野又穫 展 「Ghost」浮遊する都市の残像 鑑賞

                   

【展覧会告知ポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

かつて新宿で働いていた時、週に1度は必ず青山ブックセンターに立ち寄り、日本の写真家や読み方も分からないような外国のアーティストの画集や写真集を鑑賞していたSNAKEPIPE。
どうしても自分の物にしたい時には、値段に関係なく購入することにしていた。
食事よりも写真集が大事だったんだよね!
ある時、ふと目に止まったのが左の画集。
表紙に全く日本語が書かれていないので、恐らく外国のアーティストだと勘違いして観ていたはずだ。
ページをめくるうちに手が震え、心臓がバクバクしてきたことを覚えている。
何故なら、その画集にはSNAKEPIPEが撮りたいと思っている景色や建築物がそのまま表現されていたから!
最後のページまで鑑賞し、その作者が日本人と判り驚いた。
よくよく見れば、「のまた」と書いてあるじゃないの。(笑)
もう居ても立ってもいられない!
値段もちゃんと確認しないままレジに向かい、画集を購入したのである。
自分でもどうしてなのか分からないけど、ものすごく急いで帰宅し、慌ててもう一度鑑賞したっけ。
画集や写真集を購入したからといって、作品が自分の物になるわけじゃないけど、いつでも手に取って鑑賞できる安心感が重要だったんだね。

そんな衝撃的な出会いをしたアーティストの展覧会が「二人のホドロフスキー 愛の結晶展 鑑賞」で初めて行ったアツコバルーで開催されている。
野又穫 展 「Ghost」浮遊する都市の残像をとても楽しみにしていたSNAKEPIPE。
友人Mと待ち合わせ、ROCKHURRAHも加わった例の怪しい3人組、再びアツコバルーに参上である。(笑)
前回お邪魔した際に、写真撮影やブログへの掲載も快く承諾して頂いたアツコバルーの美人さんと入り口でバッタリ!
美人さん、相変わらずキュート、お会いできて嬉しいわ。
怪しい3人組を覚えていてくれたようで良かった。(笑)

ここで簡単に野又穣氏のプロフィールをご紹介してみようか。

1955年  目黒区の染物屋に生まれる
1975年  東京芸術大学美術学部入学。形成デザインを専攻
1978年  安宅賞受賞
1979年  東京芸術大学美術学部デザイン科卒業 マッキャンエリクソン博報堂へ入社
1984年  マッキャンエリクソン博報堂を退職し独立
1995年  第45回(平成6年度)芸術選奨新人賞美術部門受賞(文化庁)
2007年  第17回(平成18年度)タカシマヤ美術賞受賞
2014年  女子美術大学芸術学部デザイン・工芸学科ヴィジュアルデザイン      専攻教授

なんとも華々しい経歴だよね!
芸大から広告業界にいたとは知らなかった。
やっぱりその辺りが日本人離れしたセンスの良さと関係あるんだろうね。

「Ghost 浮遊する都市の残像」展会場に入ると、先客が数人いたけれど、ゆっくり自分の好きなペースで観ることができた。
アツコバルーの室内は天井にパイプが這っているインダストリアルな雰囲気なので、野又穣氏の作品を展示するのにピッタリね!
作品に近付いてみると、筆の跡がわかる。
でも少し離れてみると、スーパーリアリズムのように精緻な作品にみえるところが不思議!
印刷物になると更に「まるで写真」にみえてしまうんだよね。(笑)

野又穣氏の作品は、どれも「行ってみたい」とか「目の前に立ってみたい」と思ってしまう建築物が描かれている。
非常に気になる階段や、小さな窓やドア。
SNAKEPIPE MUSEUM #3 Giorgio de Chirico」で書いた大好きな画家、デ・キリコに通じるシンメトリー構図。

 一体何のための塔なんだろう。
中で何が行われてるんだろう、
と想像するだけでワクワクする。

デ・キリコの建物に対しての感想を書いているけれど、野又穣氏の作品にも同じ感想を持ってしまうね。

ひと通り鑑賞し、飲み物を頂きながら野又穣氏の画集を観て談笑していると、アツコバルーの美人さんが話しかけてくれた。
そして教えてもらったのが、今回の展覧会の作品はほとんどが2014年制作だということ。
30点以上の作品が今年描かれているとは、そのスピードに驚いてしまうね!
更にテーマが渋谷だということも教えて頂いた。
もちろん渋谷そのものを描いているのではなくて、野又穣氏の空想としての渋谷という意味でね!
SNAKEPIPEが疑問に感じていた「動物」についても簡潔に答えて頂いて、大笑いしてしまったよ!
まさかそんな意味だったとはね!(笑)

今まではアクリル絵の具を使っていたけれど、「Ghost」では油絵だったというのも教えて頂いた。
「油絵、良いねえ」
と芸大出身の野又穣氏が言っていたというからビックリだよね。(笑)
展示作品はどれもカッコ良くて美しかったけれど、SNAKEPIPEが非常に気になったのは、野又穣氏が朝日新聞に連載しているというドローイング!
上の画像は今回の展覧会にはなかった作品だけど、鉛筆で描かれてるんだよね。
色鉛筆で着色されている作品もあって、身近な道具でこんなに素敵な絵を生み出せるなんて!
嫉妬してしまうよね、この才能!(笑)

 帰宅後、かつて写真撮影に夢中になっていた頃の自分の写真を引っ張りだしてみた。
左の写真は写真学校に通っていた頃に撮った一枚で、モノクロームのフィルムを使っていた写真をデジタル化したもの。
現像も焼き付けも自分でやっていた。
フィルムの魅力はたくさんあるけれど、現像してみないと何が写っているのか分からないドキドキ感があったことが一番かな。
左の写真は撮影している時から興奮していたけれど、現像して焼き付けてからも嬉しかった記憶がある。
この写真、ちょっと野又穣氏の作品っぽいよね?(笑)
こんな風景を追い求めて休日の度に撮影していたあの頃。
SNAKEPIPEも若かったねえ。(笑)

アツコバルーの美人さんが教えてくれた情報に、野又穣氏が震災によって意識が変化した話がある。
震災前は建築物というのがどっしり構えていて揺るぎないものと思っていたけれど、震災によって認識が変わったというのだ。
地震による津波で今まであった物全てが簡単に流され、崩壊してしまったことは日本人なら誰もが知っている事実だからね。
そのため「Ghost」では、モヤがかかっているように浮遊しているのだという。
確かにSNAKEPIPEが観てきた野又穣氏の作品は、全ての建物がしっかり地に建っていたから、その違いは大きいよね。

2012年に大好きな写真家畠山直哉氏の写真展「Natural Stories」を鑑賞したけれど、畠山直哉氏自身が震災に遭っているために、観ていて辛くなる写真が並んでいたことを思い出す。
鑑賞した写真展や展覧会は記録の意味もあって、ブログに残すことにしているSNAKEPIPEが「書けない」と感じてしまった唯一の展覧会なんだよね。
崩壊の美学とでも言ったら良いのか。
畠山直哉氏の写真も日本人離れした感性と抜群の色や構図で、SNAKEPIPEを魅了した作品を数多く発表してきた写真家だったのに、震災の影響でその感性に変化が生じたようで非常に残念に思っている。
そして実はSNAKEPIPEも、崩れていく様や廃墟に魅了されていたのに、震災後にその美を疑うようになってしまったのである。
今でも大好きな崩壊や廃墟だけど、 同時にあの時の映像や記憶が蘇ってきてしまう。
自分の身内も友人の誰一人も被害に遭っていないのに、である。

SNAKEPIPEには3月11日が誕生日の友人がいて、毎年「おめでとう」を言うのが習慣になっている。
2012年に「おめでとう」を言うと
「この日のおめでとうは言いづらいでしょ?でもね、私は再生の日と考えることにしたから、ありがとうと言うね」
と答えてくれた。

野又穣氏は認識の揺らぎを見事に昇華し、表現しているんだと感じた。
きっとSNAKEPIPEの友人と同じように、自分の中で震災の折り合いがついているんだろうね。
画集でしか観ていなかったアーティストの作品を肉眼で観ることができて、本当に嬉しかったな!
アツコバルー、面白そうな企画がこれからもあるので、また行ってみたいと思う。
今回もまた撮影許可して頂いてありがとうございました!
アート談義、とても楽しかったです。(笑)

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