田村彰英—夢の光/鋤田正義—SOUND&VISION

                   

20120812_top【東京都写真美術館の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

「鋤田正義の展覧会があるよ!」
とROCKHURRAHがやや興奮気味に話しかけてくる。
鋤田正義って誰?(笑)
どうやら写真家のようだけど、SNAKEPIPEは全く今まで名前すら知らない方。
まずはROCKHURRAHに語ってもらいましょ。

鋤田正義の名前を知らなくても、70〜80年代のロックやパンク、ニュー・ウェイブのレコードを買い漁った人ならば、必ずどこかでこの人の写真を見た事があるに違いない。
それくらいにロックの世界では有名な写真家だ。
ROCKHURRAHもデヴィッド・ボウイ「Heroes」のレコード・ジャケットをはじめ、T-REX、イギー・ポップYMOなどなど、 数多くの ミュージシャンのジャケットや音楽雑誌などで昔から知っていた。
「ロックマガジン」や「Zoo(音楽雑誌「Doll」の前身)の表紙 とかでもこの名前は有名だったもんね。
実はロック名盤というような王道のレコードをほとんど持ってなかった、ひねくれ者のROCKHURRAHでさえ知ってるメジャーな写真家だったわけだ。
海外でここまで活躍するSUKITA恐るべしと思ったものだ。
誰でも知ってるメジャーどころのミュージシャンだけでなく、ジェームス・チャンスのコントーションズや東京ロッカーズ、また「時に忘れられた人々(ウチのブログのシリーズ記事)」も真っ青な「完全に忘れてたよ」と言いたくなるような時代の仇花ミュージシャンまで分け隔てなく、カッコ良く撮ってるところがすごい。<以上、ROCKHURRAH談>

うーん、なるほど。
展覧会が開催されるのは東京都写真美術館とのことなので、まずはHPで情報を集めることにする。
「デヴィッド・ボウイのこの写真は観たことあるよ!あっ、YMOも!」
これは是非行ってみよう!と話が弾む。
写真美術館での他の展示はなんだろう、と調べて非常に気になったのが田村彰英の展覧会。
なんと日本にある米軍基地を撮った作品が展示されてるなんて、これも絶対鑑賞しなければ!
ROCKとミリタリー好きのROCKHURRAHとSNAKEPIPEにピッタリの企画だね!

世の中はお盆休みに入っているせいか、東京の人口が普段より少ないように思える8月11日。
電車も恵比寿界隈もガランとしていて心地良い。
いつもこれくらい密度が低いと過ごし易いのになあ。(笑)
ただしいつ雨が降ってもおかしくない高い湿度は不快だね。
降るなら降ってしまえばすっきりするのに。

前回東京都写真美術館に来たのは、2011年10月「畠山直哉展 Natural Stories」なので、約1年ぶりということになるね。
もしかしたらその時と現在の東京都写真美術館のチケット販売方法違ってないかな?
前は展覧会単品と全てのフロア鑑賞券みたいな2種類だったように記憶しているんだけど、今回は3つの会場で料金が発生する展覧会を開催していたせいか、2つ以上展覧会を鑑賞したい場合の料金はお高め。
ちなみに3つの会場全てを鑑賞する場合には1名様1700円もかかる計算だよ!
こんな料金設定だと、何かしらの値引きがある人以外は来館しなくなっちゃうよ? ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは田村彰英と鋤田正義の2つ鑑賞したいので1250円也。
まずは地下会場で開催されている鋤田正義から鑑賞することにした。

あとから気付いたんだけど、鋤田正義の展覧会はこの日が初日だったのね。(笑)
時間が割と早めだったせいもあり、お客さんの入りはそこまで多くなかったので鑑賞し易いね!
値段が高めのせいだからか、お客さんの年齢もやや高め…。(笑)
はっ、その「高めの年齢層」の中にROCKHURRAHとSNAKEPIPEも入ってるってことか!(ガーン)
鋤田正義の有名な作品が70年代から80年代というのも理由なんだろうけどね。
いや、モデルが有名人だから写真がすごい、というだけじゃないよ!
ファッション雑誌に掲載されたという広告写真の素晴らしさったら!
1968年の作品とのことだけど、今観ても斬新でカッコ良いんだよね。
こういう業界からスタートしてるから、やっぱりセンスが違うんだろうね。

20120812_01鋤田正義の作品として最も有名なのは、やっぱりデヴィッド・ボウイなんだろうね。
会場入ってすぐの壁一面もボウイ。
山本寛斎デザインのコスチュームに身を包んだボウイは、両性具有の謎の美しい人物。
そして「Heros」のジャケット写真のコンタクトプリントが興味深い。
様々な表情を見せるボウイもさることながら、選択したコマに赤いダーマトグラフで印が付いているのに目が釘付け!
採用されたコマも、実際に使用されている時にはトリミングされていたとは!
せっかく6×6で撮影しているのに、残念だねえ。

他に展覧会で面白かったのが、ポスターみたいに作品を天井から床まで下げて展示していたブース。
様々なアーティストを撮影してるんだねえ。
そしてROCKHURRAHと名前当てクイズをするのも楽しかった。
さすがROCKHURRAHはほとんどのミュージシャンの名前を言い当ててたよ!
顔を見ても名前が思い出せない人がいたり、普段とは全然違う顔で写っている人を発見したりもしたけどね。
日本人と外国人の割合が半々くらいで、いかに鋤田正義が海外でも有名なのかが良く分かる。

肖像写真家、と聞いてパッと浮かぶのはナダールアウグスト・ザンダー(古い!)、ハーブ・リッツアニー・リーボヴィッツかな。
世界の著名人を撮影している、有名な写真家達だ。
日本人で世界的に有名なアーティストを撮影している人なんて今まで全く知らなかったので、今回の展覧会にはびっくりした。
鋤田正義にはもっと頑張ってもらいたいなあ。
ただ、2012年の現在、どうしても撮影したいと思えるような人物はいるんだろうか?
鋤田正義に是非聞いてみたいものだ。

20120812_02さて次は展覧会場2階で開催されている田村彰英「夢の光」展へ。
実をいうと田村彰英の名前は昔買っていたアサヒカメラなどで見かけた気がするんだけど、「代表作は何?」と聞かれても答えられないSNAKEPIPE。
あまり予備知識がないまま会場入りする。
ではここで田村彰英のプロフィールをご本人のHPから引用させて頂くことにしよう。

1947年 東京生まれ。
20歳の時に撮影した作品が、ニューヨーク近代美術館の永久保存になる。
多くの作品が東京国立近代美術館、山口県立美術館、東京都写真美術館、川崎市市民ミユージアムなどに永久保存になる。
その他多くの写真展を開催。
東京綜合写真専門学校、東京造形大学の講師として30年間歴任。
黒澤明監督作品の応援スチールとして、「影武者」「乱」「夢」「八月のラプソデイー」に参加。
アサヒカメラ、日本カメラのフォトコンテスト審査員歴任。2002年度全国高校総合文化祭,写真部門審員長担当。
2003年度日本カメラフォトコンテスト、カラースライドの部審査員担当。

東京綜合写真専門学校に在学していた時から、校長であった重森弘淹から「徹底して感性的な写真家」との高い評価を受けていたと書いてある。
40年以上続く写真活動の軌跡をたどった今回の展覧会は見ごたえ充分!
それぞれのセクションごとに感想をまとめてみようか。

『BASE』
1960年代後半から1970年代前半にかけて、国内の米軍基地を撮影したシリーズ。
航空雑誌を見てカメラマンになりたいと思い写真を始めたと語っている飛行機好きの田村彰英らしく、「BASE」の主役は飛行機だ。
確かに「大人社会科見学—横田基地日米友好祭2010—」の時に、間近に見た戦闘機は金属的な輝きと無駄のないフォルムが美しかったからね!
そしてアメリカへの憧れというのも良く分かるなあ。
モノクロームで表現されるアメリカらしい白いフェンスの写真がカッコ良い!

『家』 『道』
「家」は1967年から2年を費やして造成された宅地に家が建っていく様子を撮影したシリーズ。
「道」は1976年から5年かけて横浜横須賀道路が作られていく様子を写したシリーズとのこと。
定点観測、ということになるよね。
長い年月をかけて、何度も同じ場所を繰り返し撮影するという行為だけでもすごいのに、それを作品にしちゃうところがもっとすごい!(笑)
そしてi家」が前述したニューヨーク近代美術館のディレクターだったジョン・シャーカフスキーの目に留まることになるのである。
きっと田村彰英という人はコンセプトを考えるのも得意な人なんだろうね。
衝動だけで撮影しない写真家って、右脳と左脳の両方が発達しているんだろうなあ。

『午後』
1971年から1973年までの3年間、30回シリーズとして美術手帳に連載されていたシリーズとのこと。
今回の展覧会の中で一番SNAKEPIPEが感銘を受けたのがこのシリーズなんだよね。
モチーフの選択。
構図の決め方。
光と影のバランス。
そのどれをとっても非の打ちどころがなく、完璧としかいいようがない。
きっと写真を良く知らない人が観たら
「この写真は一体何?」
としか思わないかもしれない。
でも写真を作品として完成させたいと思って撮影をしたことがある人なら、きっとこのシリーズを観て歯ぎしりするはずだ。
SNAKEPIPEも観ていて悔しくなった。
だって、SNAKEPIPEが目指していた方向の全てが、先に撮影されていたことに気付いたからね。

『湾岸』
HouseやRoadと同じような定点観測のスタイルだけれど、ポジフィルムを使用し2枚1組で展示する方法にしたシリーズ。
2枚の写真の違いは時間的なズレの場合と、視点的なズレの両方があり、まるで間違い探しをするように鑑賞してしまった。(笑)
この撮影方法や展示方法も、いわゆる写真家の作品というよりは、現代アートに属している感じがするね。
レンズに付けたフィルターのせいなのか、カラーの色味がとてもキレイだった。
このシリーズのポストカードがあったら購入したかったなあ!

「湾岸」シリーズのプリント方法が「発色現像方式印画」と書かれているのが非常に気になる!
今まで観たことがある写真の展示で、こんな種類あったのかなあ?
「湾岸」のプリントの色味のせいなのか?
何か新しい方法なのか?
帰宅してから調べてみて納得。
結局は普通のカラー印画紙のことだったんだね。
最近はモノクロ写真の場合にもシルバー・ゼラチン・プリントって書いてあるように、いわゆる「暗室に入って現像した印画」のことを指すとのこと。
フィルムを知っている世代には当たり前のことだけど、最近はデジタルカメラを使い、プリンターで印刷する写真もあるからね。
そのための表記だったと判って愕然としちゃったよ。
これもまた時代、なのかねえ。(とほほ)

『赤陽』
8×10カメラに100年以上前に製造されたレンズを使用して風化した木造建築を撮影したシリーズ。
1989年よりスタートした元号「平成」に逆らうかのように、「赤陽」は過ぎ去った昭和へのノスタルジーだ。
少しでも昭和的な風景を残しておきたい、という記録者としての意味もあっただろう。
そして恐らく一番大きな理由は「昭和が好きだから」じゃないだろうか。

『名もなき風景のために』
撮り方によってはドキュメンタリー写真なんだろうけど、田村彰英の手にかかると単なる記録写真じゃなくて作品になってしまうから不思議だ。
カメラマンと写真家の違いがよく解る。
そして2011年に鑑賞し、残念に感じた畠山直哉にもこんな仕事をして欲しかったな、と改めて思ってしまった。

『BASE2005-2012』
デビュー作であるBASEから40年を経て、また田村彰英が基地を撮影しているシリーズ。
やっぱり好きな物は好き、という感じで戦闘機の写真が並ぶ。
うん、解るよ!だってカッコ良いもんね!(笑)
今回は6枚しか展示されていなかったので、まだシリーズとしてどうのと感想は言えないけれど、きっとまた違った切り口で魅せてくれるように思う。
どんなシリーズが出来上がるのかとても楽しみだ。

今回鑑賞した2人の写真家共、フィルムを使って撮影をしてるんだよね。
デジタルでは表現しきれない部分を再認識することができたように思う。
SNAKEPIPEもかつてはフィルムを使用し、自分で現像~焼き付けやってたからね。
金銭的な問題、省スペース化、簡略化が技術の進歩を生んだんだろうけど、お金かかっても、場所を取って面倒なことでも、残しておいたほうが良いアナログなことっていっぱいあるんだろうね。
SNAKEPIPEも昭和に戻りたくなったよ。(笑)

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