好き好きアーツ!#21 DAVID LYNCH—Mulholland Drive

【マルホランド・ドライブのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPEは毎日夢を見る。
そして夢を断片的にでも朝まで覚えている。
一体どこからの発想なのかも分からないほど奇想天外なストーリーや意味不明の単語まで登場して、翌日ROCKHURRAHに聞いてもらう度に不思議がられるのだ。
「夢日記を付けてみたら?」
と何度も勧められている程、ユニークな夢が多いようだ。
通常の場合、自分の夢は人に話しても退屈させるだけだと思うけれど、ROCKHURRAHが面白がってくれるので、ちょっといい気になってしまうね。(笑)

今回の「好き好きアーツ!」はデヴィッド・リンチ監督迷宮系3部作(?)の第2弾として「マルホランド・ドライブ」を特集してみたいと思う。
どうして冒頭にSNAKEPIPEの夢について語ったのか。
それはいずれ明らかになるであろう!(予言)

「マルホランド・ドライブ」(原題:Mulholland Drive)は2001年に制作されたシュール・ネオ・ノワール映画と書かれているね。
誰がこんな言葉を考えたんだろうか。(笑)
サイコロジカル・スリラーという分類もされているらしい。
文章だけ読んでいるとサッパリ訳が分からなくなりそう!
「マルホランド・ドライブ」の前のリンチの作品は「ストレイト・ストーリー」という、感動で涙が溢るヒューマンドラマで、配給会社がなんとディズニー(!)だったんだよね。
リンチがディズニー?とびっくりしたのは1999年のこと。
リンチアンなので当然のように「ストレイト・ストーリー」は劇場で観たけれど、
「リンチ、大丈夫かな?もうこっちには戻らないんじゃ…」
と不安を感じていたところに次回作として発表されたのが「マルホランド・ドライブ」だったのである。
恐らく同じように危惧していたファンはたくさんいただろうなあ。
「マルホランド・ドライブ」を鑑賞し終わって、ホッと一安心。
やっぱりリンチはリンチ、だったんだよね。(笑)

では早速「マルホランド・ドライブ」について書き進めてみようか。
「マルホランド・ドライブ」は時系列に物語が進行しないし、同じようなシーンがまた別のシチュエーションで登場したり、同じセリフが複数の人物によって語られたりする、いくつものエピソードで構成されている映画である。
そのためさっぱり意味が分からないと思う人が多いだろうし、SNAKEPIPEも実際に映画館で一番初めに鑑賞した時には首をかしげてしまった。
個人個人の好きな感じ方で良いと思っているから、謎解きをしようとは思わないので、それらを期待して読んでいる方を裏切ってしまうだろうね。(笑)

リンチによって提示された10のヒントがあるので、参考までにご紹介しようか。

  • 1
  • Pay particular attention in the beginning of the film: At least two clues are revealed before the credits.
    映画の冒頭に、特に注意を払うように。
    少なくとも2つの手がかりが、クレジットの前に現れている。
  • 2
  • Notice appearances of the red lampshade.
    赤いランプに注目せよ。
  • 3
  • Can you hear the title of the film that Adam Kesher is auditioning actresses for? Is it mentioned again?
    アダム・ケシャーがオーディションを行っている映画のタイトルは?
    そのタイトルは再度誰かが言及するか?
  • 4
  • An accident is a terrible event — notice the location of the accident.
    事故はひどいものだった。その事故が起きた場所に注目せよ。
  • 5
  • Who gives a key, and why?
    誰が鍵をくれたのか? なぜ?
  • 6
  • Notice the robe, the ashtray, the coffee cup.
    バスローブ、灰皿、コーヒーカップに注目せよ。
  • 7
  • What is felt, realized and gathered at the Club Silencio?
    クラブ・シレンシオで、彼女たちが感じたこと、気づいたこと、下した結論は?
  • 8
  • Did talent alone help Camilla?
    カミーラは才能のみで成功を勝ち取ったのか?
  • 9
  • Note the occurrences surrounding the man behind Winkie’s.
    Winkiesの裏にいる男の周囲で起きていることに注目せよ。
  • 10
  • Where is Aunt Ruth?
    ルース叔母さんはどこにいる?

これらのヒントに即答できるのは、「マルホランド・ドライブ」を何回も鑑賞されている方だろうね。
そして当然ながら熱狂的なリンチアンだと思う。
SNAKEPIPEは2つ、すぐに答えられない問いがあるけれど、あまり気にしないな。
このヒントによって謎解きができるとも思えないしね。(笑)
ではあらすじに感想を加えながら書いていこう。
※毎度のことながらネタバレしていると思いますので、鑑賞前の方はご注意下さい。

男性2人と共に車に乗っていた黒髪の女性は、突然同乗者からピストルを向けられ、殺されそうになったところを前方からの暴走車両の激突により命を救われる。
同乗者の男性2名は即死だったようで、生き残っていたのは黒髪の女性だけ。
足がカクカク、フラフラしながらも逃げる。
旅行に出かけるため家を留守にするという女性の空き家に侵入することに成功。 その家で身を隠すことにする。

ここで突然場所が変わる。
ウィンキーズというダイナーで自分が見た夢について語る男と聞く男。
この男2人の関係については謎。
語っている男(写真上)の顔がものすごくインパクトあるんだよね!
眉の太さ、額の狭さ、笑っても全然笑ってない目とか全てがヘン!
きっとリンチはこの役者の顔が気に入ってキャスティングしたに違いない。(笑)
夢を見た男は、その夢が悪夢だったので正夢ではないことを確かめたいと言う。
見た夢に沿って行動する2人。
すると夢は正夢で、悪夢通りウィンキーズ裏手には「恐ろしい顔」の男がいた!
それを目にした途端、夢を見た男は恐怖のあまりに失神してしまう。

空き家で眠り続ける黒髪の女。
「女はまだ見つからないのか?」
謎の人物から人物へ、謎の通話が数回繰り返される。
どうやら黒髪の女性の行方を追っているようだ。
この一連の通話の中で、一番の大物だと思われるのが上の写真の人物!
そうです!「ツイン・ピークス」ファンなら誰もが知っている、あのダンスする小人であるマイケル・J・アンダーソンの登場!
リンチがずっと映画化しようと進めてきたプロジェクトである「ロニーロケット」でも アンダーソンを起用する予定だった話をどこかで読んだことがあるよ。
「ツイン・ピークス」以外でも是非出演してもらいたいって思ったんだろうねえ。

女優を夢見てハリウッドを目指してきたベティ。
隣にいる白髪の女性はたまたま飛行機で乗り合わせて意気投合した人。
ベティは叔母が留守にしている間、叔母の家で居候することになっている。
しかしそこには、自動車事故に遭い、こっそり侵入した黒髪の女性がいた!
てっきり叔母の知り合いだと勘違いしたベティは、何者かも分からない黒髪の女性を歓迎する。
名前を尋ねると「リタ」と答える黒髪の女性。
たまたま壁に貼ってあったリタ・ヘイワースのポスターから借用した名前だ。
具合が悪そうにしたリタをベッドに眠らせるベティ。

場面が変わり、ライアン・エンターテイメントのビルの一室。
監督やプロデューサーらが映画の打ち合わせを行なっている。
そこに後から登場するのがカスティリアーニ兄弟という映画界の黒幕。
この兄弟は「This is the girl」(まさにこの子だ!)とカミーラ・ローズという女優を推薦するために会合に来たのである。
「This is the girl」とフレーズが似ている「This is it」は、「ブルーベルベット」の中に出てきた店の名前だったなあ。
このフレーズがリンチの好みなんだろうね。(笑)

エスプレッソを注文した兄弟のうちの一人。
エスプレッソが気に入らなかったらしく、白いナプキンに含んだコーヒーをケローンと吐き出してしまう。
おや?なんとこのおかしな役を演じているのは、リンチ作品には欠かせない作曲家のアンジェロ・バダラメンティじゃないの!(笑)
セリフはほとんどなかったけれど、非常に印象的なおいしい役どころ!
役者としても活躍していたとは驚きだね。 (笑)

監督にはキャスティングの権利が一切なくて、黒幕が暗躍して映画やスターが作られてるんだよ、という業界裏話のような逸話。
このエピソードが、リンチが描きたかった「ハリウッドの闇」の一つなのかもね?

次のエピソードは、ハリウッド有名人の電話番号を記録してあるノートを奪うために、殺人を犯す男の話。
1人だけを殺すはずが、ひょんなことから3人を殺すハメになってしまう。
殺人なのに笑いが出てしまうという、ブラックユーモアに溢れたシーン。
これもリンチ得意の「ハッピー・バイオレンス」なんだろうね。

出張先の叔母と電話をしていたベティは、リタが叔母とは全く関係のない女性だということを知る。
実は事故のために記憶がない、というリタ。
リタのバッグに何かヒントがあるかも、とバッグを開けてみる。
そこにはたくさんの札束と謎の青い鍵が入っていた。
リタが一つだけ思い出した単語は「マルホランド通り」。
恐らくそこに行く途中で事故に遭遇したはずだ、というリタの言葉を確かめるために警察に電話をし、本当にマルホランド通りで事故があったことを知る。
コーヒーを飲みに入ったウィンキーズのウエイトレスの名前から、ダイアン・セルウィンという名前を突然思い出すリタ。
電話帳で調べてみると、ダイアン・セルウィンが実在していることが判明。
もしかしたら記憶を蘇らせる手掛かりになるのでは、とベティとリタはダイアン・セルウィンの住所を訪ねるのである。

映画が自分の思い通りにならないことに怒り狂った監督アダム・ケシャーは、カスティリアーニ兄弟の車をボコボコにした後、自宅へ。
そこで妻の浮気現場を目撃、腕っ節の強い浮気相手に反撃され追い出されてしまう。
いつの間にかクレジットカードは凍結、資産もゼロになっている。

秘書から「カウボーイ」に会うように指示を出され、ビーチウッド・キャニオンという夜中の牧場に会いに行く。
「カウボーイ」は、本当にカウボーイの格好をした謎の人物だった!
ほとんど表情がなく、目に光もなくてまるで蝋人形のような顔立ち。
「マルホランド・ドライブ」は至るところに「ハリウッド映画」へのオマージュが散りばめられているので、もしかしたらこの「カウボーイ」はジョン・ウエインを意図してるのではないかと感じるのはSNAKEPIPEだけかな?
だから死んだような目をして、喋り終わった途端に一瞬で消えたんじゃなかろうか?
カウボーイはみんな同じ格好だからSNAKEPIPEの思い過ごし?(笑)

「カミーラ・ローズを見たら、彼女だ!と言うこと」
カスティリアーニ兄弟の意見が絶対だったようで、従わなければ監督生命も奪われかねないようだ。
それにしても「カウボーイ」のセリフ「人の態度はその人の人生を左右する」はなかなかの名言だよね!(笑)

オーディションに向かうベティ。
これは父親の親友との恋愛を描いた作品で、相手役の俳優が若い女を相手にするためなのか、やる気満々の「いかにも」な男なんだよね。(笑)
それに応え、着衣のままだけれどエロティックな雰囲気を醸し出し迫真の演技をするベティ。
その場にいた人達はすごい新人が現れた、と喜ぶ。

別のスタジオではアダム・ケシャーがカウボーイの指示通りに自身の映画のためのオーディションをしている。
しかし、これは出来レース。

カミーラ・ローズ(写真上)が出てきた瞬間、アダム・ケシャーはまるで自分が決めたかのように
「This is the girl」
と言うのである。
「カウボーイ」の言いつけ通りにしたアダム・ケシャーは、これで安泰といったとことか。(笑)
このアダム・ケシャーのオーディションは、すっかりリンチ・ワールドになっていてフィフティーズ全開なんだよね!(笑)
この時のオーディションの映画のタイトルが、リンチ・ヒントの3番めだよ!

タクシーに乗り、記憶を蘇らせる手掛かりを求めて、ダイアン・セルウィンのアパートに向かうベティとリタ。
アパート周辺にはサングラスをかけた怪しげな人物が何人もいる。
裏口から入り、なんとかダイアン・セルウィンの部屋までたどり着く。
ノックをしても出ないので、窓から侵入してしまう。
部屋の中で見たのは、ダイアン・セルウィンと思われる女性の死体だった!
このシーンはまるでホラー映画みたいで、本当に怖いんだよね。
部屋に入った時から鼻に手をやり、臭いを防ぐような仕草を見せていたので、予想はしていたものの、かなり本格的な死顔メイク(というのか)。
慌てて逃げ出す2人。
その後、身の危険を感じたリタは黒髪を切り、金髪のウィッグで変装するのである。
この後、ベティとリタのラブシーン!
えっ、なんで急にこうなるの?とびっくりな展開に戸惑ってしまうね。(笑)
身の危険を共有したことで、まるで吊り橋効果のように恋愛感情に発展してしまったのかもしれない。

一緒のベッドで手をつないで眠る2人。
リタが寝言で「Silencio」と繰り返す。
これはスペイン語で「お静かに」という意味らしい。
何度も声に出しているので、ベティが起きだす。
「一緒に行ってもらいたいところがあるの。今すぐに!」
急に何かを思い出したようなリタに従い、夜中の2時に2人は揃って「クラブ・シレンシオ」という怪しげな劇場へと向かう。
そこでは「バンドがいない、全てが録音された音」という摩訶不思議なステージが繰り広げられている。

ステージで歌うのはロスアンゼルスの泣き女、レベッカ・デル・リオ
言語はやっぱりスペイン語で、曲のタイトルは「Llorando」という。
迫力満点の見事なアカペラを披露してくれる泣き女。
歌詞がとても重要だと思われるので、字幕から拾って載せてみよう。

しばらくは元気だったの
笑顔でいられたわ
でもゆうべあなたに会ってあなたの声を聞いた時、私は取り乱さなかったわ
だからあなたには分からなかったのね
あなたを慕って泣いていることに
あなたを思って泣いているのよ
あなたはさよならを言って私を置き去りにした
私は一人で泣いている
なぜなのかしら
あなたに会っただけで また私は涙にくれる
あなたを忘れたと思っていたわ
でもこれは本当のこと
以前にも増してあなたを愛してる
でも私に何ができるの
あなたの愛は冷めてしまった
だから私は永遠にあなたを慕って泣き続けるだけ
あなたを思って泣き続けるだけ

なんとも悲痛な心の叫びを表現して、泣き女は失神してしまう。
あれ?映画の中で失神者は2人目だね!
そして録音されているだけあって、失神した後も歌声は続いているよ。(笑)
歌声を聴いていたベティとリタも肩を寄せ合い泣きじゃくっている。
泣き女節が伝染したのか、それとも何か思うところがあるのか?
このシーンがリンチの7番目のヒントの箇所だね。
SNAKEPIPEは前述したように、歌詞がポイントだと思うな!

失神してしまった泣き女を見届け、涙を拭こうとバッグを開けた時、ベティはバッグの中に青い箱を発見する。
リタのバッグに入っていた謎の青い鍵がピタリと符合しそうな、三角形の穴も見える。
きっとこれが鍵穴に違いないね!
自宅に戻り、いよいよ青い箱を鍵で開けようとする時、何故だかベティの姿が見えない。
ドキドキしながら一人で鍵を差し込むリタ。
箱を開けると中には暗闇が広がっている。
その闇に吸い込まれるように画面が黒くなり、次のシーンでは床に転がる青い箱だけが映し出される。
うーん、なんとも暗示的なシーンなんだよね。
ベティがいなくなったこと、青い箱の中身とか、ね。(笑)

青い箱が開いてから、映画は更にショート・シークエンスの連続になってくる。
一応映画の進行通りに書き進めていくけど、文章だけ読むと意味不明かもしれないね。(笑)

赤い髪の女が部屋にいる。
ベティの叔母でカナダに行っていたはずでは?
何もなかったわよね、と室内を点検。
床に転がっていたはずの青い箱は見当たらない。

ダイアン・セルウィンと全く同じポーズでベッドに横になっている黒髪の女性。
「へい、かわい子ちゃん、起きる時間だよ」
ドアを開けて入ってきたのは「カウボーイ」だ。

また同じ姿勢でベッドに横になっている女性。
今度は金髪の女性に変化している。
誰かがドアをノックしている。
起き上がったのはベティだったはずの女性。
訪ねてきたのは部屋を交換した、以前の住人。
金髪の女性がダイアン・セルウィンということになるのかな。
「刑事2人があなたを捜してたわよ」
聞いた途端に動揺するダイアン・セルウィン。
「カミーラ、帰ってきたのね」
リタだったはずの黒髪の女性に笑いかけながら、次第に泣き始める。
ダイアンの妄想とか幻覚が映像化されているようだ。

またしてもカミーラとダイアンのラブシーン。
「もうやめましょう」
カミーラから一方的に別れを切り出されるダイアン。
「原因は彼ね?」
カミーラもダイアンも女優で、カミーラは映画監督のアダム・ケシャーと恋仲になっていたのだった。
この場面は実際にあった記憶だと思われる。

着飾ったダイアンの元にカミーラから電話がある。
カミーラがダイアンをパーティに誘っているようだ。
ここで映画冒頭の車のシーンと全く同じマルホランド通りを走る車の映像。
車に乗っているのはダイアンだ。
途中で迎えに来たカミーラに案内されて向かったのはアダム・ケシャーの家だった。

パーティの席で、映画界で働く叔母の遺産が入ったためカナダの田舎町からハリウッドを夢見て上京したこと、カミーラの口利きで女優を続けていられるという話をするダイアン。
聞いているとかわいそうになってしまうような惨めな状態のダイアンである。
そんなダイアンを横目で見ながら、カミーラは意地悪く他の女とイチャついて見せたり、挙げ句の果てにアダム・ケシャーと結婚することも発表し、ダイアンをイジメ抜くのである。
「カウボーイ」が室内を横切る。
悔し涙を流すダイアン。
そんなダイアンの視線を充分に感じていながらも、カミーラは知らん顔である。
んまあ、なんて嫌な女なんでしょ!
恋人関係にあった相手に対してそこまで意地悪できるとは、相当性格悪いよね。 それでもダイアンは、執着心とか嫉妬心を飼い馴らせなかったみたいね。

場面が変わって、またウィンキーズ店内である。
ダイアンが男に会っている。
これはドジを踏んで3人を殺すハメになった男じゃないか?
「This is the girl」
そう言ってダイアンが男に写真を渡す。
この写真はカミーラだね。
自分を捨てて監督との結婚を決めたカミーラへの復讐として、お金で殺しの依頼をしているようだ。
「片付いたらこの鍵を置く」
男が見せたのは青い鍵!
何の鍵かと尋ねると、男はただ笑うだけである。
またここでも「This is the girl」 という同じセリフが登場し、青い鍵も出てきたね。

赤いライト。
ウィンキーズの裏手だ。
映画の初めに登場した「悪夢を見た男」が遭遇した「恐ろしい顔の男」が青い箱を手に座っている。
「恐ろしい顔の男」が青い箱を袋に入れた後、小さな初老の男女が笑いながら袋から出てくる。
この初老の男女は、ベティが飛行機で乗り合わせた人達じゃないか?

テーブルに乗っている青い鍵。
殺し屋の男の仕事が片付いたのだろうか。
その鍵をじっと見つめるダイアン。
ドアをノックする音。
ドアの隙間から侵入する小さな初老の男女はゲラゲラ笑っている。
笑い声はいつの間にか悲鳴に変わり、ノックの音が強くなってくる。
小さかったはずの初老の男女は、いつの間にか等身大に変化し、笑いながらダイアンを追い回す。
錯乱状態になったダイアンはピストルを自らの口に当て、引き金を引く。
「恐ろしい男の顔」と「クラブ・シレンシオ」のオーバーラップ。
笑い合うベティと金髪のリタが薄ぼんやりと映し出される。
背景はハイウッドの夜景である。
このシーンはダイアンの人生回顧(ライフレビュー)なのではなかろうか。
愛にも夢にも絶望してしまったダイアンの最期である。

クラブ・シレンシオ。
青いライトの中、ステージには誰もいない。
青いライトが徐々に消えていく様子を見やっていた青い髪の観客の女性が一言。
「Silencio」

青い髪の女性は、ベティとリタが「クラブ・シレンシオ」を訪れた時にも座っていたんだよね。
この女性だけが残っていて、更に青い髪、というのもポイントなんだろうな。
「マルホランド・ドライブ」には青色がたくさん出てくるよね。
青い箱、青い鍵、青い髪、青い光。
それらの関係を考えると謎解きになるのかもしれないね?

ひ~!
軽くまとめるつもりがこんなに長くなってしまった!
「マルホランド・ドライブ」は複雑だから簡単に、なんて無理だよね。(笑)
迷宮系3部作の1作目である「ロスト・ハイウェイ」にも出てきた、同じ俳優が演じる複数の役柄というのが「マルホランド・ドライブ」にも採用されているね。
ベティ/ダイアン、リタ/カミーラという2人の女性。
恐らく本当はダイアンとカミーラなんだろうな。
その2人以外にもたくさんの人物の本当の姿が釈然としないよね。
どの時系列が正しいのか、現実にあった事と妄想や夢との違いの分かりにくさに加えて青い箱と鍵やら「クラブ・シレンシオ」のような怪しげな場所が混在しているので、何回観ても難解なんだよね。(ぷっ!)

「マルホランド・ドライブ」の解釈については、様々出ているようだ。
青い箱を開ける前までを前半でダイアンの妄想(もしくは夢)として、箱が開いた後がダイアンの現実とする意見が大多数みたい。
確かに青い箱のシーンから後の部分というのは、細かいエピソードが連続しているので混乱してしまうよね。

時系列に直して鑑賞しても良し。
リンチによって提示されたそのままを、解釈などせずに受け入れるも良し。
SNAKEPIPEは「謎は謎のままで良い」というリンチの言葉通り、後者でいこうと思う。

このブログの冒頭で書いた夢の話の続きを書いてみよう。
夢の中では、テレビでしか見たことがない人と会話していたり、行ったことがない場所にいたりする。
つながるはずのないAとBが混在したり、Cの場所からいきなりDの地点に移動していることもある。
脈略のないストーリーが展開されることも多いよね。
そういった夢ではお馴染みの手法を採用したのが、「マルホランド・ドライブ」なんだろうね。
自分の夢でも整理して説明できないんだから、他人の夢を見させられたら困惑するに違いない。
理不尽で整合性がないのは当たり前!
わからなくたって いいじゃないか ゆめだもの みつを

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