時に忘れられた人々【12】情熱パフォーマンス編2

                   

【情熱ないパフォーマンスの頂点、Trioの「Da Da Da」】

ROCKHURRAH WROTE:

今回の「時に忘れられた人々」は前に一度だけ試しに書いてみた「情熱パフォーマンス編」の第二部にしてみよう。
この時のテーマの概要はこちらの記事でわかっていただけるはず。
目に見える行動だけが情熱とは言えないが、抑えきれない何かの情熱を素直に映像として表すのは見ていて気持ちが良いものだ。

さて、今回はそういう情熱映像をピックアップしてみたんだが、なぜだか最初に出てきたのがドイツ物ばかりという結果になってしまった。だから今回は「情熱パフォーマンスinドイッチェランド編(長い・・・)」という事にしてみよう。

ドイツの音楽と言っても人によって印象は様々だろうが、今回ROCKHURRAHが語るのは80年代にノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(要するにドイツのニュー・ウェイブの事)と呼ばれた音楽について。
実はこのシリーズ企画を考えた当初から予定していたのがノイエ・ドイッチェ・ヴェレ特集だが、聴くのも書くのも難しいジャンルだから、ずーーーっと先延ばしにしていたという経緯がある。 一般的にはあまり知られてないジャンルだからこそ、ものすごいマニアも存在しているわけで、そういう人たちが語るウンチクとROCKHURRAHの考えが全然一致してないのも書けなかった一因だ。
要するに小難しくなくノイエ・ドイッチェ・ヴェレを語りたいわけね。だからバンドが何を語りたいか、何を思って音楽やってるかなんて事ぜーんぜん気にしないで書いてみよう。

【跳ねる!】 DAF / Der Mussolini

正式にはDeutsch Amerikanische Freundschaft(独米友好同盟)だが、そんな長いバンド名を毎回語るのもかったるいのでダフと呼ぶ人が多い。

ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの一番初期に大活躍して、世界的に最も知られたドイツのニュー・ウェイブ・バンドと言ってもいいだろう。
1stアルバムは工場の機械の中でバレリーナが踊ってるというインパクト溢れたレコード・ジャケットで、これに惹かれて買った人も多かろう。しかしこのアルバム、曲名クレジットも何もなく、内容的にはヴォーカルが入ってないインストゥルメンタルであり、そもそも曲というよりは音の断片を羅列しただけという、荒削りな素材集みたいなものだった。
ノイズ、アヴァンギャルドといった音楽に全く触れた事がない人が聴いたら「何じゃこりゃ?」な内容なのは確か。逆にディス・ヒートとかそういうのが好きな人にとってはかなりドンピシャな音かも知れない。ギターのフリー・スタイルなぶっ飛び具合はすごい。

DAFと言えば一般的にはシーケンサーなどのエレクトロニクス楽器を駆使した暴力的&直線的なビートという印象だが、それが確立するのは2nd以降の話だ。メンバーの脱退が相次ぎ、最終的にはガビ・デルガド=ロペスといういやらしく濃い顔のヴォーカルとロバート・ゴール(Wikipediaではゲアルと書いてるがしっくりこないなあ)の男二人組となる。
「ファシストっぽい」とか「ゲイっぽい」とかそういう話題にのぼるような顔立ちに衣装だから、誤解されても仕方ないだろうね。「男二人の友情」というようには世間は見てくれないからね。 その二人が作り上げたのが単純明快なビートに乗って、ガビの粘着質なヴォーカルが展開してゆくというスタイル。この時期の代表作が今回取り上げた「デア・ムッソリーニ」だろう。この手の音楽の元祖的存在なのは確かだが、エレクトロニクスによる単調な主旋律とビートがずっと続くだけで、よくぞまあヒットしたものだと思える。

さて、その彼らのライブ風景だが、まさに右に左に飛び跳ねまくって歌い踊るガビのアクション全開の出来。4分近い曲でここまで動きまわるとは恐ろしい運動量だな。アグレッシブなハードコア・パンクのバンドでもこんなには動かんでしょう。 ライブで何曲やるのかはわからないが、一回のステージで精根尽き果てるのは間違いない。

【回る!】 Die Krupps / Machineries Of Joy

上記のDAFと同じく、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの初期から活動していたのがデイ・クルップスだ。
元々Maleというパンク・バンド出身のユーゲン・エングラーが中心となったもので、商業的にも割と成功したように思える。 初期の彼らの特徴はいわゆるメタル・パーカッションを多用した音作りにあった。
ユーゲン・エングラーが独自に作り上げたシュタロフォンと呼ばれる楽器は工場で拾ってきたような鉄板(と言うより延べ棒のようなもの)を鉄琴のような形にして、それを鉄の棒で叩くというシンプル極まりないものだった。それが普通の市販されてる(市販されてるのか?)鉄琴とどこがどう違うのかは鉄琴学に詳しくないROCKHURRAHごときにわかるはずもないが、彼らのシングル・ジャケットに誇らしげに写真が載っている。自慢だったのは間違いない。

初めて動いているクルップスを見たのは福岡天神の親不孝通りにあった80’s Factoryというライブハウスだった。
いや、そこにクルップスが来日したとかそういう話じゃなくて、当時の外国のニュー・ウェイブ状況を伝えるという啓蒙的なフィルム・イベントで、ワイアーのコリン・ニューマンやジョイ・ディヴィジョン、デア・プランなどの映像と共に見た記憶がある。まだプロモーション・ビデオとかが気軽に見れないような時代で、音楽大好きだったROCKHURRAH少年は深く感動したものだった。現地に行って現物を見た人以外で、こんなマイナーなバンドのライブ姿を見れたのはかなり早かったのではなかろうか?

おっと、話が逸れてしまったが、ここで見たクルップスは確かにランニング姿でこのシュタロフォンを叩きまくり歌っていた。
エレクトロニクスを駆使したデジタルな音楽っぽいのに、やってる事は体育会系でアナログ極まりない。この時代のそういう未完成な音楽は好きだね。
しかも鉄板を鉄の棒で叩きまくるわけだから肩や肘への負担が半端じゃない。これ以上続けたら肩をこわしてしまうぞよ、などと医者に止められたかどうかは知らないが、ユーゲン・エングラーにはそういう「巨人の星」みたいなスポ根逸話まで残っているようだ。手のスジが「ピキッ!」といかなかったからその後もバンドを続けていられるんだろうけどね。

このバンドのもう一つの特徴というか何というか・・・彼らは自分たちの代表作「Wahre Arbeit Wahrer Lohn」をこよなく愛し続けて30年余り。この曲のヴァージョン違いミックス違いが常識で考えられないくらい存在しているのがすごい。バカのひとつ覚えと言えなくもないが、そこまでひとつの曲にこだわり続けるのが情熱パフォーマンスの真骨頂だね(笑)。

さて、紹介するのも元歌は「Wahre Arbeit Wahrer Lohn」で、これをイギリスの同系列バンド、ニッツァー・エブとコラボレートしてやっている。最初に歌ってる花形満みたいな髪型の人はニッツァー・エブの人で、その後にホイッスル吹きながら現れるのがこのバンドの顔、ユーゲン・エングラーその人だ。
ROCKHURRAHが見た80年代初期のクルップスじゃないから得意のハンマービートも控え目なんだが、動いてる映像がヘヴィメタル・バンドになってしまった後(後にそうなってしまう)くらいしか残ってないので仕方がない。
【回る!】の意味はいちいち解説しなくても映像見れば一目瞭然でしょう。

【じゃれる!】 Palais Schaumburg / Wir Bauen Eine Neue Stadt

後にソロとして活躍するホルガー・ヒラーを中心としたパレ・シャンブルグ(当時の「ロック・マガジン」的に読めばパライス・シャウンブルグ)も初期ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中で重要なバンドだった。
彼らの特徴は他のドイツのバンドに比べてエレクトロニクスの使用率がかなり低いという事が挙げられる。通常ロックで使われる楽器+トランペットというオーソドックスな編成はメタル・パーカッションやシンセ使って当たり前のドイツ音楽界では逆に少数派なのかも。
ただし、その編成で普通のロックをやるかと言うと大違いで、実験性と革新性に溢れていてROCKHURRAHも大好きだった。特にドイツ語による字余りすぎラップといった風情の「Madonna」やファニーなデビュー曲「Telefon」は今でも愛聴している。

そんな彼らの代表作がこの曲。決してポップな曲でもないのにプロモは80年代風軟弱ダンスが炸裂するというアンバランスなもの。音を消して映像だけだとすごい軽薄そうに見えてしまうが、実は割と重厚というギャップが素晴らしい。

ホルガー・ヒラーはこの後バンドを脱退してしまいソロの道を歩むが、なぜか「うる星やつら」の主題歌で有名な小林泉美(千葉県船橋市出身)と結婚して離婚したり、ちょこちょこっと日本でも話題に上るような活動をしていたな。

【壊す!】 Einstürzende Neubauten

一般的には「読めん!」って人も多いだろうが、アインシュタルツェンデ・ノイバウテン(崩壊する新建築という意味だそうな)はドイツが生んだノイズ/ジャンク系の真打ちだと言える。パッと見には長身の美形男、ブリクサ・バーゲルトを中心にして、元アプヴェルツのマーク・チャン、F.M.アインハルトなどのクセモノが揃った超藝術集団だ。

ブリクサはその人間離れしたマスクなもんで、当時の音楽雑誌の表紙とかにもよくなっていた。
それを見た面食い女子達がファンになって買ったりしていたものの、正直言ってその何%がノイバウテンの音楽を理解して好きになっていただろうか? インダストリアルとかアヴァンギャルドとか言うはたやすいけど、これほどとっつきにくい音楽も他にないかも。
この映像を見ればわかる通り、電気ドリルやバーナー、数々の廃材などを持ち込んでそれを打ち鳴らす、穴を掘るといった現代アート風パフォーマンスのつもりだろうが、限りなく工事現場作業に近いシロモノ。しかも専門家が見たら手つきがなっとらん、と叱られる事必至の三流ぶりだよ。そしてその結果生まれた音楽が前衛的でとっつきにくいのは当たり前だとも思える。

個人的な事を言うなら今、家の前でガス管取り替えとかの工事やってるが、そこから生まれる騒音と大差ない世界だもんな。 今回は「壊す」という映像が欲しかったからこの曲にしたが、本当は代表作である「Yu-Gung」とかは随分わかりやすくカッコ良い名曲だと思う。石井聰互が監督した「半分人間」などもインダストリアル好きにはたまらないだろうね。

今回は情熱パフォーマンスとは言ってもあまり面白くもないものばかりになってしまったな。まあドイツのニュー・ウェイブ自体が英米のとはちょっとニュアンスが違っていて、面白さやカッコ良さのツボも異質だから、この程度で許してくんなまし。

ではビス・ネヒステ・ヴォッヘ!

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