Le Musée des vampiresはその名の通りヴァンパイア博物館なんだよね!
フランス語、読めたでしょ?(笑)
どうやらここも要予約の博物館みたいで、あまり内部の様子など詳しい情報がないんだよね。
右はHPのトップ画像なんだけど、かなりおどろおどろしい。
Jacques Sirgent という英語の教師でブラム・ストーカーの翻訳家が個人所有している持ち物が展示されているとのこと。
ブラム・ストーカーって「ドラキュラ」の作者だよね。
翻訳してて興味を持ったのか、それともドラキュラ好きだから翻訳したのか?(笑)
ゴシック様式の庭もあるそうなので、散歩も楽しめるかもしれないね。

続いてはイギリス、ロンドンに行ってみよう。
The Viktor Wynd Museum of Curiositiesの趣旨がHPに載っているんだけど、展示の仕方に工夫があるみたいなんだよね。
一般的な展示方法とは、かなりの違いがあるようで。
「奇妙な物と美しい物を平凡な場所に置く」らしい。
写真で観ると雑多な印象も受けてしまうけれど、インパクトも同時に感じるんだよね。
まるでコレクターの家に迷い込んでしまったような感覚。
好きな物を集めたは良いけど、そのまま棚や机に放置した状態に近いのかな。
そして恐らく観れば観るほどに発見がありそう。
先週のブログ「ビザール・ゴシック選手権!26回戦」で特集したゴシックだけど、この博物館の雰囲気はまさにSNAKEPIPEが思い描くゴシックそのもの。
ここもかなり気になる博物館だよね。
料金はお茶がついて£5、博物館内にカクテルバーもあるので、お酒飲みながら歓談するのも良いね!

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最後はチェコ!
プラハにあるFranz Kafka Museum、そうフランツ・カフカ博物館ね!
2008年8月の「不条理でシュールな夏」という記事の中でSNAKEPIPEは書いている。

カフカの「変身」は、現在のSNAKEPIPEが形成されるために必要だった本として記憶している。(大げさ)

この時にもう一冊カミュの「異邦人」も取り上げていたっけ。
夏休みに読んだ本として書いていたんだね。
カフカやカミュの不条理が、 現在の趣味嗜好を形作った要素の一つであることは間違いない。
敬愛する映画監督デヴィッド・リンチもカフカに感銘を受けた一人。
現在WOWOWで放映中の「ツイン・ピークス The Return」を監督しているリンチだけど、自ら出演もしているんだよね。
FBI副長官で耳が遠い役どころ。
その副長官室にデカデカと飾られているのが、なんとカフカの肖像なんだよね。(笑)
もちろんリンチの趣味で飾っているんだろうけど、FBIとカフカの取り合わせはどうなんだろう?
事件をきっちり解決するのがFBIだと思うんだけど、カフカ要素が入ったら「謎だらけのままで良い」ということになりそうじゃない?

リンチネタになると雄弁になってしまうね。
カフカ博物館に話を戻そう。
プラハで生まれ、生活の拠点もプラハだったというカフカを記念する博物館。
きっと街の人の誇りだよね。

上の動画はカフカ博物館が制作したものなんだけど、かなりコミカルだよね。
偉人を記念する、というよりはちょっとギャグに感じてしまったSNAKEPIPEだよ!
博物館の展示はカフカの人生や当時のプラハの町並みを紹介しているらしい。
恐らく言葉が分からないと完全に理解するのは難しいだろうね。
それでもカフカが生きた時代の空気感を知ることはできるかもしれないね?
気になるのはミュージアムショップ!
右の画像、カフカの「しおり」なんだよね。
本にはさむとカフカの顔が出る仕組み。
やっぱりちょっとギャグになってる気がするなあ。(笑)
他にもカフカの顔がプリントされたTシャツも販売されているみたい。
このショップに行ってみたいなあ!

バーチャルな博物館巡り、楽しかった!
実際に行く時の予習も兼ねて(?)また企画してみようかな。

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【ゴシックのイメージ画像。降霊術やってるのね】

SNAKEPIPE WROTE:

2012年2月に書いた「ビザール・トイレ選手権!4回戦」の最後に、ガーゴイルをモチーフにしたトイレットペーパー・ホルダーの情報を載せたことを急に思い出した。
「こんなものまでamazonで買えるんだ!」
という衝撃が走ったんだよね。
5年以上前のことなのに、頭の片隅に引っかかっていたみたい。
そしてビザール・グッズを調べようとした時に、その記憶が蘇ったSNAKEPIPE。
今回の「ビザール・グッズ選手権」は米国amazonで買えるビザールな逸品に焦点を当ててみたいと思う。
ガーゴイルで衝撃を受けたことを鑑みて(?)、 ゴシックな逸品を探してみたよ!
軽くゴシック、と書いてしまったけど、意味を説明しておいたほうが良さそうだよね?

ゴシック (Gothic) は、もともと12世紀の北西ヨーロッパに出現し、13〜15世紀頃の欧州の高い尖塔と森を思わせる内部装飾の寺院建築などに見られた美術様式を示す言葉である。

元々の意味は建築様式を表す言葉だったけれど、意味が拡大する。
文学作品や映画、ファッションなどで、幻想的・怪奇的・頽廃的な雰囲気を持つ物もゴシックとして捉えられるようになる。
映画だったら例えばホラーやダーク・ファンタジーのような、薄気味悪い洋館が出てくるようなタイプになるよね。
ファッションだったら黒いレース飾りのあるロングドレスだったり。
古い時代の貴族が葬式の時に着るような服装、といった感じかな?
時間帯は夜、日中でも曇天、大雨が降り雷が鳴っている洋館で繰り広げられる物語、という印象ね。
十字架とかドラキュラが眠る時に使用する棺桶もモチーフになることが多いかも。
音楽だったらポジパンあたりかな?

2014年6月ROCKHURRAHによる「時に忘れられた人々【18】小栗虫太郎 第1篇」では、「黒死館殺人事件」について語られているけれど、その舞台がまさにゴシック様式の洋館なんだよね。
その時のトップ画像にも黒い城を使用しているね。
そんな城などに彫刻されていることが多いのがガーゴイルなんだよね。
Wikipediaによれば、本来は雨樋を意味する言葉だったようだけど、ゴシック様式に取り入れられた時、動物や悪魔のような姿の口から雨水を放水させていったようで。
その悪魔的な生物がガーゴイルと呼ばれるようになったみたいだね。
宗教的な意味合いが強いゴシックやガーゴイルだけど、このブログでは全く宗教に関係なく、面白いグッズ紹介をしていきたいと思う。

ゴシックという言葉、日本ではあまり馴染みがないかも?
せいぜいゴス・ロリ・ファッションとして認知されてるくらいかな。
今回アメリカのamazonでゴシックをキーワード検索して分かったことは、ゴシックが人気あるということ!
色んな商品の名前にゴシックと入っていたからね。
アメリカのamazonで買えるゴシック・グッズ。
これは2017年8月の段階で購入可能な商品ということなので、検索する日付によっては販売してない可能性もあるよね。
既に販売終了の場合はごめんなさい!
早速いってみよう!(笑)

まずはベッドにしてみようか。
Solid Mahogany Black Gothic Ornate Hand Carved Gargoyle E. King Panel Bedだよ!
ゴシック好きな人は寝る時にも重厚で悪夢を見そうなベッドで寝なければ!
ヘッドボードには顔をモチーフにした彫刻が彫られていて、ゴシック・マニアの心をくすぐるよね。
これらは全て手掘りだというから、より一層ゴージャスに感じちゃう。
気になるお値段は$2,070.00+ $289.00 shipping、日本円で226,000円に配送料が31,000円とのこと。
大体25万円くらいになるのかな?
思ったよりはお買い得かも。
ただし日本への配送はやっていないそうなので、注意だね!

ベッドに合わせて椅子も用意しないと!
Giant Mahogany Throne Chair for King / Queen or maybe Santa Claus antique red velvet WOWなんて販売ページに書いてあるんだけど、王様か女王様かサンタクロース用って同じタイプの椅子なのかね?
しかも最後のWOWってなんだろうか。(笑)
この椅子も見事な彫刻が施されているんだよね。
肘掛け部分にはライオンがいるし。
紅いベルベットも良い感じ。
ゴシックには赤も似合うよね。
この椅子は$1,649、日本円で約18万円。
送料は無料とのこと!
この椅子に腰掛けて、渋みの強い赤ワインを飲んで。
口を拭く時には黒いレースのハンカチが良いな!
ああ、イメージが膨らむねえ。(笑)

実はもう一つ椅子を見つけたんだよね。
こっちはもっと悪魔的な、魔術師用って感じになるのかな。
Dark Ruler of the Underworld Skull Throne Chair 57 Inch Tallと書いてある。
ダークでアンダーグラウンドで骸骨だから!(笑)
材質は樹脂で、こちらもハンドメイドとのこと。
「どんな部屋にもアクセントになります」
「ゴシック・ファンタジー・コレクターへのプレゼントにいかが?」
なんて宣伝文句があるけど、「どんな部屋にも」は無理ないか?
例えばマリリン・マンソンが持ってる、と聞いたら納得しちゃうけどね。(笑)
さて気になるお値段は?
$1.299、日本円で約14万円!
送料は無料で、なんと日本にも配送してくれるらしいよ。
日本在住のゴシック・ファンタジー・コレクターは急がないと!
残り3点だから、お早目に!

椅子に似合うサイドテーブルも見つけたよ。
Design Toscano Warwickshire Dragon Glass-Topped Coffee Tableと書かれているから、れっきとしたコーヒーテーブルなんだよね!
ドラゴンの背にガラスが乗っているゴージャスなタイプ。
これなら上で紹介した椅子にもマッチしそうだよね。(笑)
お値段は$397.86、日本円で約44,000円。
もっと高そうに感じたけど、意外とお値打ち品かも?
こちらは日本への配送不可、だって。
残念だね!

このテーブルに合いそうなのはこれかな?
VERDUGO GIFT CO Royal Dragon Gobletだ!(笑)
素材はポリレジンとステンレス、とのこと。
アマゾンのレビューではワインを飲んだ、と書かれているのもあったから、ちゃんと使えるみたいだね?
上のテーブルの写真では、ただのグラスが置かれてるけど、こっちのほうが雰囲気でるよね?
さて、気になるお値段は$17.33、日本円で約1.900円!
そんな金額とは思えないよね?
日本への配送も可能だって。
これはプレゼントされたら嬉しい逸品だよね。
えっ、喜ぶのはSNAKEPIPEだけ?

ゴブレットに似合うライトも見つけちゃった!
Guardians of Light Dragons Figurine Lampは2匹のドラゴンを配したデザインで、重厚感あるよね。
ライトを点けると、シェード部分のプリントがシルバーになるらしい。
少し暗めの部屋にしたいから、シェードが黒いのは良いかもね?
お値段は$46.99、日本円で約5,200円!
えーーっ、写真で見る限りではもっと高いように思ったよ。
これはお部屋に一つ欲しいアイテムじゃない?
購入した人の評価も高くて、良い買い物をしたと書いている人が大勢いるよ。
はっきりは書かれてないんだけど、どうやら海外発送もオッケーみたい。
それにしてもドラゴン関連の似たタイプの商品と合わせると、かなりの売れ筋商品で、ゴシック大人気なんだよね。
アマゾンで買えるから注文が簡単だということが理由だとしてもちょっとびっくりしちゃうね。

さて、ベッドルームはかなりゴシック色が濃くなってきたから、そろそろトイレも改造しようか。
どう、このナイト・ペーパーホルダーは!
Toilet Paper Holder – Medieval Knight to Remember Gothic Bathroom Decorだって。
これ、良いよね?
SNAKEPIPEも欲しくなってしまった。(笑)
お値段$62.9、日本円で約7,000円くらい。
残念ながらこれも日本への配送は不可だって。
いいなと思ったのになあ。
それにしても気になるのは、このトイレットペーパー。
せっかくならこれも手に入れたいよね?
トイレットペーパーは調べたけど、発見できなかった。
アメリカには面白い商品いっぱいあるねえ。

せっかくトイレを改造するなら、これも揃えたい逸品かも。
普通掃除用具は隠しておきたいよね。
そう思っている、そこのゴシック好きのあなた!
このトイレ・ブラシなら見せたい掃除用具になること間違いなしだよ!
Toilet Brush Set – Skullduggery Skeleton Bathroom Decor – Toilet Bowl Brush、よく出来てるよね。
この商品の場合は特別ゴシック好きというわけではなくて、ホラー好きでも対応可能なところが素晴らしいよね。(笑)
お値段は$38.9、日本円で約4,300円。
トイレ用のブラシと考えると少しお高めだけど、部屋をゴシックにするためだもん。
これくらいは出費しないとね!
日本への配送もやってるって。

最後は極めつけのコレ!
Design Toscano 16th Century Italian Armor Sculpture with Halberd in Faux Silver and Brass、16世紀イタリアの甲冑のレプリカだよ!(笑)
えーーー、こんな物までamazonで買えるの?
まさかね、と思って検索したら本当にあったんだよ。
しかも販売実績もあるし。(笑)
ゴシック好きを貫くなら、やっぱりこれは外せないもんね!
できれば2体用意して、階段の両側に配置する。
「富貴(acre)」「弥撒(mass)」の旗を逆に持たせたいね。
逆さになるとmassacre(虐殺)になるってわけ。
これはもちろん小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」からの引用だけど、これを実演してみたいと思ったんだよね。(笑)
この言葉遊びってスタンリー・キューブリック監督「シャイニング」の「redrum」みたいな感じね!
さて、この甲冑一体いくらなんだろう?
$1030.65、日本円で約113,000円!
やっぱり結構良いお値段するよね。
2体なら23万円くらいか。
うーん、考えちゃうね。(本気のわけない!)
レビューで気になったのは、「イタリアの甲冑なのに中国製だったので不満」というもの。
11万出して中国製は、やっぱり考えちゃうかもね?(笑)

今回は「ゴシック」をキーワードに検索して、amazonで実際に購入できる商品を紹介してみたよ。
実際に購入した場合には総額で858,400円!
甲冑は2体で計算してるからね。(笑)
ゴシックを極めるには、まだ必要な物たくさんあるだろうな。
きっと他の商品もamazonで手に入るに違いないね。

また別のキーワードで検索したら面白い結果が出るかも?
この企画、続けてみよう!

【80年代真っ只中の展覧会、開催中(音が出ます)】

ROCKHURRAH WROTE:

1970〜80年代のパンクやニュー・ウェイブのレコード・ジャケット・アートワークに注目して、美術的な観点(ウソ)からこの時代を紐解いてみようというのがシリーズ記事「ニッチ用美術館」なのだ。
それが何でこのタイトル?と思った人は毎回説明するのも鬱陶しいので第1回第2回をご覧あれ。
ちなみに第3回目である今回からタイトルにテーマ曲がついたよ。
何とROCKHURRAHが19年前、1998年に作った楽曲の一部を使ってみた。本邦初公開。
どんな時代でも相変わらず80年代真っ盛りの曲調だな。

今回は珍しく前置きが短いが、では順路沿いに展示作品を鑑賞してゆこうか。

ROOM 1 阿拉伯の美学
前回に引き続き、読めん漢字特集にしたわけじゃないけど、予備知識がないとさっぱりわからんなあ。
このジャケット見れば想像出来るかも知れないが、これはアラブの当て字だとの事。沙特阿拉伯(サウジアラビア)とか阿拉伯首長国連邦とか、現代では滅多に漢字にする必要性がないと思える。だからあんまり見た覚えがないというわけ。

見ての通りただアラビア語の手書き文字を少しデザイン調にしてるだけで、このジャケットをアートと言って良いのかどうか微妙なところだが、固定概念にとらわれず気になるジャケットを集めて展示するのがこの企画展のテーマなので、ROCKHURRAHの好みだけでやってみよう。
国を特定する事は出来ない(要するに知らない)が、イスラム芸術の持つ美的センスには驚かされるし、曲線だらけのアラビア文字の美しさも素晴らしい文化だと思うよ。残念な事に読めん・・・けどね。
しかもアラビア語だと勝手に思っただけで、もし微妙に違ってたら赤っ恥だが。

こういう文字にも上手い下手はあるんだろうが、パッと見にはまっすぐ書く事さえ難しいように感じる。曲線的な文字だからまっすぐ書く必要はないけど、字面が上がったり下がったりしないという意味のまっすぐね。
小池百合子都知事は昔はアラビア語通訳をしていたそうだけど、こんなに違いのわからない文字をスラスラと流麗に書くんだろうかね。
文化もルーツも違うから当たり前なんだろうけど、向こうの人からすれば漢字やひらがなこそ難しいって事になるんだろうな。

さて、そのアラビア文字をジャケットに堂々と使った西洋人バンドと言えばこれ、ジュリアン・コープ率いるティアドロップ・エクスプローズだ。こちらは1980年に出た、確か4枚目のシングル。
今まで何度もこのブログに書いてるが、アラブ諸国とあまり関係なさそうなリヴァプールで1970年代末に結成されたバンドだ。
エコー&ザ・バニーメンやワー!(Wah! Heat、Mighty Wah!など)と元は一緒のバンドでやってたというのは有名な話。
しかしティアドロップ・エクスプローズで活動中のリアルタイムでは国内盤でレコードが出なかった(マーキュリー、フォノグラム系)ので、輸入盤が手に入らない地域では「聴けない有名バンド」として悔しい思いをした人も多かったろう。
初期LPがちゃんと国内盤で出ていたエコー&ザ・バニーメン(ワーナー)とは大違いの扱い。レコード会社の洋楽担当がダメダメだなあ。

彼らの音楽はいわゆるネオ・サイケと呼ばれた範疇にあるが、もう少しポップでもあり、もう少しひねくれたものでもあった。だから誰もがうなる正統派ネオ・サイケの名曲もあり、トランペットが入ったファンカ・ラティーナみたいなのもあり、中東風のメロディが飛び交う奇妙なテイストの曲あり、単なるポップだけのものもあり、実にバラエティに富んだ曲作りが特徴だった。
ジュリアン・コープのいいかげんそうな言動やその音楽の整合性のなさが自由気ままな魅力でもあったけど、当時のネオ・サイケ好きな若者なんて生真面目で深刻そうな人が多数だった。そういう人種にはあまり受けなかったろうなと想像するよ。

このバンドのメンバー全員の生まれや宗教などについて知ってるわけじゃないが、今回のジャケットをはじめ、「Seven Views Of Jerusalem」「Thief Of Baghdad」などの曲のタイトル、パレスチナ解放運動の活動家で世界初の女性ハイジャッカーでもあるライラ・カリドについて歌った曲「Like Leila Khaled Said」など、白人バンドとしては珍しいほどに中東へ目を向けていたようだ。別に踏み込んだ内容ではなかったとは思うが。
そう言えば関係ないけど、同時代に近場のマンチェスターではムスリムガーゼという筋金入りの中東寄りアーティストがいたなあ。

「Ha Ha I’m Drowning」は1stアルバム「Kilimanjaro 」の一曲目だしシングルにもなっているけど、この前後に出した「Treason」「When I Dream」という二つの代表曲に挟まれて、かわいそうなくらい印象が薄い曲だなあ。アルバムのオープニング曲としては期待感が高まるけどね。

ドラムは坊主頭でアメリカの軍人(このビデオの時はリーゼント)みたいだし、ギターは頭にシュマーグ(アラブ・スカーフ)巻いたサンタナみたいな人だし、ジュリアン・コープは何にでもこの革のジョッパーズ・パンツ合わせてしまうし(このビデオは違う姿だが、上は英国空軍のアーヴィン・ジャケットというムートンの時が多い。暑そう)、後ろのラッパ隊はどこのか知らない軍服姿だし、こんな感じでバンドの統一感のなさも半端じゃない。唯一のキーワードがミリタリーっぽいという事だけなんだろうかね。

直訳すれば「ハハ、俺は溺死してる」というようなすごいタイトルだけど、特に水死の瞬間を歌った歌詞ではなく、愛に溺れてるみたいな意味らしい。なーんだ、色んなすごい情景を想像してたのにありきたりだな。

ROOM 2 假面の美学
「第2回」のチャプター・タイトルは一般的でない漢字ばかりになってしまったんだが、今回もずっとその路線にしてゆきたいのがミエミエのタイトルだな。
んが、そこまで難しい表現ばかり出来るほどROCKHURRAHが知識豊かではないので、たぶんすぐに破綻すると思うよ。
日本語で書けば簡単に仮面なんだが単に中国語で表記しただけ。

これまたひとつ目のティアドロップ・エクスプローズと同様、美術館の展示としてはどうなの?という、真っ当に評価するのが難しいジャケットだな。
見ての通り、仮面なのかマスクなのか不明だが、そこから光みたいなものが出てるというようなイラスト。仮面から光が出てるわけでなく、もしかしたらドアを細目に開けた瞬間、向こうの部屋からの光が仮面を照らし出したという場面なのか?判別は難しいがどっちがどっちでも絵画的には大差ないし、そもそもあまり評価もされなさそうな困ったジャケットだよ、一般的にはね。
ただしROCKHURRAHはこのジャケットに対して特別な思い入れがあり、初めてこれをレコード屋で見かけた時の興奮は数十年経った今でも鮮明に覚えているくらい。

この不可解なジャケットのレコードはビル・ネルソンのソロ第一作「Quit Dreaming And Get On The Beam」 だ。タイトル長いな。
ROCKHURRAHのビル・ネルソン好きは高校生や若い頃の一部の友人(無論音楽のわかる人)ならば、もしかしたら思い出してくれるかも知れないが、それくらい熱烈に聴き込んでいたアーティストだった。
グラム・ロック周辺のバンドとしてデビューし、ハードロック、プログレ的な要素も取り入れて、最終的には(その頃ちょうど始まった)ニュー・ウェイブとも呼応するような音楽を作り上げたのが70年代のビーバップ・デラックス、そのギタリスト&シンガーでワンマン的なリーダーがビル・ネルソンだったのだ。
その後はビル・ネルソンズ・レッド・ノイズというデジタル・パンクっぽいバンドを経てソロとなったわけだが、特にエレクトロニクス・ポップ(日本ではテクノポップ)、シンセ・ポップというジャンルにおいて活躍したミュージシャンだった。
今回はこの人について詳しく書く企画ではないから、知らない人はこっちの記事で少し書いてあるので読んでみてね。

ROCKHURRAHはビーバップ・デラックス解散後、レッド・ノイズの音楽に衝撃を受けた一人なんだが、この後はどうなるのかと、およそ二年間くらいは新作のリリースを待ち望んでいたかな。
この頃はそこまで新作リリース情報がなかったからマメに輸入盤屋に通って探すという行き当たりばったりな事をやっていた。そして情報もないまま、唐突にこのレコードが出ているのを知ったのだ。
レッド・ノイズの2ndを期待してたがソロ名義だったのでビックリしたよ。
レッド・ノイズがデビューした頃、まだパンクとデジタルは結びついてないような時代だったから、この奇妙で衝撃的な音楽を続けていれば、必ず新しい潮流が来るとROCKHURRAHは信じていたわけだ。
それなのに「大して売れなかったから」あっさりこの武器を捨てて、よりポップで売れ線の音楽に歩み寄ってしまった事について、たぶんビル・ネルソン本人よりも後悔しているよ。

この曲は上の1stアルバム収録の曲でちゃんとオリジナルのビデオもある貴重なもの。
売れ線の音楽に歩み寄った割にはヒットに恵まれず、ゆえにプロモまで撮ったシングル曲がほんの少ししか残ってないのだ。
しかし、このビデオは1920年代の表現主義映画っぽく撮られていてかなり素晴らしい世界。こういうのは無条件に好きだよ。
ビル・ネルソンは確かな才能もセンスもあった人だが、何だかいつもやりたい事のタイミングがズレてて、世の中の需要がある時には違うことしてたりする。だから大御所と言われてもいいキャリアの割には活動があまり知られてない一人だと思うよ。この辺の「商才」のなさがまたファンにはたまらないんだけどね。

ROOM3 顛落の美学
いやいや、普通はこの漢字では使わんだろうと思えるが、これは転落と同じ意味だそうだ。顛という漢字で「この話の顛末」みたいな使い方はあるだろうけど、転落を顛落と書いた事は一度もないよ。
しかもこの言葉を日常的に使っているような職業にはなりたくないものだ。

第3回のテーマは「アート作品としてはやや微妙」というものに今、突然思いついて決定したわけだが、このジャケットもたぶんアートとは無縁の分野からのもの。本来はこういう場で語るようなものではないんだろうけど。
作ってる側から言うなら、名画だろうが記念写真だろうが全部が一筆書きのイラストだろうがインスタ映えのする写真だろうが、許可さえあれば何でもジャケット・アートとして成り立つものなんだろうな。

見てわかる通りベランダだか階段だかわからないが、鉢植えと共に落下している、まさにその決定的瞬間を捉えた写真だな。
これはスタンリー・フォーマンというアメリカのフォト・ジャーナリストが撮った「Fire Escape Collapse」という有名な報道写真らしい。火事になった建物から飛び落ちたのか、避難してる非常階段か柵が壊れて落ちたのか、詳しい状況は不明だが、緊迫した瞬間なのは確か。ジャケットでは一人だけ写ってるがこの画面の上にも子供が落下してるんだよ。この写真かどうかよく知らないが、スタンリー・フォーマンはピューリッツァー賞も受賞しているらしい。
などと書いてはみたものの元から知ってたわけではなく、必死でこのジャケットを調べて知っただけの付け焼き刃。

この社会派のレコード・ジャケットはドイツのアプヴェルツ(Abwärts)というバンドが1980年に出した1stアルバム「Amok Koma」だ。これと同じ写真を使ったリチュアル(80年代のポジパン・バンド)なんてのもいたっけ。
同じ系統と言えるのかどうかは不明だがエディ・アダムスの有名な写真(ベトナムの警察長官を米兵が射殺する瞬間)をジャケットに使った、B-Z Party(ニッツァー・エブが軟弱になったような超マイナー・バンド)などというのもいたなあ。アプヴェルツとは関係ないけど報道写真つながりで思い出してしまった。

以下、ドイツの人名やバンド名を少し語るけど、ドイツ語をカタカナで書くと人によって読み方が違ったりする。ROCKHURRAHはネットで出回ってる読み方を無視して(ついでに正確な発音も無視して)自分が80年代に覚えた読み方で書く事が多いので、その辺の違いは気にしないでね。

アプヴェルツはROCKHURRAHがしつこいほど何度も書いているノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(ドイツのニュー・ウェイブ) の中では今まであまり焦点を当てた事がなかったバンドだが、後にアインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのメンバーとなるF.M.アインハイトとマーク・チャンがいた事で知られている。
ドイツのパンクと言えばデイ・クルップスのユーゲン(ユルゲンとみんな書いてるが80年代はユーゲンと言ってた)・エングラーがいたMaleとか初期フェールファーベンとか、トミー・シュタンフのいたDer KFCとか即座に思い浮かべるけど、みんな英米のパンク・バンドにはない迫力があって大好きだったんだよ。このアプヴェルツも素晴らしい。
硬質な感じとナチュラル巻き舌の発音が多いから、パンクという音楽にも相性抜群だったのがドイツ語だったと思うよ。
アプヴェルツはちょっと暗くて突っ慳貪な音楽と釘を叩き込むようなビートが心地良いバンドだった。
ドイツ語なので目的や思想はわからなかったがアートワークとかで戦争モチーフのものが多かったという印象。

「Computerstaat 」と題されたこの曲は上のジャケットの1stアルバムには未収録だが、同じ頃のシングル曲だ。
いかにもドイツのパンクっぽい曲なんだがイントロが1分以上あって長い・・・。
また知恵の足りない話で恐縮だが、ドイツ語辞書を調べもせずに勝手に「コンピューター・スタート」だと思っていた。
この時代のコンピューターだったら起動するまでにそれくらいの時間がかかるので、それを表現してるのかと思ったわけだが解釈はまるっきり違っていて、staatは英語で言うとstate、国家とかそういう意味らしい。

画面左側がノイバウテンの名物男、F.M.アインハイトなんだが、どう見てもヴォーカルっぽい位置でスタンバってるくせに何か叩いたり跳ねたりしてるだけ、本当のヴォーカルは一番右側のギター兼任で驚かされる。中央の人物の暗黒舞踏みたいな踊りも不気味。最後だけちょっと歌ってるけどこんなんでもちゃんとギャラ貰ってるのかね?

ROOM4 芥場の美学
これはたぶん読めるし何となく意味がわかる人も多いだろうと推測する。
だんだんチャプター・タイトルが一般的でない言葉や漢字になってしまったんだが、書いてる本人がそんな言葉を日常的に使うはずもない。
そう、つまりは難しい言葉シリーズを探すのが億劫になってしまったというわけだ。第1回目は確か普通の言い回しだったけど、何の因果でこうなってしまったのか?
次回からはまた普通に戻そうかな。

芥場は「あくたば」と読んで字のごとく、ゴミ捨て場とか掃き溜めというような意味になる。
「塵やあくたのように捨てられた」みたいな古典的表現は最近では滅多に聞かないし自分でも言った事ないけどね。
大規模なゴミ捨て場というと即座に「夢の島」を連想してしまうが、これがゴミ施設だったのは大昔の話。ROCKHURRAHが東京に住んでいた頃にはたぶんもう、そんなものなかったと思うよ。
立ち入り出来たのかは不明だが仮にそういう場所を間近に見たら、ありとあらゆるものがランダムに捨てられてて、そこにはもしかしたら人知を超えた芸術的な風景も広がっていたのかも知れないね。

それでこのジャケットだが、今回もまたアートとしてはどうかな?という傾向。
マネキンや車などがコラージュされた架空の風景。これを見て何となく芥場というチャプター・タイトルを思い浮かべたわけだが、そこまで乱雑なわけではなく控え目な印象だね。
夢の島で偶然マネキンを見つけた方がよほど絵になる写真を撮れるとは思うし、世界にはもっと大掛かりなゴミ捨て場があるんだろうけど、コラージュを作ったアーティストにそんなつもりは毛頭ないのかも。
左側の字体といい女の子といい、全体としては80年代のオシャレ系を目指したデザインなんだろうね。

90年代に渋谷系なる音楽が流行ったが、その源流のひとつだったのが80年代のギター・ポップやネオ・アコースティックと呼ばれたような音楽だった。
1980年に23歳の若さで首吊り自殺したイアン・カーティス(ジョイ・ディヴィジョン)の不倫相手と噂されていたのがベルギーのジャーナリスト、アニーク・オノレだったが、彼女が設立したのがレ・ディスク・デュ・クレプスキュールというレーベル。
80年代前半にラフ・トレードやチェリー・レッドなどのインディーズ・レーベルからネオ・アコースティック系の簡素な音楽を志すバンドが色々登場したけど、クレプスキュールもネオアコや後のラウンジ・ミュージックにつながるようなアーティストを矢継ぎ早にリリースしていた。
日本でも新星堂がいち早くクレプスキュールのレコードをジャンジャン出してたから、アンテナとかアンナ・ドミノとか、輸入盤屋のないような土地でもこの手の音楽は普及していたはずだよ。
ここまで懇切丁寧に説明しなくても良かったような気がするが、そのクレプスキュールから出ていた一枚がこのジャケットの主人公、ポール・ヘイグだったのだ。

知ってる人にはすぐにわかると思うが、ソロになる以前はポストカード・レーベルからレコードを出してたジョセフ・Kというバンドのヴォーカリストだ。
カフカ(「審判」)的に言えばヨーゼフ・Kなんだろうが、この時代にはみんなジョセフ・Kと呼んでた。
ちなみにPaul Haigで検索すると右上に「ポール・ハイ」などと書かれていてゲッソリしてしまったワン。誰が書いたか知らないが、しかも本当はこの読み方の方が正しいのかも知れないが、80年代には誰も「ポール・ハイの新譜聴いた?」なんて言ってなかったぞ(笑)。

ポストカードもスコットランドのネオアコ、ギター・ポップの伝説的レーベルで、オレンジ・ジュースやアズテック・カメラなどもここの出身。
ジョセフ・Kはすぐにメジャーになってしまったオレンジ・ジュースやアズテック・カメラに比べるとちょっとマイナーな存在だったが、音楽性を変えることなくパンクや初期ニュー・ウェイブの香りがするギター・ポップのまんまで終わったのが逆に良かったのかも知れないね。
特にポール・ヘイグの歌声は実にフラットで、たとえ明るい曲を歌っても決して抑揚が変わることないという特性を持っていて、ありそうでないタイプのヴォーカリストだった。
関係ないけどそのジョセフ・Kの影響をモロに受けたジューン・ブライズもいいバンドだったなあ。

1982年にジョセフ・Kが解散してソロとなったポール・ヘイグは上に書いたクレプスキュールよりレコードを出していたが、上のジャケットは1985年に出した2ndアルバムになる。
脇を固めるミュージシャンも豪華で、アソシエイツのアラン・ランキンやジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダーのバーナード・サムナーなど。
ポール・ヘイグはアソシエイツのビリー・マッケンジーとも一緒にやってたので、ケンカ別れした両方と仲良かったわけだな。お互いの悪口を聞いたりしなかったのかな?

いやあ「すぐにメジャーになってしまったオレンジ・ジュースやアズテック・カメラに比べるとちょっとマイナーな存在だった」などと何行か前に書いたのを覆すかのような、思いっきりメジャー志向の曲で売れ線オーラの漂う名曲。服装も髪型も栄光の80年代、工場バックのビデオもいいね。もう全然ギター・ポップでもないけど。
この映像の時はそんなでもないが、当時はモミアゲをばっさり刈ってネオ・ロカビリーやサイコビリーのフラットトップみたいな髪型をしていた。頭頂部の平坦度は英国一だったのではなかろうか?

ROOM5 縹渺の美学
ラストには今回最も難しい漢字を使ってみた。これは無学なROCKHURRAHならずとも読める人はそうそういないだろう。縹渺と書いて「ひょうびょう」と読むらしいね。意味は「かすかではっきりしない様子」「広く果てしないさま」だとの事。今知って勉強にはなったけど明日にはもう読めない、書けないに違いない。

さて、今回の「アートとしてはどうなのか?」というテーマ自体が美術館企画としては破綻してるような気がするが、こういう事をやるならせめて10回くらいまともな展示をして、その後で変わり種企画としてするべきだったか?
最後の展示も意味不明のシロモノ。仮に美術館でこれを展示してても立ち止まって覗き込まないくらいに何も感じないジャケットだと思うよ。
うーん、写真だとは思うけど何を撮りたかったのかさっぱりわからん。
これぞまさに「縹渺たるありさま」。無理してじっくり見たら、雪解けの地面を上から撮影したみたいに見えなくはないけど、当たってても外れててもこれをジャケットに使った真意は不明だな。

そんなコメントしにくい代表のようなジャケットで世間を驚愕させたバンドがサバーバン・ローンズ、これは1980年作の2ndシングル「Janitor」だ。別にジャケットで驚愕させたわけではなくその歌でね。

米国カリフォルニア芸術大学の学生が1978年に作ったバンドで音楽的にはパンクから初期ニュー・ウェイブのあたり。ストレートなパンクよりも幾分オルタナティブな曲調を得意とするバンドだった。
デビュー曲「Gidget Goes to Hell」のビデオを後に「羊たちの沈黙」で有名になるジョナサン・デミ監督が撮っているけど、まだそんな片鱗さえ感じさせないB級テイストのもので、さすがロジャー・コーマンの門下生。
昔のB級SF、B級ホラー大好きなレジロスのビデオと共通するようなものと言えばわかるか?

で、これが問題作、2ndの「Janitor」ね。
いかにも学生って感じの男メンバーに似つかわしくない紅一点ヴォーカルのスー・ティッシュ。
彼女が唯一のヴォーカルではなく男ヴォーカルもいるんだけど、どうしてもスー・ティッシュの方が強烈な印象があるね。
横分けロングヘアーのお嬢様タイプ、遠くから見れば国民的美少女コンテストに出てもおかしくないような少女に思われるが、「何で私がこんなとこに出なきゃいけないのよ」というような不機嫌そうな素振りで歌い出す。
演奏も歌もたどたどしくて声も出てない、素人っぽいなあと眺めていると突然の変貌に誰もが驚くという寸法。そう、見ればわかる通り表情も変えずにまるで演歌のこぶしの効いた歌のようになってしまうのでみんなビックリして腰を抜かす(大げさ)。もしくはモンゴルのホーミー(二つの声を同時に出す唱法)みたいな感じ。
どこでどうやったらこの曲のこの部分がこの歌唱になったのか教えて貰いたいもんだよ。
美術館でこのジャケットが展示されてても誰も立ち止まらないだろうが、この歌が同時に流れたらみんな集まってくるに違いないくらいのインパクト。

こういうエキセントリックに豹変する女性ヴォーカルと言えば70年代末から80年代にはニナ・ハーゲンやリーナ・ラヴィッチ、戸川純などが出てきたが、これらは最初からいかにも何かしそうな変人の風貌だ。このスー嬢は見た目が清楚だけに余計驚かされるね。
他の曲ではここまで珍妙な歌声ではなかったのが残念。本人もそこまで色物路線にはしたくなかったんだろうか?

以上、どれだけの人が興味を持って読んでくれてるかは全く不明だけど、これからも世間の美術的視点とはちょっとズレたROCKHURRAHなりの展示を続けてゆきたいと思うよ。
それではまた、ハゴーネー(ナバホ語で「さようなら」)。

【謎の黒い線が体を覆っていく不思議な動画】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで「SNAKEPIPE MUSEUM」においてたくさんのアーティストを紹介してきた。
そのうち人形作家だけで並べてみても、その傾向は明らかだと思うけど、SNAKEPIPEは不気味な雰囲気の作品が好みなんだよね。
えっ、今更わざわざ言わなくても良い?(笑)
今回もまた、SNAKEPIPEの心を鷲掴みにした作品に出会うことができたんだよね!
早速紹介してみよう。

Jessica Laurel Louise Dalvaについて詳細を調べようとしても、本人のHPに載っている以上の情報を得ることができなかった。
その情報によれば、2009年にオーティス・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザインのイラストレーション学科を卒業とのこと。
日本と同じように考えた場合、美大卒業時に22歳だったとすると現在30歳くらいなのかな?
なんと本人のHPで書いてる卒業した学校、スペルミスを発見してしまった!
(誤)Otis College of Art and Desgin →(正) Otis College of Art and Design
こんなことを日本人に指摘されてしまうなんて!(笑)
もしかして国語の成績はいまひとつだった?
作品は素晴らしいので、良しとしよう。

学校卒業後は、劇場や蝋人形館などで仕事をしているようだ。
ポスター制作や舞台装置、ロゴデザインなど色んな役割で収入を得ているんだね。
そういった仕事をこなしながら、自分の作品を発表しているみたい。
日本での紹介記事が見当たらなかったので、SNAKEPIPE独自の日本語訳や解釈で記事を書いているからね。
間違っていたらごめんなさい!

驚いてしまったのが、ジェシカ・ダルヴァ(略してこう書いていこう)の居住地。
カリフォルニア州のロサンゼルスにお住まいとのこと。
作品とカリフォルニアのギャップが激しい!(笑)
SNAKEPIPEが言わんとしていることは作品を観てもらうと一目瞭然だよ。

半裸状態の女性が両腕にカラスのような黒い鳥を従えて、天を仰いでいる。
天女が纏う羽衣ならぬ、黒く薄い布は、まるで鳥の尾が長く垂れているかのよう。
それは額縁をはみ出し、より立体感を増している。
2羽の鳥が羽ばたけば、両腕を広げて一緒に空を飛べるのではないか。
もっと風よ吹け。
大きな風に乗って、高く遠い場所へ。
飛ぶことができなかった時は、谷底に転落するかもしれない。
それでも私は行くのだ。
あの空の向こうへ。
ここではない場所へ。

などと本気で考えているように想像してしまった。(また陳腐?)
女性のアップがあるので、それも載せてみよう。
目の部分がはっきり分からないんだけど、白目を剥いているように見えるんだよね。
盲いているのか。
それともシャーマンのトランスのような状態なのか。
「Eyrie, or, Clarity of Consequence」というタイトルは意味不明。(笑)
Eyrieは〔ワシなどの猛禽ががけなどの〕高いところに作る巣。
Clarityは明快。
Consequenceは成り行き。
Clarity of Consequenceでは必然、と訳して良いのかな?
鳥の巣、または必然???
SNAKEPIPEの英語力では難しいけど、これで作品の怪しい雰囲気は分かってもらえたんじゃないかな?
夜を連想させる、ゴシック調なんだよね。

ジェシカ・ダルヴァのHPには2009年から制作している作品が載っているんだけど、初期の頃はどちらかというとパペットの延長のようなあどけない表情の人形が並んでいる。
少女をモデルにしていたのかな。
決してかわいくはないけれど、そこまでの不気味さはない。
今回特集している「Hapax Legomena」は2015年の作品群で、不気味さに磨きがかかってるよね!(笑)
それにしても 「Hapax Legomena」ってどんな意味?
調べてみると「孤語」というらしい。

コーパス言語学において、ある言語で書き記されたすべてのテキスト全体なり、
特定の作家の作品群や、特定のひとつのテキストの中など、
一定の文脈の中で、1回だけ出現する単語を意味する

Wikipediaから引用してみたけど、その一回だけ出現した単語の複数形がレゴメナだという。
一回だけ出現する単語の複数形ってところで分からなくなるよね。(笑)
「Hapax Legomena」もしくは「hapax legomenon」なんて余程のことがない限り、知ることのない言葉だと思うけど、それは「ありふれた現象」だというのも驚いちゃうね。
大層な言葉だから何か特殊な例なのかと思ってたのに、言語学って難しいね。
前のタイトルといい、全体の総称としてのタイトルも含めて、かなり文学的な思考の持ち主と推察する。
スペルミスはあるけどね!(笑)

底なし沼のような黒い泥の場所で背中を向けている女性。
白い肌に複数の黒い手が重なる。
こっちへおいで。
もっと深い場所にいこう。
その白い肌を黒く染めて、仲間に入るのだ。
こっちだよ。(また出た!陳腐!)
女性の表情は半分以上隠れているけれど、恐れているようには見えない。
覚悟して、自らの意志で底なし沼に落ちることを決めたように思える。
この作品のタイトルは「Abyss」 、意味は「深淵」だった。
ROCKHURRAHは「Abyss」と聞いて、Sex Gang Childrenの「Into The Abyss」曲を連想したらしい。
さすがポジパン好き!(笑)

ジェシカ・ダルヴァの作品は鑑賞者に不安を与えるね。
SNAKEPIPEは悪夢を見そうだよ。

白い花飾りを頭に乗せた女性。
周りを囲んでいるのは羊や蛇やうさぎ。
これらは供物、という意味なのかな?
穏やかな表情で目を伏せているけれど、体の中央には黒い影がある。
まるでウイルスが、内臓を蝕み、浸蝕し尽したため、表面に発露したような。
「Viscera, or, What More Can I Give」は「内臓、あるいは、これ以上何を与えられる」というタイトルが付いてるよ。
供物を捧げ、更には内臓まで与えました。
他にも何か与えるのですか?
もう後に残るはこの生命だけです、という感じなのか。
覚悟して、死を待っている状態なのかもしれないね。
この作品を観て、思い出したのがフリーダ・カーロの「ヘンリー・フォード病院」 だよ。
傷ついた女性と、周りを囲む物体が6つ。
フリーダ・カーロの作品は解説が書いてあるので、作品の意味は分かる。
流産という実体験を元に描かれたと聞けば、この絵は一瞬にして理解できると思う。
自らの痛みや悲しみを題材にした画家というと、松井冬子も同じかもしれない。
作品制作の源流がネガティブな感情の場合、制作は苦しいのではないだろうか。
それとも作品に昇華させることで、苦しみは減っていくのかな?

またもや苦しそうな作品を選んでしまって済みません! (笑)
完全にエビ反っちゃってるよね。
白目剥いて、 手指や腕は泥だらけ。
堕ちるところまで堕ちて、それでも這って、ほんの少しでも進もうとする。
方向は定まらないけれど、がむしゃらに逃れようとする。
一体何から逃れるのか。
タイトルは「Helix」、「螺旋」である。
逃れたつもりでも螺旋をぐるぐる回っているだけ。
どこまでも続く螺旋を、永遠に悶えながら這っていくのだろうか。
評論家だったら、「これは現代を生きる人間の精神状態を表しています」なんて言うのかもしれないな。(笑)

先に「Hapax Legomena」が、決して特殊な事例ではなく「ありふれた現象」だと書いた。
それを踏まえてジェシカ・ダルヴァの作品を鑑賞すると、「この苦しい状態は誰にでもあること」と言いたいのかもしれないね?
様々なストレスにさらされ、もろくて弱い、絶望感にあふれた危うい精神状態に陥った内面を見事に表現しているからね。
ジェシカ、大丈夫かな?
他人事ながら、ちょっと心配になっちゃうよね。
とSNAKEPIPEが勝手に思ってしまったけれど、写真に写るジェシカには心の暗闇を抱えているような女性には見えなかった。
作品の販売もしているし、本人は明るく前向きなのかもしれないね。
聴いてる音楽もポジパンとかゴシックじゃなくて、ジャスティン・ビーバー大好きかもしれないしね!(笑)