好き好きアーツ!#12 鳥飼否宇 part3 –物の怪–

                   

【観察者シリーズを並べて撮影!圧巻ですな!】

SNAKEPIPE WROTE:

今回のブログは「好き好きアーツ!#8 鳥飼否宇 part3」!
大ファンの作家、鳥飼先生の新作「物の怪」出版記念として第3弾を書いてみたいと思う。
「物の怪」は鳥飼先生の「観察者シリーズ」に分類される最新刊。
鳥飼先生は「~シリーズ」と、幾つかのシリーズを持っているのである。
今まで刊行されている「観察者シリーズ」については、また別の機会に特集してみたい。
今回は「物の怪」に焦点を当てた記事にしようと思っている。

ここで簡単な「観察者シリーズ」についてのご説明をしてみよう。
「観察者シリーズ」は大学の野生生物研究会というサークルに所属していたことが縁で、学校を卒業してからも15年以上(最新作ではすでに20年くらいになってるのかも)の付き合いがある4人が登場するシリーズである。
人里離れた場所でこのメンバーが遭遇する事件、というパターンがほとんど。
彼らの活躍する物語は、上の写真にある著作で知ることができる。

1人目は現在、植物写真家として活躍するネコこと猫田夏海。
メンバーの紅一点。
ただしあまり女性として扱われていない様子で、恐らく猫田自身もちょっと不満に感じているように見受けられる。
猫田の目線で物語が進むことが多く、その女性心理に共感するSNAKEPIPE。
男性作家が女性を描く場合、「んな女、いるわけないじゃん」とツッコミを入れたくなることが多い中、猫田のキャラクター設定はとても良く理解できる。
すぐに旅立てる身軽さを持つ活動的な猫田。
3人の男性との良い友人関係も羨ましいね。

2人目は猫田の大学時代の3学年上の先輩、現在は自称「観察者(ウォッチャー)」の鳶さんこと鳶山久志。
鳥や虫、植物など人間以外の生物全般に幅広い知識を持つ「生物オタク」である。
「観察者シリーズ」の由来はこの鳶さんから来てるんだよね。
このシリーズで(最終的に)謎解きをするのは、いつも鳶さん。
鋭い観察力と洞察力、豊富な知識から結論を導き出すのが得意。
生物に関する薀蓄を語り出すと止まらず、珍しい生物を観るためには一切を厭わないほどの熱中ぶりには驚かされる。
それで生活が成り立つのが羨ましいね。(笑)
猫田にはちょっと厳しい気がするのはSNAKEPIPEだけだろうか。
自分と同じくらい知識豊富になってくれよ、という先輩からの叱咤なのかもね?
「鳶さんのキャラクターは鳥飼否宇の分身かな、と勝手に想像するSNAKEPIPE。ひょうきんでちょっととぼけたインテリで、いい味出してるんだよね。」
と以前ブログに書いたことがあるが、実際鳶さんと鳥飼先生には共通点が多いのである。
東京の出版社に10年以上も勤務した後、鹿児島に移住。
移住後は野鳥や昆虫観察をしている。
ビール好き。
3月生まれ。
などなど。
あんまり羅列すると「ミザリー」みたいになるから、ここらへんでやめておくか。(笑)
恐らく同じような感想を持つ人が多かったためか、「物の怪」の表紙・折り返し部分に
「鳶山久志は分身ではない」
という趣旨の文言が書かれていて笑ってしまった。(笑)

3人目は猫田と同学年だった、現在はイラストレーター、ジンベーこと高階甚平。
昆虫や爬虫類を描くのが得意で、個展を開くと絵が完売するほど売れっ子という設定である。
このジンベーはスキンヘッドで小太り、けれどいつも奇抜なカラフルファッション、というかなり特徴のある風貌!
毎回ジンベーのファッションについては楽しみにしているSNAKEPIPE。
今回はスキンヘッド部分にサソリのタトゥー、蛍光グリーンのボアコートという出で立ち!(笑)
「観察者シリーズ」の中で、SNAKEPIPEが一番お友達になりたいのがジンベーなんだよね!
本当は佐賀県生まれなのに、何故だかベタベタの博多弁を使うところも気に入っている。
ジンベーの喋ってる箇所を声に出して読み
「博多弁ってこんな感じなの?」
と九州出身のROCKHURRAHに尋ねても
「博多弁のことはよく知らない」
と標準語で言われてしまった。(笑)

4人目は鳶さんと同学年、ということでネコやジンベーより3学年上の先輩であり、現在は西荻窪で「ネオフォビア」というバーを経営している神野先輩こと神野良。
資産家だった父親の遺産を相続し、賃貸マンション経営のかたわら趣味のバーも経営している、この人もまた羨ましいご身分の方。
バーの経営は損得勘定抜きの、完全なる趣味の世界を展開している。
置いてある酒はシングルモルトのスコッチだけ。
BGMは70年代ブリティッシュ・ロックを大音響で流すという、ほとんど神野良本人の居心地の良さだけを追求したバーなのである。
これで「ネオフォビア」(新奇恐怖)の意味が少し解った気がするね。
神野先輩の好きな世界についてはほとんど良く知らないSNAKEPIPEだけれど、そんな隠れ家的なバーにはとても興味があるなあ。
前述した元サークル仲間がバーに集まってくるのもうなずけるよね。
神野先輩だけは、事件に直接関わることがなくバー「ネオフォビア」を拠点とした連絡係のような役割を担っているようだ。
そういう意味ではもしかしたら神野先輩こそが「観察者」とも言えるよね。(笑)
そして鳥飼先生の新作「物の怪」はバー「ネオフォビア」から始まるのである。

※細心の注意を払って書いているつもりですが、万が一ネタバレになるような記載があった場合はお許し下さい。特に未読の方は注意願います。

「物の怪」には3つの短編が収録されている。
SNAKEPIPEの非常に個人的な感想をそれぞれのお話ごとに書いていこうかな!

1:眼の池
第1話に登場する物の怪は河童である。
バー「ネオフォビア」に見かけぬ客が来店し、その客が話した内容から河童に絡んだ事件について考察する話である。
河童の正体は一体何か、という鳶さんの解説が大変面白い。
そしてその博識を利用して30年前の謎もスルスルと簡単に解いてしまう。
とは言っても、その謎解きに必要な材料集めをネコにやらせる鳶さん。
突然翌日に山口県に行くことができるネコもすごいけどね!
たまにネコを褒めてくれる鳶さんの言葉があると、SNAKEPIPEまで嬉しくなってしまう。
やっぱりネコに感情移入してるのかもしれないね。(笑)
鳥飼先生の小説には自然を破壊する人間の行動や人間自体に対する怒りや悲しみを含んでいることがあるが(激しく同意!)、「眼の池」にも身勝手な人間に対する警告のような内容が入っていた。
「責任持てないならペットを飼うな!動植物はオモチャじゃないんだ!」
というメッセージを強く感じたSNAKEPIPEである。
それにしても豚って怖い動物なんだね?
トマス・ハリスの著作やパゾリーニ監督の「豚小屋」を思い出してしまったよ。(笑)

2:天の狗
第2話の舞台は立山連峰。
鳶さんとネコが天狗の謎を追う話である。
「天狗の高鼻」と呼ばれる、ロッククライミング界では有名な岩登りに挑戦しようとする大学生と、登るのをやめさせようとする山小屋主人と修験者の会話を聞くところから話が始まる。
「天狗の高鼻」には天狗がいるから危険、と聞いて鳶さんが興味を示すのだ。
修験者の持ち物についての説明が興味深い。
役行者についての本を読んだことがあったけれど、詳しくは覚えていない!(笑)
また読み返してみようかな。
この話の中でSNAKEPIPEが一番驚いたのが「タカとワシには明確な区別がない」というところ。
イーグルとホークなのに、体の大きさで呼び方が変わっていたとは知らなかった。
勉強になりました!(笑)
そしてまたトマス・ハリスを思い出してしまったよ。
ううっ、怖い!
SNAKEPIPEには犯人の動機がイマイチ解らなかったなあ。
やっぱりそういうことでいいのかしら?(←この言い回しが更に謎かも)

3:洞の鬼
第3話は瀬戸内海の小島・悪餌(おえ)島が舞台である。
悪餌島にある悪餌神社に伝わる追儺式—節分祭についての取材に訪れたネコに、やっとお待ちかねのジンベーと鳶さんが同行する。
節分、ということで今回登場する物の怪は鬼!
この小島の廃墟にアーティストが住み着いている、という本当にありそうな設定が面白い。
そしてそのアーティストの一人が行っているパフォーマンスアートについての説明の中に飴屋法水の名前を発見!
先々週のブログで丸尾末広を特集し、その中で「東京グランギニョル」について書いたSNAKEPIPEには嬉しい驚きだった。
飴屋法水が「東京グランギニョル」の主催者だったからね!
遠い過去の記憶に基づいて書いた記事と鳥飼先生の小説がリンクしているみたいだもんね!
それにしてもその手のパフォーマンスアートは非常に解り辛い。
結局は行為そのものよりも、思想を理解しないといけないアートだからね。
アーティスト本人、もしくは評論家みたいな誰かに説明を受けないと解らないアートって難しいよね。
説明聞いてもさっぱり理解できないことも多いし。(笑)
そうは言ってもアートとミステリーを融合させる鳥飼先生の小説は大好きなので、「洞の鬼」はとてもお気に入り!
小説内にSNAKEPIPEの敬愛する映画監督であるデヴィッド・リンチ監督の名前があったことも嬉しかった。
そうだ、あの映画ももう一度鑑賞し直そう!(笑)
「純真無垢」というのが良い結果を生むわけではない、という今回もまた怖いお話だった。

「物の怪」や「妖怪」と呼ばれる伝説上の生き物について、鳶さんが理論的に説明を付け解読していく3つの小説は読みごたえ充分!
「なるほど」と感心しきりで一気に読み切ってしまった。
鳶さんから、もっといろんな妖怪に対する解釈を聞いてみたい、とも思う。
でも伝説のままのほうが良いのかもしれない、とも思うし。(笑)
それにしても3つのお話共、一番怖いのは××(あえて書かないけどね)なんだなと思ったSNAKEPIPEである。

「観察者シリーズ」に登場する、前述した4人はそれぞれキャラクターが立っているので、なんだかもう知り合いのような感覚なんだよね。(笑)
また4人に会える時を楽しみに待っていようと思う。
「観察者シリーズ」ではないけれど、キャラクターが立ってる、と言えば増田米尊もいるよね!(ぷっ)
鳥飼先生、これからもずっと応援してます!

2 Comments

  1. いつも丁寧な感想、ありがとうございます。丹念に読んでいただき、著者としては本望です。
    「天の狗」の犯人の動機がわからないという声はよく聞きますね。書き方が悪かったかなあ。きっとご想像通りだと思うのですが、あえてヒントを出せば、CANのベスト盤ってことで。

    あ、つい先日夢の島で飴屋さんの構成・演出の舞台「じ め ん」があったようですね。東京にいればいけたのですが、こういうときは悔しい思いをします。

    このブログも毎週楽しみにしています。
    これからもいろんな話題をとりあげてください。

    鳥飼否宇拝

  2. 鳥飼先生、いつもコメント頂きありがとうございます!!!大感激です!(笑)
    そして「物の怪」ご出版おめでとうございます!
    毎回先生の作品を楽しみにお待ちしております!
    ビックリマーク多過ぎ~!(笑)

    「CANのベスト盤は?」の質問にROCKHURRAHが即答してくれました。
    やっぱり「そういうこと」でいいみたいですね。(笑)
    ヒント、ありがとうございます!

    「東京グランギニョル」以降の飴屋法水の足取りについては、東中野でペットショップをやっていたところまでしか知らなかったSNAKEPIPEです。
    情報に疎いですなあ。もっとアンテナ張らないとダメですね。(笑)

    台風が近づいているとのこと。
    今年は災害が多いのでフィールドワークの際は、どうぞお気を付け下さいませ!

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