がっちりBUYましょう!vol.6 5.11 Tactical編

【製品の丈夫さを強調し過ぎてバカバカしく面白い、5.11のCM】

ROCKHURRAH WROTE:

この企画のvol.4で「ミリタリーもやっているアウトドア・ブランドのバッグ(でも完全ミリタリーじゃない)」という妙な特集してしまったが、今回はその最後に登場したブランド、5.11について書いてみよう。
あの時はまだ購入前だったから、その使用感レビューも書けなかったもんな。

この5.11について格別詳しいわけじゃないし、プロでもマニアでもないんだが、持ってるものについてくらいは書けるはず。

5.11とは元々ロック・クライミングにおける難易度をあらわす数字だそうで・・・などという話は大半の人にとっては面白くないだろうからすっ飛ばしてみよう。え?割愛しすぎ?

ミリタリーの服装が好きでそれ系のサイトをチェックしてる人だったらこの5.11のロゴを割と良く見かけるんじゃなかろうか?そう、5.11の創始者(?)ロイヤル・ロビンスは元々アウトドア・ブランドを展開していたのだが、アウトドアの世界ではなくてFBIとか警察、軍事関係者に好まれてビッグネームとなってしまったという経緯がある。そういう特殊な任務の人が身につけるマニアックなものを作りまくっているのが5.11というわけだ。ちなみにROCKHURRAHの故郷、小倉にはニューロビンロイヤルという洋服屋があるが、もちろんロイヤル・ロビンスとは何も関係ない(当たり前)。
いわゆる軍モノというのとはちょっとニュアンスが違うけど、限りなく近い位置にある民生品(一般人が買えるモノ)という感じ。
ただしネットショップでは良く見かけるけど、これを実際の店舗で在庫として持ってるところは限りなく少ない。ROCKHURRAHもさんざん探してようやく取り扱いしてる店舗を見つけたけど、すべての色やサイズがあるわけではなくて、ややガッカリしたもんだ。このメーカーを買うんだったら海外から直接通販した方がいいのかもね。


RUSH MOAB 10

さて、前回にレビューを書けなかったバッグがこれだ。無事に届いたはいいけど、結局2ヶ月半くらいは待たされた。何度も買ってる人なら「これくらいは当たり前だよ」と言えるかも知れないけど、船便じゃあるまいし、このご時世にこんなに待たせる商売があるとはビックリ。
バッグは申し分ないくらいに機能的で気に入ってるけど、代理店の対応がイマイチだったなあ。

このバッグについての名前の由来は前にvol.4で書いたけど、簡単に言えば要人警護とかの特殊任務の人が街中に潜んで目立たない、という目的のバッグらしい。斜め掛けのスリング・バッグだから、背中に背負った姿は微妙に傾いたリュックのよう。これを素早く前に回すと中身をすぐに取り出せるようになっている。メインの収納とその上の大きなポケットとの間に秘密の隠しポケットがついていて、そこから武器を一瞬で取り出して犯人に対抗する、という用途のために計算された仕様だが、一般人はただの便利ポケットとして使用して下さい。人の三倍の速さでSUICAが取り出せるとか・・・。
ちなみに肩掛けストラップは右でも左でもかけられるようになっている便利機能。左利きの人も大丈夫なのがさすが。使わない方のストラップは本体にきれいに収納出来るのが素晴らしい。この手のバッグは余ったストラップがでろんでろんに垂れてしまいがちだからね。

前の小さいコンパートメントは様々なものが入るように小分けされてて便利。これはこのバッグに限らず、最近のアウトドア系のバッグでは常識だね。メインの方は底の方に巾着風のポケットがついていて、荷物が動きにくいようになっている。さらにメインのフタの裏側にこれでもか、と言わんばかりのメッシュ・ポケットが多数付いてて、薄手のものはかなり収納出来る。ごちゃごちゃした小物が多いROCKHURRAHにはうってつけだと思ってたが、フタを完全に開かないとアクセスしにくい場所にあるため、実際はあまり活用してないのが残念。整頓好きの人には理想的なバッグかもね。

写真ではわかりにくいけど、一番上の取っ手の下はサングラスなどを入れるケースになっている。ずっとサングラスを装着しっぱなしというROCKHURRAHはここに自転車用のライト前後を2つ入れてる。ストラップの一番上にはiPodや携帯など入れられるポーチが付いてるんだけど、これがクセモノ。後ろにかけた状態では首の真後ろ、前に回した状態だと脇の真下という変な部分に位置するため、中のモノを取り出すのが非常に困難なのだ。こんなところにすぐ手が届く人間がいるのか?
というわけでこの部分を活用した事は一度もない、無用のポーチという結果になった。取り外し自由で好きな部分に取り付け出来たらどんなに便利だったろう。これだけは開発者の意図が理解出来ないよ。

その他、ROCKHURRAHが使う事はないけどハイドレーション用のポケットも完備していて、雑誌や書類なども入れられる。さらにバッグの下にはストラップが付いてて、シュラフや着ない上着などをちょっとしばっておく事も出来る。写真見てわかる通り、軍用で使われるMOLLEシステムによってほぼ全面にポーチとかカラビナとか引っ掛けられるようになっていて、拡張性も申し分ない。

ストラップ上部のポッケはあまり意味なかったけど、もうとにかく、この機能性と無骨なデザインには惚れ惚れするバッグだ。潜入捜査とかが目的なのでかなり目立たない5.11のロゴしかないのも渋い、江戸っ子みたいだね。

弱点というか、見た目と機能性の割には防水性能は大したことなく、大雨の時には水が侵入してしまうのがイマイチなところ。完全防水ってほどの価格じゃない(この手のバッグとしてはかなり安い方)し、そんなに期待はしてなかったけどね。一番下に排水のための穴が開いてるから、濡れてもすぐ乾く、というような男らしいポリシーなのかね?

防災グッズとかが売れてる時代だし、そういう目的でこのバッグを購入したいと思った人も多いだろう。ただ、これが試着出来る店はほとんどないのが現状なので、苦労して入手してもらいたいものだ。似たような機能と見た目のバッグをマックス・ペディション(日本ではマグフォース)というメーカーが作ってるけど、こちらは比較的入手しやすいみたい。なぜか東急ハンズでも売ってるから、5.11にこだわらない人はそちらの方がいいかも。


CHAMELEON SOFT SHELL JACKET

こちらはカメレオンのように色が変わるソフトシェル、というわけでなくて、街中にさりげなく溶けこむ潜入捜査官の上着として開発されたもの。5.11にはコバートというシリーズの商品があるが、これはひそやかな、隠されたというような意味合いのもの。例えばコバート・カーゴ・パンツには隠しカーゴ・ポケットが付いてるとか、そういうシリーズだと考えてもらえれば良い。「俺は戦闘的な格好で武器だって持ってるぜ」というミリタリーな服装とは別の視点だね。カメレオン・ソフトシェルはコバートのシリーズかどうかは不明だが、目指してるのはそういう世界だ。

ソフトシェルとはゴアテックスなどの完全防水衣料ほどの防水性はない代わりに、適度な撥水性があり、伸びる素材によって着やすく、動きやすく、通気性があるアウターの事だ。軍モノ、アウトドア関係で大人気のアイテムだが、近年は普通の街着ブランドでも使っているものが多いな。個人的にもハイテク新素材大好きだよ。

ジャージとかアウトドアっぽいツートンカラーのものも出てるが、ROCKHURRAHのは黒一色のとても素っ気ないもの。表側には5.11のロゴも一切ついてない。かなり薄手のソフトシェルで裏側はメッシュと薄いフリースになってる。外人向けに作られたとは思えないほどスリムで丈も短く作られてて、実はROCKHURRAHには短すぎるほど。買おうと思ってる人はワンサイズ大きめの方がいいかもよ。

このカメレオンの最大の特徴は胸の二箇所と背中にある大きなジッパー・ポケット。
パッと見には普通の地味なソフトシェルで何の変哲もないんだが、この三箇所を開けて中のIDパネルを取り出すと「FBI」とか「POLICE」とか書いてあるという仕組みになっているのだ。IDパネルは無地の布が付いてるだけなので本気の人は別途FBIロゴを用意してね。FBI捜査官がイザとなったらこれを出して、身分をアピールするという使い方が正しいようだ。犯人と間違われて発砲されちゃ困るからね。
「日本人で一般人だから意味ないよ」と思うかも知れないけど、例えば自分でパッチとか貼って使うことも出来るから、そういう用途以外でも活躍出来るよ。こんな機能使わない人はベルクロ(マジックテープ)ですぐに取り外せるのも嬉しい。取ってしまえば普通のポケットとして使える。しかも背中はかなり大型ポケットだからチラシとかも余裕で収納出来てしまう。ライブ会場の入り口でフライヤー貰って、入れるところも捨てるところもなくて困った人もこれで安心。タクティカル商品なのにパンクでも使えるとは、5.11恐るべし。

こんな薄っぺらいジャケットなのに胸✕2、腰✕2、背中✕1、内側✕1(少し小分け出来る)と合計6箇所も収納部分があるし、密閉度が高いので見た目よりは暖かい。特に風が強い日などには最適だ。ライダース・ジャケット、いわゆるロンジャンと呼ばれる形でもお馴染み、後ろが少し長くてラウンドしたフォルムも素晴らしい。雨も多少は大丈夫だから、カッコよくて気軽に羽織れる高性能アウターを探してる人にはオススメ。
ただし、やっぱりどこでもは売ってない商品で、しかも着丈を確かめたい人は現物試着出来る店はほとんどないかも。短すぎ、小さ過ぎにご注意を。


PUSH+R BAG

ここからはROCKHURRAHではなくSNAKEPIPEの持ち物となる。ブラック&レッドの組み合わせ大好きなSNAKEPIPEが見た瞬間「これかわいい!」と一目惚れして買ったのがこのバッグだ。
本当はSNAKEPIPE本人がモデルの方が良かったけど、ムサい背中(しかも小太りに見える)でごめんなさい。

5.11が出してる赤や青の鮮やかなカラーのものはFIRE/EMSシリーズとの事で、消防隊や緊急医療チームが主に使うのを目的に作られている。要人警護や特殊部隊みたいに戦ったり潜んだりする目的とは違うから、その便利さも違った方向性というわけ。コバート系のように人目から隠すのではなく、むしろ消防、医療関係者ですよ、というのを強烈にアピールするための赤なのかね。5.11のロゴも目立つなあ。

写真ではわかりにくいけどストラップ以外の黒い部分は全て簡易MOLLEシステム状になっている。ここにポーチ類をあしらうも良し、何かを引っ掛けるも良し、という具合に使う人のセンスで色々と拡張出来るのがまず機能的なところ。公式サイトなどでは医療用のハサミやペンなどをこの部分に引っ掛けてたな。パッチを取り付けるためのベルクロも完備。

パッと見には小型のバッグだけど実は意外と収納力があって、マチの厚みもあるので結構色々なものが入る。これもRUSH MOABと同じく、細かく色んな場所に色んなモノを収納出来るのが素晴らしい。
メッセンジャーバッグのようにフラップを開けるとメイン・コンパートメントになる。中は仕切りやベルクロのポケットになっていて、やはり整頓好きにはたまらないだろうね。フラップの上にもジッパー・ポケット、さらに一番上のポコッと出た部分には小物やサングラスが入るポケットがある。至れり尽くせりだなや。

そしてこのバッグの一番の優れポイントは、両サイドに500ml程度のボトルが収納出来るポケットを完備している事だ。アウトドア系のバッグでは珍しくない機能だが、5.11のはそこが単なるメッシュ・ポケットとかじゃなくてジッパー開閉式のビッチリとしたもの。真ん中の取っ手を引いたら両方のジッパーが開閉出来るというギミックが非常に優秀でSNAKEPIPEもこの部分が大変お気に入り。カタログなどをざっと見たところ、このシステムを導入している5.11のバッグは他にないようだが、全てのバッグに採用して欲しい便利機能だ。

背中に直接当たる部分にどういう用途で使うのか不明な細いストラップとフックが付いているのだけが不可解。腹に回してバッグを固定、というようなものではないようだが、誰か知ってる人がいたら教えてもらいたいものだ。

弱点はRUSH MOABと同じで水に弱い事。やっぱりこちらも下に排水用の穴アリだよ。まあこれだけ隙間の多いバッグだから、撥水性のある布地に作る自体がナンセンス。「緊急事態に雨も雪も関係ないぜよ」という思想なのはわかるが、応急処置される側としては濡れた包帯イヤでしょうな。

ウチは赤がかわいいという理由でこのバッグにしたが、普通に黒、サンドベージュ、オリーブドラブなどのミリタリー・カラーも出ている。SNAKEPIPEの一押しバッグで、値段も手頃だから、今度ROCKHURRAHも色違いを買ってみたいものだ。しつこいようだが、実店舗で売ってる店はこれまた少ない。大人気で品薄というのとはまたちょっと違う世界だから、仕方ないのかね。


TACLITE 8 WATERPROOF BOOTS

これまたSNAKEPIPE所有のブーツ。誕生日にプレゼントしたものだ。本来なら本人が履くのが当たり前だが、撮影用にROCKHURRAHが無理やり履いたのが左の写真。1〜2サイズ小さめなのにかなり無理して着用したよ。でも履けてしまうのもすごくないか(笑)?

バッグとかなら男性女性関係なく持つ事が出来るが、服やブーツとなると別。通販じゃなくて実店舗で試着して確かめてから購入したいものだ。
というわけで探して買ってきたのがこのブーツ。アメリカでは4インチ(22cm)から販売してるので女性でも買う事が出来るのに、日本では大抵7インチ(25cm)くらいからしか売ってないのだ。日本でこんなブーツを好んで履く女性がほとんどいないから、販売店も男性客しか考えてないんだろうね。嘆かわしい。SNAKEPIPEには少し大きかったみたい。
しかし足首の部分はかなり狭くて、靴紐をキュッと閉めると脱ぎ履きが困難になるらしい。確かにROCKHURRAHが愛用しているベイツのタクティカル・ブーツと比べると、かなり細身でシャープな印象がある。個人的には履きやすさ抜群のベイツだけど、見た目はやっぱり5.11の方がカッコ良いなあ。人によって好みは色々だからこんな意見は参考にもならないね。

5.11はブーツにも力を入れていて何種類も出しているが、これは軽量で防水性を売り物にした新し目の商品。タックライトという軽量のカーゴパンツを出してるので、そのシリーズの一環なのだろう。見た目は全然防水に見えないが、裏地がちゃんと浸水を防ぐようで、雨でもひとまず靴下が濡れる事はない模様。ROCKHURRAHは自分の持ってるものから推測して、5.11はあまり防水が得意ではないと勝手に判断してるが、豪雨の時はどうだろうね?

この手のタクティカル・ブーツはとにかく機動性に優れたものが良い。本当だったら強度の面でダメなんだろうけど、脱ぎ履きが楽という点でサイドジッパーがやはり便利だ。靴紐を結んだ後にすっきり収納出来るのもスマートな機能でいいな。
足首の横の方にナイフ入れるための隠しポケットがついてるあたりも特殊すぎ、さすが5.11。


あまり調べず書けてラクそうだから選んだ今回の企画、思ったよりもずっと長くなってしまったな。その割には一般的には興味ない、面白くないの世界だろうから、この労力も報われない事になってしまう。
ROCKHURRAHお得意の「後半駆け足で文章がぞんざいになってしまう」という本ブログの特色は今回なかったな。いいかげんで中途半端を売り物にしてるのも問題だけど、あまりみっちりもヨロしくないなあ。これからもほどほどを目指してやってゆこう。

ロトチェンコ-彗星のごとく、ロシア・アヴァンギャルドの寵児-

【会場壁面に書かれていた広告文字を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEが初めてパソコンを購入したのは、1990年代後半のこと。
デジタルカメラを先に買ってしまい、撮影を終えた後の処理をどうしたら良いのか分からず新宿ヨドバシカメラの店員に尋ねたところ
「えっ、パソコン持ってないんですか~?」
と呆れられてしまった。
仕方なく急遽パソコンを購入するハメになったSNAKEPIPEに
「写真やるんだったら本当はMacが良いけれど、ウィンドウズならVAIOがお勧めです」
という。
パソコンのことを何一つ知らなかったSNAKEPIPEは、その店員に勧められるままにVAIOを購入。
ただずっと「写真やるならMac」というセリフは頭に引っかかっていた。

月日は流れ。
Mac派のROCKHURRAHと知り合い、Macの魅力について教えてもらうことができた。
写真に限らず、グラフィックでも、DTPでも音楽でも、パソコンを使って表現をしたい場合にはMacのほうが適していることはよく解った。
最近はウィンドウズでもできることは増えてきていると思うけど、初期状態ではMacが断然有利みたいだね。

ROCKHURRAHが何気なく使っているアプリケーションのインターフェイスやデスクトップ画面、スクリーンセーバーなどもすごくオシャレでカッコ良いものが多い。
「ずるーい!SNAKEPIPEもカッコ良いスクリーンセーバーにしたい!」
と言うと
「これはMac専用だから」
と言われて何度悔しい思いをしたことか!
ある時、また違うスクリーンセーバーが動いているのを見て
「おおっ!今度はモホリ=ナギだね!」
と言ってそのカッコ良さに惚れ惚れしてしまった。
実際にはモホリ=ナギじゃないんだけど、似たような構成主義っぽいスクリーンセーバーだったからね。
何やら人名らしき文字が動いていて、アレキサンダー・ロドチェンコ?
よく分からないけどカッコ良いね!と言い合っていた。

「観に行きたい展覧会がある」
ROCKHURRAHから提案されて驚いた。
なんとそれがアレキサンドル・ロトチェンコ展だったからだ!
読み方が間違っていたこともここで判明。(笑)
これは例のスクリーンセーバーの人じゃないの!
偶然にもこの展覧会を発見した、というROCKHURRAH、さすが~!
うわー、行きたい行きたい!
と喜び勇んで銀座に出かけた春分の日。
世界最大規模のユニクロ銀座店がオープンしたばかりできっと大混雑だろうと予想していた割には、そこまでの人の多さじゃなくてホッとする。
そういえば銀座店オープン記念としてリンチTシャツ売ってるんだよね。

映画のポスターをそのままTシャツにしました、っていう非常に安易な構成だし、しかも何故だかユニクロだし?
人ごみも嫌だから行かないけど、なんでリンチに焦点を当てたんだろうね?
値段が990円ってどうなの?
リンチに失礼な安値じゃない?

などと言い合いながら銀座グラフィックギャラリーに到着。
あれ?まだ開いてないのかな?
ん、んんんん?な、なんと!日曜祭日は休館…。
せっかく来たのにガッカリ!
ちゃんと調べてこなかったのが悪いね。
この日は仕方なく銀座6丁目にある「支那麺はしご」で大好きな「だんだんめん」を食べて帰宅。
ROCKHURRAHとリベンジを誓い合う。(大げさ)

そしてついにリベンジの日が来た!
一度行っているので銀座グラフィックギャラリーまでの道のりは万全。(笑)
思ったよりも寒い日で、しかも雨降り。
リベンジに燃えるROCKHURRAHとSNAKEPIPEは熱い想いを支えに、会場に向かうのであった。
恐らく銀座グラフィックギャラリーに来たのは初めてだと思う。
だってここは写真や絵画などのアートではなくて、グラフィック専門のギャラリーだもんね?
「知っているグラフィックデザイナーの名前を挙げよ」と問われても、誰の名前も浮かんでこないかもしれないから、当然とも言えるのかな。
Wikipediaで調べてみると国内・海外のグラフィックデザイナー一覧が載っている。
海外で知っているのはアルフォンス・ミュシャ、国内では横尾忠則と立花ハジメだけだった。(笑)
名前だけは知ってるということならば粟津潔とか宇野亜喜良も入るけどね。
ま、そのくらいグラフィック、と限定されてしまうと知らない世界なんだよね。

ここで簡単にアレキサンドル・ロトチェンコについて紹介してみよう。
1891年 ロシアのサンクトペテルブルク生まれ。
1911年 美術学校に入学。
1916年 未来派展に幾何学的なデッサンで初出品する。
1923年 芸術左翼戦線機関誌「レフ」創刊号の表紙を担当する。
1924年 写真を撮り始める。
1925年 パリで開催された現代装飾美術・産業美術国際展覧会に参加。
1956年 モスクワにて死去。

今回展示されていたのは、ほとんどが1920年代から30年代の作品だった。
恐らくロトチェンコにとっては、1925年パリにおける国際展覧会に参加したあたりが最も華々しい時期だったのではないか。
左の作品はその国際展覧会「ソ連部門」カタログの表紙とのこと。
赤・白・黒・グレーといういかにも構成主義らしい配色とソビエトユニオンだよ!と一目で判り易い文字、そして鎌とハンマー!
今まで知らなかったんだけど、この鎌とハンマーは農業労働者と工業労働者の団結を表してるんだって!
皆さん、ご存知でしたか?(笑)
1910年代から1930年代初頭までにロシア(ソビエト連邦)を席巻していた芸術運動である、ロシア・アヴァンギャルド。
その中心的存在だったロトチェンコは当時20歳から40歳という体力的にも精力的にも活動しやすい年齢だったんだろうね。

ここでちょっと注釈。
アヴァンギャルド、と聞いてどんな意味を想像する?
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも前衛的で破壊的な革新的な物事を示す言葉だと考えていて、「ロシア・アヴァンギャルド」と聞いた時には非常に斬新で難解なアートなんだと勘違いしちゃったんだよね。
ところが、ロシア・アヴァンギャルドは
1: レイヨニスム
2: シュプレマティスム
3: ロシア構成主義
という3つの芸術理念があり、いずれも過去の様式を断ち切り革命以後の新たな生活様式をデザインしようとした運動のことを指すらしい。
ロシア・アヴァンギャルドという括りの中にロシア構成主義が入ってるんだ、ということも初めて知って驚き!
SNAKEPIPEはロシアの歴史についてもあまり詳しくないので、調べてみた。
1917年 ロシア革命
1924年 レーニン死去
この年以降からスターリンが再び社会主義化していき、社会主義リアリズムが重視されるようになる。
そのためロシア・アヴァンギャルドは政治的な抑圧を受け、一般大衆からの支持もされなくなってしまい1930年代には終わってしまったようである。
歴史や政治に翻弄されてしまったアート、ということになるのかな。

銀座グラフィックギャラリーは、驚くべきことに無料なんだよね。
きっと無料開催ってことはそんなに大した展示数じゃないに違いない、と思ったあなた!
それは大きな間違いよ!(ちっ、ちっ)
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも驚くほど、とてもキレイな会場でしかも150点以上の展示数。
会場受付1階と地下1階にはスーツ着たお姉さんが出迎えてくれる、至れり尽くせりの会場だったのである。
無料で、しかも立派なチラシまで作ってあって、どういう資金繰りで開催してるのか興味あるね。(笑)
こんなに素敵な企画を実現してくれて、ありがとう、銀座グラフィックギャラリーさん!

ロトチェンコは写真撮影も行なっていて、今回は写真作品も展示されていた。
どの作品もデザイン的な要素満載だったのが印象に残る。
何気なく撮っているように見えても、やっぱりグラフィカルなんだよね。
写真もグラフィックの表現の一つと考えていたように見受けられる。
産業や工業の発展というのがこの時代の重要なテーマだったようで、インダストリアルな写真作品もありウットリしてしまうSNAKEPIPE。
左の作品はそんな産業系の写真とロトチェンコのグラフィックが融合されたもの。
どうやら探偵小説の表紙らしいんだけど、内容と表紙がマッチしているのかは不明。(笑)
ロシアの探偵小説っていうのも気になるところだよね?
ロシアの小説で読んだことがあるのは、ドストエフスキーの「罪と罰」とトルストイ「イワンのばか」くらいのものか?
ちょっと時代が古過ぎか。(笑)
映画ならエイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」「ストライキ」がまさに1925年で、ロシア・アヴァンギャルドの時代ぴったりだけどね。
あとはロシア・アヴァンギャルドより少し前の時代の画家としてカンディンスキーを知っていたくらいか。
あまりに知識がなさ過ぎってことを露呈しただけだったね。(笑)

それにしてもロシア文字っていうのが、慣れていないせいもあるんだろうけど、フォントそのものが記号的で、グラフィックデザインにマッチしているように感じるのはSNAKEPIPEだけではあるまい。
1980年代にジャン=ポール・ゴルチエがロシア文字に注目して、ファッションに取り入れてたことを思い出す。
SNAKEPIPEもロシア文字の入ったゴルチェ巾着持ってたなあ。
えっ、また古過ぎ?(笑)

先週のハリー・クラークの記事にも書いているけれど、やっぱり1920年代のアートってとても進んでてカッコ良いんだよね!
ロトチェンコはアートと商業の融合を目指していたようで、広告や例えばキャラメルのパッケージのような身近にある物までなんでもデザインしていて、当時のソ連の美意識の高さを初めて知ることができた。
子供の頃から当たり前のように、あんなに優れたデザインに接しているロシア人ってすごいなあ!(笑)
そうだ、憧れのロシア人がいたことを思い出したよ!
漫画/アニメ「ブラックラグーン」に登場するバラライカさん!(笑)
顔に大きな火傷の跡があるけれど、美しく気高く冷酷な軍人気質はとてもカッコ良いんだよねー!
漫画読んでアニメ見てる時も「ロシアについて知りたい」と思ってたんだった!
もっとロシアのことを調べてみよーっと!(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #14 Harry Clarke

【ハリー・クラークによるエドガー・アラン・ポーの挿絵】

SNAKEPIPE WROTE:

昔からの好みはそうそう変わるものじゃないようだ。
「三つ子の魂百まで」の例えもあるように、恐らくSNAKEPIPEが3歳の頃から好きな物や傾向は変化していないように思う。
陽よりは陰、明よりは暗、メジャーよりはマイナーといった具合である。
「誰からも好かれる人になろう」と努力する人物像よりも「少数でも解ってくれる人がいれば良い」と自分の好きなことを追求するようなタイプに好感を持つことが多い。
100人中100人から好かれる人なんて、逆にウソっぽいよね?(笑)

アートの分野の好みも上述したのとほぼ同じである。
明るく爽やかなものよりも、ダークでちょっと恐怖を感じるような迫力があるアートが好みである。
きっとこのブログを読んで頂いている皆様はとっくにご存知だと思うけれど、鑑賞したいと思う展覧会にも、購入する画集や写真集にもその傾向が顕著だ。
「好きな人は好き」な世界なので、同じ嗜好を持つ友人との会話は大いに弾むけれど、逆の好みの方とは全く話が噛み合わないんだよね。
恐らく今回ご紹介する画家、ハリー・クラークも好みが分かれそうなアーティストだと思う。

ハリー・クラークは1889年アイルランド生まれのステンドグラス作家、挿話画家である。
ステンドグラス作家としての腕前はもちろんだけれど、SNAKEPIPEが注目したいのは画家としての活躍のほうである。
1920年代エドガー・アラン・ポー「ポオ怪奇小説集」にハリー・クラークが挿話画を描き、名声を得ることになる。

おお!憧れの1920年代!
やっぱりこの時代は革新的な出来事が多いんだよねー!
SNAKEPIPEは江戸川乱歩の作品は大ファンだから色々読んでるけど、その元(?)となるエドガー・アラン・ポーって実はほとんど読んだことないんだよね。
多分代表作の「黄金虫」と「黒猫」あたりをものすごく昔に読んだうっすらとした記憶が…。(遠い目)
今更ながら調べてみて、タイトルに「怪奇小説」なんて書かれると興味が湧いてくるよね!
ROCKHURRAHに話すと
「前に怪奇小説集だったら持ってたよ!」
とかる~く答えられてしまった。
持っていたとは、さすがROCKHURRAH!(笑)
今は所持していないようなので、今度探してみるかな。

ハリー・クラークの挿絵、とっても素晴らしいよね!
物語について知らなくても、上の絵を観ても物語が浮かんでくる感じ。
丸尾末広や以前ご紹介したトマー・ハヌカっぽい雰囲気もあるよね。
時代が古いのはハリー・クラークだから、丸尾末広やハヌカよりずっと先輩だったか!(笑)

ステンドグラス職人としての仕事も続けながら描いていたようで、死因はステンドグラス生産に使用される有毒化学物質による結核だったようである。
なんとも残念な享年41歳。若過ぎるよね。

時代は違うけど、先日版画を鑑賞したウィリアム・ブレイクもイギリスの画家だし、
ハリー・クラークよりちょっと前の時代に活躍したオーブリー・ビアズリーもイギリス人。
ビアズリーはアールヌーヴォーの代表的な存在で、やっぱり短命だった画家。
ポーやオスカー・ワイルド作品の挿絵を担当していたことや、結核で命を落としている点もハリー・クラークと同じなんだよね。
左の絵はビアズリーの作品なんだけど、アールヌーヴォーらしく植物の蔦を思わせる曲線的な縁取りが特徴的だよね!
ハリー・クラークはアールヌーヴォーとアールデコの両方から影響を受けていると書いてあるけれど、ビアズリーと比較してみるとその作品はイラストっぽい幻想画だなと感じるけど、どうだろう?
アールヌーヴォーよりも淫靡で毒のあるゴシックな雰囲気があるように感じるからね!(笑)

ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも憧れの時代の一つとして1920年代を挙げてしまう。
シュールレアリズム、バウハウスなどアート界での革新的な運動が起こったのはこの時代だからね。
この時代のパリやドイツはどんなにエキサイティングだったか!と想像するだけでワクワクしちゃうよね。
そしてイギリスでもやっぱりこんなに素敵な画家が活躍していたんだな、ということを知り、改めて1920年代の魅力を感じたSNAKEPIPEである。
きっとまだまだ知らないアーティストたくさんいるんだろうね。
また調べて新たなワクワクを経験したいと思う。

時に忘れられた人々【12】情熱パフォーマンス編2

【情熱ないパフォーマンスの頂点、Trioの「Da Da Da」】

ROCKHURRAH WROTE:

今回の「時に忘れられた人々」は前に一度だけ試しに書いてみた「情熱パフォーマンス編」の第二部にしてみよう。
この時のテーマの概要はこちらの記事でわかっていただけるはず。
目に見える行動だけが情熱とは言えないが、抑えきれない何かの情熱を素直に映像として表すのは見ていて気持ちが良いものだ。

さて、今回はそういう情熱映像をピックアップしてみたんだが、なぜだか最初に出てきたのがドイツ物ばかりという結果になってしまった。だから今回は「情熱パフォーマンスinドイッチェランド編(長い・・・)」という事にしてみよう。

ドイツの音楽と言っても人によって印象は様々だろうが、今回ROCKHURRAHが語るのは80年代にノイエ・ドイッチェ・ヴェレ(要するにドイツのニュー・ウェイブの事)と呼ばれた音楽について。
実はこのシリーズ企画を考えた当初から予定していたのがノイエ・ドイッチェ・ヴェレ特集だが、聴くのも書くのも難しいジャンルだから、ずーーーっと先延ばしにしていたという経緯がある。 一般的にはあまり知られてないジャンルだからこそ、ものすごいマニアも存在しているわけで、そういう人たちが語るウンチクとROCKHURRAHの考えが全然一致してないのも書けなかった一因だ。
要するに小難しくなくノイエ・ドイッチェ・ヴェレを語りたいわけね。だからバンドが何を語りたいか、何を思って音楽やってるかなんて事ぜーんぜん気にしないで書いてみよう。

【跳ねる!】 DAF / Der Mussolini

正式にはDeutsch Amerikanische Freundschaft(独米友好同盟)だが、そんな長いバンド名を毎回語るのもかったるいのでダフと呼ぶ人が多い。

ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの一番初期に大活躍して、世界的に最も知られたドイツのニュー・ウェイブ・バンドと言ってもいいだろう。
1stアルバムは工場の機械の中でバレリーナが踊ってるというインパクト溢れたレコード・ジャケットで、これに惹かれて買った人も多かろう。しかしこのアルバム、曲名クレジットも何もなく、内容的にはヴォーカルが入ってないインストゥルメンタルであり、そもそも曲というよりは音の断片を羅列しただけという、荒削りな素材集みたいなものだった。
ノイズ、アヴァンギャルドといった音楽に全く触れた事がない人が聴いたら「何じゃこりゃ?」な内容なのは確か。逆にディス・ヒートとかそういうのが好きな人にとってはかなりドンピシャな音かも知れない。ギターのフリー・スタイルなぶっ飛び具合はすごい。

DAFと言えば一般的にはシーケンサーなどのエレクトロニクス楽器を駆使した暴力的&直線的なビートという印象だが、それが確立するのは2nd以降の話だ。メンバーの脱退が相次ぎ、最終的にはガビ・デルガド=ロペスといういやらしく濃い顔のヴォーカルとロバート・ゴール(Wikipediaではゲアルと書いてるがしっくりこないなあ)の男二人組となる。
「ファシストっぽい」とか「ゲイっぽい」とかそういう話題にのぼるような顔立ちに衣装だから、誤解されても仕方ないだろうね。「男二人の友情」というようには世間は見てくれないからね。 その二人が作り上げたのが単純明快なビートに乗って、ガビの粘着質なヴォーカルが展開してゆくというスタイル。この時期の代表作が今回取り上げた「デア・ムッソリーニ」だろう。この手の音楽の元祖的存在なのは確かだが、エレクトロニクスによる単調な主旋律とビートがずっと続くだけで、よくぞまあヒットしたものだと思える。

さて、その彼らのライブ風景だが、まさに右に左に飛び跳ねまくって歌い踊るガビのアクション全開の出来。4分近い曲でここまで動きまわるとは恐ろしい運動量だな。アグレッシブなハードコア・パンクのバンドでもこんなには動かんでしょう。 ライブで何曲やるのかはわからないが、一回のステージで精根尽き果てるのは間違いない。

【回る!】 Die Krupps / Machineries Of Joy

上記のDAFと同じく、ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの初期から活動していたのがデイ・クルップスだ。
元々Maleというパンク・バンド出身のユーゲン・エングラーが中心となったもので、商業的にも割と成功したように思える。 初期の彼らの特徴はいわゆるメタル・パーカッションを多用した音作りにあった。
ユーゲン・エングラーが独自に作り上げたシュタロフォンと呼ばれる楽器は工場で拾ってきたような鉄板(と言うより延べ棒のようなもの)を鉄琴のような形にして、それを鉄の棒で叩くというシンプル極まりないものだった。それが普通の市販されてる(市販されてるのか?)鉄琴とどこがどう違うのかは鉄琴学に詳しくないROCKHURRAHごときにわかるはずもないが、彼らのシングル・ジャケットに誇らしげに写真が載っている。自慢だったのは間違いない。

初めて動いているクルップスを見たのは福岡天神の親不孝通りにあった80’s Factoryというライブハウスだった。
いや、そこにクルップスが来日したとかそういう話じゃなくて、当時の外国のニュー・ウェイブ状況を伝えるという啓蒙的なフィルム・イベントで、ワイアーのコリン・ニューマンやジョイ・ディヴィジョン、デア・プランなどの映像と共に見た記憶がある。まだプロモーション・ビデオとかが気軽に見れないような時代で、音楽大好きだったROCKHURRAH少年は深く感動したものだった。現地に行って現物を見た人以外で、こんなマイナーなバンドのライブ姿を見れたのはかなり早かったのではなかろうか?

おっと、話が逸れてしまったが、ここで見たクルップスは確かにランニング姿でこのシュタロフォンを叩きまくり歌っていた。
エレクトロニクスを駆使したデジタルな音楽っぽいのに、やってる事は体育会系でアナログ極まりない。この時代のそういう未完成な音楽は好きだね。
しかも鉄板を鉄の棒で叩きまくるわけだから肩や肘への負担が半端じゃない。これ以上続けたら肩をこわしてしまうぞよ、などと医者に止められたかどうかは知らないが、ユーゲン・エングラーにはそういう「巨人の星」みたいなスポ根逸話まで残っているようだ。手のスジが「ピキッ!」といかなかったからその後もバンドを続けていられるんだろうけどね。

このバンドのもう一つの特徴というか何というか・・・彼らは自分たちの代表作「Wahre Arbeit Wahrer Lohn」をこよなく愛し続けて30年余り。この曲のヴァージョン違いミックス違いが常識で考えられないくらい存在しているのがすごい。バカのひとつ覚えと言えなくもないが、そこまでひとつの曲にこだわり続けるのが情熱パフォーマンスの真骨頂だね(笑)。

さて、紹介するのも元歌は「Wahre Arbeit Wahrer Lohn」で、これをイギリスの同系列バンド、ニッツァー・エブとコラボレートしてやっている。最初に歌ってる花形満みたいな髪型の人はニッツァー・エブの人で、その後にホイッスル吹きながら現れるのがこのバンドの顔、ユーゲン・エングラーその人だ。
ROCKHURRAHが見た80年代初期のクルップスじゃないから得意のハンマービートも控え目なんだが、動いてる映像がヘヴィメタル・バンドになってしまった後(後にそうなってしまう)くらいしか残ってないので仕方がない。
【回る!】の意味はいちいち解説しなくても映像見れば一目瞭然でしょう。

【じゃれる!】 Palais Schaumburg / Wir Bauen Eine Neue Stadt

後にソロとして活躍するホルガー・ヒラーを中心としたパレ・シャンブルグ(当時の「ロック・マガジン」的に読めばパライス・シャウンブルグ)も初期ノイエ・ドイッチェ・ヴェレの中で重要なバンドだった。
彼らの特徴は他のドイツのバンドに比べてエレクトロニクスの使用率がかなり低いという事が挙げられる。通常ロックで使われる楽器+トランペットというオーソドックスな編成はメタル・パーカッションやシンセ使って当たり前のドイツ音楽界では逆に少数派なのかも。
ただし、その編成で普通のロックをやるかと言うと大違いで、実験性と革新性に溢れていてROCKHURRAHも大好きだった。特にドイツ語による字余りすぎラップといった風情の「Madonna」やファニーなデビュー曲「Telefon」は今でも愛聴している。

そんな彼らの代表作がこの曲。決してポップな曲でもないのにプロモは80年代風軟弱ダンスが炸裂するというアンバランスなもの。音を消して映像だけだとすごい軽薄そうに見えてしまうが、実は割と重厚というギャップが素晴らしい。

ホルガー・ヒラーはこの後バンドを脱退してしまいソロの道を歩むが、なぜか「うる星やつら」の主題歌で有名な小林泉美(千葉県船橋市出身)と結婚して離婚したり、ちょこちょこっと日本でも話題に上るような活動をしていたな。

【壊す!】 Einstürzende Neubauten

一般的には「読めん!」って人も多いだろうが、アインシュタルツェンデ・ノイバウテン(崩壊する新建築という意味だそうな)はドイツが生んだノイズ/ジャンク系の真打ちだと言える。パッと見には長身の美形男、ブリクサ・バーゲルトを中心にして、元アプヴェルツのマーク・チャン、F.M.アインハルトなどのクセモノが揃った超藝術集団だ。

ブリクサはその人間離れしたマスクなもんで、当時の音楽雑誌の表紙とかにもよくなっていた。
それを見た面食い女子達がファンになって買ったりしていたものの、正直言ってその何%がノイバウテンの音楽を理解して好きになっていただろうか? インダストリアルとかアヴァンギャルドとか言うはたやすいけど、これほどとっつきにくい音楽も他にないかも。
この映像を見ればわかる通り、電気ドリルやバーナー、数々の廃材などを持ち込んでそれを打ち鳴らす、穴を掘るといった現代アート風パフォーマンスのつもりだろうが、限りなく工事現場作業に近いシロモノ。しかも専門家が見たら手つきがなっとらん、と叱られる事必至の三流ぶりだよ。そしてその結果生まれた音楽が前衛的でとっつきにくいのは当たり前だとも思える。

個人的な事を言うなら今、家の前でガス管取り替えとかの工事やってるが、そこから生まれる騒音と大差ない世界だもんな。 今回は「壊す」という映像が欲しかったからこの曲にしたが、本当は代表作である「Yu-Gung」とかは随分わかりやすくカッコ良い名曲だと思う。石井聰互が監督した「半分人間」などもインダストリアル好きにはたまらないだろうね。

今回は情熱パフォーマンスとは言ってもあまり面白くもないものばかりになってしまったな。まあドイツのニュー・ウェイブ自体が英米のとはちょっとニュアンスが違っていて、面白さやカッコ良さのツボも異質だから、この程度で許してくんなまし。

ではビス・ネヒステ・ヴォッヘ!