ビハインド・ザ・マスク

                   
【蟹江敬三が天知茂に早変わり!んなバカな!】

ROCKHURRAH WROTE:

あまり旬な話題もなく単に自分たちの中の好みだけをさまざまな切り口で紹介しているこのROCKHURRAH WEBLOGだが、今回書きたいのはたぶん誰でも知ってる有名な作家、江戸川乱歩について。
と思ったがこの偉大な作家をたかがブログ程度の文章量で語るのは大変すぎる。そこで乱歩の作品についてはまた別の機会という事にして今回は70〜80年代に人気だった「江戸川乱歩の美女シリーズ」という一連のTVドラマについて書いてみよう。

そもそも江戸川乱歩は探偵小説の世界で日本を代表するメジャーな作家である事は誰にも異存はないはず。そして乱歩が創り上げた明智小五郎は金田一耕助と並んで誰でも知ってる名探偵なのも確かだろう。
大正13年「D坂の殺人事件」で登場して以来、現代でもこの名前を知らない大人は限りなく少ないと思える。ただし作者や探偵の知名度の高さとは裏腹に、熱心に乱歩作品を読み漁っている現代人は案外少ないのかも知れない。少年探偵団世代は遠い昔の話、映像化された乱歩の映画も一部を除いてロクなものがないしなあ。
そう言って嘆く人にオススメ出来るかどうかは抜きにしてROCKHURRAHとSNAKEPIPEが週末の楽しみにしていたのがこのTV版乱歩シリーズ。いや、単にDVDレンタル屋のサービス・デーに一気に借りてきて休みの間に観てただけなんだけどね。
大昔には確かに人気作家で大衆に読まれていたに違いないが、実際に読まずに知ったつもりになってる世代にも広く乱歩とは明智小五郎とは、という事を知らしめたのが70年代のこのシリーズだろう。

知ってる人はとうに知ってるだろうがこれは77年からテレビ朝日系列「土曜ワイド劇場」でやってた天知茂主演のTVドラマだ。天知茂が主演を務めた8年間で何と25作も作られていて乱歩の主要長編のうち映像化可能な作品はほとんど網羅されてる。
ウチの場合は正月くらいから週末限定で18作目くらいまでまとめて観たけどリアルタイムのファンにとっては「次はいつ?」と待ち焦がれる作品だったろうな。この辺は京極堂シリーズのファンも同じようなもんだろうか。

さて、このシリーズをそれぞれ少年少女時代に観ていたROCKHURRAHとSNAKEPIPEは近所のレンタル屋で見つけ大喜び、あやふやな記憶をもとに順序もメチャクチャにこれを観始める。 昔は原題ではなく「○○の美女」などというタイトルがついたこれらのドラマ、単に入浴シーンとか子供っぽい荒唐無稽な部分ばかり記憶に残っていて「バカらしいけど観るか」程度で借りてみたんだが、改めて得た感想は「やっぱりすんごく面白い」と一致したわけだ。
子供っぽい荒唐無稽な部分は乱歩の作品ではむしろ作者が好んで仕掛けるエッセンスで読者もそれを楽しむわけだから、全然マイナス要素じゃなかったという事だね。

このシリーズは大まかに言えば「黄金仮面」「黒蜥蜴」「地獄の道化師」「魔術師」「緑衣の鬼」など原作でもお馴染みの派手な怪人物が明智小五郎に挑戦して戦ってゆくというもの、あまりこけおどしの部分がなく一般的な殺人事件とその解決というもの、そういうふたつのパターンがあってそのどちらにも違った面白さがある。この辺はいわゆる通俗物と呼ばれた大人向け明智シリーズの原作と同じだね。

この手のTVドラマとしては意外なことに原作に割と忠実に作ってる部分も多く、どちらかと言うと原作至上主義のROCKHURRAHでも納得出来る範囲の脚色、割愛がされていて非常に高得点。たまに原作とはまるで違うものもあるけど乱歩の個性や作風をヘタに曲解してなくて、その辺に好感が持てる。
原作では明智小五郎が出てこない作品もTVシリーズでは無理やり明智の事件として扱われているというような強引な力技もなぜか許せてしまう。
そういう良い脚本もあるけど、このドラマに関しては明智小五郎役をやっている天知茂の素晴らしさに尽きる。

原作としては明智小五郎が活躍したのは大正末期から昭和30年までなんだが、この「美女シリーズ」は放映していたのと同時期、つまり昭和50年代という舞台設定に置き換えている。その現代(昭和50年代当時の)に活躍する明智小五郎=天知茂とは・・・。
眉毛の間の深いシワに代表されるニヒルさと当時のダンディな中年を誇張し過ぎたキザな部分だけを見れば、この名優に馴染みのない世代の人は「何じゃこのオッサンは?」と思えるかも知れないが、これが一般的に考えられる名探偵の理路整然とした推理、というイメージを軽く超越してしまってるところがすごい。
たまに007並のアクションもこなして我々もビックリの大活躍をする。事件を解決するためには常識人が恥ずかしいと思えるような事も平気でする。要するにかなり常識外れな部分も併せ持った超探偵なのだ。
極め付けは毎回恒例となっているラスト近くの明智による変装。真犯人が明智を陥れ勝利の凱歌をあげているような時に最も効果的に犯人を告発するため?なのかどうかはわからないが、ここ一番で明智は巧妙な変装を解き、真犯人だけが「あっと驚く」という仕掛け。
ほとんどの場合、見ている人には明智が誰に化けているかは事前にわかってるのにね。

ちなみに変装以外でも天知茂版明智は住み込みの庭師とか工事人夫とか、天知茂本来のイメージからはかけ離れた人物になりすまして犯人を探るといったような傾向にある。このあたりの部分は明智役の天知茂自身が楽しんでやってるとしか思えないバカばかしさに溢れていて大笑い出来る。
文章でこの面白さを伝えるのは難しいのでまだこのシリーズを観た事ない人は是非ご覧になって頂きたい。

あと、天知茂の70年代ファッションも毎回凄過ぎる。派手な水玉のスーツに水玉のネクタイなどが代表的明智スタイル、襟はきわめて大きく裾はナチュラルに広がっている。正式名称はよくわからないが関西とかで70年代のヤンキーたちに人気だったニュートラ(本来のニュートラとは別もの)と呼ばれていたものと酷似している。オフの時はこういったスーツにキャプテン帽(それじゃ横山やすしでしょう)を合わせたり、もう毎回目が釘付けとなる事まちがいなし。
もしかしたら和製アラン・ドロンといった線を狙ってたつもりなのかも知れないが、このシリーズの天知茂も作者の江戸川乱歩同様に暴走しまくってるよ。

こういうわけで天知茂はウチのアイドルとなったわけだが共演もなかなか味があってよろしい。

まずは明智の相棒役、波越警部を演じる荒井注の独特なとぼけた味。原作ではあんまり出て来なかったような気がしたが石坂浩二版金田一耕助シリーズにおける間抜けな警部役、加藤武みたいなもんだろう。

そして原作では明智夫人となる文代。本当は「魔術師」の娘として登場するんだがこのシリーズでは最初から明智探偵事務所の助手として登場する。この役を「ムー」や「さかなちゃん」で人気あった五十嵐めぐみがやっている。
明智に憧れ、美女になぜかいつもモテてしまう明智に焼きもち、という役柄。この五十嵐めぐみと天知茂のやり取りも毎回の楽しみのひとつだ。

明智小五郎と言えば忘れちゃならないのが少年探偵団という別シリーズでも活躍する小林少年。何とこの役を第一回「吸血鬼」では大和田獏、それ以降はよく知らないんだが柏原貴なる人がやってる。原作ではよく「りんごのようなほっぺ」の少年として出てくるが、このTV版の配役はどう見ても少年じゃないだろ、とツッ込んだ人も多いだろう。

明智を含めたこの4人が犯人に対するのが黄金パターンなんだが「○○の美女」とタイトルにあるように毎回必ず美女役が出てきてこれもなかなか豪華。
※ここまで律義にリンク付けてたがもう面倒なので以後省略。
由美かおる、小川真由美、ジュディ・オング、古手川祐子、岡田奈々に片平なぎさなどなど、思いっきり70年代を満喫出来る。
ほとんどの作品では入浴シーンがあるんだが、ほぼ全て吹き替え。わざわざ体だけ別の人間が吹き替えして多くの人にスタイルが良くないとか誤解されるくらいなら本人がそのままやった方がいいんじゃないの?とも思ってしまうが。

ある意味かなりカルトな作品もあるしウソっぽいけど猟奇的描写もお色気もある。幅広い層が楽しめるエンタティンメント要素を凝縮したシリーズで人気があったのも頷ける。
何しろ25作もあるから全部の感想を書いていたらキリがないし、まとめの要約と言っても「みんな大体似たようなパターンで面白い」としか書きようがなくて結構難しいんだけど、食わず嫌いでこのシリーズを素通りしていた乱歩ファンも観たら目からウロコが堕ちる事間違いなし。

実は近所のレンタル屋ではなぜかシリーズのうち最後の数本だけ置いてなくてこの「美女シリーズ」を二人ともコンプリート出来てない状況で、それが残念。いつごろDVD化されたのかは全然知らないけど、あと少しなんだから何とか入荷してもらえないものかね。

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