時に忘れられた人々【17】ギター・ポップ編1

                   

【クラスの中でも目立たないような子が今回の主人公】

ROCKHURRAH WROTE:

今年になって新しい企画を始めた関係なのか、過去のシリーズ記事が全然更新されてないという現状になっている。単に飽きっぽいだけなのか、本当に考える力が衰えてしまったのか?自分では後者だと思ってるんだけど、自覚症状まであるとは恐ろしい。

これじゃいかんと思って急遽書く事にしたのが元祖ROCKHURRAHのシリーズ記事「時に忘れられた人々」の新ヴァージョンだ。
うひょー、最後に書いたのが2012の12月だってよ。サボり過ぎ。

この企画は文字通り、時代に埋もれてしまったかに見える人々に焦点を当てた記事。温故知新と勘違いされやすいが本人には全然そんな気なくて、今でも覚えてる昔を昔のまま書いてゆこうという、ただそれだけ。
何度かこのシリーズ読めばわかるだろうが、過去にあった音楽(主に70年代パンクから80年代ニュー・ウェイブ) についていいかげんにコメントするだけという安易なものだ。

さて、その手の記事に出来そうな音楽ジャンルもそろそろ見当たらなくなったから、あまり面白いものじゃないけど今日はギター・ポップについてでも語ってみようか。

そんな音楽ジャンルが正式にあるのかどうかさえ疑わしいが、80年代ニュー・ウェイブの中でギターを主体としたシンプルなポップの事をそういう風に言い表すのだとROCKHURRAHならずとも想像出来るだろう。
そういう音楽はパンクやニュー・ウェイブ登場以前からもずっとあったんだろうが、人々がギター・ポップやネオアコなどと言い出した時代は1980年代初頭の頃。たぶんオレンジ・ジュースやジョセフK、アズテック・カメラなどのスコティッシュ系バンドがデビューしたあたりが起源とされている。何か「そんな」とか「そういう」という表現がやたら多いな。
パンクの時代のバズコックスやサブウェイ・セクトとかもギター・ポップの元祖的な音は出していたな。
実際のジャンルなんてどうだっていいんだが、いつもは脅迫的ノイズを出してるようなバンドがたまたまやったポップな名曲とかも広義のギター・ポップと言えなくはない。しかし今回はなるべく発表した曲の多くがギター・ポップに属すると思われるようなバンドばかりをピックアップしてみたよ。

Espresso / The Monochrome Set

70年代パンク・バンドが続々と2ndアルバムを出してた頃の78年には既に存在していたというモノクローム・セット、この手のギター・ポップの直接の元祖的存在はやはり彼らで決まりだろう。ここのヴォーカルはなぜだかインド系混血のBidという男。確かにエキゾティックな顔立ちだしインド人風にターバンをしている写真も見かけた事あったな。

彼らの1stアルバム「Strange Boutique」は渋い銀色に包まれたジャケットで海に向かってダイブしているモノクロ写真が印象的だった。ROCKHURRAHもどんな音楽か全然知らずにジャケット買いをしたんだが、それまで聴いてきたパンクや初期のニュー・ウェイブとは明らかに違ったキレの良いギター・サウンドが心地良い名盤。
いかにもニュー・ウェイブ初期のアートっぽいジャケットと音楽とのギャップが随分あり、「こんな音楽もニュー・ウェイブの一種なんだ?」と驚いた事を思い出す。どこかラテン風の音楽にあまり抑揚のないBidの声が妙にマッチしていて明るいのか暗いのかよくわからない。
確かにストレンジな音世界だな。

映像もあったんだけどひたすらに動かず表情もほとんど変えない淡々としたライブ、これでいいのか?と思えるほどサービス精神のないステージに唖然としたよ。今回選んだ曲は映像動いてないけど動いてるのと比べても大差ないからこっちにした。1st収録の名曲ですな。後のギター・ポップに影響を与えたかどうかは不明だけど、その先駆けとなった事は確か。

Never Understand / The Jesus And Mary Chain

80年代半ばのニュー・ウェイブ好き人間に大人気だったバンドがこのジーザス&メリーチェインだ。
全体的に黒っぽいスリムな服装(時々チェック・シャツ)にふわふわの前髪、この時代の少女マンガから出てきたような理想の少年っぽいルックスは特に女の子に大人気だったな。中心の2人はジムとウィリアムのリード兄弟だが、後にプライマル・スクリームで大成するボビー君もここの出身。

そういうチャラチャラした見た目とは裏腹に彼らは音楽界にちょっとした発明をもたらした。
ギターをアンプに近づけた時に発するフィードバック奏法というのがある。70年代のロックではジミ・ヘンドリックスなどによって広く知られていたが、これはあくまでステージ上でノッた時のノイズによるトランスというような意味合いで、このフィードバックが延々と続いた後ではもはやギターを壊すか燃やすというのが黄金パターン。
そうでもしない事にはそのカオスを収束出来ないという状態かも知れない。ロックの世界では効果音の域を出なかったものだ。

しかしこのバンドはそのフィードバックを多用してノイズではなくポップな音楽にこれを応用した。この曲「Never Understand」もギターは延々とフィードバック状態なのに曲は甘くてポップという珍しい世界。
発明というほどの大した事じゃないと考える人も多かろうが、これを聴いて「やられた、この手があったか」と思ったギタリストも数多くいたはず。
客席に背を向けて短時間で終わってしまうというライブ・パフォーマンスもつっけんどんだし、怒った観客の暴動の様子を録音して、レコードにしてしまうというのもちょっと現代アートとかでありそうな行為。

ギター・ポップという言葉から感じる「爽やかで等身大のポップ」というイメージとはちょっと違うが、これ以外の曲はとにかく甘いシンプルな曲が多く、やはりひとつの代表的な存在だとは思う。
その辺を強調し過ぎてどれも似たり寄ったりのワンパターン化して飽きられたが、手法としてはなかなか興味深いバンドだったな。

Crawl Babies / The Pastels

ネオアコ、ギター・ポップの初期はロンドンではなくてスコットランドのポストカード・レコード(レーベル)がシーンを盛り上げたのは誰もが言うところ。御三家は先にも書いたオレンジ・ジュース、ジョセフK、アズテック・カメラなんだが、彼らのヒットによってパンクやニュー・ウェイブの暗くて退廃的なイメージからもっと日の当たる健康志向の音楽にも人々が目を向けるようになったわけだ。

そんなスコットランドのエジンバラやグラスゴーでは80年代半ばからギター・ポップの中心となるようなバンドたちが続々と登場した。
80年代初期のネオ・サイケが流行った頃にマンチェスターやリヴァプールが音楽の産地となった時と似ているね。
どんなバンドたちがグラスゴーから登場したかを書いてると長くなるから省略するが、このパステルズなどはその代表的なもの。とは書いたものの1982年にデビューして以来、通常の音楽ビジネスでは考えられないくらいのスローペースで活動した零細バンド、とても代表的な行動などはしてないはず。1stアルバムを出すまでに何と5年もかかってるよ。それでも見放されない、いいなあ。

実際のところは全然知らないが、レコード屋勤務の若者が多少しっかりしたガールフレンドなどに支えられて何とか音楽を作ってる、というような印象をどうしても持ってしまう。それでもこのバンドのリーダー、スティーブン・パステルはある意味でのカリスマと言える存在らしい。

演奏もヴォーカルもよぼよぼで脱力感満載の代物。パステルズが始めたのかは知らないがこういう音楽を好む者達が着用してたのがアノラックというプルオーバー型のマウンテンパーカーみたいな代物。それでこういう傾向の音楽をアノラック系と言うようになったらしい。
こんなによぼよぼで下手でも音楽を作ってリリース出来るという事実が下手の横好き達に衝撃を与えたのか、その後パステルズに影響を受けたバンドが続々と登場して、そのおかげで「代表的」になってしまったわけだ。

とにかく脱力したゆるい音楽によって癒やされたいという人にとってはピッタリの音楽かも知れないね。しかし下手なだけでセンスもなければ良い音楽は作れないという事もわからなかった勘違いアノラック・バンドも多かったに違いない。こういう系列が一同に集まった音楽イベントとかあったら苦痛だろうな。

Every Conversation / The June Brides

あまり知られてないが、こちらもまた脱力系ギター・ポップの重鎮、ジューン・ブライズだ。1983年から86年くらいのごく短い期間に活動してリリースした音源も少ないし、ベスト盤とかも出てなくはないがどこの店でも置いてるという代物ではなさそう。要するに今回紹介した中では最もマイナーなバンドということね。

80年代初期のジョセフKについてはこちらの記事でも書いてるが、ジューン・ブライズほど彼らの影響を受けたバンドは他にいないだろう。
しかもその本家のファンが「ジョセフKにはもっとこうあって欲しい」と願った理想型のような音楽をジューン・ブライズは展開していた。個人的にはこっちの方が完成度は高いよ、と思えるほど。

メンバーもバンドっぽいところがあまり感じられない地味な見た目、ライブも内輪のノリといった学生バンド風の等身大なもの。要するに軽音サークルっぽい感じなんだろうな。
ポーグスのメンバーがいた事で知られる70年代パンク・バンド、ラジエーターズの「Enemies」とかもカヴァーでやってるけど、トランペットの素人っぽい響きが心地良いこの「Every Conversation」が一番名曲だと思う。途中の「ナナナ ナナナ ナ~ナ」という意味不明のコーラスも良いねえ。

このバンド、勘違いじゃなければ確か所属していたレーベルが2度も倒産して次の所属先を見つけられないまま解散したように記憶してる。やってる音楽もそんなにヒットを狙える類いでもないし、かなり不運のバンドだと言えるな。ROCKHURRAHも過去に所属していた店が3度も倒産しているが、それでも身を持ち崩さずに生きているから良かった良かった。

というわけで今回もたった4つしか書けなかったけど、まだ続きはありそうだね?次はいつになるかわからない脱力系のROCKHURRAHだが、またいつか会いましょう。

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