ROCKHURRAH RECORDS暑中見舞い2013

【今年の暑中見舞い用ポストカード】

SNAKEPIPE WROTE:

デヴィッド・リンチのセカンド・アルバムに関する情報は、6月9日の記事「アンチヴァイラル鑑賞」の中で書いていたよね。
早速注文していたSNAKEPIPEは、無事に手にすることができたよ!
発売前からYouTubeなどでも数曲は聴くことができたし、「モダン・ブルース」というジャンルになることも知っていた。
元々ブルース自体を良く知らないのに、モダンなんて言われても。(笑)
ファースト・アルバムはエレクトロ・ポップだったからジャンルが全然違っているんだよね。
BGMとして流しておいて、ほとんど邪魔にならない音だなという感想を持った。
まるで「ツイン・ピークス」を思わせるような曲もあって、ちょっと笑ってしまう。
アンジェロ・バダラメンティは何も言わなかったんだろうか?(笑)
ファースト・アルバムの時には一曲ずつ感想を書いていたSNAKEPIPEだけど、セカンド・アルバムはちょっと難しいなあ。

様々な種類の音楽に詳しいROCKHURRAHに聴いてもらうと、
SuicideとかPortisheadをちょっと感じるね」
とのこと。
聴かせてもらうと、確かにちょっと近いかも!
リンチの好きな本とか絵画についての情報はいくつか知っているけれど、どんな音楽を好んで聴いているのかについての情報は今まで聞いたことがないなあ。
もしかしたら前述したようなバンドがお気に入りかもしれないよね。
ものすごーくまさかとは思うけれど、セカンド・アルバムまで発売したリンチだからライブで来日しないかな?(笑)
もしあったら絶対観に行かないと!

デヴィッド・リンチのセカンド・アルバムを何回も繰り返し聴きながら、制作したのが今年の暑中見舞いである。
毎年ネット上でのみ公開の暑中見舞いか残暑見舞いのポストカードを作るのがいつの間にか恒例になっているんだよね。
毎年何かしらのテーマを決めて制作してるんだけど、今年はSNAKEPIPEが見た夢が元ネタ!

そんなに珍しい夢ではないと思うんだけど、空中にクリオネがいっぱい飛んでる夢を見たんだよね。
泡だと思ったらクリオネで、「あっ!クリオネがいっぱい飛んでる!」って空を見上げてたSNAKEPIPE。
その時のことを覚えていて、今年のポストカードに採用してみた。
画像担当はSNAKEPIPEでタイポグラフィとまとめ担当はROCKHURRAHという、毎度お馴染みの分担で出来上がった一枚。
やっぱりなんとなく80年代が感じられて良い感じ。(笑)
早く暑い夏が終わることを心から願ってるよ!

SNAKEPIPE SHOWROOM 物件6 ユニーク物件編

Carlo Santambrogioのスケスケ・ガラス・ハウス!目立ちたがりやさんにぴったり?!】

SNAKEPIPE WROTE:

毎年夏になる度に「今年は暑いね」と言っている気がするけれど、今年はそんなレベルではない程の暑さだよね!
猛暑日の連続記録を更新なんて話題、もう聞きたくない!
特に我が家のリビングは日当り良好のため、日中はサウナみたいになっちゃうんだよね。
物件情報の日当り良好って冬はとても良いけれど、夏には地獄。
ええい、こんな日本を飛び出して、もっと快適な生活を送っちゃおう!
せっかく住むならちょっと変わった物件が良いかも。
面白い物件情報検索してみようかな。

まず初めにご紹介するのはこちら!
アメリカ合衆国ニューヨーク州ピッツフォードにあるデザイナーズ物件。
ニューヨークにこんな変わった形の家なんて、と思ってピッツフォードの位置を確認してみると、いわゆる都会のニューヨークからは400kmも離れている場所らしい。
ニューヨーク州の面積は122,284 km²で人口密度は157人/km²。
ほとんどが都市部に集中してるだろうから、少しでも離れた場所ではゆったり過ごすことができそうね!
オンタリオ湖をはさんで北はもうカナダという土地柄、一番近い都市であるロチェスターの年平均気温は8.9℃!
夏でも23℃くらいにしかならないという羨ましい環境だよね。

これは建築家であるジェームズ・ジョンソンにより1971年に建設され、2001年には内部に改良が加えられた「マッシュルーム・ルーム」という物件である。
本当に森の中からにょっきり出てきたキノコみたいな形!(写真①)
SFっぽい雰囲気もあるよね。
内部は一体どんな感じなんだろう?

外観に負けないくらい内部もユニーク。
まるでアントニオ・ガウディみたいな細かいタイルで装飾している壁が目立つ。
天井が下がっているような造りになっているので、グニャグニャしたような部屋の仕切りに見える。(写真②)
慣れるまでは平衡感覚に異常を感じるかも?(笑)
3つのベッドルームと3つのバスルーム。
このバスルームにもガウディ様式のタイルが使用されているね。(写真③)
目地の掃除、大変じゃないかなと心配する。(←日本的)
他にも冷蔵庫やレンジ、食器洗い機などが設備された広々キッチンがあったり外にジャグジーが設置されていたりする。
大自然を臨みながらの入浴なんて、さすがニューヨーク!(ぷっ)
パウダー・ミルズ・パークという自然豊かな公園に面している、非常にリラックスできる環境と聞いて益々興味が湧いてくるね。
さて気になるお値段は?
$1,500,000ということなので、日本円に換算して約1億5000万というところか。
食料品や日用品の買い出しさえ問題なければ、隠遁生活を送るのは最高のシチュエーションだね!
これだけの物件だったらお値段お手頃のようにも思うけど、どうだろう。
ただ一つの疑問は、一体この部屋にはどうやって入るのか、だけかな。(笑)

続いての物件もまた丸いデザインを選んでしまったよ。
きっと何かがSNAKEPIPEを刺激するに違いない。(笑)
アメリカ合衆国コネチカット州ウィルトンにあるリチャードT.フォスターフィリップ・ジョンソンという有名建築家のコラボレーションによる、まるでアート作品のような物件をご紹介してみよう。
360℃全てをガラス張りにし、12フィート地上より浮かんでいるスタイル。
12フィート、換算すると365cmくらいなので2階くらいの高さなのかな?
芝のキレイなグリーンと目の前の池との調和が見事。(写真①)

あっ、この物件は下からのらせん階段で昇り降りできることが判明!(写真②)
マッシュルーム・ルームに引き続き、悩むところだったよ。(笑)
そのらせん階段を中心として、部屋が放射線状に分かれているみたいだね。

ガラス張りの室内は日当たり抜群ね。
暑さや寒さはその時の気分で部屋を移動すれば良いだけ!
どの部屋からも美しい風景が見えるなんて、素敵だよね~。(写真③)
ちょっと視線を遠くにやるとストリーツ池も見えるみたいなんだよね。
紅葉の季節の池の写真が載ってるけど、とても美しい風景にうっとり。
これを毎日自宅から眺められるなんて最高だよね!
外側にはテラスがグルリと、これまた360℃設置されている。(写真④)
日陰や日向を選んで、ゆっくりとコーヒータイム。
これだけ陽射しがあるなら洗濯物もすぐ乾くし、お布団干しにも良さそう!(笑)

3つのベッドルームと2.5のバスルームと書いてあるよ。
バスルームの0.5っていうのは一体どういうことなのか不明だね?(笑)
トイレだけ、とかシャワーだけなのかな。
1967年に建設され、2005年には修繕されているらしいこの物件。
実は今はもうすでに売却済みたいなんだけど、販売されていた時のお値段が$1,550,000、日本円で約1億5500万円!
有名建築家による物件の割にはお買い得な感じ。
ここもマッシュルーム・ルームと同じで買い物はどうするんだろうね?
もう一つ、全面ガラス張りだから覗きの心配はないのかしら。
それらがクリアならオッケーなんだけどな、と真剣に考えるSNAKEPIPE。(笑)

最後はこちら。
イングランド南西部に位置するコーンウォール州ニューキーにある小さな島、トワン島の物件を紹介してみよう。
イギリスだと南とはいってもかなり緯度が高いため、ニューキーの年平均最高気温は13.3℃、最も気温が高くても平均では19℃というから気温低めで良い感じ!

ちょっと写真が小さくて判り辛いかもしれないんだけど、島というよりは崖といったほうが近いかもしれない海の真ん中で、吊り橋を渡って正面玄関にたどり着く家なんだよね。(写真①)
この吊橋も家に付いてるみたいで、イギリスでは珍しい個人所有の持ち物らしいよ。
吊り橋についての記載が記事によって様々で、長さは100フィートとも30フィートとも書いてある。
高さも90フィートとか70フィートの情報があって、どれが本当なのかは不明なんだよね。(笑)
ちなみに30フィートで約10mらしいので、記事の最大数で換算すると、長さも高さも約30mということになるね!
なんという恐ろしい物件!

無事にたどり着くことができたら、物件は素晴らしいんだよね。
こちらも360℃、誰にも邪魔されることなくプライベートな時間を満喫できそう。
太陽が昇ってから沈むまで、ほぼ完全に太陽の陽射しを感じることができる見事なテラスが設置されている。(写真②)
「Life in the sun」
なんて書かれていて、日焼けによるシミ・ソバカスを気にしなければ素晴らしい言葉だと思うよ!(笑)
007 黄金銃を持つ男」に登場したスカラマンガがきっと購入したに違いない物件だ、とも書いてあり多いに納得。
何か秘密のことをやるのに最適な隠れ家って感じだもんね。(笑)

室内はいかにも英国調といった感じ。(写真③)
家具やその他のキッチンなどの情報は何も記載されていないので不明。
ここの水や電気はどこから来るんだろうね?(笑)

約10年住んだ80代の夫婦が「もう登るのに苦労しちゃって」という理由で売りに出している物件らしいんだけど、10年前でも70代。
その時は「まだまだイケる!」と思って購入したんだろうか?(笑)
その問題の吊り橋を渡るためには、ちらっとしか写ってないけれど、右側の同じような崖(島?)に登らないといけないんだよね。(写真④)
もしくは吊り橋を使わないで、崖から「ファイト一発!」まがいのことをやるか。
どちらにしても体力的に自信がある人じゃないと無理かもね!(笑)
その老夫婦が提示している金額が£1,000,000、日本円で約1億5000万円というところか。

007シリーズじゃなくても、推理小説家が小説の舞台に設定するには丁度良さそうな物件だよね。
吊り橋が落雷によって寸断され、孤立無援となった屋敷で起こる殺人事件。
物理的な密室状態だけど、陳腐過ぎ?(笑)

今回は涼しい土地の変わったデザインの物件を紹介してみたよ!
ああ、せめて早く涼しくなってくれないかなー!

逸品制作日誌 ベルトポーチ

【今年のROCKHURRAHへのプレゼント!】

SNAKEPIPE WROTE:

7月5日はROCKHURRAHの誕生日である。
おめでとう、ROCKHURRAH!
今年が何回目の誕生日なのかは秘密。(笑)
お互いの誕生日には何かしらのプレゼントをするのが習慣になっていて、毎年何にしようか悩んでしまう。
3月のSNAKEPIPEの誕生日には、温泉旅行をプレゼントしてもらった。
さて、ROCKHURRAHには何を贈ろうか?

考えに考えた挙句、ベルトポーチを制作することに決定。
冬にはスマートフォンなどの小さな持ち物をジャケットに収納することができるけれど、夏は軽装になるため持ち運びに困ると聞いていたのである。
そして丁度良いベルトポーチを探しているけれど、なかなか気に入った物が見つからないとも言っていた。
それならば!
SNAKEPIPEがROCKHURRAHの好みに合わせたポーチを作ってみようじゃないの!(笑)

大体の大きさやポケットの数など、リクエストを聞いてからまずは試作品を作ってみることにする。
前回の「逸品制作日誌」で作ったエコバッグの残りの革を使用してみる。
ROCKHURRAHはかなり明確な好みがあったようで、裏地や縫い方にもこだわっていた。
それら全てを満足してもらうように頑張ったSNAKEPIPE。
苦心の末、試作品は完成したのである!
が、なんと!
何故だか形がいびつ…。
使えなくはない、というレベルにSNAKEPIPE自身が愕然としてしまう。
こんなはずではなかったのに…。
色合いが良かった革も、試作品だけでなくなってしまった。
オリーブ色が良いというリクエストがあったので、革を仕入れに行くことにする。

運良くとても良い革が手に入ったので、改めて制作に取り掛かる。
今度こそ失敗は許されない本番である。
試作品の段階で更にいくつかのリクエストがあったので、それらもプラスして制作を進める。
試作品で苦労したり失敗した点を踏まえての2回目になると、意外とすんなり出来上がってきた。
型紙を作って裁断してから約3日。
なんとか完成させ誕生日に間に合ったのである。

「欲しかったデザインにしてくれてありがとう!」
とROCKHURRAHが喜んでくれた。
良かった~!(笑)
一生懸命作った甲斐があったよ。(涙)
出来上がったのがトップの写真のポーチである。
表面にはジッパー付きポケット、裏にもポケット、本体の内側にも2つのポケットがある、非常に収納力のあるタイプに仕上がった。
機能性とデザイン性の融合が目標なので、大満足だね!

ここでふと、試作品に目をやる。
いびつな形になってしまったのは、マチの取り方が悪かったことに気付いたため、マチさえ手直しすれば試作品も使えるのではないかと思う。
せっかくなので、試作品をもう一度やり直しマチを変更してみる。
本番のプレゼントは完成しているので、試作品には少し遊び心を加えてみよう。
革だけのほうが強いしお値段が高そうに見えるだろうけど、試作品にはあえて布を加えてみる。
革の表面に布を縫い付け、強度を補強。
ミリタリー好きのROCKHURRAH RECOREDSなので迷彩柄の布にしてみよう。
ウッドランド、タイガーストライプ、フレックターン、マルチカムのどれが良い?の問いに「マルチカム」が返ってくる。
こうしてオリーブ×マルチカムのベルトポーチも完成。
こっちのタイプもオシャレな感じで気に入ったよ!(笑)
ええい、こっちもオマケでプレゼントだー!

革×迷彩のポーチはSNAKEPIPEも欲しくなったよ。
2回も作っているので、3回目はもっとすんなりキレイに仕上がるはず。
自分用のが一番良い出来になっちゃったらごめんなさい、だね。(笑)

好き好きアーツ!#21 DAVID LYNCH—Mulholland Drive

【マルホランド・ドライブのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEは毎日夢を見る。
そして夢を断片的にでも朝まで覚えている。
一体どこからの発想なのかも分からないほど奇想天外なストーリーや意味不明の単語まで登場して、翌日ROCKHURRAHに聞いてもらう度に不思議がられるのだ。
「夢日記を付けてみたら?」
と何度も勧められている程、ユニークな夢が多いようだ。
通常の場合、自分の夢は人に話しても退屈させるだけだと思うけれど、ROCKHURRAHが面白がってくれるので、ちょっといい気になってしまうね。(笑)

今回の「好き好きアーツ!」はデヴィッド・リンチ監督迷宮系3部作(?)の第2弾として「マルホランド・ドライブ」を特集してみたいと思う。
どうして冒頭にSNAKEPIPEの夢について語ったのか。
それはいずれ明らかになるであろう!(予言)

「マルホランド・ドライブ」(原題:Mulholland Drive)は2001年に制作されたシュール・ネオ・ノワール映画と書かれているね。
誰がこんな言葉を考えたんだろうか。(笑)
サイコロジカル・スリラーという分類もされているらしい。
文章だけ読んでいるとサッパリ訳が分からなくなりそう!
「マルホランド・ドライブ」の前のリンチの作品は「ストレイト・ストーリー」という、感動で涙が溢るヒューマンドラマで、配給会社がなんとディズニー(!)だったんだよね。
リンチがディズニー?とびっくりしたのは1999年のこと。
リンチアンなので当然のように「ストレイト・ストーリー」は劇場で観たけれど、
「リンチ、大丈夫かな?もうこっちには戻らないんじゃ…」
と不安を感じていたところに次回作として発表されたのが「マルホランド・ドライブ」だったのである。
恐らく同じように危惧していたファンはたくさんいただろうなあ。
「マルホランド・ドライブ」を鑑賞し終わって、ホッと一安心。
やっぱりリンチはリンチ、だったんだよね。(笑)

では早速「マルホランド・ドライブ」について書き進めてみようか。
「マルホランド・ドライブ」は時系列に物語が進行しないし、同じようなシーンがまた別のシチュエーションで登場したり、同じセリフが複数の人物によって語られたりする、いくつものエピソードで構成されている映画である。
そのためさっぱり意味が分からないと思う人が多いだろうし、SNAKEPIPEも実際に映画館で一番初めに鑑賞した時には首をかしげてしまった。
個人個人の好きな感じ方で良いと思っているから、謎解きをしようとは思わないので、それらを期待して読んでいる方を裏切ってしまうだろうね。(笑)

リンチによって提示された10のヒントがあるので、参考までにご紹介しようか。

  • 1
  • Pay particular attention in the beginning of the film: At least two clues are revealed before the credits.
    映画の冒頭に、特に注意を払うように。
    少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
  • 2
  • Notice appearances of the red lampshade.
    赤いランプに注目せよ。
  • 3
  • Can you hear the title of the film that Adam Kesher is auditioning actresses for? Is it mentioned again?
    アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは?
    そのタイトルは再度誰かが言及するか?
  • 4
  • An accident is a terrible event — notice the location of the accident.
    事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
  • 5
  • Who gives a key, and why?
    誰が鍵をくれたのか? なぜ?
  • 6
  • Notice the robe, the ashtray, the coffee cup.
    バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
  • 7
  • What is felt, realized and gathered at the Club Silencio?
    クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
  • 8
  • Did talent alone help Camilla?
    カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
  • 9
  • Note the occurrences surrounding the man behind Winkie’s.
    Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
  • 10
  • Where is Aunt Ruth?
    ルース叔母さんはどこにいる?

これらのヒントに即答できるのは、「マルホランド・ドライブ」を何回も鑑賞されている方だろうね。
そして当然ながら熱狂的なリンチアンだと思う。
SNAKEPIPEは2つ、すぐに答えられない問いがあるけれど、あまり気にしないな。
このヒントによって謎解きができるとも思えないしね。(笑)
ではあらすじに感想を加えながら書いていこう。
※毎度のことながらネタバレしていると思いますので、鑑賞前の方はご注意下さい。

男性2人と共に車に乗っていた黒髪の女性は、突然同乗者からピストルを向けられ、殺されそうになったところを前方からの暴走車両の激突により命を救われる。
同乗者の男性2名は即死だったようで、生き残っていたのは黒髪の女性だけ。
足がカクカク、フラフラしながらも逃げる。
旅行に出かけるため家を留守にするという女性の空き家に侵入することに成功。 その家で身を隠すことにする。

ここで突然場所が変わる。
ウィンキーズというダイナーで自分が見た夢について語る男と聞く男。
この男2人の関係については謎。
語っている男(写真上)の顔がものすごくインパクトあるんだよね!
眉の太さ、額の狭さ、笑っても全然笑ってない目とか全てがヘン!
きっとリンチはこの役者の顔が気に入ってキャスティングしたに違いない。(笑)
夢を見た男は、その夢が悪夢だったので正夢ではないことを確かめたいと言う。
見た夢に沿って行動する2人。
すると夢は正夢で、悪夢通りウィンキーズ裏手には「恐ろしい顔」の男がいた!
それを目にした途端、夢を見た男は恐怖のあまりに失神してしまう。

空き家で眠り続ける黒髪の女。
「女はまだ見つからないのか?」
謎の人物から人物へ、謎の通話が数回繰り返される。
どうやら黒髪の女性の行方を追っているようだ。
この一連の通話の中で、一番の大物だと思われるのが上の写真の人物!
そうです!「ツイン・ピークス」ファンなら誰もが知っている、あのダンスする小人であるマイケル・J・アンダーソンの登場!
リンチがずっと映画化しようと進めてきたプロジェクトである「ロニーロケット」でも アンダーソンを起用する予定だった話をどこかで読んだことがあるよ。
「ツイン・ピークス」以外でも是非出演してもらいたいって思ったんだろうねえ。

女優を夢見てハリウッドを目指してきたベティ。
隣にいる白髪の女性はたまたま飛行機で乗り合わせて意気投合した人。
ベティは叔母が留守にしている間、叔母の家で居候することになっている。
しかしそこには、自動車事故に遭い、こっそり侵入した黒髪の女性がいた!
てっきり叔母の知り合いだと勘違いしたベティは、何者かも分からない黒髪の女性を歓迎する。
名前を尋ねると「リタ」と答える黒髪の女性。
たまたま壁に貼ってあったリタ・ヘイワースのポスターから借用した名前だ。
具合が悪そうにしたリタをベッドに眠らせるベティ。

場面が変わり、ライアン・エンターテイメントのビルの一室。
監督やプロデューサーらが映画の打ち合わせを行なっている。
そこに後から登場するのがカスティリアーニ兄弟という映画界の黒幕。
この兄弟は「This is the girl」(まさにこの子だ!)とカミーラ・ローズという女優を推薦するために会合に来たのである。
「This is the girl」とフレーズが似ている「This is it」は、「ブルーベルベット」の中に出てきた店の名前だったなあ。
このフレーズがリンチの好みなんだろうね。(笑)

エスプレッソを注文した兄弟のうちの一人。
エスプレッソが気に入らなかったらしく、白いナプキンに含んだコーヒーをケローンと吐き出してしまう。
おや?なんとこのおかしな役を演じているのは、リンチ作品には欠かせない作曲家のアンジェロ・バダラメンティじゃないの!(笑)
セリフはほとんどなかったけれど、非常に印象的なおいしい役どころ!
役者としても活躍していたとは驚きだね。 (笑)

監督にはキャスティングの権利が一切なくて、黒幕が暗躍して映画やスターが作られてるんだよ、という業界裏話のような逸話。
このエピソードが、リンチが描きたかった「ハリウッドの闇」の一つなのかもね?

次のエピソードは、ハリウッド有名人の電話番号を記録してあるノートを奪うために、殺人を犯す男の話。
1人だけを殺すはずが、ひょんなことから3人を殺すハメになってしまう。
殺人なのに笑いが出てしまうという、ブラックユーモアに溢れたシーン。
これもリンチ得意の「ハッピー・バイオレンス」なんだろうね。

出張先の叔母と電話をしていたベティは、リタが叔母とは全く関係のない女性だということを知る。
実は事故のために記憶がない、というリタ。
リタのバッグに何かヒントがあるかも、とバッグを開けてみる。
そこにはたくさんの札束と謎の青い鍵が入っていた。
リタが一つだけ思い出した単語は「マルホランド通り」。
恐らくそこに行く途中で事故に遭遇したはずだ、というリタの言葉を確かめるために警察に電話をし、本当にマルホランド通りで事故があったことを知る。
コーヒーを飲みに入ったウィンキーズのウエイトレスの名前から、ダイアン・セルウィンという名前を突然思い出すリタ。
電話帳で調べてみると、ダイアン・セルウィンが実在していることが判明。
もしかしたら記憶を蘇らせる手掛かりになるのでは、とベティとリタはダイアン・セルウィンの住所を訪ねるのである。

映画が自分の思い通りにならないことに怒り狂った監督アダム・ケシャーは、カスティリアーニ兄弟の車をボコボコにした後、自宅へ。
そこで妻の浮気現場を目撃、腕っ節の強い浮気相手に反撃され追い出されてしまう。
いつの間にかクレジットカードは凍結、資産もゼロになっている。

秘書から「カウボーイ」に会うように指示を出され、ビーチウッド・キャニオンという夜中の牧場に会いに行く。
「カウボーイ」は、本当にカウボーイの格好をした謎の人物だった!
ほとんど表情がなく、目に光もなくてまるで蝋人形のような顔立ち。
「マルホランド・ドライブ」は至るところに「ハリウッド映画」へのオマージュが散りばめられているので、もしかしたらこの「カウボーイ」はジョン・ウエインを意図してるのではないかと感じるのはSNAKEPIPEだけかな?
だから死んだような目をして、喋り終わった途端に一瞬で消えたんじゃなかろうか?
カウボーイはみんな同じ格好だからSNAKEPIPEの思い過ごし?(笑)

「カミーラ・ローズを見たら、彼女だ!と言うこと」
カスティリアーニ兄弟の意見が絶対だったようで、従わなければ監督生命も奪われかねないようだ。
それにしても「カウボーイ」のセリフ「人の態度はその人の人生を左右する」はなかなかの名言だよね!(笑)

オーディションに向かうベティ。
これは父親の親友との恋愛を描いた作品で、相手役の俳優が若い女を相手にするためなのか、やる気満々の「いかにも」な男なんだよね。(笑)
それに応え、着衣のままだけれどエロティックな雰囲気を醸し出し迫真の演技をするベティ。
その場にいた人達はすごい新人が現れた、と喜ぶ。

別のスタジオではアダム・ケシャーがカウボーイの指示通りに自身の映画のためのオーディションをしている。
しかし、これは出来レース。

カミーラ・ローズ(写真上)が出てきた瞬間、アダム・ケシャーはまるで自分が決めたかのように
「This is the girl」
と言うのである。
「カウボーイ」の言いつけ通りにしたアダム・ケシャーは、これで安泰といったとことか。(笑)
このアダム・ケシャーのオーディションは、すっかりリンチ・ワールドになっていてフィフティーズ全開なんだよね!(笑)
この時のオーディションの映画のタイトルが、リンチ・ヒントの3番めだよ!

タクシーに乗り、記憶を蘇らせる手掛かりを求めて、ダイアン・セルウィンのアパートに向かうベティとリタ。
アパート周辺にはサングラスをかけた怪しげな人物が何人もいる。
裏口から入り、なんとかダイアン・セルウィンの部屋までたどり着く。
ノックをしても出ないので、窓から侵入してしまう。
部屋の中で見たのは、ダイアン・セルウィンと思われる女性の死体だった!
このシーンはまるでホラー映画みたいで、本当に怖いんだよね。
部屋に入った時から鼻に手をやり、臭いを防ぐような仕草を見せていたので、予想はしていたものの、かなり本格的な死顔メイク(というのか)。
慌てて逃げ出す2人。
その後、身の危険を感じたリタは黒髪を切り、金髪のウィッグで変装するのである。
この後、ベティとリタのラブシーン!
えっ、なんで急にこうなるの?とびっくりな展開に戸惑ってしまうね。(笑)
身の危険を共有したことで、まるで吊り橋効果のように恋愛感情に発展してしまったのかもしれない。

一緒のベッドで手をつないで眠る2人。
リタが寝言で「Silencio」と繰り返す。
これはスペイン語で「お静かに」という意味らしい。
何度も声に出しているので、ベティが起きだす。
「一緒に行ってもらいたいところがあるの。今すぐに!」
急に何かを思い出したようなリタに従い、夜中の2時に2人は揃って「クラブ・シレンシオ」という怪しげな劇場へと向かう。
そこでは「バンドがいない、全てが録音された音」という摩訶不思議なステージが繰り広げられている。

ステージで歌うのはロスアンゼルスの泣き女、レベッカ・デル・リオ
言語はやっぱりスペイン語で、曲のタイトルは「Llorando」という。
迫力満点の見事なアカペラを披露してくれる泣き女。
歌詞がとても重要だと思われるので、字幕から拾って載せてみよう。

しばらくは元気だったの
笑顔でいられたわ
でもゆうべあなたに会ってあなたの声を聞いた時、私は取り乱さなかったわ
だからあなたには分からなかったのね
あなたを慕って泣いていることに
あなたを思って泣いているのよ
あなたはさよならを言って私を置き去りにした
私は一人で泣いている
なぜなのかしら
あなたに会っただけで また私は涙にくれる
あなたを忘れたと思っていたわ
でもこれは本当のこと
以前にも増してあなたを愛してる
でも私に何ができるの
あなたの愛は冷めてしまった
だから私は永遠にあなたを慕って泣き続けるだけ
あなたを思って泣き続けるだけ

なんとも悲痛な心の叫びを表現して、泣き女は失神してしまう。
あれ?映画の中で失神者は2人目だね!
そして録音されているだけあって、失神した後も歌声は続いているよ。(笑)
歌声を聴いていたベティとリタも肩を寄せ合い泣きじゃくっている。
泣き女節が伝染したのか、それとも何か思うところがあるのか?
このシーンがリンチの7番目のヒントの箇所だね。
SNAKEPIPEは前述したように、歌詞がポイントだと思うな!

失神してしまった泣き女を見届け、涙を拭こうとバッグを開けた時、ベティはバッグの中に青い箱を発見する。
リタのバッグに入っていた謎の青い鍵がピタリと符合しそうな、三角形の穴も見える。
きっとこれが鍵穴に違いないね!
自宅に戻り、いよいよ青い箱を鍵で開けようとする時、何故だかベティの姿が見えない。
ドキドキしながら一人で鍵を差し込むリタ。
箱を開けると中には暗闇が広がっている。
その闇に吸い込まれるように画面が黒くなり、次のシーンでは床に転がる青い箱だけが映し出される。
うーん、なんとも暗示的なシーンなんだよね。
ベティがいなくなったこと、青い箱の中身とか、ね。(笑)

青い箱が開いてから、映画は更にショート・シークエンスの連続になってくる。
一応映画の進行通りに書き進めていくけど、文章だけ読むと意味不明かもしれないね。(笑)

赤い髪の女が部屋にいる。
ベティの叔母でカナダに行っていたはずでは?
何もなかったわよね、と室内を点検。
床に転がっていたはずの青い箱は見当たらない。

ダイアン・セルウィンと全く同じポーズでベッドに横になっている黒髪の女性。
「へい、かわい子ちゃん、起きる時間だよ」
ドアを開けて入ってきたのは「カウボーイ」だ。

また同じ姿勢でベッドに横になっている女性。
今度は金髪の女性に変化している。
誰かがドアをノックしている。
起き上がったのはベティだったはずの女性。
訪ねてきたのは部屋を交換した、以前の住人。
金髪の女性がダイアン・セルウィンということになるのかな。
「刑事2人があなたを捜してたわよ」
聞いた途端に動揺するダイアン・セルウィン。
「カミーラ、帰ってきたのね」
リタだったはずの黒髪の女性に笑いかけながら、次第に泣き始める。
ダイアンの妄想とか幻覚が映像化されているようだ。

またしてもカミーラとダイアンのラブシーン。
「もうやめましょう」
カミーラから一方的に別れを切り出されるダイアン。
「原因は彼ね?」
カミーラもダイアンも女優で、カミーラは映画監督のアダム・ケシャーと恋仲になっていたのだった。
この場面は実際にあった記憶だと思われる。

着飾ったダイアンの元にカミーラから電話がある。
カミーラがダイアンをパーティに誘っているようだ。
ここで映画冒頭の車のシーンと全く同じマルホランド通りを走る車の映像。
車に乗っているのはダイアンだ。
途中で迎えに来たカミーラに案内されて向かったのはアダム・ケシャーの家だった。

パーティの席で、映画界で働く叔母の遺産が入ったためカナダの田舎町からハリウッドを夢見て上京したこと、カミーラの口利きで女優を続けていられるという話をするダイアン。
聞いているとかわいそうになってしまうような惨めな状態のダイアンである。
そんなダイアンを横目で見ながら、カミーラは意地悪く他の女とイチャついて見せたり、挙げ句の果てにアダム・ケシャーと結婚することも発表し、ダイアンをイジメ抜くのである。
「カウボーイ」が室内を横切る。
悔し涙を流すダイアン。
そんなダイアンの視線を充分に感じていながらも、カミーラは知らん顔である。
んまあ、なんて嫌な女なんでしょ!
恋人関係にあった相手に対してそこまで意地悪できるとは、相当性格悪いよね。 それでもダイアンは、執着心とか嫉妬心を飼い馴らせなかったみたいね。

場面が変わって、またウィンキーズ店内である。
ダイアンが男に会っている。
これはドジを踏んで3人を殺すハメになった男じゃないか?
「This is the girl」
そう言ってダイアンが男に写真を渡す。
この写真はカミーラだね。
自分を捨てて監督との結婚を決めたカミーラへの復讐として、お金で殺しの依頼をしているようだ。
「片付いたらこの鍵を置く」
男が見せたのは青い鍵!
何の鍵かと尋ねると、男はただ笑うだけである。
またここでも「This is the girl」 という同じセリフが登場し、青い鍵も出てきたね。

赤いライト。
ウィンキーズの裏手だ。
映画の初めに登場した「悪夢を見た男」が遭遇した「恐ろしい顔の男」が青い箱を手に座っている。
「恐ろしい顔の男」が青い箱を袋に入れた後、小さな初老の男女が笑いながら袋から出てくる。
この初老の男女は、ベティが飛行機で乗り合わせた人達じゃないか?

テーブルに乗っている青い鍵。
殺し屋の男の仕事が片付いたのだろうか。
その鍵をじっと見つめるダイアン。
ドアをノックする音。
ドアの隙間から侵入する小さな初老の男女はゲラゲラ笑っている。
笑い声はいつの間にか悲鳴に変わり、ノックの音が強くなってくる。
小さかったはずの初老の男女は、いつの間にか等身大に変化し、笑いながらダイアンを追い回す。
錯乱状態になったダイアンはピストルを自らの口に当て、引き金を引く。
「恐ろしい男の顔」と「クラブ・シレンシオ」のオーバーラップ。
笑い合うベティと金髪のリタが薄ぼんやりと映し出される。
背景はハイウッドの夜景である。
このシーンはダイアンの人生回顧(ライフレビュー)なのではなかろうか。
愛にも夢にも絶望してしまったダイアンの最期である。

クラブ・シレンシオ。
青いライトの中、ステージには誰もいない。
青いライトが徐々に消えていく様子を見やっていた青い髪の観客の女性が一言。
「Silencio」

青い髪の女性は、ベティとリタが「クラブ・シレンシオ」を訪れた時にも座っていたんだよね。
この女性だけが残っていて、更に青い髪、というのもポイントなんだろうな。
「マルホランド・ドライブ」には青色がたくさん出てくるよね。
青い箱、青い鍵、青い髪、青い光。
それらの関係を考えると謎解きになるのかもしれないね?

ひ~!
軽くまとめるつもりがこんなに長くなってしまった!
「マルホランド・ドライブ」は複雑だから簡単に、なんて無理だよね。(笑)
迷宮系3部作の1作目である「ロスト・ハイウェイ」にも出てきた、同じ俳優が演じる複数の役柄というのが「マルホランド・ドライブ」にも採用されているね。
ベティ/ダイアン、リタ/カミーラという2人の女性。
恐らく本当はダイアンとカミーラなんだろうな。
その2人以外にもたくさんの人物の本当の姿が釈然としないよね。
どの時系列が正しいのか、現実にあった事と妄想や夢との違いの分かりにくさに加えて青い箱と鍵やら「クラブ・シレンシオ」のような怪しげな場所が混在しているので、何回観ても難解なんだよね。(ぷっ!)

「マルホランド・ドライブ」の解釈については、様々出ているようだ。
青い箱を開ける前までを前半でダイアンの妄想(もしくは夢)として、箱が開いた後がダイアンの現実とする意見が大多数みたい。
確かに青い箱のシーンから後の部分というのは、細かいエピソードが連続しているので混乱してしまうよね。

時系列に直して鑑賞しても良し。
リンチによって提示されたそのままを、解釈などせずに受け入れるも良し。
SNAKEPIPEは「謎は謎のままで良い」というリンチの言葉通り、後者でいこうと思う。

このブログの冒頭で書いた夢の話の続きを書いてみよう。
夢の中では、テレビでしか見たことがない人と会話していたり、行ったことがない場所にいたりする。
つながるはずのないAとBが混在したり、Cの場所からいきなりDの地点に移動していることもある。
脈略のないストーリーが展開されることも多いよね。
そういった夢ではお馴染みの手法を採用したのが、「マルホランド・ドライブ」なんだろうね。
自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!
わからなくたって いいじゃないか ゆめだもの みつを