ジェームス・アンソール~写実と幻想の系譜~

                   

20120930-top1【今回の展覧会に行くキッカケになったアンソールの「陰謀」】

SNAKEPIPE WROTE:

とある小冊子をたまたま見ていた時に、その中で紹介されていたのがジェームス・アンソールの展覧会だった。
そこに載っていたのが上の絵、「陰謀」だったのである。
「仮面や骸骨などのグロテスクなモチーフ」や「シュルレアリスムや表現主義に影響を与えた」など、SNAKEPIPEの興味を惹く言葉がズラリと並んでいる。
ジェームス・アンソールなんて画家、今まで聞いたことがない!
これは観に行かなければ!(笑)

そして出かけた新宿西口にある損保ジャパン東郷青児美術館
この美術館に行くのは全く初めてである。
それにしても美術館名、長くないか?(笑)
西口に行くことがあっても、勤務でもしていない限りは、あのビル群に用事がある人ってあんまりいないよね?
損保ジャパンビルの42階に美術館があることすら知らなかったSNAKEPIPE。
ROCKHURRAHも同じだったようで、わざわざ美術館に行く道のりを検索してくれていたよ。
「ビルの正面から左に曲がって4つ目の階段から上がると美術館入り口に出る」
という細かいところまで教えてくれて、ありがとう。(笑)
歩いている途中で話しかけたら
「数えているんだから話しかけられたらわからなくなる」
という返答が。
たかだか4つなのにね!(笑)
そのROCKHURRAHの細かい気遣いのおかげで(?)、無事に美術館に到着。
1階にはアンソールを紹介するビデオが流れていて、ちゃんとソファまで用意されている。
ビデオは帰りに観ることにして、まずは42階会場へ向かう。

ここで簡単にジェームス・アンソールについて書いてみようか。
アンソールは1860年、ベルギー生まれの画家である。
北海沿岸の海岸リゾート地であるオーステンデに生まれ育つ。
両親はここで観光客相手の土産物屋を営んでいて、貝殻や民芸品、そしてカーニバルで使用する仮面などを売っていた、とのこと。
そう、上述した「仮面のモチーフ」は、ここから来てるんだよね。
そしてベルギーのカーニバルって一体何だろう、とこれも調べてみたよ。
「ジルのカーニバル」もしくは「バンシュのカーニバル」と呼ばれる、仮面を付けた道化師が木靴を踏み鳴らしながら行進する祭りが有名らしい。
他にもアールスト、道化師シネル、ブランムーシ、マルメディといったカーニバルがあるみたいだけど、どれも仮面を付けたり仮装するタイプのお祭りなのね。
写真で見る感じでは、マルメディのカーニバルで使用されている仮面がアンソールの絵画に出てくる顔によく似ているように思ったよ。
上の写真がそのカーニバルなんだけど、どお?

アンソールは初めからグロテスクモチーフの絵画を描いていたわけではない。
当時流行していたのは庶民の肖像や朝食の静物画で、アンソールもその流れに乗った絵画も描いている。
そしてグロテスクモチーフを描いた当初は、異端児扱いされ、人々の嘲笑を受けたらしい。
ところがそれらの作品のほうが、後の時代には評価されることになるんだよね。
そして実際、グロテスクモチーフの作品はとても面白いね。

損保ジャパン東郷青児美術館のチケット販売、チケットもぎり、「会場はこちらです」とわざわざ教えてくれた案内係、美術館会場内での監視役の人達すべてが、かなりの年配者でびっくり。
もしかして、元は保険外交員だった人が定年退職後にバイトしてるのかな、などと勝手な想像をしながら会場を歩く。
アンソールが生まれた1860年代にはこんな絵画が主流だったんですよという年表やら、その時代の他の人の絵画まで展示されていて、勉強にはなるけれども観に来たのはアンソールなんだけどな、という2つの思いが揺れ始める。
そしてアンソールの写実時代の展示が長い、長い!
一体いつになったらグロテスクモチーフが出てくるんだろう、とちょっとイライラしてきてしまう。
更に、バタバタ走り回る子供を連れた外国人にも大迷惑する。
この走り回る子供は、「入ってはいけません」のラインより中に入り、絵に触ろうとして監視員も手を焼いていたようだった。
その他の客も、今まで行った美術館では見かけないタイプが多く、
「もしかしたら損保ジャパンが顧客にチケット配ったのかな」
という疑惑まで浮上。
タダなら行くか、みたいな感じの客層に思えたからね。

そしてやっとほとんど最後のセクション辺りでグロテスクモチーフの絵画が登場。
えっ、たったこれだけ?
あんなにグロテスクという単語を用いて宣伝してきたのに…。
一番上に載せた「陰謀」と「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」を観ることができただけでも良かったのかな。
この「首吊り死体」はアンソール本人で、骸骨の1つは母親で、もう1つは誰か忘れた。(笑)
そして左下で横たわっているのが死んだ父親、という解説だったはず。
生涯独身だったアンソールにとっての家族というのは、両親と自分との関係だけだったんだね。
ん?その解説聞かないほうが面白かったように感じるのはSNAKEPIPEだけかしら?(笑)

20120930-075大抵の場合、鑑賞した展覧会の図録は購入するSNAKEPIPEだけれど、今回のアンソールは写実時代の作品展示があまりに多過ぎたので図録はパス!
骸骨と仮面の絵画のポストカードだけを購入することにした。
他にはどんな商品があるのかな、と店内を物色してビックリ!
店内には「ひまわり」グッズがいっぱいなんだよね。

この損保ジャパン東郷青児美術館というのは、1987年安田火災海上保険時代にゴッホの「ひまわり」を53億円で落札してるんだよね。
この件に関しては、かつて「収集狂時代 第1巻」でも書いてるんだけど、バブルの時代の象徴的な出来事だよね。
ゴッホなんて全然興味がないから、今まで気にしていなかったけれど、今回初めてその「ひまわり」も鑑賞することになってしまったROCKHURRHAとSNAKEPIPE。
だって、一番最後のブースに鎮座してるんだもん。
まさかあの絵まで鑑賞対象に含まれていたなんて知らなかったよ!

なるほど、だからミュージアムショップには「どうだ!」と言わんばかりにひまわりグッズがあふれていたのか。
ひまわり複製画、ひまわりポストカード、ひまわり携帯ストラップ、ひまわり柄の缶入りクッキー!(笑)
もしかして以前に購入した53億円を少しでも回収しようとしてないか?
だってアンソールの展覧会、あれで1000円は高いもんね。
きっと「ひまわり基金」に充てられてるんだろうなあ。
だったら53億円なんて使うことないのにね、などと言いながら久しぶりにインドカレー「ボンベイ」で食事。
やっぱり美味しい!
これで少し機嫌が直る。(笑)

今回のアンソール展だけでは満足できなかったので、
「こんな絵を鑑賞したかった」
という絵を何枚か選んでみたよ。
下に挙げる絵は、今回の展示には含まれていなかったんだよね。
アンソールの「幻想」を伝えるには、このジャンルの絵画を加えないと!

20120930-011The Assassination(暗殺)と題された1890年の作品。
それぞれに役割分担があったり何かしらの意味があるんだろうけど、そんな解釈なしでも充分だね。
まるで神州纐纈城を思わせる題材で、非常に怖いのにコミカルにも見えてしまうから不思議。
この稚拙そうに見える部分が余計に恐怖を煽るよね。

Skeletons Fighting over a Smoked Herring(燻製にしんを巡る骸骨の戦い)というタイトルの1891年の作品。
これもまたコミカルさに溢れているけれど、モチーフは骸骨なんだよね。
死んでも尚欲深い人物、なんて意味なのかしら?
これじゃあ成仏できないね?(笑)

Self-Portrait With Masks(仮面の中の自画像)は1899年の作品。
アンソールの絵画に特徴的なのが「上向きの鼻の顔」が多いこと。
どうやら付き合っていた彼女が「上向きの鼻」だったようで、その彼女のポートレートも写実時代に描いてるんだよね。
タイトルはそのまま「上向きの鼻の女」だったかな。(笑)
自分の彼女のことをそんな風に言わなくても良いのにな、と思いながら鑑賞していたけれど、その鼻のインパクトが強くアンソールに残っていたのかな。 上の絵の中にもいっぱい「上向きの鼻」があるよね!

ほんの数行の紹介文と1、2枚の絵(写真)だけで興味を持って出かけた展覧会だったので、ちょっと騙された感があったことは事実である。
アンソールに、ではなくて、損保ジャパン東郷青児美術館に、である。
ま、これも行って観たから言えることなんだけどね!
ただ、今まで全く名前も絵画も知らなかったジェームス・アンソールの存在を知ることができたのは収穫だった。
シュルレアリスムの前の時代にこんな画家がいたとはね!
きっとまだまだ知らないアーティストいっぱいいるんだろうな。
SNAKEPIPEの探求は続くよ!(笑)

2 Comments

  1. kotoha

    はじめまして。
    「損保ジャパン東郷青児美術館 監視員」を検索し、たどりつきました。
    そうです、当方もこの美術館のスタッフの年齢に「何か」を感じ、ヒントを探していたもので。
    アンソール、2005年に、今は閉館中の庭園美術館で企画展がありまして、
    記事に挙げていらっしゃる作品3点も展示されてましたよ。
    いつかまた”一番男前なアンソール”も再来日してくれることを期待しましょう。

  2. kotoha様
    はじめまして。
    コメントいただき、ありがとうございます!
    まさか「損保ジャパン東郷青児美術館 監視員」で当ブログに辿り着いてご覧になっていただいたとはビックリです!(笑)
    アンソールに関する貴重な情報、ありがとうございました。
    当ブログではアート系に関する話題も多いので、今後ともよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

こんな記事もオススメです。