ミケル・バルセロ展 鑑賞

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【オペラシティアートギャラリー入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2021年3月に「佐藤可士和展」を鑑賞した帰り、国立新美術館のチラシを置いてあるコーナーで、SNAKEPIPEの目に止まったのが「ミケル・バルセロ展」のフライヤーだった。
確認したところ「国立国際美術館」 が会場となっていて、なんと大阪!
こんな展覧会を東京でやってくれたらいいのに、というSNAKEPIPEの願いが通じたのか。
東京オペラシティギャラリーでの開催を知った時には小躍りしたよ。(笑)
展覧会は1月13日から始まっていたので、客入りが落ち着いたのか、予約なしで入場できるという。
SNAKEPIPEの誕生日記念第一弾として、ROCKHURRAHがバルセロ展をプレゼントしてくれたよ!
第二弾もあるらしいので、期待しちゃうね。(笑)

ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、天気予報の最高気温に騙されてしまった。
非常に寒い思いをしながら、初台に向かう。
春は風が強くて冷たいから油断禁物だよね。

オペラシティアートギャラリーのサイトを参照させてもらい、簡単にミケル・バルセロの経歴を書いておこうか。

1957 スペイン・マジョルカ島生まれ
1974-75 パルマ・デ・マジョルカ、バルセロナの美術学校に学ぶ
1976 この頃前衛芸術家のグループや自然保護団体とアナーキストのグループの行動に参加
1982 ドイツ、カッセルで開催の国際美術展「ドクメンタ7」に出品し、ヨーゼフ・ボイス、ジャン=ミシェル・バスキアらと出会う
1984 パリに拠点を置く。ヴェネツィア・ビエンナーレに参加
1985 この年から翌年にかけ初の大規模な個展がフランス、スペイン、アメリカの美術館を巡回
1986 マジョルカ島の古い狩猟館を住居兼アトリエにする。ニューヨーク、レオ・カステリ画廊で個展
1988 初めてアフリカを旅しサハラ砂漠を縦断。マリにアトリエを構え、以後繰り返し滞在し制作
1993 アルタミラ洞窟壁画を訪れる
1995 マリで陶作品の制作を始め、以後欧州各地で制作
1996 パリ、ジュ・ド・ポーム国立美術館とポンピドゥー・センターで回顧展

1957年生まれなので、現在65歳になるんだね。
80年代から大規模な個展が開催されているのに、SNAKEPIPEは全く知らなかったアーティストだよ。
そしてバルセロの活動は絵画にとどまらず、本の挿絵、彫刻、陶作品、パフォーマンス、舞台美術や礼拝堂の装飾だったり天井画なども手がけているという。
洞窟壁画への関心が高く、ショーヴェ洞窟のレプリカプロジェクトでは学術委員に名を連ねているんだとか。
ちなみにショーヴェ洞窟の壁画は、有名なラスコー洞窟より2万年以上前に描かれたと推測されているらしいね。
世界的に有名なミケル・バルセロ、日本初大規模展、期待しちゃうよ!(笑) 

予約なしで大丈夫というのは、会場に入って納得する。
お客さんが少ないため、ガラーンとしていてゆっくり観て回れるよ!
とても良い環境だね。
数枚を除いて撮影もオッケーなので、たくさん撮影できたよ。
それでは早速紹介していこう。

「こわいっ!」
観た瞬間から恐怖を覚えたのが、2019年の作品「下は熱い」。
海と魚が題材と聞けば、穏やかなイメージが浮かぶかもしれないんだけど。
バルセロの魚は、飛び出す絵本状態で、魚が立体的なんだよね。
タイトルの意味は不明だけど、SNAKEPIPEはこの絵を観て、筒井康隆の小説「魚」を思い出していた。
なんでもない日常風景が一変する、あの恐怖。
誰もが経験し得るような話だったから、余計に怖かったのかもしれない。
じわじわと忍び寄ってくる物言わぬ魚の群れ。
あの小説にピッタリの作品じゃないかな?
「下は熱い」の部分をアップで載せてみよう。
魚の頭部分が飛び出しているのが分かるかな?
バルセロ、すごい!
やや興奮気味に鑑賞を続ける。

この絵の前で動けなくなってしまったSNAKEPIPE。
遠目では「もやっ」とした印象しかないと思うけど、実物には、なんとも言えない「念」があるように感じるんだよね。
亡霊たちが船に乗って漂っているようなイメージ。
「不確かな旅」も2019年の作品とのこと。
色合いは落ち着いているし、海と船というシンプルな対象しか描いていないのに、戦慄させらてしまうよ。
バルセロ、恐るべし!

黄色いバックに赤い円。
禅の円相のようにも見えてくるけど、一体なんだろう?
どんどん近づくと、闘牛場を真上から描いていることがわかってくる。
ササッと筆を走らせたようにしか見えないのに、 真ん中の黒い部分は闘牛士と牛なんだね。
バルセロは闘牛が好きらしく、闘牛に関する絵が何枚か展示されていたよ。
載せた画像「イン・メディア・レス」は2019年の作品で、1990年「とどめの一突き」に呼応するような構図になっていたね。 
繰り返し同じような題材を似た構図で描くというのは、とても大事に思っている作品なんだろうね。

「亜鉛の白:弾丸の白」は1992年の作品。
キリストの磔刑図をアレンジしているという。
逆さ吊りのヤギの下には、頭蓋骨があり、ヤギの股付近には白いタコが描かれている。
意味は掴みきれないけれど、不穏な雰囲気は十分感じるよね。
海の悪魔とも呼ばれる白いタコが、逆さ吊りにされた黒いヤギを喰らっているようにも見えてくる。
バルセロはいくつもの題材を一枚の絵に描くことが少なくて、一つを大きくバーンと見せることが多いかも。
より一層インパクトが強くなるよね。

展覧会のポスターに使用されていたのが、1991年の作品「雉のいるテーブル」。
西アフリカの魔除け市(フェティッシュ・マーケット)で売られている、まじないや呪術で使用される動物たちのミイラに着想を得て描かれたものだという。
テーブルに並べられているのは、そうしたおどろおどろしい物品なんだね。
ところどころに見える赤い色がなんとも不吉で、詳細を観察していくほどに不気味さが増す。
年表にもあったように、バルセロはアフリカにもアトリエがあり、過酷な風土に魅せられたんだとか。
生を実感できる環境に身をおくことで、制作に幅が出たのかもしれないね。

アフリカや洞窟壁画に惹かれるバルセロ。
原始的な魂で制作したのがセラミックの作品群なんだよね。
画像の手前は「カサゴの群れ」という2020年の作品。
恐ろしい形相のカサゴが口を開けていて、今にも飛び出して人に襲いかかりそうな迫力!
ラフな作りと着色だからこそ、余計に怖いのかもしれない。
奥に見える作品も、素晴らしくて欲しくなったよ。(笑) 
洞窟壁画みたいな絵が描かれているプリミティブな作品も良かったね。

上のカサゴもそうだけど、バルセロの作品は作品集などの2次元媒体で観ても、分からないかもしれない。
わかりやすいように、キャンバスを横から撮影してみたのがこれ。
キャンバスが波打ってるのが分かるかな。
絵の具を塗り重ねて厚みを出すアーティストは多いけれど、バルセロはキャンバス自体に凹凸をつけて、立体感を出しているんだよね。
「青い作業着を着た自画像」とい撮影禁止だった作品は、その凹凸を利用して見る角度によって、バルセロの違う年代を表現していたよ。
こうした作品も、実物じゃないと分からない仕掛けだよね。

まるでネガフィルムのように見える作品。
これはブリーチ・ペインティングといって、絵の具を脱色しながら描く技法だという。
漂白剤に使われる次亜塩素酸塩水溶液を使用し、黒色の絵の具を脱色する。
時間が経たないとどれくらい脱色できたか分からない、手探り状態での制作だというから、実験的だよね。
フィルムを使って撮影した写真が、現像してから何が写っているのか確認できる行為に近い感じ。
ネガフィルムみたい、と思ったのは間違いではないかもね。(笑)

マリの女性を描いた作品で、タイトルは「内生する1人を含む4人」。
一番右の女性には、腹部に胎児がいるみたいだよね。
アフリカの人物を描いた作品は、色鮮やかで、滑らかに筆を走らせ、ほんの数分で仕上げたような即興性を感じた。
サラサラと描いたようにみえるのに、女性が4人いるとか、ターバン巻いた女性が歩いているところだとすぐに分かるんだよね。
アフリカのシリーズは、女性たちが生き生きと描かれている。
ゴーギャンはタヒチ、バルセロはマリ、といったところかな?

バルセロが行った実験的なパフォーマンス映像が、展覧会で鑑賞できた。
YouTubeで見つけたので、載せておこう。 

紙に水で描いた絵だという。 
即興で、何気なく動かしているように見えるのに、どんどんバルセロの世界が構築されていく様は圧巻!
水が蒸発していくと、徐々に絵が薄れていき、最後には消滅してしまう。 
その儚さも含めて、パフォーマンスなんだね。

日本ではほとんど紹介されていなかったスペインの巨匠、ミケル・バルセロ。
圧倒的な迫力に慄えてしまったSNAKEPIPE。
鑑賞できて本当に良かった展覧会だった。
招待してくれたROCKHURRAHに感謝だね!(笑) 

奇想のモード 鑑賞

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【庭園美術館の入り口を撮影。ド派手なピンクが目を引くね!】

SNAKEPIPE WROTE:

2022年になって初めて、長年来の友人Mと会う約束をした。
せっかくなので、展覧会や映画など何か鑑賞したいよね!
「ここはどうだろう?」と、お互いにアイディアを持ち寄って検討する。
SNAKEPIPEは東京オペラシティギャラリーで開催している「ミケル・バルセロ展」を提案する。 
友人Mは東京都庭園美術館の「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」が面白そうだと言う。
シュルレアリスムに目がないSNAKEPIPEなのに、その展覧会はノーチェックだった!
教えてくれてありがとう、友人M!(笑)
今回は庭園美術館に行くことにしたのである。 

曇っていて風が強い、とても寒い日に目黒に向かう。
服装失敗したかも、と思いながら待ち合わせ場所である庭園美術館まで歩く。
前回来たのは2019年3月の「岡上淑子 沈黙の奇蹟」以来なので、およそ3年ぶりになるんだね。
先に来ていた友人Mと合流し、早速会場に向かう。
何度来ても、旧朝香宮邸に「うっとり」しちゃう!
それなのに重要文化財なので、館内の撮影ができないんだよね。
アール・デコの雰囲気とアートとの融合が素晴らしいんだけど、撮影不可なら仕方ない。
新館の撮影はできたので、たくさん撮ってきたよ!
そのため今回のブログは、購入した図録の画像も併せて載せているよ。

入り口入ってすぐに展示されていたのが、ヤン・ファーブルの甲冑。
これは玉虫の羽根を使って制作されているんだよね。
さすが曽祖父が、あの「昆虫記」を書いたファーブル!
キッチリひ孫にも、その精神が伝承されてるよね。
一体何匹の玉虫を使用したんだろう?
死後にも輝きを失わないという玉虫に驚いたよ。

19世紀半ばにつくられたという髪の毛を使用したジュエリー。
画像はブローチで、喪に服す意味以外にも愛情表現として身につけることも多かったという。
こうした細工ができる職人がいたってことだよね。
他にも透かし模様にしたピアスやブレスレットなどが展示されていたよ。
小谷元彦の髪の毛を編み込んで制作されたドレスも圧巻だった。
黒い髪の毛には情念がこもってるように感じられて、おどろおどろしかったよ。
金髪とは違う印象を持ってしまうのは何故だろう?

有名ブランドであるシャネルのデザイナー、ココ・シャネルと同時代にライバル的な存在だったというエルザ・スキャパレッリ
 「ショッキング」という名前がついた香水瓶がキュートだよね!
SNAKEPIPEはスキャパレッリの名前を聞いたのは初めてだったけれど、この香水瓶を完成に導いたのが女流画家のレオノール・フィニという説明を読んで嬉しくなった。
2015年に「SNAKEPIPE MUSEUM #33 Leonor Fini」で紹介したことがあるからね! 
レオノール・フィニに感じたエネルギッシュな女性像は、おそらくスキャパレッリにも通じるのだろうと想像する。
他にもドレスやアクセサリーなど、たくさんの作品が展示されていたよ。
スキャパレッリについては、もう少し調べてみたいと思った。

1939年にサルバドール・ダリが描いたという、雑誌「ヴォーグ」の表紙。
ダリが雑誌の表紙になってるなんて、豪華だよね!
そして調べて驚いたことに、なんと「ヴォーグ」の創刊は1892年とのこと。
そんなに歴史がある雑誌だったとはね。
更に時代が古い、1862年創刊の「ハーパース・バザー」の表紙を多く手がけたのが、ROCKHURRAHと一緒に2017年3月に「グラフィズムの革命展」を鑑賞したカッサンドル! 
知ってる名前が出てくると嬉しいね。(笑)
ダリと同時代のカッサンドルの作品も多く展示されていたよ。 

第6章「裏と表」で、まさかヴィヴィアン・ウエストウッド(セディショナリーズ)のデザインが展示されているとは思わなかったよ。
パンクのイメージでしか捉えてなかったガーゼ・シャツだけど、確かにシュールだね!(笑)
他に、マルタン・マルジェラやドルチェ&ガッバーナの作品などが展示されていたよ。
マルジェラは、他のチャプターでも作品が展示されていたので、シュルレアリスムを現代に取り込んでいるデザイナーと言えるのかもしれないね。

撮影禁止である旧朝香宮邸での展示が終わり、新館へと向かう。
ここからは撮影可能!(笑)
第8章は「ハイブリッドとモード」。
画像は舘鼻則孝の「太郎へのオマージュ」作品群ね。
岡本太郎を意識して制作され靴やヘアピンなどが、迫力満点で展示されている。
シルバーで光ってて、とても好き!(笑)
他に花魁の高下駄からインスピレーションを得たという、ヒールがない靴も多数展示されていて見事だった。

友人Mが一番楽しみにしていたのが串野真也の作品!
人間が履くことで「キメラ」を想起させることを主題にしているという。
足を通さなくても、すでに「キメラ」な作品が多くて、夢中で写真を撮ってしまった。
ガラスに光が反射してしまうので、SNAKEPIPEの画像はイマイチだけどね。(笑)
どの部分にどんな革や素材を使用しているのか、とても興味があるよ。
実際に履こうとは思わないけれど、ずっと観ていたくなる作品だった。
1980年代生まれの面白い日本人デザイナー2人の作品を観られて、とても良かったよ!

「奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム」展は、館内の雰囲気とマッチしていて、素晴らしい展覧会だった。
コロナじゃなかったら、もっと感嘆の声を上げたり、友人Mと語らいながら鑑賞できたのになあ。
次回はどんな企画を立ててくれるのか、楽しみだね! 

MONDO 映画ポスターアートの最前線 鑑賞

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【国立映画アーカイブの入り口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAHから誘われたのは、国立映画アーカイブで開催されている「MONDO 映画ポスターアートの最前線」という企画展の鑑賞だった。
国立で映画を扱っている施設といえば「国立フィルムセンター」があったはずだけど?
調べてみると2018年に東京国立近代美術館より独立し、新しい組織「国立映画アーカイブ」になったそうで。 
ニューヨークのMOMAで、例えばカルト映画「ピンク・フラミンゴ」が永久保存されたことが話題になったりするように、日本にも邦画を保存する国立の組織があるってことなんだね。
検索してみると「薔薇の葬列(松本俊夫監督 1969年)」も所蔵されていたよ!(笑)
あまり行った記憶がない国立フィルムセンター、じゃなかった国立映画アーカイブは、チケット予約の必要もないそうなので、天気の良い日に出かけることにしたのである。

銀座線の京橋駅より徒歩1分という、方向音痴にも優しい立地にある国立映画アーカイブ。
ほとんどのお客さんの目当ては映画の鑑賞だろうね。
今回は香港映画を上映していて、チケットは予約が必要だったみたい。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの目当ては企画展の「MONDO 映画ポスターアートの最前線」で、常設展「日本映画の歴史」も鑑賞できるという。
他のお客さんはほんの数名だったので、ゆっくり鑑賞できそう!(笑)
写真撮影もオッケーだったので、たくさん撮ってきたよ。
感想をまとめていこうか。

まずは「日本映画の歴史」から観ていこう。 
1919年の映画「カチューシャ」のポスターや当時活躍していた役者のスナップ写真などが展示されている。
中でも目を引いたのは「丹下左膳」のポスターだよ。
主演の大河内傳次郎の顔をアップで描く手法は、いわゆる浮世絵の大首絵と同じだよね。
「ウエスタン式時代劇」というコピーも気になるし。(笑)
そして驚くのは、フォントの素晴らしさ!
1933年の映画とのことなので、時代はアール・デコ後半といったところか。
浮世絵とアール・デコのミクスチャーと言っても過言ではないかも。
このポスター制作したのは、一体誰なんだろうね。

1953年に初号機が完成した、コニカラー・システムというコニカミノルタ製の撮影機材がこれ。
なんともレトロな佇まい、手書きのように見える商品名が良い味出してるよね!
ほんの5、6年ほどしか出回らなかったらしいけど、オブジェとしても良い感じ。
映写機などの展示もあって、映画の人気が高まっていたことがわかるよね!
他に注目したのが荻野茂二監督が手がけた実験映像「AN EXPRESSION(表現)」や「色彩漫画の出来る迄」で、思わず見入ってしまった。
映像が載せられないのが残念だよ!

順路に従って歩いていくと、「MONDO 映画ポスターアートの最前線」に続いていた。
71点ものポスターが所狭しと展示されている。
これは米国テキサス州オースティンを本拠地として活動している「MONDO」による作品群とのこと。
「MONDO」はデザイナーやイラストレーターに映画ポスターを描いてもらい、オースティンにあるギャラリーで展示を行っているという。
ポスターはオンライン・ショップで購入できて、$50から$55、5,700円から6,300円くらいなので、手が出せない金額ではないよ。
ポスターは全てシルクスクリーン印刷のため数量限定だというから、余計にマニアにはたまらないかもね?
それでは気になった作品を紹介していこう!

悪魔のいけにえ(原題:The Texas Chain Saw Massacre 1974年)」はトビー・フーパー監督作品で、ホラー映画好きのROCKHURRAH推奨の一本だよ。
 ほとんどホラー映画を観たことがなかったSNAKEPIPEもお勧めされて一緒に鑑賞したっけ。
怪奇現象や霊が出てくるようなホラー映画とは違い、リアリティのある恐ろしさ!
ポスターは、そんな人間の怖さを表しているよね。 
ポスターを描いたのはジェフ・プロクターだって。
このTシャツあったら、きっとROCKHURRAHは購入したに違いないよ。(笑)

ジョン・カーペンター監督の「遊星からの物体X(原題:The Thing 1982年)」を描いたポスター。
この映画もROCKHURRAHにお勧めされて鑑賞したSNAKEPIPE。
とても怖かったよ!
2011年に公開された「ファーストコンタクト」も観たはずだけど、 あまり記憶にない。(笑)
とてもホラー映画のポスターには見えない南極観測所の静寂を描いたのは、ジェイソン・エドミストン。
カナダ在住のアーティストだって。 

2011年8月に書いた「SNAKEPIPE MUSEUM #11 Tomer Hanuka」で取り上げたトマー・ハヌカの名前を目にして嬉しかった。
美しい色彩と構図に魅了され、10年以上前からファンになったアーティストだからね!
アニメ映画「戦場でワルツを(原題:Waltz with Bashir 2008年)」の映像美も印象に残っているよ。
今回の展覧会では、トマー・ハヌカの作品2点を鑑賞することができた。
1つはヒッチコック監督の「サイコ(原題:Psycho 1960年)」。
ヒロインの、あの有名なシャワー・シーン後を描いていてナイスだよ!

もう1点はニコラス・ローグ監督の「地球に落ちてきた男(原題:The Man Who Fell to Earth 1976年)」。
デヴィッド・ボウイ主演の映画だということは知っているけれど、なんと未鑑賞!
そのためポスターの意味が分からなくてごめんなさい。(笑)
ROCKHURRAHは観たことがあるらしいけれど、昔のことなので内容を忘れてしまったとか。
トマー・ハヌカらしい中間色を使用していて、美しいポスターだよね!

レポマン(原題:Repo Man 1984年)」はアレックス・コックスのデビュー作だったね。
主演だったエミリオ・エステベスの名前も懐かしいけれど、最も強く記憶に残っているのはオープニング・シーン。
この場面をパクっていたのが、大昔放映されていた深夜番組「FM-TV」だったことを思い出す。
あの番組大好きだったんだよね。(笑)
「レポマン」のオープニングを使用してモヒカンにしちゃったポスター、秀逸だよ!
描いたのはジェイ・ショーという「MONDO」の初期から携わっているアーティストだって。

カリガリ博士(原題:Das Cabinet des Doktor Caligari 1920年)」を観たのは大昔のことなので、あまりよく覚えていないよ。
丸尾末広がカリガリ博士を題材にしていたのを観たことがあるけれど、ベッキー・クルーナン版のポスターも素晴らしい!
黒い線が特徴的で、構図の大胆さや色味の少なさが効果的なんだよね。
遠目からでも注目されるポスターだと思うよ。

最後に紹介するのはキューブリック監督の「時計じかけのオレンジ(原題:A Clockwork Orange 1971年)」だよ!
SNAKEPIPEだったら、好きな映画ベスト10にこの映画をチョイスするかも。
この映画のポスターだったら、主人公のアレックスを描く場合が多いんじゃないかな。
ロリー・カーツは「コロヴァ・ミルク・バー」のオブジェをアップで描いているよ。
2008年8月の「好き好きアーツ!#04 スタンリー・キューブリック」で、「あのマネキン人形も一体欲しい」と書いているSNAKEPIPE。(笑)
また「時計じかけのオレンジ」が観たくなったよ!
 
公開当時に発表されたポスターも面白いけれど、現役で活躍しているアーティストによるオマージュとしてのポスターも見事だったね。
自分が好きな映画が、違う視点からポスターになっているのは刺激的!
敬愛するデヴィッド・リンチのポスターが展示されていなかったのが少し残念だったかな。(笑) 
鑑賞できて良かった展覧会だったよ! 

クリスチャン・マークレー とユージーン・スタジオ 鑑賞

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【看板を撮影し忘れたので、フライヤーを載せてみたよ】

SNAKEPIPE WROTE:

あけましておめでとうございます。
皆様、お正月休みをのんびり過ごされていますか?

ROCKHURRAH RECORDSは、久しぶりに成田山新勝寺へ初詣したよ!
SNAKEPIPEは、成田山に行くと気持ちが引き締まるんだよね。
一昨年に違う神社を参詣した時には、湧いてこなかった感情だよ。
おみくじはROCKHURRAHが吉、SNAKEPIPEは初めて大吉を引いて嬉しかった。(笑)

さて、今年最初のブログは、昨年末に鑑賞した展覧会について書いていこう。
正月でも、いつも通りの展開だね。(笑)
鑑賞したのは東京都現代美術館で開催されている「クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]」と「ユージーン・スタジオ 新しい海」の2つ!
クリスマス過ぎの晴れて寒い日に、ROCKHURRAHと一緒に木場に向かったのである。

朝一番の時間に予約をしていたせいか、人が少ない。
混雑している展覧会ではゆっくり鑑賞できないので、とても良い環境だよ。(笑)
最初に「クリスチャン・マークレー」の展示から鑑賞する。
東京都現代美術館には珍しく、今回は一部を除いて撮影オッケー!
バシバシ撮影させてもらおうね。(笑)
まずはクリスチャン・マークレーについて、少し調べてみようか。

1955 スイス人の父親とアメリカ人の母親の間に、アメリカ・カリフォルニア州で生まれる
ジュネーブで暮らす
1975–1977 ジュネーブのエコール・シュペリエール・ダール・ヴィスエルに通う
1977–1980 ボストンのマサチューセッツ芸術大学で美術学士のBFA取得
1978 ニューヨークの相互関連メディアプログラムのスタジオ、クーパー・ユニオンで学ぶ
1979 ターンテーブルでスキップするLPレコードの通常のリズムを打楽器として使用する、最初のパフォーマンス作品を発表
1980- 即興の演奏のほか、聴覚と視覚の結びつきを探る作品で、美術の分野でも活躍する
2011 「ザ・クロック」(2010)で第54回ヴェネチア・ビエンナーレ(2011)金獅子賞を受賞
現在も世界各国の主要な美術館での個展を開催するほか、音楽の分野でも重要な活動を続けている

スイスで育ったあと、アメリカで生活しているんだね。
現在はニューヨークとロンドンを活動拠点としているみたい。
いわゆるラップ音楽で使われているターンテーブルとは違って、打楽器としての役割をさせた初めての人物ということになるらしいよ。
理由は、なんとドラマーを探すことができなかったからというから面白いよね。(笑)
ソニック・ユースやジョン・ゾーン、大友良英など多くのミュージシャンと演奏や録音を行っているという。 
音を使った現代アート、どんな作品があるんだろうね?

会場に入ってすぐに展示されていたのは、床に直置きされたモニター12台。
「リサイクル工場のためのプロジェクト(2005年)」は、なんと東京で制作されたという。
工場内で作業中に響く音をリズムとして捉えてるんだよね。
やってることは70年代から80年代のインダストリアル系に近いのかな。
この手の音が大好物のROCKHURRAHは、この時点で興奮していたよ。(笑)
短いけれど動画を載せてみよう。

1984年の「ファスト・ミュージック」は、マークレーがレコードを食べる様子が映像化された作品。
ファスト・フードをもじったタイトルなんだろうけど、夢中になって食べまくってたよ。(笑)
80年代にこんなパフォーマンス・アートをやっていたんだね。
マークレーは学生時代、ヨゼフ・ボイスナム・ジュン・パイクがメンバーとされている1960年代から70年代の芸術運動「フルクサス」に興味を持っていたらしい。
その影響からなのか、そこまで難解なアートではないところも好ましいね。(笑)

SNAKEPIPEは「ビデオ・カルテット(2002年)」が最も印象に残ったよ。
あるテーマに沿った映画(映像)シーンをコラージュしていく作品なんだよね。
4つの大型スクリーンには、それぞれ別の映像が流れている。
例えば、画像は「NO」と叫ぶシーンだけを集めたところ。
左から2番めに、Sex Pistolsのジョニー・ロットンがいるよ。
「NO」の時にはやっぱり写っていて欲しい人物だよね!(笑)
およそ14分の映像作品だけれど、もっと長く感じる。
4つのスクリーンがあるので、4倍にあたる1時間ほどの映像を観た気分なんだろうね。
ありとあらゆる映像の網羅は、圧巻だったよ!
これだけの映像を集めるために、一体何本の映画を確認したんだろうね?(笑)

1979年から1986年に作られた「リサイクルされたレコード」は、複数枚のレコードをつなぎ合わせた、パッチワーク状態の作品なんだよね。
どうやらマークレーは、中古レコード屋で1ドル以下のレコードを購入し、作品にしていたらしい。
カラフルな見た目が楽しいし、実際にプレイヤーで音を再生したという。
どんな音か聴いてみたかったなあ!

1989年から90年にかけて制作された「アブストラクト・ミュージック」は、レコード・ジャケットの上にアクリル絵具で絵を描いた作品。
アブストラクトというだけあって、全て抽象画なんだよね。
使用しているレコード・ジャケットも、リサイクルしているようで、印刷されている文字の上に色を塗り、音楽のジャンルに匿名性をもたせることが目的だったとか。
ROCKHURRAHが書いているカテゴリー「ニッチ用美術館」でも、採用して欲しいジャケットだったよ。
ミュージシャンが分からない、というのは難しいのかな。(笑) 

複数枚のレコード・ジャケットをコラージュした「ボディ・ミックス」は1991年から92年の作品。
9作品が展示されていたけれど、全てが上半身男性で、下半身は女性というパターンだった。
観た瞬間に「ぷっ」と吹き出してしまう、面白い作品だったよ!(笑)
ガラスに反射して、自分や背景が写り込んでしまったため、比較的まともに撮影できたものを載せてみた。
黒い作品の場合は全滅だったね。
なんとか良い撮影方法はないものかね?

フランシス・ベーコン、もしくはデヴィッド・リンチを思わせる「コーラスII」は1988年の作品。
雑誌に載っていた写真を再撮影しているんだとか。
テーマは「聞こえない音楽」だって。
実際には聞こえなくても、記憶と照らし合わせて想像することができる、という意味らしい。
口の形だけで言葉や音を想像するのは、国籍も含めて個人差ありそうだね。

2018年から19年に制作された「叫び」は、日本のマンガからイメージを切り取り、コラージュして拡大した後、ベニヤ板に彫った木版画だって。
確かにマンガには「うおぉぉぉ」とか「とりゃーーーー」みたいな、叫ぶシーン多いよね。
実は説明を読まないで作品だけ観ていたので、木目はデザインされたものだと思っていたよ。
上の「コーラスII」同様、「叫び」も「聞こえない音楽」シリーズになるんだろうね。
マンガとコラージュと木版というミクスチャーが面白かった。

映像作品の「サラウンド・サウンズ」は2014年から15年の作品。
アメリカン・コミックによく出てくる効果音を表すオノマトペを抜き出し、アニメーションにしてるんだよね。
百聞は一見に如かず。
映像を載せてみよう!(笑)

「フェイス」は、コロナのため引きこもりを迫られたマークレーが制作した2020年の作品だという。
人間の顔がオノマトペによって隠されているというのが、怒りや不安の可視化を表していると説明文に書いてあるよ。
そう聞けば「なるほど」と思うけど、SNAKEPIPEは説明なくてもコラージュ作品として楽しんだよ!
不安というよりはポップな印象が強かったけどね?

続いて「ユージーン・スタジオ 新しい海」を鑑賞する。
ユージーン・スタジオという名前を聞いたのも初めてなので、調べてみよう。
1989年生まれの寒川裕人によるアーティスト・スタジオで、国際的に評価が高まっているらしい。
詳しい説明があまりなくて、寒川裕人以外にスタジオに所属しているのかなども不明!
作品も今回初めて鑑賞するので、知識ゼロのまま会場に入ってみる。
こちらもほとんど撮影可能だったので、たくさん撮影してきたよ。
今回はSNAKEPIPEの琴線に触れた、2つの作品だけ紹介しようと思う。 

会場入ってすぐに「ホワイト・ペインティング」シリーズという、真っ白いカンヴァスが展示されているのが目に入る。
説明聞かないと解らないタイプの作品なんだよね。(笑)
どうやら世界各国の人々が口づけたカンヴァスだという。
こういう観念的な作品も現代アートだけど、SNAKEPIPEは観た瞬間に「好き!」と思う直感的アートに惹かれる。
今回のユージーン・スタジオで好きだったのは「善悪の荒野」という2017年の作品。
燃えてしまった室内を構築していて、廃墟好きにはたまらないんだよね。
この作品、本当に燃やして作ったのかなあ?(笑)

もう一つは映像を載せようかな。

「ゴールドレイン」は金箔と銀箔の粒子が降ってくる、というシンプルな作品なんだよね。
2020年9月に鑑賞した「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」に展示されていた「Beauty」に似ていたよ。
とても美しい時間が経過していたね。

今回は2つの展覧会をハシゴしてみたよ。
クリスチャン・マークレーは、音楽(音)をテーマにしたコラージュ作品で、とても楽しかった!
現代アートにおける映像作品で、こんなに面白かったのは2011年に鑑賞した「ゼロ年代のベルリン展」でのミン・ウォン以来かも。(笑)
レコード好きのROCKHURRAHも大満足の展覧会だったよ!
ユージーン・スタジオは、ある程度勉強して、予備知識を持ってから鑑賞したほうが楽しかったのかもしれないね。

2022年もたくさん展覧会を鑑賞したいと思っているよ。
本年もどうぞよろしくお願いいたします!