ワンダリング・ポジション展鑑賞

20170108 top
【会場入り口を撮影。赤と青の色彩がキレイだね!】

SNAKEPIPE WROTE:

ついに2017年がスタート!
今年もよろしくお願い申し上げます。

今年最初の「行ぐぜ!exhibition」はBankArt 1929主催の柳幸典「ワンダリング・ポジション」!
なんとこの展覧会を推薦してくれたのは、昨年本格ミステリ大賞を受賞された鳥飼否宇先生なんだよね!
当初この展覧会は2016年12月25日までの開催だったけれど、会期延長により1月7日まで鑑賞できることまで教えて頂いたのである。
これは早速行かなくては!(笑)
情報を得た翌日、1月2日に横浜へと向かったROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
引きこもりが好きな2人には珍しく、素早い行動だね!
港が近い場所なので防寒対策をしたけれど、この日は驚くほどのポカポカ陽気。
マフラーや手袋が邪魔になるような気温の高さだった。
馬車道駅を降りて会場のあるBankArt Studio NYKに向かう。
ガランとした通りを地図を頼りに歩く。
SNAKEPIPEの方向音痴が少し感染してしまったROCKHURRAHと2人だから心もとない。(笑)
それでもなんとか会場に辿り着くことができた。
看板が出ているので間違っていないはずだけど、さすがに日本郵船株式会社の元倉庫だけあって殺風景な建物なんだよね。
これがなんとも好みにドンピシャ!(笑)
こんな場所で展覧会なんて入る前から期待が高まるね。

ここで少し、柳幸典について書いてみよう。(柳幸典HPより)

  • 1959 福岡県生まれ
  • 1985 武蔵野美術大学大学院造形研究科卒業(東京)
  • 1990 イエール大学大学院美術学部彫刻科(コネチカット州、ニューヘイブン、アメリカ)
  • 1993 イエール大学フェローシップ、美術学部優秀賞アジアン・カルチュラル・カウンシル、日米芸術交流プログラム第45回ベニスビエンナーレ、アペルト部門受賞
  • 1995 第6回五島記念文化財団美術新人賞
  • 2005- 広島市立大学芸術学部准教授

HPに載っている企画展への参加情報を見ると横浜美術館東京都現代美術館森美術館の名前があるんだよね。
どこかで柳幸典の作品を目にしたことがあるかもしれないけれど、アーティスト・柳幸典の名前を聞くのは今回が初めてだよ!
そんなことで現代アート好きを公言するなって?(笑)
いやいや、知っていることと体感することは別なので、これから知っていけば良いと思うし!

いよいよ会場に入る。
1月2日なので、さすがに客足はそれほど多くない。
それでも女性1人で来ている人を数人見かけて驚いてしまう。
混雑なくゆったり鑑賞できる空間と時間があるのは非常に好み!
慌てて来て良かったね!(笑)
一番最初に観たのは広い会場いっぱいに置かれた光る作品だった。
「Project Article9」というタイトルで、日本国憲法第9条を文節にして電光掲示していたのである。
意味や解釈はさておき、展示物として観て美しかった。
以前から自己流の現代アート鑑賞法について書いているSNAKEPIPEだけど、改めて言わせて頂くならば「好き!」とか「すごい!」とか「欲しい!」のような自分の好みの感覚で鑑賞すれば良いと思っているからね。
「うんちく」や「評論」は要らないと思う。
もちろん知ればより深い理解はできるだろうけど、直感的な好き嫌いで良いかな!
で、一発目の作品は「好き!」だね。(笑)
別の部屋には設計図(?)のような作品と、その設計図から制作された立体作品についての展示がされていたよ。

えっ?これで展示は終わり?
慌てて受付に駆け寄る。
「2階と3階にも展示があります。個人使用なら撮影もオッケーです」
上にも会場が続いていたんだね。
チケットと共にに手渡された会場の図面見れば分かるのに、うっかりしてたわい。(笑)
最近は撮影オッケーの展覧会もあるので嬉しいよね。
ピンぼけしないように撮らないと。(笑)

2階に向かうと、そこには国旗がたくさん展示されていた。
砂でできた国旗のようで、少しずつ崩れている。
チベットの砂曼荼羅みたいだなあ。
それにしてもチューブでつながっているのは何故?
「アリの巣みたいだよね」
と感想をもらしたROCKHURRAHが正解だったようで。
子供の頃に透明な板でアリを飼育するセットがあったみたいで、それに似てるんだって。
この国旗の作品は「Ant Farm Project」というシリーズだという。
本当にアリが中にいる(いた?)ってことなんだよね。
そのアリが移動することで国旗が崩れていく、現在進行系のアートということなのかな。
右のアメリカとロシアには政治的な意味を感じてしまうけれど、たくさんの国旗が並列している作品にはニセ国旗も数多く混ざっているようで面白かったな。(笑)
アリとは一体何の象徴なんだろうね?

同じフロアの展示では「Pacific Project」が楽しかった。
右の画像3分割されているんだけど、一番左が巨大プラモデルの制作前段階である枠、右上が設計図、右下が完成前の戦艦なんだよね。
恐らく枠にあるパーツを戦艦に取り付けることで完成するのでは?
ミニチュアの可愛らしさについても以前何かで書いたことがあると思うけれど、通常の大きさとは別の寸法になると違った印象になるのは面白いよね。
パーツの枠は高さ約3m程、戦艦が2.5mくらいかな。
巨大プラモデルには、さすがに男の子だったROCKHURRAHが大反応!
実際プラモデル作りをしていただけあって、じっくり鑑賞していたね。(笑)

「Fieldwork on Alcatraz」はアメリカにあるアルカトラズ島で制作した作品が展示されているブースだった。
アルカトラズといえば、即座に「アルカトラズからの脱出」(原題:Escape From Alcatraz 1979年)を思い出すよね!
実話が元になっている有名な脱獄映画は以前観ているよ。
「脱獄不可能」と言われていた元連邦刑務所で制作された3枚の赤い絵が、今回の展覧会のタイトルである「Wandering Position」なんだね。
直訳すると「放浪する立場」、意訳すると「揺らぐ存在意義」みたいな感じ?(笑)
アルカトラズとタイトルの相関については、人によって考え方が色々だろうね。

ついに最終フロアである3階に向かう。
「Icarus Cell」という展示は「こちらからお入り下さい」と書かれたトンネル入口から入場する。
外壁は右の画像にあるように、黒い壁が並んだ建造物なんだよね。
こわごわ中に入ってみる。
中は漆黒の闇の世界。
最初に目に入った明かりは太陽と思われる燃えるようなオレンジ色の球体だった。
タイトルにあるイカロス(イカルス)とはイカを喪失したわけではなく、イカが留守にしているわけでもない。(ぷっ)
太陽に近づき過ぎて、蝋でできた翼が溶けたため墜落死する、ギリシャ神話に登場する人物だという。
なるほど、それで太陽がここに出てくるわけね!(笑)
明るかったのは太陽が見えるところまでで、また道を進んで行くと暗闇の世界が待っている。
鏡を使った迷路みたいな感じなんだけど、あれ?
「自分の姿が写ってないっ!」
恐怖の声を上げるSNAKEPIPE。
「鏡の角度で見えないだけだよ」
冷静なROCKHURRAHの声で初めて気付く。
なあんだ、そうだったのか!(笑)
種明かしされたら納得なんだけど、暗い鏡の世界は異次元に迷い込んだようで、本来のトンネルの長さよりも長いように錯覚する。
まるで江戸川乱歩の世界だよ。
鏡の中に吸い込まれそうな感じがして、一人で歩いてたらもっと怖かっただろうな。
あまり読めなかったけど、何やら鏡に文章も書いてあったんだよね。
アトラクション型のアート作品、すごく楽しかった!
こういうタイプだけは、写真で観ても分からない作品だからね。

異空間から現実に戻ってきたはずだけれど、頭はまだぼーっとしていたようだ。
次はどっち?
何やら広い空間が見える。
柱と空間の色合いがとてもステキで、写真を撮っていた。
撮影しながら部屋に入ったSNAKEPIPEは、思わず声を上げる。

「Project God-zilla」と題された作品。
これはもう何も言葉が出ないよね。
広い空間に瓦礫の山が積まれている。
中にはギョロっとした不気味な目玉があちらこちらを眺めるように動いている。
タイトルにゴジラとあるので、この目玉はゴジラのもの?
ただし目には時々映像が映り込んでいる。
昭和の映像がいくつか確認できたんだけど、これも意味や解釈は無しにしておこうか。
全体が暗い中で、目玉だけが明るいので露出が難しかったよ。(笑)
ただ、ただ圧倒的で「すごい!」とその迫力に飲み込まれてしまったよ!

3階の2つの作品を観る(体験する)だけでも来て良かった展覧会だと思う。
2017年第1回目の鑑賞から非常に興味深かった!
これは幸先良いね。(笑)
情報教えて下さった鳥飼先生、本当にありがとうございました!

2 Comments

  1. 鳥飼否宇

    あけましておめでとうございます。

    柳幸典展、少しは楽しんでいただけたようでよかったです。
    私は年末に瀬戸内海の犬島に行き、柳幸典+三分一博志+三島由紀夫の壮大な展示場「精錬所美術館」をみてきました。なかなかすごいですよ。気楽に行ける場所ではないですが、もし岡山あたりまで足を延ばす機会があれば、ぜひご鑑賞ください。

    私の方もこのサイトでアートや音楽の情報を勉強させていただいています。
    これからもすぐれたセンスで記事を書き続けてください。楽しみにしています。

    今年はなんとか2冊は出したいと思っています。

    鳥飼否宇拝

  2. SNAKEPIPE

    鳥飼先生!あけましておめでとうございます!
    いつもコメント頂きありがとうございます。嬉しいです。(笑)

    コメントにあった「犬島精錬所美術館」は廃墟好きにはたまらない建造物ですね。
    そんな場所が美術館なんて垂涎モノです。(笑)
    いつか是非行ってみたいです。体験された鳥飼先生が羨ましいです!

    瀬戸内海のアートな島といえば、鳥飼先生の「物の怪」に収録されている「洞の鬼」を思い出しますね!
    鳥飼先生の新作を今年2冊も手にすることができるなんて、ワクワクします!楽しみです!
    2016年11月に書かせて頂いた「逆説的」に続き、今までの先生の著作について書かせて頂きたいと思います。

    どうぞ今年もよろしくお願いします!

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