フランシス・ベーコン展鑑賞

【フランシス・ベーコン展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPE MUSEUM #7 Francis Bacon」を書いたのは2011年1月のこと。

「どこかで展覧会やってくれないかなあ。
大量の現物を目の前で観たいものである。」

という文章で締めくくったSNAKEPIPEの希望を叶えてくれることが判ったのは去年のことだった。
情報収集能力に長けた長年来の友人Mから電話があり、
「ベーコンさん、個展やるよ!」
とまるで知人であるかのような口ぶりで教えてもらったのである。
狂喜乱舞するSNAKEPIPE!
展覧会開始の3月を心待ちにしていたのである。

東京国立近代美術館に向かったのは、開催されてから1週間を過ぎた、少し桜が咲きかけた頃である。
コートを着るには暑く、薄手のジャケットでは寒い難しい春の陽気。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも得意のレザージャケットを着用し、待ち合わせ場所へと向かう。
なんと友人Mも同じくレザー着用!
レザー・トリオになってしまった。(笑)
なんとなく怪しい3人組、会場へと急ぐのである。

開催されてまだ日が浅いにも関わらず、そこまでの混雑は感じられない。
押し合いへし合いで、人の頭と頭の間から絵をやっと覗き見る、なんてことにはならなかった。
SNAKEPIPE命名の「国立系」がわんさかいるかと思っていたけど。
良かった、と胸を撫で下ろすSNAKEPIPE。
待ち望んだ展覧会だもん、じっくり鑑賞したいからね!

いつものブログ通り、展覧会の進行に合わせた感想をまとめていこうか。
今回のフランシス・ベーコン展は「身体」をテーマにして年代別に括られていた。

Chapter1 うつりゆく身体 1940s―1950s

「うつりゆく身体」とはA地点からB地点への移行の状態に見えることから名付けられたタイトルとのこと。
A→Bだけではなく、B→Aの移行にも見えることが特徴だと言う。

この章の中で気になった作品が「走る犬のための習作」(1954年)。

一本の線だけで何かを表現するのはベーコン得意の技法である。
簡単に引かれたように見える線なのに、これが舗装された道で脇に側溝があると解り、きちんと情報を提供しているのがすごいよね。
SNAKEPIPEが勉強不足なのか、ベーコンが描く動物の絵を鑑賞するのは、これが初めてである。

まさに犬が走っている!
左の絵は小さいので詳細までは確認できないと思うけれど、ピンク色の舌を出して犬が走っている映像を一時停止させたみたいな絵。
犬が完全にブレているため、より動きが感じられるのである。
この絵をモノクロームにして、コントラストやや強めに、ちょっと粒子を荒くしたら大道さんみたいじゃない?(笑)

「叫ぶ教皇の頭部のための習作」(1952年)の元ネタがエイゼンシュタイン監督の「戦艦ポチョムキン」(1925年)だというので、2枚を並べてみたよ。
「戦艦ポチョムキン」、懐かしいなあ!
もう何年も前に観ているので詳細は忘れているけれど、やっぱりあの階段のシーンは見事だよね。
もちろんこの乳母の顔もしっかり覚えている。
ベーコンのアトリエには、「戦艦ポチョムキン」のスチール写真の切り抜きがあったというから、かなり重要なモチーフと考えていたようだね。
上の作品は斜めになったメガネと共に、ベーコン最大の特徴である叫ぶ口が描かれていて、まさに乳母そのもの!
このベーコンの叫ぶ口にインスパイアされたのが、デヴィッド・リンチである。
エイゼンシュタイン→ベーコン→リンチと、映画→絵画→映画の順番だよね。
この先はまだ続いていくのかな?
後継者は…難しいかもね?(笑)

Chapter 2 捧げられた身体 1960s

無神論者であったベーコンは「磔刑図」をどのように考えて制作していたのか、ということに焦点を当てる。
キリスト教とは別の原始的な宗教においては、神に捧げられた「人間の生贄」としての犠牲的な行為とも言えるのではないだろうか。
なーんて解説文を要約して書いてみたけど、キリスト教についても、原始的な宗教についても詳しくないSNAKEPIPEがあれこれ言える立場じゃないよ。(笑)
解説抜きで好きな絵ってことで良いのだ!(笑)
ところがなんとも驚いたことに、ここまで「磔刑」について書いているのに、ベーコンの磔刑関連の絵は一枚もなし!
難解な解説書いておきながら、全く意味不明だね。

この章の中で気になった作品は「ジョージ・ダイアの三習作」(1969年)かな。
空き巣だと思ってベーコン宅へ泥棒に入ったジョージ・ダイアが、制作中のベーコンにバッタリ遭遇。
そのまま居付いて、ベーコンの愛人になってしまう話はベーコンの伝記映画「愛の悪魔」で観たSNAKEPIPE。
上は、その愛人であったジョージ・ダイアを描いた作品なんだけどね。
解説には「顔面中央に弾丸を打ち込まれたかのような黒い円形」と書いてある。
SNAKEPIPEも「鼻の穴にしては大きいかも」と思って観た。
しばらくじっと観ているうちに、思い付いた。
「これは…穴だ!」
ベーコンは同性愛者だったからね。
考え過ぎだったらゴメンナサイ!(笑)

Chapter 3 物語らない身体 1970s―1992

この章では、ベーコンの特徴である3枚1組みセット(三幅対というらしい)を多く展示していた。
何故「物語らない身体」というタイトルになっているか、というのは複数の空間と人物を描いているのにストーリーの発生を忌避しているから、とのこと。
そう言われても、SNAKEPIPEは勝手にお話作ってたけどね?(笑)

今回の展覧会で鑑賞できて最も嬉しかったのが「3つの人物像と肖像」(1975年)である。
この絵はポストカードを持っていて、ずっと部屋に飾っていた作品だった。
その実物を観ることができるなんて!

この絵の解説には「複数の人物のあいだに物語を発生するような視線のやり取りや、身振りの連関を見出すことはできません」ってきっぱり言い切られちゃってるんだけどね。
左のくねってる男性が恋人のダイア、真ん中がギリシャ神話で神の裁きを伝える復讐の女神、というところまで聞くといろいろと想像をしちゃうけどな。
そして右側は円形部分に組み合う男性とその下の部分には下半身ヌード。
恋人のジョージ・ダイアが自殺してしまった後に描いた作品らしい。
思い出と懺悔がテーマなのかな。

何故ジョージ・ダイアが自殺してしまったのか。
これは前述したベーコンの伝記映画「愛の悪魔」がbased on a true storyだった場合には、自殺の原因はベーコンにあると思うから。
SNAKEPIPEは自殺というよりも「ベーコンに殺された」と言ってもおかしくないんじゃないか、と思っているくらいだからね。
失って初めてその重要性に気付いた感じがするけど、どうだろう?
Chapter 4 ベーコンに基づく身体

最後の章では、 ベーコンからの影響を身体で表現しているアーティストを紹介していた。
日本からは我らが土方巽が登場!
本当にベーコンからインスパイアされ作品を作っていたんだって。
舞踏公演「疱瘡譚」のDVD映像と共に土方巽のスクラップブックを展示していた。
ペーター・ヴェルツとウィリアム・フォーサイスはベーコンの絶筆である未完の肖像を元にその線をなぞるようなダンスを披露していた。
巨大なスクリーンがいくつも並び、ダンスする人物のアップを鑑賞しても何も感じ取ることができなかったなあ。

Chapter1の中にインタビュアーと話をするベーコンの映像が流れていた。
とても興味深いことを語っていたので、書いてみようかな。
ベーコンにはいくつかのシリーズがあって、その中の一つに「教皇シリーズ」があるが、描くきっかけになったのはベラスケスであるという。
ベラスケス?
その昔、日曜美術館でベラスケス作「ラス・メニーナス」 の解読と解説をやっているのを見たことあるけど、それほど詳しくはない画家である。
ベーコンはベラスケス作「教皇インノケンティウス10世」を「人間の感じることができる最も偉大で深遠な事象を開放する最高の肖像画」と評していたとのこと。
だからこそこの絵画から着想を得て、「教皇シリーズ」を作成したらしい。
どうやらベーコンは、「教皇インノケンティウス10世」に、恐れながらも性的に魅了された父親を投影していたようである。
ベーコンが描く教皇は、半狂乱で叫び声をあげている。
恐れながら愛し、突き落とすようなネジれたベーコンの感情が表れてるね。
評論家の中にはベーコンの「教皇シリーズ」を「父殺し」と評する人もいるらしい。 更にベーコンは「ベラスケスの作品は怖くて観られない」と続け、インタビュアーに訳を尋ねられると
「冒涜しているから」
と答えるのである。

愛と憎しみ、恐れと冒涜といった感情が、複雑に絡まって対象に向かっていることがインタビューから解る。
ベーコンにとっての愛情表現は、相手にとっては愛情とは感じられない類だったのかもしれないな、と推測できるね。
自殺してしまった愛人、ジョージ・ダイアへの態度も、思いやりを持っているようには見えなかったベーコン。
ベラスケスの絵も「最高」と言っておきながら「冒涜」し、その冒涜している行為を自覚している人物なので、愛人ダイアのことを虐めているように見えたのも愛情表現だったのかもしれないね?

もしかしてこれは、小学生くらいの男の子が好きな女の子をからかったり、イジメたりするような図式と同じなのかしら?
そう考えるとベーコンについて解り易いかもしれないね。
SNAKEPIPEが高校時代に愛読していたのがオーストリアの精神分析学者であるジークムント・フロイトの著書である。
小児から大人に至るまでの5つの性的発達段階について言及されている文章を読んだ時には、衝撃を受けたものだ。

■口唇期 出生~2歳まで 口は最初に経験する快楽の源である。
■肛門期 2歳~4歳頃まで 小児性欲の中心は肛門になる。

乳児のうちから快楽を得ようしている、という説に驚いた女子学生だったSNAKEPIPEだけれど、この2つの段階をベーコンに当てはめるとしっくりくるんだよね。
ベーコンには口だけしか描かれていない作品が多数存在する。
口に非常に強い興味を示しているよね。
そしてベーコンは同性愛者だった。
上に載せた「ジョージ・ダイアの三習作」について書いた文章の中に「肛門期」に関する記述をしているSNAKEPIPE。
解ってもらえるかしら?(笑)
ベーコンは口唇期と肛門期のまま大人になってしまった画家だったのかもしれないね。
ベーコンの伝記を読んだことがないので、単なるSNAKEPIPEの推測だから信用しないでね。(笑)

ではここで突然だけど、ベーコンの絵画にちなんだそっくりさん劇場開幕!
ベーコンの絵のモチーフに良く似ているな、とSNAKEPIPEが思った物を紹介するコーナーだよ!(笑)

左はご存知モンスターハンターに登場するフルフル。
右はベーコンの作品「ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作」(1944年)のうちの一枚である。
モンスターハンターでフルフル見た時に、即座にベーコンを思い出したんだよね。(笑)
これはどちらも男性器をモチーフにしているから、似てしまうのは仕方ないことなのかな。
ベーコンのほうもフルフルと同じように火属性に弱いかどうかは不明!

続いては「千と千尋の神隠し」より「カオナシ」に登場してもらいましょう!
対して右側はベーコンの「人物像習作II」(1945-46年)である。
変な形に曲がった体と、顔に入った縦2本の線と顔色などが酷似しているように感じたのはSNAKEPIPEだけかしら?
ちょっと苦しい?(笑)
ではそっくりさん劇場、これにて閉幕!

今回の展覧会では33点の作品をまとめて観ることができた。
これはベーコン没後アジアでは初めてのことらしいけど?
でもね、以前からベーコン個展を切望していたSNAKEPIPEにはまだ物足りないんだよね!
解説によれば、日本国内にはなんと5点だけしかベーコンの絵が所蔵されていないとのこと。
これにはびっくりしたSNAKEPIPE!
ベーコンは日本で知名度低いのね。
だから「国立系」の客が少なかったのか、と納得してしまった。
作品来ないなら自分から行けってことかな。
ロンドンのテート・ギャラリー行かないとダメかしら?(笑)

大人社会科見学—伊豆高原—

【伊豆はもう桜が咲いてたよ!】

SNAKEPIPE WROTE:

3月4日はSNAKEPIPEの誕生日である。
今から2年前のSNAKEPIPEの誕生日プレゼントとして、ROCKHURRAHが選んでくれたのが富士山が見える露天風呂付き客室の温泉旅行だった。
富士山を目の前に、24時間入浴できる温泉って贅沢!
素晴らしいプレゼントをありがとう、とROCKHURRAHにお礼を言ったSNAKEPIPEである。

そして2013年。
SNAKEPIPEの誕生日がやってくる約1ヶ月前のこと。
「今回もまた温泉旅行どうかな?」
とROCKHURRAHがプレゼントの提案をしてくれた。
是非お願いします、と即答!
さて、今年はどこに行こうか?
いくつか候補地を挙げ、最終的に伊豆に決まった。
伊豆と一口に言っても、「イトウに行くならハトヤ」でお馴染みの伊東に加えて熱海、東伊豆、西伊豆、南伊豆、下田と有名所がたくさんあるんだよね。
SNAKEPIPEは一度家族旅行で伊豆長岡を訪れたことがあり、ROCKHURRAHは社員旅行で熱川に行ったことがあると言う。
二人共ほとんど知らない土地なので、どこに行っても楽しいはず!
そこで選んだのが伊豆高原だった。
面白そうな観光スポットもあるみたい。
早速温泉旅館の予約を入れ、ワクワクしながら出発当日を待ったのである。

ついに当日。
おやつを入れたリュックを背負い、東京駅から踊り子号に乗り込む。
前回の旅行と言えば昨年9月の九州旅行だったので、その時の新幹線乗車時間に比べると、踊り子号の2時間は短く感じる。
それにしても、さすがに観光地行きの電車だよね!
踊り子号は満員で、途中下車した人がいても、次の駅から入れ替わりの人が乗り込んで来るのだ。
伊豆は人気があるんだねえ、と感心しているうちに伊豆高原駅に到着。
あんなに観光客がいっぱいだったのに、伊豆高原で降りたのはほんの少人数。
人混みを苦手と感じるROCKHURRAHとSNAKEPIPEはホッとしたのである。

まだ旅館にチェックインするには早い時間なので、昼食を取る場所を探しながら、最初の観光スポットへ向かうことにする。
伊豆高原駅から歩いて約20分程の場所にあるスポットとの情報を得ていたので、歩いているうちにどこか食べる場所があるだろうと歩き始め…おや?
先程の踊り子号から降りる観光客が少なかった理由が解るような道のり。
駅から歩いて数分で、歩いている人がいなくなった。
この日の天気のせいもあるけれど、建物全体がくすんだ色合いで、寂れた雰囲気が一目で解る。
ポツンポツンと点在している店舗のほとんどは不動産関係。
伊豆は別荘地としても有名なんだね。
別荘に遊びにくる季節でもないため、余計に人が少ないんだろうな。
やっと一軒の定食屋を見つけ、お昼にありつけることになった。
先客はバイク乗りの男二人組のみ。
あんな辺鄙な定食屋にいる4人の客のうち、革パン野郎が3人いるとは!
あっ、SNAKEPIPEは女性なので野郎じゃないけど。(笑)

いよいよお目当ての「野坂オートマタ美術館」へ。
ここは機械仕掛の人形を展示している美術館で、ROCKHURRAHが行きたい場所として挙げていたのである。
もしかしたらROCKHURRAHの愛読書である「黒死館殺人事件」の中に、オートマタが登場することに由来しているのかもしれないね?
オートマタ(Automata) とはヨーロッパで18世紀に始まり19世紀に美術的価値と贅沢さの象徴として貴族に愛された西洋からくり人形のこと。
ぜんまい仕掛けのタイプから、電気で動くものまで様々な時代の人形が展示されている。
古い人形が多いため、実際に動いているところを鑑賞できるのは、限られた数の人形を一日4回の決められた時間にだけ、である。
それ以外はDVDが設置されていて、その映像と実際の人形を見比べる、という鑑賞スタイルである。

丁度この日の実演時間に間に合うタイミングでの入館だったので、実演も鑑賞できることになった。
「椅子を操る道化師」(1985年)はオルゴールの音と共にピエロの大きな鼻に乗せた椅子が回る仕掛けである。
ピエロは全部で5体あり、全てを同時に回すと素晴らしい音楽になるとのこと。
「はしご乗り」(1996年再現)はオリジナル作品ではなく、再現された人形での実演だったのが残念。
19世紀のサーカスでは梯子乗りが一番人気の出し物だったそうで、それをいつでも観られるように制作されたとのこと。
臨場感溢れる動きに加えて、衣装や靴などの小物もよくできていたよ。
「マードュコカーニュ」(制作年不詳)は本当の意味ではオートマタとはいえない、という説明があった。
何故ならこの人形はネジを手で回すことで動くタイプだからである。
小さな男の子が棒を登って吊るされたバッグを取ってくる仕掛けだった。
「ジェシカおばさんのティータイム」(1900年頃)が今回の実演の中で一番古いオートマタで、SNAKEPIEPが最も感銘を受けた作品である。
椅子に座ったジェシカおばさんが右手にティーポットを、左手にカップを持ち、自らお茶を注ぎ飲み干す、という動作を繰り返す仕掛け。
書いてしまえば単純な動作だけれど、この時のジェシカおばさんの表情がすごいんだよね!
眉を上げ下げする、まばたきをする、(架空の)周りのおしゃべり仲間に笑いかける。
1900年頃にこんなに精巧な動きをする人形が制作されていたなんてね!
この鑑賞後、何度もジェシカおばさんのモノマネを楽しんだSNAKEPIPEである。

野坂オートマタ美術館は、展示や実演以外にも人形制作をしていた人の工房を再現したスペースがあったり、オートマタの歴史について教えてくれたり、オートマタ全体について知ることができた。
鑑賞できて良かった!

程良い時間になったので、そろそろチェックイン!
その日の宿泊客の一番乗りだったようで、貸切風呂もいつでもどうぞ、と言われる。
早速、荷物を部屋に置いてすぐに貸切露天風呂へ。
遠くに海が見える。
風が吹くと頭が冴えて気持ちが良い。
いやあ、温泉はいいねえ~!(笑)
ROCKHURRAHが予約してくれたのは、またもや客室にも温泉が付いているタイプだったので、この後何度温泉に入ったことだろう?
24時間いつでも湯船にたっぷりの温泉が入ってるって素晴らしいよね!
よく電車の広告で「温泉付きの住宅」なんて宣伝見かけるけど、いいなあって本気で思ってしまったよ。(笑)
この温泉旅館は料理が凝っていて、素晴らしく美味しかった。
盛り付け方にも工夫がされていて、特に女性客にはウケが良さそう。
この温泉旅館にして良かったね。
ありがとう、ROCKHURRAH!

翌日、チェックアウトをしてから最初に向かったのが大室山である。
大室山は標高580mで、麓から山頂までをリフトで上がることができるという。
山頂はすり鉢のようになっていて、稜線は美しい自然の展望が見渡せるハイキングコースになっているとのこと。
生まれてこのかた、山のてっぺんに登ったこともなければ、リフトに乗ったこともないSNAKEPIEPは期待と不安でいっぱいだった。
ROCKHURRAHはリフトには乗ったことがあるようだけど、山の頂上に到達したことはないと言う。
いい年した二人が、こわごわ並んでリフトに乗ったのである。
はいっ、の掛け声をかけられてリフトにお尻を乗せる。
乗れたっ!第一関門クリア!(笑)
麓から山頂まではリフトでおよそ6分。
かなりの急勾配をゆっくりしたスピードで進んで行く。
なーんだ、思ったより大丈夫だったねと言い合った瞬間、ROCKHURRAHが凍りつく。
「ダメだ、ちょっとでも後ろを見ると怖いっ!」
後方には麓に向かう急な斜面が確認できて、落ちていきそうな感覚になるんだろうね。
SNAKEPIPEも高所恐怖症なので、まっすぐ前だけを見ることに専念する。
こうしてようやく頂上に到着。
目に飛び込んできたのが、左の写真のような茶色い山肌である。
真ん中の盆地になっている場所ではアーチェリーができるらしい。
大室山のサイトで見ていた景色とはまるで別モノ!
違う惑星に来てしまったような印象を持ってしまう。
そしてさすがは山頂、とても寒い。
ハイキングコースは約20分とのこと。
せっかくだから歩いてみようよ!

わー、海が見える!
おお、連なる山々が見える!
などと言い合いながら楽しくハイキングしていたROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
ある地点に差し掛かった時に
「げえっ!柵がないっ!」
なんと麓に広がる別荘やゴルフ場が崖の縁から見えるじゃないの!
もしかしたら外観を損なうという理由で取り付けてないのかもしれないけれど、万が一滑って転げ落ちたりしたら…。
想像しただけで、高所恐怖症のSNAKEPIPEは足がすくんでしまった。
本当に今まで一度も事故が起きたこと、ないんだろうか?
やっとの思いでハイキング一周を終え、ホッとする。
第2関門クリア!(笑)
頂上では360℃を見渡すことができて、新鮮だった。
自分が世界の真ん中にいる気分になるんだね。(笑)
麓に向かうリフトは、落ちて行く感覚のためやっぱり少し怖かった。
それもなんとか完了。オールクリアだ!(笑)
よく頑張った、と自分で自分を褒めたSNAKEPIPEである。
多少の怖さと寒い思いはしたけれど、新しい経験ができたね。
大室山も行って良かったな!

続いて訪れたのが「ねこの博物館」である。
ミリタリー系パンクのROCKHURRAHとSNAKEPIEPであるが、実は大の猫好き!
動画サイトでかわいい猫を見つけると互いに教え合い
「かわいい~!」
と目を細めている姿は、誰にも見られないように心配りしている。
だって、普段とあまりにイメージが違うからね。(笑)
そのため今回「ねこの博物館」に行った話もブログに書くことを躊躇したけれど、ブログは大人社会科見学なので、書いてみようと思う。

「ねこの博物館」は女の子が「かわいい!」を連発するだけの場所ではなく、ネコ科としての猫を研究するための博物館なのである。
博物館1階、会場入ってすぐの場所からライオンやトラの剥製が入場者を待ち構えている。
こんなに多くの、全てネコ科の剥製が勢揃いというのは圧巻の迫力。
動物園などで、実際に動いているトラやライオンを見たことはあるけれど、ガラスに仕切られた、遠い向こう側でしか知らなかったので大きさを実感したのは初めてだった。
猛獣と呼ばれるのが解る、体の大きさ、口から覗く牙の鋭さ。
ジャングルで襲われたらひとたまりもないだろうねえ。

2階では「世界のネコちゃん」コーナーがあり、様々な種類の猫を見たり実際に触れたりすることができる。
撫で撫でして良い猫の中の一匹に、とても甘えん坊の猫がいて、可愛かった。
「触れ合いコーナー」では、猫が放し飼いになっていて、一緒に遊ぶことができる。
行ったことないけど、多分猫カフェがこんな感じなんじゃないかな?
ほとんどの猫達は、眠っていた。
その中の一匹、左の写真のシャム猫が、かつて一緒に住んでいた愛猫にそっくりだったので、思わず写真を撮ってしまった。
「ねこの博物館」の猫達は、来場者に撫でられ過ぎて不感症になってしまったのか、ほとんど何の反応も示さないのでちょっと心配になってしまったほど。
眠たかっただけ、なら良いんだけどね?

20130310_05「ねこの博物館」で予定していたスポット巡りは完了したけれど、もう少し伊豆高原を散策してみよう!
吊り橋があったよね?
旅行出発前に検索した時の曖昧な記憶を元に、少し歩いてみることにする。
確かほんの数100mくらいだったはずなんだけど?
歩いても歩いても、全く海に出る気配がない。
小雨もパラついてきたし、寒さも感じるようになってきた。
あやふやな状態で土地勘のない場所を歩くのは危険だよね。
仕方ないので、諦めて駅に戻ることにする。

その時目に入ったのが伊豆高原駅への近道を記した看板。
「恋人の小路って書いてあるよ?」
本当に駅への近道なのか不明だけれど、恋人の小路の文言につられて歩を進める。
「一体どこが恋人の小路なんだろ?」
歩いた道は確かに伊豆高原駅への近道だったようだけど、無理矢理作ったあぜ道のような足元の悪い土の上!
所々に木の根が露出していて、日が暮れてからだったら、つまずいて転んでしまいそうな状態である。
写真は恋人の小路を抜けた場所から撮影したため、「ミュージアム通りへの近道」となってるね。
どお?この道なんだけど?恋人向き?
SNAEKPIPEのように、いつでもアーミーブーツを履いている女性ならまだしも、ハイヒール履いた女性はご用心!(笑)

伊豆地方は東京や千葉よりも2℃くらい気温が高いことは、毎日見る天気予報で知っていた。
今回出かけた伊豆高原は、そこまでの暖かさは感じなかったけれど、やっぱり伊豆。
もう桜が満開だったんだよね!
一足早くキレイな桜が鑑賞できて、もう一つプレゼントが加わったよ。
ROCKHURRAH、本当にどうもありがとう!

逸品制作日誌 エコバッグ

【このバッグの背景は、やっぱり爆発だね】

SNAEKPIPE WROTE:

作れる物は大抵の場合、既に作品を制作しているSNAKEPIPE。
作れない物は例えば靴!
一時期本気で靴職人に弟子入りしようか、と思ったほど靴好きなSNAKEPIPEだけれど、実現しなかったため靴を自作したことはない。
木型制作とか圧着する技術とか、とても楽しそうなんだけどね!
ミシンで縫えるタイプだったら、帽子に始まり、アウター、ジャケットなどの洋服類、そしてバッグも好んで制作する。

以前、ブログで記事にするまでもないような、ナイロン素材のエコバッグを作ったことがある。
それは何の変哲も無い、小さく折りたたむことができることが最大の特徴というような、いわゆるフツーのエコバッグであった。
実際、小さく畳めて持ち運びに便利であり、重さを感じさせないというのは何より大事なポイントである。
そんな理由から、かつて作ったエコバッグには何の不満もなく毎日持ち歩くのが当たり前の持ち物の一つになっていた。
特別な思い入れはなく、単なる必需品という感じである。

ある日のこと。
とあるショップで目に止まったアイテム。
それがレザー素材のバッグだった。
折り畳むことができる、非常に柔らかいレザーで作られている。
持ち運ぶことができるバッグ!エコバッグだ!
こんなにレザーが大好きなSNAKEPIPEなのに、なんで今までレザー素材のエコバッグを制作しなかったんだろう?
小さく畳むことばかりに気を取られていたせいだろうね。
このアイテムとの邂逅は、目からウロコが落ちるほどの衝撃だった。(大げさ)
早速、自作することに決めたのである。

ただの頭陀袋のように作っても面白くない。
何か一つヒネリが欲しい、と考えたのが前面部分に文字を入れること。
これも手法としてはありきたりなので、レザーにパンチングすることにした。
パンチングにて文字を浮かび上がらせるのは、とある有名ブランドが「H」と型取っていた方法だから、これもパクリといえるのかな。(笑)
SNAKEPIPEバージョンは、物騒な文字をパンチングしてるから良しとするか!

悩んだ末、今回は「BOMB」に決定。
エコバッグ型にレザーを縫うだけなら、とても簡単な話だったはず。
今回の制作で一番苦労したのがこのパンチング部分。
キッチリと等間隔でパンチングするために、設計図まで用意したもんね。(笑)
そして手作業でのパンチング。
全部で何個の穴を開けたんだろう。
最後の「B」が完了した時には、手はしびれているわ、腰は痛いわで散々だった。
ただし、そのおかげでSNAKEPIPEらしくなったように思うよ!

裏地は、パンチングした文字がハッキリ出るように、真っ赤なキュプラを使用。
レザーの色がグレーがかったモスグリーンなので、赤との相性はバッチリ。
レザーがかなり柔らかいので、4つ折りにして持ち運びも可能。
なかなか良い仕上がりになって、大満足!

一つ注意があるとすれば、このバッグは空港や皇居の周りに持って行ってはいけないことかな?
わざわざ「中に爆弾入ってます」とアピールするテロリストはいないと思うけどね?
本当に危ない人は、一般人に紛れて平凡な服装で何かをやらかしたり、逃げていたりするんだけどね?
解ってないガードマンが多過ぎるよ!
迷彩服に反応するガードマンは、自衛隊員もマークするんだろうか?

4 letter wordsを使用したエコバッグは、違うバージョンも作ってみようかな。
リクエストがあったらお応えします。
販売価格は、相談ということでよろしく!(笑)

ゼロ・ダーク・サーティ鑑賞

【ゼロ・ダーク・サーティのポスター】

SNAKEPIPE WROTE:

かなり前から「ハート・ロッカー」を監督した、キャスリン・ビグローの新作情報は知っていた。
2011年5月1日のウサーマ・ビン・ラーディン殺害に関する映画だという。
最近よく見かける「Based on a true story」(事実に基づいた話)とのこと。
ミリタリー系映画で、しかも事実に基づいているとは!(笑)
全面協力したCIAによる国家機密の漏洩が問題視される、なんて聞いただけでもワクワクしちゃうよ。
公開日を心待ちにしていたSNAKEPIPEである。

公開されてすぐに出かけたSNAKEPIPEとROCKFURRAHは、映画館の選択に失敗した。
この日は非常に風が強く、飛ばされそうになりながらやっとの思いで映画館に到着。
土曜日の初回だったため、それほどお客さんは入っていないのに…。
何故だかSNAKEPIPEとROCKHURRAHが予約した座席周辺だけ満員状態!
前日に座席予約状況を確認した時には、まばらだったはずなのに。
その周辺以外はガラ空きなのに、何故?
映画はゆっくり、広々した場所で鑑賞したかったなあ。
しかも初めて行ったその映画館は、通路が狭く出入り口は一箇所のみ。
万が一の災害や火災の時、退路が確保できるとは思えない構造だった。
どことは言わないけれど、2度と行かない映画館に決定!(笑)

※ネタバレしていますので、鑑賞前の方はご注意下さい。
長い長い新作映画の予告がやっと終わり、ようやく本編の上映が始まる。
映画の冒頭は9.11同時多発テロの音声を再現していた。
「ママ、助けて」や「怖い」といった生々しい声を暗闇の中で聞くのである。
SNAKEPIPEは幸いにも、9.11で友人や知人を失っていない。
ニュースでしか知らないのにも関わらず辛くなってしまうのだから、実際にテロを経験した人や大切な人を失った人はどう感じただろうか。
経験の有無や、国際情勢に明るいか、など人によって捉え方が違うと思うけれど、2011年にウサーマ・ビン・ラーディンが殺害されたニュースを聞いた時にも、 「ずっと捜索を続けていたんだ!」
という驚きがあったのは、SNAKEPIPEだけだろうか。
「ゼロ・ダーク・サーティ」は10年にも及ぶ、ウサーマ・ビン・ラーディン捜索、捕獲作戦と殺害を描いた作品である。

主人公は20代半ばのCIA女性分析官、マヤ。
アメリカ人女性の中では、かなり華奢な体格。
イメージするCIAとは、かけ離れた外見である。
「高校の時にリクルートで」と、何故CIAになったのかを問われたマヤが話していた言葉。
高校生?リクルート?
そもそもCIAって?(笑)
CIAとは、アメリカ中央情報局(Central Intelligence Agencyの略)で、対外諜報活動を行うアメリカ合衆国の情報機関とのこと。
活動内容は、情報収集、情報操作なんて書いてあるけど、難しいよね?
アメリカのCIAと並んでロシアのKGBなどは、国のために秘密裏に工作活動をしている機関という認識で良しとするか。(笑)
それにしてもCIAの「I」がインテリジェンスの略だとは知らなかったな。
当然だろうけど、優秀な人が就ける職業だよね!

どうやったらCIAの一員になれるんだろう?
検索して出てきた答えが本当のことなのか検証できないけれど、一応情報として載せてみようか。
運転免許証を持ち、視力、聴力、健康状態が良好で、世界中にあるCIA海外支局での勤務が可能な、23歳から35歳までの米国市民なら、誰でもCIAに応募できるとのこと。
ただし、やはりインテリジェンスな集団なだけあって、IQが通常の人間よりもかなり高い人が採用されるらしい。
応募資格だけならクリアできても、IQレベルのクリアに加えて採用試験の合格、そして厳しい訓練に参加して心身鍛錬をする。
身元を隠して任務を遂行することが多いため、外国に派遣された人が逮捕をされてもCIA本部が助けてくれるとは限らない、なんてこともあるみたいだよ。
かなり過酷な任務が待っているというのに、CIAには毎年多くの人が応募するとのこと。
採用されても、「CIAに合格したよ!」と自慢もできないのにね。(笑)
愛国主義者が多い国民性ということなのかな?
そしてきっと主人公マヤは、高校時代に実施されたIQテストで興味深い結果を出して、青田買いされたのではなかろうか?
これ、ただのSNAKEPIPEの予想だから当てにしないでね。(笑)

頼りなさそうに見える、今回の主人公マヤは、その優秀なCIAの中でも更に抜きん出た才能を持つ分析官。
何年経っても、ウサーマ・ビン・ラーディンの居場所どころか、情報すら掴みきれていないパキスタン・イスラマバードのCIA秘密基地にマヤが送り込まれるのである。
着任早々、ウサーマ・ビン・ラーディンを守る傭兵のフォーメーションについての指摘をしたり、アラブ系の名前についての知識の深さを知らしめる。
ははあ、これがマヤが抜擢された理由なんだな、と解り始めるのだ。
アメリカで議論がされたという、拷問のシーンでも最初は目をそむけていたのに、徐々に慣れたのか男性に拷問させながら、平然とした顔で質問を繰り返す。
華奢とか頼りないって言って、ごめんなさいっ!

ひたすら顔写真とにらめっこ、拷問シーン、拷問ビデオの検証などの地道な似たような時間の長いこと!
CIAによる捕えたイスラム教徒への拷問は、かなり強烈。
あれを見て、マネをする人がいないかとヒヤヒヤしちゃったSNAKEPIPE。
すごーく苦しそうだったからね。
拷問を行なっていたCIAの男性が
「もう嫌だ。アメリカに帰る。100人以上拷問してるよ。」
と言った時はホッとしてしまった。
拷問の最中は、ちっとも嫌そうな顔してなかったから。
ああ、この人も普通の良識を持った人なんだって思ったからね。
そして、それだけの人数を捕えて口を割らせようとしても、ウサーマ・ビン・ラーディンの居場所が分からないんだ、ということも同時に知ることになる。
これ、単なるイメージだけど、イスラム圏の方って結束が堅い感じするよね?
絶対裏切らない、それこそ死んでも喋らない。

やっと「第2の人生をやり直すことができる」程の金額と引き換えに、ビン・ラーディンの情報提供をしてくれる医師とコンタクトを取ることに成功する。
CIA基地内で医師を出迎えるCIA職員。
「ようこそいらっしゃいました」
歩み寄った矢先、爆発が起きる。
情報提供者である医師は情報ではなく、爆弾を運んできたのだった。
CIA職員も多数犠牲となり、情報も得られないという最悪の状態である。

外部と接触すればテロの可能性があり、捕虜の拷問による自白もままならない。
自ら外出しても襲撃されてしまう。
そんな八方塞がりの状況下で、マヤは今まで集めた写真や映像などの資料を再点検し、あることに気付く。
かつて死亡した、と伝えられていた重要人物が別人ではないか、と言い出すのだ。
これ、確かにものすごく重要なポイントね。
何故なら、アラブ系の方の顔を区別するのって難しいと思うから。
上の写真は「ゼロ・ダーク・サーティ」の中で使用されていた、壁に貼られたテロリストの顔写真一覧である。
ターバン巻いて口髭や顎髭はやして、全体に白っぽいユルユルの服装だと誰が誰だか判断し辛いよね?
アラブ系の事情に詳しいマヤは、顔の判別も得意だったのね。
再調査してみると、本物の(?)重要人物はまだ生きていて、その人物こそがビン・ラーディンの連絡係だ、と判明する。

ここから一気に話が進んで行く。
連絡係の足取りを追い、その棲家を特定。
衛星写真で家を撮影すると、女性3名と男性2名の存在が浮かぶ。
何かしらのセンサーにより、それらの人物が全て成人している男女であることが判明。
「女性が3名いるならば、3組の夫婦と思われるため、男性がもう1名いるはず」
とマヤが推測する。
男性もう1名は本当にいるのか?
男性がいると仮定した場合、それが標的であるビン・ラーディンなのか?
ビン・ラーディンが衛生写真で確認できたのならば、話は簡単だったけれど、その確認ができないまま月日だけが流れていく。

マヤは「なんで突入しないのよっ!」とイライラしていたけれど、確証もないのにアメリカ軍が突然民家に押し入るわけにはいかないもんね?
万が一ビン・ラーディンがいなかったら、と考えると及び腰になってしまうのもうなずける。
それなのに何故だかマヤは「100%この家にいる」と断言するのだ。
この自信、どこから来るんだろう?
もちろん状況から判断して、ということになるんだろうけど、SNAKEPIPEは「単なる勘」だと思った。
そしてその「マヤの勘」に賭けて、突入にGOサインを出したアメリカ政府はすごいな!

ついに捕獲作戦が幕を開ける。
舞台となるのは、アフガニスタンとの国境から100マイル離れた、パキスタンの郊外アポッターバードにあった、広さ38000平方フィート(3530m2)のビン・ラーディンの3階建ての隠れ家である。
公開されている情報と設計図を元に、ヨルダンにこの隠れ家を完全再現しちゃったというから驚きだね!
確かに写真などで確認できる建物と、区別ができない程の出来栄えだったよ。
そして作戦決行の日と同じような、月のない暗い夜を選んで撮影したとのこと。
実際の作戦を再現する映像だから、このあたりからの画面が暗いんだよね!
それでも暗闇の中で何が行われているのか、手に汗握るような緊張感を持って食い入るように画面を見つめてしまう。
上の写真は、シールズ隊員が装着している赤外線スコープから見た映像を再現した様子である。

ああ!赤外線スコープ!(笑)
SNAKEPIPEが一番初めにスコープから覗いた映像を観たのは恐らく「羊たちの沈黙」だろう。
バッファロー・ビルがFBI訓練生であるクラリス・スターリングを覗き見するシーンである。
見る/見られるという立場の違いは、見られる側に弱者であることを認識させ、見る側にはより強力な優位性を与えていた。
加えて「覗き」という行為の変態性も露呈してくれた、秀逸な演出だったよね!
何度観ても、あのシーンはドキドキするSNAKEPIPE。
そのため赤外線スコープとか暗視スコープという言葉を聞くだけで、ドキドキする、という条件反射が起きてしまうのだ。
どちらにしても赤外線スコープを使う時というのは、相手には知られないように秘密に行動する時。
「ゼロ・ダーク・サーティ」の突入シーンも当然ながら、気付かれないように侵入する状況である。

ゼロ・ダーク・サーティ(深夜0:30)、作戦決行の時間である。
「あのUBLの捕獲だって!?」
作戦内容を聞いた時に驚き、ウサーマ・ビン・ラーディンの頭文字からUBLと呼んでいたネイビーシールズ対テロ特殊部隊「DEVGRU」がステルス型UH-60ブラックホークヘリコプター2機に分乗する。
建物の敷地内にロープをつたって降下、建物を急襲する。
約40分後には邸宅を制圧してしまう。
そして屋内に隠れていたビン・ラーディンも殺害するのである。
とても意外だったのが、本当に本物のビン・ラーディンが潜んでいたのに、警護する人員が建物内に配属されていなかったこと。
SNAKEPIPEは、あれほどの重要人物だったら、24時間・360度をギッチリ重厚な隙のない警備体制を敷いているはずだと勝手に思い込んでいたよ。
映画の中では一人だけビン・ラーディン側の男性が発砲していたけれど、あっさりシールズにやられていて、その後応戦する気配すらなかった。
建物を制圧した後は証拠品として、殺害したビン・ラーディンの遺体やハードディスク関連を押収し、ヘリコプターで運び込み、作戦は終了するのである。

ここでSNAKEPIPEにはちょっと疑問が。
アメリカ側からすれば「9.11同時多発テロ首謀者であるビン・ラーディンを殺害するための作戦」ということだけど…。
パキスタンから見ると、領土内に不法侵入され、民家を襲撃、発砲、殺人、更には略奪行為をされたということになるのでは?
Wikipediaによれば、やっぱりパキスタン側から主権侵害であると非難があったとのこと。
世界的には歓迎の声が多かったようだけど、立場を変えてみると違う感想を持つこともあるよね。

「100%この家にいる」と断言したマヤの勘は大当たりだった。
ヘリコプターで運ばれたビン・ラーディンと思われる遺体と対面したマヤは無言でうなずく。
間違いない、ビン・ラーディンだ、と。
マヤの確認が決め手となり、ついにアメリカ大統領の、あの発言「Justice has been done」を聞くことになる。
こうして10年に及んだマヤの追跡は終わるのである。
全く表には出てこない、匿名のまま任務を終えるCIA職員の活動が良く解る映画だった。
今でも世界のどこかで、この映画のモデルとなった女性CIA分析官が活躍してるんだよねえ。




20XX年X月X日に何があった、また違う日にはこんなことがあった、というように実に淡々と映画が進んでいくため、ドキュメンタリー映画を観ている気分にさせられた。
前作のアカデミー賞を総なめにした「ハート・ロッカー」も戦争映画だったし、今回も「女流監督」というイメージとはかけ離れたクールな視線で撮られた作品である。
男女同権を謳っているアメリカ社会に属している主人公マヤが、性差別を感じさせる場面に直面したシーンを採り入れている辺りに、女性の目線を読み取ることができるかもしれない。
そしてこの感想は同性だから感じることなのかもしれないけどね?

この映画を監督したキャスリン・ビグローとはどんな女性なんだろう?
上の写真は演技指導中の(?)キャスリン・ビグロー監督である。
一番右に写ってる女性なんだけど、スラリとした長身で、監督ご本人がこの映画の主役でも良かったと思ってしまうほど決まってるよね?
サングラスを外したお姿がその次の写真。
OH~ッ!ビューチホーーーッ!(笑)
1951年生まれの61歳?見えない、見えないっ!
こんなに素敵な、美貌の女性が監督していたなんてビックリ!
「ターミネーター」や「エイリアン2」でお馴染みの、ジェームズ・キャメロン監督は5回結婚しているらしいんだけど、キャスリン・ビグローはその3回目の時のお相手なんだって。
第82回アカデミー賞を元夫婦で争い、主要部門は元妻が勝ち取ることになるとは。(笑)
SNAKEPIPEは「アバター」を観たことがないし、「タイタニック」もこれから先鑑賞することはない映画と断定できるので、キャメロン監督作品よりずっとキャスリン・ビグロー監督作品が好み。
キャスリン・ビグロー監督の次回作はどんな映画になるんだろう?
「ハート・ロッカー」の冒頭で
War is a drug(戦争は麻薬だ)
という言葉があったけれど、ビグロー監督自身が中毒になっていたとしたら、次もまた戦争を題材にした映画になるんだろうか?
楽しみに待ちたいと思う。