ビザール・ポストカード選手権!7回戦

20121216-04
【いかにもアメリカンジョークっぽいポストカード。ビンテージものは面白いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

気付いてみると今年も残り2週間ほどで終わりになるんだね!
なんだか今年はいつの間にか12月に入っていて、あんまり年末の雰囲気を感じていないのはSNAKEPIPEだけだろうか?
年賀状の準備もしないといけないのにまだ全然進んでいないなあ。
ROCKHURRAH RECORDSでは毎年年賀状を作成して友人知人に送り、もちろんこのブログにもアップしてご挨拶させて頂いている。
「今度はどんな年賀状にしようか」と毎年2人で頭を抱えながら制作するのがならわしである。(大げさ)
できれば喜んでもらいたいと考えて、カッコ良いポストカードを作ることを目標にしている。
自己満足じゃない?と言われてしまえばそれまでだけどね。(笑)
それにしても、一枚の画像として何かを表現するのってかなり難しい。
ため息が出てしまうような、心憎く思ってしまうほどセンスの良いポストカードも世の中にはたくさん出回っているというのに…。

今回のビザールシリーズは、SNAKEPIPEとROCKHRRAHが目標としているカッコ良いポストカードとは対局にあるようなカードを選んでみた。
もしかしたらそのトホホな感覚が参考になるかもしれないしね!(うそ)
世界のビザールなポストカード特集、早速いってみよう!

一番最初は、これ!
どお、このインパクトの強さったら。(笑)
I am having a great time at~と文章が付いているので、お礼状としてのポストカードだということは判るんだけどね。
「楽しい時を過ごせてありがとう」と言うににしては、みんな笑い過ぎでしょ!
左下の女性が「今くるよ」に似ていると思うのはSNAKEPIPEだけかしら?(笑)
このカードをもらった人がどんな感想を持つかを全く無視して、自分の思いを伝えることに終始している点で秀逸なカードだね。

次はこれ!
どうやらトルコのカードみたいなんだけど、見た瞬間プッと吹いてしまったSNAKEPIPE。
この羊のインパクト、かなりのものだよね?
そして下の宮殿との対比。
世界3大料理の中の一つがトルコ料理で、トルコの人が羊を食べることは知ってるけどね。
上の写真の羊は何やら装飾がなされている様子。
何かの儀式かな?
トルコについてはほとんど知らないので、全く意味不明のカード。
このカードをもらったら「どんな意味があるのか」と考えこんでしまうかもね!
何年経っても「あの羊のカードくれた人」と印象に残ることは間違いないね。

次もトルコのカードね。
これは、上の羊カードに比べると解り易いね。
兵士が故郷に残してきた恋人を想っている、という図だと思うけど違うかな?
それにしてもこのバラの配置、モヤがかかった恋人の顔、それを打ち消すかのような手にした銃という、なんとも言えないチープ感はトホホに値するね。
ここで考えてしまうのが、このカードは誰が誰に出すんだろうという問題。
兵士が恋人に?それとも恋人が兵士に?
どちらにしても士気を低下させることは間違いなさそう。
第3者がもらっても「素敵なカードをありがとう!」にはならない類だろうね。
こういうセンスを持っているトルコ、恐るべし!(笑)

最後はこちら。
どうやらこれはフィンランドのポストカードらしい。
3人の軍人、と思ったらなんとマネキン人形なんだよね。
もしかしたら歴史博物館みたいな、何かの機関が発行しているポストカードなのかもしれないけど、全く意味不明。
真ん中の人のポーズもオーバーアクションだし、それを冷ややかな目で見つめている右のマネキンの顔も変!(笑)
真ん中のマネキンはYMOの「SOLID STATE SURVIVOR」のジャケットに出ているマネキンの顔に良く似てる!
そして右のマネキンの顔はYAZOOのアリソン・モエットに似てるー!(古い)
ということはアリソン・モエットは変な顔なのか?
どっちにしても80年代顔ってことだね。(笑)
現代のフィンランド軍がこの装備なのかどうかは不明だけど、懐かしい雰囲気にシンパシーを感じてしまうね。
コレクションとして一枚欲しいポストカードかな。

世界のビザール・ポストカードは検索しているだけでも非常に楽しかった。
「ええっ、これを送っちゃう?」と驚いてしまうようなトホホ感たっぷりの逸品がたくさんあって、興味深い分野だね。
また機会があったら特集してみたいと思う。
今回勉強になったのは「相手を無視しても自分の思いを伝える」ということかな。
ん?これで良いのか?(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #18 Aaron Johnson

20121209-top【Now We Hunt Hippopotamusという2009年の作品】

SNAKEPIPE WROTE:

最近は展覧会鑑賞が続き、なかなかアーティスト発掘をしていなかった。
前回SNAKEPIPE MUSEUMを書いたのが7月だったとは。
なんと5ヶ月ぶりの記事になるとは、月日が流れるのは早いねえ。(しみじみ)
SNAKEPIPE MUSEUMファンの皆様、お待たせしました!
今回は一枚の絵を目にした瞬間から魅了された、アーロン・ジョンソンを特集してみたいと思う。

アーロン・ジョンソンは1975年ミネソタ州セントポール生まれのアメリカ人。
現在の活動の舞台や住居はニューヨークとのこと。
1997年にアリゾナ大学で細胞生物学を学んだ後、1998年にはニューヨークでデザインの勉強。
1999年にはPratt Instituteというブルックリンにある美術学校に入学、2005年にはニューヨーク市立ハンター大学にて美術を学んだようだ。
アメリカの学校制度について詳しくないSNAKEPIPEだけど、23歳から30歳くらいまで美術学校や大学に通ってアートの勉強をする人って日本では珍しいんじゃないかな。
もしかしたらアメリカでは一般的なのかしら?
羨ましい環境だよね!
そしてアーロン・ジョンソンは2003年あたりからグループ展に参加、2004年には個展を開いているというから大したもんだ!
ということは大学在学中には作品を発表していたことになるんだね。

上に書いた以外には、残念ながら情報をほとんど入手できなかったよ。
SNAKEPIPEは知らないんだけど、イギリスに同姓同名の俳優がいるんだね?
しかもその俳優が23歳年上の女性と結婚しているらしく、「歳の差婚」みたいな記事ばかりが載っているという、全く意味をなさない検索作業になってしまった。
ウチのブログはその俳優とは別人で、現代アーティストのアーロンについて書いているので、そこんとこ夜露死苦!(笑)
では作品紹介いってみよう!

20121209-01「Stargazer」と題された2005年の作品である。
60.96cm×76.2cmの大きさとのこと。
アーロン・ジョンソンはアメリカ人なのに、作品からは東洋的な匂いがするんだよね。
赤い部分が、本当は血液とか血管なのかもしれないけれど、曼珠沙華の花に見えるせいかもしれない。
曼珠沙華、別名彼岸花も好き嫌いがはっきりする花のひとつだよね。
SNAKEPIPEはあの不思議な形や、色使いが大好き!
山口百恵の歌にもあったっけ。(遠い目)

タイトルには「星を眺める人」という単語が使われているけれど、SNAKEPIPEには魂が少しずつ抜けていき、その人を形作っていた記憶や生命力が空へと漂っていくような絵に見えたよ。
不幸な死に方をしてしまったけれど、念仏唱えて極楽浄土を夢見ているような。
そんな感想を持ったけれど、どうだろう?
怖い印象の絵には間違いないけどね。

20121209-02続いては「Tea Party Nightmare」という2011年の作品。
106.68cm×137.16cmというから、さきほどより大きなサイズだね。
まるでジェームス・アンソールを思わせる作風だけど、アンソールよりも残酷。
ブログだと絵を大きく載せていないので判り辛いけれど、アーロン・ジョンソンの絵は細部の描き込みがすごいの!
主役部分よりも、SNAKEPIPEは魅力を感じてしまう。
例えば上の絵だったら、右から2番めの女性の上部に描かれた小さい女性や、テーブルの上の人間入りハンバーガーなどが気になるなあ。
アーロン・ジョンソンは「アメリカ」を象徴する、例えば国旗や歴史上の人物などを描くことが多いので、上の絵も誰かをモデルにしてるのかもしれない。
そう考えてみると、真ん中の人物がクリントン元大統領に見えてくるよ。
えっ、全然違う?(笑)

20121209-03最後に紹介するのは「Operation Bulldog」という2011年の作品ね。
213.36cm×254cmというかなり大きいサイズだね。
戦車モチーフというのが気に入って、紹介させて頂くことにしたよ。(笑)
その戦車を操っているのはブルドッグ。
その下にいるのは…いばらの冠に手の釘だから…キリストかな?
顔がまるでインド神話に出てくるガルーダみたい。
アーロン・ジョンソンの絵にはキリストを描いた物も多いんだよね。
やっぱりキリスト教徒だからかな?
その割にはコミカルだったり、人によっては冒涜と感じるような描き方をしてるんだけど大丈夫なのかしら?
上の絵でもブルドッグがキリストと思われる人物を喰らっているように見えるんだけどね。
「人間は犬に食われるほど自由だ」
と言ったのは藤原新也だけど、キリストを人間扱いして良いものなのか?
難しい話だから、ここで言及するのはやめておこうね。(笑)
ここでまた調べていたら判明したことがあったよ。
なんとアーロン・ジョンソンの3代前、曾祖父の時代にジョンソン一家はインドでキリスト教の宣教師やってたらしい。
アーロンの時代はアメリカ在住だけど、家にはインド文化が溢れていたなんて書いてあるじゃないの!
これなら東洋文化やインド神話が絵の中に表れていても不思議じゃないね。

アーロン・ジョンソンの絵にはとても不思議な魅力がある。
残酷な笑いとでもいうのか、コミカルさと残酷さの共存。
サイケデリックや浮世絵的な要素の融合。
神話や歴史について研究を続けているという記事も発見したよ。
HPには2011年の作品までしか紹介されていなかったので、残念ながら2012年の活動については不明。
今は一体どんな材料をどんな風に料理して提供しているのか。
こういうアーティストの作品を日本でも観られる日が来ることを待つばかりだ。
エグいのが好きな人にはたまらない展覧会になるだろうね!(笑)

SNAKEPIPE SHOWROOM 物件5 海と山編

20121202-top【究極の人嫌い用物件は宇宙かな?駅まで徒歩35万光年!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

去年実に大変な苦労をして引越しをしたばかりだというのに、また「引越したい病」に感染中のSNAKEPIPEとROCKHURRAH。
ポール・デルヴォー観に行った府中が良い環境だった、なんていうのを知ったことなども理由かもしれないね。
普段はほとんどテレビを見ないけれど、毎週やってる世界の紀行番組だけは楽しみにしていて、「外国住みたいなあ!」なんて夢を見たりすることもしばしば。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHの好みで共通しているのは、ゆったりした環境で人がまばらに活動していること。
狭い場所に人が窮屈そうにしている、そう、まさに日本の環境が最悪なんだけどね。(笑)
年末ジャンボも売りだされたことだし、せっかくだから世界のゆったりした人のいない環境で生活できる物件を探してみようか。

20121202-01
一番初めにご紹介するのはプライベートアイランド!
プライベートアイランドと聞いてパッと思い浮かべるのはスウェーデン版横溝正史といった感じの「ミレニアム」の一番最初に出てきた話の中の孤島かな。
あの島は本島とつながっていたけどね。
あとは「サンダーバード」の秘密基地。
そしてもちろん忘れちゃならない「パノラマ島」だよね。(笑)
何か秘密めいたことをするには良いシチュエーション。
だって、自分達以外に人がいないんだもん。(笑)
推理小説の舞台としても密室物として大活躍だしね!

先日の「尖閣諸島問題」でも明らかになったように、島って買えるんだよね。
SNAKEPIPEは随分前から「島は買える」ということを知っていた。
だって「さだまさしが関白宣言の印税で島を買った」って聞いたことあったからね。
えっ、関白宣言自体が古い?まさか知らない?(笑)
ちなみにさだまさし所有の島は長崎県にある詩島ってところらしいよ!

SNAKEPIPEだったらどんな島にしようかな、と調べていて見つけたのが上の写真の島ね。
これはカナダ、ブリティッシュコロンビア州南西部に位置する同州最大の港湾都市にあるブラインド・ベイの北に位置するフォックスアイランドである。(写真①)
名前がフォックスだからって残念ながらキツネがいるわけじゃないみたいね。
George Lane-Foxさん所有の島だったから、というのが理由みたい。
なーんだ、せっかくキツネと私の12ヶ月ごっこができると思ったのにね!(笑)
でも名前がカワイイということでいいか。

バンクーバーからフロート水上機なら約20分で移動可能、とのこと。
フロート水上機って何?と調べたら水上飛行機のことで、水上にて離着水できるように設計された航空機のことだって。
ここでちょっとした疑問。
水上で離着水する時ってボートを使うんだよね?
上手にできるかなー、難しそうだよねー。
プライベートアイランドを持つくらいなら、マイ水上機も買うだろうから練習もできるし、買い物も大丈夫か!
いや、本当にリッチな人だったら、自分では買い物しないかもね?(笑)

この島は「Developed」とされていて、多分前述のフォックスさんが家を建てたり、例えば水が使えるように整備していてくれた模様。(写真②)
海の近くの家に憧れたことがあるSNAKEPIPEだけど、これは360℃が海、という素晴らしい環境だもんね。
どの場所に家があっても、必ず窓から海が見えるだろうね。
おおっ、これで「魅せられて」ごっこもできるよ!(笑)

この島の周りの海域北側にはカキ、ムラサキガイが採れたり、なんとサケ、カニ、クルマエビなども採れるとのこと。 (写真③)
この船着場からボートに乗って釣りをしたら、気分は釣りキチ三平だね!
きっと大物がいるに違いない、だってカナダだもん!(根拠なし)
オラ、大物釣るだぁ~!
自分で釣ってサケやらエビが手に入るなら、狩りで生活できるかもね?
その釣った魚をこのオーブンで調理するってわけね。 (写真④)
ああ、憧れのオーブン!
やっぱりいいなあ、カナダ!

この島の広さは46エーカーらしいんだけど、単位としてエーカーで言われてもよく判らないよね。
調べてみると、どうやら東京ドームの約4倍だって!
ま、そんなことどうでもエーカー!(ぷっ)
そんなに広い敷地を持って一体何するのって感じだけど、ゆったりと自分だけの時間を過ごすにはもってこいのこちらの物件!
さて気になるお値段は?
4,359,549USドル、日本円にして約35億9000万円!
この環境や広さだったら納得のお値段かな。

バンクーバーについて調べてみたら、緯度が高いわりには寒くなくて、夏は暑過ぎない西岸海洋性気候なんだって。
そしてかなりアジア系の人種が多く住んでいる、なんて書いてあるので差別も少ないのかもしれないね。
考えちゃうねー、いいよね~!(笑)

20121202-02
続いては山のご紹介!
海の次は山って短絡的だけど、この規模がすごいからまあ、見てって頂戴よ!

今回ご紹介するこの物件は、アメリカ、ノースカロライナ州にあり、South Mountains State Parkの近くにある山なんだよね。(写真①)
山の中の一部分を切り取って売りだされてるから、地名もはっきりしないみたいだね。
写真①の黄色く縁取られている場所ってことで許してね。

ノースカロライナ州について詳しくないSNAKEPIPE
州の北はバージニア州に、西はテネシー州に、南はジョージア州とサウスカロライナ州に接し、州の東側は大西洋に面している場所って分かるかな?
アメリカって広いから州名だけ言われても、馴染みがない限りは知らない場合が多いよね。
ノースカロライナ州は山が多いのか、他にもたくさん物件が載ってたんだけど、この山に決めたのには理由があるんだよね。

なんとこの物件、湖付きなのよっ!(写真②)
ウィリス湖っていうらしいんだけど、この湖も所有できちゃうってすごくない?
マイ湖持ってる人ってあまり聞いたことないんだけど、どお?
マスが釣れるみたいだから、釣り好きにはたまらないよね。
ここでもまた釣りキチ三平できるじゃん!
オラ、湖の主、釣るだぁ~!(しつこい)
広い牧草地も完備。(写真③)
馬にも乗れるみたいだし、ゴルフもできるかも?
ハイキングに、自転車に、とアウドドア好きも大満足なこと間違いなし。
野生動物のウォッチングにも最適な環境だね。

湖の周りは森になっていて、雑木林ではサバイバルゲームができそうだよ。(写真④)
この雑木林の中だったらギリースーツを試すにはもってこいだね。
ただし、SNAKEPIPEとROCKHURRAHが二人ともギリースーツを着て隠れていたら、お互いを見つけることができなくて苦労するかも。
敷地広いから、夕方まで見つからないかもね。(笑)

この物件、以前よりかなりお値下げして販売中とのこと。
351エーカー、東京ドームの約30倍と言われても想像すらつかない広さだよね。 そんな広大な土地のお値段、かつては7950USドル/エーカーだったのが、3500USドル/エーカーと半額以下!
351エーカーで計算してみると…えっ、お値段まさかの1億円!
以前の金額でも2億3000万円だったとは!
SNAKEPIPEの計算間違ってないよね?
うそー、こんなお値段で買えちゃうのー?
これなら年末ジャンボで余裕のお買い物よ~!(笑)

敷地があまりに広いためなのか、写真が少なめだったので、家が建てられているのか、ライフラインが通っているのかなどの詳しい情報は不明なんだよね。
自分の好きなように山荘建てるのも良いな!
こんなに広い土地なら、曜日毎に違う家とか気分で寝る場所を替えるなんていうのも面白いかも。
夢が広がるね!

今回は海と山の紹介だったけど、きっと他にも海外にはびっくり仰天物件があるはず!
また探していきたいね。
まずは年末ジャンボか。(笑)

誰がCOVER・・やないねん

【今回の登場人物は偶然にも変な歌い方の人ばっかり】

ROCKHURRAH WROTE:

軽く書いてるように見えても毎回結構苦心している当ブログ。
そもそも日記でも時事ネタでもなくて投稿する曜日を決めてるもんだからそこまで湯水のように書きたい事は湧いてこない。 ところがROCKHURRAHが担当する「誰がCOVERやねん」シリーズだけは別で、何もテーマとか決めなかったら毎週でも書けるくらいなのだ。
要するにカヴァー・ヴァージョンが世の中にいくらでもあるからそれについて軽くコメントしてるだけという他力本願のネタね。ただし現在進行形の音楽については全く取り上げず、70年代から80年代のパンクやニュー・ウェイブという狭いジャンルのみがウチの記事のメインなので、いつかは枯渇するだろうけどな。

さて、今回取り上げるのはカヴァーのようでカヴァーでない、2つのバンドをまたがってリサイクルされた楽曲について。何だそりゃ?まあ読み進めればわかるじゃろうて。

Buzzcocks VS Magazine
イギリスでパンク・ロックが始まったのが1976年頃の話。
ダムド、セックス・ピストルズ、クラッシュにストラングラーズあたりが初期の有名どころだが、それらに続くバンドが続々と登場したのはパンク好きならば誰でも知るところ。
だから初期パンクの御三家を挙げろ、と言われれば割と簡単だとは思うが、ベスト5を選べとなると、人によってかなり意見が分かれるんじゃなかろうか?好きと人気度は一致しないしね。
そんな中で比較的メジャーな候補のひとつがこのバズコックスである事は間違いないだろう。
「あの素っ頓狂なヘナチョコ声が嫌い」と断言出来る人も数多くいるだろうし、ストロング・スタイル至上主義のパンクスに受け入れられる要素はないけどな。
しかし王道のポップ・ミュージックを勢いのあるビートや乱雑な歌い方で展開して、その後のニュー・ウェイブ誕生のヒントを作ったという功績は多大だと個人的には思う。
バズコックスがいなければ誰かが同じ路線を作ったという意見もあるだろうけど、それはどんな音楽でも同じこと。
何もやらないヤツはいつもそう言う。

バズコックスの大半の曲で裏返るような不安定なヴォーカルをとっているのはピート・シェリーだが、初代ヴォーカリストであるハワード・デヴォートこそがこの歌い方の元祖だと言えよう。
発掘音源などなかった時代に彼の歌声が聴けたのはマンチェスターの歌声喫茶、ではなくニュー・ホルモンズという自主制作レーベルから出た「Spiral Scratch」と題された4曲入りのデビュー・シングルのみだった。
ここに収録されている「Boredom」や「Breakdown」はパンクの伝説的名曲として名高い。

「退屈」というタイトルをここまで音で一目瞭然に体現出来たバンドは他にない、と言えるほどの完成度。
デヴォート、本当に気怠いよ。
クラッシュ、ピストルズ、ダムドといったパンク・バンドは音楽だけでなく、ヴィジュアル面でも若者の心を掴んでいたが 、このバズコックスはそういう面には無頓着。
ただハワード・デヴォートのおそろしく広い額はまるでパンク世代のブライアン・イーノのような風貌で、この妖しい歌い方や声質と気持ち悪い顔は良く合っていたな。
「爬虫類のような目つき」とはまさに彼のためにあるような表現。
前に何回もバズコックスやマガジンについて書いてきたから特別新しいコメントもないが、歌い方の個性という点ではハワード・デヴォートは多くのヴォーカリストに影響を与えたのじゃなかろうか。

彼はこのシングル1枚のみでバズコックスを去り、次にマガジンというバンドを結成する。
デビュー当時は無名だったが後にニック・ケイブ&バッド・シーズやソロとして活躍する黒人腕利きベーシスト、バリー・アダムソン 。そしてスージー&ザ・バンシーズやアーモリー・ショウなどで活躍するギタリスト、ジョン・マクガフといった有能なミュージシャンと共に作り上げた音楽世界はパンクからニュー・ウェイブへの変換期にちょうどピッタリ当てはまったものだった。
単なるパンクから一歩踏み出した新しい音楽、それがニュー・ウェイブだとしたら、このマガジンもワイアーなどと共に先駆者として語られる存在に違いない。
彼がやりたかった事はバズコックスの演奏力では表現出来なかった、それがマガジンを聴くと良く理解出来るだろう。
そのマガジンがジョン・ピール(英国BBCラジオのディスクジョッキー)・セッションでバズコックス時代の「Boredom」をマガジン流でやっていて、これが興味深い。
バズコックスのカヴァーは数多くのバンドがやっているだろうが、オリジナル著作権者同士のテイストの違いを堪能出来てこれはまさにファン冥利に尽きるな。

デヴォートとシェリーの共作と思えるので、デヴォート抜きのバズコックスでもこの曲をやってるし、どちらのバンドも演奏する権利はあるのだろうか。その辺はよくわからんが、どちらも甲乙つけがたい素晴らしい出来だね。

Josef K VS Orange Juice
パンクの後にニュー・ウェイブの時代が来たのは前の項にも書いた通りだが、 これ以降はエレポップだのネオ・サイケだのオルタナティブだの実に細かく枝分かれしてゆき、それらが乱立した時代がしばらく続く。
どのジャンルにも後に語り継がれるようなバンドが出現して、ちょっと天下を取っては廃れてゆくという戦国時代みたいなものか。
そういう世間の流行りとは少し違ってるかも知れないが、ネオ・アコースティックとかギター・ポップという音楽もこの時代に生まれたものだ。
普通の青年達が背伸びせずに学生バンドの延長みたいに始めた音楽、そういう印象があるジャンルだが、ポストカード・レーベルやチェリーレッド・レーベルなどは比較的メジャーなバンドを擁していて、密かにファンを増やしていった。
ジョセフ・Kもオレンジ・ジュースもスコットランドのポストカード・レーベルから同時期にデビューしたが、日本で知られるようになったのはラフ・トレードが出したコンピレーション「クリアカット」に仲良く収録されていたからだろう。
余談だがこのアルバムにはディス・ヒートやレッド・クレイオラなども収録されていて、さりげなく幅広いすごい顔ぶれだったな。
このアルバムに啓蒙されて音楽を志した若者(今はたぶんオッサン)も多かろうと思える。
なぜかROCKHURRAH所有のこのアルバムはディス・ヒートの「Health & Efficiency」だけ針飛びするという泣きたくなるような不良盤だったのを今でも苦々しく思い出す。
話が逸れてしまったがオレンジ・ジュース、ジョセフ・K、この2つのバンドを渡り歩いたギタリストがマルコム・ロスだった。

ジョセフ・Kはポール・ヘイグという角刈りリーゼントのようなサングラス男がフロントで、そのマルコム・ロスの絶妙なカッティングのギターがちょっと陰りのあるヘイグのヴォーカルに絡むというスタイル。
ほぼ同時期にデビューしたモノクローム・セットとも似たような世界。
しかし彼らほどヴァラエティ豊かな音楽ではなく、やや単調な点が災いしたのか、ニュー・ウェイブ好きの人以外からはさほど注目もされなかったバンドだと言える。ジョセフ・Kの再来とも言えるほど似てたジューン・ブライズはよく聴いてたのに、本家の方はそこまで大好きではなかったなあ。

彼らの中で一番好きなのがこの「Heaven Sent」だ。
バンドとしての活動期間が短かったから同時代に彼らの音楽はあまり世に出ていないが、ずっと後に再発されたりで何とか全盛期の曲を聴く事が出来る。これは81年のピール・セッションのものらしい。
マルコム・ロスがオレンジ・ジュースに加入する前というわけかな?
ガチャガチャなギターの音と投げやりなヴォーカルが心地良い名曲。

オレンジ・ジュースはエドウィン・コリンズというぽっちゃりヒラメ顔のサングラス男がフロントでジョセフ・Kよりもやや音楽活動歴は長いが、オレンジ・ジュース名義になってからは同じポストカード・レーベルで同じ頃にデビューしている。
ちなみにアズテック・カメラもこのレーベル出身で、ネオアコやギターポップ好きの人にとっては聖地みたいなところがスコットランドなのかね。
オレンジ・ジュースはそういう路線からデビューしたんだが、一般的に有名になったのは2ndアルバム「Rip It Up」だろう。
このアルバムではジョセフ・Kから前述のマルコム・ロス、そして黒人ドラマーが加入したりで当時華やかに流行していたファンカ・ラティーナなる音楽を取り入れた事により予想外のヒットを放つ。
ファンクとラテン・テイストをごっちゃに融合したニュー・ウェイブの1ジャンルの事ね。

聴いた事ある人はわかるだろうが、エドウィン・コリンズのヴォーカルは思いっ切り白人なのにR&Bとかのヴォーカル・スタイルでかなり独特のこもった歌声。
パッと見にはサングラスでカッコ良さそうだが、よく見ると江口寿史の漫画に出てくる本人に似た感じで(今時知ってる人も少ないか)このくぐもったいやらしい声。思わず笑ってしまう部分があるんだよな。
本当によくこれでヒットしたものだと感心してしまう。
エドウィン・コリンズは後にソロとなって活躍したり、ヴィック・ゴダード復活の際に多大な貢献をしたり、やってる事自体はナイスなのになあ。
で、この2ndアルバム右下の男が問題のマルコム・ロスだ。
彼が作った曲がタイトル変えてこのアルバムに収録されているが、当然ながらジョセフ・Kとは大幅に違った路線。
あっちよりはコクがあるけどキレはイマイチといった具合かな。
やたらとマルコム・ロスの名前を連発しているが、まがりなりにもレコード屋稼業の端くれにいるROCKHURRAHが勝手に持ち上げただけで、本来ならば話題に上る事も稀な地味ギタリストに過ぎない(たぶん)。
これが元で空前のマルコム・ロス・ブームになったらどうしよう。

Red Crayola VS Pere Ubu
パンクからニュー・ウェイブの時代になって様々な音楽が誕生したが、上の項でも書いた通り、当時最強のインディーズ・レーベルがラフ・トレードだったと個人的には思っている。
それよりも小さくて売る力がないけど斬新なレーベルに目をつけて、これを次々とディストリビュートしていった功績は大きい。
元々がレコード屋だけに口コミで評判になったり、大きな会社の大金かけたプロモーション戦略とは逆の路線で成り上がったのがラフ・トレードなんだろうね。
まさに音楽のCGCグループ(全国の加盟スーパーによって構成された一大チェーン)みたいなものか。
このラフ・トレードが徳間ジャパンから続々リリースされた事によって、輸入盤漁りが難しいような土地でも当時の先端音楽を知る事が出来た。
ROCKHURRAHは音楽が盛んで良い輸入盤屋もあった福岡県出身なのでそこまで飢えて困ってはいなかったが、その辺で好きなレコードが買えるメリットは地方の人にとっては計り知れないものがあった。
前置きが長くなったが70年代後半からそのラフ・トレード系列は個人的な好みにピッタンコの音楽をどんどんリリースしてくれた。

<註:本来ならレッド・クレイオラを先にすべきだが、ペル・ユビュを先に聴いていたので時代と順序が逆になってしまう>

ペル・ユビュはアメリカ、クリーブランドのバンドで1975年頃より活動していた。
パンクの世界で大成するデッド・ボーイズの母体でもあるRocket From The Tombsというバンド、ここの主要人物だったピーター・ラフナーとデヴィッド・トーマスがペル・ユビュを始めたというわけ。
「悪趣味で不条理」 などと評されるフランスの作家、アルフレッド・ジャリの戯曲「ユビュ王」に由来するバンド名というだけでもこのバンドの目指した方向性がわかるというものだ。ん?わからない?
難しい事はわからなくてもユビュ王もデヴィッド・トーマスもデブつながりという程度の認識でもよろしいか。

ペル・ユビュはデヴィッド・トーマスの演劇的(?)な奇抜で素っ頓狂な歌唱とピーター・ラフナーのグチャドロのギター・プレイという二段構えで今まで聴いたことないようなユニークなバンドになる予定だったが、1977年にラフナーがお決まりのドラッグ&アルコールで死亡してしまった。
しかし別のグチャドロなギタリストが加入して初期とあまり変わらぬ状態で継続していったのはさすが。
グチャドロは不滅だね。

デビュー・アルバム「The Modern Dance」は工場地帯をバックに労働者がバレエを踊っているような奇抜なジャケットだったし、ジャケット見て音楽性に見当がつかない典型。
なぜか初期のアルバムは大手フォノグラム、マーキュリー系列から出ていたのでメジャーな音かと思いきや・・・。
ROCKHURRAHもほとんどジャケット買いだったが聴いてビックリ。
変なのにカッコイイ、前衛的なのに爽快感がある奇妙な感覚。
思えばこれがオルタナティブとかアヴァンギャルドと呼ばれた音楽とのファースト・コンタクトだったのかも。
色んな音楽を聴く前、まだ少年だった時代の出来事だから、 我ながら早熟な音楽体験だったと思うよ。

ペル・ユビュはこの後もだんだんと難解な方向に進んでゆきカッコイイと思える曲も少なくなって、遂にメジャーでやってゆくにはあまりにもワケわからなすぎ、という段階に達した。
そこに手を差し伸べたのが前述のラフ・トレードだったというわけだ。
ようやくこれで話がつながったな。
そこから出された4thアルバム「The Art Of Walking」はラフ・トレードの宣伝上手でそこそこ売れたんじゃなかろうかと推測する。中古盤屋でもよく見かけたしな。ROCKHUURAHは輸入盤で買ったんだが、後に日本盤も出た模様。
ペル・ユビュの缶バッジ付いてたのを思い出す。

このアルバムも最初の「Go」から不条理なギターが耳障りな名曲で、一般的にポップなロックとはかけ離れた内容。
ただし前のようにギターそのものがヒステリックではなくなった印象。
ピーター・ラフナーの路線を引き継いだトム・ハーマンに代わって、レッド・クレイオラのメイヨ・トンプソンが加入したらしいと知る。
そして彼のソロ・アルバムに収録されていた「Horses」をペル・ユビュ・ヴァージョンで先に聴くことになってしまった。
これはフランス映画のサントラとかで使われてもおかしくないような哀愁の名曲で、口笛がとても効果的。
「うーん、ジャン・ギャバン」などと意味不明に呟きたくなるよね。
しかしペル・ユビュの従来の路線とは随分印象が違う。この曲だけを聴いてペル・ユビュがこういう音のバンドだと勘違いしないようにね。

レッド・クレイオラについては音楽雑誌などで知ってたし、先に書いたラフ・トレードからも何枚かリリースされていた。
これがニュー・ウェイブ世代のバンドではなくて60年代からサイケデリックとかアヴァンギャルドやってるバンド、いわゆるオルタナティブの偉大な先駆者というような予備知識は持っていたのだ。
ただしラフ・トレードから出るまではなかなか入手困難だったのは間違いなく、彼らの曲をまとめて聴いたのは随分後の話になる。
だからずっと追いかけてきた最初からのファンなんて少なくともROCKHURRAHの世代には滅多にいなかったに違いない。とても見てきたようには書けまっせん。

これがその1970年のソロ・アルバム。
全体的にレッド・クレイオラよりもアコースティックでピンク・フロイドとシド・バレット(ソロ)のテイストの違いに近い、と言えばわかりやすいか。
こちらの「Horses」はボサノヴァ調とかルンバな感じでペル・ユビュよりも簡素。
「うーん、イパネマ」などと意味不明に呟きたくなるよね。
実に不思議な味わいがある曲だな。素材の旨味を最大限に引き出した至高のメニューみたいなものか。

さてさて、今回は連休ということもあって久々にじっくり書いたロング・ヴァージョンという事になる。
一人の人間が別の場所に行って、別の環境で同じテーマの事をするというのが今回の主旨なんだが、ROCKHURRAHが漂ってきた世界もそれと一緒かな。
趣味も嗜好も子供の時から変わってないし、今時のこんな時代にいつまでも70〜80年代やってるんだもんな。
これからもずーっっとこの調子だろうし、人間国宝狙いの境地でやってゆく事にしよう。