映画の殿 第17号 映画の中のニュー・ウェイブ03

                   

【表紙の写真の関連性が不可解な組み合わせだな

ROCKHURRAH WROTE:

ずっと前に、続きを書くのをすっかり忘れてた企画があったのを急に思い出してしまった。「映画に使われた70年代、80年代の曲特集」という内容。
もちろんROCKHURRAHが書く記事だからパンクやニュー・ウェイブの音楽だけに限って集めてみたよ。
SNAKEPIPEが書く「映画の殿」の記事とは少し趣向が違ってて、映画の内容にはあまり肉迫しないのが特徴。

さて、今回集めてみたのはこんな3本だよ。

まずはこれ、1991年の「羊たちの沈黙」。
近年の海外TVドラマ「ハンニバル」シリーズの元祖、そして今では巷に溢れているサイコ・サスペンスと呼ばれるジャンルの元祖的な映画がこれだから、時代は古くてもこの手の映画ファンならば誰でも知ってるような作品だ。
TVシリーズではマッツ・ミケルセンが演じたハンニバル・レクター博士だが、オリジナルの映画版の方ではアンソニー・ホプキンスが強烈な印象で演じ、ハンニバルの代名詞と言えばやっぱりこちらの方だと思う。
特に拘束衣、拘束マスク(?)をつけたあのヴィジュアルは大のお気に入りで、SNAKEPIPEが時折、物マネをするほど(笑)。
アンソニー・ホプキンスは調べてみたらハンニバル以外でもケロッグ博士、ニクソン大統領、ピカソ、ヒッチコック、ハイネケン(ビール会社の社長)、プトレマイオス1世など様々な偉人を演じてる模様。ピカソはかなり似てると思うが、映画は未見。

ハンニバル・レクターが登場する映画は何作かシリーズになっているが、ROCKHURRAHはリアルタイムでは全然観てなくて、後にSNAKEPIPEの勧めで全部観ただけ。原作まで全部読んでるSNAKEPIPEとは大違いだな。

この映画で使われたらしいのがコリン・ニューマンの1stアルバム「A-Z」に収録の「Alone」という曲なんだが・・・。実はどのシーンで使われてたのか全く記憶にないんだよね。
YouTubeで探してみたが、たぶんこんなシーンでは使われてなかったような気がする。しかも途中でぶち切れ、あまり良いクリップが見つからなかったので我慢してね。ジョディ・フォスターが若い!

コリン・ニューマンは1970年代パンクの時代に活躍したワイアーのヴォーカリストだった人。大多数の人がワイヤーと表記しててたぶんそっちの方が正しいんだろうけど、ROCKHURRAHはなぜかずっとワイアーと読んでたよ。今日から急に改める気もないからこのままワイアーと呼ばせて。

ワイアーはパンクっぽい曲もあるけど、より知的でアーティスティック、ポップな面と実験的な面を併せ持った音楽性で、一味違う新しいものを求めていた若者に支持された。
それより少し後の時代に誕生したニュー・ウェイブ、ポスト・パンクへの橋渡しをしたバンドとして評価が高いね。
基本的にはワン・アイデアだけで一曲を完成させる簡素なスタイルが多かったけれど、数多くの他のミュージシャンがその音楽の切れ端からヒントを得た。alternative( 別の可能性、取って代わるもの)な音楽が誕生して発展したきっかけになったようなバンドだと思う。

分裂した後で再結成したり、後の時代も活動を続けるワイアーだが、ウチらの世代で言うとやはり初期の3枚の傑作アルバムに集約されているな。時代が目の前で変わってゆく空気感がビリビリと伝わるような音楽。
ワイアーが分裂状態になった後、80年代初頭にソロ活動を始めたコリン・ニューマンはこれまた元ワイアーの名に恥じない名曲をいくつも書いて、個人的にはとても好きなアーティストだった。
格別に特徴のあるスタイルや個性ではないけど、いそうで滅多にいないタイプの声や歌い方、これが素晴らしい。
歌詞が出てこなかったのかどうか不明だが、単に「あーーー!」という叫び声だけがメインの名曲「B」や「あーあーあー」というハミングだけで一曲モノにした傑作「Fish 1」など、今聴いても色褪せないな。文章だけだと何だか「うめき声マニア」みたいだが(笑)。

さて、次は2001年の映画「ドニー・ダーコ」だ。
これは80年代ニュー・ウェイブが効果的に使われた映画の成功例だから知ってる人も多かろう。
タイトルはヘンな響きだがそれが主人公の名前だ。
高校生ドニーを演じるのは暗い目つきのジェイク・ギレンホール、あまりさわやかさとか可愛げのない役どころだったから意外とピッタリだったのかもね。実の姉、マギー・ギレンホールが映画でも姉役で出ているな。

ドニーはある日、可愛げのない不気味なウサギ、フランクのお告げにより「世界の終わりまでの時間」を知る。
翌日、変な場所で目覚めた彼が家に戻ると、不在の間に近所で飛行機が墜落、そのエンジンが自室の屋根を突き破るというありえないような大惨事が起こっていた。ウサギに誘われて家を出なければ間違いなく死んでただろうという事態。
その後はウサギの言うがままに様々な騒動を起こしたり、転校生と恋に落ちたり、普通じゃないけど一応青春と呼べなくはない展開が色々あって、物語は世界の終わりの時まで進んでゆく・・・。
「わかりにくい」「不可解」という前評判があったが、勝手に想像したような不条理映画ではなかったな。

この映画の冒頭、主人公ドニーが自転車で峠道みたいなところを走るシーンで使われているのがエコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」だ。
今の時代、このバンドについて言ってる人はあまりいないとは思うが、当時はエコバニではなくてバニーズと「通」ぶった略し方をしていたな。
1980年代に湯水のように出てきたリヴァプール発のバンドの代表格が彼らだった。これまた今では死語に近い「ネオ・サイケデリア」と呼ばれた音楽の中で最も成功したバンドのひとつでもある。

ヒネクレ者で王道嫌いなROCKHURRAHは同じリヴァプールの中では日本での人気がイマイチなティアドロップ・エクスプローズやワー!などを好んで聴いているフリをしていたが、実はバニーズにもどっぷり漬かっていた。しかし人に聞かれたらやっぱり誰も知らないようなマニアックなバンドを挙げたりする。この辺の素直になれない心理もずっと成長してないなあ。

ちなみにこの映画はバニーズのこの曲以外にもジョイ・ディヴィジョンやオーストラリアのチャーチ(多作で有名)、ティアーズ・フォー・フィアーズなど80年代音楽が使われているが、使い方のポイントがイマイチだと個人的には思う。

最後はこれ、2006年の「マリー・アントワネット」。
父親が偉大な監督、娘は七光りのように言われるのは仕方ないがフランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラが監督の作品だ。

世界史に明るくない人間でも名前くらいは知ってるであろう、政略結婚でオーストリアからフランスに嫁いだマリー・アントワネットをキルスティン・ダンストが演じる。 しかしこれは歴史映画などではなく、王女になってしまった気さくな女の子が宮廷を舞台に奔放な生き様を見せるような映画で、試みとしては異色なのかも。
この手の映画としては会話も少なく、当時の最先端の宮廷ファッションや乱痴気騒ぎのパーティ・シーン、部屋でスイーツ食べながらダラダラしてるようなシーンの連続で実にライトな出来となっている。

監督の好みなのか何なのかは分からないが、この映画もパンクやニュー・ウェイブがふんだんに使われていて、しかも割とハッキリとした音量で流れるので、ROCKHURRAHにとっては音楽の部分だけは高評価だった。
せっかくの名曲なのに数秒しか使われなかったり会話でぶち切れになったり、そういう使われ方の映画が多いからね。単なるBGMでも敬意を払ってない監督が多すぎ。
上の仮面舞踏会のシーンではスージー&ザ・バンシーズの「Hong Kong Garden」がストリングスのアレンジで使われているな。他にもバウ・ワウ・ワウやアダム&ジ・アンツ、ギャング・オブ・フォーなどもまあまあ効果的に使われていて、80年代ファンならば納得出来る。

以上、タイトル画像の表紙がよくわからなかった人でも、ここまで読めば関連性が理解出来ただろう。

今回の記事には関係ないけど。
一番最後になってしまったが先週、突然世界中が悲しみにつつまれたデヴィッド・ボウイの訃報。これだけ「70年代、80年代のパンクやニュー・ウェイブ」ばかりを扱ったサイトなのにボウイについて何も思い出がないはずがない。パンクやニュー・ウェイブの誕生に最も影響を与えた一人かも知れない。
しかし本人の言葉通り、彼の音楽はいつまでも輝き続けるだろうし、知り合いのような追悼の言葉は出て来ない。
これからもROCKHURRAH RECORDSはデヴィッド・ボウイの影響を受けた一人として活動してゆくつもりだ。まるで音楽をやってる者のような語り口で偉そうだが、これがウチなりの追悼。
ではまた来週。

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