M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話 鑑賞

20211128 top
【会場入り口の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

2020年10月に鑑賞した「鴻池朋子 ちゅうがえり」 は、一年に一度アーティゾン美術館で開催される特別な企画展だった。
ジャム・セッションと称する、石橋財団コレクションとアーティストのコラボレーションなんだよね。
今年の企画は、写真を使って作品を発表している現代アーティストの森村泰昌だというから、楽しみにしていたんだよね!

森村泰昌を最初に知ったのは、1990年のNHK趣味百科「近未来写真術」という番組だったみたい。
調べてびっくりの、今から約30年前のこと!(笑)
篠山紀信が司会をしていて、一回に一人の写真家を紹介し、全12回放送されていたよ。 
なんとその時のテキストを保持していたので、調べられたんだけどね。(笑)
森村泰昌の仕事場を篠山紀信が訪ねて、制作についての話を聞いていたように記憶している。
その時の篠山紀信が「おかしな」小芝居やってて、その「わざとらしさ」が面白くて笑ったっけ。
SNAKEPIPEの父親と一緒に番組を観ていたことを思い出す。
そして、森村泰昌の作品を観て「面白いね!」と話したよ。

森村泰昌は自分を作品に登場させる、という作風を貫き通している。
今回、アーティゾン美術館から出されたお題は、青木繁という画家だという。
青木繁の作品に、森村泰昌が入り込んだ作品になるんだろうな、と予想できる。
問題は、SNAKEPIPEが青木繁をほとんど知らないことだね。(笑)

青木繁について調べてみようか。

1882年福岡県久留米市生まれ。
16歳で単身上京、18歳で東京美術学校(現在の東京藝術大学)に入学。 
卒業後、恋人と友人2名で千葉県館山市に滞在し、その時制作されたのが代表作とされる「海の幸」だという。
1911年、28歳の若さで肺結核により死去。 

夭折した画家だったんだね。
「海の幸」は美術の教科書に載っていたような気がする。
ROCKHURRAHは、青木繁が登場する「らんぷの下」という漫画を読んだことがあり、ある程度の知識があったらしい。
漫画の題材にもなるほど、有名とは!(笑)
森村泰昌は、どんな作品を見せてくれるんだろうね?

キレイな青空が広がっているけれど風が冷たい日に、ROCKHURRAHと日本橋に向かう。
道を歩いている人は少なめだったけれど、美術館前には開館を待つ人がちらほら。
「印象派 画家たちの友情物語」が同時開催されているので、もしかしたらそちらを目当てにしてるのかもしれない。
10月から開催されている展覧会なので、多少はお客さんが少ないかもしれないという淡い期待は裏切られ、会場は混雑していたよ。
写真撮影OKなので、たくさん撮らせてもらおう!(笑)

展覧会は『序章 「私」を見つめる』から始まる。
今まで絵画の中の人物や、実在の人物に扮した作品を発表している森村泰昌らしい、青木繁の自画像に成り切っている作品がこちら。
青木繁の自画像に光が反射してしまい、見づらくてごめんなさい。
ポーズの取り方や、帽子などの小物、背景に至るまで完成度高いよね!
青木繁の自画像は1903年の作品だというので、21歳の時に描いているんだね。

絵画だけにとどまらず、青木繁本人にも迫る森村泰昌。
左が青木繁の写真で、右が森村泰昌の成り切り版ね。(笑)
こちらも衣装や髪型、メガネなど、よく揃えたと感心しちゃうよ。
アーティストというよりは、モノマネ芸人みたいだよね。(笑)
第4章では、この扮装で青木繁に成り切り、演技まで見せてるから驚いてしまう。
森村泰昌は役者として映画に出演していることを鑑賞後に知って、納得しちゃったよ。

第2章では青木繁の作品を基にしたジオラマが展示されていた。
造形したのは別の人で、着色したのが森村泰昌だって。
画像は「海の幸」の背景部分なのかな。
作品はかなり小型で、ジオラマが10点程並んでいたけれど、意味不明だった。
一応撮影しておこうと撮っておいて正解だったかも。
今になって意味が解ったからね。(笑)
もう少しあとで解説しようかな!

森村泰昌の作品制作プロセスを展示しているコーナー。
ここで突然女装姿の森村泰昌が登場するんだよね。
序章から鑑賞しているけれど、全くそんな作品には対面してないんだけど?
自分の顔を組み合わせて構図を決めている様子が、スケッチやコラージュで展示されている。
SNAKEPIPEだったら、自分の顔だらけって戸惑うけどな。(笑)

続いては衣装展示コーナー!
なんでしょ、このミニ・スカートばっかりの衣装は?
60年代後半から70年代の雰囲気だよね!
大好きなバンド、The B-52’sが着てそうじゃない?
森村泰昌、まさかこの衣装身に付けてるのかな!(笑)
次のコーナーに、急ぎ足になって進むSNAKEPIPE。

『「ワタシ」が「わたし」を監視する』というビデオ作品が面白かった。
12分割されたモニターに、監視カメラの映像がランダムに流れているんだよね。
それぞれの画面に、森村泰昌が写っている。
化粧しているシーンや撮影のためのポーズをとっているシーン。
右上は、まさかのメイドさん?(笑)
第2章では、森村泰昌の舞台裏を覗いているような展示が多かったね。

『第3章 M式「海の幸」変奏曲』に来て、第2章の意味を理解する。
横幅280cm、縦幅120cmという大型作品がドーンと展示されている。
その数10点!
まずは青木繁の代表作である「海の幸」の完全実写版ね。
「海の幸」には10人の人物が描かれているんだけど、その全員を森村泰昌が成り切ってるんだよね。
こちらが青木繁の「海の幸」。
全裸の男たちが、漁で仕留めた獲物を担いでいる。
大型の魚はサメなのかな?
比べてみると、森村泰昌が忠実に再現していることが分かるよね。
ちなみに真ん中辺りに見える白い顔の女性(?)は、恋人を描いていると言われているらしいよ。

青木繁の完全模写で終わらせないのが森村泰昌!
明治時代から21世紀までの世相を反映させた作品を、「海の幸」の別バージョンとして発表してるんだよね。
ここで前に観たコラージュや衣装がお目見え!
この辺りから森村泰昌の真骨頂が始まったよね。(笑)
なんだか嬉しくなって、顔がニヤニヤしてしまったSNAKEPIPEだよ。

「海の幸」発展形の中で秀逸と感じたのは、この作品。
60年代や70年代のデモ隊を表現しているんだろうね。
旗や角棒の持ち方、中央付近に女性を配置するところなど、素晴らしい!(笑)
「海の幸」を踏襲していながら独自の路線として作品化していて見事だよ。
上に載せた「世相版」とは別格の出来だね。
10点展示されていた中で1番かも!(笑)

別の意味で1番だったのは、こちら!
んも〜、森村泰昌、いいわぁ!(笑)
思わずプッと吹いてしまった。
現代の世相ということになるのか、メイドさんやら女子高生がいるよ。
このメイドさんが、監視カメラの時に出演していたんだね。
登場している人数が10人ということだけが「海の幸」と同じで、あとは森村泰昌の好き放題。
きっとこの扮装がやりたかったに違いない。(笑)

この作品が、まさに今なんだね。
コロナの影響がなかったら、マスク姿の人物に扮することはなかったはず。
医療従事者と思われる2人には、どんな物語があるんだろうね?
靴を手にしている左側の意味がよく分からないよ。
そして第2章で鑑賞したジオラマが、これらの作品の背景だったことが解った。
あんなに小さいジオラマと、森村泰昌の実写が組み合わされて一つの作品になっていたとはね! (笑)

30年以上前から知っていたアーティストだけれど、展覧会を鑑賞したのは初めてのこと。
最初はちょっと地味目だと思っていた作品が、最終的に「M式」になっていて楽しかった。
作品を観て笑うってなかなかないことだからね。(笑)
そして30年以上「私」を見つめ続けている森村泰昌の創作意欲にも感心だよ。
現在70歳の森村泰昌。
まだこれからも色んな扮装を見せて欲しいね!(笑) 

ギルバート&ジョージ Class War, Militant,Gateway 鑑賞

20211031 top
【エスパス ルイ・ヴィトン東京の壁を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

長年来の友人Mから表参道に行きたいと連絡が入る。
なんとエスパス ルイ・ヴィトン東京ギルバート&ジョージ の作品が展示されているという。
表参道のルイ・ヴィトンといえば、およそ2年前の2019年8月にもボルタンスキーの「ANIMITAS II」を鑑賞したっけ。

エスパス ルイ・ヴィトン東京には、ドア・マン対策を強化してから出かけよう。(笑)

もう一度この記事を読み、対策していけば良かったSNAKEPIPE。
自分で書いていたことをすっかり忘れ、小雨の中、友人Mとルイ・ヴィトンに向かったのである。
開店に近い時間だったせいか、ドア・マンが3人いたんだよね!
そして折りたたみ傘を畳みながら入ろうとすると、
「その傘お預かりします」
なんとドア・マンがSNAKEPIPEの傘を手に取り、わざわざ袋に入れてくれるじゃないの!
「自分でやりますよ」「いえいえ、こちらで」
なんて押し問答めいたやり取りの末、傘袋に入った傘を渡され終了。
買い物に来たわけじゃないから、本当に申し訳ない気持ちになるよ。(笑)

最上階に上がると、受付には女性2名がいて、満面の笑みを浮かべウェルカム状態!
念の為に撮影できるか尋ねるとオッケーとのこと。
上に載せた壁の撮影をしてから会場へ。
会場には壁一面に大型の作品が展示されている。
「うぉー!すごい!」
歓声を上げた時、受付にいた女性が「かなり大型の作品ですよね」と声をかけてくる。
「今までギルバート&ジョージの作品は観たことありますか」
と質問されたので「ターナー賞の歩展で観てますよ」と答えるSNAKEPIPEと友人M。
観たことは覚えていたのに、作品を忘れてしまったので載せてみたよ。
友人Mは「確か黒人の写真じゃなかった?」と口にしていたので、正解だったね!(笑)

今回の展示は「Class War(階級闘争)」、「Gateway(入り口)」、「Militant(闘争家)」という1986年の作品で、日本初公開だという。
同年、ギルバート&ジョージはターナー賞を受賞しているんだよね。
特徴的な格子とフォトモンタージュは、ギルバート&ジョージの代名詞。
画像は「Class War(階級闘争)」で、横幅は10mを超える大きさだよ!
モデルになっているのはいわゆるブルーカラーの若者たちみたいね。
丸い窓?から覗いているのはギルバート&ジョージ。

こちらは「Gateway(入り口)」で、まるで寺院の阿吽像のように仁王立ちしたギルバート&ジョージ。
自らの作品に登場するのが作風であり、流儀なんだよね。(笑)
若者達は、皆何かを見上げていて、階級闘争の時には全員が持っていた棒の数が少なくなっているよ。

「Militant(闘争家)」になると、若者は4人に減り、ギルバート&ジョージも見えなくなっている。
ルイ・ヴィトンの解説によれば「棒(自由)を手に入れ、自己肯定を経て、自分の居場所を見つける」ことに成功した若者たち、らしいよ。
ギルバート&ジョージ風の十牛図みたいだよね。
本人たちの姿がないから余計にそう感じるのかも。(笑)

天気が悪かったせいか、友人MとSNAKEPIPEだけの特別展示場になっていて、とても嬉しかった。
一瞬でも作品を独り占めできた気分だからね!(笑)
2年前のインタビュー動画も流れていて、80歳になろうかという年齢でも、未だにスーツ姿でギルバート&ジョージの健在を観ることができた。
そして感じが良い受付の女性2人と少しおしゃべりして、会場を後にしたよ。
こんな展覧会を企画してくれるルイ・ヴィトンに感謝だね!

こっそり帰りたかったけれど、やっぱりドア・マンの前を通る必要があり
「傘袋お預かりします」
としっかり最後までサービスされてしまったよ!(笑) 
次はどんな企画をしてくれるのか楽しみだね。

横尾忠則:The Artists 鑑賞

20201010 top
【ギャラリーの入口にあった看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

先週書いた「整形水」 を鑑賞した後、長年来の友人Mと向かったのは六本木。
東京ミッドタウンにある21_21 DESIGN SIGHT で開催されている「横尾忠則:The Artists」を鑑賞するためである。
実はその前、ランチで訪れたのは東新宿。
韓国料理を食べるために立ち寄ったんだよね。(笑)
そのため、この日は池袋→東新宿→六本木の順に移動したことになる。
わざわざランチのために東新宿に行かなくても、と思われる方が多いと思うけど、どうしても韓国のうどん「ククス」が食べたかったんだよね。
とても美味しくて大満足だったよ!(笑)

「横尾忠則:The Artists」は、2014年にパリにあるカルティエ現代美術財団の依頼で、横尾忠則が139点の肖像画を描いた展覧会なんだよね。
その展覧会が、7年の時を経て六本木で鑑賞できるなんて夢のようじゃない?
そして驚くべきことに、なんと入場無料!
カルティエ、さすがだね!(笑) 
そしてもっと驚いてしまうのが、長年来の友人Mは、この展覧会をパリのカルティエ現代美術財団で鑑賞済ということ。
たまたま出張でパリに滞在していて、ふらっと立ち寄ったというから羨ましいじゃないの!
「とても良かったよ」と聞いていた展覧会だったので、是非鑑賞したかったんだよね。

入場すると、係の人から「鑑賞に関してのお願い」を話される。
額に入っていない作品が所狭しと並んでいるので、作品を傷つけないようにとのこと。
美術館にある白線も引かれていないので、近くで鑑賞できるからだろうね。
そしてなんと、撮影もすべてオッケー!
なんて太っ腹なの!
カルティエ製品、何か買わないと! (笑)

展示にキャプションは付いていなかったけれど、ほとんどの作品に人名が記載されていたので、誰の肖像画なのか知ることができる。
作品を知っていても、アーティストの顔を知らない場合もあるからね。
2016年9月に「トーマス・ルフ展」で、実験的な作品を鑑賞したけれど、トーマス・ルフがこんな顔だったとは知らなかったよ。
トーマス・ルフ展の感想に書いているけれど、ドイツのアートは根底にバウハウスの影響があると思うので、無機的で構造的な印象なんだよね。
赤と白でキッチリと区切られたキャンパスに、その雰囲気を感じたよ。

2021年の今年、第32回高松宮殿下記念世界文化賞を受賞したジェームズ・タレルも描かれていたよ。
2018年5月の記事「SNAKEPIPE SHOWROOM 物件13 建築家設計の物件編」 では、ジェームズ・タレルの作品が組み込まれた建築物について書いているSNAKEPIPE。
光による自然の色を体験することができるタレルの作品は、日本にもいくつか存在しているようだけど、残念ながら未鑑賞なんだよね。
静かな環境でゆっくり鑑賞したら、人生変わるかも?

2021年7月、76歳でがんのために亡くなってしまったクリスチャン・ボルタンスキー
まだこれから作品を見せて欲しかったのに、残念だよ。
国立新美術館で「クリスチャン・ボルタンスキー – Lifetime」を鑑賞したのが2019年7月なので、まだ記憶に新しいんだよね。
展覧会のタイトルが「Lifetime」で、今となってみると意味深に感じてしまう。
ボルタンスキーの代表作である「モニュメント」シリーズは、まるで遺影写真を祭壇のように展示している作品。
写真の周りには電球が配置され、電球のコードが写真にかかっているせいで、一種のおどろおどろしさがあるんだよね。
そのコードが顔にかかる様子が、ボルタンスキーの肖像画に描かれていて「なるほど!」と思ったよ。
単なる肖像画じゃなくて、その人自身を表す要素が含まれているんだよね。

SNAKEPIPEが敬愛するデヴィッド・リンチも描かれている。 
2007年にリンチはカルティエ現代美術財団で「The Air is on Fire」という展覧会を開催している。
実は友人Mに、リンチの図録を買ってきて欲しいと頼んだSNAKEPIPE。
あまりに重たくて断念した、と帰国後聞かされ落胆したっけ。(笑)
横尾忠則は、リンチの絵を3枚も描いているんだよね。
1枚は、相当ぞんざいな描き方していたから、リンチからクレームきたのかな?(笑)
肖像画はあまり似ていないけど、SNAKEPIPEが好きな2人のコラボは嬉しいよ!

日本人アーティストも複数人描かれてた。 
カルティエ現代美術財団と関わりがあるんだろうね。
左上の「劇場」で有名な写真家の杉本博司は、印画紙の中央にいるみたいに見える。
ゲゲゲの鬼太郎のTシャツを着ている右上は森山大道で、2枚描かれていたよ。
左下は荒木経惟で、ヌードの女性がプリントされたTシャツにニヤリとしてしまう。
顔を知らなかった右下の宮島達男だけど、キャンパスの最前面に数字が描かれているところがミソ!
発光ダイオードのLEDで数字を表す作品が有名だからね。
画像には載せていないけれど、いたずら書きみたいな線だけで描かれた村上隆には大笑いだったよ。
しかも似てるし。(笑)

最後のブースでは、カルティエ現代美術財団からオファーを受けて肖像画を描くことになった経緯などを話す横尾忠則の映像が流れていた。
1日に何枚も描き、同じ姿勢のまま過ごしていたせいで、完成した後に入院したという。
制作期間より完治までに時間がかかったけれど、このことはカルティエの人に話してない、と笑う横尾忠則。
20分ほどの映像も楽しかったよ!

ノリノリで描いている場合と、そうじゃない時の差があるように見えて、そこも面白かった。
単なる肖像画ではなくて、その人の背景までも描かれていて、その「人となり」が分かるんだよね。
鑑賞できて良かった展覧会だった。

今年は東京都現代美術館で開催された「GENKYO」、そして今回の「The Artists」と2つの横尾忠則展を鑑賞できて、本当に嬉しいよ!
次の展覧会が待ち遠しいね。(笑)
 

インディゲリラ Cosmic Waltz 鑑賞

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【会田誠展の時と同じ構図だね。ワンパターン!】

SNAKEPIPE WROTE: 

2021年8月に鑑賞した「会田誠展 愛国が止まらない」で初めて訪れたミヅマアートギャラリー
SNAKEPIPEのウォーキング・ルート途中にあるギャラリーと分かったので、サイトを定期的にチェックすることにした。
まこっちゃんの展示の後は何をやってるんだろう?
インディゲリラという、ちょっと物騒な名前のアーティストが個展を開催している模様。
タイトルは「Cosmic Waltz」だって。
散歩がてら、寄ってみようか? 

本来は定員制を採って、1時間に入場できる人数を決めているミヅマアートギャラリーだけれど、人数に達していなかった場合には飛び込みでの受付も可能とのこと。
行くだけ行ってみよう、と扉を開けてみる。
「予約していないのですが、入場可能ですか?」
と聞いてみると
「もちろんです!どうぞ!」
快く受付の男性が応じてくれる。
予約の際に必要だった名前や電話番号を提出して会場へ。
タイミングが良かったのか、お客さんはSNAKEPIPE一人だった。
やったー!貸し切りで鑑賞だー!(笑)
撮影についての許可を得たので、バシバシ撮らせてもらったよ!

まずは最初に、インディゲリラについての説明をサイトから一部抜粋して転用させていただこう。

ミコ(1975年インドネシア、クドゥス生まれ)とサンティ(1977年インドネシア、スマラン生まれ)夫婦によるアーティスト・ユニット。
1999年にグラフィックデザイン・オフィスとして立ち上げられたインディゲリラは、「新たな可能性を見出すために常にゲリラでいる」という自身の哲学により、2007年にフルタイムのアーティストとなる。

伝統的な価値観と現代文化とのユニークな繋がりが注目され、世界中で数々の重要な展覧会に参加。
現在、インドネシアのジョグジャカルタで活動。

インドネシアのアーティストなんだね。
夫婦で活動なんて、羨ましい限り!(笑)
かつてSNAKEPIPEも旅したことがあるジャワ島出身のアーティストとは、驚いてしまうよ。
SNAKEPIPEが知っているのは、かれこれ四半世紀以上前(!)のジャワ島なので、現在は全く別の状況になっているんだろうな。 (遠い目)
そして旅行していた時は、ジャカルタ郊外の田舎町で過ごしていたんだよね。
地元の人と同じ生活をすることが目的だったので、美術館に行ったりアートに触れる機会は皆無。
SNAKEPIPEは、地元の人や風景を撮影していたけどね。(笑)

当時見た風景や人々を思い出しながら鑑賞を始める。
原色が目に飛び込んでくる奇抜な作品だよね。
何が描かれているのかを理解するのに、しばらく時間が必要かも。
じっと観ていると、バリ島でよく見かける仮面のバロンのように見える顔(?)を発見する。
全体にポップな印象だけど、こうした部分にインドネシアらしさが出ているのかも?

丸いキャンパスいっぱいに描かれているのは、人や鳥?
なんともいえない「ぐねぐね」した流線と手や足に見えるモチーフ。
ホアン・ミロをパロディ化したようにも見えるよね。
インディゲリラいわく、「作品中のキャラクターたちが皆、魂のダンスを踊るかのように、宇宙のリズムに合わせて自発的にうねり、流れるように動いている」様子を描いているとのこと。
それでタイトルが「Cosmic Waltz」なんだね!

現在46歳の旦那さんと44歳の奥様はどんな役割分担で作品を作ってるんだろうね。
サイトに載っているご夫婦の写真は、ライダースジャケット着て、緑色に染めた髪という姿!
とんがってて、共感しちゃう雰囲気なんだよね。
やっぱりSNAKEPIPEが知っていたインドネシア人とは全く違うよ。(笑)
インディゲリラは、「ぐねぐね」の次にどんな作品を見せてくれるんだろう。
今から楽しみだね!

インドネシアのアートで思い出したのが、2017年9月に鑑賞した「サンシャワー:東南アジアの現代美術展」。
東南アジア10ヶ国からアーティストが出品していた展覧会だったんだよね。
インドネシアからはHeri DonoFX Harsonoが参加していて、感想をブログに書いているSNAKEPIPE。
死や拷問をテーマにしていて、 印象に残った作品だったよ。
もう一人、紹介していなかったインドネシア人アーティストがいたことを思い出した!
2021年7月に鑑賞した「アナザーエナジー展:挑戦しつづける力―世界の女性アーティスト16人」 に出品していたヌヌンWS(Nunung WS)について書いておきたい。

ヌヌンWSは1948年ジャワ州ラワン生まれの73歳。
小学生の時、すでに画家になることを決心していたという。
1967年、19歳で絵画を学び始め、現在も精力的に活動を続けている、インドネシア唯一の女性抽象画家とのこと。
載せた画像は「織物の次元1番」で2019年の作品ね。

1960年代に生まれた「ミニマリズム」という表現スタイル。
それは、必要最小限まで要素を切り詰めた様式で、美術の世界では「ミニマル・アート」として定着しているね。
 ヌヌンWSは、「豊かな情感や深い精神世界を描いている」点が「ミニマル・アート」との大きな違いなんだとか?
SNAKEPIPEには感情の有無がよく分からないよ。(笑)
もしかしたらアーティストの表明による解釈なのかな。
画像は2011年の「門」。
マーク・ロスコを彷彿させるよね!

ジャワ島の伝統的な織物であるバティックについての研究をしているというヌヌンWS。
その情報を知ってから作品を鑑賞すると、布に見えてくるよ。(笑)
画像は「アチェの次元」で2019年の作品ね。
バティックは美しい柄が多くて、SNAKEPIPEもかつて大量に買い込んだものよ。
今でも所持していて、「のれん」みたいに使っている。
バティックぽい作品を観ると、情感が込められているというのも理解できるね。
インドネシアで抽象絵画を描く女性画家がいるとは驚きだよ。
これからも活動を続けて欲しいね!

今回はミヅマアートギャラリーのインディゲリラとヌヌンWSについて特集してみたよ。
どちらもインドネシアのアーティストで、はっきりした原色が特徴的だよね。
もしかしたら、それは赤道直下のギラギラした太陽を浴びているせいかもしれないね?

今まで知らなかった国のアート、気になるよね!
また探して行きたいと思う。
最後にROCKHURRAHのマネをして締めくくろうか。
Sampai jumpa lagi!(インドネシア語でまたね!)