時に忘れられた人々【26】同名異曲編3

【もうマンネリとしかいいようのないトップ画像。ネタが尽きた!】

ROCKHURRAH WROTE:

他に書ける題材もあるにはあるんだが、書いていてなぜか筆が重いような企画が多くて中断してるネタが多数。ん?パソコンのキーボードだから筆が重いとは言わないか? キーがヘヴィで・・・ますます変か?
まあ書きやすいかどうかは気分次第なので、いずれスラスラと仕上がる時も来るでしょう。
今日は割と簡単そうだったからこれ。
まさかパート3まであるとは思わなかったが「同じタイトルなのに全く別の曲」というシリーズにしてみよう。

毎度毎度書いてる事だけど、ROCKHURRAH RECORDSではどんな時代でも”気分はいつも80年代ニュー・ウェイブ”なので、その手の選曲しかしないという姿勢を貫いてる。

時代の流れで完全に息絶えたかと思ってたレコードやカセットテープが復活して、これを知らない若い世代に人気だという。
レコードはまあ復活して当然だと常々思っていたが、まさかカセットまでリバイバルとは予想もしなかったよ。 「80年代を現在進行系のまま」などというテーマでずっと取り組んでたウチのサイトだが、思わず「懐かしい」などと現在進行系を無視した言葉が出てきてしまう。
個人的に言えば大昔の小倉(北九州市)、ベスト電器やデオニーという今あるのかどうかわからん家電屋に行くと、毎回バカのように3本セットになったカセットテープを買い漁っていたなあと思い出す。
TDKやソニー、そしてスキッズのリチャード・ジョブソンがイメージ・キャラクターだったBASFのテープなどなど。
自分で聴くのもあったけど、友達に自分が選曲したベスト盤みたいなカセットを贈るのが大好きだったよ。
音量レベル調節とか頭出しとか難しかったけど、時間があればずっと飽きもせずレコードを録音してるような子供だったな。

温故知新と言うべきか、そういうのがまた注目されるなら、ROCKHURRAHが毎回書いてる80年代満載のこのブログもいつの日か大注目される可能性もあるかもね。え?そんなことはあり得ない?

ちょっと書いたら懐かしくなって関係ない事を延々と書いてしまった。 だから今回も70〜80年代のパンクやニュー・ウェイブばかりを当たり前のように選曲するよ、というひとことが言いたかっただけだ。 長々と綴った回想は全然意味なしだったな。

相変わらずよくわからん前置きばかりで前にも読んだ人だったらうんざりだろうけど、そういうわけで今回も始めてみよう。

「バナナスプリット」というのは「トムとジェリー」や「原始家族フリントストーン」「チキチキマシン猛レース」などでおなじみのハンナ・バーベラ・プロダクションによるアメリカのTV番組だとのこと。

子供の頃はTVアニメや漫画が大好きで再放送もしょっちゅうやってたから、知らず知らずのうちにかなり多くのものを観ているな。特にこの頃は外国アニメやTVドラマが大変に多かった時代。
同じ作者なんて認識はこの頃にはまるでなかったけど、同世代の人なら誰でもいくつかの番組がスラスラ思い出せるはず。

試しに調べてみたら「出て来いシャザーン!」で有名な「大魔王シャザーン」や「ドボチョン一家の幽霊旅行」もハンナ&バーベラ作なんだね。二つとも大好きだったのにこいつは知らなかったよ。
ちなみに「幽霊城のドボチョン一家」という別物のアニメも同時代にあったそうで、ROCKHURRAHが観ていたのがどっちだったか実は全然覚えてないよ。何じゃそりゃ紛らわしい。

さらに詳しく調べてみたら好きだったのはハンナ&バーベラ作の方じゃなくて「幽霊城のドボチョン一家」の方だと判明した。 全く別のスタジオが作った作品なのにタイトル(邦題)やテーマソングがほとんど同じってすごくない?
制作した方には(たぶん)全く責任がなく、日本語吹き替え版のテレビアニメ独自のテーマソングらしいが、これは完全にどっちかが盗作したとしか思えないレベル。
しかもちょっと「Munsters」まで入ってるよ。
あまりの事に仰天して腰を抜かしたので今の記事とは関係ないけど特別に両方貼っておくよ。

仰天から立ち直ったので続きを書くが、どっちも作詞作曲が同じ人で同じ局の放映、つまり盗作ではなくて替え歌を流用したらしい。あービックリした。
がしかし、歌くらいもう1曲作り直せよ。
「ドボチョン一家の幽霊旅行」の方はドボチョン伯爵がなぜか「はけしゃけ」に聴こえるのが気になって仕方ない。

で、話は「バナナスプリット」に戻るが、この番組は実は全く観た事がなくて、単に歌を知ってるというだけに過ぎない。日本で放映してたのかな? どうやらアニメではなく着ぐるみ動物たちによるバンドのコメディらしいが、内容を知らなくてもこの歌はとても有名だから知ってるよ。

本来のタイトルは「Banana Split」ではなくて「The Tra La La Song」というらしいが、これを70年代にパンクでカヴァーしたのが米国ロサンゼルスのディッキーズ(The Dickies)によるもの。 関係ないが90年代には助平なオルタナ・クイーンと呼ばれたリズ・フェアもカヴァーしてるな。

ディッキーズと言えばチノパン?と誰もが連想してしまうが、70年代後半から活動してる長寿バンドだ。 アメリカのパンクはロンドン・パンクとはやや違うものも色々あるんだが、このディッキーズとかは普通にロンドン・パンクに近い音楽。
ちょっとコミック系が入ったスタイルのようで、全員がちっちゃくなってしまった(「だからどうしたの?」と言いたくなる)レコードジャケットでも有名だったな。
ブラック・サバスの「パラノイド」をパンク風にアレンジした曲とかが有名だけど、もっとバカっぽくコミカルな曲調のものが個人的にはお気に入りだった。
「プードル・パーティ」なんかは同じコミック・パンク・バンド系のトイ・ドールズの元祖みたいだもんね。

この 「Banana Split」も同じ路線のもの。 誰もが「この曲のパンク風はこんな感じ」と想像した通りの典型的な演奏と歌で軽快、コミカルな内容。
バナナがマイクになってるね。
ヴォーカルの前髪パッツンの髪型もすごい。前にこの記事でも同じような事を書いたな。 コミカルな雰囲気のバンドは多いけど、本当にコミック・バンドを目指してるわけじゃなかろうから、この映像見て実際に笑う人はいないだろうと思えるのが苦しいところだね。

その「Banana Split」と同じタイトルなのがこちら、ポルトガル出身の美少女シンガー(当時)、リオ(Lio)の代表曲。 育ちはベルギーで主にフランスで活躍してたらしいが、1979年にデビューした時にまだ若干16歳。

フレンチ・ロリータという言葉がある通り、フランスでは伝統的な系譜だったのがこういうアイドル系美少女によるフレンチ・ポップスだ。
リオはそういう中で(時代的に)ニュー・ウェイブ世代のフレンチ・ロリータというような路線でデビューした。 邦題もズバリ「美少女リオ」。ここまであけすけだと誰も文句が言えないね。
たぶんそこそこ人気はあったに違いないが、日本ではそこまで知名度はなかったのかな?

ベルギーからフランスの音楽界で大活躍したという例では、ROCKHURRAHが大好きなプラスティック・ベルトランを想像してしまうが、その手の路線とも違っていた。
ピンク色の服装でただ踊ってるだけという手抜きプロモの作りは一緒だけど。
それにしてもこの衣装は一体?光沢のない竹の子族みたいなもんか。

同じくベルギーのB級テクノで有名なテレックス(マルク・ムーラン)がバックバンドをやっていて、リオの曲もこの当時のテクノ、エレポップと呼ばれた音楽の延長線にある。
まだユーロビートなんてなかった時代だからね。
途中の「う、きゅん、う、きゅん(以下リフレイン)」というような電子音がいかにもで、こんなんでも当時はノリノリだったよ。
リオが自分自身で入れる合いの手みたいな「ぅんー」もピコ太郎の元祖みたいなもんか。

彼女はただの軽薄テクノだけじゃなく、フランスの初期パンク・バンド、スティンキー・トイズのファンだった事でも知られる。
アルバムにも確か彼らのカヴァー曲が収録されて向こうでは大ヒットしたはず。
スティンキー・トイズ、ROCKHURRAHも好きだったんだよね。
このバンドの紅一点、ヴォーカルのエリ・メディロスはきつい目つきで無愛想な雰囲気なんだが、80年代アイドル風の明るいリオとどこで接点があったんだろうか?
睨まれたりしてないだろうか、こっちが心配になるよ。

レコードには「Dedicated To Kevin Ayers (ソフト・マシーンの初期メンバー)」などとも書いてあり、只者じゃないアイドルを目指してたと見える。

このプロモではまだ子供っぽかったリオだが、90年代になってまたしても「Le Banana Split」を新たなミックスで発表して、その時は結構お色気路線になっていた。
コンスタントに活動はしてたようだが、ROCKHURRAHが初期と90年代のリオしか知らないというだけの話。 写真で見るとずっとお色気路線だった事がわかる。
その90年代のは何と同じ曲のヴァージョン違い5曲も入っててげんなりしてしまうが、一過性のアイドルで終わらなかったところが見事だね。

本当はなるべく長いタイトルが見事に一致した曲について書きたかったんだが、ROCKHURRAHの捜索能力がイマイチなので勘弁してやってね。

実にありふれたタイトルだが「Jealousy」。 このタイトルがついた曲もわんさかあるんだが選んだのは井上陽水・・・ではなくて。
今回よりによって選んだのがこちら。
ロンドンの下町、イーストエンド出身のバンド、ウェステッド・ユース(Wasted Youth)だ。
何か同じような名前のバンドが複数存在するのでややこしいが、同名バンド特集ではないので説明は抜きにするよ。

イーストエンドと言えばかつては犯罪の巣窟とか貧民街とか言われていたが、今はおしゃれな街に変身してるとの事。彼らが活動してた70年代後半くらいはまだ治安が悪かったんだろうな。

ウェステッド・ユースは1979年頃からわずか2〜3年しか活動してないバンドで知名度も低いし、ヒット曲もほとんどない。
ネオサイケと呼ばれる音楽にドップリという人は現在ではほとんどいないだろうが、そういうジャンルのファンでも「聴いたことないよ」って人も多かった。
オリジナルで出たアルバムはわずか1枚のみで、解散後に何枚かライブやコンピレーションみたいなのが出てるだけ。
シングルやオリジナル・アルバムはブリッジハウスというパブが作ったインディーズ・レーベルから細々(あくまで想像)と出てただけ。
これじゃカルト的扱いのバンドになるのも仕方ないだろうな。
このパブのハウスバンドみたいなもんだったのか?その辺は見てきたわけじゃないから不明だけど、パブ自体は立派でロリー・ギャラガーなど大物も出演してたらしい。

同郷だったオンリー・ワンズのピーター・ペレットがお気に入りのバンドで確か数曲プロデュースしてるはずだが、そのピーター・ペレット本人が80年代にはもはや「消えたミュージシャン」の筆頭に挙げられていたもんなあ。

ROCKHURRAHはこんな不遇な彼らが好きだったが、曲もその辺の「なんちゃってネオサイケ」とは全然違う本格派。
見た目も声も良かったのに大して話題にならなかったのは何で?と思っていたもんだ。
アルバムのジャケットがカーキ色みたいな薄く目立たない色で何を表現してるかさっぱりわからないとか、よりによってノリの悪い曲(結構サイケ)ばっかり選んでアルバムに収録したんじゃない?とか、ラフ・トレードみたいに大手インディーズに販売を委ねず宣伝活動を全然しなかったんじゃないかとか、売れなかった原因がさっぱりわからないよ。
コンピレーションに収められた未発表曲は名曲揃いなのにね。

この曲「Jealousy」は1980年のデビュー曲なんだけど、そんな彼らの動いてる映像が見れる唯一の曲。 うーん、第一印象が大事なデビュー曲でこんな地味なスローテンポの曲を選ぶか・・・。
しかしシド・バレットとルー・リードが出会ったかのような気怠い鼻声はあらゆるネオサイケの中でもトップクラスの表現力。今見てもカッコイイと思えるよ。
この前髪、これこそ80’sの極みだね。
しかし最後のあたり、みんなで肩を組むシーンがこの手のバンドではありえない展開。ジャニーズか?とツッコミたくなってしまうよ。

このバンドはインディーズ界でもあまり表に出て来なかったけど、ギタリストのロッコー・ベイカーが後にフレッシュ・フォー・ルルでちょいとばかし有名になったな。
キーボードのニック・ニコルはペルシアン・フラワーズというバンドやってたが、これまた幻と言えるほどの地味な活動。偶然シングルを持ってたが、たぶん昔に売ってしまったな。
ヴォーカリストのケン・スコットは後にスタンダード曲「ストーミー・ウェザー」を歌ったり、相変わらず誰にも知られないような活動してたな。
同時期に元スキッズのリチャード・ジョブソンが同じ曲を歌っていたのでジャズに疎いROCKHURRAHでも知ってるよ。なぜか関係ないのに2回もリチャード・ジョブソンが登場してしまった。

今はインターネットで何でも検索出来る、などと思ってる人が多いが、例えばこのバンドについて日本語で語ってるのがROCKHURRAH以外にはほとんどいないと推測される寒い状況。
まあ希少な内容のサイトをやってるという点で、ウチにも存在価値くらいはあるかな。

何か今回は横道にそれた発言ばかり多くて先に進まないな。

さて、その「Jealousy」と同じタイトルの曲をやってて、人があまり語らないバンドがこれ、ブートヒル・フット・タッパーズ(The Boothill Foot-Tappers)だ。

1980年代半ばのイギリスのバンドだが、カントリー&ウェスタンやブルー・グラス、フォークにトラッド、スカなどの音楽性がミックスされたアコースティックな音楽性が特徴。

ちょうど同時期にデビューして大人気となったポーグスあたりとパッと見には似てるが、聴いた感じあまりアイリッシュは感じなかった。
楽器編成もバンジョー、アコーディオンなど共通する部分はあるけど、ポーグスにあるマンドリン、笛がこちらにはなく、ポーグスにないウッドベースとウォッシュボード(洗濯板)がこっちにはある。

この頃はニュー・ウェイブが一段落して、ハードだの暗黒だの暴力だのエレキだの化粧だの、この辺の路線に皆が飽いていた時代。
それでなのか何なのか、大昔からあるような音楽を引っ張り出してきて、それに「ネオなんとか」と付けて新ジャンルにするのが流行っていたよ。
大まかに言えばこのブートヒル・フット・タッパーズもネオ・アコースティックの一種には違いないんだけど、カウパンク以外でイギリス人があまりしないカントリー系統への傾倒は割と斬新だったね。

まだこの時代にはそんな言い方はなかったけど、後に東京スカンクスのダビすけが提唱した「ラスティック」という総称(?)に当てはまるような音楽。
ウェスタン・スウィング、カントリー、ブルーグラス、ケイジャン、テックス・メックス、アイリッシュ・トラッド、ヒルビリー、ロカビリー(サイコビリー)、マカロニ・ウェスタンのテーマソングなどなど、上に挙げた一般的にはあまり馴染みのない音楽をうまい具合にミックスさせたようなバンドが後には続々出て来るが、このバンドとかもその先駆けみたいな感じかな。

女性3人がいて2人がヴォーカル(1人は洗濯板)かと思いきや、実は男ヴォーカルもいて曲によって使い分ける柔軟な構成。
「Jealousy」はスカ要素が強い名曲だが、他の曲ではかなり履いてテンション、じゃなかったハイテンションのバンジョーが炸裂するようなのもあり、この手のジャンルとしては素晴らしい完成度だったよ。
個人的に好きだった「Get Your Feet Out Of My Shoes」などはジョン・デンバーのファンに聴かせても「いい曲だね」と言われるくらいのエバーグリーンな名曲(ウソ)。
そしていい味出してるアコーディオンのキャラクター。
同時代に活躍した百貫デブばかりによるサイコビリー(ネオ・ロカビリーっぽいけど)&ラスティックの伝説的バンド、The Blubbery Hellbelliesのスリムが参加してるのもファンにとっては見逃せない。
大好きだったんだよね。

ブートヒル・フット・タッパーズはいわゆるクラブ・ヒッツなどでは欠かせない名曲を残してるが、レコードの時代は結構入手困難だったし同時代にはたぶん日本でレコードは出てなかった。
こんなに完成度高いのにね。
そういう意味ではちょっとマイナーな存在だけど、後に再評価されてCD化もしたな。

もうひと組、つまりあと2曲書こうと思ってたけど、案外長くなってしまったので今日はここまで。
ということでまだまだパート4までありそうな雰囲気だな。
もう飽きた?うん、ROCKHURRAHも。

それではまたチョムリアップ・リーア(クメール語で「さようなら」)。

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