「リアリティのダンス」鑑賞

【「リアリティのダンス」のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

2014年4月の記事「ホドロフスキー監督来日!先行上映と講演会」にあるように、既にアレハンドロ・ホドロフスキー監督の新作である「リアリティのダンス」(原題:La danza de la realidad)を鑑賞し、講演会でホドロフスキー監督を実際に見て、声を聞き、写真に収めた興奮について書いているよね。
ああ、あの夢の様な出来事っ!(笑)
ファン冥利に尽きる時間を過ごしたあの時からすでに3ヶ月が経過し、ついに「リアリティのダンス」が劇場公開されている。
SNAKEPIPEと友人Mは鑑賞済だけれど、ROCKHURRAHは未鑑賞。
そしてあの試写会と劇場公開版では、バージョンが違う可能性があるので確認のためにももう一度鑑賞したかったSNAKEPIPE。
さて、どの劇場に行こうか?

ホドロフスキー監督23年ぶりの新作!などとかなり大きく取り上げられているにも関わらず、「リアリティのダンス」を鑑賞することができる劇場の少なさを知り驚いてしまう。
渋谷のアップリンク、新宿のシネマカリテ、もしくはヒューマントラストシネマ有楽町のレイトショー、という選択肢しかないんだもん。
アップリンクは行ったことがない映画館なので、場所と座席について調べてみると、場所は東急本店の近くというから駅から遠く、座席は60席しかないようで、椅子はパイプ椅子のような一脚ずつ並べてあるタイプ!
web予約はできるけれど、狭い劇場はちょっと…。
シネマカリテも行ったことがないけれど、姉妹劇場(?)の武蔵野館には数回行ったことがある。
ここはweb予約ができず、受付開始時間前に並んで待つ昔ながらの方式を採用してるんだよね!
駅からは近いし、新宿なら他にも立ち寄りたい場所はいくつかあるけれど…できればwebで座席指定して安心したいのが本音。
最後がヒューマントラストシネマ有楽町のレイトショー。
本来であれば最初から候補にすら入らなかった選択肢である。
ところが今回は海の日のため3連休!
たまには夜のお出かけも良いか、と珍しくレイトショーに行くことにしたのである。
ゲリラ豪雨の隙間を抜けて、うまい具合に有楽町に到着したROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
びしょ濡れにならないでラッキーだね!
無事に20時50分からの回に間に合ったのである。
web予約で座席指定をした時には、63席ある座席のうち6席程度しか埋まっていなかったのに、実際には8割程度が埋まるほどのお客さんでいっぱいになっている。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが予約したのは一番後ろの列の端、スクリーンから一番遠い座席である。
新作映画紹介が流れている間も、前席に人が来なかったので安心していると、かなり遅れて人がやってきてしまった!
うーん、残念。
ゆったり鑑賞できると思っていたのに。
そしてこの遅れてやってきた2人組が大迷惑なヤツらだった。
この2人組、かなり年配の男女で、男はキャップを脱ぐと白髪頭。
大きな荷物をいくつも抱え、それを横の棚に置いたかと思うと、中からガサガサとビニール袋を取り出し、個包装されたパンを並べ始めたのだ。
映画館のマナーについては散々アナウンスされているのにも関わらず、その老人は全く無視!
長い間ガサガサ音を立てながらパンを食べ、隣の連れにパンを手渡したり、会話をしている。
「最近の若者は」などと文句を言うのは老人だったはずなのに、今はSNAKEPIPEが言いたいね。
「最近の老人は!」って。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEだけじゃなくて、その老人たちの周りの人全員が大迷惑だったはず。
迷惑行為に対してはどのように対応したら良いんだろう?
ご存知の方、教えてください!

映画「リアリティのダンス」はホドロフスキー監督の自伝的小説である同名の「リアリティのダンス」を原作として製作されている。
原作を読んでいると解り易いけれど、読んでいなくても楽しめる作品である。
「エル・トポ」や「ホーリー・マウンテン」の雰囲気とは違うので、先入観を持って鑑賞すると肩透かしを食らうかもしれない。
ホドロフスキー監督が少年時代を過ごしたチリのトコピージャを舞台に、いくつかのエピソードが語られている本作は、ホドロフスキー一家の「ホームドラマ」といえる作品だからである。
もちろんホドロフスキー監督らしい幻想的な映像は至る所に散りばめられているけどね!(笑)

自慢できる話ではないけれど、日本の政治経済についてもほとんど詳しくないSNAKEPIPEなので、世界情勢の知識などはもってのほかである。
例えば最近では、ペドロ・アルモドバル監督への興味から、多少はスペインの政権について知ったり、調べてみたりすることもあるけどね。
ホドロフスキー監督の生まれ故郷であるチリについては、ほとんど知らないんじゃないかな。
南アメリカ大陸の太平洋側に位置する細長い国で、よく見かけるのはチリ・ワインという程度。
そのためホドロフスキー監督の自伝的小説「リアリティのダンス」を読んだ時に驚いた。
チリでは詩が大流行していて、ホドロフスキー監督も詩を創作していたという。
そして詩とパフォーマンスを融合させた活動を行っていたとも書いてあるんだけど、ホドロフスキーがまだ16歳くらいの話なんだよね。(笑)
とても早熟な少年だったんだろうなあ。

映画「リアリティのダンス」は詩人になるより前、1930年代の子供時代を描いている作品である。
当時のチリは共産主義者が弾圧され、炭鉱の町であるトコピージャにはダイナマイトで手足を吹き飛ばされた炭鉱労働者がたくさんいた、などというエピソードは映画を観て初めて知る事実。
ある程度チリについて知っていたら、もう少し理解し易いかもしれない。

子供時代のホドロフスキー監督を演じるアルゼンチン出身のイェレミアス・ハースコヴィッツは、本作が映画初出演らしい。
金髪の巻き毛の時には、まるで女の子に見えてしまうほどの可愛らしさ。
たまにイザベラ・ロッセリーニに似てると感じたのはSNAKEPIPEだけだろうか?
イザベラ・ロッセリーニが「ブルー・ベルベット」の中で、黒髪のクリクリパーマのヅラをかぶっていたせいかな。(笑)
ホドロフスキー監督が映画の中で、この少年の後ろに立ち、少年だった自分の気持ちを代弁している。
ホドロフスキー監督、年取ってからのほうが良い顔になってるよね!
良い人生を送ってるからこそ、だよね。

パンフレットの中でホドロフスキー監督は、「子供時代の主観的な記憶を客観視し、再構築した」と語っている。
子供の時には広いと思っていた道が、今では狭いと感じたりするようなギャップを解消した、ということらしい。
決して良好とは言えなかった両親との関係性についても、同じように再構築し、ずっと抱えていた「わだかまり」を消したという。
これもひとつのサイコ・マジックなんだろうね?
ホドロフスキー監督が自身をセラピーした結果が、映画製作になったと言えるんじゃないかな。

これは人々の魂を癒す映画であり、
映画の中で家族を再生することで、
私の魂を癒す映画でもあった

という言葉からも解るよね!

父親役を長男であるブロンティス・ホドロフスキー、行者役をクリストバル・ホドロフスキー、アナキスト役をアダン・ホドロフスキーが演じていて、ホドロフスキー一家総出で出演しているのも注目ポイント。
今回は衣装デザインをホドロフスキー監督の妻であるパスカル・ホドロフスキーがやっているというから、本当に家内工業的作品!
「エル・トポ」の時から息子を出演させてきたから、その点は変わっていないんだよね。(笑)

最後にホドロフスキー監督は骸骨と一緒に船に乗り、モヤがかかった海を行ってしまう。
これはあの世へ、異界へと通じている航海なのか?
どんどん小さくなっていくホドロフスキー監督を見ていると、悲しくて涙が出そうになった。
23年ぶりに帰ってきたかと思ったら、これでサヨナラみたいな…。
いやだよう、まだ死なないでーーーっ!(絶叫)

と思ったら!
パンフレットに「次回作」という文字を発見!
「フアン・ソロ」(原題:Juan Solo)というホドロフスキー監督が原作で、1995年からシリーズとして刊行されたバンド・デシネを原作としたアクション映画を計画しているという。
底辺の中にいる一人の人間が犯罪に巻き込まれながら、自分が人間であることを発見していく物語とのこと。
日本でも「フアン・ソロ」は今秋出版予定とのことなので、それも楽しみ!(笑)
すでにフランス・メキシコ・日本の合作として国際共同製作の準備中であり、メキシコ撮影が決定しているという。
あと3〜5本は映画を撮りたいとも語っているようなので、期待して待っていよう!

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