CULT映画ア・ラ・カルト!【14】Santa Sangre

【サンタ・サングレのポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

CULT映画ア・ラ・カルト!」で特集してきたアレハンドロ・ホドロフスキー監督の3部作も今回でついに最終回を迎えることになった。
ホドロフスキー監督が「初めて商業映画を意識して制作した」という「サンタ・サングレ」である。
「サンタ・サングレ」(原題:Santa Sangre)は1989年制作のイタリア・メキシコ合作映画で、前作「ホーリー・マウンテン」から16年の時を経て完成した映画である。
その間に「Tusk」という映画を撮っているけれど、ホドロフスキー監督が自らの作品として認めているのは「CULT映画ア・ラ・カルト!」で特集している3本らしいので、この言い方で良いと思っている。
では早速「サンタ・サングレ」についてまとめてみようか。
※鑑賞していない方はネタバレしてますので、ご注意下さい。

物語は主人公フェニックスの少年時代と青年時代の2部構成になっている。
まずは少年時代について記述しよう。

フェニックスはグリンゴ・サーカスという名前のサーカスを率いる両親の元に生まれ育つ。
フェニックス自身も「小さな魔術師」というニックネームを持ち、マジシャンとして活躍している。
感受性豊かな優しい性格のため、泣いているシーンが多い。
そのため父親から「男にしてやる」という名目で、胸にその名の通りのフェニックス(不死鳥)の刺青をされる。
このシーンは父親がナイフの先で傷を付けることで刺青を仕上げていたため、フェニックスの胸は血だらけ!
本当に痛そうに泣き叫んでいたので、SNAKEPIPEも自分の胸をさすってしまったほど!

フェニックスの父親、オルゴはアメリカ人。
前述したようにグリンゴ・サーカスの団長である。
どうしてアメリカに帰らずメキシコにいるのかは「アメリカで女を殺したせい」と噂されるような暴力的な人物である。
酒飲みで女好き、といういわゆるだらしのない男なのに、団長なのが不思議だよね?(笑)
かなりの太っちょだけれど、スパンコールギラギラの衣装を着け、同じくスパンコールのカウボーイハットまでかぶっている。
そしてフェニックスに施したのと全く同じ刺青を胸に入れている。

フェニックスの母親、コンチャ。
「テラノ兄弟に両腕を切断され、強姦された挙句血の海に置き去りにされた少女リリオ」を聖女として祀る宗教団体の熱狂的な信者である。
その狂信ぶりはイカれてる雰囲気さえ漂う。
目がすごいんだよね!
そして聖女として祀られている少女リリオの像もかなり怖い!
何故だか髪をおさげにして、セーラー服着てるの!
メキシコにも似た制服あるのかしら?

コンチャもサーカスの一員として、髪の毛を使った空中吊りで演技をする。
コンチャはヒステリーで非常に嫉妬深い妻だ。
夫であるオルゴが他の女と一緒にいるとナイフをかざして脅しをかける。
演目の途中であっても激しい嫉妬心を抑えることはできず、夫と女を追いかけてしまうほど。

サーカス団に全身刺青の女が新しく加わることになる。
肉体美をアピールするのがこの女の得意な芸当。
その他に玉乗りするとか空中ブランコやるとか、そういう芸は持っていないみたい。
そのためなのか、団長であるオルゴを得意の肉体攻撃で魅了しようとする。
オルゴの芸はナイフ投げ。
全身刺青女を的の前に立たせ、ナイフを投げていく。
まるでそれが性行為の代替であるかのように、刺青女はナイフが1本、また1本と投げられる度に身をよじるのである。

全身刺青女が一緒に連れてきたアルマという少女も、サーカス団で火縄を渡る芸の特訓中である。
アルマは聾唖者で口をきくことができない。
恐らくそのため両親から見捨てられ、全身刺青女の手に渡ったものと思われる。
サーカスと聞くとちょっと物悲しく感傷的な気分になってしまうのは、こういう事情がたまに透けて見えるからだろう。
全身刺青女からイジメられても、アルマは強く清らかな精神のままサーカス団に溶け込んでいる。
そしてそんなアルマに心惹かれているのがフェニックスだ。

ついに団長と全身刺青女は一線を越えようとする。
その2人の後を追ったコンチャは嫉妬と怒りで気も狂わんばかり。
硫酸を手に2人のいる場所に向かうと、夫オルゴの局部に硫酸を降りかけるのである。
怒ったオルゴはコンチャをナイフ投げの的へ連れて行き、その場で両腕を切断する。
あのナイフがそんなに切れ味良かったとは!
その姿はコンチャが狂信していた聖女リリオそのものだ。
そしてオルゴは最後にグリンゴ・サーカスを目に収めた後、首を切って自害するのである。
全裸で局部を抑えながら少し歩いた後自害するシーンは「エル・トポ」の中にも登場したね。
その様子を泣き叫びながら見ていたフェニックス。
フェニックスはコンチャにトレイラーに閉じ込められていたせいで、行動できなかったのだ。
全身刺青女はアルマを連れて車で逃走してしまう。
車の後ろの窓から悲しそうにフェニックスを見つめるアルマ。
ここまでで少年時代のお話終了!
こんな惨劇が目の前で繰り広げられてしまったら、少年はどうなってしまうんだろうね?

青年になったフェニックスは障害者施設にいた。
言葉を喋らず、胸の刺青のように自分を鳥だと思っているらしい。
人間用の食事には見向きもせず、生の魚を見ると奇声を発し、ガツガツとむさぼるように食べ始める。
このシーン、どうみても本当に生のまま食べてるように見えるんだよね!
役のためとはいえ、大変だっただろうねえ。

ある日フェニックスは障害者達と共に映画「ロビンソン・クルーソー」を観に外出することになる。
そこに客引きの男が現れ、映画より楽しいことをしよう、と障害者達を誘う。
コカインを吸わされ、障害者達が連れて行かれたのは相撲取り並の体格の年配娼婦の前だった。
5人の障害者まとめて全員で20ドルという娼婦に、俺の取り分は15ドルだと主張して交渉成立。
アコギな商売してるよね、客引きの男!
この客引きの男の名前がテオ・ホドロフスキーなんだよね。
監督との血縁関係については不明!(笑)
他の4人は娼婦に連れられて行き、フェニックスは仲間に加わらず町をさまよう。
通りは客を待っている娼婦たちであふれている。
フェニックスがふと目をやった先に、先程の客引きと陽気にサンパを踊る女がいる。
なんとその女はグリンゴ・サーカスにいた全身刺青女だった。

全身刺青女はグリンゴ・サーカスの時もそうだったように、その肉体とお色気だけをウリにしているので、サーカス団から逃げた後は娼婦になっていたようだ。
律儀にも(?)あの聾唖者のアルマの面倒もみているようで、同居している。
2人の軍人を客に取り、そのうちの一人をアルマに相手させようとする。
この軍人、恐らく巨人症だと思われる。
その巨人相手に格闘し、窓から逃げて難を逃れたアルマ。
なんとか夜露がしのげる場所を確保し、朝にようやく家に帰る。
そこで全身刺青女の亡骸を発見するのだった。
全身刺青女の殺害シーンはまるでアルフレッド・ヒッチコック監督の「サイコ」を思わせる演出がされている。
カーテンごしにナイフで上から下へと斬りつけるのである。
殺人者の姿は見えず、ただ赤いマニキュアをした女の手だけがヒントである。
一人ぼっちになってしまったアルマの心の拠り所は、グリンゴ・サーカスで生き別れたフェニックスだった。

映画「ロビンソン・クルーソー」の翌日、フェニックスは両腕のないコンチャの呼びかけに応じて、障害者用施設を抜け出す。
そしてコンチャと一緒に「コンチャと魔法の手」という演目を劇場で披露している。
これはフェニックスがコンチャの手の代わりに、二人羽織状態で後ろから動きを付けている出し物である。
フェニックスの爪には赤いマニキュアが塗られている。
本物の女性の指のようなきめ細やかな動きに感心してしまうね!
二人羽織は演目だけではなく、家の中でもコンチャの手の代わりを務めるのである。

この劇場の他の演目に「制服の処女ルビー」というストリップショーがあるんだけど、このルビーちゃんがすごいインパクト!
メキシコ人は、もしかしたら老けて見えるのかもしれないけど、どうみてもルビーちゃんは40代に思えるよ!
黒板と机を配置した教室を演出したステージに、セーラー服に髪をおさげにして登場!
まずはこのアンバランスさがなんとも言えずシュールな感じがする。
ちょっと昭和レトロな雰囲気もあるよね?(笑)
コンチャが崇拝し、聖女リリオとして祀っていたのもセーラー服とおさげ髪だったので、ホドロフスキー監督は余程気に入っていたに違いない。(笑)
観客のおじさん達もやんややんやの大歓声で、ルビーちゃん大人気だし!
このストリッパー、ルビーちゃんから「あたしと組まない?」と誘いを受けるフェニックス。
いつの間にか父親譲りのナイフ投げの技を身に付けているフェニックスは、ルビーちゃんをナイフ投げの的の前に立たせるのだった。
この時フェニックスの脳裏をよぎるのは、かつて父親の前で身をくねらせて的の前に立っていた全身刺青女。
強烈な記憶は今でも色鮮やかにフェニックスに影響を及ぼしているようだ。
そこにやってきた母親、コンチャ。
父親にしていたのと同じように、フェニックスが自分以外の女と接触していると、強い反発心と嫉妬心で怒りに打ち震えるのだ。
「その女を殺しなさいっ!」
そうコンチャから命令されると、自分の意志とは関係なくコンチャの指示通りに手が動いてしまう。
ルビーちゃんの腹部めがけてナイフを投げてしまうフェニックス。
コンチャの命令は絶対である。
逆らうことなんてできないんだ。

ルビーちゃんの死体を自宅に運び、庭に埋める。

今までにも大勢の女性を手にかけ、同じように庭に埋めてきたんだろう。
大勢の埋められていた女性たちが花嫁のベールをかぶり、ワラワラと土から出てくるシーンがある。
ここだけ見ているとまるでホラー映画のようで、かなり不気味だった。
タイトルつけるなら「brides of the living dead」って感じか?(笑)
不気味といえば、フェニックスが自宅に招いた史上最強の女子プロレスラーは、どこからみても男性にしか見えないんだよね!(笑)
上の写真がその女子プロレスラーなんだけど、身長の高さ、体つきのゴツさ、顎のラインなど全てが男!
コンチャと力の強い彼女(?)を対決させようと企てていたようだ。
それなのに、なんとも残念なことにコンチャの命令のほうが勝っていたんだねえ。
「彼女を殺すのよ!」
コンチャ、本気で女だと思ってたのかなあ?(笑)

「コンチャと魔法の手」を上演している劇場を手掛かりに、アルマはフェニックスの住所を探し出す。
家の中の様子から、恐らく全ての察しがついたんだろう。
フェニックスの目を開かせ、真実と向き合わせようとする。
全ての真実を受け入れたフェニックスは、やっと本来の自分自身と自分の手を取り戻すことができるのだった。

急に最後の部分だけかなりぼやかして書いてみたよ。
そこが核心に触れる部分なので、ネタバレし過ぎはヤボかな、と。(笑)
母親に支配される息子の主題は、前述したヒッチコック監督の「サイコ」でお馴染みだと思う。
ただしホドロフスキー監督はメキシコで実際に起きた連続殺人事件を元にこの映画の構想を練ったらしい。
20人以上の女性を殺し、自宅の庭に埋めていたホルヘ・カルドナという犯人にも直接インタビューまでしていたというから驚きだよね!
そのホルヘ・カルドナが母親からの支配を受けていたのかどうか、その事件そのものについての調べがつかなかったのではっきりしたことは不明。
構想から7年の月日が経ってからの映画化ということだから、どうしても撮りたかった作品なんだね。

冒頭に書いた「商業映画を意識した作品」という意味については、
・ストーリー展開がはっきりしていたこと
・他2作に比べるとグロいシーンが少なかったこと
・ラテン音楽の多用とダンスのシーンなどから陽気な雰囲気を感じたこと
という3つがパッと思いついたことかな。
いかにもホドロフスキー監督らしい、と思える演出のほうがはるかに多かったので、「エル・トポ」と「ホーリー・マウンテン」に比べてみれば、という前置きが必要かもしれない。

「サンタ・サングレ」を英語に訳した「ホーリー・ブラッド」と叫んでいたのが少女リリオを祀っていた教会でのコンチャだった。
少女が流した血は聖なる血だ、というのだ。
根拠は不明だけどね!
両腕を切断された、で思い出すのがデビッド・リンチの娘であるジェニファー・リンチの処女作「ボクシング・ヘレナ」(原題:Boxing Helena 1993年)である。
この映画は主演女優の降板騒ぎや、最低映画賞といわれるラジー賞を獲ったという悪評で有名な映画になってしまっている。
最終的に主役に収まったのは、「ツイン・ピークス」でオードリー役を演じていたシェリリン・フェン
少女リリオのように両腕のみならず、両足までも切断され椅子に腰掛けているのが、左の写真。
元々自分勝手で奔放な性格という設定だったせいもあり、とても聖女とは呼べないタカビー(死語)な女性だったよ。
改めて鑑賞しなおしてみたけど、ラジー賞に納得してしまったSNAKEPIPE。
エロと猟奇と狂気が中途半端なんだよね。
どうせやるならどれか一つを突出させても良かった気がする残念な作品だった。
「サンタ・サングレ」と同じジャンルに分類されるオチの付け方なのに、「ボクシング・ヘレナ」には非難の言葉が多いのも中途半端さが原因かな、と思われる。

ホドロフスキー監督についてもう少し調べてみよう。
「サンタ・サングレ」で演じられた少年時代と青年時代のフェニックスは2人共、ホドロフスキーの実の息子!
ん?ここで疑問が。
一体ホドロフスキー監督には何人の息子がいるんだろうね?(笑)

「エル・トポ」に出ていた、あの裸の少年。
ブロンティス・ホドロフスキーは1962年メキシコ生まれの長男。
wikipediaのページがフランス語なので、はっきりしたことは不明だけど、どうやら俳優や演出家をやっている模様。
ホドロフスキー監督の最新作「リアリティのダンス」ではアレハンドロ・ホドロフスキーの父親役、つまりブロンティスからみるとおじいちゃんを演じているらしい。
自伝的小説「リアリティのダンス」に中にブロンティスに関する記述がある。
どうやらブロンティスは6歳まで母親とアフリカにいたらしい。
そしてその後フランスにいるアレハンドロ・ホドロフスキーの元に来たというのだ。
そのため6歳までは父親不在の生活を送っていたとのこと。
「エル・トポ」は1970年の制作なので、ブロンティスは父親の元に行ったばかりで撮影してたんだね!
「ホーリー・マウンテン」にも「サンタ・サングレ」にも出演していたようだけど、どの役だったのかは不明。

アクセル・ホドロフスキーは「サンタ・サングレ」の中でフェニックスの青年時代を演じた。
映画に関する記述ではアクセルだけど、小説「リアリティのダンス」の中にヒントがあった。
アクセル・クリストバル・ホドロフスキー!
クリストバル・ホドロフスキーは1965年生まれの次男坊。
詩人、画家、作家、映画監督の他にサイコ・マジックも手がけているらしい。
サイコ・マジックとはアレハンドロ・ホドロフスキーも行なっていたサイコセラピーの一種で、依頼人の悩みを家系図を元に作成した系統樹や依頼人が見た夢などを利用して、根本となる問題点を導き出し、問題解決にあたるものである。
実際にどのような方法を用いて問題解決をしたのか、という実例については小説「リアリティのダンス」の中に事例があるので参照して下され!
詩人やサイコ・マジックを手がけているということで、もしかしたらクリストバルが一番ホドロフスキー監督の影響を受けているのかもしれないね?
それらは父親であるアレハンドロが行なってきたことを伝承しているみたいだからね。
クリストバルのHPがスペイン語で書かれているので、読解できないのがもどかしいね!
何の役なのかは不明だけど、映画「リアリティのダンス」にも出演している模様。

アダン・ホドロフスキーは「サンタ・サングレ」でフェニックスの少年時代を演じた。
1979年生まれというから、長男と17歳も差がある三男坊!
ホドロフスキーが50歳の時に生まれた、と書いてあったよ。
「サンタ・サングレ」撮影時は9歳くらいだった計算だよね。
このアダンは、現在Adanowskyという名でミュージシャンになっている。
wikipediaによると、どうやら一番初めにアダンにギターを教えてくれたのは、あのジョージ・ハリスンだったらしい!
アレハンドロ・ホドロフスキーが友達だったから、というのが理由らしいけど、ビートルズ・ファンには垂涎の的だろうね。(笑)
アダンもアナーキストの役で「リアリティのダンス」に出演しているみたい。

恐らく息子はこの3人だと思われるんだけどね?
どうやらそれぞれの母親は別らしい。
それなのにホドロフスキー色が濃く出ているところがすごいよね。(笑)
実は他にも映画の中にホドロフスキーって名前があるのを発見したんだけど、それが息子なのか親戚なのかはよく分からなかった。
娘も一人いるらしいんだけど、この方は映画とは無縁だったのかな。

来年日本公開予定の「リアリティのダンス」の前に、ホドロフスキー監督の3部作についてまとめてみたよ。
これで復習は完了だね!
そして小説「リアリティのダンス」も読了し、3人の息子達についても調べたので予習もできたかな。(笑)
来年の公開が本当に待ち遠しい!

映画の殿 第03号 悪魔の追跡

【2組のカップルの行方や如何に?!】

SNAKEPIPE WROTE:

毎週末に映画を鑑賞する習慣はずっと続いていて、特別な用事がない限りは1週間に3本の映画を観ていることになる。
1ヶ月で約12本!
1年なら144本ということになるんだねえ。
計算してみるとその本数の多さに驚いてしまう。
それらの膨大な映画の中から、新作やカルト系を除いた琴線に触れる1本をご紹介しよう!という企画の「映画の殿」。
第3号は「悪魔の追跡」について特集してみようか。

悪魔の追跡」(原題:Race with the Devil)は1975年のアメリカ映画である。
イージー・ライダー」でキャプテン・アメリカを演じていたピーター・フォンダと「ワイルド・バンチ」や「デリンジャー」で圧倒的な存在感を見せたウォーレン・オーツが出演しているオカルト映画と聞いたら気になっちゃうよね!(笑)

YouTubeに当時の予告があったので載せておこう。

字幕なしだし、「きゃー!」みたいな絶叫だけが印象に残る映像。
さて、一体どんなお話なんだろう?

※鑑賞していない方はネタバレしてますので、ご注意下さい。

鑑賞後、一緒に観ていたROCKHURRAHと共に黙りこんでしまう。
なんとも言えないイヤーな後味の悪さ!
えっ、これで終わっちゃうの?という驚きの結末だったのである。

ロジャー(ピーター・フォンダ)とフランク(ウォーレン・オーツ)がそれぞれの妻を伴って出かけた旅行先で、悪魔崇拝者達による人身御供の儀式を目撃してしまったことから、その関係者から度重なる嫌がらせを受け続ける映画である。
あらっ、簡単に書き過ぎ?(笑)
ホラー映画などで「悪魔の○○」という邦題が付けられていることって多いけど、この映画に限っては本当にタイトルそのまんまなんだよね!
これは逆に珍しいかも?

この映画はストーリーがどうのというよりも、その嫌がらせがメインなんだよね!
儀式を目撃した後に関係者が逃げる4人を追いかけ、車の窓ガラスを割る。
割れた窓ガラスに「沈黙せよ」と書かれた警告を示すメモを残す。
ペットを殺害する。
ガラガラヘビを車内に潜ませる。
積んでいたバイクにキズを付ける。
長距離電話を全て使用不可にする。
車ごと体当たりしてきて暴走させる、などなど儀式の夜以来、心の休まる時がないほど加速する嫌がらせ。
親切そうに見える人も、結局はみんなグル!
保安官も、出会う人全てが信用できない状況だ。


その他の嫌がらせとしては、冷たい人々の視線がある。
一言も喋らず、ただ見つめるだけの人達。
それは嘲笑だったり、少し非難を含きつつ哀れみを感じているような視線である。
この視線攻撃、かなりゾッとするよー!
旅行に出た4人のうち、一番視線や雰囲気の異常さに敏感なのはロジャーの妻のケリーで、最初に視線を感じた時には「もう旅行をやめて帰ろう」と提案をしている。
ところがフランクにとっては、長年の夢であった長期旅行である。
俺は絶対に帰らない、スキーに行くんだと言って譲らない。
フランクの妻のアリスも折れて、同行することに同意してしまう。
なんでこの時に帰らなかったの?って思う人は多いと思う。
SNAKEPIPEもそう思った。
この時点なら、まだ窓ガラスを割られ、不審なメモが残っているだけだったのにね!
ただ、こんなに執拗に嫌がらせをしてくる儀式関係者が4人を無事に帰したかどうかは判らないけどね。(笑)


映画の舞台はテキサス州で、出発地点はサンアントニオ。
調べてみるとテキサス州というのはアメリカで2番目に面積の広い州とのこと。
ちなみに1番はアラスカ州だって。納得。(笑)
テキサス州を縦断した先に位置するコロラドを目指す旅というから、かなり移動距離が長いよね。
最初のキャンプ地である儀式のあった場所がどこだったのか不明だけど、きっと4人はラストまでテキサス州から出てないはず。
そしてそんなに広いテキサス州に、どれだけの数の悪魔崇拝者がいるのか謎なんだけど、4人が行く先々に悪魔崇拝の仲間がいることになってるの。
あの儀式の時に集っていたのは、多くても15人くらいだったんだけどねえ?

この粘着質タイプの追跡者というと思い出すのが「ノーカントリー」かな。
自分にとって都合が悪い相手をずっと追い詰めて殺害する。
「悪魔の追跡」の儀式関係者達も「み~た~な~!」としつこいところが似てるんだよね。(笑)
カーアクションのシーンでは、追いかけてくる運転手が見えなくて、誰が運転してるのか分からない。
これはスティーヴン・スピルバーグの「激突!」からの引用なのかしら?
追いかけられる恐怖というのは、SNAKEPIPEもよく夢の中で経験するんだけど、心臓バクバクなって本当に怖いと思う。
もしかしたらSNAKEPIPEが一番嫌なことなのかも?(笑)
そして他所の土地で邪険にされるのは「イージー・ライダー」も同じだったよね。

最終的には車の周りを儀式関係者に取り囲まれてしまう。
そこで映画は終わっちゃうんだよね。
逃げられなかったということはハッキリしてるけど、その後どうなったのかは鑑賞者にお任せ、という終わり方。
どーもすっきりしないよね。(笑)
4人を取り囲みたいなら、もっと早い段階でいくらでもチャンスがあったのにね?
その意味からも、この映画は嫌がらせによる恐怖体験を主題にしてると考えられるよ。

結局のところ4人はどうしたら良かったんだろう?
初めに警告文が来た時点でサンアントニオまで引き返せば良かったのか?
保安官に報告しなければ自宅の住所などを知られることもなかったのでは?
そもそも儀式を目撃しなかったら目的地まで楽しい旅が続いたんだろうか、など様々な疑問が湧いてくる。
それにしてもピーター・フォンダとウォーレン・オーツだったら、本当はもっとカッコ良く立ち回れたんじゃなかろうか?(笑)

これから夏休みで車で遠出しようとか、自転車で遠くまで野宿しながら出かけるなんて人も多いと思う。
そんな時、もしかしたらその土地での禁忌に触れる可能性もあるよね。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも人の気配のない場所を好む傾向があるので、この映画を教訓にしよう!
どうぞ皆様もお気を付け下さいませ!(笑)

ROCKHURRAH RECORDS暑中見舞い2013

【今年の暑中見舞い用ポストカード】

SNAKEPIPE WROTE:

デヴィッド・リンチのセカンド・アルバムに関する情報は、6月9日の記事「アンチヴァイラル鑑賞」の中で書いていたよね。
早速注文していたSNAKEPIPEは、無事に手にすることができたよ!
発売前からYouTubeなどでも数曲は聴くことができたし、「モダン・ブルース」というジャンルになることも知っていた。
元々ブルース自体を良く知らないのに、モダンなんて言われても。(笑)
ファースト・アルバムはエレクトロ・ポップだったからジャンルが全然違っているんだよね。
BGMとして流しておいて、ほとんど邪魔にならない音だなという感想を持った。
まるで「ツイン・ピークス」を思わせるような曲もあって、ちょっと笑ってしまう。
アンジェロ・バダラメンティは何も言わなかったんだろうか?(笑)
ファースト・アルバムの時には一曲ずつ感想を書いていたSNAKEPIPEだけど、セカンド・アルバムはちょっと難しいなあ。

様々な種類の音楽に詳しいROCKHURRAHに聴いてもらうと、
SuicideとかPortisheadをちょっと感じるね」
とのこと。
聴かせてもらうと、確かにちょっと近いかも!
リンチの好きな本とか絵画についての情報はいくつか知っているけれど、どんな音楽を好んで聴いているのかについての情報は今まで聞いたことがないなあ。
もしかしたら前述したようなバンドがお気に入りかもしれないよね。
ものすごーくまさかとは思うけれど、セカンド・アルバムまで発売したリンチだからライブで来日しないかな?(笑)
もしあったら絶対観に行かないと!

デヴィッド・リンチのセカンド・アルバムを何回も繰り返し聴きながら、制作したのが今年の暑中見舞いである。
毎年ネット上でのみ公開の暑中見舞いか残暑見舞いのポストカードを作るのがいつの間にか恒例になっているんだよね。
毎年何かしらのテーマを決めて制作してるんだけど、今年はSNAKEPIPEが見た夢が元ネタ!

そんなに珍しい夢ではないと思うんだけど、空中にクリオネがいっぱい飛んでる夢を見たんだよね。
泡だと思ったらクリオネで、「あっ!クリオネがいっぱい飛んでる!」って空を見上げてたSNAKEPIPE。
その時のことを覚えていて、今年のポストカードに採用してみた。
画像担当はSNAKEPIPEでタイポグラフィとまとめ担当はROCKHURRAHという、毎度お馴染みの分担で出来上がった一枚。
やっぱりなんとなく80年代が感じられて良い感じ。(笑)
早く暑い夏が終わることを心から願ってるよ!

SNAKEPIPE SHOWROOM 物件6 ユニーク物件編

Carlo Santambrogioのスケスケ・ガラス・ハウス!目立ちたがりやさんにぴったり?!】

SNAKEPIPE WROTE:

毎年夏になる度に「今年は暑いね」と言っている気がするけれど、今年はそんなレベルではない程の暑さだよね!
猛暑日の連続記録を更新なんて話題、もう聞きたくない!
特に我が家のリビングは日当り良好のため、日中はサウナみたいになっちゃうんだよね。
物件情報の日当り良好って冬はとても良いけれど、夏には地獄。
ええい、こんな日本を飛び出して、もっと快適な生活を送っちゃおう!
せっかく住むならちょっと変わった物件が良いかも。
面白い物件情報検索してみようかな。

まず初めにご紹介するのはこちら!
アメリカ合衆国ニューヨーク州ピッツフォードにあるデザイナーズ物件。
ニューヨークにこんな変わった形の家なんて、と思ってピッツフォードの位置を確認してみると、いわゆる都会のニューヨークからは400kmも離れている場所らしい。
ニューヨーク州の面積は122,284 km²で人口密度は157人/km²。
ほとんどが都市部に集中してるだろうから、少しでも離れた場所ではゆったり過ごすことができそうね!
オンタリオ湖をはさんで北はもうカナダという土地柄、一番近い都市であるロチェスターの年平均気温は8.9℃!
夏でも23℃くらいにしかならないという羨ましい環境だよね。

これは建築家であるジェームズ・ジョンソンにより1971年に建設され、2001年には内部に改良が加えられた「マッシュルーム・ルーム」という物件である。
本当に森の中からにょっきり出てきたキノコみたいな形!(写真①)
SFっぽい雰囲気もあるよね。
内部は一体どんな感じなんだろう?

外観に負けないくらい内部もユニーク。
まるでアントニオ・ガウディみたいな細かいタイルで装飾している壁が目立つ。
天井が下がっているような造りになっているので、グニャグニャしたような部屋の仕切りに見える。(写真②)
慣れるまでは平衡感覚に異常を感じるかも?(笑)
3つのベッドルームと3つのバスルーム。
このバスルームにもガウディ様式のタイルが使用されているね。(写真③)
目地の掃除、大変じゃないかなと心配する。(←日本的)
他にも冷蔵庫やレンジ、食器洗い機などが設備された広々キッチンがあったり外にジャグジーが設置されていたりする。
大自然を臨みながらの入浴なんて、さすがニューヨーク!(ぷっ)
パウダー・ミルズ・パークという自然豊かな公園に面している、非常にリラックスできる環境と聞いて益々興味が湧いてくるね。
さて気になるお値段は?
$1,500,000ということなので、日本円に換算して約1億5000万というところか。
食料品や日用品の買い出しさえ問題なければ、隠遁生活を送るのは最高のシチュエーションだね!
これだけの物件だったらお値段お手頃のようにも思うけど、どうだろう。
ただ一つの疑問は、一体この部屋にはどうやって入るのか、だけかな。(笑)

続いての物件もまた丸いデザインを選んでしまったよ。
きっと何かがSNAKEPIPEを刺激するに違いない。(笑)
アメリカ合衆国コネチカット州ウィルトンにあるリチャードT.フォスターフィリップ・ジョンソンという有名建築家のコラボレーションによる、まるでアート作品のような物件をご紹介してみよう。
360℃全てをガラス張りにし、12フィート地上より浮かんでいるスタイル。
12フィート、換算すると365cmくらいなので2階くらいの高さなのかな?
芝のキレイなグリーンと目の前の池との調和が見事。(写真①)

あっ、この物件は下からのらせん階段で昇り降りできることが判明!(写真②)
マッシュルーム・ルームに引き続き、悩むところだったよ。(笑)
そのらせん階段を中心として、部屋が放射線状に分かれているみたいだね。

ガラス張りの室内は日当たり抜群ね。
暑さや寒さはその時の気分で部屋を移動すれば良いだけ!
どの部屋からも美しい風景が見えるなんて、素敵だよね~。(写真③)
ちょっと視線を遠くにやるとストリーツ池も見えるみたいなんだよね。
紅葉の季節の池の写真が載ってるけど、とても美しい風景にうっとり。
これを毎日自宅から眺められるなんて最高だよね!
外側にはテラスがグルリと、これまた360℃設置されている。(写真④)
日陰や日向を選んで、ゆっくりとコーヒータイム。
これだけ陽射しがあるなら洗濯物もすぐ乾くし、お布団干しにも良さそう!(笑)

3つのベッドルームと2.5のバスルームと書いてあるよ。
バスルームの0.5っていうのは一体どういうことなのか不明だね?(笑)
トイレだけ、とかシャワーだけなのかな。
1967年に建設され、2005年には修繕されているらしいこの物件。
実は今はもうすでに売却済みたいなんだけど、販売されていた時のお値段が$1,550,000、日本円で約1億5500万円!
有名建築家による物件の割にはお買い得な感じ。
ここもマッシュルーム・ルームと同じで買い物はどうするんだろうね?
もう一つ、全面ガラス張りだから覗きの心配はないのかしら。
それらがクリアならオッケーなんだけどな、と真剣に考えるSNAKEPIPE。(笑)

最後はこちら。
イングランド南西部に位置するコーンウォール州ニューキーにある小さな島、トワン島の物件を紹介してみよう。
イギリスだと南とはいってもかなり緯度が高いため、ニューキーの年平均最高気温は13.3℃、最も気温が高くても平均では19℃というから気温低めで良い感じ!

ちょっと写真が小さくて判り辛いかもしれないんだけど、島というよりは崖といったほうが近いかもしれない海の真ん中で、吊り橋を渡って正面玄関にたどり着く家なんだよね。(写真①)
この吊橋も家に付いてるみたいで、イギリスでは珍しい個人所有の持ち物らしいよ。
吊り橋についての記載が記事によって様々で、長さは100フィートとも30フィートとも書いてある。
高さも90フィートとか70フィートの情報があって、どれが本当なのかは不明なんだよね。(笑)
ちなみに30フィートで約10mらしいので、記事の最大数で換算すると、長さも高さも約30mということになるね!
なんという恐ろしい物件!

無事にたどり着くことができたら、物件は素晴らしいんだよね。
こちらも360℃、誰にも邪魔されることなくプライベートな時間を満喫できそう。
太陽が昇ってから沈むまで、ほぼ完全に太陽の陽射しを感じることができる見事なテラスが設置されている。(写真②)
「Life in the sun」
なんて書かれていて、日焼けによるシミ・ソバカスを気にしなければ素晴らしい言葉だと思うよ!(笑)
007 黄金銃を持つ男」に登場したスカラマンガがきっと購入したに違いない物件だ、とも書いてあり多いに納得。
何か秘密のことをやるのに最適な隠れ家って感じだもんね。(笑)

室内はいかにも英国調といった感じ。(写真③)
家具やその他のキッチンなどの情報は何も記載されていないので不明。
ここの水や電気はどこから来るんだろうね?(笑)

約10年住んだ80代の夫婦が「もう登るのに苦労しちゃって」という理由で売りに出している物件らしいんだけど、10年前でも70代。
その時は「まだまだイケる!」と思って購入したんだろうか?(笑)
その問題の吊り橋を渡るためには、ちらっとしか写ってないけれど、右側の同じような崖(島?)に登らないといけないんだよね。(写真④)
もしくは吊り橋を使わないで、崖から「ファイト一発!」まがいのことをやるか。
どちらにしても体力的に自信がある人じゃないと無理かもね!(笑)
その老夫婦が提示している金額が£1,000,000、日本円で約1億5000万円というところか。

007シリーズじゃなくても、推理小説家が小説の舞台に設定するには丁度良さそうな物件だよね。
吊り橋が落雷によって寸断され、孤立無援となった屋敷で起こる殺人事件。
物理的な密室状態だけど、陳腐過ぎ?(笑)

今回は涼しい土地の変わったデザインの物件を紹介してみたよ!
ああ、せめて早く涼しくなってくれないかなー!