SNAKEPIPE MUSEUM #16 Dorothea Tanning

【まるで楳図かずおの世界!とROCKHURRAHが称したドロテア・タニングの作品】

SNAKEPIPE WROTE:

面白そうな企画展や展覧会情報を検索しているものの、これは!というものに巡りあうことは珍しい。
今年は当たりの年なのか、ロトチェンコマックス・エルンストの展覧会を鑑賞し、充足感を得ることができた。
それでもまだまだ冷めない鑑賞欲!(笑)
もっといろんな作品を知りたい、観たい、ドキドキしたい!
展覧会がないならネット上で探しちゃうもんね。
ということで、今回のSNAKEPIPE MUSEUMは先日鑑賞して大ファンになったマックス・エルンストの妻であるドロテア・タニングについて書いてみたいと思う。

Wikipedeaの記事に「日本では、サルバドール・ダリルネ・マグリットジョルジョ・デ・キリコらの人気の高さに比して、やや過小評価されている感があるマックス・エルンスト」と書かれているけれど、その妻であるドロテア・タニングなんて本当にほとんど紹介されてないんだよね。(笑)
いや、実はSNAKEPIPEもドロテア・タニングご本人はマン・レイの写真で知っていたけれど、作品についてはよく知らないというのが正直なところ。
検索してみるとなんとも幻想的な世界をお持ちのアーティストということが分かって、興味津々になってしまった!
自分のためにもドロテア・タニングについてまとめてみようか。

ドロテア・タニングは1910年アメリカのイリノイ州生まれ。
1935年にニューヨークに移り住み、MOMA(ニューヨーク近代美術館)でダダとシュールレアリズムに目覚めたらしい。
どうやらタニングはファッション広告の商業イラストレーターだったようで、シュール的要素を取り入れた作品を手がけていた模様。
それがメーシーズ(ニューヨークに本部がある百貨店)のアートディレクターの目に留まり、ニューヨークで個展を2回開催(1944年と1948年)。
そのアートディレクターからニューヨークで活躍するシュールレアリズムのグループを紹介してもらったらしい。
そのグループの中にいたのが、後に夫となるマックス・エルンストだった!
偶然は必然、という言葉がぴったりの運命的な出会いだったんだね。(笑)
マックス・エルンストと1946年に結婚。
この結婚式はマン・レイと妻ジュリエットとのダブル・ウェディングだったらしい。

マックス・エルンストとドロテア・タニングの年の差、19歳。(計算してしまった)
そして以前書いたようにマックス・エルンストはこれが4回目の結婚。(笑)
細かいことは抜きにして、上の写真からとても幸せそうな2組のカップルの様子が判るよね!
芸術的な会話をしながら食事したりして、生活そのものがアートだったんだろうなと想像する。
なんとも楽しそうで羨ましい関係だよね!

ドロテア・タニング自身の撮影をしていた人達っていうのも大物ばかりでびっくりしちゃうんだよね。
マン・レイ撮影というのは前から知ってたけど、それ以外にもアンリ・カルティエ=ブレッソンリー・ミラーアーヴィング・ペンなどなど写真界の大御所の名前がズラリ!
マックス・エルンストの交友関係は当然ながら、全て同じようにつながるもんね。
ドロテア・タニングも、まるで50年代のハリウッド女優のような風貌だから、モデル向きだったともいえるよね。
なんて、素敵な時代なんでしょ!(笑)
結婚生活30年の1976年にマックス・エルンストが85歳で死去。
この時、タニングは66歳くらいだったのかな。
それをきっかけにドロテア・タニングはフランスからアメリカに戻る。
なんとも驚くべきことに、それから先もずっと創作活動を続けたんだね。
2012年、今年の1月に101歳で死去。
芸術に一生を捧げた、情熱的な女性だったんだね!


ドロテア・タニングのHPにはタニング誕生の1910年から2011年に発行されたタニングの書籍の紹介までの全ての仕事が紹介されている。
年代ごとにスタイルを変化させたり、絵画だけではなく彫刻や版画を手がけたり、作家としても活躍していた様子。
上の写真は「Poppy Hotel, Room 202」(1970-1973年)という作品である。
織物、羊毛、合成毛皮、ボール紙とピンポン球を組み合わせて作られた現代アートになるのかな。
子供時代に聴いた1920年代のヒット曲からインスピレーションを得た作品みたい。
どうやらシカゴ・ギャングの妻が服毒自殺をしたホテル202号室について歌われた内容みたいなんだよね。
In room two hundred and two
The walls keep talkin’ to you
 I’ll never tell you what they said
 So turn out the light and come to bed.
これが歌詞みたいなんだけど、誰か上手に訳してくれるとありがたいな。(笑)
情念や怨念などの「念」が封じ込められたホテルの一室。
人なのか、椅子なのか形の定まらない不可思議な物体の存在感。
壁に掛かっている謎のピンク色は、まるで女体の半身トルソーのように見えるし。
この不気味な感覚はとても好きだな!

トップに載せた油絵も不穏な雰囲気の幻想絵画だよね。
これは「Eine Kleine Nachtmusik」(1943年)という、これもまたホテルが舞台になっている作品なんだよね。
夜のホテル。
いくつもの寝室が近くにあるのに、他の部屋については何も知らない。
同じ館にいるのに、都会と同じ疎外感を感じる。
暗い影が何かの形に見えてしまうことがある。
血の色のカーペット、残酷な黄色、逆立った黒髪。
向日葵は花の中で最も攻撃的だ。
悪い想像は悪夢になって襲ってくるかもしれない。

ドロテア・タニングの作品は、年代によって変化はあるけれど、全体的に観る者を不安な状態に陥らせる。
そこに魅力を感じるのはSNAKEPIPEだけではないだろう。
そして沸き立つ芸術欲が全く失われることなく、長い年月の間創作を続けていたところも尊敬しちゃうよね!

今年が亡くなった年、ということで回顧展は開かれないのかな。
もしどこかで開催されるようなら是非、全貌を鑑賞してみたいものだ。

ビザール・ピロー選手権!5回戦

【問:どの枕が一番安眠できるかを答えよ。(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

みなさん、最近良く眠れてますかー?
SNAKEPIPEは夜になると湿度が高くて寝苦しい気がするんだけど、いかがかな?
良い睡眠のためには温度や湿度も問題だけど、寝具の関係もあるよね。
ベッドか布団か、そしてマットは低反発、高反発、ウォータータイプか、など人それぞれ好みが分かれるし。
枕もきっとかなり好みがハッキリするアイテムではないかと思う。
昔ながらの蕎麦がらや籾殻・小豆派の方もいるだろうし、フカフカの羽毛タイプを好む人も多いだろう。
いつだったかハッキリしないけれど、一世を風靡したテンピュール以来低反発枕が知られるようになって、亜流品がたくさん作られ安価な値段で売られるようになったよね。
その頃からだんだん枕の重要性が注目され始めたように記憶している。
肩こりや腰痛と枕が関係ありと言われ始め、今まで適当に決めていた枕選びに慎重になる人が増えたように思う。
実はSNAKEPIPEもROCKHURRAHもちゃんとピロー・フィッターさんにチョイスしてもらった枕を使ってるんだよね。
これは健康のため、というよりは肩こりと腰痛対策。(笑)
目覚めた瞬間から体の不調を感じることが続いたため、意を決して相談に行ったわけ。(大げさ)
ただ枕だけ合わせてもマットとの相性もあるから、なかなかピッタリのタイプを選ぶのは難しいね。
そんなことも含めて寝苦しいのかもしれないな、と考えるSNAKEPIPE。
と、前置きが長くなったけれど、今回の特集はビザールシリーズ第5弾!
奇妙キテレツな枕を探してみたよ!

奇妙、と書いてはみたけれど最初にご紹介するのはとてもお洒落な枕。
なんと光る枕だよ!
シリコン製で中にはLED電球が入っている。
この電球は充電池式で4時間連続で使用可能、だんだんと暗くなる仕組みらしい。
間接照明としての機能もあって、インテリアとしても最高と説明がされているよ。
違う写真では女性がこの枕を抱き締めて、会話を楽しんでいたよ。
柔らかい光が顔を照らしていて、くつろぎの時間を演出してくれるかも?
お腹も温まりそうだしね。(笑)
Diana Lin design LLCで販売していて、気になるお値段は180ドル。
現在のレートで14000円くらいなので、かなりお手頃だよね。
ただし、この枕にしたら眩しくて眠れなくなること間違いなし!
安眠とは程遠い逸品かな?(笑)

では良い夢を見るような枕にしてみようか。
どお、この「朝ごはんセット」枕!(笑)
さすがに外国だから朝ごはんといえばトーストにパンケーキなんだね。
目玉焼きとトーストは枕として成り立ちそうだけど、パンケーキはちょっと厚めじゃない?
これだと頭が高くなりそうだけど大丈夫か心配になるけど、なんともHAPPYな気分になれそうな枕だよね。(笑)
販売しているところがはっきりしなくて、値段も未確認なんだけど恐らく40ドルくらいらしい。
日本円にして3000円くらいかな?
こんな枕にするとお腹空いちゃて眠れなくなるかな?(笑)

食べ物つながりで見つけたのがこちら。
Japanese Sushi枕だ!(笑)
枕というよりはクッションなのかもしれないけど、いやあすごいインパクトだよね!
そしてやっぱり上の朝ごはん枕と同じように、太巻き寿司の中身がアボカド入りのカリフォルニアロールになってるところが外国っぽい。(笑)
いきなりソファやベッドにこんなSushi枕がボコッと置いてあるだけで、部屋の印象がガラリとか変わりそうだよね。
これらはthe original sushi pillowで販売されているよ。
CFを自主制作していて、なんだかノリノリの人達だよ。(笑)
ちなみにカリフォルニアロールのお値段は40ドルだって。
上の朝ごはん枕と同じで3000円くらいだね。
太巻きを枕にして眠ってみたい気がするSNAKEPIPE。
これもまたお腹空きそうだけどね!
ん?今気付いたけど、こういう面白グッズってもしかしたらドン・キホーテでも売ってたりして?(笑)
わざわざ紹介するまでもない商品だったらごめんなさい!

最後はこちら。
テトリス枕だっ!(笑)
ゲームについてほとんど知らないSNAKEPIPEだけど、時間を忘れる程熱中したゲームといえばテトリスなんだよね。
たまたま携帯に入っていて、始めてみたら楽しくて楽しくてハマッてしまった。
携帯の機種変更をしたくなかったのは、テトリスのせいだったと言っても過言ではないね。(笑)
今でもきっと始めたら我を忘れること間違いなし、のゲームだろうなあ。
こんな形の枕があったらきっと組み合わせを考えそうだよね?
それでまた眠れなくなったりして。(笑)
テトリス枕のお値段は19.99ポンド、日本円にして約2500円くらい。
現在販売されているのか不明だったので、知ってる方がいたら教えてね!

どんな枕で眠ると良いのかは本人次第だよね。
またこれからも安眠できる枕探しと実験をしていこうと思う。
ビザール・グッズ探しはまだまだ続くよ!
お楽しみに!(笑)

マックス・エルンスト-フィギィア×スケープ

松井冬子展の時と全く同じ構図!ワンパターン!(笑)】

SNAKEPIPE WROTE:

去年の3月に鑑賞した「シュルレアリスム展~ポンピドゥセンター所蔵作品」紹介のブログの一番最初に記事にしていたマックス・エルンスト。
その中で「エルンスト展があったら観に行きたいな」と語っていたSNAKEPIPE。
なんとその夢が実現することが判明したのが、前回の松井冬子展で出かけた横浜美術館だった。
次回の特集がマックス・エルンストと知って狂喜するSNAKEPIPE。
うわー、これは楽しみだ!(笑)

以前よりシュルレアリスムに興味を持ち、様々な展覧会に行ったり画集や写真集を鑑賞したり購入するのが大好きである。
マックス・エルンストについても当然のように名前と顔が一致するアーティストだけれど…それはマン・レイの撮影したポートレイトを知っていたからなんだよね。
マックス・エルンストの代表作は何?と問われてもハッキリ答えられないことが判明。
シュルレアリストのうちの一人と認識しているし、実際に今まで何点かの作品は鑑賞しているけれど、あまり詳しくないアーティストになってしまいそう。
益々マックス・エルンスト展鑑賞の必要性を感じたのである。(大げさ)

今年のゴールデンウィークは5月1日、2日を加えれば最長で9連休。
なんとSNAKEPIPEも今年はその恩恵を授かり、9日連続のお休み中なのである!
だけどね、別に特別どこかにお出かけするわけでもなく、何か用事があるわけでもないんだよね。(笑)
普段のお休みがちょっと長引いてるかな、くらいのゆったりした時間を過ごしている。
「絶対に観に行きたい展覧会」
とROCKHURRAHが珍しく鼻息を荒くしていたのがマックス・エルンスト展だった。
かなり琴線に触れたアーティストらしい。
長いお休み期間中、丁度良い機会だから行こう!とROCKHURRAHと一緒に横浜に向かったのである。

ここでマックス・エルンストについて簡単に紹介してみようか。
1891年ドイツのケルン生まれ。
1910年ボン大学文学部哲学科に入学。
1913年「ライン表現主義者展」に出品。
1914年~1918年第一次世界大戦に砲兵隊員として従軍。
1921年パリでコラージュ展開催。
1925年「第一回シュルレアリスム絵画展」に出品
1946年55歳で画家のドロテア・タニングと4度目の結婚
1976年パリで死去。

1912年に現代美術の展覧会を鑑賞して画家になる決意を固め、その翌年には作品を出品しているなんてすごい!
幻覚を見たり、飼っていたインコの死を妹の誕生を結びつけたりするようなスピリチュアルな一面もアーティストになるべくしてなったような話だよね。
そして驚くのは4回の結婚歴!
1:元大学の同級生(お金持ちの子?)→2:映画監督の妹→3:美術コレクター→4:画家という女性達を次々と虜にしたマックス・エルンスト。
これらのエピソードだけでも充分小説とか映画になりそうだけど、更に作品についての話題もあるから興味が沸くよね。(笑)

ROCKHURRAHは初めての横浜美術館である。
前回SNAKEPIPEが「松井冬子展」に行った時も雨の横浜だったなあ。
今回も雨降りだから、ジンクスになってしまいそう。(笑)
またもや周囲を散歩する試みはくじかれてしまったけれど、周りのゆったりした空間は気持ちが良いね。
展覧会場に入ってすぐに
「この展覧会ではシュルレアリストとしての枠を外し、『フィギュア』と『風景』というモチーフからマックス・エルンストを検証し直しました」
と書かれている。
うわ、なんと!
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEが求めていたシュルレアリスム作品とは違う角度からマックス・エルンストを論じようとしているとは…。
本当は本来のマックス・エルンスト展を期待していたのにちょっと残念。
では一体どんなマックス・エルンストなんだろう?
足を進めてみることにする。

会場は3つの章から構成されていて、時代を追う順番で作品が展示されていた。
ここでやはりROCKHURRAHとSNAKEPIPEが目をキラキラさせたのが第1章。
1909年から1927年までの作品が展示されていたためである。
「流行は栄えよ、芸術は滅びるとも」と題された版画集は、当時はケルン・ダダ(反芸術運動)のリーダーとして活躍していたエルンストがデ・キリコの作風に影響を受けて1919年に制作。
この時代はダダイストとしてエルンストの名前が挙がるんだよね。
ダダイストからシュルレアリストになった人って結構多いみたいなんだけど、これって1924年にアンドレ・ブルトンが「シュルレアリスム宣言」をした前と後のように、年代によって使い分けるということで良いのかしら?
あまりハッキリ言い切れないので、詳細は専門家にお任せかな。(笑)
そして確かに解説にあるように、キリコの顔なし人物と酷似してるよね!
石版に直接描いたリトグラフとのことだけれど、構成主義を思わせる直線が見事。
ダダイズムについてあまり詳しくないSNAKEPIPEだけれど、この版画集のタイトルと版画の内容からなんとなく言いたいことは解る気がする。
ただ思想がどうのなど関係なく、とてもカッコ良い構図の版画集だよね。
ポスターがあったら並べて飾りたいな!(笑)

続いて気になった作品はこちら。
「聖対話」と題された1921年制作のコラージュ作品である。
ううっ、1921年にこんなコラージュが完成していたとは!
やっぱり1920年代恐るべし!(笑)
左下に「ガラへ」と書かれていて、どうやら左側の女性の顔もガラという女性みたい。
このガラという女性は詩人ポール・エリュアールの奥様で、後にサルバドール・ダリと結婚する女性なんだよね。
2人のアーティストに愛されたガラ夫人というのが非常に気になるSNAKEPIPE。
昔からファム・ファタール(魔性の女)系の女性には興味があるんだよ。(笑)
そんなブログの企画があっても面白いかもしれないね?
この作品は人体模型図の図版をベースに2羽の鳥や実験航空機の写真に加えて膝部分にボタンが配置されている。
羅列すると不思議な組み合わせなのに、作品として鑑賞するとキレイなバランスが保たれていてカッコ良い。
この作品もポスターあったら欲しいな!(笑)

次は1925年から1952年の作品を展示していた第2章で目を惹いた作品のご紹介ね。
1929年よりエルンストは再びコラージュ作品の制作に取り組み始める。
「コラージュ・ロマン」とエルンストが名付けたコラージュによる小説を発表するのである。
1929年「百頭女」、1930年「カルメル修道会に入ろうとしたある少女の夢」、1934年「慈善週間または七大元素」の3部作を刊行。
これらは19世紀の定期刊行物に掲載された版画を切り取り、継ぎ目が分からないように上手く貼り付けた作品とのことである。
タイトルとコラージュ作品だけが並んだ本で、内容については鑑賞者の自由な想像でオッケーみたい。
小説と言われるとページ毎のつながりを考えてしまうけれど、一枚一枚の作品として鑑賞するだけで充分物語を想像することができそうだよね!
左は「慈善週間または七大元素」の中の一枚で、鳥人間という架空の存在が裸女の足裏にナイフを突き刺している、なんとも幻想的な作品である。
3部作とも容易に入手できそうなので、是非揃えて鑑賞したいね!

今回のエルンスト展では森の絵画や民族的な彫刻、自身が発明したフロッタージュなど、他にも素晴らしい作品がたくさん展示されていた。
時代によっていくつもの顔を持つエルンストを体験することができて良かった。
次回はシュルレアリストとしてのエルンスト展を鑑賞したいね。(笑)

会場を出てから今度は横浜美術館コレクション展、愛称ヨココレ(笑)を鑑賞。
なんとここでは写真によるシュルレアリスム展を開催している!
最初にマン・レイ、次はハンス・ベルメール。
エルンスト観に来て、他のシュルレアリストの作品を鑑賞することができて幸せ!
オリジナルプリントではないにしても、マン・レイの作品は以前鑑賞した「マン・レイ展~知られざる創作の秘密」の時よりもサイズが大きくて鑑賞しやすい。
「シュルレアリスム展~ポンピドゥセンター所蔵作品」ではハンス・ベルメールの作品は1点だけだったのに、今回はズラリと並んでるし!
オマケで鑑賞、なんてとても言えないほど豪華版で良かったね、と言い合っていたところに飛び込んできたのがシュルレアリスム絵画の部屋。
うわー、ダリだ!マグリットだ!デルヴォーだ!ベーコンだ!と興奮しまくり。(笑)
特集展覧会だけじゃなくてヨココレも要チェックだね!

SNAKEPIPE MUSEUM #15 Albert Birkle

【Albert Birkle1926年の作品:The Last Cavalier】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年鑑賞したモホリ=ナギ以来、1920年代に対する興味を持ち続けているROCKHURRAHとSNAKEPIPE。
その時代の今まで知らなかったアーティストを発見することに心血を注いでいるところである。(大げさ)
「これはいい!」と思った作品を発見すると、お互いに紹介し合うことにしている。
今回のSNAKEPIPE MUSEUMもたまたま発見した、1920年代の温故知新系アーティストAlbert Birkleについて書いてみたいと思う。

ROCKHURRAHは観てすぐに
ORCHESTRE ROUGEのジャケットを描いているRecardo Mosnerに似てる」
と言う。

このRecardo Mosnerはアルゼンチンのブエノスアイレス生まれの画家・彫刻家で、フランスで活躍中らしい。
左がAlbert Birkleで右がRecardo Mosnerなんだけど、構図とか雰囲気が確かに似てるよね!(笑)
そして2人の画家についての詳細がはっきりしないところも良く似てる。
どうやらAlbert Birkleはドイツ人のようで読み方すら分からない。
日本語ページでの紹介文も見当たらないほどマイナーな画家のようである。
当たってるのかどうか不明だけど、アルベルト・バークルと表記していこう。

アルベルト・バークルは1900年ベルリン生まれ。
第一次大戦で兵役に就く前に、すでにベルリンの芸術大学でアートについて学んでいたようである。
親戚の中にも裁判画家を生業としている人もいたようで、どうやら芸術に対して理解がある環境で育ったらしい。
1927年ベルリンで初の個展開催。
1941年から1943年まで戦争特派員としてフランスに滞在。
1944年にはザルツブルグで開催された「ドイツ人アーティストとSS」展に出品しているようなので、ナチスとの関係もあった模様。
1946年、戦争が終結した年にオーストリアの市民権獲得。
1958年には教授となる。
この頃にはステンドグラスの作家として有名で、ドイツ国内だけでなくワシントンでもバークルのステンドグラス作品を鑑賞することができるようである。
1986年にザルツブルグで死去。

ドイツ語で書かれた文章を英語に訳してから更に日本語訳にして作った文章が上述のもの。
だからもしかした誤訳があるかもしれないけど、許してね。(笑)
バークルが活躍していた時代が丁度世界大戦真っ只中だったということで、かなり戦争の記憶がトラウマとなっていたようである。
その傷が影響を及ぼし、影のあるなんとも印象的な作品に仕上がっているように思う。
バークルにとっては辛い傷だったと予想できるけれど、作品として鑑賞した場合には非常に魅力的だと感じるのはSNAKPIPEだけではないだろう。

「The Last Cavalier」(最後の騎士)と題された上の作品は、怯える老女と忍び寄る紳士的な(?)骸骨を描いた作品である。
「怖がらないで一緒に参りましょう」と笑いながら誘っているように見えるよね。
戸惑いながらも誘いに乗りそうな老女。
そのままの解釈だけじゃなくて、もしかしたら風刺画みたいに隠喩としての作品だったのかもしれないね?

アルベルト・バークルはフレスコ画を手がけていたり、教会の窓にステンドグラスを施したりするような宗教的な一面を持っている。
そして同時に「反乱と革命」というテーマにも取り組んでいたので、「磔」というのが重要な表現手段になっていたようである。
政治的な意味と宗教的な意味を掛け合わせると左のような作品が出来上がるんだね!
苦痛、という共通項から「磔」になったみたいなんだけど、宗教について詳しくないSNAKEPIPEには深い部分まで語ることはできないので、その点は専門家にお任せするとして。
テーマとか主題について理解できなかったとしても、インパクト大だよね。
構図の斬新さや色使いはもちろんだけど、なんといっても手前の人の顔がすごい。(笑)
「叫び」で有名なノルウェーの画家、ムンクに似た生と死、孤独や不安といった人間の心のダークサイドを表現した画家なんだろうね。
調べてみるとムンクは1890年代ベルリンに滞在していてドイツ表現主義に影響を与えた人物、とされているから関連があっても不思議じゃないかもね?

詳細が分からないまま特集にしてしまったアルベルト・バークルだけど、これからもこうした観た瞬間ファンになるアーティストに出会っていきたいと思う。