映画の殿 第20号 サウンド・オブ・ノイズ

                   

【目的不明(?)、謎の音楽テロ集団。名前はまだない】

ROCKHURRAH WROTE:

前にちょっとだけ予告した通り、今回からブログのテーマをリニューアルしてみた・・・と書いてそのつもりでいたんだが、テーマ入れ替えの直後に大問題が発生(今日に日付が変わった頃の出来事)。
テスト環境でうまくいってた部分が本番の方では全く生かされてなくて白紙に近い状態になってしまっている。原因は現在究明中だけど、まさかこんなところで致命的なミスをするとは。トホホ。
受験に失敗した人みたいだが仕方ないね。
だからリニューアルは先送りにする事になってしまったよ。
読んでる人にとっては何も変わってないけどね。

さて、今回「映画の殿」で取り上げるのは2010年のスウェーデン/フランス合作映画「サウンド・オブ・ノイズ」だ。

こちらが思ったよりは色々なところで話題になったようで、知名度も高いみたい。
ストーリーはごく単純で、音楽を使ったテロ行為とそれを追う刑事の話。ん?これじゃ簡単すぎるか?もう少しは書かないとブログ記事として成立しないから何か書いてみよう。

冒頭、ドラムセットを積んだバンが女の運転で走ってゆく。ドラムの男が激しく叩き始めると車も連動したかのようにスピードアップするという手法だ。スピード違反で白バイが追っかけてくると後ろからドラムを撒き散らして追手を振り切る。
最初は車の中でドラマーのオーディションでもやってるのかと思ったが、これでこの二人組が過激な行為をやっているコンビという事がわかってくる。
この過激派組織というにはチャチ過ぎる二人組、組織名などはよくわからなかったが何か大きな事をやってやろうと目論んでるらしい。

人を顔立ちだけで判断するのはアレだが、首謀者の女が割と年配のタレ目であまり音楽関係に見えないし、ましてやテロ行為を企むような人間にも見えないけど一応、この映画のヒロイン。いいのかこれで?
パッと見た感じがスペインの大女優、カルメン・マウラの若い頃に似てると一瞬だけ思ったが・・・画像探しても似てる写真がひとつも見つからなかったので感想は却下しよう。うん、別に似てないね。

相棒のメガネ男もまた大人しそうな中年男。この顔を見てROCKHURRAH家の2人はものすごくピンときた。
過去に何度も紹介したけど、スペインが誇るコメディアン、サンティアゴ・セグーラの映画に出てない時の顔立ち(写真右)にソックリなのだ。スペイン本国ではシリーズ5まで製作された大ヒット映画「トレンテ」シリーズで知られる怪優なんだが、日本ではまだまだ知名度低いね。日本では最初のひとつがDVD化されてるだけ。話題が出たから便乗して言ってるだけなんだが、是非ともこの機会に全部DVD化して欲しいよ。
写真の左側が「サウンド・オブ・ノイズ」のテロリストの方。ただ顔立ちが似てるだけでそこまで強烈な個性がなかったのが残念。

この2人が4つの楽章から成る作品=音楽テロ行為を発案するんだが、それを実行するためにさらに4人のドラマーが必要になり、2人は人材を探してゆく。
凄腕のドラマーで既存のグループでは扱いきれないほど、型にはまってないアグレッシブさを持つ人物。そして彼らのテロ行為に賛同してくれるようなアナーキストという基準のようだが、これは割とすんなり見つかってあっという間に6人の集団が結成される。そんなのが近場に数人いる?あっけなさ過ぎじゃないか?
怒涛のティンパニ奏者とかすごい勢いでシンセ・ドラムを叩く男とか、なかなか面白そうなメンツなのに、この辺のメンバーの個性がイマイチ活かしきれてない感じがするのも残念。

そして集まった6人のテロリストが企てるのは街の中で繰り広げる音楽的テロ行為というわけ。身近にある何かを使って楽器にし、それで音楽を奏でてゆくんだが、これは即興でもなくてある種の音楽を「その楽器の代わりになるもの」で表現しただけのものだ。どちらかというと綿密な計算の結果にしか見えない。
タイトルにあるようなノイズではなく、やってる音楽もそこまで変わったジャンルとは言えないが、前衛的な実験映画ではないわけだからそれは仕方ないんだろう。

街中で単に耳障りな音を出しただけでテロ行為になるのかどうか?、そして何の目的で集団はそういう行為をしているのかは不明だが、器物破損だの住居侵入だの罪の材料になるような事をしているのは確か。

ここで捜査を始める刑事というのが実はこの映画の主人公なんだが、著名な音楽家の一家に生まれたくせに楽器が出来なくて音痴、音楽的な才能がないという設定。
名前だけ立派にアマデウスなどと呼ばれているが、音楽も騒音も嫌いで、ある種の音が聴こえなくなったり耳から出血したり、肉体的にも精神的にもどうなのか?と思える人物だ。しかも音楽的なエリートの家族とも確執があるようで・・・。
映画は割とコメディっぽく進行してゆくから狂言回しのような存在は必要なのかも知れないが、この刑事の聴こえなくなる基準もわかり辛くて「警察VSテロ集団」という図式はあってもいいけど、この悩みを持った人物が主役じゃなくてもいいんじゃないか?と思ってしまったよ。単にROCKHURRAHの理解力が足りなかっただけかも知れないが。

最初の方の病院でのテロ行為はなかなかバカっぽくて笑えたから期待して観たんだけど、刑事のサイドストーリーとかロマンスとか、話を膨らませたかった気持ちが強すぎて、音楽テロというナンセンスな行為自体の純粋度が減ってる気がしたよ。傍から見たら意味もないような行為でもアートの要因になるわけだからね。

この映画は元々短編映画だったものを長尺にしたものだと言うが、その短編の方が評価が高いのもうなずける。無駄な部分がないからね。

身近にあるものを使って楽器にした人は過去から現在まで幾多もいたわけで、この映画に使われたような音楽も目新しいものではない。
有名なところではストンプのように誰でも知ってるような集団もある。
が、ROCKHURRAHは特に知らないので何も語らず。例に出すまでもなかった。

個人的な好みで言えばビー・バップ・デラックスの「Surreal Estate」を思い出す。これはその辺にあるグラスやナベやおもちゃの楽器とかを使って演奏されていた。こういう稚気が感じられるような音楽が子供の頃から好きだったな。
別にこれが代表的なわけではなくて、今、たまたま思い出しただけに過ぎない。

80年代に最も有名だったのはドイツの前衛音楽集団、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンがやってたパフォーマンスだろう。
ROCKHURRAHがしつこいくらいに何度も書いているドイツのニュー・ウェイブ、通称ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中でも最も有名なバンドのひとつだ。
1980年代初頭にデビューした彼らは既成の楽器プラス、建築現場にあるようなドリルやチェーンソー、鉄板やコンクリートなどを使った即興的なパフォーマンスにより話題になった。 いや、もしかしたらすごい練習した結果がこういう演奏なのかも知れないが、偶然性に頼る部分が多いと想像するよ。

ノイバウテンについてはウチのブログで大昔に簡単だけど書いてたな
彼らも工事現場みたいなところで色々打ち鳴らすというようなパフォーマンスもやってるし、ライブ会場で床に穴を開けるという器物損壊もやっていた。
例えばパンクの衝動の中にもこういったカオスな要素はあるだろうけど、その部分を専門的に突き詰めたようなバンドが80年代には続々登場していて、ノイバウテンもそういった範疇にあった。
この映画のテロリストが目指したような事を既に80年代初期に実践していた先輩と言えるかもね。と言うよりは見た目も攻撃性もこちらの方がよほど筋金入りだな。
何かやたら「この」とか「その」とか「そういった」とかが多い文章になってしまったな。

上の映像は「爆裂都市」や「狂い咲きサンダーロード」などで有名な石井聰互監督が撮った廃墟パフォーマンスの模様で「1/2 Mensch(半分人間)」などという素敵なタイトルが付いていた。あの時代のニュー・ウェイブを体験した人にとっては観てて当たり前、の映像だったよね。ブリクサや他のメンバーもすごいが肉体労働者系ノイズ・パフォーマーのF.M.アインハルトが大活躍。ものすごい躍動感(?)だね。

ノイバウテンに限らず、インダストリアル・ミュージックやノイズ/ジャンク系の世界では少なからずメタル・パーカッションや既存の楽器以外で演奏をするミュージシャンが多い。これが特徴や個性や魅力となってはいるんだが、この手の音楽に対して免疫のない人にとってはどれも大差ない騒音でしかないのも確かだ。

ROCKHURRAHが育った北九州もドイツと似た工業地帯で(単なる想像)、街中や本当に稼働中の工場じゃ無理だが、ちょっと田舎の埋立地に行けば無人地帯もたくさん。廃鉄骨や廃鉄パイプなどは簡単に入手出来たという環境だった。
家に持って帰ったりはしなかったが、一人でデイ・クルップスごっことかしていたのを思い出す。「俺の体の筋肉はどれをとっても機械だぜ」などという崇高バカ理念で機械と人類の一体化を目指したのもノイバウテンと同時代だったな。

現場にあるものを使って音楽にした例をもうひとつ。これは別にリアルタイムでやってるわけじゃなかろうが、映像と音楽のバランスが良かったので挙げてみた。
フェアライトなどのサンプラーが出始めの頃はマシン性能の限界がネックとなっていたが、近年だったらやりたい事は大体出来るというような時代になってるんだろうかね。作ったのが誰なのかわからんが、機械工具以外に作業服のジッパー開け閉めとかまで音楽にしてるのがうまい。

結局、ROCKHURRAHのいつものパターンだが、映画本編については大して書かなかったな。ストーリーに余計なものが入ってるとかは個人的な感想なので観る前の人は気にしないでね。やってる音楽テロ行為自体はよく出来てるし、こういう変わったジャンルの映画はもっと色々出て欲しいよ。

ではまたHej då! (スウェーデン語で「さようなら」)

2 Comments

  1. 鳥飼否宇

    後楽園ホールのライヴのときには髪をのばしていたMarc Chungが、数日後に撮影された『半分人間』ではすっかり丸坊主になっていたのに驚きました。

  2. ROCKHURRAH

    鳥飼先生
    いつもコメント頂き、ありがとうございます。
    そして本格ミステリ大賞受賞、本当におめでとうございます。
    SNAKEPIPEと2人で我が事のように祝杯を上げました。

    ノイバウテンは見逃してしまったので大変に後悔をしましたが、その後バッド・シーズで生ブリクサを間近で見られました。
    がしかし、やっぱりノイバウテンの方が数倍見たかったし、ニック・ケイヴもバースデイ・パーティで見たかったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です