サイコビリー再考

                   

【世界最古のサイコビリーの誕生は約400万年前(ウソ)】

ROCKHURRAH WROTE:

今回はROCKHURRAHが大好きな音楽ジャンル、サイコビリーについて書いてみよう。いつも書いてるシリーズ企画「時に忘れられた人々」と内容的には同じなんだけど、まだ現役バンドも多いジャンルなので個人的には全然忘れられてないよ。というわけで、今回のは単発モノという事で進めてみたい。

サイコビリー、こんな音楽を全く知らない人もこの世にはたくさんいる事だろうから、まず簡単に書いておくか。
アメリカで1950年代に誕生したロカビリーを元祖として80年代にネオ・ロカビリーという音楽が流行った。これは70年代後半のパンク、ニュー・ウェイブを通過したロカビリーというのがポイントになっていて、古臭いただのリメイク・ロカビリーとは少し違った魅力があった。
オリジナルのロカビリーでは有り得ないシンセサイザーを曲に取り入れてニュー・ウェイブ版ロカビリーというスタイルを確立させたロカッツ。
化粧をしてロカビリーとグラム・ロックの融合を目指したポールキャッツ。
パンクとロカビリーをミックスさせたファッション・センスも注目され、MTVの普及によって人気バンドになったストレイキャッツ。
バンドによって路線が色々で、そういう特色が面白かったものだ。

そのネオ・ロカビリーの持つ不良っぽいルックスをさらに「エグく」して悪趣味に展開したのがサイコビリーというわけだ。PSYCHO+BILLYという事でサイコパスとかサイコ野郎とかの「サイコ」によるロカビリーという語源だ。決してサイケなロカビリーではないので間違えないように。
モヒカンの毛先がツノのようになった独特のサイコ刈りという髪型、両腕から全身に至る入れ墨、バンドによってはゾンビのようなメイクを施したり、などが主な特徴だ。
音楽的にはパンク、ハードコア・パンクからの影響を受けたものが多く、さらにバンドによってはガレージ、ヘヴィメタルやスカ、カントリー、トラッドにラテンなど独自のミクスチャー路線のものまで存在している。だからこれこそサイコビリーという定義はなく、何でもありの世界。
詳しく書くとこれだけでブログ数回分くらいになってしまうから、書き始めた割には後悔しているが・・・まあネオ・ロカビリーを究極にグロっぽくねじ曲げた音楽がサイコビリーだというような見解で間違いなかろう。

さて、これから80年代〜90年代に登場した有名どころのサイコビリーについて軽くコメントしてゆくつもりだが、せっかくだからサイコビリーが得意にしているカヴァー・ヴァージョン特集としようか。たぶん割と取っ付きやすいしコメントしやすいからね。

誰もが認める、元祖サイコビリーと言えばこのメテオスで決まりだろう。1980年英国産のバンド。ネオ・ロカにはあまりないダークで荒々しい曲調、何だかよくわからないが血だらけの印象があるライブ・パフォーマンス、サイコビリーのライブでは定番となっているパンチ合戦、そしてレッキンクルーと呼ばれる怖そうな親衛隊の存在。後のサイコビリー達が踏襲したスタイルを最初にやり始めたのがメテオスだった。ピュア・サイコビリーと呼ばれた彼らの音楽はチンピラなパンクよりも明らかにケンカ強そうな印象があるな。
カヴァーも色々とやってるバンドだが今回ROCKHURRAHが選んだのはストラングラーズの名曲「Go Buddy Go」だ。サイコビリー系のライブでDJタイムの時にかかる可能性が非常に高い定番の曲ですな。ビデオに出てくるメンバーや女の子の髪型、服装も80年代でいいね。

こちらはメテオスよりも少し後、82年モノのバンドだ。何だかわからんがMA-1やカウチン・セーターのメンバーに首を締められてるアルバム・ジャケットも有名。ヴォーカルが全身入れ墨のマッチョマン(死語)で、なぜか短パン大好きという印象がある。実は一番初期の頃くらいしか知らないんだが(←サイコビリー失格)、こんなに入れ墨すごかったっけ?曲はロック野郎なら誰でも知ってるレッド・ツェッペリンのカヴァーだ。エルビス・コステロの温厚な曲(表現変か?)「Radio Sweetheart」とかもカヴァーしてたがやっぱりこっちのツェッペリンの方が疾走感があっていいね。

極端なダミ声にゾンビ・メイク、フリークスをイメージしたステージなど、今回書く中では最もわかりやすくサイコビリーという音楽のバッド・テイスト、B級カルト趣味を体現したバンドがこのディメンテッド・アー・ゴー!だろう。変格大好きのROCKHURRAHが一番好きなのがこのバンド。他のサイコビリー・バンドがスラップ・ベースのカッコイイはじけ具合などが評価の対象になっているのと比べて、このバンドはもうヴォーカルのドスの効いた声だけでインパクト満点。曲はB級SFテクノ・パンクの雄、ディーヴォの名曲。もっとサイコにカッコイイ曲がたくさんあるバンドなので、実はカヴァーとしてそこまで絶賛出来るほどのものではないんだが・・・。
なんだ、カヴァー・ヴァージョン特集、早くも失敗か(笑)?

サイコ=ヒッチコック=フレンジーという連想からきた名前なのか?
これもサイコ初期から活躍していたバンドで、ウッドベースのスラップ奏法(フレットをカチカチと叩きながらリズムを取る奏法)がとにかく素晴らしい。ところが同時に歌う声は甲高くて迫力なく、ギターもパワーがなくてペラペラな感じ。ファンにとってはそういうアンバランスさも魅力だったんだけど、一般的にはもっとパワフルな編成に出来たんじゃなかろうか?と思ってしまう。後期になってからは何だかわからない長髪のメンバーがいたりして「サイコビリーとはこうあるべき」という固定観念から脱却しようとする試みも感じられたバンドだったな。その実験性(と言うほど大げさなモノじゃないが)の結果がこの曲などにも顕著だ。何と、サイコビリーとは程遠いロキシー・ミュージックの「恋はドラッグ」をシンセサイザーやホーンをフィーチャーしつつカヴァーしていて、肝心のサイコビリー要素さえ全然感じられない作品となっている。
このバンドのカッコ良さを知るには「Robot Riot」や「I See Red」などの曲を持ってきた方が良かったのは明らかだが、またしてもカヴァー・ヴァージョン特集失敗か(笑)?

ディメンテッド・アー・ゴー!などと同じくゾンビ・メイク系で人気だったバンド。しかしディメンテッドほどの突き詰めたホラー趣味はなく、声も演奏もネオ・ロカ、あるいはジャズ、カントリーっぽい曲を得意としていて、そこまでアクの強い部分はないかも。クラッシュやプレスリー、それに「カントリー・ロード」や「ユア・マイ・サンシャイン」「トム・ドゥーリー」などなど、数多くのカヴァー曲があるんだが、今回選んだのはアメリカのTVアニメ「原始家族フリントストーン」のテーマ曲。サイコビリーの持つ暴力的な部分もいかがわしさも皆無のコミカルな曲で、「何でこの曲を持って来るの?」とファンにツッコまれそうだな。B-52’sもカヴァーした曲で、なぜかROCKHURRAHは原曲の方のCDまで持っている。よほど好きだったに違いないが、何がそこまでROCKHURRAHを惹きつけるのかは本人にもわからぬ。

上記のサイコビリー・バンドと比べると少し遅くデビューしたクリンゴンズ。ある意味ド派手なバカっぽさを競い合ってるサイコビリーの中でもこのバンドのルックスと変なパフォーマンスは一歩抜きん出ている。メンバーの一人はサイコ刈りを発展させたツノを生やしてるし、オムツ姿のライブなどは朝飯前。以前に当ブログ「Funnyちゃんミュージック」の時も登場いただいたが、今回もファニー路線でこれ「セサミストリート」のカヴァーだ。サイコビリーの場合は穏便にカヴァーしてても突如速くなったりスラップ・ベースが入ったりするもんだが、意表をついて最後まで原曲と同じペース。こりゃ一本取られたね。

ネオ・ロカからサイコビリーへの転身組、クリューメンはどちらかというと正統派な印象があるが、ファンも多くて人気あったバンドだ。ディメンテッド・アー・ゴー!やクリンゴンズは派手だけど、これらの格好を真似てそのまま街着にするにはちょっとはばかられる。それをはばからないのが真のサイコビリーなのかも知れないが・・・。
というわけで通常の社会生活を営んでいるサイコビリーが真似られるようなバンドはやはり限られてくるが、このクリューメンとかはスッピンだし、影響も受けやすいのでは?でも若者たち、サイコビリー・テイストはやめてね。
話が逸れたが今回選んだのはグラム・ロックの大魔神、ゲイリー・グリッターの大げさな名曲のカヴァーだ。破綻してなくてメデタシ。

結構長くなってしまったので後半駆け足気味。コメントもだんだんぞんざいになって来るのがROCKHURRAH流。他のサイコビリー・バンドはデビュー当時は若くても海千山千のふてぶてしさがあるもんだが、このバンドは顔立ちが幼くてやんちゃな感じが微笑ましい。短パンにポロシャツだもんなあ。
曲はネオ・アコースティックの有名曲、ハウスマーティンズのカヴァー。さわやか系青春サイコとしては定番の曲だな。

もっと意外な曲のカヴァーはないか探していたらこんなのもあった。サイコビリーでやるか?この曲。エコー&ザ・バニーメンの哀愁の名曲をカヴァーしている。本当に、やろうと思えばどんな曲でもカヴァー出来てしまうサイコビリーという音楽も恐るべし。クエイクスは今回コメントしたバンドの中で唯一アメリカのバンドだ。サイコ=ヨーロッパという好みがあるROCKHURRAHはこのバンドの事についてはあまり詳しくないから、コメントは控えておこう。ストレイ・キャッツのレコード・ジャケットをパロディしたのでも有名だな。

この曲だけが有名で限りなく一発屋に近い印象がある。原曲は70年代にミッキー・モストがやっていたRAKレーベル所属のアローズというバンドのものだが、それよりも元ランナウェイズ、ジョーン・ジェットのカヴァーの方で著名。というかカヴァーなのに代表曲だもんな。このラットメンもそのパターンを踏襲しているかな。これまたサイコビリー系のDJタイムではおなじみの曲。

サイコビリーの毒々しい部分は少なくてネオ・ロカビリーや他のポップな音楽と程良くミックスされた聴きやすいバンド、ロング・トール・テキサンズ。本人たちをデフォルメした独特のコミックっぽいレコード・ジャケットも含めてトータルな質感が高いバンドだったな。
カヴァー曲も得意にしていてサイコビリーのバンドがなぜか伝統的にカヴァーする率が高いクラッシュの「Should I Stay Or Shoul I  Go」やスウィートの「Ballroom Blitz」なども例外なくカヴァーしている。この「Breakaway」は60年代の女性シンガーソングライター、ジャッキー・デシャノンがオリジナルでいいのかな?アーマ・トーマスのヴァージョンが一般的だが、80年代的にはやっぱりトレイシー・ウルマンのカヴァーが代表的だろうか。逆に男でカヴァーするのが珍しいからなあ。ちっちゃ過ぎて何だかよくわからないが、写真はアンリ・カルティエ・ブレッソンによるもの(ウソ)。

最後に。このブログを書き始めた時にはまだ知らなかったが、何とROBINが解散してしまうとの事。SNAKEPIPEとROCKHURRAHが一番好きなバンド。二人で最もライブを観た日本のバンドがROBINで間違いないし、このブログでも最も記事を書いたバンドかも知れない。
二人は全然関係者でもなくて単なるファンだから、友達みたいな事は全く書けないが、ウッドベースのYASUさんはいつでも気さくに握手してくれたし写真も何回か撮らせていただいた事もある。ギターのHIROSHIさんは迫力満点なのであまり声をかけられなかったが、去年の千葉ルックで仲間たちと念願の集合写真を撮らせていただいたのも素晴らしい思い出。
これからROBINのメンバーが別々にどういう活動をしてゆくかはわからないが、熱烈に支持出来るバンドがいなくなるのは寂しい限り。写真のシングル・ジャケットもカヴァー曲(ラークスの「Maggie Maggie Maggie」)なんだが、今回選んだのはこの曲ではなく、ミスフィッツの「American Psycho」だ。初期の頃から彼らが得意にしている曲でROBINのライブには欠かせない。
SNAKEPIPEがROBINのライブ参戦記を毎回書いてくれているんだが、ROCKHURRAHは今までほとんど書いた事なかったなあ。解散の時になってからしか書かないのもファン失格だろうけど、いつまでも応援し続けてゆきたい。

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