映画の殿 第18号 小さな悪の華+乙女の祈り

                   

【4人の美少女(?)達!】

SNAKEPIPE WROTE:

映画のタイトルバックが終わった後、本編が始まる直前に、「Based on a true story」(この話は真実に基づく) という文言を見かけることが多い今日この頃。
例えばキャスリン・ビグロー監督の「ゼロ・ダーク・サーティ」や昨年日本で公開された「フォックスキャッチャー」なども、実話に元に制作された映画である。
「事実は小説よりも奇なり」ということなのか、映画関係者のネタ切れなのかは不明だけれど、よく見かけるフレーズなんだよね。
70年代には、どれくらいの作品が事実を元に制作されていたんだろう?
今日ご紹介する「小さな悪の華」(原題:Mais ne nous délivrez pas du mal )は1954年に実際にあった事件を16年後である1970年に映画化した作品なんだよね。

黒髪のアンヌとブロンドのロールは15歳。
寄宿学校に通う2人はバカンスを利用し、盗みや放火、また牧童を誘惑したり庭番の小鳥を殺害したり、悪魔崇拝儀式を取り行うなどの残酷な行為を繰り返していた。
やがて2人の行為はエスカレートし、死の危険を孕んだ破滅的な終局へ向かっていく。

反宗教的で淫靡な内容のため、製作国であるフランスではもちろんのこと、世界中で上映禁止になり、アメリカと日本でのみ上映されたという「いわくつき」の作品なんだよね。
そのため本国フランスでのトレイラーは存在せず、日本版のトレイラーをみつけたよ。(笑)
元になった事件というのがニュージーランドで起こった15歳の少女2人による母親殺害なので、「小さな悪の華」は15歳の少女2人が悪事に手を染める設定だけ類似させているんだね。
事件そのものとの接点はほとんどないと言って良いみたい。

1970年の作品のためなのか、少し画面が暗い。
2人の少女、と聞くと明るく清潔で希望に満ちた未来に心をときめかせている、バラ色の頬に屈託のない笑顔というイメージを持つけれど(えっ、持たない?)アンヌとロールにその少女像は通用しないようだ。
あらすじにもあるように盗み、放火、動物虐待と殺害、大人の男を誘っては逃げるなどのハレンチな行為(!)を繰り返す。
当時はキリスト教を冒涜し、悪魔崇拝の儀式を行うところが一番の問題だったのかもしれないけれど、現在ならば児童ポルノと言われてしまうようなシーンのほうに眉をひそめ、倫理がどうのと言う人が多いかもしれないね?

大人の男を誘っては、相手がその気になった途端に「これはお遊びよ!」とからかって逃げる2人。
「私の魅力に屈しないはずはない」という充分な自信を持っていたからこそできた「遊び」だと思うんだけど、SNAKEPIPEには彼女達の魅力が伝わってこなかったんだよね。(笑)
予告のトレイラーにも「黒髪とブロンドの美しい少女」って書いてあるんだけど、残念ながら賛成することができないんだな。
こんな単純な誘いに乗る大人の男もなあ、という感想を持ったけど、実際にロリコンはいっぱいいるからね。
SNAKEPIPEには理解し辛い部分だったね!

「小さな悪の華」の中でSNAKEPIPEが一番印象的だと感じたのは、2人の少女が並んで詩の朗読をするシーンかな。

若者は家に帰ると頭を抱えた
学問の詰まった豊かな脳みそ
狂気が流れる
防壁が必要
穴を掘れ
防壁が必要
穴を掘れ

全く意味不明の、さすがフランス、とも言えるようなポエム!
どうやらジュール・ラフォルグの詩やボードレールの詩を混ぜたものみたい。
「小さな悪の華」というタイトルもボードレールの「悪の華」から引用されていることはすぐに分かるもんね。
Digue dondaine,digue dondaine,
Digue dondaine, digue dondon!
フランス語を知らないので「ディガディガディン、ディガディガドン」と聞こえてしまう、この音の響きが特に耳に残り、時々真似をしてしまうSNAKEPIPE。(笑)
ここが「穴を掘れ」になってたんだけど、原語と訳では意味合い違うんだろうね?

少女2人が笑いながら悪事を行うところがポイントかな。
罪の意識を持って敢えて悪いことをする、という点が怖いんだよね。
悪いことと知らなかったから笑って悪事をしていた、のほうが一般的な気がするからね。(この表現は変だけど)
国によって残酷の基準や倫理、マナーや宗教が違うけれど、もう今は「小さな悪の華」を上映禁止にする国はほとんどないんじゃないかな?
様々なジャンルの映画が公開されている昨今ならば、もうフランスでも上映解禁されているかもしれないね。

続いて紹介するのも、同じ事件を題材にした「乙女の祈り」(原題:Heavenly Creatures 1994年)である。

クライストチャーチの女子高に通う内気な少女ポーリンと、イギリスからの転校生ジュリエット。
2人は親友同士になり、秘密の世界を作り上げる。
少女たちの絆があまりに強いため、周囲の大人は同性愛と見なし引き離そうとする。
2人は一緒にいるために作戦を考えるのだが…。

「乙女の祈り」は1954年に起きた事件をそのまま忠実に再現したストーリー展開をしている作品のようである。
監督は「ロード・オブ・ザ・リング」で有名なピーター・ジャクソン
ニュージーランドで起きた事件だから、同じ出身の監督が起用されたのかな?
ファンタジー色が強い人、と思っているとROCKHURRAHからは「バッド・テイスト」の監督というイメージだと言われる。
スプラッター・ホラーだって!
それが初監督作品だというから、ファンタジーとはかけ離れてるよね?
ただし「乙女の祈り」にもクリーチャーを使用しているので、そこがピーター・ジャクソンらしさになるんだろうね。
主人公であるポーリンとジュリエットが創作した小説世界を映像化した場面は、粘土細工の人型が動くという不思議な世界。
このシーンはなかなか面白かったね!

主人公ジュリエットを演じたのが、これがデビュー作となるケイト・ウィンスレット
「乙女の祈り」の時に18歳か19歳だと思うんだけど、非常に醜悪で驚いてしまう。
はっきり言って全く「乙女」に見えないんだよね。(笑)
もしこれが役作りだとしたら、大成功かも!
ジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」でヒロインを演じて、世界的に有名な俳優になるとは思えないくらいの酷さ!
そう書いてはみたものの、SNAKEPIPEの「一生観ない映画」リストに「タイタニック」が入っているので、実際にヒロインだったかどうかは知らないんだけど!(笑)

もう一人の主人公であるポーリンを演じたのがメラニー・リンスキー
ぽっちゃりした体型に加えて、 何事も思い通りにならない青春時代の鬱屈した状態が表情に出ているので、こちらもかなりの醜悪ぶり!
2人の美少女が、とはキャッチフレーズできないなー! (笑)

現代では同性の恋愛について寛容になっているし、実際に結婚を認めている国もあるよね。
1954年のニュージーランドでは、まるで精神的に異常で、病気であるかのような扱いを受けてしまう2人。
時代が違っていたら、事件を起こすこともなく、ずっと2人で仲良く生きていかれたのにね。

「小さな悪の華」も「乙女の祈り」も同じ事件を題材にしているとのことだけど、印象はまるで違う。
前述したように事件そのものを再現しているのは「乙女の祈り」なので、事件について知りたい人にはお勧めかも。
SNAKEPIPEは事件そのものよりも、映画としての完成度としてみるならば「小さな悪の華」に軍配を上げる。
少女2人の秘密めいた雰囲気と残酷さがよく出ていると思うからね!

1954年の事件の犯人であるジュリエットはアン・ペリーと改名し、 ベストセラーの推理小説家になっているというオチがつく。
実際に事件の当事者が作家になるというケースは、そう多くないよね。
ましてや世間を騒がせた殺人犯人がベストセラー作家になるとは!
ジャン・ジュネや安部譲二を思い出すけれど、殺人犯人ではないからね。

同じ事件を題材に2つも映画が制作されるというのも稀だよね。
事件にも人を惹きつける魅力があったということなのか。
アン・ペリーの作品も読んでみようかな。

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