SNAKEPIPE MUSEUM #41 Regardt van der Meulen

【壊れていくところ?作られていくところ?】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEに情報を与えてくれる貴重な存在であるROCKHURRAHから
「これ面白いよ!」
と教えてもらったのは、奇妙な彫刻作品だ。
一瞬で気に入ってしまった。
さすがはROCKHURRAH、SNAKEPIPEの好みを熟知してるね!(笑)

それが左の画像、「Weathered(2015)」という作品ね。
直訳すると「風化する」。
そのまんまだったね!(笑)
SF映画に出てくるような、例えば非常に強い光によって人体が消滅していく途中を切り取ったような作品は、残酷さと美しさを感じる。
このアンビバレント(また使ってる!)が作品の特徴なんだろうね。
気味が悪いけど好き、といったような対極にあるはずの感情のミクスチャー。
これはまるで敬愛する映画監督であるリンチが提唱した「Happy Violence」だよね。(笑)

この作品の作者は一体誰なんだろう?
調べてみるとRegardt van der Meulen、うーん読めん!(笑)
アメリカPGAツアーで活躍しているBrandt Snedekerと同じように最後がdtで終わってるので、ブラント・スネデカーに倣ってリガルト、と読んでみよう。
リガルト・ヴァン・ダー・メーレンでどうかな。
日本語で書かれた記事が見当たらなかったので、これで許してね!

更に情報を得ようと海外サイトも調べてみたけれど、
・南アフリカのヨハネスブルグ出身
・2008年にケープタウン大学を卒業した
ことくらいしか載っていなかった。
2008年に大学卒業なら、推定年齢30歳くらいなのかな。
本人のHPにも経歴に関する記述はなし!
秘密主義なのか書くべきことがないのか不明だけど、物足りなさを感じてしまうなあ。(笑)

作品鑑賞に戻ろうか。
右の画像のタイトルは「Unravel(2016)」。
自動詞で「ほどける」や「ほぐれる」という意味なんだね。
英検1級以上合格する大学院レベルの単語らしい。(笑)
SNAKEPIPEは初めて目にした単語だよ。
リガルト・ヴァン・ダー・メーレンは「見たまま」のタイトルをつけるタイプだということが分かるね。
この作品を最初に観た時に思い出したのが「人体の不思議展」。
血管だったか神経だったか、人体を貼り巡っている細い線だけの標本を鑑賞したことがある。
アレに似てるように思ったんだよね。
ほどけていくバレリーナ。
繊細な崩壊美、といった感じか?(やや意味不明)

リガルト・ヴァン・ダー・メーレンにインスパイアされて作品を制作しているアーティストを発見したよ!
おおおっ!流れていくー!
今まさに崩壊している、というシーンの連続再生だね。
スマホの待ち受け画面にしたくなる感じ。(笑)

このアニメーションGIFを制作したのはGeorge RedHawkという盲目のアーティストなんだよね。
えっ、盲目!
驚いてしまうけれど、どうやら「法的に盲目」ということのようなので、作品を制作することが可能みたいだよ。
特別なソフトを使用しているとのことだけど、リガルト・ヴァン・ダー・メーレンの世界観を更に解りやすく表現することに成功していると思う。
GIFアニメーションって簡単にいうとパラパラ漫画なので、この動きを出すのにどれくらいの枚数を使用してるんだろうね?
彫刻に動きをつけるという発想が面白いね!

リガルト・ヴァン・ダー・メーレンに戻ろう。
次もまた不気味な作品!
「Ephemeral(2015)」、直訳すると「短命」だって。
体の半分が骨になりつつある状態だけど、半身から美しい女性だということが分かるね。
バラの花だろうか、人肉を養分にして繁殖しているように見えてしまう。
それではまるで梶井基次郎の「櫻の樹の下には」みたいだね。
モデルの顔に力強さを感じるので、自らの意思で花を咲かせたようにも見えてくる。
素材が鉄なので、逞しくみえるのかもしれないけどね。
これも不気味さと美しさの相反する要素を持つ作品だなあ。

先日、読んでいた江戸川乱歩の「吸血鬼」の中に「殺人芸術論」なる言葉が出てきたのには驚いた!
昭和5年(1930年)から新聞に連載されていた「吸血鬼」で、すでに乱歩はデヴィッド・フィンチャー監督の「セブン」やテレビドラマ版の「ハンニバル」のような殺人をアートにする試みを行っているんだもんね。
「Ephemeral」も死体をアートにする系譜を感じる作品だと思うけど、どうだろう?

上に書いた感想を持ちつつも、やっぱりつい思い出してしまうのは「ターミネーター」かな。
顔の半分が機械の骨組みだから似てるんだよね。
リガルト・ヴァン・ダー・メーレンは「ターミネーター」から着想したのかなあ?(笑)

最後の作品は「Drip(2012)」、直訳すると「しずく」。
はいはい、垂れてます、いつもより多く垂らしています!(笑)
溶けていく人。
この作品を観て一番最初に思い出したのは日本神話にあるイザナミとイザナギの黄泉の国のくだり。
黄泉の国の住人になったイザナミが人の形ではなくなってしまったところね。
「決して見てはいけない」という妻の忠告に耳を貸さなかった夫であるイザナギが「人ではない姿」の妻に驚き、恐怖のあまり逃げていく場面である。
「Drip」は、まだ人の形になっているかな?

もう一つ連想したのはこちら!

ヒカシューの「ドロドロ」ね!(笑)

とろけていくよ
もうドロドロの心臓

というシュールな歌詞が印象的な曲なんだよね。
どうやらファーストシングルである「20世紀の終わりに」のB面だったみたい。
この曲とイザナミを連想してしまったSNAKEPIPEだよ!(笑)

リガルト・ヴァン・ダー・メーレンは作品として発表しているのは2012年からのようなので、まだまだこれからのアーティストみたいだね。
人体が朽ち果て頽廃し、壊れていくプロセスはどこまで続けていくんだろう。
完全に崩壊してしまった後の、風化していくところはどう表現するのか。
今後も注目していきたいね!

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