時に忘れられた人々【11】あの人の職務経歴編 A

【あんなに輝いてたミュージシャンのビフォー→アフター。見たくないなあ】

ROCKHURRAH WROTE:

今が旬じゃなくて過去に忘れ去られてしまった人々にだけ焦点を当てた「時に忘れられた人々」シリーズもすでに10回を超えてしまった。当初は色々なジャンルで取り上げてゆきたかった企画なんだが、音楽以外の分野ではわずかに作家の国枝史郎とヴィンテージ漫画特集をやっただけ。随分と偏ってしまったなあ。小説とかについては書ける事も多いんだけど、ブログを書くためにまた読みなおして・・・、というほどのヒマが今はないから、どうしても疎かになってしまう。
やっぱり記憶だけで書ける音楽の事が一番書きやすいし、ROCKHURRAHは何だかんだ言っても音楽バカ(過去音楽限定)なのかも知れないね。

というわけで今回選んでみたのは「あのミュージシャンが前はこんな事やってました」という前歴特集。
ただし「ダムドのデイブ・ヴァニアンが昔は墓掘り人夫だったらしい」とかそういう意味の前歴ではなく、単に前はこういうバンドをやってた、という程度の記事なのでけっこう苦しいものがあるのは書く前からわかりきってるが、それでも何とかまとめてしまえるROCKHURRAHの筆力にも一票もらいたいものだ。

Slik – Forever And Ever

この一回前「情熱パフォーマンス編」でもトップバッターだったミッジ・ユーロのさらに昔の姿。そこまで大好きなミュージシャンというわけでもないのに二回連続で出てくるのは、この人のスタイルの変化が急激でネタにしやすいからだろうか。

スリックは80年代にウルトラヴォックスで大スターとなるダンディ男、ミッジ・ユーロが70年代半ばにやっていたバンドだ。このユーロにケニー・ヒスロップ、ビリー・マッキサック、ラッセル・ウェッブを加えた4人がスリックのメンバーなんだが、ユーロ以外の三人はスリックの後のバンドPVC2を経た後、スコットランドでホット・ヴァルブスをやっていたウィリー・ガードナーと合体してゾーンズとなる。ちなみにウィリー・ガードナーは70年代に人気のあったアレックス・ハーヴェイの従兄弟として知られている。もうひとつちなみに、ホット・ヴァルブスというのはビー・バップ・デラックスのシングル・タイトルからつけたバンド名で、ゾーンズもビーバップ・デラックスそっくりの部分もあった。よほどのマニアじゃない限りは知らなくてもぜーんぜん大丈夫なバンドの解説にこれだけの文章を書いてしまった・・・。
もしかして親切を通り越して鬱陶しい男なのか?ROCKHURRAH。

ミッジ・ユーロ自身はこのスリックの後に初のパンク・バンド経験となるPVC2(メンバーはスリックと同一)を経て、いよいよリッチ・キッズのフロントマンとなるのは前回のブログに書いた通り。PVC2はホット・ヴァルブスと同じスコットランドのZOOMレーベルよりシングルを出していたな。マイナーだったが荒々しく理想的なパンクをやっていて、後のリッチ・キッズでも演る「Put You In The Picture」などのパンク名曲を残している。こっちのヴァージョンの方がリッチ・キッズ・ヴァージョンよりもずっと重くてカッコイイぞ。

さて、後の事ばかり書いてしまったが、このスリックは演奏がちゃんとうまくて作曲能力もあるベイ・シティ・ローラーズの対抗馬、というような位置づけでポップなロックをやっていた。センテンス長いな。まあアイドル路線とまではいかないが、そういうつもりでレコード会社としては売りたかったバンドなのだろう。76年にロンドン・パンクが始まる直前の時代の話。街中タータン・チェック、ベイ・シティ・ローラーズ旋風吹き荒れた70年代の日本では全く知られる事すらなかったバンドだ。
メンバー全員なぜか野球の格好だもんな。なぜスコットランドで野球なのか?日本でもベースボール・シャツとか着てる人はいるにはいたが、スリックとはたぶん何も関係ない単なる野球好きなのは間違いない。
このスリックのメンバーだった人たちにとってはそういうヴィジュアル面も触れられたくない過去なんだろうなあ。

で、そういう恥ずかしい経歴を持ったミッジ・ユーロ、野球のあとは単なる白無地Tシャツでリッチ・キッズ(前回のブログ参照。本当はもっとちゃんとした服装してる時もあった)、そして80年代になると突然オシャレに目覚めたのかスティーブ・ストレンジ率いる洒落者集団ヴィサージに加入、さらにジョン・フォックスの抜けた後のウルトラヴォックスに加入。
この二つは80年代初頭にロンドンで大人気だったニュー・ロマンティックスというムーブメントの中心となる。知らない人のために一応書いておくが男が女みたいに着飾ってリッチでゴージャスな雰囲気の音楽をやってたのがニュー・ロマンティックスだ。70年代のグラム・ロックの発展型みたいなもんだが、あれより遥かに夜会系。

関係ないがROCKHURRAHはニュー・ロマンティックスの分野で大成功したアダム&ジ・アンツのファンだった。彼らの推進した海賊ルックに触発されて、小倉のど田舎で勘違い甚だしい海賊ファッションもどき(全然そうは見えなかった)に身を包み、スクーターをぶっ飛ばしていたもんだ。若気の至りでちょっと中央分離帯に突っ込んで、植え込みの木の枝が腹に刺さったりしたなあ。
ああ恥ずべき過去、ミッジ・ユーロとお互い様だね(笑)。

The Nosebleeds – Ain’t Bin To No Music School

これまた日本ではほとんど紹介されなかったマンチェスター発の70年代パンク・バンドでノーズブリーズ。日本語に訳せば鼻血ーズというようなもんか。
マンチェスターと言えばかなり大物のパンク・バンドを輩出した事で知られる音楽先進都市だ。バズコックス、マガジン、スローター&ザ・ドッグス、ドローンズ、ワルシャワ(後のジョイ・ディヴィジョン)などなど、70年代パンクのファンとっては聖地みたいなもんだ。そこでひっそりとデビューしたのがこのノーズブリーズだ。たぶんシングルしか出してなくて解散したはずだが、マンチェスター系のバンドを集めたオムニバスでちょっと知られた程度。魚の位で言うならうぐいクラス。

このバンドは最初はエド・バンガーというシンガーが始めたものだが、80年代に活躍したドゥルッティ・コラムのヴィニ・ライリーがメンバーだった事で知られている。
ドゥルッティ・コラムと言えばマンチェスター発のレコード会社、ファクトリー・レーベルにおいて、ジョイ・ディヴィジョンと並ぶ看板だったバンドだ。
初期ではごく簡単なリズムのみ、そこにヴィニ・ライリーの透明感溢れるギターが展開するといった、簡素極まりないネオ・アコースティックな音楽が新鮮でファンも多かった。通常のロック形態のバンドというよりはヴィニのギター・プレイによる音のスケッチ、それを記録した作品という印象だった。
アンビエントとかイージー・リスニングとかそういう世界は全くわからんし、野卑でゴテゴテしたインチキ音楽大好きのROCKHURRAHだが、こじゃれたカフェのBGMとかには最適な音楽だったのは確かで、そういう音楽を愛するファンに支えられて、この手のインスト主体のバンドとしてはかなり売れたんじゃなかろうか。←またしてもセンテンス長すぎだな。来年の目標は簡潔な文章か?
音は地味だがこのヴィニ・ライリー、まさにこの時代の少女漫画に出てくるような繊細な顔立ちの美青年で、そのルックスからも女性ファンが多かったものだ。何と今でも美中年のようで、羨ましい限りですなあ。

前置きが非常に長くて何が書きたかったか忘れたほどだが、そんなか細い音楽で有名なヴィニ君が、その前はこういうパンク・バンドにいたというのが驚き。
しかしドゥルッティ・コラムを知る人が聴けば一目瞭然「Ain’t Bin To No Music School」の途中のギターはまさしくヴィニ・ライリー風で、その辺のミスマッチ感覚がありそうでない個性となっている。

このノーズブリーズの大変に珍しい、動いてる動画があったのでついでに載せておこう。ん?ヘンな言い回しだったがYouTubeには動いてない動画も結構あるからね。

ノーズブリーズはもう一人、ニュー・ウェイブ界の大物を輩出したバンドとして知られている。前述のエド・バンガーが抜けた後に二代目ヴォーカルとなったのが後のスミスで有名人となるモリッシーだったらしい。

パンクの時代はまだニューヨーク・ドールズのファン・クラブ英国会長とかそういう身分だったモリッシーがどういう経緯でノーズブリーズに加入したのかはよく知らないし、第二期ノーズブリーズは残念ながら持ってなくて曲も知らないんだが、あの声やひねくれた歌詞でパンクをやっていたのだろうか?それはまたそれで異色には違いないかな。

ヴィニ・ライリーもモリッシーもROCKHURRAHの好みとは違うが、やはり第一人者となるには独創性が必要。両者とも好みではないがそのプラスアルファの個性は充分持っていたと思えるので、そういう点では尊敬に値する人物だと言える。ただ、それが好きに繋がらないのが人の心と言うものなのかね?
またしても「好きじゃないなら書くなよ」という声が聞こえてきそうだな。ファンにも殴られそう。それでは退散しますかな。

今回は何となく生真面目な文章になってしまって、面白くはなかったな。
その割にはたった二つのバンドだけで結構長くなってしまった。いつもはもっとたくさん紹介するのに、個人的に週末が忙しかったので、こんなもんで許して。
同じネタでもう少しは書けそうだからまた次も書きます。

好き好きアーツ!#13 DAVID LYNCH—Crazy Clown Time

【リンチ作品のサントラ等を並べて撮影。鳥飼先生の時と同じパターン!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

先週のブログ「SNAKEPIPE MUSEUM #13 Lauren E. Simonutti」の終わりに書いた、デヴィッド・リンチのフルアルバムについての記事。
まさか、と思っていたのに本当に出てたよ。(笑)
リンチアンなのに入手したのが少し遅いところが情けないけれど、今回はそのアルバムについての感想をまとめてみたいと思う。

処女作「イレイザーヘッド」から音響や作詞などを手がけ、「ブルーベルベット」では主人公であるジェフリー・ボーモントに草むらで耳を拾わせる。
リンチ=耳の監督という代名詞は昔から聞いていたので、今更音楽とリンチが密接に結びついていることに驚きはしないけれど。
ただ自らが歌い作詞や演奏まで手がけたフルアルバムのリリース、を知った時には正直驚いてしまった。
「ここまでやるか?」と思ったのである。
さすが、リンチ。なにをしでかすか判らない謎の人物だけあるね。(笑)
1曲ずつ簡単に感想を書いてみようかな。

1. Pinky’s Dream

「ピンキー」から想起するのは、もちろんピンキーとキラーズ、そしてファントムギフトピンキー青木だよね!(笑)
この歌の中のピンキーはどうやらトラックを運転しているところらしい。
ピンキーが紫のたばこの煙をくゆらせながら、オレンジ色のライトを照らしながら走っている。
これはどうやら夜のドライブみたい。
「ロスト・ハイウェイ」も連想できるし、「ブルーベルベット」の中での「ジョイライド」も思い出すね!
このオープニングがビートの効いたパンチのある曲(ぷっ)なので、これからどうなるのかワクワクしちゃう。

2. Good Day Today

すでに先行シングルとして発売されていた曲なので、聴き慣れた心地良さ。
好き好きアーツ!#11 デヴィッド・リンチ—PV—」でも特集して、その中でも
「なんだか『スターシップ・トゥルーパーズ』の『今日は死に日和』のようなタイトルだよね。(笑)」
と書いているんだけど、「Good Day Today」と「Good Day To Die」って本当に良く似ている。
クラブ系のビートに乗って気持ち良さそうに歌うリンチの頭の中では「TODAY」と「TO DIE」を交錯させていたかもしれないね。
歌詞を読んでも「○○にはうんざり」ということが散々書いてあり、「天使を送ってくれ」ともあるので余計にそう感じてしまう。
リズミカルでダンスも踊れそうなノリの良い曲なので、竹中直人の「笑顏で怒る人」みたいな不気味さがあるね。(笑)

3. So Glad

「お前がいなくなってくれて本当に嬉しい」としわがれた、全然嬉しそうじゃない声で歌うリンチ。(笑)
この曲を聴いているとリンチが描いたグレーと黒の、ダークな雰囲気の油絵を思い出す。
心の奥底を具象化したような、心象絵画。
リンチは50年代カルチャー部分を取り除くと、まるでアメリカ人とは思えないようなヨーロッパ的な要素を持っているけれど、この曲はまさにリンチの核を表現しているような雰囲気だと思う。
あれ、なんだか真面目に評論してるよ、SNAKEPIPEごときが。(笑)

4. Noah’s Ark

この曲、「ロスト・ハイウェイ」のサントラに入ってるような感じ。
リンチがささやき声でつぶやくスタイルのボーカルだから、「ミャウミャウ」とアリスが電話でささやいていたのを思い出したのかもしれない。
室内に突如現れる真っ暗な闇。
リンチの映画の中ではお馴染みの光景だけど、この曲はその「リンチ・ブラック」をより効果的に見せるために丁度良いBGMになりそう、とほくそ笑むSNAKEPIPE。
この曲を聴いていると、勝手にリンチ風の映像が脳内に流れるから不思議だ。
やっぱり音楽の力ってすごいなあ。

5. Football Game

「君が他の男といるのを目撃してしまった」という実体験なのか、夢で見たのか、はたまた創作なのか不明な歌詞。
「恋多き映画監督」として名高い(?)リンチなので、実体験だったとしてもおかしくはないけどね。(笑)
と、ここで川勝正幸氏による解説中にあるリンチ・インタビューを読むと
「このアルバムの中の何曲かには別人格が登場している。
その男はアメリカ南部の山の中に住む貧しい男。
ブーツにジーンズ、汚れたTシャツ。
ピックアップトラックを運転し、たばこで黄ばんだ指先、密造酒を飲む。
街の女2人に好意を寄せているが、彼女達は男のことを好きではない」
という設定とのこと。
なるほど。
見かけは「ツインピークス」のボブ、みたいな感じね。(笑)
そういう「へべれけ」状態の男を想定して、できている曲もあるってことだね。
きっとこの曲はその「南部男」を描いているんだろうね?
意外とリンチの実体験だったりして?(笑)

6. I Know

これも先行シングルとして発売されていたのですでに馴染みのある曲になっている。
何か自分に原因があって、そのせいで彼女が出て行ってしまう。
悪いのは自分だから、彼女を引き止めることができない。
本当は別れたくないけど、自分からは言い出せない辛い思い。
うーん、ドラマですなあ!
詩の中の「did that thing」が謎だけど、何やらかしたんだろうね?

7. Strange and Unproductive Thinking

「奇妙で不毛な思考」と題された、リンチの声がヴォコーダーで電子音に変化し、詩を朗読している曲。
リンチにぴったりの単語、ストレンジ!
「It’s a strange world, isn’t it?」というセリフがあった「ブルーベルベット」をまっさきに思い出すね。(笑)
朗読されている詩の内容は全く意味不明で、そこがまたリンチらしい。
本当にロボットが勝手に様々な単語を組み合わせて喋ってるような感じがするね。

8. The Night Bell With Lightning

インストゥルメンタルの曲。
いかにもリンチのサントラに入っていそうな感じの曲なんだよね。
作曲はアンジェロ・バダラメンティじゃないの?って思ってしまう。(笑)
かなり雰囲気があるので、これも是非リンチ風脳内映像を創作して楽しみたい一曲!

9. Stone’s Gone Up

この曲もリンチが設定した「南部男」をモデルにしているように思われる。
なんともやるせない感情を歌っているんだよね。
「石が迫ってきた」という表現が良く判らないんだけど、もしかしたら事故とか?
「白い光」というのもあるから事故死かも。
うーん、失恋の痛手を負って、暴走したあげく事故なのかなあ。
いや、もしかしたら彼女に手をかけた後に覚悟の上の事故、かもしれないな。
などと想像するSNAKEPIPE。
リンチ風にするなら、もっと違うストーリーにしても良いかもしれないね!(笑)

10. Crazy Clown Time

アルバムタイトルと同じ曲のタイトル。
ポーリー、スージー、ダニー、サリー、バディ、ピーティ、ティミーと男女混合7名がハチャメチャパーティをやっている様子である。
ゴダールの映画「気狂いピエロ」のラストは頭にダイナマイトだったけれど、この曲の中でもピーティが髪の毛を燃やしている。
「とても楽しかった」と歌うリンチだけど、楽しいかい?(笑)
曲調は不安を煽るような不思議な雰囲気で、タイトルとも詩ともよく合っていてリンチらしさ満点!
リンチのハイトーンヴォイスも聴けて、ファンには嬉しいね。(笑)

11. These Are My Friends

この曲はまるで「ツインピークス」の「ナイチンゲール」だよね?
ジュリー・クルーズが歌ってれば、全く同じなんじゃないかなあ。
サリーとピートとベティの3人がトラックに乗ってピクニックに行くのかな。
あらら、まるでこれはローラとドナとジェームスが3人でピクニックに行ったのと同じ設定じゃない?(笑)
うーん、なにもかもが「ツインピークス」を連想してしまうね。
メロディラインも50年代風だしね!

12. Speed Roadster

これもまた「南部男」を想定した曲なのかもしれないね。
彼女に去られ、ちょっと女々しく、未練がましく彼女のことを考える男。
やっぱりまだ忘れられない、とストーカーまがいの行為を想像する。
トラックからオープンタイプのスポーツカーに買い替え、彼女をもう一度振り向かせようとも考える。
最後の部分はちょっと怖いねえ。
だってリンチだからねえ。(笑)

13. Movin’ On

まるで80年代ニューウェイブのような雰囲気の曲。
ちょっと懐かしい感じがするんだよね。(笑)
詩は暗くて悲しい感じ。
人生って何、と考えさせられる。(うそ)

14. She Rise Up

おお、これもまたロボット声に変化させているねえ。
まるで「ロスト・ハイウェイ」の「This Magic Moment」が流れた瞬間を表現しているような詩の世界!
電撃的な出会いから付き合いが始まるけれど、映画と同じようにやっぱり彼女は去って行くのね。
ロボット声だから泣き言に聞こえないけど、なんでこうも失恋の歌詞が多いのかしら?
やっぱりこれも「南部男」が設定なのかも。(笑)

15. I Have a Radio [Bonus Track for Japan]

ささやき声で「I Have a Radio」とだけつぶやくリンチ。
バックの音はちょっとヒカシューっぽくてSNAKEPIPEには馴染み深い音だな。
この曲だけが「日本盤」に収録されているボーナストラックということになっているんだけど、とても良い曲なので通常版にも入っていれば良かったのにと思う。
豚の鳴き声みたいな「キーキー」音が入っているところが怖い。
この曲だけどうやらPVがあるようなんだけど、恐らくリンチ自身の手によるビデオのように見受けられる。
左右に手を振って動きを見せる2人。
バックの墨絵調がリンチらしいよね!

ROCKHURRAHはこのアルバムを聴いて、声質がなんとなくスロッビング・グリッスルのジェネシス・P・オリッジやスーサイドといった80年代初期の雰囲気みたい、だとのこと。

執拗につぶやく呪術的なスタイルがリンチとも共通しているらしい。
スロッビング・グリッスルの曲をyou tubeで観せてもらったけど、確かに雰囲気が似てるね!
どっちも変態系だしね!(笑)

リンチ的世界に慣れ親しんでいる人にとっては「リンチそのもの」を体感できる、素晴らしいアルバムだね!
そうか、媒体を音楽に変えただけの話。
これは「リンチの新作」なんだな、と改めて気付く。
映画、絵画、写真、そしてついに音楽の世界にまで進出した「稀代のアーティスト」、リンチ!
やっぱりSNAKEPIPEには絶対的な尊敬に値する人物だなあ。
いやはや、恐れ入りました!(笑)
ロバート・ロドリゲス監督が偽の予告編から「マチェーテ」を作ったように、是非ともリンチにも「サントラから映画」の企画をお願いしたいと本気で思う!
SNAKEPIPEはもちろんのこと、きっと待ち望んでるリンチファン、多いはずだからね!

SNAKEPIPE MUSEUM #13 Lauren E. Simonutti

【ローレンの作品『The Devil’s Alphabet』より” T “(左)と” G “(右)】

SNAKEPIPE WROTE:

一番のお気に入りだと思っていた畠山直哉氏の写真展にかなりガッカリしてしまったことも理由だろうが、なかなか最近はグッとくる写真にお目にかかることが少ないように思う。
「廃墟写真が好き!」と公言していたSNAKEPIPEだけれど、その手の写真もやや食傷気味。
これはもちろん3月の震災の影響もあるけれど、大袈裟な言い方をすると「廃墟写真についての意義」を問い直したいような気分になっているようだ。
先日ROCKHURRAHと大いに語り合い、廃墟写真の定義を確認したけれど、なかなかその定義にしっくり来る写真を鑑賞することは難しいだろうな。
ましてやSNAKEPIPE自身が撮影することはもっと難しいだろうね。(笑)

畠山直哉展に行った時、地下では「日本写真作家協会会員展」の入賞作品が展示されていた。
SNAKEPIPEが勉強のために毎月「アサヒカメラ」などの雑誌を購入していた時にも、後のほうのページに同じような公募写真が毎回載ってたことを思い出す。
どうして写真の公募展の内容というのは何年経っても変化がないんだろう?
別に批判や批評を書きたいわけじゃないんだよね。
議論をするつもりもサラサラないんだけど、どうも変わり映えのしない写真が多くて面白くないな、というのが正直な感想。
写真の既視感、というのはある程度は宿命と言えるだろうけどね!

写真世界の進歩や未来、新しいことって一体何だろう?
なんてことをツラツラ考えながら見つけたのが上の写真。
観た瞬間「あっ!好き!」と思った。
そうか、この方法があったのか!ヤラレタな、とも思った。(笑)
「Devil’s Alphabet」と題された、アルファベット順にAからZまでの26枚で構成された全て縦位置のシリーズは、恐らく殆どが自宅内で撮影されたようだ。
そして登場している人物は、これも推測だけど作家本人が自作自演しているみたい。
「お友達」と称される人形達は出演してるけどね。(笑)
「何かありそう」な雰囲気たっぷりの演出も見事。
一人でひっそり、誰にも邪魔されることなく「お友達」と一緒にコツコツ撮影をする写真家って…?

Lauren E. Simonuttiは1968年生まれのアメリカの写真家。
フィラデルフィアの美術大学で写真を学ぶ。
4×5、5×7、8×10などの大型カメラで撮影を行なっているようだ。
メトロポリタン美術館やホイットニー美術館にも作品が所蔵されているみたい。
興味があるのはダダ全般だったり、好きなアーティストにハンス・ベルメールの名前があるのは「いかにも」な感じで納得してしまうね。(笑)
そして現在お住まいなのがボルチモアみたいなんだけど。
ボルチモアといえば、すぐに思い浮かぶのがジョン・ウォーターズ
お住まいの方には大変申し訳ないんだけど、SNAKEPIPEにはどうしてもウォーターズの印象が強い土地のため「ヘンな人が多い地域」として認識してるんだよね。(笑)
そしてきっとローレンも「ヘン!」と呼ばれることに喜びを感じるタイプとみた!

『Madness strips things down to their core.  It takes everything and in exchange offers only more madness, and the occasional ability to see things that are not there.』
「8 rooms, 7 mirrors, 6 clocks, 2 minds & 199 panes of glass」という作品について語るローレンの言葉である。
やっぱり「狂気」なんだね。(笑)
彼女がやってるブログのタイトルも「The Madness is the Method」というもの。
ここでもまた「Madness」だよ~!
ROCKHURRAHが「Gardening By Moonlightというバンドにmethods in the madnessという曲があるよ」と教えてくれた。
80年代のバンドのようなので、ローレンの時代にもピタリとあてはまりそうね。
もしかしてこのタイトルをもじってるのかな?
どうやらネット上で作品を発表するのが得意(?)なようで、Flickrなどでも大量の作品を鑑賞することができる。
とっても太っ腹だね、ローレン!(笑)
作品は販売もされていて、Catherine Edelman Galleryで購入可能。
1400ドルから2200ドルだって。
およそ11万円から17万円ね。
高いのかお買い得なのかは不明だよ!

●REC」に出てきた最上階の部屋や「屋敷女」の屋敷内、もしくは「ホステル」に出てきた工場(?)内で撮影したような、オカルト的でホラー風ダークなイメージのオンパレードで、SNAKEPIPEはとても好きだな!
これからも応援していきたいアーティストに出会えて嬉しい!
好きなアーティストにデヴィッド・リンチの名前が入っていなかったけれど、きっとローレンも好きなはず。(笑)

と、ここでリンチが出てきたから、ちょっとリンチ・ネタ!
なんとリンチ、11月7日にフルアルバム「Crazy Clown Time」をリリースしていたよ!
ローレンはマッドネスでリンチはクレイジーときたか!
先日の2曲だけ入ってるCDで終わりじゃなかったんだね。(笑)

これは早速購入しなければ!
リンチからはまだまだ目が離せないね。(笑)

ROCKHURRAH紋章学 レーベル・マーク編

【紋章学にちなんで昔の西独逸、地方自治体の構成図。今見てもカッコイイね】

ROCKHURRAH WROTE:

タイトルは大げさだが、やろうとしている事は単純明快。世の中に溢れているロゴマークとかについて語ってみようという誰でも考えつきそうな企画だ。
ただ、ROCKHURRAHがやるからにはやっぱりウチらしく、という切り口で出来たらいいなと思っている。

第一回はやはりROCKHURRAHにとって馴染みの深い、レコード・レーベルのロゴマークについてだ。何度かこのブログを読んで下さっている方には言うまでもない事だが、今回も70〜80年代のパンク、ニュー・ウェイブ限定で話を進めてゆこう。さらに今回もよりによって選んではみたものの、到底盛り上がる話も書けそうにない。最初から企画倒れになりそうな予感満載。まともに書いてたら書いてる本人が苦行となりそうだし、自動筆記の境地でやってみるか。

KOROVA RECORDS
見ればわかる通り、単なる牛だ。これは見る人が見れば一目瞭然、「時計じかけのオレンジ」に登場するコロヴァ・ミルク・バーから連想したレーベル名なのは間違いない。あらゆる意味で革新的だった映画だが、登場する暴力的な若者はナッドサットという独自のスラング(ロシア語由来とのこと)で会話をする。その影響をストレートに表現したのがコロヴァ・レコードのマークというわけだ。ご丁寧にも「時計じかけのオレンジ」と同じような字体にしているから、より一層わかりやすいね。
1980年にデビュー・アルバムをリリースしたリヴァプール発の大型新人、エコー&ザ・バニーメンのヒットにより一躍知られたレーベルなんだが、他にもぽっちゃり型ネオ・サイケの雄、ザ・サウンドやデビュー・シングルのみリリースしたテンポール・テューダー、ケバ顔&水玉で有名な二人女子、ストロベリー・スイッチブレイドなども在籍していたっけか?
レコード盤のレーベル部分もピンクと黄緑というピストルズ風カラフルな色合いでいかにも当時のニュー・ウェイブ真っ盛りの派手さ、そこが良かったな。
何と、デザインについてはほとんど語ってなかったな。というか、ただの牛です。

COCTEAU RECORDS
フランスの大型詩人(巨人という意味ではなくてマルチな活躍をしたアーティストという意味でROCKHURRAHがテキトウに命名)、ジャン・コクトーへの傾倒をストレートに表現したのがコクトー・レコード、何て当たり前の説明だろう。この人の描く漫画、落書きのような簡素なドローイング、そしてサインもそれだけでいっぱしのデザインになってるところがすごい。いかにもサラサラっと描いてる感じだし、それが本業でもないのに、さすが多才。
さて、このコクトー・レーベルを設立したのは70年代にビー・バップ・デラックスを率いていたビル・ネルソンだ。そこではギタリスト兼シンガーだったわけだが、後のバンド、レッド・ノイズやソロとなってからはギター、ベース、ドラムにシンセサイザーなどの主要楽器をほとんど自分一人で担当している場合もあった。その辺のマルチな才能もコクトーに相通ずるところなんだろう。とにかく自分の目標で憧れを直截的に表したのがこのレーベルというわけだ。
そこまでの心意気は立派だが、コクトー・レーベルにはビル・ネルソン本人以外にはこれといって目立つアーティストがいなく、彼の秘蔵っ子と言えるようなバンドもいない寂しい状態だったのは確か。唯一、80年代にちょびっとだけヒットしたシーガル・カット(髪の毛の両サイドがかもめの羽根のように開いてる)の変なヤツ、ア・フロック・オブ・シーガルズがこのレーベル出身という程度か。デビュー曲のみでヒットした「I Ran」は確かメジャー移籍後だったから「あれ(シーガルズ)に目をかけてやったのはワシじゃよ」などとは言えない状態。他にはスキッズ解散後のリチャード・ジョブソンが詩の朗読をしたものやビル・ネルソンの弟イアン・ネルソンがやっていたフィアット・ルクスなどなど、何だか家族・友人といった内輪の世界でやっていた私家レーベルという印象がある。
あっ、またしてもデザインについて何も語ってなかった。というかビル・ネルソン要素は全くなくてただのコクトーです。

KABUKI RECORDS
歌舞伎もカブキ・ロックスも特に興味はないが、外国人が日本の文化について目をつけて紹介したようなものを見るとつい見入ってしまう。その辺の感覚を深く掘り下げて語るほどのヒマはないから考察はしないが、単なる外国かぶれなのかね?
屏風で同じようなものがもしあったとしても特に何とも思わないけど、それがスカジャンの柄になったらカッコイイと思う、そういうのと一緒か。
まあそれは特に関係ないが日本の文化、歌舞伎をレーベル名にしたのがこれだ。単にKABUKIと下に書いてあるだけで何か洋風、カッコイイと思ってしまうROCKHURRAHは単純すぎる気もする。絵を見てもよくわからないがおそらく歌舞伎の一場面なんだろう。
このKABUKIレーベル、たまたま持っていたKissed Airというアイルランドのバンドのレーベルらしい。ちょっとファンクな要素があるけど全体としてはダークなトーンで地味なバンドという印象だ。ギャング・オブ・フォーとかグラクソ・ベイビーズとかその辺を小型化したような音楽に感じる。他にはマイクロディズニーとかオペレーティング・シアターなどもここの出身なんだが残念なことに名前程度しか知らない。だったら書くなよー、といういつものROCKHURRAHのパターンになってしまうが、好きじゃないものについてでもこんなに長文書けてしまうのも何かの才能、まあ良いではないか。
デザインは特にこのレーベル特有のものではなく、ただの歌舞伎です。

MERCIFUL RELEASE
最後にやっと紋章っぽくなってきたな。んがしかし、このマークについて何か書けって言われても「よくわからん」としか言いようがないよ。トホホだよ。
かつてプラモデル好きでよく作っていたROCKHURRAH(少年時代)だが、その当時は人体模型のようなプラモが確かあったように記憶する。しかし戦車や戦闘機、サンダーバードやマイティジャックの秘密基地とかそういうものにばかり興味あったので、人体模型のような世界には走らなかった。そっち方面を極めて今の自分が形成された、などと言えた方がROCKHURRAHっぽいような気がするが。本当は血を見るのも解剖も大嫌いだがイタリアにあるラ・スペコラ解剖博物館所蔵の人形などを見ると、無条件に見に行きたくなってしまう。
前置き長すぎて何を書こうとしてたか忘れてしまったが、このマーシフル・リリースのシンボルが人体模型をちょっと思わせる、という一文を書きたかっただけ。とりとめのない割には大した事書けなくて申し訳ない。
このマーシフル・リリースはポジティブ・パンク、ゴシックの帝王と呼ばれたバンド、シスターズ・オブ・マーシーがほぼ独占していた。このバンドのファン以外は「何これ?」の世界だろうと推測はつくが、大きくても小さくてもレーベル・マークなんてのは作った人(あるいは選んだ人)の好き勝手。外部の人にとっては意味不明でも本人にとって何か意味があればそれでいいんだろう。
紋章学と銘打っておきながら結局デザインについては何も語らなかったなあ。

というわけで駆け足、企画倒れの記事になってしまったようだが、世の中には至る所にロゴ・マークが転がってる。まだまだ色々な切り口で語る事が出来るはずなので、これからも新シリーズとしてやってゆきたいと思う。

では発売日に買った「ゼルダの伝説 スカイウォードソード」の攻略の続きでもやりますかな。もう一応終わったけどギラヒム様、強すぎ。