パンとサーカス展 鑑賞

20220515 top
【ミヅマアートギャラリー外のポスターを撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

だんだん日が伸びてきたので、仕事帰りのウォーキングを再開することにした。
道中には、会田誠が所属しているミヅマアートギャラリーがあるので、ふらりと立ち寄ってみることにする。
パンとサーカス展」と書いてあるけれど、一体何を展示してるんだろう。
 
以前訪れた時、予約なしの場合には名前と電話番号などの記載を求められたことを思い出した。
「予約していませんが、観られますか?」
と尋ねるSNAKEPIPEに、怪訝そうな受付の男性。 
いいですけど、のような返答だったように記憶している。
名前書くんでしたよね?と重ねて訊くと
「別にどっちでもいいですけど」
と、書きたいなら書けばといった投げやりな態度に驚いてしまう。
前回訪れた「インディゲリラ Cosmic Waltz」の時にいた、感じの良い受付の男性とは大違い!
ミヅマアートギャラリーで、こんな対応をする受付がいて大丈夫なんだろうか、と心配になるほどだよ。
せっかく来たので、一応鑑賞しておこう、と気を取り直す。
撮影許可ももらったので、記事にまとめてみよう。

そもそも「パンとサーカス」って何だろう。
帰宅後ミヅマアートギャラリーのサイトで確認してみる。

島田雅彦氏による新聞連載小説「パンとサーカス」の挿画を担当した6名の作家によるアーティストユニット「コントラ・ムンディ」。
その全382回に及ぶ挿画の原画、および小説の世界観に着想を得た新作を一堂に集め展示いたします。
(ミヅマアートギャラリーより) 

新聞小説の挿絵を展示しているってことね。
ROCKHURRAH RECORDSでは新聞も読まないし、島田雅彦の小説も全く知らないよ。(笑)
今回挿絵を担当した6名のアーティストについての知識も皆無。
何も情報がない「フラットな状態」で鑑賞するのも面白いかもね?

感じの悪い受付から一番最初に展示されていた作品群。
本来が挿絵だったためなのか、アーティスト名の表示がされていない。
そのため帰宅後に調べてはみたものの、はっきりしないんだよね。(笑)
恐らく水野里奈のブースで良いはずだよ。
全体に作品が小さめなので、上のほうに展示されているものは良く見えないのが残念。
色彩が美しくて、女性的な雰囲気なんだよね。
毒気が強い作品が好みのSNAKEPIPEには、少し物足りなかったかも。
そして画像のように、ポストカード大の大きさの作品が反り返ってしまっていたのは「わざと」だったのかなあ。

6名のアーティストが1冊の本の挿絵を担当するというのは、あまり例がないんじゃないかな?
それぞれタッチがあるから、散漫な印象を受けてしまう恐れがありそうだし。
続いての金子富之の作品群は、最初に書いた水野里奈と、かなり違うよね。
なんと言っても目を引くのは、中央の怖い絵!
そして強い赤色が目立つんだよね。
邪悪そうな鳥と、まるで亡霊のような人の顔。
黒くて大きなマントによって、善良さが失われ、悪を伝染させるべく右往左往している人の群れなのか。
また勝手にお話作ってみたけど、陳腐かなあ。(笑)

観た瞬間に「こういうのは苦手」と思ってしまった。 
ものすごくキレイに描けているし、写実的だし。
誰に似てるかというと、クリスチャン・ラッセンかな。
ラッセンは人気のある作家なので、恐らく岡本瑛里を好む人も多いはず。 
SNAKEPIPEの個人的な好みの問題だね。(笑)
複数枚展示されている中で気に入ったのがこれ。
臓物をなびかせながら(?)背中に張り付く老人。
モノクロームだから穏やかな絵に見えるのかもしれない。
今際にいるような老人を背負う全裸の青年との間には、どんな物語があるんだろう?

ちょっとブレた感じで、中間色が美しい作品群。
先にも書いたようにアーティスト名が分からなかったので、てっきり男性の作品だと思っていたのに!
調べてみると荻野夕奈という知的な美人だと判明してびっくり。 
情報なしで観ると面白いのは、こういう点かもしれないね。
6名の作品の中で、一番挿絵らしいと感じたよ。
作品を鑑賞すると、SNAKEPIPEの陳腐な物語ができそうだったからね。(笑)
壺を使った計画殺人の後の絵、というのはどうだろう。
血しぶきを浴びても大丈夫なように全裸になっていて、壺についた指紋を拭き取ろうとしているシーンとか?
「パンとサーカス」知らないので、勝手に作ってるだけだからね!(笑)

全て同じ大きさの作品が63枚並んでいたよ。
妖怪が描かれていたり、パロディ風の物もある。
くっきりした線で、とても見やすいよ。
山本竜基の作品は、挿絵というより一枚で完結しているように見える。
手前のおじさんが何者なのか不明だけど、夜空をバックに歌川国芳のドクロや魑魅魍魎が夜な夜な夢の中で暴れているようだよね。
筒井康隆原作のアニメ映画「パプリカ」に通じる世界観が面白い。
もっと大きな作品が観たいと思ったよ。

最後は3コマ漫画のような作品だった。
縦に3枚の絵が並んでいるので、便宜的にそのような言い方をしたけれど、実際には3つのコマに関連性はみられない。
もしかしたら小説の内容にはリンクしてたのかもしれないけどね?
 独特の雰囲気があるので、今まで観てきた5人より年長の男性が描いているものだと思っていたら!
なんと熊澤未来子という1983年生まれの女性の作品だったよ。(笑) 
あまり女性らしさを感じなかったので、勘違いする人は多いはず。
武蔵野美術大学の日本画を専攻していた経歴を持つのに、作品は鉛筆画というのも変わっている。
今回鑑賞した中で一番好みだったかもしれない。

予備知識がないまま鑑賞することはほとんどないので、珍しい経験だったよ。
作者の名前も帰宅後知ったので、持っていた感想と実際が違う意外性も楽しめたしね!
ミヅマアートギャラリーは面白い企画があるので、また訪れてみたいと思う。
今度の受付は感じが良い人であることを祈って。(笑) 

SF・冒険・レトロフューチャー 鑑賞

20220501 top
【昭和館の入り口にある看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2022年のお花見を千鳥ヶ淵公園に行った話は「Holidays In The 散歩 千鳥ヶ淵公園」として記事にしている。
その帰り道で見かけたのが昭和館のポスターだった。 
歩いている途中でROCKHURRAHが急に立ち止まったのだ。
「あれが気になる」
指を指した方向にあったのが「SF・冒険・レトロフューチャー×リメイク ~挿絵画家 椛島勝一と小松崎茂の世界」と書かれたポスターだった。 
5月まで開催していることを確認し、来館を予定する。
ROCKHURRAHから昭和館の話を持ち出されるまで、SNAKEPIPEはすっかり忘れてたんだけどね。(笑)
昭和の日を含む連休に、九段下に出かけることにしたのである。

ゴールデンウィークといえば、春を通り越して夏を感じる陽気が多いのに、今年は一体どうしたものか。
梅雨を思わせる雨の多さと湿度の高さだよね。
晴れた日を選んで出かけたけれど、風が強くて予想以上に寒い。
服装失敗したかも、と言いながら昭和館に向かう。
ここは九段下の駅から徒歩1分という素晴らしい立地なので、少し寒くても大丈夫だね!

昭和館に行くのは初めてのROCKHURRAH RECORDS。
ここは一体どんな場所なんだろう?

昭和館は、主に戦没者遺族をはじめとする国民が経験した戦中・戦後(昭和10年頃から昭和30年頃までをいいます)の国民生活上の労苦についての歴史的資料・情報を収集、保存、展示し、後世代の人々にその労苦を知る機会を提供する施設です。

靖国神社の遊就館と対を成すような館ということになるのかな。
常設展は有料で企画展は無料という、美術館などとは逆の料金形態も珍しい。
今回の目的であるレトロフューチャーは企画展なので、無料なんだよね!(笑)
早速中に入ってみよう。

入り口で来館者の名前と電話番号を書く。
常設展の鑑賞をする場合には自販機でチケットを購入し、それ以外の場合にはそのままエレベーターで目的のフロアに移動する。
係員の方が親切に案内してくれたので、迷わずに会場へ。
すべての撮影が禁止とは、非常に残念だけど仕方ないね。
中に入ると、予想以上に人が入っていて驚いたよ。
最初に展示されていたのは椛島勝一の作品だった。

1888年(明治21年)長崎県生まれの椛島勝一は、独学で細密画の技法を習得したという。
小さな画像で見ると、まるで写真と見紛うほどのスーパーリアリズムなんだよね!
載せたのは海野十三の小説「浮かぶ飛行島」の挿絵で、1938年の作品。
小説自体も面白そうなんだけど、この挿絵で更に臨場感がアップしただろうね。
船はもちろんのこと、波の表現にも驚いたよ。
「ペン画の神様」と呼ばれるのも納得!

山中峯太郎原作「亜細亜の曙」への挿絵。
1932年の作品で、小説は「少年倶楽部」に掲載されていたという。
大胆な構図で、空を表す空間の使い方が日本画的だなと感じるよ。
当時の少年たちは、小説も挿絵も、ずいぶん大人びた物を好んでいたんだね。
昭和初期に、一般庶民向けの高度な文化が日本にあったとは!
江戸時代にも読本と呼ばれる小説を庶民が読み、人気を博していたことを思い出せば、そこまで驚くことではないのかもしれない。
今の日本人が変わってしまっただけなのかな。

次は小松崎茂の作品が並んでいる。 
椛島勝一にあこがれて挿絵画家に転向したという小松崎茂は、元々日本画家を目指していたらしいよ。
作品を観て、ROCKHURRAHが嬉しそうにしている。
聞いてみると、少年マガジンなどの雑誌で小松崎茂の挿絵を観ていたこと、タミヤのプラモデルのパッケージでも馴染みのある画家だとか。
確かに小松崎茂の絵は、冒険に心をときめかせる少年の心をワクワクさせる要素が散りばめられているもんね!(笑)
載せた画像は、少年少女世界科学冒険全集の「深海冒険号」の表紙。
なんで「S」なんだろう、というSNAKEPIPEの問いに、
「深海のSだよ」
と自信満々で答えるROCKHURRAH。
本当に正解なんだろうか?(笑)

「ロケット競争の謎」の表紙は、1957年の作品。
商品のパッケージデザインでも同じことが言えるだろうけど、表紙を見て本を購入するかどうか判断するのは当たり前だよね。
奇想天外で早く続きが読みたくなるような、思わず本屋で手にとってしまうような表紙。
小松崎茂の作品を見ているだけで、気分が高揚してくる。
当時の少年少女と同じ気持ちになっていたのかも。
もう少女じゃないんだけどね。(笑)

椛島勝一と小松崎茂の作品は、どちらも素晴らしくて鑑賞できて良かったよ!
帰ろうとすると、出口には「アンケートに答えるとプレゼント」という文字が目に入る。
せっかくなので感謝の気持ちなどを書いて提出。
受付ではクリアファイルと缶バッチをプレゼントしてくれたよ!
ここまでしてもらって無料なんて感動的だよ。
昭和館、行かれて良かったなあ
思い出してくれてありがとう、ROCKHURRAH! (笑)
良い「昭和の日」記念になったね。 

OKETA COLLECTION: THE SIRIUS 鑑賞

20220424 top
【会場入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

月に一度は長年来の友人Mと約束をして、何かしらのイベントを計画している。
展覧会や映画の鑑賞など、その時に一番面白そうな企画をチョイスするのは、大抵の場合が友人M。
今回は国立新美術館で開催されている「ダミアン・ハースト 桜」にするか悩んだ末、青山のスパイラルに行くことに決定。
OKETA COLLECTION: THE SIRIUS」という展覧会だって。
OKETAさんって誰だろうね? 

調べてみると、漢字の表記では桶田さんで、ご夫婦で現代アートをコレクションしているんだとか。
旦那さんはアパレル企業のグループ会社社長だったらしいよ。
お金持ちなんだわ。(笑)
10年ほど前から、奥様と一緒にアート作品の収集を始めて、スパイラルでも過去に展覧会を開催してたみたいだね。
どんなコレクションなのか、楽しみ!

原宿や表参道近辺は、お店の開店時間が遅いんだよね。
大抵が11時オープンなので、その時間に合わせて友人Mと待ち合わせる。
スパイラルに行くのは、久しぶりのSNAKEPIPE。
数年ぶりのはずだけど、80年代に通った記憶が強いからね。(笑)
開店待ちの人が多いので不思議に思っていたら、「岡田准一 写真展『Guys 俺たち』」という看板を見つけて納得する。
皆様、こちらが目当てだったようで。
私達は違いますからっ、と友人Mと口走りながら館内に入る。
誰も聞いてないけど、なんとなくね。(笑)

桶田コレクション会場に入り、一番最初に目にしたのが井田幸昌の「Gang Star / Al Capone」だった。
タイトルを見なくても、作品だけで「1920年代のアメリカ」って分かるよ!
雰囲気がある作品で、とてもカッコ良い。
どうして2017年にアル・カポネなのかは謎だけど、他の作品も観たくなるアーティストだよ。

大山エンリコイサムの作品「FFIGURATI #240」。 
1983年、イタリア人の父と日本人の母との間に東京で生まれたというエンリコイサム。
名前は芸名じゃないみたいだね?
「エアロゾル・ライティングのヴィジュアルを再解釈したモティーフ『クイックターン・ストラクチャー』を起点にメディアを横断する表現を展開し、現代美術の領域で注目される」という説明が美術手帖にあったよ。 
この手の作品は難しいけれど、ひとまずアーティスト名だけは覚えておこうかな!(笑)

「この作品大好き!」と友人Mが声を上げる。
仲衿香の作品6点は、「landscape of the web #17」や「35.670008,139.706425」のようなタイトルがついている。
心情を表したり、意味を含ませていないんだね。
仲衿香が所属しているSH GALLERYの説明によると「断片的なロゴや自然風景、身近な日常生活の事物などを視覚的な要素として絵画空間に落とし込み、抽象的な意味を可視化させた図形を再構築している」んだとか。
一瞬だけふっと心によぎった何かしらの感覚を描いているようで、興味深いね。
地図を描いている作品では2019年2月に鑑賞した「ポーラ・シェア:Serious Play」を思い出したよ! 

インパクト抜群だったのが山口歴の作品群!
立体作品4点が広い空間に鎮座している。
近寄って観たいのに、ロープが張られていて、叶わないのが残念。
複雑なフォルムは、まるで衝動を形にしたような迫力で目が釘付け!
「これ、いいわあ!」
デヴィ夫人のマネをしてみるSNAKEPIPE。
両親共にファッション・デザイナーという家庭環境で育ったという山口歴。
アーティストになるのが当たり前という血筋とは羨ましいね。(笑)
今回の展示の中で、一番気に入ったよ!

川内理香子の「Make yourself at home」は2021年の作品。 
コロナの影響で家にいることが増えたことを意味しているようなタイトルだよね。
厚めに塗られた絵の具の上から、線で切り取るように描かれている手法が面白い。
絵の中に文字がないほうが良かったのでは?と思うのはSNAKEPIPEの好みかな。
繊細なように見えながら、ちょっと不気味なモチーフが隠れていたりして、じっくり観ていると印象が変わるところもポイントだね!

最後に紹介するのは、小畑多丘の「Untitled」。
下地に明るい色を塗り、その上から黒と白を塗り重ねたように見える。
色彩のバランスが美しいと思った作品だよ。
どうやら小畑多丘はブレイクダンサーであり、その経験を生かして躍動感などを表現に取り入れた作品作りをしているんだとか。
彫刻からキャリアをスタートさせているので、多彩なアーティストなんだね。

桶田コレクションは、日本人の若手アーティストの作品を鑑賞することができて楽しかった。
恐らく、どのアーティストも既に有名なんだろうけれど、SNAKEPIPEは初見だったからね。(笑)
良い刺激をもらい大満足の展覧会だったよ!

Chim↑Pom展:ハッピースプリング 鑑賞

20220327 top
【Chim↑Pom展入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

友人Mから「観に行きたい」と誘われたのは、森美術館で開催されている「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」だった。
森美術館は興味深い企画が多いので、できるだけ鑑賞するようにしているんだよね。
Chim↑Pomについては会田誠と何か関係がある人達、という程度の知識しかないSNAKEPIPE。
友人Mも殆ど知らないというので、行ってみることにした。

帰宅後調べたChim↑Pomの経歴について書いておこうかな。
まずは読み方から!
「チンポム」で良いみたいだけど、人前では言いづらいかもね?(笑) 

2005 東京で結成 
会田誠のサンフランシスコでの個展開催時に会場の一部で作品を展示し、アート界にデビュー
2008 被爆地である広島市の上空に、飛行機雲で「ピカッ」という文字を描いたことが問題となる
2010 河出書房新社より初作品集が出版 
「Asia Art Award」のファイナリストが発表され、日本代表に選出される
国際美術展サンパウロ・ビエンナーレに参加
2011 渋谷駅構内に設置されたパブリックアートである岡本太郎の壁画「明日の神話」へ絵を付け足したことが問題になる
2015 アーティストランスペース「Garter」を東京、高円寺にオープン
東京電力福島第一原子力発電所事故による帰還困難区域内で、封鎖が解除されるまで“観に行くことができない”国際展「Don’t Follow the Wind」の発案と立ち上げを行い、作家としても参加

年表でみる限りでは、かなりのお騒がせ集団みたいだよね。
森美術館の宣伝文句にも「日本で最もラディカルなアーティスト・コレクティブ」と書いてあるし。
どんな作品が並んでいるのか、早速会場に入ってみよう! 

入り口横に「くらいんぐみゅーじあむ」と書かれた壁がある。
どうやらこれは「子供がいるために美術館に来ることが困難な人」のために、美術館内に託児所を設ける企画らしい。
クラウドファンディングで寄付を募り、託児所を運営するというもの。
客入りが多いであろう、金土日の10時から15時まで開設するんだとか。
確かに子連れの方は周りに気を使うだろうし、周りのお客さんも静かな環境で鑑賞できたほうが良いはず。
「くらいんぐみゅーじあむ」がどんな感じだったのかは見に行かなかったので不明だけど、今後の美術館運営のヒントになるかもね。

会場に入ると、そこは鉄パイプなどが張り巡らされた異様な光景だった。
節電のためではないだろうけど、照明が落とされて暗い。
展示物があっても、作品タイトルなどは非常に見づらいよ。
そのためChim↑Pomの作品を初めて観るSNAKEPIPEにとっては、「?」な展示が並ぶことになる。
画像は崩壊したビルの模型なんだよね。
ここらへんの雰囲気は、2018年に鑑賞した会田誠の「GROUND NO PLAN」みたいだったよ。

会場で鑑賞していた時には、意味不明のまま撮影した画像がこれ。 
帰宅してから調べて、これは「酔いどれパンデミック」というパフォーマンスのワン・シーンだったことが分かった。
英国マンチェスターのヴィクトリア駅では、19世紀のコレラ流行時に感染・罹患して亡くなった人々が埋葬されたという。
そうした歴史を持つ地下の廃墟でオリジナルのビール「A Drop of Pandemic(パンデミックの一滴)」を醸造し、移動型公衆トイレを改装したパブで一般の人々に販売・提供するというパフォーマンス・アートだったみたい。
貧富の差や差別問題に焦点を当てた行為のようだけど、説明受けないとわからないなあ。

「ゴールド・エクスペリエンス」という展示の中での撮影だよ。
外から見ると、黒くて丸い物体なんだよね。
コロナの影響で順番に並び、連れ同士でしか内部には入れなかった。
一組終わると、その都度消毒してもらい、次の組が入れるようになっていたよ。
美術館の方も大変だよね。
友人Mと2人だけで丸い物体の中に入ると、足元は柔らかい厚手のクッションみたいな感じで、ゆらゆら揺れるの。
天井を見上げると、テントの中心から光が差しているように見えたよ。
普段はゴミを捨てる側の人間が、この作品では袋の中に入れられたゴミそのものになってしまうという設定の企画のようで。
Chim↑Pomの作品は難しいねえ。

「わっ、すごい」と声が出たのが夥しい数の千羽鶴を盛った「パビリオン」という作品。
平和の願いを込めた千羽鶴が毎年送られて、その保管に困っていたという広島市から借用して作品にしたという。
年表に広島の空に「ピカッ」という文字を書いて謝罪したとあるけれど、広島市とは友好な関係を築いているようだね。
こんもりと盛り上がった千羽鶴の内部に入れる構造になっていて、周囲を千羽鶴で囲まれる不思議な体験ができたよ。
これほど大量の平和への願いを目の当たりにするのは、念の集合体のように感じられて怖いくらいだった。
半透明の巨大なガラスに入った千羽鶴も展示されていて、人々の想念が流れ出ないように箱詰めしたように感じたよ。

Chim↑Pomにはエリィという紅一点が参加している。
そのエリィの結婚式を路上で行った時の様子を作品にしているらしい。
式自体が「LOVE IS OVER」というパフォーマンスだったようで、検索すると篠山紀信が撮影した画像などが出てくるよ。
デモ申請をして、新大久保から歌舞伎町までを警察官に見守れながら行進したという。
撮影した写真を等身大に引き伸ばし、一人一人切り抜いて展示したんだね。
これも調べてから分かった情報なので、会場では面白い展示としか分からなかったよ。

Chim↑Pomは自費でカンボジアを訪れ、地雷爆破と寄付を募るプロジェクトを行ったという。
その際、メンバーであるエリィに見立てた石膏像や私物を地雷で爆破し、日本に持ち帰ったのがこれ。
私物などの爆破された物をオークションにかけ、販売金210万円をカンボジアに寄付したんだとか。
アートとも慈善事業とも言える行為になりそうだよね。
森美術館の説明によれば、先進国と発展途上国との経済格差の問題や、美術と資本主義との密接な関係性について問いかけるもの、とのこと。
やっぱり難しいなあ。(笑)

 Chim↑Pomの作品はメッセージ性の強いパフォーマンス・アートというジャンルになるのかな。
発信を正確に受け取る必要があり、上述したように知識を持たないまま鑑賞しても理解できない場合が多くなってしまうかも。
今回の展覧会では、SNAKEPIPEは恐らく半分以下の理解しかできていなかったかもしれないよ。
以前より何度か書いているように、観た瞬間に「好き!」と感じるのがアート鑑賞の醍醐味だと思っているので、Chim↑Pomは得意なジャンルではないアートということになりそうだね。(笑)
ただ、そういう感想も鑑賞したから言えるので、行って良かった展覧会だったよ!