Monthly Archives: 2月 2018

20180211 top
【リンチが手がけるパリにある「Silencio Club」の内部 】

SNAKEPIPE WROTE:

先週は敬愛する映画監督デヴィッド・リンチを追ったドキュメンタリー映画について特集した。
その中で、子供時代に父親と毎週のようにDIYで何かを作っていた、という話があったことも書いたっけ。
デヴィッド・リンチは自分の映画のセットを作っている、というのは前に聞いた(読んだ)ことがあった。
例えば映画「ロスト・ハイウェイ」では、ジャズ・ミュージシャンのフレッドと妻レネエの室内に置いてあったランプと台をリンチが作成した、とかね。
それを聞いた時には驚いたけれど、「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を鑑賞して、DIYが得意だということを知って納得する。
ところがリンチのDIYは映画だけにとどまっていないことをROCKHURRAHが調べてくれた。
なんと、様々な家具のデザインを手がけていたんだよね。
検索すると出てくる出てくる!(笑)
今回はリンチがデザインした家具を特集してみよう。

このテーブルの雰囲気は、前述した「ロスト・ハイウェイ」のランプに似ているね。
1988年製で、100点のみの限定販売だったみたい。 
素材はバーチ材合板、スチール、ターンバックル付き鋼線だという。
「エスプレッソ・テーブル」と名前が付いているところが、いかにもコーヒー好きのリンチらしいね。(笑)
このテーブルはオークションで販売されていて、$2,188、日本円で約24万円だったようで。
ちゃんとリンチの手書きサインも入っているんだよね。
こんな値段でリンチの作品が手に入るなんて驚き!
ファンにはたまらない逸品だよ!

次もテーブルにしてみようか。
ランプが接続されたキャスター付きのサイドテーブルだね。
真ん中あたりにあるのはリモコンやメガネ、奥にはティッシュも見えるよ。
きっとリンチ自身がパッと手に取れるように設計したんじゃないかな?
テレビショッピングで見たたことがある多機能テーブルみたいな感じ?(笑)
「ツイン・ピークス The Return」の最終回近くを放映していた頃作ったような記事を読んだけど、このサイドテーブルについての詳しい話は書いてなかった。
 販売されているのかどうかも不明だけど、ランプの雰囲気がリンチらしいなと感じるよ。

引き出しがいっぱいあるキャビネット。
中に入っている写真(?)が謎なんだよね。
あまり大きな画像がなくて、何が映っているのか不明だけど、不気味に感じてしまう。
この作品は「Do It: How To Make A Ricky Board」というんだけど、20ある引き出しの名前がリッキーなんだって。
それぞれのリッキーに別の名前を付けることで、20の人格ができあがるという。
元はすべて同じだけれど、名前から変化が現れるでしょう、なんて書いてあるよ。
これは2012年の作品で、Gund Galleryで展示されていたみたい。
人格が変わるというのはリンチの映画では定番のテーマ(?)なので、余程気に入っているんだろうね。
この家具はサイズ調整もできるというので、どんな変化が起こるのか実際に観てみたいよ!

これはもしかしたらリンチ・デザインの家具というよりはアート作品になるのかもしれないけどね?
コードが伸びているので、赤い部分が光るライトだと思われるんだけど。
ぐんにゃりした形状と、色使い、中から飛び出している黒い棒状の物、というモチーフは「いかにも」リンチ!(笑)
リンチの絵画作品「I See My Love」の別バージョンに見えるなあ。
これは2011年の作品で、William Griffin Galleryで展示されたという。
リンチは絵画作品にもライトを取り入れたり、立体感を出しているので、オブジェも得意なんだね。

次もランプにしてみよう。
高さがあって、少しぐんにゃりして、ライト部分が小さめ。
実用性というよりは、オブジェなんだろうね。
このライトもリンチの絵画作品「Boy Lights Fire」に近いと感じるよ。
どんな絵画なのか載せておこうか。

少年が火遊びをしているところを描いているんだろうけど、不自然に長い腕、絵画の中に実際のライトを点けているところが特徴なんだよね。
この少年の腕部分を切り取って立体にしたら、上のライトにならないかな?
ライトといえば、「ツイン・ピークス The Return」に出てきたコンビニエンスストアの2階に住んでいる黒い男の「gotta light?」を思い出してしまうね。(笑)
「Fire Walk With Me」もそうだけど、リンチにとっては火は重要な意味があるんだろうね?

映画の音響にもこだわり、「ブルーベルベット」ではカイル・マクラクラン演じるジェフリーが野原で切り取られた耳を拾うシーンがあったことから、リンチと耳を結びつけて語る人が多いんだよね。
「耳の監督」なんて言われていたもんね。
リンチ自身もCDデビューを果たしているし、音楽への「こだわり」が強いことは知られている。
「ツイン・ピークス The Return」でも毎回必ずライブシーンが収められていたしね。
そのリンチがデザインしたスピーカーがこちら!
タールとラッカーでペイントされているという。
さすがにタバコ好きのリンチ、タールだって。(笑)
土台の部分が幾何学的で面白いんだよね。
一体どんな音が出るんだろう。
タールで塞いだせいで、音が歪んだりしないのかな?
それがリンチの狙いかもしれないけどね!

リンチのデザインについて調べていたら、2011年にリンチがパリのナイトクラブをプロデュースした話が出てきて驚いた!
クラブの名前は「Silencio」、そう「マルホランド・ドライブ」に出てきた劇場と同じ名前なんだよね。(笑)
クラブのオーナーはリンチの作品のファンで、「マルホランド・ドライブ」の雰囲気を打ち出したナイトクラブをイメージしていたのかもしれない。
アートを理解する大人のためのクラブなんて、リンチにとっても楽しい仕事だったんじゃないかな?
そのクラブでは映画の視聴もできるようで、シネマ・シートのデザインをリンチが担当したという。
人間工学的に設計されているようで、快適に映画鑑賞できるようだよ。
このシートが「Silencio Club」に並ぶと左の画像のようになるんだね。
これはすごい! (笑)
どんな座り心地なのか気になるよね。
それにしてもその「Silencio Club」は一体どんなシステムなんだろう?
700㎡の敷地に1階ギャラリー、24座席あるシネマ、図書室、喫煙室、黒幕、2つのバー、1つのステージがあるという。
黒幕ってなんだろうね?(笑)
毎週土曜日は一般でも入れるようだけど、通常は会員制を取ってるみたい。
どんな人が集い、どんな文化的な交流が図れるのか?
非常に気になる場所だよね! 

きっとリンチは自分の居心地を良くするために、オリジナルの家具をDIYで作成していたんだろうね。
そのデザインが、他の人にとっても使い勝手の良い家具として商品化されていると知って驚いたよ!
好きなことが商売になるなんて、アーティストとして最高だろうね。
今回はリンチの別の側面を知ることができて、とても楽しかった!
絵画、映画、音楽、家具デザインと多岐に渡る活動を観て、益々ファンになったよ。(笑)
また別のリンチ特集を組んでみたいね! 

【「デヴィッド・リンチ:アートライフ」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

前回のROCKHURRAHが書いているけれど、2人揃ってインフルエンザによりダウンしてしまった先週。
医者に行って「インフルエンザですね」と宣告されたのは、人生初のことかもしれない。
もしかしたら子供の頃には経験しているかもしれないけど、自分で医者に行って宣告されるというのは初めてのこと。
これはかなり衝撃的だったよ!
今年はかなりインフルエンザが流行しているらしいけれど、ROCKHURRAH RECORDSもその流行に乗ってしまったんだね。
実は今でも少しお腹の調子が悪いSNAKEPIPEだけど、インフルエンザB型の特徴らしいので、まだ完治していないサインなのかもしれない。
おかげで更に痩せてしまったよ。とほほ。

本来であれば、敬愛する映画監督デヴィッド・リンチに関する映画だったら公開初日である1月27日に勇んで出かけたかったのに、、、。
体調の悪さをこらえてまで行くことはできないからね。
ということで、ようやく回復してきた今週映画鑑賞に出かけることにしたのである。

2週連続で雪が降るほどの寒さは少しだけ緩み、晴れてお出かけ日和だったのは良かった。
病み上がりに寒さはこたえるからね。(笑)
それでも万全の寒さ対策をして行くことにする。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」は渋谷のUPLINK、新宿のシネマカリテ、千葉の千葉劇場の3劇場で鑑賞することができることは調べていた。
体調が良かったらUPLINKにしていたはずだけど、今回は一番マイナーな千葉をチョイス。
行ったことないんだけど、どんな劇場だろうね?
セレクトしている映画は、アート系が多いようなので、意外と「通好み」の映画館かもしれない。

千葉に行くのは何年ぶりだろう?
販売を仕事にしていた頃は、毎年夏には千葉に通っていたSNAKEPIPE。
千葉パルコの水着特設会場が仕事場だったからね。(笑)
今はもう、そのパルコすら存在していない。
街の様子も変わっただろうな。
自他共に認める方向音痴なので、無事に千葉劇場にたどり着けるか不安だよ。

千葉駅に到着。
駅構内は随分長い間工事をしていた記憶があるけれど、いつの間にか駅ビルが完成していたようで。
電車の電光掲示板も見易く近代的な物に変わっている。
千葉駅、頑張ってるね。(笑)
ROCKHURRAHがいてくれたおかげで、不安だった千葉劇場への道のりも難なくクリア!
無事に辿り着けて良かったよ。
映画館としては、かなり辺鄙な場所にあるし、更に映画はリンチのドキュメンタリー。
どれだけお客さんが入るんだろうね?

映画の開始前に小じんまりしたロビーで次回上映を待っていたのは2人。
千葉劇場は60歳以上の観客は1,000円という料金で鑑賞できるシステムを採用しているようで、待っていたのはその恩恵を受けている年齢層の方々。
あっ、ROCKHURRAH RECORDSは恩恵受けてませんから!(笑)
最終的に映画が上映するまでの間に観客数は約15人程度かな。
年齢層はかなり高めだよ。
ROCKHURRAH RECORDSの周りは、全然人がいなかったのに、予告映像が始まる直前に走り込んできた年配の女性がすぐ目の前に座ってしまった。
しかもバッグの中をずっとゴソゴソ探っている。
これはきっと迷惑なタイプの客だな、と予想する。
その予想は当たってしまったんだよね…本当に迷惑な人って嫌っ!
なんでそんな高齢の女性が1人でリンチの映画観るのか、不思議でならないよ。

いよいよ上映が始まった。
映像は絵画制作をしているリンチを捉え、音声はリンチが自身の子供時代からのエピソードを語っている。
ある時は絵画に貼り付けるためのオブジェを作り、別の時にはリトグラフなのかクレヨンのような物で絵を描くリンチ。
その合間には必ずタバコを吸う。
かなりのヘビースモーカーだね。
愛飲しているのは「アメリカン・スピリット」、ニコチンもタールも数値高いよ!
あんなにガンガン吸って大丈夫なのかな。
体の心配しちゃうよね。

少年時代のリンチは、至ってノーマル、健全な子供だったようで、リンチがリンチになった要因については語られてなかったように思う。

リンチの父親は農務省に勤めていて、仕事の関係で数回引っ越しをしたという。
家族間での特にアート的な話は出てきていない。
今回のドキュメンタリーの中で、父親とDIYで何かしら作っていた、という話はあったけどね。
そのDIYの経験から、物を作る喜びを感じたと語るリンチ。
自分の映画のセット、例えば机などを自作することは知っていたけれど、それが少年時代から続く趣味とは知らなかった。
画像はリンチ一家で、一番右が長男のリンチ。
妹と弟がいたことも知らなかったよ。

少年時代の友達の父親が画家で、アトリエを自由に出入りしていた話がある。
これはSNAKEPIPEの勝手な想像だけど、その画家の絵、もしくは画家とのコミュニケーションの中で、リンチの中に何かしらの「リンチの原型」が形作られたのではないだろうか?

最も印象的だったのは、リンチのアトリエを訪れた父親とのエピソード。
地下室で「物が腐っていく様子」を観察するために、果物やネズミの死骸などをコレクションしていたリンチ。
それを自慢気に父親に見せたという。
地下室から出て登る階段の途中で、自分の成果を見せられて嬉しかったリンチが笑顔で、後ろにいる父親を見る。
すると父親の顔は曇っていたというのだ。
更に「お前は一生子供を持たないほうが良い」とまで父親に言われてしまったという。 
そして実はその時、最初のリンチの妻ペギーが、後に映画監督になる娘ジェニファーを身ごもっていた、というオチまでついている。
リンチの父親の心配をよそに、リンチは家族の長となっていく。

映画制作を始めるリンチにとっては幸せな時間だったようだけど、リンチの父親と弟からは反対されたという。 
子供もいることだし、堅気な仕事に就いて、家族を養うべきだと説得されたらしい。
リンチには辛い時期だっただろうね。
それでも映画を作り続けて良かったよ!
奨学金が出たおかげもあるけれど、一番はやっぱり続けていこうとする意志力だからね。
順風満帆なことばかりではなかったという話を聞いても、何故かあまりリンチが苦労人だったという印象を受けないんだよね。
好きなことを続けている人、というイメージのほうが強いからかもしれない。

リンチを追ったドキュメンタリーは、2004年頃から制作されているようだけど、SNAKEPIPEが鑑賞したのは今回が初めてである。
ここまでリンチに傾倒しているSNAKEPIPEだけれど、本人の口から過去について聞かなくても、映画や絵画、もしくは音楽などの作品からリンチを自分なりに知っていれば良いと思っているからだ。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」を鑑賞できたのは、もちろんファンとしては嬉しい経験だけれど、リンチの過去を少し覗くことができても、今まで感じていたリンチ像に変化はない。
それにしても「デヴィッド・リンチ:アートライフ」は、余程リンチに対して興味を持っている人以外には、退屈な時間になるのではないだろうか。
こんなにリンチ愛を熱く語っているSNAKEPIPEですら、一瞬眠りそうになることがあったくらいだから。(笑)

映画は「イレイザーヘッド」の部分までで終わっていた。
ということは1976年頃までについて、ということになる。
「デヴィッド・リンチ:アートライフ」のパンフレットによれば、今回リンチを追った時間は25時間に及ぶということなので、編集で約90分にまとめられているってことだよね。
SNAKEPIPEの想像だけど、このドキュメンタリーの第二弾があるような気がしてしまう。
もし次があったら、またUPLINK等で上映してくれるかもしれないね?