Monthly Archives: 12月 2017

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【ノリノリでステージに立つアルモドバル監督】

SNAKEPIPE WROTE:

2013年に当ブログで驚きの4回連続で特集したのは、スペインの映画監督ペドロ・アルモドバルだ。
スペインに移住を考えるほど熱中して鑑賞していたスペイン映画!(笑)
そのきっかけを作ってくれたのがアルモドバル監督の作品だったのである。
特集4回目の最後に、下の文章を書いていたSNAKEPIPE。

セクシリア
マタドール
欲望の法則
ハイヒール
ライブ・フレッシュ

この5本はいつか是非鑑賞してみたいなあ!

これはその記事を書いた当時は、観ることができなかったアルモドバル監督作品の一覧である。
何時の間にか日本でもDVDが発売されていたらしく、長年の夢が叶うことになったのだ。
1番最初に書いてある作品「セクシリア」を鑑賞することができたんだよね!
「セクシリア」(原題:Laberinto de Pasiones Sexllia)は1982年の作品で、アルモドバル監督の第2作目に当たる。
今から35年も前の作品だけれど、好きになった監督の作品は全部観たいのがファンの心情。
アルモドバル監督の初期の作品には奇天烈な印象があるので、未鑑賞作品に興味があったんだよね!

簡単に「セクシリア」について書いてみようか。  

舞台はスペインのマドリード。
主人公はロックバンドのメンバーでニンフォマニア(淫乱症)の女、セクシリア。
その父親は人工受精の権威、ドクター・ペニャである。
一方、マドリード亡命中のティラン国の皇太子リサはゲイで、変装してジョニーと名乗り恋人探しの毎晩。
その恋人の中には偶然、ティラン国の反皇帝派にして彼の誘拐をもくろむ男サデックがいた。
ある夜、セクシリアはクラブ・カロリナでリサに会い、彼の元へ走るのだった…。

アルモドバル監督自身がゲイだと公言しているので、映画の内容もLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)関連が多いんだよね。
上のあらすじの中にもゲイの男性が2名登場しているよね。
そして「セクシリア」にはアルモドバル監督がステージに立つシーンも収録されているのが注目点かな。 

画面左、レザーのコートをミニワンピースのように着ているのがアルモドバル監督ご本人!(笑)
現在66歳なので、この映画の時には30歳くらいだったのかな。
「いかにも」な感じの装いなので、公言しなくても「そっちの人」だと分かるよね?
曲のタイトルも「Suck it to me」という、これまた「いかにも」な内容で大笑いしてしまう。
観ている途中で「似てるな」と思っていたら、本当にアルモドバル監督だったようで驚いたね。
どうやらこの曲、シングル・レコードとして発売されていたようで、ROCKHURRAHが左の画像を見つけてくれたよ!
「Gran Ganga」という曲も、映画の中で別のバンドが披露する曲なんだけど、どちらの曲もアルモドバル監督の作品のようだね。
元々パンク・バンドやっていたとWikipediaに書いてあったので、ステージに立つのは慣れているるだろうし、自分のレコードが出せるのも嬉しいことだよね!
もしかしたらこれよりも前にレコード・デビューしてるかもしれないけど?
映画の中でどうしてもこのライブのシーンは外せなかったようで、かなり長いことカメラが回っているよ!(笑)

主人公セクシリアを演じているのがセシリア・ロス。
「オール・アバウト・マイ・マザー」でも主役だったし、「アイム・ソー・エキサイテッド!」ではSMの女王役で出演していたよね。
アルモドバル監督作品の常連と言っていいセシリア・ロスだけど、こんなに若くて美しい姿を見るのは初めて!
どうやらアルモドバル監督の処女作にも出演しているようだけど、こちらはまだ未鑑賞なんだよね。
いかにも80年代ニューウェーブ、カラフルで奇抜なファッションに身を包み、スペイン女優らしく(?)ヌードも厭わず体当たり演技に挑戦している。
26歳のセシリア・ロスの美貌にも驚いたけれど、やっぱり注目したのはファッションかな。
アクセサリーも含めて、とてもおもしろいデザインを身に着けていたんだよね。
金持ちの家の娘で、バンドをやっているという設定だから派手にしたのかもしれないけど、オシャレだったよ!

皇帝の息子でありながら身分を隠して男漁りをするのが、左の画像中央で赤い服を着ているリサ。
演じているのはイマノル・アリアス。
他のアルモドバル監督作品で観たことあったかな?
調べてみたら「私の秘密の花」で、主人公レオの夫として出演していたようだけど、あまり印象に残ってないね。
「一目合ったその日から恋の花咲くこともある」の言葉通り、セクシリアと一瞬で恋に落ちるリサ。
ゲイだったのに、好みが女性に変わったのかな。
人を好きになるのに、性別は関係ないということなんだろうね。
それにしても男なのにリサという名前は、女性みたいで勘違いしちゃうよね。(笑)

元皇帝夫人トラヤを演じたのはヘルガ・リーネ。
「元」が付くので、今は夫人じゃないんだろうけど、どういう立場なのか今ひとつ分からなかったよ。
皇帝の息子であるリサとの関係も親子ではなさそうだったし?
リサの母親の後で妻になったのかもしれないね。
この女優がとても美しくて気品があって、すっかりファンになってしまった。
どうやらベルリン生まれのドイツ人で、ポルトガルに移住したみたいね。
ホラー映画やスパイ映画で活躍していたようなので、他のアルモドバル監督作品では観たことないのかもしれないな。

「セクシリア」が映画のデビュー作品だったのがアントニオ・バンデラス。
あらすじの中にあった「ゲイで反皇帝派の男サデック」を演じているんだよね。
犬のように鼻が利くのが特徴で、皇帝の息子を探し当てるのである。
この時のバンデラスは22歳くらいだと思うけど、もっと若く見えたね。
最初はバンデラスだと気付かなかったくらい、顔の形が違っていたような?
歳を重ねるにつれ、少しずつ面長になったのかもしれないね。

人工授精、淫乱症、ゲイ、近親相姦など「性」をテーマにしているので、家族団らんの場には、全くそぐわないタイプの映画には間違いない!
ものすごく大雑把に言ってしまえば、様々な「愛」についての映画とも言えるかもしれないけど?
その「愛」の探求をする登場人物達は、みんな「濃い」タイプばかり!
最も強烈な印象を与えてくれたのが右の画像の方。
調べてみたけど、名前がよく分からなかったよ。
「女優」ということになっていたんだけどね?(笑)
映画冒頭から登場していて、マニキュアを吸ったり(!)、電気ドリルで虐待されている様子を撮影していたのは、きっとアルモドバル監督のブラックジョークなんだろうね。
ドラッグとしてのマニキュア、血まみれ写真集、みたいな。
アルモドバル監督作品の最大の魅力は、「そんなのアリ?」と思うようなハチャメチャな展開なので、今回も期待を裏切らず楽しませてもらったよ。(笑)

アルモドバル監督の処女作「ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち」「ライブ・フレッシュ」「欲望の法則」もDVD化されていることが分かったので、鑑賞したいね!

2017年も今日で終わり。
あっという間の一年だったなあ。
2006年から始まった当ブログは、12年の間毎週日曜の更新を続けている。
来年以降も継続していく予定である。
これからも拙い文章にお付き合い頂ければ、と思っている。 

皆様どうぞ良いお年を!
来年もよろしくお願い申し上げます! 

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【サイケデリックなイメージのサンタクロース。グル・サンタと名付けようか!】

SNAKEPIPE WROTE:

定期的に特集しているのが「ビザール・ポストカード選手権」である。
特に書くことが多いのが、この時期。
クリスマスとニューイヤーでカードの需要が高いため、面白いカードがたくさんあるせいだろうね。
昨年のこの時期は書いていなかったので、約2年ぶりに特集してみよう。
今年はどんなビザールに会えるかな?(笑)

ビンテージのポストカードには不思議なアイデアがたくさんあって、以前からその魅力の虜になっているSNAKEPIPE。
今回もまた意味不明のカードに巡り会えたよ!
花の中から飛び出している少女達の頭部。
少女は愛くるしい、まるで天使のようだ、とでも言いたかったんだろうけど。
右下の「まるでおたふく風邪にかかっている」ように見える平べったい顔に愛らしさは感じないけどね?
SNAKEPIPEには、不気味な食虫植物にしか見えないよ。(笑)
左上にある蕾の中にも頭部が隠れているのかと思うと恐ろしい!
このクリスマス・カードを送られて、当時の人は「素敵!」と思ったのだろうか。 

これも困惑系のカードだね!
これは一体、なに?(笑)
仙人のようにも見えるし、マルチーズが立ち上がったようにも見えるし?
まさかスター・ウォーズのチューバッカの毛が白くなったとか?(笑)
どうして雨の中で佇んでいるのか。
裂けた傘を持っているのは何故か。
主題がよく分からないけれど、明らかにクリスマス・カードなんだよね。
心なしか、うしろの木に止まっている鳥たちも「あれはなんだ?」と囁き合っているように見えてしまう。
これがもし絵画だったら、是非ともトホホなアートを収集・展示しているニューヨークのMuseum Of Bad Artの仲間に入れて欲しいと思ってしまう。
ビンテージ、恐るべしだね!

クリスマスに蛾? 
メッセージ付きなので、翻訳してみたんだけどね。
蛾はメッセンジャーの役割を果たしているようで。 
「夜は暗く、メッセンジャーの蛾は耐え忍ぶ私の重い愛を持ち出し、苦しみを与えるために笑っている私の目の光に飛び込むのです」
などと詩的に書かれているんだけど。
ラブレターとしてのクリスマス・カードだったとしても、文章重いし、意味も不明。(笑)
蛾が描かれていると、どうしても「羊たちの沈黙」を思い出してしまうSNAKEPIPE。
あの映画では「変身願望」の象徴として蛾が扱われていたっけ。
欧米と日本では蝶と蛾に対する考え方が違うのかもしれないけれど、クリスマス・カードっぽくはないよね?

あのう、もしもし?
あなた本当にクリスマスにプレゼントくれるサンタさん?
なんだかそんなところにいると、まるで覗きやってる変質者みたいに見えますけど?
本来なら姿を見ると喜ぶはずの子ども達が及び腰でカーテンに隠れているじゃないの!
「変なおじさんがいる」
「こわいよ」
と怯えているように見えるんだよね。(笑) 
ビンテージ物では何故かサンタが悪者になっている絵を見かけるので、これもそのシリーズの1つだろうね。
当時のブラックジョークだったのかな。
このカード、SNAKEPIPEは見た瞬間に大笑いしちゃったよ。 

クリスマス・カードなのに、スプラッター仕様とは!
少年の口元が血まみれになってるよ。
書いてある言葉は、どうやらドイツ語みたいね。
「ごあいさつ」とだけ書かれているようだけど。
うしろにいる山羊の角を生やした悪魔のような存在は一体なんだろう?
調べてみると、ドイツやオーストリアなどで受け継がれている伝説で、クリスマスシーズンに出没するクランプスという悪魔だという。
クランプスは、悪い子供に罰を与える役割を担い、良い子供には聖ニコラウスがプレゼントをくれる、ということになっているらしい。
「クランプスが来るよ」
なんて言うと子供には効果てきめんな脅し文句になるんだろうね。
そのクランプスを撃退した子供、という意味のカードなのかな?
クランプスは長い舌を持って描かれていることが多いので、少年が手にしているのはクランプスの舌だろうね。
そうとは知ってか知らずか、猫がじゃれついているところもブラック!
このカードを見て、「クランプスなんか怖くないやい」と思う子供が増えたらどうするんだろうね?(笑)

これも相当に意味不明のカードだよね。
男性が抱きかかえているのは七面鳥?
トサカ部分にサンタの帽子をかぶせているので、クリスマス・カードだと分かるね。
それにしてもクリスマスには七面鳥食べるのが欧米の習慣だったと思うけど?
この場合はどう解釈したら良いんだろう。
ペットとして飼っているので、みんなに食べないでと呼びかけるキャンペーン?
これから調理するけれど、その前に七面鳥に束の間のクリスマス気分を味わってもらうサービスタイム?
そしてこの男性は一体誰?(笑)
髪型や服装からして60年代から70年代を想像するけどね?
謎のクリスマス・カード、貰った人の困惑顔が目に浮かぶよ。(笑) 

最後はこちら!
なんでしょう、この不気味さは。(笑)
クリスマスやニューイヤーとは一切書かれていないけれど、ポストカードのようなので紹介してみよう。
この作品はニューヨーク出身のフォトグラファーでミクストメディアアーティストのmariの作品のようだね。
このアーティストは自分の作品をネット販売してるみたい。 
「かわいい」と「不気味」がミックスされた作品が多いのが特徴だね。
女流写真家ダイアン・アーバスの有名な作品である双子イメージが好きみたいで、アレンジした作品を何点か見かけたよ。
「ツイン・ピークス The Return」についても記事を書いてるのを発見!
SNAKEPIPEに近い臭いを感じてしまったので、大いに納得だね。
今度SNAKEPIPE MUSEUMで特集しようかな!

2年ぶりの「ビザール・ポストカード」を特集してみたよ!
どうしてもSNAKEPIPEの好みで選んでしまうので、ストレートなクリスマス・カードにはならないんだよね。(笑)
「なんじゃこりゃ」
と困惑したり笑ってしまうカードが好みだからね!
いつになるのかは不明だけど、次回のビザール・ポストカード特集もお楽しみに!

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【向こうの部屋に誰かいる!いかにもありそうな恐怖へのいざない】

SNAKEPIPE WROTE:

敬愛する映画監督デヴィッド・リンチの作品の中でよく登場するのが、ドアを開けると漆黒の闇が広がっているシーン。
自分の家の中なのに、まるで異空間のように感じてしまう恐怖を表しているのである。
通称「リンチ・ブラック」と呼ばれていると聞いたことがあるよ。
ここまでの闇ではなくても、実際に自宅で似た経験をすることってあるんだよね。
日が落ちているのに、電気を点けないで部屋に入った瞬間。
もしかしたら誰かが潜んでいるかもしれない、と一瞬想像してしまうことがある。
これってSNAKEPIPEだけかなあ?(笑)

そんな日常的に感じる恐怖を描いているアーティストを発見した。
上の画像も、上述した話に近いシチュエーションだよね。
向こうの部屋に確認できる人影。
家族なのか、もしくは見知らぬ人物?
小さく「ヒッ」と声を上げてしまいそうな、ゾクッとする心理を上手く表現していると思う。

これはSam Wolfe Connellyというイラストレーター。
サム・ウルフ・コネリーでいいのかな。
1988年北バージニア州生まれの29歳。
2011年にジョージア州サバンナ芸術大学デザイン学部を卒業。
以来、イラストレーターとして活躍し、個展も開催しているという。
現在の活動拠点はニューヨークだって。
左はコナミのホラーゲーム「サイレントヒル」のポスターとのこと。
しっかりカタカナで書いてあるから分かるよね。(笑)
映画のポスターなども手がけているので、プロのイラストレーターとして成功しているんじゃないかな。
本人のインタビューによれば「家賃が払えるように仕事するだけが望み」とのこと。
恐らくはプロのイラストレーターよりアーティストになりたいように思うけど?

サム・ウルフ・コネリーは子供の頃に感じた恐怖を絵の題材に選んでいるらしい。
それがきっと一番上の画像のような隣の部屋だったり、右の画像のような窓から垂れ下がる髪の毛なんだろうね。
これらは子供じゃなくても怖いと思うけど。(笑)
右の画像では、窓枠に点滴のパックのようなものが吊り下がっているので、恐らく窓を頭にした状態で寝ている女性がいるんだろうね。
種明かしをされたら「なあんだ」と思うかもしれないけど、一瞬ギョッとする光景には間違いない。
剥がれかかった壁も意味深に思えるし、手入れされていないような雑草が、まるで髪の毛の仲間のように見えてくるのも効果的。
これがカラーの作品だったら草の緑と髪の色の違いが分かるんだろうけど、モノクローム(ちょっとセピア?)だからこそだね。

サム・ウルフ・コネリーの恐怖イメージは続く。
月明かりの中、湖に浮かぶ男性の半裸体。
これは水浴びをしているところなのか。
それとも溺死体なのか。
SNAKEPIPEには溺死体に見えてしまうよ。
だって泳ぐなら、ジーンズは脱ぐと思うし?
まるで映画の中のワンシーン。
死体かもしれない人物がいる絵に美しさを感じてしまう。
もしかしたら殺人かもしれないのに、静謐で凛とした空気まで読み取ろうとする。
2つ以上の相反する感想を持つことができる作品は大好きなんだよね!

サム・ウルフ・コネリーの作品を調べた中で、最も恐ろしいと思ったのは右の画像。
「Above My Floorboards」と題された2013年の作品なんだよね。
「これ、こわい」とROCKHURRAHに見せると、昔の心霊写真に似たものがあったような気がすると言う。
確かに100年以上前の怪奇映画の雰囲気あるよね。
右の作品は、シーツを頭から被ったように見える左の人物(?)もさることながら、階段の上に浮かんでいるように見える人の影が恐怖を倍増させてるよね。
この作品は本当に心霊写真に見えるよ。
でもこれは実は写真じゃなくて絵なんだよね。
サム・ウルフ・コネリーはカーボングラファイト鉛筆やチョークを使用して作品を制作しているという。
普通の鉛筆より硬くて黒鉛粒子が細かいけれど、紙に付着した後はあまり粒子が動かないため、紙を汚さないのが特徴とのこと。
右の作品にはモノクロ写真によくある「ほこり」まで描かれていて、「やるなあ」と思ってしまった。
SNAKEPIPEは昔、自分で写真を印画紙に焼き付けていたので、この「ほこり」みたいな糸くず状の跡には苦労していたことを思い出したよ。
細い筆(面相筆)使って、点描の要領で修復していくんだよね。
そんなモノクロ印画紙の特徴まで描きこむなんて驚いちゃうよね!

サム・ウルフ・コネリーは油絵も手がけている。
左は「Whiteout」という2014年の作品ね。
車のライトが照らし出した一瞬の光景を描いているように見える。
「今の何だった?」と運転手が走り去った後でギョッとする。
そしてきっと見間違いだった、と自分を納得させてしまうに違いない。
恐怖や面倒には巻き込まれないほうが無難だからね。
この女性がどうして裸足で、薄手のワンピースを着て外出しているのかは不明。
勝手に想像してしまうと、精神病院に入院中の女性が病室から抜け出したシーン。
どこに行くあてもないため、さまよい歩いているように見えてしまうよ。
人によって様々なストーリーが展開しそうだね。

サム・ウルフ・コネリーの不穏な空気を孕んだ、不吉で恐怖を感じる絵はとても興味深い。
まるでスナップショットを写実的に描いたように見えるけれど、選び方が上手なのかもしれない。
これからどんな作品が完成していくのか楽しみである。

インタビューの中でサム・ウルフ・コネリーが座右の銘にしている格言について語っている。
Wolves don’t lose sleep over the opinions of sheep.
直訳では「オオカミは羊の意見の上に睡眠を失うことはない」だけど、意訳としては「狼は羊に振り回されることはない」、つまりは「人目を気にせず己の道を行く」ということになるのかな。
サム・ウルフ・コネリーのスペルは違うけれど、名前にウルフが入ってるから一層本人にとって意味のある言葉なのかもしれないね?
このまま独自の表現を追求してもらいたいアーティストだね!


【「ツイン・ピークス The Return」に出演の俳優陣とリンチの記念写真】

SNAKEPIPE WROTE:

2017年はSNAKEPIPEにとってワクワクするイベント続きの年になった。
1982年公開の映画「ブレードランナー」の35年後を描いた「ブレードランナー2049」が今年の10月に公開され、アレハンドロ・ホドロフスキーの自伝小説を元に映画化された「エンドレス・ポエトリー」は11月に鑑賞済。
そして3つ目のイベント、「ツイン・ピークス The Return」も全て鑑賞し終わってしまったのである。

「ツイン・ピークス The Return」とは1991年に終了したテレビドラマの後、1992年に公開された映画「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」から25年後の世界を描いた全18章のテレビドラマである。
殺害された女子高生ローラ・パーマーに瓜二つの女性が、通称レッドルームと呼ばれる赤い部屋で「25年後にお会いしましょう」とクーパー捜査官に言うシーンがある。
それで実際に25年経った2017年に続編の企画が持ち上がったようで。
まさか、あのセリフから続編の制作が実行されるとは思ってもみなかったよ!
1991年のシリーズは章によって監督が変わる持ち回り制だったけれど、「ツイン・ピークス The Return」は全編リンチが監督だという。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては、んもぉ〜願ったり叶ったりの嬉しいお知らせ!(笑)
8月よりWOWOWで放映が開始され、最終話が12月で終了。
ROCKHURRAH RECORDSは字幕版で鑑賞していたので、二ヶ国語版で鑑賞していた方より少し遅いんだよね。
毎週楽しみに展開を追っていたので、終了してしまった今となっては少し体がしぼんでしまったような感じ。
気合入れて息を溜め込んでいたのが、すっかり吐き出されたような感覚かな。

25年前のテレビドラマ「ツイン・ピークス」の最後の章で、クーパー捜査官は既に2人存在していたんだよね。
レッドルームにいるクーパーと、現実世界にいるクーパー。
そして現実のクーパーは、なんとキラー・ボブに乗っ取られた「悪いクーパー」になっていた。
洗面台の鏡にヒビが入る程、強く額を打ち付けて血を流しながら鏡を見るクーパー。
映る姿はボブだったからね。
テレビドラマはそこで終わってしまい「クーパー、一体どうなるんだろう」と不安な気持ちでいっぱいになってしまった。
その後の世界が「ツイン・ピークス The Return」で描かれていたのである。
なんと!クーパーは更に分身を増やして3人になってたんだよね。
それは「悪いクーパー」「バカなクーパー」「普通のクーパー」とでもいおうか。
まるで「欽ドン!良い子悪い子普通の子」の「イモ欽トリオ」みたい。(古い!)
ミスターCとして、肩にかかる長さの髪にレザージャケットを着ているのが、ボブに乗っ取られた状態のクーパー。(画像の一番左)
ダギー・ジョーンズという名前で、また別の世界で生きていた保険会社に勤める男が、途中で「バカなクーパー」に様変わりする。(画像の真ん中)
このクーパーがずっとバカなままで、見ている側がヤキモキしてしまうんだよね。
それにしても3人を演じ分けたカイル・マクラクラン、大変だっただろうね。(笑)
「バカなクーパー」のような役は初めてじゃないかな?

「ツイン・ピークス The Return」の感想をまとめたいと思って書き始めたけれど、あまりにエピソードが多過ぎているし、それぞれ謎が残ったまま展開していないシーンがてんこ盛り!
リンチらしいと言えばそうなんだけど、文章にしようとすると困ってしまうね。
それぞれのエピソードについては「ネタバレ」というタイトルを付けて詳細を書いている方がいらっしゃるようなので、SNAKEPIPEは気になったシーンを書いていこうかな。
本当は1回のブログでは全然足りないんだけどね。(笑)

リンチが「もう映画を撮らない」と宣言した理由が「映画の商業主義化」だというのは、ホドロフスキーも同感のようで、アートな映画は一切評価されないのが現代みたいなんだよね。
良いとか悪いとかではないけれど、大抵のことはCG(コンピュータグラフィック)使って、あり得ないような状況をいとも簡単に映像化してしまう映画が多いのが最近の傾向かもしれない。
リンチは「ツイン・ピークス The Return」で、その2つにあえてアナログな手法で対抗しようとしたんじゃないかな。
リンチが得意にしているフィルムの逆回し、少しコマをずらしてわざとギクシャクした動きを見せたりする、まるで1920年代のSF映画みたいな方法ね。
それはまるで学生が一生懸命知恵を絞って実験映画作りました、みたいな感じ。
そう、結局は「イレイザーヘッド」なんだよね!(笑)
70歳をとうに過ぎたリンチが、原点である「イレイザーヘッド」精神を持ち続け、ハリウッドに感化されずに映像作品を制作しているところが素晴らしい!
今だったらCGだろう、というのを「あえて」稚拙に見せるところがポイントなんだよね。
もしかしたらその「ズレ」やバレバレの「逆回し」もCGでできるのかもしれないけど、「ギクシャク」させないと思うよ。(笑) 

レッドルームの「The Arm」の存在も「いかにもリンチ」だったね。
25年前に印象的なダンスを披露した小人の代わりみたいだけど、このオブジェクトはリンチが作ったに違いないよ。
「イレイザーヘッド」の赤ん坊も似た感じだし、リンチの絵画作品にも近いし。
レッドルームの特徴的な幾何学模様の床から、にょっきり生えている「The Arm」の存在自体がシュールだからね。
「ツイン・ピークス The Return」でのレッドルームの役割が謎だったな。
まるでクーパー捜査官を助けるための舞台みたいに見えたからね。 

リンチらしい映像ということで付け加えると、「ボブの誕生秘話」だった第8章。
リンチ・ファンのSNAKEPIPEにとっては至福の時だったけれど、テレビドラマの映像ではないよ。(笑)
こんな実験映像を観て喜ぶのは、ほんの一握りだろうなと想像する。
リンチはカラー作品ももちろん素敵だけど、モノクロームの映像が素晴らしいよね。
最近はリトグラフ版画を手がけているリンチなので、やっぱりモノクロームに魅力を感じているのかもしれないね。
また「あえて」モノクロームの映像で、リンチの作品観たいなあ!
1945年に始まったボブの誕生物語は、この1回だけで終わってしまい、あの変な虫のような蛙みたいな物体を飲み込んでしまった少女の運命についての言及はなし!
謎は謎のままで良い、はリンチの言葉だからね。(笑)

その関連ということになるのか、ローラのお母さんのエピソードも尻切れトンボだったんだよね。
25年前に夫と娘を亡くし、あの家で一人暮らしをしているローラの母セーラ。
相変わらずのヘビースモーカーで、更にアルコールも相当飲んでいるみたい。
何かが映っていれば良いと思っているのか、意味のないテレビばかり観ているね。
そんなセーラがショットバーに行った時の怖いシーン。
これも説明なく、ここで終わってるんだよね。
やっぱりあの虫みたいな蛙飲んだの、セーラだったのかなあ。

これもアンチ・ハリウッドかなと思ったのは、ワン・シーンの長さ。
最近の映画だったらカット数が多くて、Aの顔、Bの顔のアップ、手の動き、なんて感じでカメラの動きが速いよね。
それを「あえて」間を取る、セリフがなくてもカメラが回っているような無駄な時間の多さに感心してしまった。
元々「ツイン・ピークス」の面白さは、無数に張り巡らされた伏線にあったので、まるで無駄のように思えるシーンやセリフの1つ1つにまで気を配り神経を集中させることだったので、「The Return」も同じような鑑賞法が必要なんだろうね。
リンチの部屋にいる女性がFBI同士の話があるから、部屋を出てバーで待っててと促されたシーンなどは、リンチのギャグなんだろうなあ。
切羽詰まった状況と、のんびり化粧してる女性の対比みたいな感じの。
それにしてもリンチは「ツイン・ピークス」の時にはダブルRダイナーのウエイトレスであるシェリーとキスしてたり、今回も美女をはべらせ、更にはモニカ・ベルッチとの共演も果たしている。
この助平根性がリンチらしさの秘訣なんだろうね。(笑)
リンチの俳優としての出番も多い「The Return」はリンチ・ファンには嬉しい限りだったね! 

どんなにキレイで可愛かった女性でも、25年経つと変わってしまうのか…。
それにしても目の当たりにするとショック大きいんだよね。
ダブルRダイナーのシェリーとノーマは、別人に見えるほどではなかったように思う。
ローラも少しふくよかになってるけど、そこまでの変化ではなかった。
えっ、うそ?と目を疑ってしまったのはオードリー!
オリジナルのドラマは90年代だったのに、まるで50年代の女優のような雰囲気を持ち、コケティッシュで少し生意気な美人だったオードリー。
きっとリンチもお気に入りだったに違いない。
確かリンチとの噂もあったように記憶しているよ。(笑)
ところが今はかなり残念な結果に。
25年前の「ツイン・ピークス」では、爆発した銀行にいたところで終わっていたっけ。
突然出て来たかと思うと話していることは支離滅裂で意味不明。
本当にあの小男が旦那なのかな?
最後にオードリーが出てきた時は鏡を見ながら泣き叫んでいるシーン。
一体どうしちゃったんだろうね?
それなのに、息子がいる設定なんだよね。
そして息子も極悪非道な悪いヤツ。
この点についての説明はドラマの中では全くされていないので、想像するしかないよね。 

「インランド・エンパイア」でちょい役だった裕木奈江が、大役もらっていたのには驚いた。
「ツイン・ピークス The Return」では印象に残る存在だったと思うよ。
とは言っても、、、誰だか分からない状態だったけどね?
顔は見えない、セリフといえるようなセリフはない。
「Naido」という名前で、後半にも登場してくる重要な役割なんだよね。
リンチ作品に出演した日本人は裕木奈江だけだと思うし、2作品に選ばれるなんてすごい! 
調べてみたら現在47歳だって。
その年でフルヌードとは、裕木奈江頑張ったね!(笑) 

25年前にも出演していた俳優の懐かしい顔が見られたのも嬉しかったね。
ツイン・ピークス保安官事務所のホーク、アンディ、ルーシーは相変わらず勤務していて、ローラの同級生だったボビーが保安官事務所に勤めていたのは意外だった。
精神科医のジャコビーは自らの意志や主義を訴えるための海賊放送(?)をしていて、その訴えに共感する片目のネイディーンは、外見が25年前と変化がなかったよ。
ネイディーンは音がしないカーテンの特許取得したのかもしれないね?(笑)
ジェームズは25年前に歌った曲「Just You」を披露し、エドは念願だったノーマとの再婚が果たせそうで良かった。
残念だったのは、ピート役だったジャック・ナンスと「丸太おばさん」役だったキャサリン・コウルソンが既に亡くなっていること。
「丸太おばさん」は「The Return」が遺作になったのかな。
2人共リンチとはゆかりのある人物だったし、「ツイン・ピークス」でも存在感がある俳優だったからね。
今調べて初めてピートと「丸太おばさん」が実生活で夫婦だったと知り驚いた! 

「ツイン・ピークス」に出演はしていなかったけれど、リンチ組と言って良いであろう女優が「The Return」には登場していたのも注目だったね。
ナオミ・ワッツは「マルホランド・ドライブ」で主役を演じ、その後から知名度がアップした女優。
「インランド・エンパイア」ではラビットの声を担当してたよね。
「The Return」ではダギー・ジョーンズの妻という役どころで、出演回数が多かったね。
気が強くてせっかちな妻を上手に演じていたよ。

ーラ・ダーンは「ブルーベルベット」で、恐らく「変な口の形」が気に入られ、キャスティングされたのではないかとSNAKEPIPEは予想しているけれど、その後も「インランド・エンパイア」では主役を勤めている女優ね。
リンチとは長い付き合いのようだけど、まさか「The Return」でダイアンとして登場するとは思わなかった!
「ツイン・ピークス」でクーパーが「ダイアン」とレコーダーに呼びかけていた、あのダイアンである。
本当にダイアンが存在しているのかどうかが不明だったのに、「The Return」で実在の人物として描かれることになるとはびっくり!
ローラ・ダーンも裕木奈江と同じようにヌードを披露してたけど、こちらは50歳!
熟女のヌード、多かったなあ。 

「ロスト・ハイウェイ」「マルホランド・ドライブ」「インランド・エンパイア」の3作品、SNAKEPIPEが「迷宮系3部作」と名付けた作品に共通するもう1つの世界という概念が「ツイン・ピークス The Return」にも継承されているので、理解できないような事がいっぱいなんだよね。
舞台が1つだけじゃないし、登場人物もドッペルゲンガー状態。
リンチが瞑想の中で思いついたか、夢で見たストーリーなのかもしれない。
以前「マルホランド・ドライブ」の感想をまとめた時に書いた文章。

自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!

もしかしたら「ツイン・ピークス The Return」にもあてはまるのかもしれないなあ。

最終話は一体どんな展開になるのだろうとドキドキしていたけれど、なんとまあ!
こんな終わり方で良いの???
あっけにとられてしまったSNAKEPIPE。
この終わり方では次を期待してしまうんだよね。(笑)

まずは「The Return」を鑑賞し直してみよう。
前述したようにちょっとした会話や意味がないと思われた伏線に気付くかもしれないしね?
あれはどんな意味だろうと思い巡らせるのが「ツイン・ピークス」の醍醐味。
もし謎が解けなくても全く問題ない。
リンチが監督した映像を鑑賞できるだけで、SNAKEPIPEは幸せだから!(笑)