SNAKEPIPE MUSEUM #31 Malcolm Morley

【戦闘機よりも上空からの俯瞰画像は「Dakota」2015年の作品だよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

現在ニューヨークにあるSperone Westwater Galleryで開催されているのが、Malcolm Morleyの同ギャラリーで5回目になる個展である。
実はこのアーティストについては、今まで一度も聞いたことも観たこともないんだよね。
たまたま目にしたアート情報のページにあった上の画像に一目惚れ!
これは誰の作品なんだろう、と調べてみたのである。

マルコム・モーリーはロンドン生まれ、1958年からはニューヨーク在住のアーティスト。
生まれたのは1931年、現在御年83歳!
ええっ!?上の画像「Dakota」は今年の作品なんだけど?
こんなにカラフルでポップな絵を描く83歳とは!
ホドロフスキー監督もびっくり、じゃない?(笑)
そしてStingの曲通りの「English Man In NewYork」とは。
経歴を調べて驚いたのが、第2次世界大戦で家が燃えたため、家族共々ホームレスだったということ。
どうやら「かっぱらい」のような罪で3年間刑務所にも入っていた、という記事も読んだよ。
そんな境遇だった子供時代なのに、やっぱり才能があったんだね。
美術学校に通い、ニューヨークに移住してからは大学で美術を教えていたというから、なんとも波瀾万丈な人生だよね!
1984年にはターナー賞も獲得!
これはターナー賞の第1回目の受賞者になるんだね!
そんなアーティストのことを全く知らなかったとは!
もしかしたら2008年に鑑賞した「ターナー賞の歩み展」で観ていたようだけど?
全く記憶にないSNAKEPIPEだよ。(笑)

マルコム・モーリーはフォト・リアリストとして有名らしい。
これはスーパーリアリズムともいわれる、写真そっくりに描く手法のことね。
確かに左の画像を観ても、とても絵画とは思えないよね。
疾走感溢れるロードレース、「YAMAHA」の文字もくっきりしてるし!
この絵と一番上の画像との共通点というと、「乗り物」というところか?

どうやらマルコム・モーリー、小さい男の子が乗り物が好きというのと同じレベルのように思われる。
左の画像「Cosair and Santa Maria」は 2011年の作品で、マルコム79歳の作品なんだよね。
戦闘機と海賊船はお気に入りのモチーフのようで、繰り返し描いているみたい。
この絵の中には絵画中絵画にまた船が描かれているくらいだもんね!
それぞれが重なり合う構図も、子供が何も考えずに好きな物をなんでも入れて描いてしまったかのようで、素晴らしい。
もちろんマルコム・モーリーの構図はバッチリ計算されてるけどね!

戦争や戦いをモチーフにした作品も多いんだよね。
左の「Cromwell」は2014年の作品。
まるでポスターみたいなイラストっぽい雰囲気だよね。
文字が入っているから余計にそう感じてしまうんだろうけど?
クロムウェルって歴史の授業で聞いたことがあるような気がするね。
恐らく1599年生まれのオリバー・クロムウェルのことを描いていると思われる。

イングランドの政治家、軍人、イングランド共和国初代護国卿。
鉄騎隊を指揮してエッジヒルの戦いやマーストン・ムーアの戦いで活躍し、ニューモデル軍の副司令官となる。

やっぱりNew Model Armyなんて言葉が出てくるんだよね!
マルコム・モーリーの好みがよく解るなあ!

もう一点、ポスターみたいな作品を載せてみようか。
「Italian Fighter Pilot (Ace)」は2011年のシリーズ。
第2次世界大戦中の戦闘機乗りの中でも、撃墜王にスポットを当てているとのこと。
アメリカ、ベルギー、イギリス、ドイツ、イタリア、ロシアの撃墜王をモチーフにしているらしい。
自分自身も第2次世界大戦で悲惨な体験をしているマルコムだけれど、子供の頃飛行場の近くに住んでいたので、かくれんぼをして遊んでいた思い出があるという。
子供心を持ち続けている点は、まるで横尾忠則のようだよね!

こんなにカッコ良い絵を描く80代のじーさん、大ファンになったよ!

大人社会科見学—大アマゾン展—

【大アマゾン展のチラシ】

SNAKEPIPE WROTE:

行ったことのない場所を知りたい、実際に目にしたことがない動植物を見てみたい欲求は誰にでもあるだろう。
こんなに小さな島国に住んでいるのにも関わらず、その全てを知ることすらままならないのだから。
地球規模で考えた場合、世界のほとんどが知らない場所と言っても過言ではないと思う。
そしてその中でも特に南アメリカ大陸にある、世界最大面積を誇るアマゾン熱帯雨林に魅力を感じるのもうなずける。
日本人の常識を覆すような未知の動植物がいるだろう、という予想をしてワクワクしてしまうからだ。

そんなアマゾンに焦点を当てた「大アマゾン展」に気付いたのはROCKHURRAHだった。
上野にある国立科学博物館で3月14日より開催されるという。
春休みの家族連れが一段落した頃を狙って行くことにする。
この手の展覧会が好きな友人Mにも声をかけると、やっぱり気になる様子。
前にも国立科学博物館で「グレート・ジャーニー展」を観たっけ。
「グレート・ジャーニー」とは、探検家・人類学者・外科医である関野吉晴氏が挑んだ、通算16年、人類拡散の足跡を辿る旅の記録のこと。
大人社会科見学—グレートジャーニー 人類の旅—」にまとめてるね!
この時と同じ怪しい3人組、またもや上野に集合である。

5年ぶりに4月に雪が降った関東地方。
その後、数日間も春が来たとは思えないような寒い日が続いていた。
怪しい3人組も全員革ジャン着用!
寒いね、と言いながら上野公園を歩き、国立科学博物館へと向かったのである。
日にちを選んだおかげで、それほどの混雑は感じられない。
入り口入ってすぐの場所から展示が始まっていた。

第1章 太古の南米大陸からアマゾン誕生まで

「大陸移動によって南米大陸が誕生した中生代白亜紀。
現在のアマゾンが誕生する前に生息した(中生代白亜紀~新生代の)動植物を、ブラジルのサンタナ層の化石をメインに紹介します」というのがこのチャプターの趣旨とのこと。
ここで一番気になったのは、翼を拡げた状態で体長5mという翼竜。
写真撮影OKだったので撮ってみたんだけど、よほど遠くから撮影しないと全体が把握できないほどの大きさだったんだよね。
写真上では少し切れちゃってるよ。(笑)
翼の途中に4本の指があるのが見える。
まるでコウモリみたいなんだよね!
こんな巨大コウモリが大空を舞っていたとは!
想像すると怖いけれど、ロマンも感じるなあ。

第2章 大河アマゾン 

「アマゾンには、約420種の哺乳類、3000種以上の魚類、約1800種の鳥類、約6万種の植物、昆虫は地球上の種の4分の1に相当する100万種以上が棲んでいるといわれています。
本章では、これらの多種多様な生物の宝庫であるアマゾンを紹介します」いきなり目に飛び込んできたのが、哺乳類の剥製!
説明にあるような420種類全てが網羅されているわけではないんだよね。

厳選された(?)哺乳類の中で、SNAKEPIPEが大注目したのはアルマジロ!
THE CLASHの「Rock the Casbah」の中でも登場していたのを思い出すよね!
あんまり近くで見たことがなかったから気にしていなかったけれど、甲冑で武装した姿に似合わない、かわいい顔!
調べてみたらペットとして飼うこともできるんだって?
急にお気に入りの動物になってしまったよ。(笑)

もう一つ気になったのがヤドクガエル!
かつて先住民が毒を抽出し吹き矢に塗って矢毒とし狩猟に用いたことが名前の由来となっているというヤドクガエル、前から名前は知っていたけれど実物を見るのはこれが初めて!
確か村上龍の「半島を出よ」の中でも、ヤドクガエルを飼育している人物がいたっけ。
毒性のある生物というと、色が毒々しく、いかにも凶暴な雰囲気を醸し出していることが多い印象があるよね。
ヤドクガエルについても同じように見事なカラーバリエーションを見せてくれるんだけど、びっくりするのがその体長!
いろんな種類がいるんだろうけど、今回目にしたのはほんの2cmほどの大きさだったんだよね!
毒々しいというよりは、むしろキュート!(笑)
ペットとして飼いたいとまでは言わないけれど、「猛毒の危険生物」のレッテルから「小さいのに頑張り屋さん」の印象に変化してしまった。
ROCKHURRAHもヤドクガエルのファンだったようで、ミュージアム・ショップにあったカプセル・トイの中にヤドクガエルを見つけて、本気でガチャガチャやろうと思ったらしい。(笑)
あまりに精巧にできていて、欲しくなったそうだ。
財布にでも入れておくつもりだったんだろうか?(笑)

他にもアナコンダやピラルクー、ピラニアやカンディルなど「いかにもアマゾン」な生物も紹介されていたね!
カンディルの生態はピラニアよりも恐ろしく感じたよ!

第3章 アマゾン先住民の装飾品

「アマゾンの先住民は日用品だけではなく、装飾品も森や川の自然の産品からつくります。
本章では祭事などで使用したコンゴウインコの羽を使った髪飾りや頭飾り、植物の実を使った楽器などを展示します」という説明のように様々なアクセサリーが展示してあったんだけど、この規模は明治大学博物館のほうが充実してたかも?というレベル。
チャプター分けするほどの規模ではなかったなあ。

続いての「アマゾン体感4Kシアター」は、アマゾンを1人称としてナレーションを付けた約13分間の映像だった。
「私はアマゾン、私の中には◯◯達がいます」
のような感じで、主人公がアマゾンなのね。(笑)
巨大スクリーンに映し出されるアマゾンの風景は確かに迫力あったけれど、会場内が非常に寒かったほうが気になってしまった。
あとで聞くとやはりROCKHURRAHも友人Mも寒かったという。
全員が揃って内容についてよりも空調に関して感想を述べ合うことになるとはね!(笑)

2階にもう一つ、水槽に入ったピラニアが鑑賞できる第2会場とミュージアム・ショップがあったけれど、全体としては
「これで終わり?」
というかなり小規模な展覧会だった。
「大アマゾン展」というよりは「小アマゾン展」というところか?(笑)
怪しい3人組、まだまだ知識欲が旺盛だったので常設展へと向かうことにする。
現在改修中のため全ては観られない「地球館」に行ってみた。

この常設展、ものすごく素晴らしい展示じゃないの!(笑)
写真は地球館3階の哺乳類の剥製なんだけど、こんなに多くの種類が並んでいるのを観たのは初めてかも。
友人Mは「パリの国立自然史博物館の造りを絶対マネしてる!」と言っていた。
友人Mはその博物館に実際行ってるからね。(笑)
本当に素晴らしい博物館だったらしいので、SNAKEPIPEも行って観たい場所なんだよね!
その博物館を参考にしているのか、証明の当て方や展示方法に工夫が感じられて楽しい時間を過ごすことができた。

ちなみに「地球館」だけでも
3F [大地を駆ける生命 / たんけん広場-発見の森]
2F [科学と技術の歩み]
1F [地球の多様な生き物たち]
B1F [地球環境の変動と生物の進化 -恐竜の謎を探る-]
B2F [地球環境の変動と生物の進化 -誕生と絶滅の不思議-]
B3F [宇宙・物質・法則]

というように全7フロアの展示会場があるんだよね。
前述したように改修工事中のためB1Fは完全閉鎖、「恐竜の謎」を知ることはできなかった。
人類の進化や頭蓋骨の変化なども解り易く展示されていて、じっくり鑑賞してしまった。
動植物だけにとどまらず、科学や宇宙にまで広がる展示が一つの建物の中で鑑賞できるのは素晴らしいことだよね。

全てのフロアの工事が完了したら、また行って鑑賞したいと思う。

ROCKHURRAH紋章学 重工業ロゴ編

【この手のインダストリアル画像は見ているだけでワクワクしちゃう】

SNAKEPIPE WROTE:

「ROCKHURRAH紋章学」は、レコード・レーベルやロゴ、会社のシンボルなどを特集する企画としてROCKHURRAHが発案したものだった。
ところがROCKHURRAHは第一回のみを担当、それ以降は本来の目的とは少し外れた特集記事をSNAKEPIPEが書いていた。
今回は本来、ROCKHURRAHが意図していた通りの、会社のロゴを取り上げてみたいと思う。
せっかく特集するのであれば、好きな分野の会社にしよう!
思いついたのがインダストリアル系の企業のロゴ。
重工業として括ってみようか。
きっとワクワクする秀逸なデザインに出会えるはず!

Beep Industriesという名前だから、てっきり工業系の会社なのかと思っていたのに!
調べてみると、どうやらアメリカのワシントンにあるゲーム会社みたい。
2000年に創業され、xbox向けのゲームを開発、2003年に発売されたvoodoo Vinceが有名だという。
ゲームはかつてROCKHURRAHの手伝い(?)をしたことがあるくらいで、あとは釣りかゴルフゲームくらいしかやっていないSNAKEPIPEは、全く知らないソフト名だよ。
このロゴは、工場で監督者が従業員をコキ使い、ムチを振り回しているように見える不思議なデザイン。
ゲームと何の関係があるのかは謎だけど、色使いと、珍しく縦長のフレームをしたロゴに惹かれてチョイスしてみたよ!
現在は社名もBeep Games, Inc.になっているようだけれど、工場と監督と従業員のロゴは健在!
余程気に入っているに違いない。(笑)

続いてはこちら!
The Structural Bolt Company, LLC.  はアメリカ合衆国ネブラスカ州にある鉄鋼業の会社だという。
鉄材を使用した会社ですよ、というロゴをボルトの側面から見せるセンス!
そして社名のBOLTのOをナットの形にしているところも素晴らしい!
インダストリアル好きのSNAKEPIPEがグッときたデザインだよ。
このロゴを見ただけで、この会社で働きたいと思う人続出だろうね!
更に会社のHPのバック画像の柄が、縞鋼板なんだよね。
ここまでのこだわりよう。
素晴らしいね!(笑)

こちらも鉄鋼系のロゴね!
Mendis metalはトルコの会社みたい。
HPを見てみたけれど、ページによっては作成されていないか、不具合があるようで詳しく調べることができなかった。
会社の場合は特にHP大事だと思うんだけどね?
HPの出来はイマイチだったけど、ロゴの完成度は高いと感じるよ。
淡いグリーン、グレー、黒というシンプルで洗練された色を使用し、歯車の部分を切り取り、 ぜんまい仕掛けが稼働しているかのように見える動きのあるデザイン!
かなりお洒落で、秀逸だと感じるね!

デザイン関係といえば、パッと思いつくのがドイツとロシア!
ドイツはバウハウス、ロシアには構成主義という歴史があるからね。
ドイツとロシアにはどんなロゴデザインがあるんだろう?
ROCKHURRAHが検索を手伝ってくれたよ!
まずはドイツからいってみようか。
左の画像はミトローパの社章だという。
ミトローパは中央ヨーロッパ寝台・食堂車株式会社と呼ばれるドイツの鉄道会社とのこと。
ミトローパ?
水戸の老婆じゃないんだよね?(笑)
ミトローパは1916年にドイツ帝国によって設立されたというから、かなりの歴史があるんだよね。
2006年に廃業、現在は民営化されたドイツ鉄道株式会社の傘下が運営しているらしい。
今回取り上げたロゴは、その廃業まで使用されていて、現在は使用されていないようだ。
いかにもドイツ帝国というデザイン!
シンプルだけど、飛ぶように速く走るよというメッセージが込められている力強さも感じるよね。
ところが「車輪の上に配された鷲は、ナチスが党のシンボルとして盛んに用いた『鷲を頂いたハーケンクロイツ』を思わせるため、鷲をアルファベットのMの字に置き換えるといった手直しがされた」とWikipediaに書いてあったよ。
辛い歴史があるから仕方ないと思うけど、秀逸なデザインが台無しになってしまうのは残念だよね!

では続いてはロシア。
ロシアといえばカラシニコフだよね!
えっ、一番初めに思いつくのはおかしい?
2014年の1月の記事「ビザール・ボトル選手権!13回戦」でもカラシニコフ型のボトルを紹介したことがあるSNAKEPIPEなので、ロシアと聞くと条件反射的にカラシニコフを連想しちゃうんだけどね。(笑)
今回はそのカラシニコフのロゴを紹介してみよう。
カラシニコフの代名詞と言えるAK-47の銃口を上にして、アルファベットのKを表現している。
銃の持つイメージとはかけ離れたブルーと赤と白のスッキリと爽やかな色使いには驚いてしまうね。
カラシニコフにスッキリ爽やか、なんて単語が出るなんて思わないもんね!

そう思った人が多かったせいではないと思うけど(笑) 、現在は左のロゴに変わっているみたいだね。
HPでも採用されていたので、現行タイプはこちら!
シンプルなフォントと、カラシニコフの特徴を非常に良くとらえて、アルファベットのKを表現しているよね!
そしてこの色使いはまさにロシア構成主義!
SNAKEPIPEは、爽やか系の以前のロゴより、こちらのほうが好き。
素晴らしいの一言に尽きますな!(笑)

多分探したらもっと色々な国の、素敵なロゴがありそうだよね。
また特集してみよう!

誰がCOVERやねん外伝

【音楽同様にごちゃまぜ感満載、マノ・ネグラのジャケット達】

ROCKHURRAH WROTE:

今まで同じシリーズ記事を立て続けに書いた事なかったんだが、今回は珍しく連続でこのシリーズを書いてみよう。
こないだは「あまりカヴァー・ヴァージョンが存在しない曲(またはアーティスト)」のカヴァーという難しいテーマに挑戦したけど、今回もその延長線となる。
カヴァー・ヴァージョンの曲をテキトーなコメントで紹介するだけという企画自体が安易なので、それくらいの努力はしてみよう。

前にもちょっとだけ書いたがウチでSNAKEPIPEと二人、毎週末に楽しみに観ていたのが海外TVドラマ「ブレイキング・バッド」だった。
アメリカではすでに2013年に放送終了してて、知ってる人から見れば「何を今さら」なドラマなんだが、ウチの場合は去年の後半から毎週末にだけDVDで楽しんでいた。

肺がんにかかってしまった高校の科学教師が、死ぬ前に家族に財産を残すために、教え子と二人でメタンフェタミンという覚せい剤を作り、麻薬の世界でのし上がってゆく、というのがごく簡単なあらすじだ。

科学のプロなもんだから大変に品質の高いメタンフェタミンを作る事が出来て、ブランド化された「ブルーメス」を巡っての複雑なドラマが展開する。
この設定が実にうまく生かされてて観ている者もどんどん深みにハマってゆく。
多くの人がこのドラマに魅せられて色んなところで感想とか書いてるから、SNAKEPIPEもブログ記事は書きにくいと言っていたな。結構な長さのあるドラマだけに本気で感想書いてたらすごく長文になってしまうしね。
感想文が苦手なROCKHURRAHも書けないけど、このドラマの最初の方のエンディング・テーマで2つの懐かしいものを見つけたので、今回はそれについて書きたかっただけ。

この曲の原曲はフランスで1990年代初期に大活躍したマノ・ネグラのもの。
人から勧められて見始めたドラマでいきなり自分の好きだったバンドの曲(カヴァーだが)がかかったのでビックリしてしまったよ。
マノ・ネグラはスペインからの移民、マヌー・チャオを中心にフランスで結成された多民族構成のバンドだ。

19世紀末にスペインのアンダルシア地方でLa Mano Negra(黒い手)というアナーキストの秘密結社があったそうだが、それがこのバンド名の由来となっているのだろうか。
黒手組というのはスペインに限らずセルビアにもあったそうだし、日本にも長州黒手組などというのも存在したらしい。
そう言えば江戸川乱歩の初期作品にも「黒手組」というのがあったな。
マヌーの両親が当時のスペインの独裁者、フランコから逃れるためにフランスに渡ったらしいが、脱出出来ずに捕まったり処刑されたりというやり切れない内容の映画をウチでは結構観ているな。
「ブラック・ブレッド」とか「デビルズ・バックボーン」「パンズ・ラビリンス」などもその手の印象的だった映画だ。いや、今回の話とは関係ないけど、あまりその手の事を語る機会がなかったからついでに書いてみただけ。

マノ・ネグラはパンク、ラテン、ロカビリー、スカ、レゲエ、ヒップホップ、フレンチ、ラスティックなど様々な要素を詰め込んだ音楽に英語、スペイン語、フランス語にアラビア語の歌が飛び交うという大変にエネルギッシュな音楽で元気に満ち溢れた世界。
元々が路上ライブの出身だけに、とにかく勢いとパワーに溢れたライブ・パフォーマンスは伝説となっている。

この曲はマノ・ネグラの1991年の3rdアルバム「King Of Bongo」に収録されているが、上に書いたような「エネルギッシュな音楽で元気に満ち溢れた世界」とは少し違う哀愁の曲。
イギー・ポップにおける「The Passenger」みたいなもんだろうか。
彼らの雑多なおもちゃ箱のようなアルバムには必ず郷愁あふれる曲なんかも収録されていて、見た目の力強さだけじゃない懐の深さも感じるんだよね。
しかし、サッカー好きなのはわかるけどマヌーのこのファッション・センスはひどすぎる。
とてもプロモに出る格好じゃないね。

そして「ブレイキング・バッド」の中で使われていたこの曲をカヴァーしたのがミック・ハーヴェイ、個人的には実に久しぶりにこの名前を発見してビックリしたわけだ。

1970年代末期にオーストラリアで活動していたボーイズ・ネクスト・ドアというバンドがあった。
このバンドは後で再評価されたもののリアルタイムではあまり知られてなかった。
しかし5人のメンバーがそのままバースデイ・パーティと改名、音楽性も大きく変えて、その後イギリスの4ADやMUTEレーベルで活躍して有名になった。

今ではどういうジャンル分けされてるかは知らないが、当時はジャンク系、カオス系というように呼ばれていたなあ。
原始的なズンドコしたドラムに地を這うようなベースライン、そしてヒステリックな歪んだギターにアグレッシブな部族の咆哮のようなヴォーカルが絡む、という重厚で計算出来ない展開の音楽が一部のファンの間でもてはやされた。
1980年代初期、世に言うポスト・パンクの時代、バースデイ・パーティはその中でも最重要のバンドのひとつだったのだ。

このバンドの中心人物はニック・ケイヴ(後のバッド・シーズ)なんだが、ボーイズ・ネクスト・ドアからバッド・シーズまで30年くらいもニック・ケイヴに付き合った盟友がこのミック・ハーヴェイだった。
ギター、ベース、ドラム、キーボード、ヴォーカルまでをこなすマルチ・ミュージシャンである彼は、どのバンドをやってた時でも音楽的な要(かなめ)だったに違いない。
がしかし、バースデイ・パーティの時は堕天使のような退廃的美形ギタリスト 、ローランド・ハワードがいたし、バッド・シーズにはノイバウテンのフロントマンだったド派手な半分人間、ブリクサがいたし、そもそも主人公のニック・ケイブが大変にワイルドな野蛮人のような風貌で、こういう中にいたミック・ハーヴェイにはこれといった外見上の特徴がない。
技術の割には「人を惹きつける華がない」タイプのアーティストだったんだよね。
その不遇なところも含めてROCKHURRAHは評価するよ。
バッド・シーズが渋谷のクアトロで公演した時も大迫力のカッコ良さだったしね。
ニック・ケイヴとブリクサとキッド・コンゴ・パワーズが。ん?ミック・ハーヴェイは・・・?

まあとにかく、時代によって少しずつ変わったりまた戻ってきたりしたROCKHURRAHの音楽遍歴が、偶然観たこのドラマによって不思議な邂逅をした瞬間がこの曲「Out Of Time Man」だった。
単にそれが言いたいだけで、ここまで長く書いてしまったよ。うーん、説明ヘタだなあ。

マノ・ネグラはそういう雑多な音楽性と民族性を飲み込んだバンドだったので、カヴァーするにしてもどうしてもラテン系への理解と情熱が必要。
色々と調べてみたが出てくるのはやっぱり似たような系統、編成のバンドが多かった。
たまたま見つけたメキシコのGallo Rojoというバンドもついでに載っけてみよう。

原曲は1988年発表、マノ・ネグラの1stアルバム「Patchanka」 に収録された曲だ。
この曲のヒットにより注目されてフランスのヴァージン・レーベルと契約したらしい。
ROCKHURRAHも最初に買ったのがこのアルバムだったな。
元々マヌー・チャオはホットパンツという恥ずかしい名前のロカビリー・バンドの出身で「Mala Vida」もそのバンドのレパートリーだったが、マノ・ネグラでも同じ曲をやってるわけだね。

大昔のサイレント映画のようなコミカルなPVだが、ちゃんと本人たちが演じてて役者も出来るんじゃない?というくらい完成度が高い映像。音楽以外の才能もなかなかのものだな。

で、それをカヴァーしたGallo Rojoなるバンド、あまり日本で知られてないメキシコ製のバンドだから実は書いてるROCKHURRAHも何もわかってない状態なのだ。
このビデオ見てもカッコ良さもパワーも全然ない素人っぽいバンドなんだが、アコーディオンやラッパが入ったちょっとテックスメックス+スカといった雰囲気なのかな?
他の曲のPVではピエロ風のメイクしたりドクロの被り物したり、やっぱり南米のテイストが出ていて、この辺がちょっと面白いと思っただけ。
メキシコのバンドと言えば勝手に背中から指先にまで彫られた全身刺青男たちによるコワモテ集団を想像してしまうが、このバンドにはそういう点が皆無で弱そうなところが持ち味だと見た。

軽く書くつもりだったのに今回はたった2つのカヴァーだけで時間切れとなってしまったよ。 だから正規のシリーズ記事とは別に外伝という扱いにしてみた。
次もまたシリーズは違ってもやってるパターンはみな同じという記事を書いてゆくのでうんざりしながら待っててね。