ROCKHURRAH紋章学 ブック・デザイン編 4

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【「盲獣」の英訳は「Blind Beast」だよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は「ROCKHURRAH紋章学」をお届けしてみよう。
これで4回目の特集になる「ブック・デザイン編」は、これまでカッコ良いデザインや「とほほ」なデザインをまとめてきたよね。
今回は少し趣向を変えて「外国で出版された日本の小説のブック・デザイン」を集めてみたよ!
そうは言っても、日本の小説だったら何でも良しではROCKHURRAH RECORDSらしくない。
大好きな作家、江戸川乱歩の外国バージョンに絞って紹介していこう!

英語が苦手でも「Edogawa Rampo」くらいは読めるでしょう。
そして乱歩で椅子とくれば「人間椅子」だな、という予想はつくはず!
これは乱歩の短編作品を集めた英訳版なんだよね。
「人間椅子」は1925年の作品だけど、この英訳版が出たのは2011年とのこと。
もしかしたらそれ以前にもあったのかもしれないけどね?
短編集にはどんな作品が掲載されているのかと調べてみる。
「The Human Chair 人間椅子」
「The Psychological Test 心理試験」
「The Caterpillar 芋虫」
「The Cliff 断崖」
「The Hell Of Mirrors 鏡地獄」
「The Twins 双生児」
「The Red Chamber 赤い部屋」
「Two Crippled Men 二癈人」
「The Traveler With The Pasted Rag Picture 押絵と旅する男」
一番初めに「人間椅子」が収録されているせいもあるだろうし、内容的にインパクトが強いためかブック・デザインに採用されているよね。
短絡的ではあるけれど、内容を忠実に表している点が秀逸だと思う。

英訳されると分かりづらいタイトルもあったけど、ほとんどが即答できるのは自称乱歩ファンとしては当たり前か?(笑)
同じシリーズのスペイン語版のカバーが右の画像ね。
上のアメリカ版のほうが少しおどろおどろしくて、乱歩の世界観を表しているように思ってしまうね。
日本の小説だから長い黒髪の着物を着た女を描くのは、常套手段なのかもしれない。
少しだけ狂気を孕んだように見える女の顔から、上に書いた小説に出てくる誰かに当てはまるか考えてみるけどなかなか難しい。
特にこれといったモデルを想定したわけじゃないのかもしれない。
どちらの画像も共通項は「障子」だね。
これはタランティーノの影響なのかも?(笑)

これは上のスペイン語版のバージョン違いなのか。
今度はかなり現代的なブック・デザインにしてるよね。
ゲームのパッケージにありそうな雰囲気で、外国で流行りのカタカナも配置されている。
わざとやってるのか、全く意味を成さない文字の羅列。
和製ホラーは海外で人気のようなので、その一貫で乱歩の小説も括っているのかもしれない。
乱歩ファンとしては「そんなに軽くしてもらっては困る」って言いたいんだけどね。
もっと人間の根源的な部分を掘り下げて、小説にしてるのが乱歩だと思うんだけど。
しかも今から100年くらい前に書いてる小説なので、最近出ているサイコ物の源流と言っても良い作家じゃないのかな。
調べたわけじゃないので、断定はできないけど。

これも完全に勘違いバージョンだよね。(笑)
フランス語版の「パノラマ島奇譚」のようだけど、浮世絵風の半裸体女人が意味不明!
和風を表現するのに効果的だと思ったのだろうか。
「パノラマ島奇譚」は「なりすまし」のドキドキ感と、建設されたパノラマ島の壮大さが魅力の小説なので、このデザインからは内容を想像することは不可能に近いように思ってしまう。
国によっては、日本の小説は「浮世絵風」として、ある程度形式化されているのかもしれないけどね?
そしてフランス語版での乱歩の表記が「RANPO」と「N」になっている点にも注目。
英語圏ではヘボン式ローマ字表記「RAMPO」に対して、フランスでは採用していないことが分かったね。(笑)

次はスペイン語版の「盲獣」だよ。
「盲獣」は1931年から1932年にかけて「朝日」に連載された小説で、1969年に増村保造監督により映画化されている。
この映画については2009年に「CULT映画ア・ラ・カルト!【01】邦画編」としてまとめているんだよね。
スペイン語版ブック・デザインにあるような「凶々しさ」というよりも、触感芸術の作品に注目している記事を書いている。
スペイン語版で気になるところは、うっすらと透けて見える「感受性」という文字!
誰がこの言葉を選んで載せることにしたのか、謎だよね。(笑)

一体これは乱歩のどの小説を翻訳したものなんだろうね?
「明智小五郎 初期の事件簿」とでも訳したら良いのか。
そうして調べてみると「一寸法師」や「屋根裏の散歩者」などが、明智小五郎シリーズでは初期に当たる作品のようだけど、この本に収録されている内容については不明だった。
ブック・デザインに注目してみよう。
まず、手前の明智小五郎だと思われる男性。
どお、この髪型と顔!(笑)
そして後ろに丸く大きく存在感をアピールしている邪悪そうな顔。
これが「一寸法師」ということなのかな?
叫んでいるような女性が前にいるよね。
なんとなく言いたいことは分かるんだけど、もう少し読者の興味を誘うような描き方はできなかったのか。
この本が売れたのかどうか聞いてみたいね!(笑)

乱歩作品の中で、映画化や舞台化により何度も上映されているのが「黒蜥蜴」だよね。
1968年に映画化された作品については「CULT映画ア・ラ・カルト!【09】黒蜥蜴」で記事にしているよ。
黒蜥蜴役を美輪明宏が演じていて、その気高き美しさに圧倒されてしまったSNAKEPIPE。
そんな黒蜥蜴のイメージ通りのマダムをブック・デザインに採用しているのが、スペイン語版なんだよね。
バックにちょっと不気味なトカゲが控えているのも、良いみたい。
今回集めた江戸川乱歩の海外版の中では、このデザインが一番気に入ったよ!

今週の「江戸川乱歩の海外版ブック・デザイン」は、検索していて楽しかったよ。
まずはRAMPOの表記を探し、単語からタイトルを予想する作業が面白かった。
そして外国人が乱歩作品に対してどんな感想を持っているのかを知ったのも初めてのこと。
なんと、乱歩は高評価で人気があることがわかったんだよね!
「エロチックでグロテスク」と感想に書いていながら、星5つが付いていたりして。(笑)
日本の作家で人気があるのは三島由紀夫と村上春樹くらいか、と勝手に思っていたSNAKEPIPEには、とても意外だったよ。
誤訳がある、という感想も読んだので、翻訳家の方にも頑張ってもらいたいね!
そして今度はSNAKEPIPEが英文で乱歩読んでみるかな。(笑)

百年の編み手たち〜ただいま/はじめまして 鑑賞

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【「太陽のジャイロスコープ」も「ただいま」】

SNAKEPIPE WROTE:

リニューアルのため2016年から休館していた東京都現代美術館が、3年の時を経てようやくオープンしたのが今年3月下旬のこと。
オープニングの日は無料開放される情報も知っていたけれど、人でごった返している中での鑑賞は避けたほうが無難と判断し、GW中に出かけることにした。
開館の時刻に合わせて出かけ、お昼前には鑑賞を終えることが多いROCKHURRAH RECORDSだけれど、今回は珍しく閉館2時間前に入館してみる。
お客さんが少ないんじゃないか、と予想してのことだ。

リニューアル・オープン記念展の企画展として「百年の編み手たち-流動する日本の近現代美術-」、コレクション展として「MOTコレクション ただいま / はじめまして」が開催されている。
ROCKHURRAHはコレクション展だけの鑑賞を希望したけれど、「せっかくだから」と両方の展覧会を観ようと言ったのはSNAKEPIPEである。
入り口が近かった「百年の編み手たち」から鑑賞する。
チケットもぎりのところに、カメラに斜線が引かれた「撮影禁止のサイン」が目に入る。
ここは撮影禁止の美術館だったっけ?
東京都現代美術館に最後に行ったのは2015年8月で『「オスカー・ニーマイヤー展」と「ここはだれの場所?」鑑賞』として記事にまとめているね。
SNAKEPIPE自身が撮った画像を載せているけど?
展覧会によって撮影の可否が決まるのかなあ。
少しがっかりしながら会場を進む。

「百年の編み手たち」というタイトルにあるように、1910年代からの作品を年代別に紹介している。
ほとんどが日本人の作品なので、あまり馴染みのない名前が多い。
ROCKHURRAH RECORDSが大好きな1920年代のシュルレアリスムなどは、あまり浸透していなかったのか?
プロレタリア美術として雑誌やポスター類があったけれど、ロシア構成主義ほどの完成されたアートの域には達していない。
やっぱり気になったのは2008年にも「大道・ブランコ・コーヒー」の中で書いている白髪一雄!
あの迫力は日本人離れしていて、潔さが素晴らしいんだよね。
どうやら2020年1月にオペラシティで個展が開催されるらしいので、とても楽しみだ。

部屋をいくつか通り過ぎたところで、「撮影オッケー」の「サイン」がある。
ここからは撮影オッケーなんだ!
実を言うとそこまで感銘を受けたわけではないんだけど、撮影が許可されるとつい撮ってしまうんだよね。(笑)
次の部屋に入って、またパシャッ。
すると係員が飛んでくるじゃないの!
「撮影可能なのは前の部屋だけなんです」
次の部屋は撮影不可なら、撮影禁止サイン出しておいてよー!
お客さんで来ていた外国人も同じように指摘されていて、「どこが良くてどこがダメなのか教えて」と係員詰め寄っていた。

結局SNAKEPIPEが本当に撮影したいと思って撮った撮影オッケーな作品は、会田誠の「たまゆら(戦争画RETURNS)」 だったよ。
これは2013年に森美術館で開催された「会田誠展~天才でごめんなさい~」で鑑賞したことがある作品で、台になっているビール・ケースも同じだったように記憶している。
ということはビール・ケースまで含めて作品だったんだね。(笑)
東京都現代美術館は、以前会田誠の作品を展示したことで、物議を醸した経験があったことを思い出す。
あの時のキュレーターさんは今も在職されているのかしら?
今回の企画展が、全体に平均的で丸みを帯びた作品が多かったように感じたのは、SNAKEPIPEだけだろうか。
はっきり言ってしまえば、あまり特徴がなくて面白みに欠けていたってことなんだけどね。(笑)
そこでキュレーターさんが変わったのかな、と勝手に推測したわけ。

ワクワクする作品に出会うのなら展覧会のハシゴは全く問題なくて、気力も体力も充実した中で2つ目に行くんだけど。
今回の「百年の編み手たち」では、それらが充足されることなく、疲労だけが溜まってしまった。
コレクション展は後日にしよう、とROCKHURRAHと帰路につく。
「だからコレクション展だけにしようと提案したのに」
確かにそうだけど、観たから言えることだからね!

そして2週間後、コレクション展鑑賞のため再び美術館へ。
今回は開館時間に合わせて出かけてみる。
おや、人が少ないよ!
これはとても鑑賞しやすいね。
チケットもぎりの女性から「背中のリュック」についての注意を受ける。
前にかけるか、手に持つかするようにって。
今まで言われたことないんだけど、何か事故でもあったのかな?
コレクション展のほうは、撮影に関しての注意は3作品だけが撮影禁止と提示されていた。
ということは、それ以外はオッケーってことだよね!
これはバシバシ撮影しないと。(笑)

最初の作品はアルナルド・ポモドーロの「太陽のジャイロスコープ」!
以前は屋外にあったっていうけど、どこだったか覚えてないよ。(笑)
3年の閉館の間に、こういった作品の修復作業をしていたとのこと。
インダストリアル好きには「たまらない」作品だよね!
重さ5トンって、部屋に運び込むのに苦労しそうだよ。
購入を考えていたんだけどね。(うそ)

今回の展覧会は「ただいま/はじめまして」なので、今までのコレクションと休館中の3年間で新たにコレクションに加わった作品が展示されているという。
ヂョン・ヨンドゥの「古典と新作」は2018年の作品なので、今回初お披露目だね。
紙に煤が材料として書かれているんだけど、煤を使った作品はあまり聞いたことないかも。
まるで写真に見えてしまうようなスーパーリアリズム!
昭和初期を感じさせるタッチは見事だったよ。

展覧会情報を調べた時にも出ていた作品。
中園礼二の「無題」、2012年の作品である。
なんとこの方、2015年に25歳で亡くなっていると知り、びっくり。
今回鑑賞したすべての作品のタイトルが「無題」だったのにも驚いてしまう。
タイトルを付けることで、鑑賞者の自由を縛ると考えているのか。
説明文によると、どうやら「付けられない」というのが真相のようだけど。
シンディ・シャーマンの作品もほとんどが「Untitled」だけど、シンディ・シャーマンの場合は架空の映画のスチール写真を捏造しているので、タイトルなくて良いのかなと思っている。
絵画の場合には、そういった匿名性ではなく、自我や意識を表現したものではないだろうか。
そして、その「思い」を抽象的にでも文字に表したのがタイトルだと考えているんだけど、どうだろう?

荻野僚介の「w1122×h1317×d49」は2016年の作品。
白と黒とグレーという3色だけを使用した、ミニマル・アート。
シンプルなのに、強烈な印象を残すこともできるジャンルだけど、それはなかなか難しいだろうね。
川村記念美術館にあるフランク・ステラのコレクションを鑑賞すると、その存在感に圧倒されるんだよね。
あれほどまでのダイナミックさはないけれど、黒とグレーのバランスが面白い作品だと思った。
写真の影部分を切り取ったような感じがするんだよね。 

シンプルなシリーズが続くよ。
五月女鉄平の作品「Pair」(2014年)。
色がとてもキレイだったので、撮らせてもらったよ。
こんなに簡単な図形なのに、タイトル見なくてもアベックだな、と分かるところが秀逸!
この場合は、もしかしたらタイトルが違っていたほうが面白かったのかも?
それにしても青い人のほう、顎あたりが「ぴゆん」って尖ってるのはヒゲなのか。
後ろ向きの女性で、毛先のハネを表しているのか。
どっちだろう、と悩みながら鑑賞していたよ。(笑)

似たタイプの絵が3枚展示されていて、どれを撮影しようと迷って決めた一枚がこれ。
あとから聞いてみるとROCKHURRAHも「これが良い」と思っていたそうで。
気が合いますなあ。(笑)
今井俊介の「Untitled」は2017年の作品ね。
出たっ、「Untitled」!(笑)
この作品もフランク・ステラを彷彿させるんだよね。
派手な色彩と強めのボーダーで不協和音を引き起こすはずなのに、そこまでクレイジーになっていないんだよね。
本当はキャンバス飛び出すくらいの勢いで、こじんまりまとまらないほうが良いんだろうね。

オランダ人のマーク・マンダースは世界が注目するアーティストなんだって?
やや、お恥ずかしながらSNAKEPIPEは初耳!
確かにこの「椅子の上の乾いた像」は、怖くて印象に残った作品だったよ。
この作品にたどり着くためには、ビニールシートで囲われた通路を歩いていく必要がある。
最初に制作途中のような男性の胸像を観てから、更にビニールシートの空間を進んでいくと、この少女の像が広い空間に鎮座している。
かなり犯罪めいた雰囲気で、ドラマ「ハンニバル」の殺人現場を思い出してしまう。
ROCKHURRAHも同じような感想を持ったようで、首の位置が怖いと言う。
そこですかさず横から撮ってみたんだけど、いかがでしょう。
やっぱり怖いよね?(笑)

アラブ系インドネシア人、サレ・フセインの作品「アラブ党」。
インドネシアにアラブ系の人がいても、おかしくないなあとぼんやり思う。 
多分どちらも同じ宗教なんじゃないかな?
そうは言っても、やはり1930年代には外国人扱いされていたマイノリティだったという。
当時の写真を元ネタとした絵画が並んでいた。
小さい絵画をたくさん並べる手法は今までにも観ているけれど、SNAKEPIPEは政治的なメッセージが絡む作品に、あまり興味が湧かないんだよね。
2014年に東京都現代美術館で開催された『「驚くべきリアル」展鑑賞』で出会ったエンリケ・マルティのような毒気が欲しいのよ。(笑)
個人的な好みだと思うけど。

手塚愛子の「縦糸を引き抜く(傷と網目)」は2007年の作品。
これは、遠目で見たり、引いた画像ではあまり意味が分からないかもしれないな。
アンティーク調のゴブラン織りから、赤い糸だけを引き抜いている作品なんだよね。
ゴブラン織りって、ほら、よくカーテンとかになってるアレよ!
赤が消えた部分の布地は、青ざめていてまるで死人状態。
布の途中からは、出血したかのように赤い糸がドヒャッと流れ落ちている。
単なる布地のはずなのに、痛々しく見えてくるよ。
これは根気の要る、職人的な仕事だよね。
既製品をほぐし、解体するという不思議な作品で、とても印象に残ったよ。
非常に女性的な作品だと思った。 

関根直子の「差異と連動」(2011年)が紙に鉛筆だけで描かれているのには驚いた!
この作品も上の手塚愛子同様、根気がないと続かない作業だよね。
抽象的な鉛筆の濃淡だけで構成されているのに、心象風景画に見えてくる。
ひっかき傷のような白い線が、心の傷のように思えるんだよね。
日本画の松井冬子も、心の痛みや悲しみのようなネガティブな感情を表現していたけれど、現代の日本女性アーティスト達は心に闇を抱えていることが多いのかなあ。
陰鬱とした重さを持った作品を気に入っている、SNAKEPIPEも同類ってことになるのか?
鏡面仕上げのようになっていた三幅対の作品も、重厚でカッコ良かったね。
家が広かったら、購入して飾りたいくらいだよ!(笑)

最後は「ただいま」の作品になるんだね。
宮島達男の「それは変化し続ける それはあらゆるものと関係を結ぶ それは永遠に続く」は、東京都現代美術館のために1989年に制作されたという。
20年間、赤色発色ダイオードが光り続けていたために、修復が必要だったらしい。
SNAKEPIPEはあまりじっと見つめているとクラクラしちゃうので、何度か鑑賞している作品の光が鈍っていることに気付いてなかったけどね。(笑)
そういえば、北浦和にある埼玉県立近代美術館で遭遇した、荷物を入れるロッカーにあった謎の物体!
この作品に似てるよね?
ROCKHURRAHと話しながら検索すると、やっぱり宮島達男の作品だったことが判明!
何のクレジットもされてなくて、ロッカーに放置されてるだけなんだよね。
動画を撮っていたので載せておこうか。


3年ぶりの東京都現代美術館、リニューアルというので期待していたけれど…。
SNAKEPIPEが勝手に想像していたリニューアルとは違っていたみたい。
施設(例えばトイレなど)は、全く変更はなく前のまま。
あまり美しいとは言えない状態だったし。
先にも書いたように撮影の可否が分かりづらかったし。
ボールペンを持っただけで係員が飛んできたのには驚いた!
ボールペン使っちゃいけないなんて知らなかったよ。
荷物も注意を受けちゃったしね。
そんなに注意事項がいっぱいなら、HPに載せておいて欲しいよ。
それなのに、子供が展示作品の台に乗った時には注意してなかったけどね?
この差は一体なに?と聞いてみたいもんだ。
ちょっとお怒りモードのSNAKEPIPEだよ。

コレクション展は満足だったけれど、企画展にはガッカリだった。
リニューアル・オープンを期待して待っていただけに、企画にも美術館側の対応にも「前より悪くなった」感が否めない。
不手際が多くて申し訳ない、と謝っていた係員は、恐らく多くのお客さんから説明不足を指摘されていたに違いない。
嫌な気分が続くと、次回の来館を控えたくなるほどだよ。
大好きな美術館だったのに、残念でならない。

収集狂時代 第12巻 David Lynch フィギュア編

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【特殊メイクアーティストCarl Lyonが手がけたリンチの像!】

SNAKEPIPE WROTE: 

先週に引き続きデヴィッド・リンチのネタをお届けしよう!
リンチが監督した映画やドラマから、どんなフィギュアが制作されているか調べてみたよ。
映画からのフィギュアといえば、例えば「スター・ウォーズ」 の中から選ばれた王道のキャラクターを思い浮かべるよね。
ダース・ベイダーとかチューバッカとかね。
リンチの場合は、ある一部に熱狂的なファンを持つ通好みの作品がほとんど。
そんなマニアックな映画なのに、フィギュアが作られているのか興味があったんだよね。 (笑)
検索したら、意外なことにあったんだよ!
リンチのファンだったら欲しくなる逸品を紹介していこう。

まずはリンチの処女作「イレイザーヘッド(原題:Eraserhead 1977年)」から。 
「イレイザーヘッド」の主人公であるヘンリーのフィギュアね。
演じていたのはジャック・ナンス。
ヘンリーの場合は、逆立った髪の毛だけが特徴なので、そこにさえ気を配れば「なんとなくヘンリー」っぽいフィギュアが完成しそうだよね。(笑)
画像では商品化されたフィギュアの詳細までは分からないけど、そこまでジャック・ナンスには似てないように見える。
黒いスーツに白いシャツという、これまたありふれた服装だったために「らしさ」からは遠のいてしまったかもしれないね?
それでもファンは、ヘンリー人形を手に入れたい思いを強くするはずだよ!
だってSNAKEPIPEも並べておきたいって思っちゃうからね。

孤独なヘンリーが、一人で寒い部屋の中で膝を抱えている。
視線の先にあるのはラジエーター。
これは日本ではあまり馴染みがないけれど、アメリカやドイツでは一般的な暖房器具になるみたいだね。
そのラジエーターの中でショーが繰り広げられるのである。
「In Heaven Everything is fine」(天国では全てオッケー)
ごつごつと異常に大きく膨らんだ頬を持つ、まるでマリリン・モンローが着ていたようなドレスを着た少女が歌うのである。
その様子をじっと見つめるヘンリー。
そしてヘンリーは、ラジエーターの中で少女との共演を果たすのである。
まさかこの少女(Lady in the Radiator)のフィギュアまであるとはね!
マニアにはたまらない逸品だよ。

そしてもちろん「イレイザーヘッド」での主役(?)である赤ん坊のフィギュアもあるんだよね。
大きさ約10cmだって。
上に紹介したフィギュア2つとも同じメーカーが出しているのかなあ。
パッケージが近いように見えるけど、ところどころに違いがあるんだよね。
まさかと思うけど、3社のメーカーそれぞれが独自に商品化してるのかな?
この3点セットと、「あの柄」のジュータン(ファンなら分かるはず)、小さいラジエーターがあったら完璧じゃない?
これで「イレイザーヘッド」の世界を我が家でも再現できることになるね。
ちなみにこの赤ん坊は$249.99、日本円で約27,000円くらい。
ちょっとお高く感じるけど、ファンならやっぱり欲しいよね。

別の赤ん坊アイテムも発見したよ。
なんとキーホルダー!(笑)
オーストラリアのMillyという女性がハンドメイドで制作しているようで。
ちゃんと販売されてるんだよね。
大きさ約8.5cmのベイビーは、一体¥3,360だって。
日本までの送料が入ると¥5,000くらいかな。
こんなキーホルダー持ってる人を見かけたら、興奮のあまり、ぎゃーっと叫んで握手しちゃうかも?(笑)
このMillyさん、他にもリンチネタからのグッズを制作していて、見ているだけでも楽しくなっちゃうよ。
グッズにするキャラクターの着眼点が面白いんだよね。

続いては「ブルー・ベルベット(原題:Blue Velvet 1986年)」から、フランク・ブースのフィギュアね!
演じていたのはデニス・ホッパーで、画像左に小さく顔が載っているよ。
フランクは何かしらのガス状のものを鼻から吸い込んで興奮状態に陥いるんだけど、その透明マスクまで再現されているんだよね。
左手にピストル持ってるバージョン(左)と、青いベルベット切れ端を持ってる右の画像と小物まで用意されているところが秀逸!
残念なのは、顔が似てないことかな。(笑)

同じシリーズで「オカマのベン」まであるんだよね。 
ベンを演じていたのはディーン・ストックウェル。
いつも「薄目」というか「半眼」にしていて、ロイ・オービソンの「In Dreams」を口パクで歌う。 
そのシーンを再現しているフィギュアと、先程登場したフランクとの2ショット!
あらま、今回のフランクは左手にビール持ってるよ。(笑)
小物に凝るところに演出力の高さが光るよね!

次はフランクとベンとドロシーの3人セットね!
なんとこれは落花生で作られてるんだって。
落花生アーティストSteve Casinoの作品で、直径14cmx高さ15cmの大きさだという。
3人のディテールはもちろん素晴らしいんだけど、SNAKEPIPEが注目したのはバックにある耳!
病院からの帰り道、何気なくジェフリーが拾った人間の耳までも再現しているところに拍手を送りたい。(笑)
なんとこのフィギュア、販売されていてお値段が575€、日本円で約71,000円とのこと。
元が落花生と聞くとお高い感じがしちゃうけど、このクオリティの高さなら納得かな?

最後は「ツイン・ピークス(原題:Twin Peaks 1990年〜)」から。
今まで数えきれないほどの回数を鑑賞した「ツイン・ピークス パイロット版」。
25年後の世界で突然現れる「Another Place」から来た赤い服の男。
赤い服の男が音楽に合わせてダンスを踊っている傍らで、クーパー捜査官に耳打ちするローラ・パーマー。
全く意味不明のまま終了してしまうパイロット版で、最も印象的なシーンなんだよね。
そのシーンを再現しているフィギュアが存在していたとは!
90年代に制作されたレア物とのことだけど、販売されている(いた?)ようだね。
お値段まではわからなかったけど、体全体のバランスや踊っているシーンを切り取ったポーズ、床のデザインまで含めて素晴らしい出来だよ。
後ろ姿の画像も載せてみよう。
あのダンスの様子がよく分かるよね。
これはかなりのお宝グッズ!
今からでもオークションに参加したいくらい。(笑)

小さい人を紹介したので、今度は大きい人にしてみようか。
いつもウエイターのような服装をしていて、クーパー捜査官の味方になっているように見える巨人のフィギュアも見つけたんだよね。 
2017年版のシーズン3「The Return(後に改題されてリミテッド・イベント・シリーズ)」にも登場していたね。
巨人の服装や床のデザインは問題ないんだけど、この巨人の顔は似てないよ。(笑)
結構特徴がある顔だと思ったけど難しかったのかな。
これもまたファンとしてはコレクションに加えたい逸品なんだよね。

最後はこちら!
「丸太おばさん」こと「Log Lady」が大事に抱えていたのが丸太だよね。
この「丸太」のフィギュアを見つけたよ。
えっ、丸太だけ?(笑)
この丸太、パッケージに「TWIN PEAKS」と書いてあり、「丸太おばさん」の顔写真が載っているから分かるけど…。
もし「丸太」だけになったとしたら、ただのカルパスにしか見えないよ!(笑) 
「丸太おばさん」のフィギュアと組み合わせるためのグッズなのかもしれないけど、その場合は「丸太なし」の「おばさん」フィギュアが販売されてることになるんだよね? 
わざわざ別売りにしなくても良いのに、と思うのはSNAKEPIPEだけかな?
「丸太」フィギュア、見た瞬間に大笑いさせてもらったので、良しとするかな。

今回はリンチに関係するフィギュア特集にしてみたよ!
探している時から楽しくて、コレクションしたくなる逸品揃いで大満足だったね。
恐らくこの記事を一番喜んでいるのはSNAKEPIPE本人なんだろうな。(笑)

「デヴィッド ・ リンチ_精神的辺境の帝国」展 鑑賞

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【GYREビルの中央吹き抜けにオブジェと化した大量のリンチ・ポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

元号が変わった矢先、不幸なニュースが飛び込んできた。
遠藤ミチロウの訃報である。
教えてくれたのは長年来の友人M。
遠藤ミチロウは少女時代のSNAKEPIPEに影響を与えた人!
2014年に「ふたりのイエスタデイ chapter02 / The Stalin」という記事で思いを綴っているよ。

ザ・スターリンの解散ライブ以降、ミチロウ本人のライブに参戦したこともない。
それでもやっぱり応援しているし、ずっと頑張ってもらいたいと思っている。
ザ・スターリンは今でも、SNAKEPIPEの核となる存在だからね!

そんな文章を載せているSNAKEPIPE。
訃報を耳にした途端、急に力が抜けてしまった。
実際に亡くなったのは4月25日、膵臓がんのためだという。
すぐにザ・スターリンを聴き直す。
きっとこれからも、何度も聴くだろう。
SNAKEPIPEの心と記憶の中では、ずっとミチロウは生き続けてるからね!

悲しい気分を払拭するためではないけれど、ROCKHURRAHと共に表参道に向かったのは「デヴィッド ・ リンチ_精神的辺境の帝国」展のため。
今年のGWは例年とは違い、スカッと晴れた日が少なかったよね。
この日も家を出た途端に雨が降り出し、肌寒いのか思うと急に晴れ間が見えて汗ばむ陽気に変化。
一番服装に困る気候なんだよね。

GW中はもっとたくさんの人が表参道〜原宿界隈を闊歩しているのかと思いきや、予想よりも少ない人出だったのが意外だった。
おかげでスムーズな移動ができて良かったよ。
今回の展覧会が開かれている「GYRE GALLERY」 、今まで行ったことがないかも?
そもそも読み方が分からないし。(笑)
「ジャイル・ギャラリー」で良いみたいなんだけど、場所は一体どこ?
調べてみるとMomaのショップが入っている、あのビルだったんだね。
何度か訪れているはずだけど、ギャラリーがあったことは覚えてないよ。

ビルの1階からエスカレーターで3階を目指す。
中央の吹き抜け部分に、なにやらオブジェのような物体が。
じっくり見ていると「LYNCH」の文字が読める。
あっ、リンチの展覧会のためのオブジェだったんだ!
まずはその様子を写真に撮ってから、会場に向かう。

3階には非常に多くの行列ができている。
まさかリンチの展覧会を鑑賞するための行列?
ひとまず行列の先を見極めようと歩き始める。
「ナニ?ドコイク?」
タキシードを着た黒人に呼び止められる。
「ギャラリー、アッチ」
なんと、行列はPLAY COMME des GARÇONSのためのものだったみたいで。
服買うために並ぶんだ!
しかも用心棒役にあえて黒人雇ってるとは!
その昔、裏原系のショップで同じようにガタイが良い男を用心棒として入り口に配置しているのを見たことあったけど、ギャルソンも同じようなことをしているとはね。
その行為に驚きながら黒人に指さされた方角に目をやると、ギャラリーは薄暗くて開館していないかのようにひっそりしている。 
黒人にお礼を言い、ギャラリーに足を踏み入れる。

受付に若い女性が座っていて、しっかりした紙質のフライヤーを手渡してくれる。
あまりにもシーンとしているので、かなり密やかな声で
「こちらは撮影オッケーですか」
と質問すると、大丈夫との答え。
受付の女性まで小声になっているのがおかしい。(笑)
オッケーと聞けばバシバシ撮影するのみよっ!
ほんの数人しか入っていない会場も好都合!
ROCKHURRAHと鑑賞を始めたのである。 
今回は「ペインティング7点、ドローイング3点、工業地帯の写真22点、水彩画12点」という合計44作品の展示と映像作品が上映されていた。
気になった作品を紹介していこう!

「BOB’S STRING THEORY」(2000年) からスタート。
リンチがボブという名前を使う場合、最初に思い出すのは「ツイン・ピークス(原題:Twin Peaks 1990年-1991年)に登場したボブのことになってしまうよね。(笑)
「ツイン・ピークス」のパイロット版は1989年に公開されているので、それから約10年後のボブということか。
タイトルを翻訳すると「ボブのヒモ原理」? 
A地点からB地点までを結ぶ線と、まるで血痕が流れ落ちたような怪しいシミ。
ROCKHURRAH RECORDSでリンチ・フォントと命名した、リンチの文字が無邪気に見えるだけに余計恐ろしく感じてしまうんだよね。 
リンチが何を言わんとしているのかは不明だけど、不吉な印象を持ってしまう。

「WHEN SOMEBODY LOVES YOU」(2000年)も上と同じ年に制作され、同じような土色をバックにしている作品。
ぎごちなくマス目に区切られたキャンパスに、タイトルが書かれている。
「誰かがあなたを愛する時」という、ロマンチックに捉えることも可能なタイトルにも関わらず、なんでしょうこの不気味さは!(笑)
絵の具をチューブのままひねり出したかのような厚みを持った中央の物体。 
変に光沢が残っているため、ぬめぬめしたいや〜な雰囲気なのよ。
横から見たところの画像も載せておこうか。
ほら、分厚さがよく分かるでしょ?
リンチの頭の中にはどんなビジョンがあったのか、想像してみようかな。

同じような「ぬめぬめ」が描かれている「GARDEN IN THE CITY OF INDUSTRY」(1990年)。
「工業都市のガーデン」というタイトルも、 色調も非常に好みの作品だよ。
かつて表参道にあった東高現代美術館にて1991年に開催された「デヴィッド・リンチ展」でも鑑賞しているSNAKEPIPE。
リンチ本人が会場入りし、初期の映像作品を鑑賞する会に抽選で当たり、至福の時を過ごしたっけ。(遠い目)
うっひゃー、今から29年も前のことになるとは!
実はその時にも長年来の友人Mが一緒だったので、これまた長い付き合いだこと。(笑)
そして今から思えば、小さく切り刻まれキャンパスに貼り付けられたアルファベットは、「ツイン・ピークス」で爪の中から出てきた「R」などの切り文字のヒントだよね。
今頃気付くのは遅いけど!

「DEAD SQUIRREL」(1988年)も東高現代美術館で鑑賞していた作品。
「死んだ栗鼠」という文字が5行に渡って貼り付けられているんだよね。
まるでお経を唱えてるようじゃない?
リンチはTMと呼ばれる超瞑想法を実践し、学校で教えるための資金集めとして財団まで設立するほど熱心なんだよね。
怒りっぽい性格が瞑想を行ううちに直っていったというエピソードを読んだことがあるよ。
ツイン・ピークスにも「チベット死者の書」を彷彿させるセリフも出て来たので、リンチと精神世界は切っても切れない関係にあることが分かる。
そんなことを思い出しながら、この作品を観たため、マントラを唱えているように錯覚してしまったのかもしれない。
マントラにしては不吉な言葉だけどね。

2012年にラフォーレ原宿で開催された「好き好きアーツ!#18 DAVID LYNCH—CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE」でも鑑賞した三幅対。
「DOG BITE」(2012年)である。
油絵で三幅対といえば、当然のように思い出すのがフランシス・ベーコンだよね!
そのベーコンさんの作品が「好き」と公言しているリンチなので、影響を受けるのも納得。
横向きの少女(?)が犬に噛みつかれ、顔が崩れるという経過を表しているように見えるんだけど違うかな?
あまり意味を考えなくても良いように思うけど、不思議な作品であることは間違いない。(笑)

水彩画は全てモノクロームの作品だった。
「MAN VISITOR」(2008-2009年)は展示作品の中で黒が強く、好みだったよ。
「男の訪問者」というタイトルから、リンチの映像作品に出てくる異形の男たちが浮かんでくる。
 「ツイン・ピークス」のボブ、「ブルー・ベルベット(原題:Blue Velvet 1986年)」のフランク、「ロスト・ハイウェイ(原題:Lost Highway 1997年)」のミステリー・マンとかね。
不穏な空気を纏った、なるべくなら関わりたくないタイプの男たち。
そんな彼らを黒い影で表現したように見える魅力的な作品だよね。

2000年頃に廃工場を写した作品群。
2012年に鑑賞したラフォーレ原宿の時はポーランドの工場の写真が展示されていたっけ。
今回はアメリカなのかな。
インダストリアル好きのSNAKEPIPEも大好きな工場地帯。
撮りたくなる気持ちがよく解るよね。 

これは配電盤なのかな。
鉄材の雰囲気もさることながら、上から突き出しているパイプ状のもの、後ろの崩れた壁も全て最高!(笑)
こんな場所に遭遇したらフィルム1本くらい撮ってたな。
写真になると硬質になるのに、絵画ではぐんにゃり曲がったフォルムを多く描くことが多いリンチ。
別々に鑑賞したら、同じ作者とは思えないんじゃないかな。

この画像はSNAKEPIPEがGYREギャラリーで撮影したものなんだけどね。
シルバー色でピカピカ光る物体が分かるよね?
この写真は、こんな感じで横位置で展示されていて、その時は特別不思議に感じていなかったんだけど…。
帰宅後調べていたら、同じ画像の縦位置バージョンを発見!
これってどう見てもこの位置が正解じゃない?(笑)
ほとんどの写真が横位置だったから、展示する人が気付かなかったのかもしれないけど。
実際鑑賞している時には、SNAKEPIPEもなんとも思わず通り過ぎてしまったくらいだからね。
まさかの展示ミス?(笑)
これって誰も指摘してないのかな。
教えてあげたほうが良いのかしら?

会場中央に鎮座していたのは、なんとブラック・ロッジ!
小さな小屋になっていて、その中で映像が上映されていた。
およそ9分の映像なので、人が入れ替わりロッジに入って鑑賞する。
前の人を待って、中に入ると床の模様がっ!
この小屋を制作したのは日本人3人組のようだけど、粋な計らいだよね。(笑)
気分はツイン・ピークスの中だもん。
そしてリンチの映像が流れる。
「POZAR」(2015年)である。
ポーランド語で火を表すらしい。
映画「インランド・エンパイア(原題:Inland Empire 2006年)にも登場し、2012年の展覧会でも写真が展示されていたポーランド。
きっと何かリンチにインスピレーションを与える国なんだろうね。
そういえば「インランド・エンパイア」について感想をまとめてなかったよ。
いつかブログにアップしたいな!

リニューアル記念としてリンチの展覧会を企画してくれたGYREギャラリーに感謝だね!
無料でここまでの展示をみせてくれるなんて、素晴らしい限り。
冒頭に載せた画像にあるリンチのポスターも、無料で配布してくれるサービスにも感激したよ。
ちなみにこのポスター、非常に分厚い紙質なので持って帰るのに一苦労。
髪の毛を結ぶような太いゴムがないと丸めることが難しいんだよね。
持って帰ってくれてありがとう、ROCKHURRAH!(笑)

気分はすっかりリンチになってしまったSNAKEPIPEは、帰宅後リンチに関連した映画を所望する。 
「狂気の行方(原題:My Son, My Son, What Have Ye Done 2009年)」の存在は前から知っていたのに、何故だか観るのをためらっていた作品なんだよね。
監督は「アギーレ/神の怒り」で有名なヴェルナー・ヘルツォーク。
ヘルツォーク作品って実はそんなに知らなくて。
つい最近観たのが「カスパー・ハウザーの謎(原題:Jeder für sich und Gott gegen alle 1974年)」かな。 
TSUTAYAの発掘良品コーナーに並んでいたからね。
ヘルツォークへの特別な思い入れはなく、「狂気の行方」もリンチの名前につられているだけの話。
ヘルツォーク監督ファンの皆様、ごめんなさい!
リンチの肩書は「製作総指揮」。
いわゆるエグゼクティブ・プロデューサーなんだけど、映画権を持っていて監督よりも偉い人、ということで良いのかな。
名前は出てきたけど、映画との関わり方はよく分からないよね。
まずはトレイラー(英語版)を載せておこうか。 

この映像からリンチっぽさが垣間見えたでしょ?
大きくうなずいた、そこのあなたっ!
さすがはよく分かってらっしゃる!(笑)
ウィレム・デフォーとグレイス・ザブリスキーが出演しているんだよね。
ウィレム・デフォーは「ワイルド・アット・ハート(原題:Wild at Heart 1990年)」でボビー役だったし、グレイス・ザブリスキーは「ツイン・ピークス」でのローラのお母さん役、「ワイルド・アット・ハート」「インランド・エンパイア」にも登場しているリンチ組といって良い女優さんだよね。
この2人の出演によりリンチ色を感じたSNAKEPIPEだったよ。
映画について書いてみようか。
まずはあらすじを。 

サンディエゴの住宅街で殺人事件が発生。
母親を殺害したブラッド・マッカラムは、人質を取って自宅に立てこもっている。
事件を仕切るヘイヴンハースト刑事たちは、ブラッドの説得に当たる一方で、ブラッドの周辺人物から聞き込みを開始。
過干渉な母親と2人で暮らしていたマザコンのブラッドは、南米に旅行に行った後に人格が変わったようになってしまい、異常な行動を繰り返していたという。
婚約者のイングリッド、舞台演出家のリー・マイヤーズ、向かいの家のロバーツ母娘たちが語るブラッドの姿とは。
そして、事件の真相とは。(allcinemaより)

1979年にアメリカで起きた実際の事件(実母殺害事件)から着想を得たサイコスリラー作品とのこと。
この文章にヘルツォークとリンチの名前が加わったら、気になるよね?
気分はリンチ、というSNAKEPIPEにぴったりの映画!(笑)

主役であるブラッドを演じたのはマイケル・シャノン。(画像中央)
ギレルモ・デル・トロ監督の「シェイプ・オブ・ウォーター(原題:The Shape of Water 2017年)」で、高圧的な軍人役を演じていたシャノン。
そのせいか「嫌な人」というイメージがついてしまっている。(笑)
「狂気の行方」ではマザコン男なんだけど、精神世界を求めて南米で修行するというシーンもあり、理想と現実の間でもがいている様子が分かる。
勝ち気で頑固なくせに脆さもある、言ってしまえばワガママなヤツ。
そんな男にも婚約者がいるんだよね。
イングリッド(画像右)は、人が変わってしまったブラッドに辛抱強く付き合っている。
ブラッドと別れて、他の人と幸せになったほうが良かっただろうに、と思ってしまうSNAKEPIPE。
ブラッドの母親役が、我らがザブリスキーなんだよね!(笑)
ワガママ息子に手取り足取り、成人しているのにまだ小さな子供に接するような干渉ぶり。
そしてザブリスキー得意の「固まり笑い」とでも名付けたくなる、怖い笑顔を見せる。

映画としては実に単純な話だけれど、そこにブラッドの内面を忍ばせるようなエピソードが加わることで「どうしてこんな事件が起こったのか」を伝えようとしているようだ。
どうして「ようだ」と書いたかというと、そのエピソードを知ってもSNAKEPIPEにはブラッドみたいな男の心の動きを理解できなかったから。
結局のところ、最初で最後の母親への反抗が殺害だったのかな、と思ったくらいで。
いい年こいて、母親に甘えてる男のことなんてあまり知りたくもないんだよね。(笑)
この映画をリンチが監督してたらどうなってただろう?
もっと心の暗闇に焦点を当てて、共感せずとも印象的なシーンを映像化していたかもしれないよね。
結局、エグゼクティブ・プロデューサーとしてどんな形で関わったのか分からないままだったけれど、リンチの名前がクレジットされた映画はなるべく観ていきたいと思う。
他にもまだ未鑑賞の映画あるからね!

今回は敬愛するデヴィッド・リンチ特集にしてみたよ。
映画、絵画、写真に音楽と幅広い活動を行っているリンチは、真のアーティスト!
次はどんな形でアートを見せてくれるのか楽しみだ。