映画「エンドレス・ポエトリー」公開記念 特別企画 鑑賞

【「エンドレス・ポエトリー」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

2017年後半はROCKHURRAH RECORDSにとって大事なイベント満載の年なのである。
8月から放映が開始したデヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス The Return」を皮切りに、10月27日より公開されている「ブレードランナー2049」、そして大トリは11月18日に公開が決定しているアレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作「エンドレス・ポエトリー」!
恐らくSNAKEPIPEと同じように「うひうひ」の人多いんじゃないかな?
「ツイン・ピークス」は25年、「ブレードランナー」は35年という月日が経っての続編なので、待ち望んでいるファンというのは、当然中高年が大半だろうけど。(笑)
「ブレードランナー2049」は近いうちに鑑賞するので、その後ブログにまとめる予定である。
「ツイン・ピークスThe Return」も後半に入ってきて、だんだん話が繋がってきている。
最終章の放映予定は12月1日なので、ブログにまとめるのはそれより後だね。

そしてホドロフスキーの新作公開である11月18日を待たず「公開記念」として、映画の撮影メイキングやインタビュー映像を上映する企画があるよ、と教えてくれたのは長年来の友人Mだった。 
渋谷にある「アツコバルー」 は、2014年9月にも「二人のホドロフスキー 愛の結晶展 鑑賞」として記事にまとめたことがあるギャラリー。
アレハンドロ・ホドロフスキーも会場に足を運んだ、という話も聞いたっけ。
今回もドローイングの展示・販売を行い、更に動画を上映しているという。
11月5日までという日にちが迫った中で、なんとか友人Mと日程調整し、 会場に向かったのである。

「アツコバルー」は入り口で靴を脱いで、靴下のまま展示会場を歩くという認識だったので、友人MもSNAKEPIPEも脱ぎ履きしやすい靴を選んで行ったのに!
なんと床を張り替えたとのことで、土足オッケーに変わっていたことに衝撃を受ける。
2016年7月に「エロトピア・ジャパン」を鑑賞した時には靴脱いでたよね?
一体何時の間に…。(笑)
脱がないで済むほうが楽なので、良かったね!
会場は撮影もオッケーとのこと。
これも良いね!

今回の「アツコバルー」は塙将良というアーティストの作品も展示されていて、会場の入り口から近い最初の展示として鑑賞することになる。
かなりどぎつい色彩に目を奪われてしまう。
勝手に命名させて頂くなら「土偶meetsサイケデリック」って感じかな?(笑)
塙将良って人、初めて。
ちょっと調べてみようか。
1981年茨城県生まれ、ということは、現在35歳くらい?
美大を卒業したのではなく、水戸美容専門学校卒業というので美容師さん志望だったのかな。
アート系のアカデミックな教育を受けていないのかもしれないね?
気になるのは、2009年に鳥取県境港市認定妖怪博士に就任しているところ。
これは一体なんだろうか?

「境港妖怪検定」は、妖怪の権威・水木しげる先生の妖怪考察を通じて高めた妖怪に対する知識を、「妖怪博士」として公式に認定するご当地検定。 

残念ながら国家資格ではないようだけど、「ゲゲゲの鬼太郎」ファンのSNAKEPIPEにとっても、興味のある検定だよ。
サイトには初級と中級のサンプル試験問題まで準備されていて、見ているだけでも面白かった。
京極夏彦は上級の妖怪博士になってるかなあ? (笑)
塙将良の作品を観て「縄文」を感じたSNAKEPIPEだけど、もしかしたら「妖怪」だったのかもしれないね。
そして2009年から個展を開いているようなので、精力的に活動しているアーティストみたい。

土着的な雰囲気と強烈な色彩の洪水は、めまいを起こしそうになるほどエキセントリックだった。
ブログと題されたHPで初期の頃からの作品を観ることができるけれど、土偶(もしくは妖怪)らしき本体(?)の周りにあった隙間(空間)がどんどんなくなって、現在のようなサイケデリックに変化していく様子が興味深い。
映画「薔薇の葬列」の中に出てきた展覧会に、似た雰囲気の絵があったことを思い出す。
あの絵はモノクロームだったけどね。
そう考えるとやっぱり60年代のサイケデリック・アートが近いのかもしれないな。

立体作品も面白かった。
こちらのほうがまさに「縄文時代」って感じだったからね。
妖怪と土偶のハイブリッド!(笑)
右に小さく載せたのが、本物の土偶だけど、雰囲気近いよね?
値段の表示があり、販売をしている。
72000や100000と書いてあるので72,000円とか100,000円なんだろうね。
ちょっと無理をすれば手が出せる金額だけど、この立体作品が似合う部屋ってどんな部屋だろう。
1体でも部屋の印象が変わってしまうほどインパクトがあるからね。
岡本太郎が観たら、どんな感想を持つだろう。
SNAKEPIPEと同じように縄文を感じることができるだろうか?

もう一つの会場では2014年に「2人のホドロフスキー」として展示されていたドローイングを再び鑑賞する。
色がとてもキレイなんだよね。
じっと観ていると、意味を考えたくなる絵。
販売をしていたけれど、さすがにこれは買えないなあ。
せめて画集があったら欲しいんだけどね。
大きなスクリーンに「エンドレス・ポエトリー」のメイキング映像が流れている。
ドローイングを鑑賞しているうちに、ホドロフスキーのメッセージ動画が始まった。

私はもう88歳で、死にかけている。
間もなく肉体は滅びる。

私は映画で、多くの観客を惑わせるのではなく、自覚させたい。
芸術は人に向かって扉を開き、その中に人は自己を見出す。

インターネットで検索すると出てくるのがこれらの言葉である。
メッセージ動画からの抜粋なんだろうね。
「死にかけている」なんて聞くと涙が出そうなくらい切なくなるけれど、実際88歳だからね。
メッセージ動画の中でも「100歳まで生きたとしても12年しかない」と言うホドロフスキー。

映画と芸術、そして人生についてのホドロフスキーからのメッセージは貴重で力強いものだった。

多少記憶違いはあると思うけど、気になった言葉を備忘録として断片的に書いていこう。
・ふりをする
「良い人のふりをする」「良い父親のふりをする」というように、「演じている」といつの間にか、それが真実の姿になっていく、と言う。
SNAKEPIPEはどんな人物を演じていこうか、考えてしまった。(笑)

・人生について強く願う(念じる)こと
念じる、という力については例えば「なりたい自分になるため」なんてハウツー本にありそうな言葉だけど、周波数を合わせて回路を開く作用があると思うので、念じることや強く願うことの有効性は理解できる。
昔よくこの手の本を読んだなあ。

・動物と人間の違いは芸術を理解できるかどうか
人間として生きるには芸術が必要ということは、SNAKEPIPEが子供の頃から聞かされていた言葉だったので、同じセリフを聞いたな、という感想を持った。

・芸術を理解しないで良いなら3D映画でも観て喜んでいればいい
「3D映画」というのはアメリカのハリウッドに対しての批判だと思う。
これは敬愛する映画監督デヴィッド・リンチも全く同じことを言っていて、断筆宣言ならぬ断映(写?)宣言までしちゃってるくらいだからね。
今回のホドロフスキーは寄付を募って映画を完成させているので、リンチもこの方法で映画が撮れるかもしれないよね?
結局商業主義で興行ランキングだけで、映画の良し悪しを決定している映画界にNOを突きつけているわけだからね。
アート作品としての映画が撮影できる環境(資金)が整えば、また映画の世界に戻ってきてくれるのではないか、と期待しているSNAKEPIPEなのである。 

このメッセージ動画、「エンドレス・ポエトリー」のDVD販売の時に特典映像で入れて欲しいな。
ホドロフスキーの芸術に対する信念は、これからのSNAKEPIPEの人生に大きな影響を与えてくれそうだ。
座右の銘ならぬ、座右の動画になりそうだよ。(笑)
そしてホドロフスキーにはまだまだ作品を作って欲しい!
まずは来月公開の「エンドレス・ポエトリー」鑑賞が楽しみだ。 

時に忘れられた人々【30】萌えよ!動物王国編

20171022_top.jpg【「ROCKHURRAH紋章学」ではないけど動物のロゴマークを集めてみたよ。】

ROCKHURRAH WROTE:

何だこの、おざなりなサブタイトルは?
いくつかこのシリーズ記事を読んでくれた人だったら即座にわかる通り、今回は動物の名前がついたバンドを特集してみよう。このタイトルだったら他に展開ないよね?

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは本気の動物好きとは全然言えないけど、道を散歩してるよその家の飼い犬とか見て「かわいい」とか言い合ったり、ペットショップの前で目尻を下げて見入ったり、割と普通の動物好きだとは思うよ。
しかしペットショップ店員の側から見たら、戦闘的な服装でサングラスの不気味なカップルが毎日のように立ち止まってこちらを凝視している。それだけで何か不安になるかもね。実は目尻を下げててもサングラスじゃ表情までわからないだろうからなあ。

子供の時に飼ってた犬(自分ではなくて家で飼ってただけ)でトラウマになるような出来事があったので、もう動物は自分では飼えないと諦めてはいるが、一日中ずっと家にいられる境遇になったら一緒にいたいとまた考えるかもね。
SNAKEPIPEはもし一緒にいたら可愛がりすぎて、もう家事も何も出来なくなると最初から断言してるよ。確かに一日中相手してそう。

さて、シリーズ記事は違ってもROCKHURRAHが書く記事は大体いつも同じような趣向になってしまうんだが、今回も見事にそのパターンを踏襲しているよ。ある意味予想通り。
ちなみにでこれまでやってきた活動(ブログ記事)は以下の通り。

  • イマドキ誰も語らないような過去のバンドをジャンル別に紹介してゆく特集。
  • イマドキ誰も語らないような過去の女性バンドを特定のくくりによって紹介してゆく特集。
  • イマドキ誰も語らないような80年代ニュー・ウェイブのカヴァー・ヴァージョン特集。
  • 世界の地名がついた曲ばかりを列挙する特集。
  • 少年少女時代に影響を受けたバンドについて思い出す特集。
  • 1から10まで日本語に聴こえるタイトルを集めたバカ特集。
  • 日〜土まで曜日がタイトルについた歌を集めたインスタント特集。
  • ハロウィンや秋葉原系とはまるで違う意味でのコスプレ特集。
  • 同じタイトルだが違った曲ばかり集めたありきたり特集。
  • 妙な情熱にかられた映像ばかり集めたトホホ特集。
  • 色のついたバンド名ばかり集めた浅はかな特集。 

書いてて情けなくなるがまあこういう一般的にはどうでもいい企画ばかり考えてずっと書いてきたわけだ。頭を使う方向性を間違ってないか、書いてる本人が一番危惧してるよ。

で、今回は動物名がついたバンド特集ね。 

元々猫派だったROCKHURRAHだけど近年はSNAKEPIPEと二人で犬のけなげな様子に目尻を下げてニヤニヤ、やっぱり傍から見たら危ない奴らなんだろうな。

最近のワンちゃん映画は全然知らないがROCKHURRAH世代で言うなら「ベンジー」・・・などと言うと思ったら大間違い。
なぜか思い出すのはダビングまでしてずっと持ってたフランス映画「バクステール」なのだった。SNAKEPIPEと一緒に見ようと思ってわざわざ京都から持ってきたんだよね。
ブルテリアという個人的にはあまりかわいいと思わない犬が主人公で、ずっと心の中のモノローグで語ってくる。要するに飼い主に構われなかったり身勝手な扱いされて事件を起こしてしまう不幸の飼い犬の話、最後にナチスかぶれの少年と出会っていい関係に巡り合ったかに見えたけど・・・みたいなちょっと怖い感じの暗い映画だったかな。

ちなみに京都からわざわざ持ってきて一緒に観ようと思ってた映画の中には知る人ぞ知るミンディ(メリンダ)・クラーク主演の「キラークィーン 舌を巻く女」などもあって、そう言えばあの映画にもオカマのプードルが出てきたよな?と思い出した。「バタリアン・リターンズ」でも主演してたミンディ・クラークなんだけど、当時は好きな女優だったんだよね。「キラークィーン」はVHSビデオだったが観ようとした矢先にテープが絡まる事故があって、結局一緒には観れなかった苦い思い出があるよ。
DVD化されてないようなので残念。

犬や猫はもっとも身近なペットなのでそれをバンド名につけた例は多いが、パッとすぐに思いついたから今日はこれにしてみよう。

バズコックスやドローンズと並びマンチェスターの最も有名なパンク・バンドだったのがスローター&ザ・ドッグスだ。
スローター”大虐殺”と”犬”がついたバンド名から不吉で不穏な意味を想像するが、デヴィッド・ボウイの「ダイアモンドの犬」とグラム・ロック時代のボウイの相方でもあるミック・ロンソンの「スローター・オン・10th・アベニュー」、このふたつのアルバム名からインスパイアされたバンド名だとの事で単なるグラム・ミックス。緊張して身構えたこっちがバカを見たよ
パンク始める前はグラムにどっぷりだったんだろうね。

同郷のバズコックスが誰でも覚えられるポップなメロディと素っ頓狂な歌声でパンクの人気バンドになったのとは対照的に、このスローター&ザ・ドッグスはラウドな演奏と激しいアクションで当時のリアルなパンク・ロックを歌い上げて有名になっていった。などと書くとありきたりか?
うーん、言葉で説明するのは難しいけど、この時代の一般的な若者がやってる等身大のパンクな生き様に近い世界だとROCKHURRAHは思ったよ。
要するに上から下までキメキメのステージ衣装みたいなのじゃなくて、普段着がジーンズに古着ライダースの鋲ジャンみたいな、まあそんなイメージだ。あまり金がかかってない隣のちょいワル(たぶん死語)兄貴みたいなわけね。
曲も割とミディアム・テンポのロックンロールが多く、ハートブレイカーズやニューヨーク・ドールズあたりの影響を受けてるんだろうと感じる。

で、ビデオの曲が代表作のひとつでデビュー曲「Cranked Up Really High」だ。
このバンドの70年代にちゃんと動いてるライブ映像がこれくらいしか残ってないので、画像ひどく悪いけど載せておこう。

大昔に「Original Punk Rock Movies」というドン・レッツが撮った映画で観たのと同じヴァージョンだなこれは。
どうやら冒頭で何か白い粉を撒き散らしたようで、粉まみれショーとなってる模様。俺はちょっと頭がおかしい男だぜ、というサイコな様子を表現したかったんだろうが至近距離で浴びた観客は大迷惑。
しかも舐めてみたら「あ、片栗粉だ!野郎、騙しやがったな」という感じなのか。

パンク・バンドの主義主張なのか単なるめぐり合わせなのか、人気なかったのかわからんが、ダムドやジェネレーションX、シャム69、ストラングラーズなどは例えば「Top of the Pops」などの歌番組にも気軽に出演して「くちパク演奏」もするけど、このバンドはたぶんそういうのにも全然出演してないんだろうね。 

ワンちゃんと言えば世界的に有名なファッション・デザイナー、アレキサンダー・ワン。
ROCKHURRAHには似合いそうもないし、洋服の方はよくわからないデザインが多いけど、柔らかい革を使ったバッグは高級感もあり実用的でお洒落な「さすが」と言える逸品。
SNAKEPIPEや友人Mは早くから注目していたようでいくつか所有してるな。
女性のブランド物バッグには目の玉飛び出るような金額のが多いが、これなら価格に見合った商品と言えるのだろうね。
彼の写真見てて誰かに似てると思ったが「タイガー&ドラゴン」に出てた時の塚本高史だった。どちらも今回のブログの内容とは全然関係ないけど、ワンちゃんから始まった連想の連鎖でここまでたどり着いてしまったワン。

そんなワンちゃんつながり(?)でこんなバンドもフト思い出したよ。
ナイジェリア出身のマリオン・カッツ嬢を中心としたスコットランドのバンド、ドッグ・フェイスド・ハーマンズだ。1980年代後半に活躍したバンドだが、変則的なビートとキンキンに耳障りなギター、トランペットなど、いわゆる普通のロックからははみ出た分野のフリー・スタイルな音楽を得意としていた。マリオン嬢も何か叩いたり吹いたり歌ったりでかなり忙しい職場だな。

そう言えば同時代のイギリスで、ノイジーな不協和音によるバンドを次々とリリースしてたロン・ジョンソン・レコードというレーベルがあったな。ここにも似たようなバンドが色々いたけど、割とオシャレなアート系女性のようなヴォーカリストだったから、こっちのドッグ・フェイスド・ハーマンズの方が見栄えがよろしい。実はよく見ると結構「犬顔」なので、歳とってからの写真はさらに犬化が進行してるのが残念。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEもブルドッグみたいに口角が下がらないように変顔体操しなければ。

様々なジャンルのバンド名に使われている犬と比べて猫はロカビリー系バンドによく使われる事で有名だ。服装や髪型から由来したものではないだろうし、何でキャッツなのかは不明だけど、まあ流行りみたいなものか。この手の幾多もあるキャッツ系からROCKHURRAHが選んだのが80年代ネオ・ロカビリーの有名バンド、ポールキャッツだ。
ポールキャットとはヨーロッパケナガイタチとの事だけど、詳しい人でもない限り即座に出てこないだろうね。これを改良してペットにしたものがフェレットらしい。
ここまで書いてようやく気付いたけど・・・。ん?猫じゃないニャン。

鼬(イタチ)と聞いて個人的に真っ先に思い浮かべるのが筒井康隆が1984年に発表した不条理極まりない、ものすごい実験小説「虚構船団」だ。
宇宙を突き進む文具船、文字通り搭乗しているのは擬人化された文房具ばかりなんだが、乗組員全員が狂ってしまっている。それぞれに人格があり狂ったエピソードも人間関係(?)もあり、最初のうちはとても面白く読み進んでいた。
が、その文具船の敵がなぜかイタチばかりが住む惑星であり、文具船は単体でその星に上陸、敵を殲滅せよという命令を受ける。理由も何も一切不明。
ここから凶悪なイタチ族の1000年の歴史が語られるが分厚い本の半分くらい、延々と歴史が続くところで読むのが辛くなってしまう。地球の世界史概要ともよく似た話なんだがイタチも十種類もいてそれぞれが戦争して栄枯盛衰してるような複雑な話。
この話とは特に関係ないが、子供の頃に「ドグラ・マグラ」や「黒死館殺人事件」を読んでて、知識が足りず途中で読むのが辛くなる部分があった事を思い出した。
こちらは読んでわからないというほど難しくはなかったが歴史も得意ではないし、イタチの名前がやたら出てきても覚えられず、読破するのにかなりエネルギー使ったからね。
次に上陸した文房具とイタチの戦いが様々な視点から描かれていて、この部分はまた面白く読むんだけど、後半はどこからどこまでが誰の話なのか非常にわかりにくくて、どんどん脱線して錯綜して破綻してしまう。この辺が筒井康隆の真骨頂だと思うが、読んだ人全ての精神がおかしくなるような大傑作だったな。
いや、単にヨーロッパケナガイタチでちょっと連想しただけで今、ROCKHURRAHが書いてる文章とは何もリンクしてないんだけど。今回はその手のが多いな。

ポールキャッツは1977年にロンドンで結成されたネオ・ロカビリー・バンドだが、この頃はまだ単なる50’sロカビリーの焼き直し、カルト・ヒーローズという名前で活動していた。
その彼らが話題となったのが1981年のデビュー作「Polecats Are Go!」というアルバム。
大体同時期にレコードをリリースしたストレイ・キャッツがネオ・ロカビリーの代名詞のような音楽とルックスだったのに対して、ポールキャッツの特色はグラム・ロックなど、通常のロカビリー・バンドがカヴァーしない異種ジャンルの音楽をうまくロカビリーに取り入れてカヴァーした、抜群のセンスにある。
見た目もこの時代のネオ・ロカビリーではまだ(たぶん)誰もやってなかったはずだが、グラム風の化粧をしたインパクト抜群なもの。そのうちネオ・ロカビリーから派生したサイコビリーでキレイと言うよりはグロテスクなメイクが流行ったけど、この時代のイギリスはやっぱり化粧男の宝庫だったよね。
今はあまりそういう風潮はないが、ポールキャッツは同時代にはロカビリーというよりはニュー・ウェイブの一種みたいな扱いを受けてたように記憶するよ。

ビデオの曲はロック好きだったら大体誰でもおなじみ、Tレックスの「Jeepster」をカヴァーしたもの。ポールキャッツはデヴィッド・ボウイの「John, I’m Only Dancing」もナイス・カヴァーしていてオリジナル曲よりも代表曲みたいなもんだが、どちらもロカビリー調にカヴァーしやすいのを選んでるね。
全員ミリタリーのG.I.っぽい服装と言えばクラッシュ「Rock The Casbah」を思い出す人も多かろうが、ポールキャッツの方が早かったんだよね。ヴォーカルのティムがリュック背負って(通信兵のつもり)はしゃいでるのも子供みたい。
しかしこの耳に残る中性的な声、やっぱりポールキャッツはいいね。

こんな時代になってもなのか、こんな時代だからなのかは不明だが、最近でもネズミは廃れる事なくて街中でもごくたまに見かけてしまう。ちょっと前に家の近所の美容室を改装してた時に床下から追い出されたのか、道を横切る姿も見たよ。こんなところにもやっぱり生息してるのか、と驚いたもんだ。
最も都市と共存出来そうな生き物はカラスかネズミなんだろうね。

鼠と聞いて思い出すのはやっぱり大昔の映画「ウィラード」だろうか。
鳥やネズミ、他の動物でも何でも、人を襲うというのはパニック映画の定番とも言えるから、おそらく数多く存在してるとは思う。ROCKHURRAHもその手の映画は好きだから観てるんだけど、本当に怖かったり面白かったのは意外と少なかったなあと回想するよ。
ウィラードはネズミの名前ではなくて主人公の孤独な青年。まあ何もかも不幸で悲惨だとは思えるがこれしきの不幸はどこにでもあるとも思う。で、友達もいない孤独なウィラードが家に住みついたネズミと仲良く(?)なって訓練してゆくけど、おおかたの予想通り最後はもっと悲惨になってしまうというような話だったな。
好評だったから続編の「ベン(「ウィラード」に出て来るネズミの名前)」などというのも出来たが子供の頃のマイケル・ジャクソンがテーマ曲を歌ってて映画と共にヒットしたようだ。
ネズミと言えばついでに、中学生くらいに読んだ開高健の「パニック」という小説を思い出そうとしたがうーん、あまり覚えてないので何も語れない。

大型のネズミを指す言葉、ラットをバンド名につけた例も数多くあるけど、中でも80年代に最もメジャーだったのがブームタウン・ラッツだろう。「新興都市のネズミたち」というような意味のバンド名だと思うが、「哀愁のマンディ」とボブ・ゲルドフのバンド・エイド(「Do They Know It’s Christmas?」)での大ヒットばかりが記憶されている程度で、個人的な好みじゃないので素通りしてしまう。

で、ウチっぽいのはないかな?と探してみたら「こんなのいかが?」というようなのが出てきたので今日はこれにしてみよう。単にフランス語の冠詞が付いただけのような気がするがLes Ratsというバンドだ。ドブネズミはフランス語でもRatなのかな。
1982年から活動していたフランスのパンク・バンドだとの事だけど、レコード・デビューは80年代後半とかなり下積みが長かった模様。フランス各地のタワレコやイオン・モールで巡業してたのかな?(ひと目でわかるウソ)

まあ見ての通り80年代後半、もしくは90年代に入ってしまったけどパンクは不滅だぜ、というような音楽や映像で単純明快。ただ、こういう音楽でもフランス語の響きになると違った雰囲気になるから不思議なもんだ。フランス語だから、という先入観だけかも知れないが同じく80年代後半から90年代にかけて大活躍したマノ・ネグラのパンクっぽい部分だけを抽出すればこんな音楽になるかもね。

フランスと言えばパンクの初期からスティンキー・トイズやメタル・アーベイン、Ausweis(読めん)など、個人的に好きなバンドも多かったが、音楽もファッションもゴテゴテしてなくてさすがシック大国だね。

実はこの辺からかなり苦しくなってきて書いてる方は苦悩してるんだけど、動物名のついたバンドって探してみるとあまりないような気がするんだよね。
70年代でROCKHURRAHが取りあげないようなバンドだったら結構たくさん出てくるけど、パンクやニュー・ウェイブでは自分で想像したほど名前が出てこない、これで苦戦してるのだ。
80年代にはそういうバンド名は流行ってなかったのかも知れないし、もちろんパンクやニュー・ウェイブの一種に含まれていても何もコメント出来そうにないバンドはやっぱり書かないだろうからね。
あと、人があまり言及しないマイナーなバンドばかりだとちゃんと動いた映像がまるっきり残ってないから、そういうのばかりを集めても面白くないだろうと思って極力静止画のみじゃない映像を探してる。実はこれが一番難しいわけだ。
と言う事で今回の企画もテキトウに思いついたものの失敗に終わってしまったかもね。
めげずに次回もまた何か考えてみるよ。ん?まだ書き終わってなかったか?

動物園の人気動物ランキングは全然知らないけど、シマウマなんてのはおそらくあまり人気ないのでは?と予想するよ。
名前と姿の一致度ではNo.1だと思うし見た目は派手だが、それ以外に特に決め手がない中庸さで個性に乏しいような気がするんだよね。
割と定期的な頻度で流行る豹柄に比べてゼブラ模様の扱いも一段低いように感じるのはROCKHURRAHだけか?そんなことない?

そんなゼブラ模様を果敢にも派手なレコード・ジャケットにしたのがこのパーフェクト・ゼブラズだ。
1982-83年というかなり短い時期だけにパッとレコード出して散ったという印象だが、あまり情報もなく、さすがに日本語の記事も少ないなあ。
ロンドン発のモロにニュー・ウェイブのバンドなんだけど、ベーシストが元アドヴァータイジングというロンドン・パンク〜初期パワー・ポップで活躍したバンドの出身。アドヴァータイジングには後にコンパクト・オーガニゼーションというレーベルでマリ・ウィルソンをヒットさせたトット・テイラーなどもいたが、この記事でもすでに書いていたな。さらにベーシストのデニス・スミスはパーフェクト・ゼブラズの前もシークレット・アフェアというネオ・モッズのバンドにちゃっかり在籍していて抜け目ない男という印象。
このパーフェクト・ゼブラズ、音の方はメリハリのハッキリしたリズムで割と単刀直入なもの。さすがゼブラ柄(意味不明)。アフロっぽくもあるしファンカ・ラティーナ調の曲もあり、中東かどこかの印象も少しあるという贅沢微糖みたいな(何じゃこのたとえは)味わいなんだけど、全体としては全然複雑じゃなくてこの時代の英国ニュー・ウェイブのツボはちゃんと押さえた曲作りのバンド。
個人的にはこういうオルタナティブとポップスの狭間で頑張ってたバンドには高得点をあげたいんだけど、結局どういうバンドなのかよくわからないまんまだったのがちょっと惜しい気はするよ。

ビデオもどういうわけか、この手のバンドとしては珍しく金がかかっていそうなのが不明。
大物ニュー・ウェイブ・バンド並みのロケだったのに「売れた」という話は聞いた事ないもんな。
ヴォーカルが「若い頃のプーチン大統領ってこんな顔だったんじゃなかろうか」と思わせるような顔立ちで音楽性とは結構ギャップがあるよな。

勢い良く書き始めたものの、今回はたった4種類の動物しか紹介出来なくて、代わりにROCKHURRAHお得意の関係ない話ばかり語ってしまったな。
結構トホホな内容になってしまったが、めげずにまた機会があったら動物編の続きを書きたいよ。

ではまた、ヴェッソ ギャーロ(リトアニア語で「さようなら」)。

ヨコハマトリエンナーレ2017鑑賞


【メイン会場だった横浜美術館を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2017年5月の記事「SNAKEPIPE MUSEUM #42 Wael Shaky」の最後に

横浜トリエンナーレでは映像作品も鑑賞できるのだろうか?
今からとても楽しみだ!(笑) 

と書いている。
たまたまSNAKEPIPE MUSEUMで特集したアーティストの作品が、横浜トリエンナーレに出展されることを知り鑑賞するのを待ちかねていたんだよね!
横浜トリエンナーレに行くのも初めてのこと。
3年に1度開催されているというので、恐らく前回は長年来の友人Mとの間で話題には上りながらも、結局行かなかったんだろうね。
今年こそは!と喜び、ROCKHURRAHと共に横浜に向かったのである。

横浜トリエンナーレ、どうやら正式名称は全てカタカナ表記のヨコハマトリエンナーレのようなので、ここからはカタカナで統一していこうかな。
ヨコハマトリエンナーレは、いくつもの会場にまたがって開催されているという。
みなとみらい駅すぐの場所にある横浜美術館赤レンガ倉庫1号館、 横浜市開港記念会館、という3つの会場があるというので、あらかじめ下調べをする。
恐らく全部を回りきれないだろう、と思ったからね。
時間的にも、体力的にも難しそうだもん。(笑)
ROCKHURRAHとの会議の結果、横浜美術館と赤レンガ倉庫の2つの会場だけを鑑賞することに決定する。
ROCKHURRAH RECORDSの目的は横浜観光ではなく、作品鑑賞にあることから、作品数が多く展示されている会場2つを選択したのである。
そしてその2箇所であれば、徒歩での移動が可能なことも理由だった。
一応無料バスが出ている、という情報はあったけれど、どれほどの人が利用するのか、時刻表通りの行動ができるのかも不明だしね?

この日の横浜は晴天。
前日は雨降りだったので、腫れたこの日は絶好のお出かけ日和だった。
少し歩くと汗ばむ程の気温、元々横浜は「人がいっぱい」という印象があるけど、この日は特に多かったように思う。
今から思えば、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは前日の雨模様の時に行ったほうが良かったのかもしれないね。

最初に赤レンガ倉庫に向かうことにする。
赤レンガ倉庫といえば、あの観光名所だよね。
最近少しSNAKEPIPEの方向音痴が感染しつつあるROCKHURRAHと、自他ともに認める完全な方向音痴のSNAKEPIPE。
赤レンガ倉庫までテクテク歩いて向かう。
「多分こっちだと思う」という危なっかしい2人で、なんとか赤レンガ倉庫へ。
ところが、ヨコハマトリエンナーレのヨの字もないじゃないの!
もう一度確認すると「赤レンガ倉庫1号館」だって。
赤レンガ倉庫に1号館と2号館があることを知らなかったよ。(笑)
ショップやレストランが入っているのが2号館で、それを目指して歩いていたようで。
一体1号館はどこ?
この時赤レンガ倉庫の敷地ではドイツ・ビールが飲めるオクトーバーフェストなるイベントが行われていたんだよね。
このイベント目的のお客さんが大勢で賑わっていて、ビール買うための列なのか、行列も出来ている状態。
大きなテントができているわ、ビール会場のための囲いがあるわ、赤レンガ倉庫1号館の入り口が分からない!
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは赤レンガ倉庫1号館に行きたいんですけど〜!
テントや囲いをぐるっと回って通り抜け、やっと見つけたのがこの入口。
右がビールのフェスタの白いテントで、それに隠れるようにヨコハマトリエンナーレの看板が…。
非常に分かり辛かったと思うのは、ROCKHURRAH RECORDSだけかしら?
赤レンガ倉庫としては、ヨコハマトリエンナーレよりもオクトーバーフェストのほうに力を入れてる感じだったよ。
それでもなんとか無事にたどり着いて良かった。(笑)

赤レンガ倉庫内が会場なので、2017年正月に行ったBankART1929と似た雰囲気を感じる。
無機的なバックは非常に好みの空間だよ。
そこで出会ったのが宇治野宗輝の作品「プライウッド新地」だった。
機械音が鳴り響く。
何かと思うと、ジューサーミキサーが回転している音のようだ。
そしてその様子がスクリーンに映し出されている。
かなりインダスとリアル!(笑)
リズム音、ギター音、モーター音などが絡み合い、インダストリアルな音楽が完成する。
これらは全て自動なんだよね。
そのうちギターについた触手(?)が動き出した!
影だけ見ると、まるで昆虫だよね。
複雑な装置の動きと重低音、音に合わせた照明などの全てが、会場で体験しないと分からない現代アートでとても気に入った!(笑)
会場にいた係の人に「これは誰の作品ですか?」と聞きに行ったSNAKEPIPE。
「うじのさん、です」と言われて初めて日本人の作品だと知り驚く。
勝手に海外のアーティストだろうと思っていたんだね。
ドイツのアーティストという印象だったから。
宇治野宗輝は1965年東京生まれ。
1988年東京芸術大学卒業。
2001年から個展を開催し、海外でも作品を発表しているようである。
東京では山本現代でやることが多いみたいだから、機会があったら鑑賞したいアーティストだよ。

照沼敦朗は、絵画の中に動きを取り入れた作品を展示していたよ。
ちょっと漫画っぽい作風なんだよね。
右は映像が組み込まれている作品で、モノクロームの世界に突然光が差し込む様子は、ちょっと不気味だった。
細かく描き込まれている背景には、謎の日本語も書いてあったよ。
もう一点は鮮やかなカラー作品で、途中からプロジェクション・マッピングのような映像が重なり、幻想的な雰囲気になっていた。

2010年に鑑賞した「六本木クロッシング2010展」で、「ほおっ」と声を上げた、と感想を書いていたのが青山悟の作品だった。
その時に鑑賞した作品も展示されていたね。
実は鑑賞していないはずのROCKHURRAHに指摘されてから気付いたんだけどね。(笑)
どこかで観て知ってるような?と思ってたSNAKEPIPEは、かなり記憶力が低いなあ。
今回はアンティークプリントに刺繍を施した作品が展示されていた。
全てをびっちり刺繍している作品とは違って、一部分だけにカラーが入ることで印象が変わる効果を狙っているのか?
この作品の場合は赤い服の部分が刺繍なんだよね。
SNAKEPIPEの個人的な好みでは、全てが刺繍の作品のほうに軍配が上がってしまう。
恐らくびっちり刺繍は初期の作品で、一部刺繍が最近のようなので、変化しているんだろうね。
刺繍アーティストとして作品を作り続けているのはすごいことだと思う。

 「まるでフランシス・ベーコンだね!」とROCKHURRAHと言い合ったのが小西紀行の作品だった。
小西紀行、と検索しようとすると、どうやら「妖怪ウォッチ」の作者が同姓同名のようで、画家のほうの小西紀行がなかなかヒットしないんだよね。(笑)
もしかしたら本人のHPはないかもしれないので、ギャラリーが紹介しているページを貼っておこう。
家族や身近な人物のスナップ写真を元に描いているみたいなんだけど、かなり抽象化されていて鑑賞者が自由に感想を持つことができる。
そしてSNAKEPIPEが持った感想は「残酷な雰囲気の絵」だったんだけどね?
あれ?家族の肖像画からは離れてるかな。(笑)
今まで全然知らなかったアーティストなので、鑑賞できて良かったと思う。

赤レンガ倉庫1号館の展示は、とても満足した。
観られて良かったね、と話しながらランチに向かう。
ところがこのランチが大失敗!
なんと1時間も並ぶ羽目になるとはね。
横浜の昼時をナメたらあかんぜよ。
あんなに人が大勢いるからねえ。
仕方なかったとはいえ、並ぶことが苦手なROCKHURRAH RECORDSには辛い時間だった。
次回からの教訓にしよう。 

ヨコハマトリエンナーレのメイン会場は横浜美術館なので、赤レンガ倉庫1号館の展示に満足していたROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、期待を胸に横浜美術館に入ったのである。
が、、、どうしたことでしょう。
横浜美術館の展示作品は、どれも「学芸会レベル」に感じてしまうものばかり。

大好きな写真家、畠山直哉の作品が展示されていたのは嬉しかったけど、特に新鮮さはない。
恐らく今まで観たことがない作品だったのが「カメラ」という作品群。
撮影年度が1995年から2009年というから、撮りためているテーマなのかもしれないね。
「LIME WORKS」や「Underground」で衝撃を受けたSNAKEPIPEは、あそこまでカッコ良い写真を撮る写真家ならば、もっとすごい作品を見せてくれるのでは?と期待して待っていたっけ。
Wikipediaで畠山直哉を調べてみたら、2015年に紫綬褒章を受章していたらしい。
今はどんな写真を撮っているんだろうね。

横浜美術館の展示で感想を書きたいと思うのは、ヨコハマトリエンナーレに行くきっかけになったワエル・シャウキーだね。
ガラスや粘土を使用した操り人形を制作し、その人形を実際に動かした映像作品をてがけているアーティスト。
エジプト出身というところに驚き、その人形の不気味さが気に入ったSNAKEPIPEは、是非とも実物を鑑賞してみたいと思っていたのである。
そしてついに人形とご対面!
確かに人というよりはワニだったり馬のように見える顔立ちだったけれど、実物はそこまで不気味ではなかった。
これは照明や背景の影響かもしれないね?
動かすことを想定して制作されているので、人形単体で鑑賞する場合とは印象が違うんだろうね。
会場には大きなスクリーンが配置され、ワエル・シャウキーの映像作品が流れていた。
ちゃんと日本語訳も入っていたので、本当はもっと鑑賞したかったけれど、ここに辿り着くまでにすっかりお疲れモードのROCKHURRAH RECORDS。
ほんの少しの時間だけ鑑賞して終了してしまった。
前述したように、横浜美術館の展示作品はどれも「?」と感じてしまうものばかり。
赤レンガ倉庫1号館で大満足してからの落胆は、その格差が大きかっただけに疲労につながってしまった。
ランチの待ち時間も、ね。(笑)

ヨコハマトリエンナーレは大規模な企画展示なのかと思って期待していただけに、がっかり感のほうが強くなってしまった。
今回横浜市開港記念会館に行かなかったのは、正月に鑑賞した作品と同じ展示作品だったからである。
柳幸典も観ていたら、がっかり感は少し薄れたかもしれないなあ。(笑)
横浜美術館は常設展が素晴らしい、好きな美術館なだけに残念でならない。
3年後のトリエンナーレはどんな展示作品が並ぶんだろう?
観念的過ぎない、一目で「驚くようなアート」が観られると良いね! 

SNAKEPIPE MUSEUM #44 Alexa Meade

【絵画の中の人物が踊り出す!】

SNAKEPIPE WROTE:

現代アートの世界では既に有名のようだけれど、その存在を全く知らなかったSNAKEPIPE。
そのため「今更何言ってるの?」と言われてしまうかもしれないけど、作品を観て驚愕してしまったので、やっぱり特集したいと思う。
是非ともSNAKEPIPE MESEUMのコレクションに加えたいからね!

実を言うと最初に観た時には、印象派のような「単なる絵画」だと思っていたSNAKEPIPEは、その仕掛けを知って腰を抜かしたのである。(大げさ)
制作過程を知ることで、この作品が「単なる絵画」じゃないことが分かる。
なんとこれは写真だったんだよね!
言葉より写真で観てもらったほうが分かり易いと思うので、こちらをご覧あれ!
上が制作中、下が完成した作品なの。
モデルに着色して、まるで絵画のようにみせている手法なのよっ!
背景も油絵みたいにペイントしてるからより一層絵画に見えてしまうんだよね。
これには驚いてしまった。

今まで例えば森村泰昌が、絵画をヒントにして自分自身が登場人物になりきる作品を発表していたり、先日の「サンシャワー:東南アジアの現代美術展鑑賞」で記事したシンガポールのアーティスト、ミン・ウォンが映画の登場人物全てを一人で演じる作品は観ている。
本物(実物)をなぞって、フェイクを制作するという手法とはタイプが違うからね!
鑑賞者に錯覚を起こさせる、「だまし絵」ならぬ「だましアート」とでも呼ぶべきか? (笑)

この作品の作者はAlexa Meade、アレクサ・ミードというアメリカ人女性。
1986年生まれというから、まだ30歳なのかな。
すでに評判になっているアーティストのようで、知らなかったSNAKEPIPEはモグリかも。(笑)
どうやら2013年にはミニ・クーパーのイベントで来日し、渋谷109の前で車とモデルにペイントするパフォーマンスを行っていたらしい…。
これは観てみたかったよね!
そしてアレクサ・ミード、美しい方なのね。
これは話題になること間違いなし、だ!(笑)

アレクサ・ミードのセルフポートレートがこれ!
アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンの「半分人間」じゃなくて、「半分絵画」状態だよね。(笑)
やはりご本人も美貌に自信を持っている様子。
いやあ、確かにこの女性が仰天アートやってるアーティストなら、注目されるだろうね。
ところで、アレクサって名前ブリクサ、みたいじゃない?
またもやノイバウテンにこじつけてしまったよ。(笑)

アレクサ・ミードの作品に戻ろうか。
 「Transit」と題された右の作品は、背景まで描きこんだタイプではなく、絵画から飛び出した人物が現実世界に放り出された瞬間を捉えているんだよね。
全てを絵画に見せる作品とは違う「だましアート」で、周りの人物との対比が強調されて非常に面白いね。
これは地下鉄の中で撮影されたらしいんだけど、周りの人が注目しているところが「異次元から来た人」、つまり「異物」を見る視線になっているところも作品にプラスしているように思う。

日常に入り込んだ「異物」は、恐らく作品にすることを意識しないスナップでも、作品になってしまうよね。
左はアレクサ・ミードのモデルになった2人が横断歩道を歩いているところ。
平面(2次元)と立体(3次元)が混ざっている不思議な風景。
銅像だと思っていたら実は生きている人間だった、というのはハナ肇で観たことあるけど(古い!)、絵画だと思っていたのに動き出した、というのは初めてだからね。

上の写真で横断歩道を渡っていた2人モデルにした作品がこちら!
背景の白とマッチして面白い作品になっている。
左の男性がひざまずいているのは、これから右の女性にプロポーズするところだから。
2人の記念日が作品になるなんて、このカップルにとっては一生の思い出になるだろうね。
その時の様子はアレクサ・ミードのHPで観られるよ!
女性の返事?もちろんオッケーだよ。(笑)

最近はアートの展覧会に行っても写真に対する興味をすっかり失いつつあるSNAKEPIPEだけれど、アレクサ・ミードの作品を観て新しい写真の魅力に出会った気がして嬉しくなった。
アレクサ・ミードは写真にとどまらず、動画の作品も発表している。
それがブログ冒頭に載せた、絵画の中の人物2人がブレイクダンスする動画。
それは写真のbefore→afterを見なくても、一目瞭然で「動く絵画」を理解することができるよね。
現代アートにおける「驚き」要素を充分に堪能させてもらったよ!

アレクサ・ミードの作品の中にはゴッホにタッチが似ているものがあるな、と思っていたらゴッホの映画情報があるので紹介しておこう。

これは「ゴッホ〜最期の手紙〜」という映画で、日本公開は2017年11月3日からとのこと。
俳優が演じた実写を元に、125人の画家が実際に油絵を描き、その油絵を元にアニメーションにした作品だというので、聞いているだけで気が遠くなるほどの時間と手間がかかってる映画だよね。
描かれた油絵の数、なんと65,000枚だという。
実写版に着色したり実写を元にアニメーション化するというのは、例えばディズニー映画にもある。
この映画は「ゴッホの絵画が動いている」ように見せるために最大の努力をしているんだよね。
SNAKEPIPEは特にゴッホについて詳しくないし、興味がある画家とも思っていない。
それでも「絵画が動く映画」としては興味あるなあ!(笑)

アレクサ・ミードという世界的に有名なアーティストのことを知らなかった、ということが分かって良かったよ。
これぞソクラテスの「無知の知」ですな!
それにしてもずっと気になっているのは、アレクサ・ミードにペイントされたモデル達、どうやってあのペイントを落としたのかな?
アクリル絵の具みたいなんだけど、元に戻ったのか教えて欲しいよ。(笑)