映画の殿 第25号 松尾スズキ part1


【松尾スズキのアップ画像。現在54歳。】

SNAKEPIPE WROTE:

久しぶりに「映画の殿」を書いてみよう。
週末毎の映画鑑賞の習慣は続いているけれど、「ツイン・ピークス The Return」が始まってからは、優先順位は「ツイン・ピークス」が1番になっている。
2番が「PGAゴルフ」鑑賞か。(笑)
映画を観る時間を利用して、録画しておいたゴルフ中継をまとめて休日に鑑賞しているからね。
そのため週に2本は観ていた映画は週に1本になることもあるんだよね。
これが「映画の殿」 をなかなか書けなかった理由かもしれないね?

実はもう一つ理由があることに気付く。
ほとんど邦画を観ないROCKHURRAH RECORDSだけれど、最近は邦画の鑑賞もしているのである。
ルールを決めているわけではないけれど、邦画に関しては「CULT映画ア・ラ・カルト!」 でカルト映画について特集したことがあるくらい。
それ以外の邦画について書いたことないんだよね。
どうしても書きたい、特集したいと思った映画ではなかったのも理由だろう。

「面白いから絶対観て!」
長年来の友人Mからの強い勧めがあったのは去年のことだった。
友人Mは情報収集能力に優れ、SNAKEPIPEの好みを熟知している心強い味方なのである。
そして友人Mのすごいところは、自身の「好き」や「面白い」という枠を作らないこと。
つまりは新旧や老若男女を問わず、映画でも音楽でも小説でも、なんでも知ろうとする姿勢を持っているのである。
SNAKEPIPEなどは「いまどきの若者みたい」と体験する前に敬遠することがあるので、友人Mの柔軟性には感心している。
その友人Mからの強い勧めにより、ROCKHURRAHを巻き込んで鑑賞することにした。
それがNHKのドラマ「ちかえもん」だったのである。
NHKの時代劇?人形浄瑠璃?近松門左衛門の話?
最初は恐る恐る、まずは1話観てみようか、ということになった。
こうしてROCKHURRAH RECORDSと松尾スズキが出会ったのである。(笑)

時は元禄16年(1703年)。
現代にも通じる格差広がる世の中で、戯作者・近松門左衛門(松尾スズキ)は、 定番の「歴史モノ」しか書けず、妻に逃げられ、母にあきれられ、スランプに陥り、堂島新地の「天満屋」に入り浸り、 年増遊女のお袖(優香)相手にちびちび酒を飲んでいた。
そんな近松の前に、ある日謎の渡世人・万吉(青木崇高)が現れる。
近松と万吉の二人は、お初(早見あかり)や徳兵衛(小池徹平)など、人形浄瑠璃「曾根崎心中」に登場する ひと癖もふた癖もある人々と出会い、さまざまな騒動に巻き込まれていく…。
果たして近松は傑作を書きあげることができるのか?
(Amazon販売ページより引用)

「ちかえもん」のあらすじを書いてみたけど、ちょっと長いね。(笑)
全8回のドラマなので、これくらいになるのは仕方ないかな?

松尾スズキ演じる主人公、近松門左衛門は人形浄瑠璃作家で、現在はスランプ状態の中年男。
そこへ青木崇高演じる「不幸糖売り」の万吉が現れるのである。
全く接点がないはずの2人が出会ったことから物語が始まる。
青木崇高という俳優は全然知らなかったけれど、万吉役がぴったりだった。
粗野だけれど純粋でまっすぐな性格、どんな時にも物怖じしないで突き進む。
近松門左衛門はそんな万吉に振り回される形で話が展開していくのである。

主役の松尾スズキの演技が最高だった。
顔芸とでもいうのか、表情で魅せる演技力。
替え歌まで披露していたしね。(笑)
「曽根崎心中」はタイトルだけは知っていても、内容についてはほとんど知らなかったので、「ちかえもん」のような軽快な語り口で教えてもらうと馴染みやすいかもしれない。
途中でアニメーションが入ったり、劇中劇が始まったりするところも斬新!
時代劇でこんなに笑ったのは初めてかもしれないな。
配役も見事で、優香や高岡早紀がとてもキレイだったのも印象的。
最終回が近づくと、寂しさを感じるようになっていた。

友人Mのお勧め通り「ちかえもん」は非常に面白かったのである。
「ちかえもん」はSNAKEPIPEが持っていた「NHKの時代劇」という観念を完全に打ち崩すドラマだった。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも、すっかり松尾スズキのファンになってしまった。
友人Mに至っては、あまりにも「ちかえもん」を好きになり過ぎてDVD-BOXまで購入するほど!
一体何回観たんだろうね?(笑)

松尾スズキについては90年代からTV情報誌「TV Bros」の連載で名前だけは知っていた。
今調べてみると、連載していたタイトルは「お婆ちゃん!それ、偶然だろうけどリーゼントになってるよ!!」だったね。(笑)
名前は知っていても、実際に松尾スズキ(当時は松尾すずき)が何をやってる人なのか、よく知らなかった。
少し調べてみようか。
1962年福岡県北九州市生まれ。
なんとROCKHURRAHと同郷じゃないの!
リリー・フランキーもそうなんだよね。
村上龍原作の「55歳からのハローワーク」が2014年にNHKでドラマ化された時に、二人共出てたっけ。
3年も前に観ているけれど、リリー・フランキーの回だけは明確に覚えているよ。
偏屈な感じの役だったせいもあり、その時点では松尾スズキに注目していなかったけどね。

松尾スズキの略歴に戻ろう。
1980年代後半に劇団「大人計画」を設立する。
「大人計画」からは脚本家としても有名な宮藤官九郎を筆頭に、阿部サダヲなど今をときめく俳優が多数選出されているね。
「大人計画」の社歌があったので載せてみよう。

「南平台じゃアイドル」のところで笑ってしまった。(笑)
松尾スズキについて知りたいと思ったら、まずは「大人計画」の舞台なんだろうね。
現在加入しているWOWOWでは「大人計画」の舞台も放映されているので、今度観てみようかな!

松尾スズキは劇団での活動以外にも俳優、小説家や映画監督としても活躍している。
出演している作品リストを見ると、意外と観たことがある映画にも出てるんだよね。
松尾スズキの場合は、印象的な脇役というイメージが強いんだけど、あまりにも観たのが昔過ぎて覚えてないよ。(笑)「ちかえもん」からすっかりファンになってしまった松尾スズキにまつわる映画やドラマを探し、鑑賞することにした。
その作品をいくつか紹介してみよう。

監督と脚本、出演もしている映画「恋の門」は2004年の作品である。
羽生生純の漫画が原作である。

「恋の門」の主人公、蒼木門を演じるのは松田龍平。
石を使って漫画を描く、という現代アートのような作品に真面目に取り組んでいる不思議な男である。
コスプレマニアで、同人誌で漫画を描いている証恋乃を酒井若菜が演じていて、この二人の名前を合わせると「恋乃・門」なんだよね。(笑)
かつては売れっ子漫画家で、今は漫画バーのマスター、毬藻田を松尾スズキが演じている。
初監督作品なのに俳優としての出番も多かったんだよね。
監督としての役割と俳優を最初から同時進行させるなんて、器用な人なんだねえ。
漫画がテーマなだけあって、映画には原作者である羽生生純本人やしりあがり寿、内田春菊をはじめとする漫画家が出演しているところも見どころ。
今は亡き忌野清志郎も出演していたね。
漫画が原作だと、どうしてもドタバタした感じになってしまうね。
ヴェネツィア国際映画祭に出品されたということだけど、どんな評価を受けたのかな?

続いての監督作品は2007年の「クワイエットルームにようこそ」である。
これは松尾スズキが自身の小説を映画化したもので、脚本も手がけている。
原作、監督、脚本の一人三役だね。
途中で踊るシーンがあったけど、その振り付けも担当だって。(笑)

フリーライターである主人公、佐倉明日香を演じたのは内田有紀。
薬とアルコールを同時に摂取したせいで、救急車で運ばれる。
着いた先は精神病棟、通称クワイエットルームであった。
ここは精神に何かしらの異常がある女性が収容されている病院で、映画の舞台なんだよね。

内田有紀の夫で放送作家の焼畑鉄雄を宮藤官九郎が演じている。
さすがに劇団「大人計画」つながり!
恐らく私服と思われるパンク色の強い身なりをしている。
宮藤官九郎が演技をしているのを見るのは、京極夏彦原作の「魍魎の匣」以来かな?
久保竣公よりは今回の焼畑鉄雄のほうが等身大だったろうね。
宮藤官九郎も監督作品あるよね。
少年メリケンサック」(2009年)や「TOO YOUNG TOO DIE!若くして死ぬ」(2016年)も観たっけ。
意外と邦画観てるなあ。(笑)

拒食症を患っている役どころの蒼井優は、このためにダイエットしたのかな?
本当に患者のように見えてしまったほど、リアルだったよ。
ゴス・ロリ・ファッションをしているので、余計に病気っぽかった。

「クワイエットルームにようこそ」では「おかしな人」がいっぱい登場するけど、やっぱり大竹しのぶの存在感はすごいね。
貴志祐介の小説が原作の「黒い家」(1999年)については、「好き好きアーツ!#14 貴志祐介 part1」で記事にしているSNAKEPIPE。
その時にも「見事な演技」と称した大竹しのぶだけれど、「近くにいたら怖い人」の系譜はここらへんから始まっているのかな。
先日鑑賞した「後妻業の女」(2016年)での主役も「はまり役」だったしね!
「クワイエットルームにようこそ」の中でも、タバコやテレフォンカードを「親切で」貸したりあげたりしているように見せかけて、後から取り立てる悪どい商法で稼ぐ女の役だった。
大竹しのぶの演技が自然過ぎて、「大竹しのぶ、怖い」と思ってしまうね。(笑)

続いて監督と脚本を手掛けた作品は、いがらしみきおの漫画を原作にした「ジヌよさらば〜かむろば村へ〜」(2015年)である。

2004年の「恋の門」に続いて、また松田龍平が主役なんだよね。

お金アレルギーになってしまった銀行マン高見武晴(松田龍平)は会社を辞め、お金を使わない生活をすべく東北の寒村に移住。
そこには謎めいた過去を持つ世話焼きな村長(阿部サダヲ)や、自ら神と称し周囲から人望のある老人(西田敏行)など、強烈な個性を持つ村人たちがいた。
一筋縄ではいかない彼らと向き合い自給自足の生活を目指すうちに、高見の生活は予期せぬ展開を見せるのである。
(Yahoo映画より引用)

「ジヌよさらば」では松尾スズキは俳優としても出演している。
監督、脚本、俳優とまたもや一人三役とはすごいよね!
映画では足の悪いヤクザという役どころ。
松尾スズキは声に迫力があるので、渋い役も合うんだよね。
NHKのTVアニメ「龍の歯医者」では声優もやっていたけれど、悪役が似合う野太い声で、すぐに松尾スズキだと分かったよ。
このブログの中で、一体今まで何回NHKと書いたかな?
NHK大好きって感じだよね。(笑)

原作の漫画と映画では、設定や展開は同じなんだろうか。
あらすじにあった「強烈な個性を持つ村人」の存在が面白いんだよね。
なんといっても「大人計画」所属の阿部サダヲ!
越してきた松田龍平の世話をするとはいっても、荷物を投げ飛ばして室内に入れるような乱暴者。
かなり暴力的な人物だけど、村長なんだよね。
この設定と阿部サダヲの演技がマッチしていたよ。

西田敏行も良い味出していたし、片桐はいりがハーレーを乗りこなしているのには驚いた!
ジャンプスーツが似合うほどの細身なのもびっくり。
顔だけ見てるとスレンダーな印象がなかったから余計だよね。

「ジヌよさらば」は漫画が原作だけど、処女作の「恋の門」のドタバタ感はなくて、非常に面白い作品だった。
「ジヌ」とは東北弁で「銭(ゼニ)」のことで、なまって「ジヌ」になったみたい。
幸せに生きていくことと、お金との関係について考えさせられる映画ということになるのかな。
あまり深く考えないでコメディ映画として鑑賞しても良いと思う。

今回は松尾スズキファンになったきっかけの「ちかえもん」から松尾スズキ監督作品3本についてまとめてみたよ!
実はまだ松尾スズキ関連作品は鑑賞しているので、part2を計画しよう!
次回はどんな松尾スズキに出会えるかな?(笑)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です