SNAKEPIPE MUSEUM #24 Jim Dine

【工具好きにはたまらないね!】

SNAKEPIPE WROTE:

過去のブログの中で何度か書いたことがあるけれど、SNAKEPIPEはピカピカ光るシルバー色が大好き!
千葉県民であるにもかかわらず、クリスマスで盛り上がるディズニーランドよりもホームセンターのほうが魅力的だと感じてしまう。
何故ならホームセンターには工具類が置いてあるから!(笑)
この「工具類好き」についてはかつて「インダスとリアル(意味不明)」なんてブログにしたこともあったっけ。
記事の中にスパナでオブジェを作り、トイレに飾っていた写真を載せている。
なかなか良い出来栄えに我ながら満足していたSNAKEPIPEだったけれど、なんと工具類をアートのモチーフとして採用していた大御所アーティストがいたとは知らなかった!

その大御所アーティストの名前はジム・ダイン
アート系に詳しい人じゃなくても左に載せたようなハートの絵は見たことあるんじゃないかな?
SNAKEPIPEもジム・ダインとはハートの人という認識しか持ってなかったんだよね。
ううっ。
ここでもまた発覚してしまったポップアートの知識のなさ!
今頃になってこんなに好みの作品を作っていることを知るとはね!

ジム・ダインは1935年オハイオ州生まれ。
ポップアートのアーティストともネオダダの運動家ともしても知られているらしい。
一番上に載せた画像「Tool Series」は1973年の制作とのこと。
どうやらジム・ダインはおじいさんの代から金物屋をやっていて、工具類には幼少の頃から親しんでいたらしい。
MoMAにもTATEにも「Tool Series」が所蔵されていて、非常に有名な作品だったと知ったよ。
SNAKEPIPEが全然知らなくてごめんなさい!
ジム・ダインは現在78歳。
でもまだまだ現役で活動しているみたいんなんだよね。

 上の作品は2008年制作の「With Aldo Behind Me」である。
1973年から35年を経てもまだ登場する工具類は、ジム・ダインにとって最も重要なモチーフの1つであり、自分の分身ともいうべき存在なんだろうね。
工具を愛する気持ちはSNAKEPIPEも同じ。
また工具使ったオブジェ作ろうかな。
もっとジム・ダインについて勉強しないとね。(笑)

映画の殿 第05号 キャリー

【嬉し泣きしているキャリーなのに、どうしても幸せそうには見えないね】

SNAKEPIPE WROTE:

映画のリメイクが流行っているようだ。
例えばジョン・ウォーターズ監督1988年の作品「ヘアスプレー」は2007年にリメイク版が公開されたよね。
大好きな作品だっただけに、オリジナルを超えるはずはあるまいと思いながらも、一応は鑑賞することにした。
結果は予想通り、オリジナルを踏襲することに懸命だったようで、オリジナル以上の出来栄えではなかったと思う。
どうしてオリジナル以上の作品を作ることができないのにも関わらずリメイク版を作るのか。
単なるネタ切れということなのかもしれないけれど、全く理解できない現象である。
そしてまたリメイク作品の情報が入ってきた。
なんと今度は「キャリー」だという。
先日ブライアン・デ・パルマ監督のオリジナル「キャリー」を鑑賞したばかり。
今回の「映画の殿」はオリジナル版の「キャリー」を特集してみたいと思う。
2013年版「キャリー」と比較する記事ではないのでよろしく!(笑)

「キャリー」はスティーヴン・キングの小説を原作とした、1976年のアメリカ映画である。
上述したように監督はブライアン・デ・パルマ。
SNAKEPIPEが一番初めに「キャリー」を観たのは、日曜洋画劇場などのテレビだったな。
まだ義務教育を受けていた年頃で、観た翌日にキャリーのモノマネをして遊んだ記憶がある。
子供の頃はいろんなモノマネやってたんだよね。(笑)
「ホラー映画好き」を公言しているROCKHURRAHは、当然のように今まで何度も「キャリー」を鑑賞している。
今回初めて2人でものすごく久しぶりに鑑賞することにしたのである。
映画の殿 第3号」で特集した「悪魔の追跡」も同じなんだけど、70年代の映画には独特の雰囲気があって、魅力的だからね!

 主人公のキャリーが左の写真である。
そばかすだらけの顔。
いつもうつむき気味で、内気な様子。
高校生という設定なのに、朗らかに友人と語らうこともなく一人でいる少女。
クラスの中で浮いてしまうのも納得してしまう。
演じていたシシー・スペイセクはハマリ役だったと思う。
怒りを爆発させた後の、目を剥いた顔はまるで別人で、本当に怖かったからね!
シシー・スペイセクが1973年に出演した「地獄の逃避行」も鑑賞してるんだけど、やっぱりこちらでも一人行動する女の子の役!
きっとそれがシシー・スペイセクの個性なんだろうね。
「地獄の逃避行」も全く古さを感じさせない映画で、いつか特集記事を書いてみたいと思っている。
余談だけど、シシー・スペイセクは1974年に映画美術監督のジャック・フィスクと結婚している。
このジャック・フィスクって名前はどこかで…。
そうだ!デヴィッド・リンチの昔からの友人で、確か「イレイザーヘッド」で 惑星を回す役でも出てたし、リンチの映画の美術も担当していた人だったはず!
うわー!こんなところでリンチにつながるとはびっくりんこ!
Wikipediaに載っているシシー・スペイセクの説明の中には、アンディ・ウォーホルの映画にも出演なんて書いてあるよ。
アート寄りの女優なんだろうね。
シシー・スペイセク、良いねー!(笑)

キャリーの母親は狂信的な信者である。
特に性に関して厳しく、キャリーという子供を授かったことに対して未だに後悔するほどの徹底ぶり。
狂信的な母親というと「サンタ・サングレ」を思い出すね。(笑)
過去の行いを懺悔するよう娘にも強要する、かなり複雑な心境の女性を演じていたのがパイパー・ローリー
おや?パイパー・ローリーにも見覚えがあるよ?
そうだ!「ツイン・ピークス」の製材所にいた、所長の妹だったよね!
またもやここでリンチにつながってしまったよ。(笑)

他の出演者で特筆するならば、若いジョン・トラボルタを観ることができる点かな。
「キャリー」はジョン・トラボルタの映画出演2作目だったようだけど、かなり重要な役どころを見事に演じていたね。
「キャリー」の翌年に「サタデーナイトフィーバー」で世界的に有名になったよね。

「キャリー」の中でトラボルタの恋人役でキャリーをいじめる同級生を演じていたナンシー・アレンが、いかにもアメリカンな70年代のイカした女の子という雰囲気で良い味出してたね。
ナンシー・アレンは監督のブライアン・デ・パルマと結婚したようだけど、数年で離婚しているみたいだね。
ロボコップ」 ではアン・ルイスという名前の巡査役で登場!
なんとこの「ロボコップ」もリメイク版が来年公開とのこと。
ぎゃーーーっ!(笑)

「キャリー」の中で印象的だったのは、キャリーが怒りを爆発させ、超能力を発揮しているシーンの見せ方。
今となってはよく見かける「画面を2分割して同時に起こっている出来事を知らせる」方式を採っているんだよね。
キャリーが目を見開き視線を動かすことで、物を動かしたり扉を閉めたりする右の画面と、それによってどんな被害があったかを示す左の画面といった具合である。
名付けるなら「before_after戦法」といった感じか。(笑)
1976年より以前にこの撮影方法を実施していた映画があったのかどうかは検証していないけれど、「キャリー」での効果は絶大だったと思う。
Wikipediaによれば「分割画面や、長回し、スローモーション、目線アングルなどを使用し凝った画作りはデ・パルマ・カットと呼ばれる」とのことなので、やっぱりデ・パルマ監督考案の見せ方なのかもしれないね?
ブライアン・デ・パルマ監督作品は何本か鑑賞しているけれど、大いに語れるほどではないので、もっと勉強してから発言しようかな。(笑)

37年も前に制作された「キャリー」は、2013年の現代でも十分通用する強烈なインパクトのある映画だと思う。
もちろん登場人物のファッションは70年代だし、車の型などは当時の物だから年代を感じるのは当たり前のこと。
CGなどで加工しなくてもこんなにすごい映像を作り出すことができるんだなと感心してしまう。
まだまだ未鑑賞の素敵な作品はたくさんあるはず。
故きを温ねて、新しきを知る映画の探索は続くよ!

ビザール・ハット選手権!11回戦

【80年代には帽子をおシャレにかぶるアーティストがいっぱいいたね!】

SNAKEPIPE WROTE:

帽子をかぶる習慣はいつからだっただろう。
それがいつだったのかを忘れてしまうほど、SNAKEPIPEのファッションと帽子は切り離せないアイテムになっている。
あらゆるデザインや様々なカラーの帽子を求めて、いくつもの帽子屋を巡ったものだ。
そのため一時期は100個以上の帽子を所持し、毎日取っ替え引っ替え気分を変えて楽しんでいたものである。
SNAKEPIPEにとっては帽子が第一優先であり、まずは帽子が最初で次にそれに似合う洋服選びをしていたため、一般的な考え方とは違うのかもしれない。
あまりにも帽子が好きで、オリジナリティを求めるあまり、ついには帽子の学校に通って自分のための帽子を作るまでになってしまった!(笑)
この当時の目標は帽子デザイナー。
「なれたらいいな」程度の、夢見るだけの密かな願望ね。
実現させるためには生半可な覚悟では無理だし、技術的な問題も含めて当然ながら向き不向きもあるし、まずはなんといっても売れ筋が作れないとダメなわけで。
そんな現実的な話は全く無視して「デザイナー」などと夢見ていただけだから、かわいいもんだよね。(笑)
今ではもうそんな大それたことを考えることはなくなったけれど、帽子はやっぱり大好き!
外出の度に必ずコーディネートしているのも相変わらずである。

ROCKHURRAHもトレードマークは帽子とサングラスで、必ず帽子を取り入れたファッションにするほどの帽子好きである。
どんな帽子をかぶっているのかは「帽子男世界一決定戦」に書いてあるね。
帽子に対する熱い情熱話はここらへんにして。
今回はそんな大好きな帽子の特集をしてみたい。
ちょっとやそっとのデザインでは驚かない、SNAKEPIPEの腰を抜かす程の帽子はあるのかな?(笑)
ビザールな逸品を探してみたよ!

 大きな口を開けて笑っている初老の女性が大きな帽子をかぶっている。
かなりドレスアップしているようだけど…えっ!
帽子の上に鎮座ましますのは、まさかと思うけどフラミンゴ!
しかもまさしくピンク・フラミンゴ!(笑)
ここまでド派手な鳥を身に着けているのを見るのは、「東村山音頭」の「1丁目」を歌っている時の志村けんの白鳥以来かも?(古過ぎ!)
ところがなんとこの女性は、お笑いでやっているのではなく、ケンタッキーダービーに来ていたお客さんであることが判明。
ケンタッキーダービーとはアメリカクラシック三冠の第1冠として、ケンタッキー州ルイビルにあるチャーチルダウンズ競馬場で行われるレースであるとのこと。
アメリカの数あるレースとしても最高峰のイベントで、知名度も高く観客動員数もかなりのものらしい。
この大会では女性が着飾ってレースを鑑賞するのがならわしとなっているようで、このフラミンゴ以外にも奇抜な帽子を発見することができたんだよね。(笑)
お笑いなのかおシャレなのか不明に感じてしまうような境界ファッションを公式行事で容認する文化があるというのは、羨ましいね!

「あなたと私が夢の国〜
森の小さな教会で結婚式をあげました〜」
ん?チェリッシュの「てんとう虫のサンバ」じゃない?
どうしてこの歌が急に出てきたのかしら?
写真では小さくて判り辛いかもしれないけど、右の写真に「てんとう虫」がいるからなんだよね!(笑)
この女性も上のフラミンゴ・レディと同じくケンタッキーダービーの観客なのよ。
赤いドレスに合わせて、赤と黒の色使いのかぶりものをかぶっているんだけど、これってチューブだよね。(笑)
頭の部分にどうやって装着されているのかは不明なんだけど、良い家柄のレディ達が、こんなに奇天烈な帽子や「かぶりもの」を競うように身に付ける習慣があるなんて素晴らしいよね!
こういう帽子を依頼される帽子デザイナーは楽しいだろうなー!
「このドレスに合った、とにかく奇抜で誰も持ってないものをお願いね!」
なんて言われたら、ワクワクするだろうね。(笑)

続いては帽子デザイナーの登場ね!
上述した帽子を買い漁っていた頃に大好きだったイギリスの帽子デザイナー、スティーブン・ジョーンズが友人のためにデザインしたというのが左のモヒカンタイプの帽子。
正面に人形までくっついちゃって、インパクト大!
この帽子があったら、いつでもモヒカン女に早変わりできる逸品だね!(笑)
これ、欲しいなあ!
それにしても、このモヒカンも帽子と呼ぶのかしら?
調べてみると帽子の定義が「頭にかぶるもの」であるとのこと。
そうしたら例えばカチューシャや髪飾りなど頭に着けるものも広い意味では帽子の範疇になるのかな?
皇室の方などが使われるようなトーク帽やカクテルハットなども、帽子とヘアアクセサリーの中間みたいだしね。
今までよく考えないで使っていた言葉を深く考えるのも興味深いことだよね!

続いてもデザイナーの作品ね。
House of Architectsがデザインしたのが立体を組み合わせた帽子!
これも上のスティーブン・ジョーンズと同じで、ヘアアクセサリーといっても良い、乗っけるタイプね。 (笑)
高さもあるし、横にもはみ出しているので、外を歩く時には注意が必要だろうね!
何を素材としていて、重量がどれくらいなのかは調べてみたけれど出てこなかった。
そもそもこのデザイナーについての情報がないんだよね。残念!

最後はお笑い系で締めてみようか!(笑)
Costumes of Nashua で扱っているカニ帽子!
$6.99、日本円で約700円で販売されてる商品なんだけど、 SNAKEPIPEが注目したのはカニ帽子よりもマネキンの顔なんだよね。(笑)
ちょっとうつろで、やる気がなさそうな表情なのに、こんなカニ帽子をかぶっているアンバランスさに惹かれてしまう!
「なんでアタシがこんな格好して写真撮られなきゃいけないの」
なんて考えてるように想像しちゃうよ。(笑)
これはマサチューセッツ州にある、レンタルもやってるコスプレ屋さんで、他の商品の紹介の時にはちゃんとそれっぽく見えるモデルさんが着用してる写真が載ってるんだよね。
何故だかこのカニ帽子の時にはうつろなマネキン。(笑)
モデルさん達もかぶりたくなかったのかもしれないね?
それにしても、このカニ帽子、誰がどんな目的で使用するんだろうね?

ビザール・ハット特集は、帽子好きのSNAKEPIPEが「これは!」と思った逸品を選んで紹介してみたよ。
中にはハットのジャンルではないタイプもあったけど、まあいいか。
個性的で、かぶっていても人とかぶらない(プッ!)、あっと目を引くこと間違いなしの派手な帽子は他にもたくさんあったので、また機会があったら特集してみたいと思う。
もしかしたら検索しているSNAKEPIPEが一番楽しんでる企画なのかもしれないけど?(笑)

CULT映画ア・ラ・カルト!【15】「一寸法師」「陰獣」

【タランティーノもびっくり!赤い妖艶な世界】

SNAKEPIPE WROTE:

物心ついた頃から好きだったのは、何故だかエロ・グロ・ナンセンスに分類されてしまうような怪しげな世界である。
日本の小説でお気に入りだったのは、江戸川乱歩と夢野久作。
もしかしたら「好き」と公言するのをためらってしまう人もいるだろうね。
乱暴に言ってしまえば「変態好き」を認めてしまうことになりかねないからだ。
SNAKEPIPEはブログでお気に入りの映画やアーティストを紹介しているけれど、やっぱり「ちょっと変」で「あやしげ」な世界観が多いのは自認しているし、恥ずかしいとは思っていない。
「江戸川乱歩最高!」などと大きな声で言うし、賛同してくれるROCKHURRAHや友人と同じ世界観を分かち合うことを喜びとしている。
ROCKHURRAHは昔の探偵小説の大ファンで、乱歩も当然のごとくほとんどの作品を読破しているからね!

最近はずっとスペイン映画の鑑賞を続けていたけれど、たまには初心に帰って(?)日本のカルト映画を観ることにした。
江戸川乱歩の小説が昭和の時代に映画化されていることを教えてくれたのはROCKHURRAHだった。

江戸川乱歩の一寸法師」というタイトルで、「一寸法師」が原作の映画ね。
原作は大正15年から昭和2年まで朝日新聞に連載された新聞小説だったとのこと。
「パノラマ島奇譚」と同じ頃の作品らしいね。映画版は1955年の作品で、モノクロである。
主人公である小林を演じているのは宇津井健
小林という役名だけど、「少年探偵団」の小林少年とは別物だからね!(笑)
とても役者とは思えないほど地味な風貌に加え、ボソボソした声でセリフは棒読み!
素人の演劇クラブみたいな演技で驚いてしまう。
どうして主役になれたのか不思議に思ってしまうのはSNAKEPIPEだけじゃないと思うよ。(笑)
その小林がたまたま遭遇した交通事故現場で、不思議な子供に遭遇するところから映画は始まるのである。

子供だと思っていたのは実は小人。
その小人を追いかけているところで、学生時代の友人である百合枝とばったり再会し、百合枝から相談を持ちかけられるのである。
百合枝は実業家である山野大五郎の後妻になっていて、先妻の子である三千子の継母という設定。
その三千子が家出をしたという。

百合枝を演じていたのは三浦光子という女優。
SNAKEPIPEは昔の邦画をほとんど知らないので、この女優は全然知らないけれど、 Wikipediaには出演した数多くの映画の情報が載っていて、有名な女優だと知ったよ。
1954年に制作された「悪魔が来たりて笛を吹く」にも出演していたみたいだから、横溝正史とも縁があったのね!
残念ながらこの作品は未鑑賞なんだよね。
いつか観てみたいな!
確かに美人で、苦悩する人妻といういかにも乱歩が好きそうな役どころを見事に演じていたと思う。
「江戸川乱歩の一寸法師」の中で、ちゃんと演技ができていたのはもしかしたらこの女優だけだったかもしれないね。(笑)

そんな百合枝に小人は一目惚れしていたのだった。
長い間思いを寄せながら、心を打ち明けることができなかった小人は奇策を考え、百合枝の前に姿を現し告白する。
「一寸法師」はミステリーのジャンルになる小説なんだろうけど、乱歩が最も表現したかったのはこの告白のシーンじゃないかな、と推測する。
役者ではない本物の小人が出演し、更に変装をして喋っているせいで、セリフが聞き取り辛いんだけど、それだけに何故だか真に迫っているように見えてしまう。
具足を使い平均的な男性の身長に変装したり、軽業でひょいひょい高いところに登ったりするのは、本当に乱歩の世界そのもの!
この時代だからこそできた配役なのかもしれないね。

時代という点では、町並みやエキストラの人々のファッションなどもさすがに現代では再現できない乱歩風の世界が広がっていた。
特に寺と民家がつながっているような、乱歩らしいトリックが見事に映像化されていたのは嬉しかった。
手や足が天井からぶらさがっている人形店の店内も「いかにも」な雰囲気でニヤリとしてしまったよ。

ニヤリといえば、ほんのチョイ役で登場しているのが天知茂
なんと探偵の助手という役どころなんだよね。
明智先生!
先生が事件を解決したほうが良かったんじゃないでしょうか?(笑)
もう一人、丹波哲郎も脇役で出演しているのも見逃せないね。
ほとんどセリフのない役だったけれど、存在感は抜群。
若かった頃の役者の顔を発見するのも、昔の映画を鑑賞する醍醐味の1つだよね!

もう1本鑑賞した作品は「陰獣」。
「江戸川乱歩の一寸法師」より約20年後の1977年制作なので、今回はカラーである。
主役は探偵小説家の寒川光一郎。
演じていたのはあおい輝彦である。
あおい輝彦といえば、一番初めに思いつくのは「犬神家の一族」での犬神佐清!
「犬神家の一族」は1976年で「陰獣」は1977年だから横溝正史作品、江戸川乱歩作品と2年連続出演とは、すごいぞ輝彦!(笑)
寒川役も好演していたよ。
探偵小説家が本当に謎解きに駆り出され、まさかあんなことに巻き込まれるとはね!(笑)

まるで寒川を付け狙っているかのように、寒川と複数回遭遇する小山田静子。
夫は実業家の小山田六郎って「一寸法師」の時の設定と同じじゃない?(笑)
更に寒川に相談を持ちかけるところまで「一寸法師」と同じなんだよね。
ま、苦悩する美人妻っていうが乱歩のお気に入りだから良しとしようよ!

「陰獣」での一番のポイントは変装にあると思っている。
未だに変装と聞けば、頭に浮かぶのは「陰獣」の中での変装のこと。
映画を観る前から
「あの変装シーンは映像化してくれるだろうか」
という変な心配をしていたSNAKEPIPEだったけれど、そんな心配は全く無用だった。
キチンと順序立てて変装シーンを見せてくれたのである。
ではその画像を一挙公開!(笑)

髪を丸髷にした後、前歯に金歯を差す。

メガネをかける。

頬に含み綿を入れる。

膏薬を貼る。

なんと不思議なことに、美人妻の小山田静子がおばちゃんみたいな別人になっちゃったよ!(笑)
「丸髷、金歯、含み綿、膏薬」が女の変装バージョン、「白髪、黒メガネ(もしくは眼帯)、杖」 が男の変装バージョンというのがROCKHURRAH RECORDSでの常識だよ。(笑)
小山田静子を演じた香山美子 は、2面性を持つ静子を非常に良く演じていたと思う。
乱歩が生きていたら喜んだんじゃないかな?(笑)

「陰獣」は他にもチョイ役で大物俳優がたくさん登場しているので、どのシーンで誰が出ているかを探すだけでも面白いんだよね。
原作に忠実で、良い役者が揃っている傑作だと思う。
江戸川乱歩ファンにお勧めだね!

「陰獣」は昭和3年(1928年)に3回に分けて連載された小説で、当時も大人気だったとWikipediaに載っている。
85年を経過した現代でも、全然古さを感じさせない小説だよね。
さすが、乱歩!
やっぱり江戸川乱歩、大好きだ!(笑)