フランシス・ベーコン展鑑賞

                   

【フランシス・ベーコン展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPE MUSEUM #7 Francis Bacon」を書いたのは2011年1月のこと。

「どこかで展覧会やってくれないかなあ。
大量の現物を目の前で観たいものである。」

という文章で締めくくったSNAKEPIPEの希望を叶えてくれることが判ったのは去年のことだった。
情報収集能力に長けた長年来の友人Mから電話があり、
「ベーコンさん、個展やるよ!」
とまるで知人であるかのような口ぶりで教えてもらったのである。
狂喜乱舞するSNAKEPIPE!
展覧会開始の3月を心待ちにしていたのである。

東京国立近代美術館に向かったのは、開催されてから1週間を過ぎた、少し桜が咲きかけた頃である。
コートを着るには暑く、薄手のジャケットでは寒い難しい春の陽気。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも得意のレザージャケットを着用し、待ち合わせ場所へと向かう。
なんと友人Mも同じくレザー着用!
レザー・トリオになってしまった。(笑)
なんとなく怪しい3人組、会場へと急ぐのである。

開催されてまだ日が浅いにも関わらず、そこまでの混雑は感じられない。
押し合いへし合いで、人の頭と頭の間から絵をやっと覗き見る、なんてことにはならなかった。
SNAKEPIPE命名の「国立系」がわんさかいるかと思っていたけど。
良かった、と胸を撫で下ろすSNAKEPIPE。
待ち望んだ展覧会だもん、じっくり鑑賞したいからね!

いつものブログ通り、展覧会の進行に合わせた感想をまとめていこうか。
今回のフランシス・ベーコン展は「身体」をテーマにして年代別に括られていた。

Chapter1 うつりゆく身体 1940s―1950s

「うつりゆく身体」とはA地点からB地点への移行の状態に見えることから名付けられたタイトルとのこと。
A→Bだけではなく、B→Aの移行にも見えることが特徴だと言う。

この章の中で気になった作品が「走る犬のための習作」(1954年)。

一本の線だけで何かを表現するのはベーコン得意の技法である。
簡単に引かれたように見える線なのに、これが舗装された道で脇に側溝があると解り、きちんと情報を提供しているのがすごいよね。
SNAKEPIPEが勉強不足なのか、ベーコンが描く動物の絵を鑑賞するのは、これが初めてである。

まさに犬が走っている!
左の絵は小さいので詳細までは確認できないと思うけれど、ピンク色の舌を出して犬が走っている映像を一時停止させたみたいな絵。
犬が完全にブレているため、より動きが感じられるのである。
この絵をモノクロームにして、コントラストやや強めに、ちょっと粒子を荒くしたら大道さんみたいじゃない?(笑)

「叫ぶ教皇の頭部のための習作」(1952年)の元ネタがエイゼンシュタイン監督の「戦艦ポチョムキン」(1925年)だというので、2枚を並べてみたよ。
「戦艦ポチョムキン」、懐かしいなあ!
もう何年も前に観ているので詳細は忘れているけれど、やっぱりあの階段のシーンは見事だよね。
もちろんこの乳母の顔もしっかり覚えている。
ベーコンのアトリエには、「戦艦ポチョムキン」のスチール写真の切り抜きがあったというから、かなり重要なモチーフと考えていたようだね。
上の作品は斜めになったメガネと共に、ベーコン最大の特徴である叫ぶ口が描かれていて、まさに乳母そのもの!
このベーコンの叫ぶ口にインスパイアされたのが、デヴィッド・リンチである。
エイゼンシュタイン→ベーコン→リンチと、映画→絵画→映画の順番だよね。
この先はまだ続いていくのかな?
後継者は…難しいかもね?(笑)

Chapter 2 捧げられた身体 1960s

無神論者であったベーコンは「磔刑図」をどのように考えて制作していたのか、ということに焦点を当てる。
キリスト教とは別の原始的な宗教においては、神に捧げられた「人間の生贄」としての犠牲的な行為とも言えるのではないだろうか。
なーんて解説文を要約して書いてみたけど、キリスト教についても、原始的な宗教についても詳しくないSNAKEPIPEがあれこれ言える立場じゃないよ。(笑)
解説抜きで好きな絵ってことで良いのだ!(笑)
ところがなんとも驚いたことに、ここまで「磔刑」について書いているのに、ベーコンの磔刑関連の絵は一枚もなし!
難解な解説書いておきながら、全く意味不明だね。

この章の中で気になった作品は「ジョージ・ダイアの三習作」(1969年)かな。
空き巣だと思ってベーコン宅へ泥棒に入ったジョージ・ダイアが、制作中のベーコンにバッタリ遭遇。
そのまま居付いて、ベーコンの愛人になってしまう話はベーコンの伝記映画「愛の悪魔」で観たSNAKEPIPE。
上は、その愛人であったジョージ・ダイアを描いた作品なんだけどね。
解説には「顔面中央に弾丸を打ち込まれたかのような黒い円形」と書いてある。
SNAKEPIPEも「鼻の穴にしては大きいかも」と思って観た。
しばらくじっと観ているうちに、思い付いた。
「これは…穴だ!」
ベーコンは同性愛者だったからね。
考え過ぎだったらゴメンナサイ!(笑)

Chapter 3 物語らない身体 1970s―1992

この章では、ベーコンの特徴である3枚1組みセット(三幅対というらしい)を多く展示していた。
何故「物語らない身体」というタイトルになっているか、というのは複数の空間と人物を描いているのにストーリーの発生を忌避しているから、とのこと。
そう言われても、SNAKEPIPEは勝手にお話作ってたけどね?(笑)

今回の展覧会で鑑賞できて最も嬉しかったのが「3つの人物像と肖像」(1975年)である。
この絵はポストカードを持っていて、ずっと部屋に飾っていた作品だった。
その実物を観ることができるなんて!

この絵の解説には「複数の人物のあいだに物語を発生するような視線のやり取りや、身振りの連関を見出すことはできません」ってきっぱり言い切られちゃってるんだけどね。
左のくねってる男性が恋人のダイア、真ん中がギリシャ神話で神の裁きを伝える復讐の女神、というところまで聞くといろいろと想像をしちゃうけどな。
そして右側は円形部分に組み合う男性とその下の部分には下半身ヌード。
恋人のジョージ・ダイアが自殺してしまった後に描いた作品らしい。
思い出と懺悔がテーマなのかな。

何故ジョージ・ダイアが自殺してしまったのか。
これは前述したベーコンの伝記映画「愛の悪魔」がbased on a true storyだった場合には、自殺の原因はベーコンにあると思うから。
SNAKEPIPEは自殺というよりも「ベーコンに殺された」と言ってもおかしくないんじゃないか、と思っているくらいだからね。
失って初めてその重要性に気付いた感じがするけど、どうだろう?
Chapter 4 ベーコンに基づく身体

最後の章では、 ベーコンからの影響を身体で表現しているアーティストを紹介していた。
日本からは我らが土方巽が登場!
本当にベーコンからインスパイアされ作品を作っていたんだって。
舞踏公演「疱瘡譚」のDVD映像と共に土方巽のスクラップブックを展示していた。
ペーター・ヴェルツとウィリアム・フォーサイスはベーコンの絶筆である未完の肖像を元にその線をなぞるようなダンスを披露していた。
巨大なスクリーンがいくつも並び、ダンスする人物のアップを鑑賞しても何も感じ取ることができなかったなあ。

Chapter1の中にインタビュアーと話をするベーコンの映像が流れていた。
とても興味深いことを語っていたので、書いてみようかな。
ベーコンにはいくつかのシリーズがあって、その中の一つに「教皇シリーズ」があるが、描くきっかけになったのはベラスケスであるという。
ベラスケス?
その昔、日曜美術館でベラスケス作「ラス・メニーナス」 の解読と解説をやっているのを見たことあるけど、それほど詳しくはない画家である。
ベーコンはベラスケス作「教皇インノケンティウス10世」を「人間の感じることができる最も偉大で深遠な事象を開放する最高の肖像画」と評していたとのこと。
だからこそこの絵画から着想を得て、「教皇シリーズ」を作成したらしい。
どうやらベーコンは、「教皇インノケンティウス10世」に、恐れながらも性的に魅了された父親を投影していたようである。
ベーコンが描く教皇は、半狂乱で叫び声をあげている。
恐れながら愛し、突き落とすようなネジれたベーコンの感情が表れてるね。
評論家の中にはベーコンの「教皇シリーズ」を「父殺し」と評する人もいるらしい。 更にベーコンは「ベラスケスの作品は怖くて観られない」と続け、インタビュアーに訳を尋ねられると
「冒涜しているから」
と答えるのである。

愛と憎しみ、恐れと冒涜といった感情が、複雑に絡まって対象に向かっていることがインタビューから解る。
ベーコンにとっての愛情表現は、相手にとっては愛情とは感じられない類だったのかもしれないな、と推測できるね。
自殺してしまった愛人、ジョージ・ダイアへの態度も、思いやりを持っているようには見えなかったベーコン。
ベラスケスの絵も「最高」と言っておきながら「冒涜」し、その冒涜している行為を自覚している人物なので、愛人ダイアのことを虐めているように見えたのも愛情表現だったのかもしれないね?

もしかしてこれは、小学生くらいの男の子が好きな女の子をからかったり、イジメたりするような図式と同じなのかしら?
そう考えるとベーコンについて解り易いかもしれないね。
SNAKEPIPEが高校時代に愛読していたのがオーストリアの精神分析学者であるジークムント・フロイトの著書である。
小児から大人に至るまでの5つの性的発達段階について言及されている文章を読んだ時には、衝撃を受けたものだ。

■口唇期 出生~2歳まで 口は最初に経験する快楽の源である。
■肛門期 2歳~4歳頃まで 小児性欲の中心は肛門になる。

乳児のうちから快楽を得ようしている、という説に驚いた女子学生だったSNAKEPIPEだけれど、この2つの段階をベーコンに当てはめるとしっくりくるんだよね。
ベーコンには口だけしか描かれていない作品が多数存在する。
口に非常に強い興味を示しているよね。
そしてベーコンは同性愛者だった。
上に載せた「ジョージ・ダイアの三習作」について書いた文章の中に「肛門期」に関する記述をしているSNAKEPIPE。
解ってもらえるかしら?(笑)
ベーコンは口唇期と肛門期のまま大人になってしまった画家だったのかもしれないね。
ベーコンの伝記を読んだことがないので、単なるSNAKEPIPEの推測だから信用しないでね。(笑)

ではここで突然だけど、ベーコンの絵画にちなんだそっくりさん劇場開幕!
ベーコンの絵のモチーフに良く似ているな、とSNAKEPIPEが思った物を紹介するコーナーだよ!(笑)

左はご存知モンスターハンターに登場するフルフル。
右はベーコンの作品「ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作」(1944年)のうちの一枚である。
モンスターハンターでフルフル見た時に、即座にベーコンを思い出したんだよね。(笑)
これはどちらも男性器をモチーフにしているから、似てしまうのは仕方ないことなのかな。
ベーコンのほうもフルフルと同じように火属性に弱いかどうかは不明!

続いては「千と千尋の神隠し」より「カオナシ」に登場してもらいましょう!
対して右側はベーコンの「人物像習作II」(1945-46年)である。
変な形に曲がった体と、顔に入った縦2本の線と顔色などが酷似しているように感じたのはSNAKEPIPEだけかしら?
ちょっと苦しい?(笑)
ではそっくりさん劇場、これにて閉幕!

今回の展覧会では33点の作品をまとめて観ることができた。
これはベーコン没後アジアでは初めてのことらしいけど?
でもね、以前からベーコン個展を切望していたSNAKEPIPEにはまだ物足りないんだよね!
解説によれば、日本国内にはなんと5点だけしかベーコンの絵が所蔵されていないとのこと。
これにはびっくりしたSNAKEPIPE!
ベーコンは日本で知名度低いのね。
だから「国立系」の客が少なかったのか、と納得してしまった。
作品来ないなら自分から行けってことかな。
ロンドンのテート・ギャラリー行かないとダメかしら?(笑)

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