時に忘れられた人々【19】70’s & 80’s愛護週間編2

【曜日ソングの集大成、ブリリアント・コーナーズの名曲】

ROCKHURRAH WROTE:

前回の最後で「See You Next Week」などと書いたくせにまた一ヶ月以上もサボってしまったよ。愛護週間がずいぶん長いという気がするけど、年末年始にわざわざ書くような内容でもないからちょうど良かった。

何について書いてたかと言うとこの記事を読んでもらえればわかる通り、曜日がタイトルについた70〜80年代パンク/ニュー・ウェイブの曲をピックアップしてどうでもいいコメントをつける、というインスタントな企画をやっていたわけ。今回はその後半について書いてみるよ。

曜日のついたタイトルで探しても圧倒的に多いのが金土日の週末だな。これは外国でも日本でも共通と言える。やってる仕事の業種によっても違うんだろうけど、木曜日などと聞いても個人的にワクワク感は何もなし、いつも何とか乗り切って週末を迎えたいと思うばかりだよ。

そんな何もない木曜日を果敢にデビュー曲としたのがこのジム・ジミニーというバンドだ。人名のように聞こえるがそういう人がやってるわけじゃなくてただのバンド名らしい。
代表曲は1988年の「Town And Country Blues」でこの曲はいわゆるクラブヒッツとして有名なもの。
この曲をかけたらみんながフロアでノリまくるというような定番の曲があって、それは普通のヒットチャートとは全然違うものが大半だ。日本で言えばロンドンナイトとか下北沢のZOOとかがこういう雰囲気だったが、かつては近場に住んでたくせにあまりそういう場所に顔を出さなかったという人間嫌いなので見てきたようには話せないな。
ロンドンナイトはまだやってるし、パンクやサイコビリー系のライブの合間のDJタイムなどでもこういうクラブヒッツはよくかかるけど、当時の熱狂ぶりが今はもう再現出来ないのが悲しい。

話が脱線したが「Town And Country Blues」はウェスタン調の哀愁ある、しかもノリの良い名曲だ。ウェスタン調と言ってもカウパンクやサイコビリーみたいなのとはちょっと違うところが斬新だったな。
ROCKHURRAHもこの曲によって彼らを知ったんだが、他の曲を聴いたらこういう路線じゃなかったので驚いたよ。

ジム・ジミニーは今でこそ映像検索すれば簡単に見る事が出来るが、その当時は知る人ぞ知るようなバンドだったのでPVなんて見たのは随分後になってから。その映像で見るとウッドベースやバンジョー弾いてるような姿もあるので何とかビリー系かカントリー系?とも思うけど、そういう楽器構成でネオ・アコースティックやギター・ポップ系、あと少しモッズとかの雰囲気も感じられるところがちょっと珍しい。
ギター・ポップの名曲をいくつも残したブリリアント・コーナーズや「Maggie Maggie Maggie」で知られるラークス(あの曲以外はそんなにラウドではない)を少し思い出すような雰囲気もあるが、それよりはずっと陽気で軽薄そうなところも似非音楽大好きなROCKHURRAHの好みだ。ジミニーという割には意外と派手だなあ。

おっと、この曲「Do It On Thursday」についてはまるで書いてなかった事に今頃気付いたが、やっぱり楽しげで60年代の学生バンドのような無軌道っぽさがいい感じ。

ハナキン(おそらく死語)の例を出すまでもなく、土日が休みの人にとっては金曜日の夜はやはり特別な開放感があるに違いない。
ウチではどこかに出かけて華やかに過ごすという事が滅多にないけど(人間嫌いなので)、家でDVDを観てくつろぐというのが毎週金曜日の「お疲れ様タイム」になる。
遅ればせながら最近ハマって観ているのが、SNAKEPIPEの友人Mからオススメされた海外TVドラマ「ブレイキング・バッド」 のシリーズ。
1時間ものを平日に観るヒマがないので毎週金曜日に1話ずつ楽しみに観てるが、毎回ハラハラしっ放しで予想外の展開に「続きはどうなるの?」と二人で熱中して観ているのだ。
リアルタイムではないからウチではやっとファイナル・シーズン。
もうすぐ終わりそうなのが残念だ。ここまで熱中出来るドラマは滅多にないだろうなあ。これについては観終わった後でもしかしたら何か書くかも知れないから今はサラッと流しておこう。

そんな個人的金曜日の話は人にとってはどうでもいいと言えるが、数あるフライデーの歌の中でROCKHURRAHが選んだのはアソシエイツのこの曲。
日本では意外と知名度はないけど1980年代初期にはインディーズ・チャートの常連だったバンドで、大ヒット曲もいくつかある。後にはバンド構成になるが最初は男二人でやっていたのでジャケットも二人写真が多くアヤシイ関係に見える。
キュアーで知られる英国フィクション・レーベルよりデビューした事もあって、音楽性もヴォーカル・スタイルも似通ったものがあるとよく言われている。ただしキュアーの暗い曲ほど暗くはなく、ポップな曲ほどはじけてない、全体的に中庸なイメージの曲が多く、日本であまり受けなかった理由がそこにあると個人的には思う。そして人によって好き嫌いが分かれる、オペラを思わせるような高音のヴォーカルが特徴的。
キュアーをより複雑にミステリアスにしたような印象で、当時の音楽雑誌などでは絶賛されていたもんだ。

ROCKHURRAHはいくつかレコードは持っていたけど、そこまでキュアーが好きだったわけではなかった。人気バンドで誰もが語っていたから今さらという気持ちもあったし、もっとマイナーなバンドを発掘する方が性に合っていたというわけ。が、最近またネットのラジオなどでかかっているのを聴くと、声聴いただけですぐにロバスミだと分かってしまう。最近のバンドなんて声で誰か全然わからないのが多いから、やっぱり80年代の音楽はすごい、と改めて思ったよ。

アソシエイツのビリー・マッケンジーの声もロックの世界ではちょっと似たタイプがいないと思える特色を持っていて、どこかで曲がかかっても即座に判別出来る点がやはり偉大だなと思える。
この曲「Tell Me Easter’s on Friday」はその中でも好きな曲で万華鏡のようにちょっとずつ変化してゆく怪しげな歌声とモノトーンな曲調が一体化した傑作。

残念ながらこの後、アソシエイツの二人は喧嘩別れ(アヤシイ)してしまい、このバンドの陰影のある曲作りがなくなった状態でしばらくヴォーカリストのソロとしてやっていたが鳴かず飛ばず、そしてマッケンジーは鬱病によって自殺という最悪の結果となってしまった。
ヴォーカルさえいれば、とかこの作曲センスさえあれば、とかじゃなくてバンドの魅力はトータルなバランスによって成り立っている。喧嘩別れした時にきっぱり解散してればこうならなかったかも、と思ってしまうよ。

さて、いよいよ最終日。環境にもよるだろうが土曜日が一番嫌いという人はかなり少ないと思える。まあとにかく節目の日なのは確かだから土曜日を歌った曲も数多く存在しているはず。

ウチも翌日から仕事だから日曜夜になるといつも憂鬱になるが、土曜日はちょっと出かけたりゆったりしたり週末ならではの料理を作ったり、最も楽しく過ごせる日なのは間違いない。

そんな楽しい土曜日にこんな曲を選んで申し訳ないが、ウルトラヴォックス!初期の名曲「Sat’day Night In The City Of The Dead」、これをもって一週間の締めくくりとしよう。
ウルトラヴォックス!については当ブログでも何度も書いてるから、何度も読んだ人がいたら辟易するに違いないが、全部の記事を読むほどの人はまずいないはずだからまたまた同じような事を書いておこう。

1980年代にニュー・ロマンティックの人気バンドとしてヒットを飛ばしたウルトラヴォックスだが、パンクより前からいた早すぎたバンドだったというのは一部では有名な話。
ロンドン・パンク発生前の1974〜75年くらいに活動していたグラム・ロック系バンド、タイガー・リリーがキャリアの始まりだった。
グラム・ロックとパンク/ニュー・ウェイブの架け橋的なバンドと言えば個人的にはドクターズ・オブ・マッドネスとかビー・バップ・デラックスとかが思い浮かぶが、もうその頃にはパンク・バンドのウルトラヴォックス!の先進的なスタイルは出来上がっていた模様。
このバンドはそのままウルトラヴォックス!と改名してダムドやセックス・ピストルズなどと同じく1976年にはすでにデビューしている。
典型的なパンクの音が何を標準とするのかは人ぞれぞれの解釈なんだが、ROCKHURRAHはウルトラヴォックス!もまたパンクの先駆者だったと思っている。
釘を打ち付けるようなビートに早口でまくし立てるジョン・フォックスの歌、そして時に無機的、時に破壊的。1stアルバムの1曲目に収録されたこの曲はまさにパンク的な衝動に満ち溢れたものだった。ずっと後のテクノ、エレポップあるいはニュー・ロマンティックの要素はまるでないというシロモノ。初期に最も好きだった名曲「Young Savage」や「ROckwrok」などに通じる大傑作。
しかしこのバンドはやってる事が先進的すぎて同時代には全然売れず注目されず、3rdアルバムの頃にようやく再評価されたという経緯がある。ブライアン・イーノ、スティーブ・リリーホワイト、そしてコニー・プランクという先進的なプロデューサーがついていて音は申し分なかったのに、ピストルズやダムド、クラッシュのようなヴィジュアル的なカッコ良さがなかったから仕方ない。メンバーも全員顔の輪郭が少し変だし、ヴォーカルはこわいおばちゃんみたいな風貌だしね。

以上、日曜から土曜日までの歌をピックアップしてようやくこの企画がひとまず完結したよ。苦労した割にはあまり面白くもないし文字も小さくてビッチリ、読みにくいから誰も読まんのは必至の内容だな。
いっそのこと老人や子供にわかりやすいと話題のデカ字幕仕様にでもするか?

時に忘れられた人々【19】70’s & 80’s愛護週間編1

【おっちゃん、おばちゃんになってしまったデフ・スクールの週末感あふれる名曲】

ROCKHURRAH WROTE:

このシリーズ記事も遂に20回目前まで書いたな。
実際は同じテーマの記事をパート1、パート2みたいに書いてるから20以上は書いてるんだけど、ブログを始めて8年間もよく頑張ったよ。

何の制約もなしに書きたい事を日記のように書く、というスタイルではなくて毎週必ず日曜日に何かのテーマに沿った内容の記事を書く、というのがウチのやり方なので、割と考えたり下調べが必要になってくるからね。毎回、けっこう手間はかかってると思う。
ROCKHURRAHはあまり書いてないけど、自分が書く時以外の週は全てSNAKEPIPEが一人で書いてくれてる。本当に感謝してるよ。

さて、今回思いついたのが一週間の曜日がタイトルについた歌特集というもの。言うまでもなく2014年にROCKHURRAHが鳴り物入りで始めた新企画のくせに、まだたった4回しか書いてない「ロックンロール世界紀行」と着眼点はほぼ同じ。世界の国名や地名がついた曲の代わりに曜日がついた曲についていいかげんなコメントをつけるだけという安易な発想で書いてみようと思う。ん?もういいかげん飽きた?

このブログでは相変わらずだが、70年代80年代のパンクとかニュー・ウェイブ限定でずっとやってきたので今回も古いものを思い出してみよう。

70〜80年代のパンク、ニュー・ウェイブ限定だから案外範囲は狭いぞ。決して誰でも思いつくような「Sunday Morning」とか「ビューティフル・サンデー( 田中星児)」などはここでは取り上げない方針。

そんな頑固一徹なROCKHURRAHが選んだのがこれ、シャム69の1978年に発表された代表曲シングル「If The Kids Are United」のB面である「Sunday Morning Nightmare」だ。

シャム69はピストルズやクラッシュよりも少しだけデビューが遅れたが、熱血漢ジミー・パーシィの男気のある力強い歌で多くのパンクスに愛された素晴らしいバンドだ。特に80年代に盛んだったOi!、スキンズと呼ばれたようなバンド達の元祖的な存在として有名。

この曲は2ndアルバム「That’s Life」にも収録されているが、曲と曲の間に全て日常の会話や雑音のようなものが入っている一種のコンセプト・アルバムだったな。今は波形編集ソフトで簡単にフェイド・インなど出来るが、まだカセットテープの時代だと全部の曲の切れ間がないタイプのレコードは一曲だけ録音するのが大変だったという思い出がある。頭出し出来るのが当たり前の現代とは大違いだったな。
そんな個人的な話はどうでも良かったか。
この曲もシャム69らしいエネルギッシュで粗野な魅力にあふれているが、日曜の朝に悪夢を見るとは、彼らに安息はあるのか?

月曜日を歌った曲の80年代三大ヒットと言えば「哀愁のマンデイ(ブームタウン・ラッツ)」「マニック・マンデー(バングルス)」とニュー・オーダーのこの曲がすぐに思い浮かぶ。なぜか月曜日は邦題でもマンデー、何でだろうか?

イアン・カーティスが自殺して途方に暮れたジョイ・ディヴィジョンの残りのメンバーだったが、ニュー・オーダーとして再起、見事に方向転換して立ち直った。そのきっかけとなる大ヒット曲が「ブルー・マンデー」だった。これはイアンの死について歌ったシリアスな内容の曲だったが・・・などと見てきたように書いてみたがROCKHURRAHは実は彼らのレコードを一枚も持ってなくて、知ってる曲も数曲のみ。
ジョイ・ディヴィジョンは今でも愛聴しているのに。

何で聴かなかったのか答えは明確で、そこにイアン・カーティスのヴォーカルがなかったからだ。
結局、ROCKHURRAHは曲も歌もヴィジュアル(レコードジャケット)も全て含めての総合的なバンドとしてジョイ・ディヴィジョンを評価していて、イアン・カーティス抜きでは満足出来ないという「ないものねだり」なんだろうな。

この曲は1983年に大ヒットしたが88年にもリミックス盤が出ていて、かなりの長期間に渡ってリスナーの支持を集めた名曲。
しかしニュー・オーダーをぜーんぜん知らない会社員のおっさんでもブルーマンデー症候群などという言葉を使ったりする。この言葉のネーミングの由来がどこからなのか知らないが、自分の後ろでそんな会話が聞こえたら少しビックリしてしまうよ。

火曜日から木曜日まではあまり歌にするような題材がないためかそのタイトルがついた曲が少ない。

ROCKHURRAH自身も火曜日火曜日などと心の中で唱えてみても、「イオンの火曜市」くらいしか思い浮かばない始末。しかもちょっと安いだけでわんさか人が押しかけるからウチは嫌いなんだよね。
うーん、見事にロック的詩情からかけ離れたコメントで申し訳ない。

そんなネタのない曜日である火曜日、パンクやニュー・ウェイブ限定ではやや苦しいが、何とか見つけたのがこの曲。
看板ヴォーカリストだったシェインがアル中ひどすぎてクビになった後のポーグスの曲だね。彼らが全盛期の頃にはシェインの横で笛吹いてるくらいで割と暇そうだったスパイダー・ステイシーがメイン・ヴォーカルとなった後の作品。ポーグスの中で一番チャラチャラしてた奴と勝手に思い込んでるんだが、うーむ、歌は全然良くないなあ。

ニップル・エレクターズもポーグスも大好きなバンドだったが、シェイン抜きだと全然物足りない。あの歌声と投げやりなパフォーマンスでへべれけなダメ男、シェインだからこそのポーグスだったんだね。
上に書いたイアン・カーティスがいないジョイ・ディヴィジョン=ニュー・オーダーと一緒の感想だな。

今ここではじめて気付いたが、今回のシャム69、ニュー・オーダー、ポーグスの3つとも人気キャラクターだったヴォーカリストがいなくなった状態でしばらくはバンドが存続していた、という偶然が重なったね。
ニュー・オーダーの場合はジョイ・ディヴィジョン時代よりも遥かにヒットしたわけだから、過去にしがみついてたわけじゃないけど。
シャム69なんかはジミー・パーシィが出戻ったとたんに代理のヴォーカリストが追い出され(?)、そちらの方もシャム69を主張しているという、いわゆるまんじゅう屋の「本家・元祖」みたいな争いをしていて、両方ともシャム69を名乗っているらしい。

水曜日も少ないな。ウチはテレビも見ないので特定の曜日に関する習慣みたいなものがほとんどないしな。

我が家で水曜日と言えば週の後半の買い物をする日と決めていて、最近ではイオンではなく西友によく行っている・・・うむむ、ますますロック的詩情とかけ離れてしまったな。
そんな何事もない水曜日を果敢にタイトルにつけて歌ったのがアンダートーンズのこの曲。

アンダートーンズについてはウチのブログでも何回かは登場した事があるが、北アイルランドの出身。
この地は宗教や独立を巡っての紛争が絶えなかった政情不安定なところで、U2の一番の名曲だと個人的には思っている「Sunday Bloody Sunday」でも歌われた血の日曜日事件というのが起こった事などでも有名。

がしかし、そういうシリアスな要素がこのバンドには全然見当たらないところが逆にすごい。ビデオ見てもこれが60年代ではなくパンクの時代のバンドだとは思えないルックス。後の時代のギター・ポップなどに通じる曲調だな。

当初の予定では一週間まるまるひとつの記事にまとめるつもりだったが、案外長くなったので一旦中断としよう。 木曜以降はまた今度ね。
See You Next Week !