誰がCOVERやねん6

【今回は陽気 VS 陰気で対極なバンド特集】

ROCKHURRAH WROTE:

この「誰がCOVERやねん」という企画はただのカヴァー・ヴァージョン特集ではなくて、1970年代から80年代のパンクやニュー・ウェイブにまつわるカヴァー曲だけを独自のセレクトで紹介(というほど詳しくは書いてないが)してゆくというもの。
元歌、またはやっているアーティストのどちらかに興味ない場合はいかに優れたカヴァーでも書かない方針なので、ROCKHURRAHの偏った好みだけで展開してゆく。
今まで書いた傾向はメジャーで誰でも知ってる曲よりも、知る人ぞ知る音楽に焦点を当てているのが特徴かな?ヘタしたら元歌のバンドもカヴァーやってるバンドもどちらも一般的でなかったりするから、読む人を限定する特集なのは間違いないな。もっとマニアックな人は世の中にゴマンといるだろうけど、読んで少しでもウチの路線を理解していただけたらありがたいな。

前回まではまずカヴァー曲を提示しておいて、それの元歌はこれなんだよという配置の仕方だったけど、今回からは先にオリジナル、次にカヴァー曲という構成でゆきたい。いや、誰も気付いてなかったと思うし別に大差ないのはわかってるけど。

テッズ=テディボーイは50年代のロンドンで流行した不良のスタイルで丈の長いテッズ・ジャケットに細身のパンツ、ラバーソールの厚底靴、そしてリーゼントの髪型などが特色だった。
アメリカ発祥のロカビリーとも似たようなものだが、ダボッとしたズートパンツに開襟シャツが主流だったロカビリーに対して、テッズの方はもう少しスリムな印象があるな。
生き様としてもファッションとしてもピシっとスジが通った魅力に溢れてて、個人的には大好きな部類。
人によっては大嫌いな部類かも知れないが、それはどんなムーブメントでも一緒。
セックス・ピストルズのマネージャーだったマルコム・マクラーレンも元々はテッズ畑の出身だった、という事からもわかる通り、ファッションの世界でも札付き、じゃなかったお墨付きの不良カルチャーだったわけだ。
その後も多くのデザイナーを魅了してテッズっぽいデザインの服はある程度の周期でリバイバルしているな。
ロッカーズはテッズのようなシティボーイ(死語)じゃなくてトライアンフなどのバイクに乗ってかっ飛ばす集団ね。
革の上下キメキメで魅了はされるけど、バイクに乗ってなければやはり決まらない。
趣味とライフスタイルの全てがそうじゃないと真似出来ない点でテッズよりも難しいと思える。

テンポール・テューダーは1970年代のパンクの頃に活動していたバンドでパンクとテッズ、ロッカーズ風味を融合させて、そこにスコットランド民謡風の勇壮なメロディをうまくミックスさせた個性的なスタイルを作り上げた。
元々はパンクやモッズとテッズ、ロッカーズは敵同士なんだけど、まあ固い事言わずに仲良くしましょうや。
モロにテッズ要素満載なわけではなく、メンバーの髪型やルックス、そして音楽性に垣間見えてるところが「時代に合ってた」ということになるんだろうな。
彼らのもう一つの特色は中世の鎧甲冑の騎士や海賊、三銃士などなど、華麗に時代がかった衣装をジャケット写真に使用してプロモーションもそういう装束で行っているコスプレ・バンドだったこと。
別にこの格好で演奏するわけじゃないが、同時代に大ヒットしたアダム&ジ・アンツの海賊ファッションなどと比べると知名度が低い。もっと注目されても良かったのではないかと思うよ。

俳優、コメディアンとしても活動していたエドワード・テューダーポールはセックス・ピストルズの映画「グレート・ロックンロール・スウィンドル」の中で映画館の受付役(掃除人?)として出演、映画のサントラでも何曲か入っていて注目はされたものの、アルバム・デビューが遅くてパンクも過ぎ去った頃になってしまったのがやや不遇だったかな。
アレックス・コックスの「ストレート・トゥ・ヘル」でもジョー・ストラマーやポーグスと共演。
「そうそうたる人々と共演したで賞」を与えたくなってしまう逸材なのに日本ではあまり知名度がないなあ。

この曲「Swords Of A Thousand Men」はそんなテンポール・テューダーの魅力が満載のヒット曲で、PVもROCKHURRAHが書いた通り派手な身振りの騎士姿。
前にウチのこの記事でも書いた名曲「Wunderbar」と共にみんなで大合唱出来る壮大で陽気な曲だね。
テューダーポールのこれでもか、という派手なオーバーアクションもすごいけどギターのモミアゲ男の「濃さ」も負けてないね。男気ムンムン。

そんなテンポール・テューダーの名曲をカヴァーしたのがこれ、ミッドナイターズというバンドだ。
1980年代後半のサイコビリー系バンドでかなりマイナーな存在だとは思えるが、なぜかこのレコード・ジャケットも覚えてるしカセットテープ(古っ!・・・)にも「Easy Money」とか録音して聴いてたような記憶があるが、バンドの印象はすっかり記憶にない。
サイコビリーの中でも特にアクの強いバンドばかりを好んで聴いていたから、この手の軽快な演奏は敬遠していたかも。
元々テッズっぽい要素もあるテンポール・テューダーの曲をネオロカ、あるいはサイコビリーでカヴァーというのはある意味当たり前の発想なので、飛躍がないのは書いてる本人にも痛いほどわかってるよ。まあ見逃してやってね。
しかし、ミッドナイターズというバンドが他にもあるようで、しかもそっちの方が遥かに立派なようで、この見栄えのしないトリオは検索でもほとんど出てこない。
バンド名つける時に「同じバンド名だ」とか気付かなかったものかねえ?
出だしからしてすでに間違っとるよ。

ROCKHURRAHの書くブログ記事では何度も登場していて「またかよ」と言われそうなジャンルが1980年代初頭に流行ったポジティブ・パンク、略してポジパンというムーブメントだ。
ウチでも大昔に記事でまとめたこともありましたなあ。
ウィキペディアでゴシックについて調べてたら、ゴシック趣味の音楽についてウチの書いてる事と同じような事が書かれてたからビックリ。こんな一文を真似て書くほど落ちぶれてないROCKHURRAHだが、ウチの駄文を真似るほど落ちぶれた人間もいるとも思えない。
うーむ、偶然にも列記してるバンド名まで一致した、などという奇跡な解釈でよろしいのかな?

ポジパンの大まかな定義とかは上のリンクを参照すれば、割とうまいこと書いてると自画自賛出来る力作(ブログ記事が)。
いやあ、ROCKHURRAHのブログ、タメになるなあ。

そのムーブメントの一番最後に登場した大物がこのシスターズ・オブ・マーシーだ。
ジョイ・ディヴィジョンやバウハウスによって確立した「何かわからんけど暗くて重苦しいロック」という不明瞭なジャンルを踏襲したバンド達が幾多も存在したが、そのトドメとも言える重苦しいヴォーカルが衝撃的だった。
この重低音ヴォーカリストのアンドリュー・エルドリッチを中心に80年代初頭に英国、リーズで結成。
ポジパンが一番旬の時代だったのが1982年くらいだから、その時にはすでに存在していたはずなんだが、当時は細々とシングル出してたけど日本ではまだ無名だった。

シスターズは多くのポジパンのバンドがやってたような白塗り化粧とかホラー映画風のメイクとは無縁のルックスで、長髪にレイバンの大きなサングラス、丈の長い黒っぽいコートにつばの広い帽子というような格好だったから、通常の意味でのポジパンっぽいところはなく、そういうシーンの中では浮上して来なかったんだろうかな?
ただしゴシックという幅広い意味では見事に一致してて、ゆえに「ゴスの帝王」などと呼ばれていた。
音楽も見た目も雰囲気も真似したくなる要素に溢れてて、フォロワーも多かったな。

本人はゴシックなどという言葉が大嫌いと明言していて、ポジパンやゴシックなどというムーブメントとは距離を置いていたらしいが、近い方向性なのは間違いない。
ドクター・アバランシェと名付けられたドラム・マシーンによる無機質なビートに繊細なギター・サウンド、そしてくぐもった低い声が特徴的な音楽はジョイ・ディヴィジョン=イアン・カーティスと共に「押し殺した声のヴォーカリスト」2大巨匠だと言える。

彼らは自身のレーベル、マーシフル・リリースより出したシングルをインディ・チャートに数多くランクインさせて、1985年にアルバム・デビューした。
「マーシーの合言葉」という意味不明の邦題で日本でもリリースされたが売れたんだろうか?

すでに大半のポジパンのバンドは過ぎ去っており、そういう路線での生き残りは難しかったが、一般的には売れなくても伝説のすごいバンドとしての地位は揺るぎないものだったろう。
しかしかなり偏屈な男として名高いエルドリッチは他のメンバーとうまくいってなく、メジャー・デビューした後にあっさり解散。次のバンドを巡ってイヤな泥沼のような争いを起こしたが、この辺はROCKHURRAHの嫌いなところなので省略。
彼一人さえいればそれがシスターズ・オブ・マーシーという考えのワンマン社長、「派遣は覇権を争うなよ」というのが言い分らしい。

その後も別のメンバーでやってたりはするけどROCKHURRAHが個人的に好きだったのはアルバム当時のシスターズまで。
ポジパン最後のスターだっただけにそのカッコイイ姿が見られるライブ映像も比較的残っている。
この曲「No Time To Cry」は一番最後くらいのリリースで(1985年までの)暗くてもダンサブル、重苦しくても躍動感に溢れてるという名曲。見た目も格好良くて憧れるな。
個人的にエルドリッチの真似して髪を伸ばして黒ずくめだった時代もあったなあ。
今はまた時代が廻って案外遠からずの風貌になってしまったROCKHURRAHだよ。

そんな時代の寵児だったシスターズだからカヴァー・ヴァージョンも多数存在してるだろうと思ったが、当たるのはヘンなバンドばかり。
彼らの良さをひとつも理解してない醜い見世物バンドとか、要するにゴシックの表面だけをなぞって間違えてしまった類いの奴らとか。
実はここまで書いてきて取り上げようと思ってたバンドがそれだったわけで、急遽取り止めにした次第だ。
シスターズ部分に熱を入れて書いたからもう書き直し出来ない、困ったニャーなどと思いながら何とか勘違いではなさそうなのを見つけて来たのがこれ。
特別に気に入ったわけでもないし映像もなくてつまらんが、ないよりマシというレベル。
実は全然知らなくてどうやらフランスのレーベルから出している最近のバンドらしいが、なぜか「特攻花」とか「神風」とか不穏なタイトルのレコード出してるな。
他の曲の曲調も聴いてみたが、まさに80年代、具体的にはエコー&ザ・バニーメンとかウェステッド・ユースとかの正統派ネオ・サイケっぽく感じた。
90年代くらいにもシューゲイザー=靴を見つめる人=うつ向きかげんに観客と目を合わせない内向的バンドというのが多数出たが、その延長線にも見えるな。
タイトルもそうだが日本語のサンプリングみたいなのも入ってて、こちらが聴くとちょっと気恥ずかしい気分もする。

ポスト・パンクみたいな事を今の時代に再現しようと思うとこういう風になってしまうね、というような見本市。
いくら自分が盛り上がってても周りの空気は違うという現実に突き当たる。

ROCKHURRAHは若い世代で今やってるサイトを始めたわけではなくて、ちゃんと熱かったあの時代を知ってるからSNAKEPIPEと二人でも80年代のままで続けてゆけるけど、このバンドはどうだろう?
時代は巡ってくるからまた80年代みたいになるといいんだろうけど、それは本当の80年代ではない。
この辺のギャップに彼らもウチも悩みそう。

今回も意外と長くなってしまったからたった2つのカヴァーのみ、しかもオリジナルに思い入れがあってもカヴァー曲には特に何も感じないというのが続いてしまったね。
また今度別な方角から探ってみよう。

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