赤と黒/世界の終わりと環境世界 鑑賞

20220612 top
【岡本太郎記念館入り口から看板と庭を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

表参道にあるジャイルギャラリーでは「世界の終わりと環境世界」という展覧会が開催されている。
デヴィッド・リンチのファンであることを公言している飯田高誉氏がキュレーターを務めているので、気になっていたんだよね。
ちょっと足を伸ばして岡本太郎記念館にも行ってみることにした。
ROCKHURRAHは初めて行くことになるよ。
開館時間を考えて、まずは岡本太郎記念館へ。

薄曇りの、少し蒸し暑い日に表参道に向かう。
梅雨の晴れ間というほどの日差しはないけれど、雨ではない日は貴重だからね!(笑)
駅から岡本太郎記念館までの道のりは、少し前にも歩いたはずだけど、解体工事が始まっているビルや通ったことがある店舗がクローズしていたりと、変化が見られたよ。

岡本太郎記念館はオープンしたばかりの時間だったけれど、ちらほらお客さんの姿があった。
今回は「赤と黒」というテーマの展覧会で、記念館2階は「赤の間」と「黒の間」に仕切られていた。
最初は赤の間から鑑賞する。
「この血の色こそ、生命の情感であり、私の色だ」
とは岡本太郎の言葉である。
確かに岡本太郎の絵には赤色が印象的に使われているよね。
会場には植物も一緒に展示されていて、生命の息吹を強調しているようだった。
赤色のバックに全く引けを取らない、作品の力強さも際立っているよね。
血湧き肉躍るような、岡本太郎からパワーを分けてもらっている気分!
画像の「遊ぶ時間」は、ユーモラスでとてもかわいかった。
自由を謳歌している雰囲気がよく出ているよね。

一方こちらは「黒の間」。
照明が落とされ、仄暗い部屋に足を踏み入れる。
闇の中からボワッと浮かび上がる物の怪か、はたまた妖怪か?
岡本太郎の作品は、照明によって印象が変化するんだね。
黒の間も非常に効果的で、SNAKEPIPEは恐ろしさを感じたよ。
黒に対する岡本太郎の言葉は「己を滅びに導く、というより死に直面させるような方向、黒い道を選ぶのだ」が採用されていた。
赤は生、黒は死という根源的な話だけではなく、恐怖と隣合わせに魅力も感じていたみたい。
なんとなくその気持ちは分かる気がするよ。
岡本太郎版土偶と呼びたくなる「喜び」という作品の存在感も抜群だった。
黒の部屋も堪能できたよ!
庭には「ゼルダの伝説」のコログの元ネタみたいな、かわいい作品がたくさんあって嬉しくなる。
どれもみんなかわいいんだよね!(笑)
ROCKHURRAHも気に入ったようで良かった。
また訪れたい記念館だよ。

続いてジャイルギャラリーへ。
ジャイルに向かう道の途中から、長い行列ができていて何事かと驚く。
キディランドの制服着た人が整列させていたので、何かグッズを買い求めるための順番待ちみたいだけど、皆さん並ぶの好きだよね。
ROCKHURRAH RECOREDSが目的のジャイルでの行列じゃなくてホッとしたよ。
SNAKEPIPEが前回ジャイルに来たのはいつだっただろう、と調べると2021年3月の「2021年宇宙の旅」だったみたい。
そしてこの時も、岡本太郎記念館とのはしごだったことが分かったよ。(笑)

ジャイルギャラリー入ってすぐ、まるで本屋の「おすすめコーナー」みたいな展示が続く。
理論家の飯田高誉氏の蔵書なのかもしれないね?
「人間中心主義」から離脱し我々がすべて異なる「環境世界」に生きていることへの認識に到達できるのかを問い掛けていく、というのが展覧会のテーマとのこと。
テーマにちなんだと思われるタイトルが並んでいるよ。
恐らく、どの本も何回読んでも難解そう!(笑)
飯田高誉氏のツイッター見ても、世界情勢とアートの話が多いので、興味の幅が広い印象だよ。

本の次に展示されていたのはフランス人アーティスト、リア・ジローの作品だった。
説明を受けないと理解できないタイプだね。
「アルゲグラフィック(algægraphique)」という光に反応する微生物(微細藻類)を使用しているんだとか。
微生物を国立自然史博物館チームとリア・ジローが共同で開発したというから、アートと科学の融合なんだね。
生物学的現象、テクノロジー、画像システムのミクスチャーで作品を発表しているというリア・ジローのようなアーティストは、これからもっと増えそうだね。

先月2022年5月に、六本木のSCAI PIRAMIDEで鑑賞したばかりのアニッシュ・カプーア。
ジャイルギャラリーにも展示されていたよ!
「1000の名前」という1979年から80年にかけて制作されたという作品で、顔料を使っているという。
アニッシュ・カプーア自身の解説は「潜在意識から突き出た氷山のように、表面の下に何かがあることを意味します」だって。
飯田高誉氏は「あたかも核爆弾の爆発によって降り注がれる『死の灰』を想起させる」と書かれている。
SNAKEPIPEは月の表面を連想したけど、それぞれに解釈があって楽しいね!(笑)

「ギャロップする南部馬」 はAKI INOMATAの作品。
絶滅した日本固有種である南部馬を骨格標本から彫刻・3D出力後凍らせ、透き通った馬にしたという。
こういう手間のかけ方とデジタル化の組み合わせが、今のスタイルなのかな。
童話のようなかわいらしさを感じていたけれど、喪失感や懐かしさなどをテーマにしていたとは、知ってびっくりだよ!
説明があったほうが良いのか、悩むね。

草間彌生の映像作品も展示されていた。
1967年の「草間の自己消滅」は、タイトルだけは知っていたけれど、観るのは初めて!
意味を理解することは難しいけれど、かなりショッキングな映像だったよ。
撮影禁止だったので画像は載せられず残念だけど、当時の人は驚いたんじゃないかな?
「花脅迫」という2000年の作品は、ひまわりの花に埋もれる草間彌生本人の映像だった。
これも自己消滅になるんだね。

今回の展示で一番気に入ったのは大小島真木のインスタレーション「ウェヌス」だった。
革を継ぎ接ぎしたトルソーに、銀河とプランクトンの映像のコラージュが円形に投影される作品、と説明されている。
その文章がなくても、目が釘付けになっちゃったよ!
ROCKHURRAHが映像を撮ってくれたので載せておこう。

今回は2つの展覧会をはしごしてみたよ!
近くにたくさんの会場があると、短時間で鑑賞できて良いね。
最近の飯田高誉氏企画の展覧会は観念的なので難しいけれど、付いていきたい気持ちもあるんだよね。
理解できなくても観ておきたいって感じ。
また近いうちにどこか行きましょ!

篠田桃紅展 鑑賞

20220529 top
【毎度おなじみの構図で看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週日曜日にNHKで放映されている「日曜美術館 アートシーン」は、15分という短い時間にも関わらず、展覧会情報を知るのに最適な番組なんだよね!
範囲は全国にまたがっているため、例えば山口県立美術館で開催されている展覧会に興味を持ったとしても、行くことは難しいけど。(笑)
全く知らなかったアーティストや文化について学べるので、楽しみにしているんだよね!
先日の放送された展覧会で、観た瞬間から「これ!行きたい!」と叫んだのが、東京オペラシティアートギャラリーで開催されている「篠田桃紅展」だった。

SNAKEPIPEには初耳だったアーティストだけど、1950年代から有名な方のようで。
まずは篠田桃紅の略歴をまとめておこうか。(東京オペラシティアートギャラリーサイトより抜粋)

1913 中国大連に生まれ、翌年父の転勤で東京に移る
1940 銀座鳩居堂で初めての書の個展を開催するが、「根なし草」と酷評される
1947 この頃より文字に囚われない抽象的な作品を制作しはじめる
1954 サンパウロ市400年祭の日本政府館(設計・丹下健三)に壁書を制作
ニューヨーク近代美術館「日本の書」展に出品。
1955 ベルギーの画家ピエール・アレシンスキーの映画「日本の書」撮影のために制作を実演
1956 単身渡米
主にニューヨークを拠点に2年にわたり活動、全米各地およびパリで個展を開催
1958 帰国し大田区田園調布に住む
日本で制作して海外で精力的に発表しながら、独自の抽象表現に取り組んでいく
1965 国立京都国際会館(設計: 大谷幸夫)のためにレリーフと壁画を制作
ベティ・パーソンズ画廊(ニューヨーク)で個展(以後複数回開催)
1974 増上寺(東京)のために壁画と襖絵を制作
2003 関市立篠田桃紅美術空間開館
2021 東京都内で逝去

昨年107歳で亡くなっているんだね。
番組内では100歳を超えても、作品制作に取り組む様子が映し出されていた。
1956年に40歳を過ぎて単身渡米とは、勇気あるよ!
ちなみに草間彌生の渡米は1年後の1957年だったようなので、先輩にあたるんだね。
海外での評価も相当に高かったことが、年表からも分かる。
建築家とのコラボも多かったようで、もしかしたら知らないうちに篠田桃紅の作品を目にしていたのかもしれない。
パワフルな活動をしていた篠田桃紅だけれど、制作中も着物姿というのが、なんとも粋じゃないの!
日本女性の気高さや気丈さを体現していたように感じたよ。

アートシーンを観てから、およそ2週間後にROCKHURRAHとオペラシティギャラリーに行く。
前回オペラシティを訪れたのは2022年3月の「ミケル・バルセロ展」なので、つい2ヶ月前のこと。
あの時は服装を失敗して寒かった記憶があるけれど、出かけた日は25℃を超える夏日の予報。
冷房対策したほうが良い気温になってるよね。

オペラシティアートギャラリーは、予約の必要がなく、会場でチケットを購入するシステムを採用している。
万が一混雑した場合には待たされるというシンプルさ!
今まで何度か訪れた経験では、そこまで混み合うことがなく、ゆったり鑑賞できるギャラリーだという認識を持っていた。
開場時間である11時少し前に着くと、今までとは違う光景を目にして驚く。
チケット購入のために列ができているじゃないの!
およそ20名程度の後ろに並び、観客チェックを始める。
ROCKHURRAH RECORDSと同じようにアートシーン効果なのか、以前より篠田桃紅を知っていてやってきたのか?
どちらかというと年齢層高めの観客が多い印象だよ。

いよいよ開場。
通常と違っていたのは観客の多さだけではなく、撮影が禁止だったこと。
白髪一雄やミケル・バルセロの展覧会では、一部のみ撮影禁止はあったけれど、すべてダメというのは初めてだよ!
作品一覧に印をつけておくためのペンもなく、本当に鑑賞するだけになってしまったよ。
それでは感想をまとめていこう!

書家を目指していた篠田桃紅が、初個展で酷評されたのは、伝統にとらわれない自由な書を発表したためらしい。
確かに一般的な書道とは大きく違い、感情の吐露と激しさが伝わってくる作品だよ。
パンクな感じがして好きだけど、1940年代に女性がこの表現を見せたら驚かれただろうね。

続いても書の作品。
万葉集に収められた大津皇子が詠んだ歌が書かれている。
「あしひきの山のしづくに妹待つと 我立ち濡れぬ山のしづくに」
原稿用紙に似せた格子に、一文字ずつ書き連ね、最後の一枡に小さく「大津皇子」と書かれているんだよね!
これを観てROCKHURRAHがフフッと笑っている。
篠田桃紅の遊び心が伝わってくる作品だよね!
画像奥には、また別のパンクな書が見える。
上の作品、大津皇子の作品、奥のパンクの書と比べてみただけでも、桃紅フォントの違いが分かるよね。

会場を進んで行くと、書から次第に抽象絵画に展示が変化していく。
「カッコいい!」
構図と色彩とデザイン。
すべてがバシッと決まってるんだよね。
陳腐な言い方だけど「和モダン」の先駆者なんだろうな。
墨の濃淡と赤色という非常にシンプルな色だけを使用しているのも特徴のひとつ。
日本画における間の使い方に似た構図は、篠田桃紅の場合アメリカの抽象絵画に近いのかもしれないね?
経歴には、家庭環境や少女時代についての記述が少ないので、どうしてこのような表現が生まれてきたのか謎だよ。
1950年代の日本といえば、前述の白髪一雄も参加していた「具体美術協会」などの前衛芸術まっさかりだったことを思い出す。
その当時、篠田桃紅と「具体美術協会」の接点はなかったのかな?
想像すると面白いよね!

1960年代になって、フィラデルフィア美術館から来日した刷師のアーサー・フローリーの勧めにより、リトグラフ制作を始める篠田桃紅。
この時の年齢47歳くらい?
40歳を過ぎてから渡米できる女性なので、年に関係なく新しいことにチャレンジするんだね。
リトグラフの作品も素晴らしくて、ロシア構成主義やバウハウスっぽい雰囲気で、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEはよだれがダラダラでたよ!(笑)
ジャポニズムミーツバウハウスだね。
とてもスタイリッシュだったよ。

まるで佐倉にある川村記念美術館のロスコルームか、といった部屋もあったよ。
真ん中に椅子が置いてあったので、座ってじっくり鑑賞してみる。
四面ある壁、それぞれに大型の作品が展示されていたんだよね。
これはもう桃紅ルームでしょ!(笑)
岐阜県関市や新潟県に篠田桃紅の美術館があるというので、是非この部屋を作って欲しいよ。
SNAKEPIPEが知らないだけで、もうすでに桃紅ルームあったりしてね?
およそ120点という相当な展示数を鑑賞できて、大満足の展覧会だった。

2階のフロアでは、篠田桃紅にちなんで「1960-80年代の抽象」が開催されていた。
こちらは撮影オッケー!
やったーと思ったのもつかの間、ガラスに反射してキレイに撮影できないよ。
写真の出来はいまいちだけど、一応載せてみようか。

韓国のユン・ヒョンクン(尹亨根/Yun Hyong-keun)の「Umber-blue ’77」。
ピンク・レディー「カルメン’77」の時代ってことね!(古い)
マーク・ロスコかバーネット・ニューマンか、といった感じだけど、実際70年代にニューヨークで触発されたらしい。
韓国の伝統的な水墨画を思わせる抽象絵画は、篠田桃紅の韓国版といったところかな。
黒色の濃淡や、ベージュの縁が淡くもやっとしているところにグッとくるよ。
最近は抽象絵画に心を惹かれるんだよね!(笑)
ユン・ヒョンクンも知らなかったので、記憶しておこう!

長年来の友人Mなら「あ!かずおちゃん!」と駆け寄るに違いない、白髪一雄の作品も展示されていたよ。
キャンパスからはみ出んばかりの迫力は、観間違わないね。
2020年2月に鑑賞した「白髪一雄 a retrospective展」でも観ているはずだけど、他のアーティストの作品と並んでいると、その特異性が際立つよ。
日本人離れした大胆さ、やっぱり最高だね!(笑)

「マーク・ロスコじゃないの?」
思わず声に出したSNAKEPIPEにタイトルを見るように促すROCKHURRAH。
「More Tragic! More Plangent!…More Purple! Rothko’s Chapel 1」 という作品名で、アーティストはなんとマイク・ケリー!
2018年4月にワタリウム美術館で鑑賞した「マイク・ケリー展 デイ・イズ・ダーン」は衝撃的で、今でもたまにあの時の映像が頭をよぎることもあるくらい。(笑)
画像が斜めで分かり辛いと思うけど、マイク・ケリー風のおふざけなのか、ロスコ風の作品を制作したんだろうね。
思わぬところで知った名前に出会えて嬉しかったよ!

100歳を超えても作品制作に取り組んでいたという篠田桃紅。
作品も素晴らしかったし、その生き様にも頭が下がる。
観客の年齢層高めだったのが、うなずけるかも。(笑)
2015年に出版された「一〇三歳になってわかったこと」がベストセラーになったという記事も見つけたので、いつか読んでみよう!

行って良かった展覧会だったけど、展覧会図録が手に入らなかったのが残念。
最近多いのは、図録完成が遅いこと。
鑑賞したら購入したいと思うのが普通なので、もっと早くショップに並べて欲しいよ。
どうかお願いします!

Anish Kapoor: Selected works 他 鑑賞

20220522 top
【ピラミデビルで撮影。ギラついた太陽で暑さが伝わるね!】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mと六本木に行く。
ミッドタウン近くを歩いていたら、写真展のポスターを発見。
フジフィスムスクエア写真家エリオット・アーウィット作品展「観察の美学 筋書きのない写真たち」が開催されているではないの!
エリオット・アーウィットなんて写真の教科書に出てくる大御所中の大御所。
1928年フランスに生まれ、1947年からニューヨークを拠点に約70年活躍してきたマグナム・フォトのメンバーだからね。
せっかくなので行ってみることにする。

銀座にある富士フィルムフォトサロンは何度も通ったけれど、フジフィルムスクエアに入るのは初めてだよ。
A4より少し大きさのある、四切の印画紙が並んでいる。
大々的に宣伝している割には、展示数は少なめだなと感じてしまう。
壁一面のみ、およそ30点だからね。(笑)
「あ!この写真知ってる!」
名前は知らなくても、作品は知っていた友人M。
1955年に撮影された「カリフォルニア」は、ROCKHURRAHも知っていたよ。
「フェアーグラウンド・アトラクションのジャケットに使われてたよね」
80年代に「パーフェクト」という1曲だけヒットしたアコースティック系のバンドはSNAKEPIPEも知ってるけど、ジャケット写真まで知ってるのは、さすが元レコード屋。(笑)

全く予期していなかった、エリオット・アーウィットのオリジナル・プリントを観ることができて良かった!
フジフィルムスクエアは写真歴史博物館なので、カメラの展示があったり、フィルムの歴史などを知ることができるんだよね。
館内にいた初老のお客さんが、係員をつかまえて自身の写真歴なのかカメラ歴なのかを滔々と語り続けていたのが印象的だった。
かつては写真撮影に休日のほとんどを費やしていたSNAKEPIPE、使用していた印画紙はフジだったことを思い出す。
デジタルカメラとは違う、一枚の重みを感じた展覧会だった。

続いて向かったのはピラミデビル。
ここには複数のギャラリーが入っていて、2015年11月に「Gerhard Richter Painting展」を鑑賞したワコウ・ワークス・オブ・アートもこの場所!
ピラミデビル自体がカッコ良い建物なので、行くだけでもワクワクするんだよね。(笑)
今回はワコウ・ワークス・オブ・アートSCAI PIRAMIDEを目当てに訪れたよ。 

最初にワコウ・ワークス・オブ・アートへ。
開催されていたのはドイツ人作家グレゴール・シュナイダーの展覧会だった。
写真作品が並んでいる。
説明を読まないで観るだけでは分からない種類の作品みたいだね。
まずは簡単にシュナイダーの経歴を書いておこう。
1969年ドイツ生まれのシュナイダーは、10代から制作を始めたという。
穴を掘るパフォーマンスをしていたという記述からも、難解なタイプのアーティストだと想像できるよね。(笑)
ヴェネチア・ビエンナーレでは金獅子賞を受賞という輝かしい経歴の持ち主なんだって。

今回はシュナイダーのシリーズが3つ展示されていたようだけど、これも帰宅後調べて分かったこと。
画像は「400 meter black dead end」という2006年の作品。
興味の対象が「閉ざされた空間」だというシュナイダーにとって、400mの暗い一方通行の道はテーマそのものなんだろうね。
訪問した人は手探りで歩き、閉塞感と無限に続くような一方通行の暗闇により、精神的な臨界点まで追い詰められたんだって。
SNAKEPIPEは、あまり体験したくないアートだよ。(笑)

次は2014年の「ゲッペルスの生家でのプロジェクト」。
ナチス・ドイツの国民啓蒙宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスの名前は有名だよね。
村上龍の「愛と幻想のファシズム」にも、鈴原冬二がゼロに「おまえがゲッペルスをやれ」と言うセリフがあったように記憶しているよ。
そのゲッペルスの生家をシュナイダーが買取り、家財や目録を調べ上げた後に、建物の内部の一切を破壊して残骸を破棄するまでを一連の流れとしている作品だという。
並んだ写真観ただけじゃ分かりませんがな!(笑)
グレゴールといえば、ザムザと思ってしまうSNAKEPIPEだけど、シュナイダーの名前も覚えておこう。
いつか別の作品観ることがあるかもしれないからね!

続いて向かったのがSCAI PIRAMIDE。
谷中にあるSCAI THE BATHHOUSEを訪れたのは2019年6月の「横尾忠則 B29と原郷-幼年期からウォーホールまで」を観に行った時だったね。
2021年、SCAI THE BATHHOUSEが谷中、天王洲の続いて会場に選んだのが、ピラミデビルだという。
先に行ったワコウ・ワークス・オブ・アートの隣だよ!(笑)
開催されているのはインドのアーティスト、アニッシュ・カプーアの展覧会なんだよね。
アニッシュ・カプーアの作品を一番最初に観たのは、2008年6月の「ターナー賞の歩み展」だったよ。

「Void #3」という空中にぽっかりと浮かんだ球体の前で眩暈を起こしそうになった。

自分が何を観て、どこにいるのか一瞬分からなくなってしまったのだ。
本当は立体物なのに、闇が目の前に迫っているように感じてしまう。

圧倒的な迫力について感想を書いているSNAKEPIPE。
アニッシュ・カプーアの名前は鮮明に記憶しているんだよね。(笑)
残念ながら撮影が禁止だったので、感想だけをまとめておこう。
会場入ってすぐ、入り口に展示されていたのは、青い円形の作品だった。
磨き上げられたブルーのステンレスは、鏡のように鑑賞者や周りの景色を写し込み、1歩左右に動くたび、写った顔が歪む。
観ているうちに目眩が起き、立っているのがつらくなるほど。(笑)
先にあげた2つの円形の作品は、反射の具合で色味が変化し、いつまでも観ていたくなったよ。
天井近くに黒い三角形があるので見上げると、黒色に吸い込まれていきそうになる。
ターナー賞の時と同じ現象だよ!
どうやらカプーアは、99.965%の光を吸収する「地上で最も黒い黒」Vantablack(ベンタブラック)の芸術的用途における権利を買い取り、作品にさらなる強度をもたらしているという。
地球にいるのに、ブラックホールを体感している気分になるのは、そのせいなのかもね?
鑑賞できて本当に良かった。
カプーアの作品、お金あったら欲しいわあ!(笑)

今回は3つの無料ギャラリーを「はしご」してみたよ。
これで無料とは、申し訳ないほどだよね。(笑)
六本木にはたくさんのギャラリーあるので、また探して出かけよう!

パンとサーカス展 鑑賞

20220515 top
【ミヅマアートギャラリー外のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

だんだん日が伸びてきたので、仕事帰りのウォーキングを再開することにした。
道中には、会田誠が所属しているミヅマアートギャラリーがあるので、ふらりと立ち寄ってみることにする。
パンとサーカス展」と書いてあるけれど、一体何を展示してるんだろう。
 
以前訪れた時、予約なしの場合には名前と電話番号などの記載を求められたことを思い出した。
「予約していませんが、観られますか?」
と尋ねるSNAKEPIPEに、怪訝そうな受付の男性。 
いいですけど、のような返答だったように記憶している。
名前書くんでしたよね?と重ねて訊くと
「別にどっちでもいいですけど」
と、書きたいなら書けばといった投げやりな態度に驚いてしまう。
前回訪れた「インディゲリラ Cosmic Waltz」の時にいた、感じの良い受付の男性とは大違い!
ミヅマアートギャラリーで、こんな対応をする受付がいて大丈夫なんだろうか、と心配になるほどだよ。
せっかく来たので、一応鑑賞しておこう、と気を取り直す。
撮影許可ももらったので、記事にまとめてみよう。

そもそも「パンとサーカス」って何だろう。
帰宅後ミヅマアートギャラリーのサイトで確認してみる。

島田雅彦氏による新聞連載小説「パンとサーカス」の挿画を担当した6名の作家によるアーティストユニット「コントラ・ムンディ」。
その全382回に及ぶ挿画の原画、および小説の世界観に着想を得た新作を一堂に集め展示いたします。
(ミヅマアートギャラリーより) 

新聞小説の挿絵を展示しているってことね。
ROCKHURRAH RECORDSでは新聞も読まないし、島田雅彦の小説も全く知らないよ。(笑)
今回挿絵を担当した6名のアーティストについての知識も皆無。
何も情報がない「フラットな状態」で鑑賞するのも面白いかもね?

感じの悪い受付から一番最初に展示されていた作品群。
本来が挿絵だったためなのか、アーティスト名の表示がされていない。
そのため帰宅後に調べてはみたものの、はっきりしないんだよね。(笑)
恐らく水野里奈のブースで良いはずだよ。
全体に作品が小さめなので、上のほうに展示されているものは良く見えないのが残念。
色彩が美しくて、女性的な雰囲気なんだよね。
毒気が強い作品が好みのSNAKEPIPEには、少し物足りなかったかも。
そして画像のように、ポストカード大の大きさの作品が反り返ってしまっていたのは「わざと」だったのかなあ。

6名のアーティストが1冊の本の挿絵を担当するというのは、あまり例がないんじゃないかな?
それぞれタッチがあるから、散漫な印象を受けてしまう恐れがありそうだし。
続いての金子富之の作品群は、最初に書いた水野里奈と、かなり違うよね。
なんと言っても目を引くのは、中央の怖い絵!
そして強い赤色が目立つんだよね。
邪悪そうな鳥と、まるで亡霊のような人の顔。
黒くて大きなマントによって、善良さが失われ、悪を伝染させるべく右往左往している人の群れなのか。
また勝手にお話作ってみたけど、陳腐かなあ。(笑)

観た瞬間に「こういうのは苦手」と思ってしまった。 
ものすごくキレイに描けているし、写実的だし。
誰に似てるかというと、クリスチャン・ラッセンかな。
ラッセンは人気のある作家なので、恐らく岡本瑛里を好む人も多いはず。 
SNAKEPIPEの個人的な好みの問題だね。(笑)
複数枚展示されている中で気に入ったのがこれ。
臓物をなびかせながら(?)背中に張り付く老人。
モノクロームだから穏やかな絵に見えるのかもしれない。
今際にいるような老人を背負う全裸の青年との間には、どんな物語があるんだろう?

ちょっとブレた感じで、中間色が美しい作品群。
先にも書いたようにアーティスト名が分からなかったので、てっきり男性の作品だと思っていたのに!
調べてみると荻野夕奈という知的な美人だと判明してびっくり。 
情報なしで観ると面白いのは、こういう点かもしれないね。
6名の作品の中で、一番挿絵らしいと感じたよ。
作品を鑑賞すると、SNAKEPIPEの陳腐な物語ができそうだったからね。(笑)
壺を使った計画殺人の後の絵、というのはどうだろう。
血しぶきを浴びても大丈夫なように全裸になっていて、壺についた指紋を拭き取ろうとしているシーンとか?
「パンとサーカス」知らないので、勝手に作ってるだけだからね!(笑)

全て同じ大きさの作品が63枚並んでいたよ。
妖怪が描かれていたり、パロディ風の物もある。
くっきりした線で、とても見やすいよ。
山本竜基の作品は、挿絵というより一枚で完結しているように見える。
手前のおじさんが何者なのか不明だけど、夜空をバックに歌川国芳のドクロや魑魅魍魎が夜な夜な夢の中で暴れているようだよね。
筒井康隆原作のアニメ映画「パプリカ」に通じる世界観が面白い。
もっと大きな作品が観たいと思ったよ。

最後は3コマ漫画のような作品だった。
縦に3枚の絵が並んでいるので、便宜的にそのような言い方をしたけれど、実際には3つのコマに関連性はみられない。
もしかしたら小説の内容にはリンクしてたのかもしれないけどね?
 独特の雰囲気があるので、今まで観てきた5人より年長の男性が描いているものだと思っていたら!
なんと熊澤未来子という1983年生まれの女性の作品だったよ。(笑) 
あまり女性らしさを感じなかったので、勘違いする人は多いはず。
武蔵野美術大学の日本画を専攻していた経歴を持つのに、作品は鉛筆画というのも変わっている。
今回鑑賞した中で一番好みだったかもしれない。

予備知識がないまま鑑賞することはほとんどないので、珍しい経験だったよ。
作者の名前も帰宅後知ったので、持っていた感想と実際が違う意外性も楽しめたしね!
ミヅマアートギャラリーは面白い企画があるので、また訪れてみたいと思う。
今度の受付は感じが良い人であることを祈って。(笑)