ROCKHURRAH紋章学 映像制作会社・ロゴ編

【印象に残る秀逸な映画会社のCM。1932年だって。カッコ良いね!】

SNAKEPIPE WROTE:

今まで何度か書いたことがあるけれど、週に2〜3本の映画を鑑賞する習慣があるROCKHURRAH RECOREDS。
このブログでも「好き好きアーツ!」で監督別に作品を紹介したり、「映画の殿」というカテゴリーでは様々な角度から映画について語っているんだよね。
映画の内容だったりタイトルバックについてなどは書いてきているけれど、今回SNAKEPIPEが注目したのは映画本編が始まる前に流れる映画制作会社のCMやロゴについて。
実は今までにも「あ、今のカッコ良い!」と感じていたのにもかかわらず、会社名を控えておかなかったために失念してしまっている!
これからはメモっておかないと。(笑)
今日の「ROCKHURRAH紋章学」は、秀逸だと思うロゴについてまとめてみたいと思う。
映画や映像に関わる、実体がある会社ということに統一してみたよ!
では早速いってみよう!


映画制作会社のロゴを探している時に、思わず「おおっ!」と声をあげてしまったのが上の画像!
ベージュ、朱色、黒という3色に加え、構図もバッチリとロシア構成主義を意識しているのが解るんだよね。
なんと素晴らしいんでしょ!(笑)
カナダのオタワ州にある「REFORGER FILMS」という会社だということは調べられたし、実体があることもわかったんだけど、肝心のHPがないの。
貼られていたリンクが切れていたので、それ以上の情報は得られなかったよ。
こんなに素敵なロゴを使用する会社が、どんな映像を制作しているのか興味があったんだけどね。残念!


続いてのロゴもお洒落なんだよね。
魚の骨に見立てて会社名をアピールしてる。
STINK」はベルリン、ロンドン、ロスアンゼルス、サンパウロなど世界各国にオフィスを構えるグローバルな映像制作会社みたい。
さすがにこれだけのロゴを使うだけあって、センスが良い人材の宝庫なんだろうなあ。
HPには「STINK」が手がけた映画や広告、所属するクリエーター達の作品が載っていて楽しい。
実際に目にしたことがある作品はなかったけれど、さすがに面白い作品が多いんだよね。
ロゴがお洒落なら、制作している内容も良いだろうというSNAKEPIPEの予想は当たりだね!(笑)


ロゴだけで、どんな傾向が得意なのか判るのも重要なのかもしれない。
DANGER FILM COMPANY」 は、黒いスーツにサングラス姿の男が、ピストルの代わりにカメラを構えているロゴを使用している。
まるでタランティーノ監督の「レザボア・ドッグス」の中に登場するギャングのような出で立ちに加えて「DANGER」だもんね。
この会社がアットホームでハートウォーミングな映画や広告を制作しているとは思わないよね?(笑)
実際に制作した作品はホラーやクライム系の映画と紹介されているね。
サンフランシスコの制作会社とのこと。
いつか映画のクレジットに名前を発見することがあるかもしれないね?


続いてもすぐに傾向が判るロゴを使用している会社の紹介ね!
HORROR MOVIES UNCUT」はそのまま「ホラー映画」と会社名に使われているため、間違うことなくホラー専門と判るよね。(笑)
そして使用されているイラストも「いかにも」だしね!
HPやTwitter、tumblrなどいくつもの情報サービスを使用してホラー関係のニュースやインタビュー等を載せていることを確認したよ。
いくつかのサイトで探してみたけれど、これは制作会社ではなくて単なる「ホラー好き」な人のウェブサイトみたいだね。
今回設定していた「実体のある制作会社に限定」から外れてしまった!
しかもHPを運営しているのが誰かも不明なの。
HPは頻繁に更新しているし、かなり情報密度が濃いのにね?
「ABOUT US」という項目がないので、不明なままロゴの紹介だけで終わることにしよう。(笑)


続いてもホラーつながりでこちらのロゴを。
CRUMPLESHACK  FILMS」 は、いまにも傾きそうな掘っ立て小屋を使用したロゴなんだけど、ものすごく怖いよね。
中にはどんな人がいて、何を行っているんだろうと想像してしまう。
予想通り、この会社はホラー専門のようだね。
親会社が「DUSTIN MILLS PRODUCTIONS」で、その別ラインとして「CRUMPLESHACK FILMS」があるということみたいだね。
「The dark dirty underbelly 」、直訳すると「暗く汚い下腹部」部門が「CRUMPLESHACK FILMS」ということみたい。
きっとホラーの中でもエグい映画と想像する。
得体の知れない恐怖感は直に伝わってくるので、このロゴの使用は成功だろうね!(笑)


親元である「DUSTIN MILLS PRODUCTIONS」のロゴも素敵なので紹介してみよう。
頭部がぱっくり割れた人のイラスト、ということで良いのかしら?
こちらも「いかにも」ホラーなんだけど、コミカルでシンプルなのでステッカーやTシャツになっていても通用するよね。
実際Tシャツとして販売されているページもあったし!
ちなみにお値段は$19.99、日本円で約2400円くらいかな。
黒、赤、白という3色でなかなかお洒落なんだよね。
ちょっと欲しい。(笑)

今回の企画である「映画制作会社」もしくは「映像制作会社」のロゴや宣伝用の映像については、これからも探していこうと思う。
映画本編が始まる前にもチェックしていこう!

映画の殿 第17号 映画の中のニュー・ウェイブ03

【表紙の写真の関連性が不可解な組み合わせだな

ROCKHURRAH WROTE:

ずっと前に、続きを書くのをすっかり忘れてた企画があったのを急に思い出してしまった。「映画に使われた70年代、80年代の曲特集」という内容。
もちろんROCKHURRAHが書く記事だからパンクやニュー・ウェイブの音楽だけに限って集めてみたよ。
SNAKEPIPEが書く「映画の殿」の記事とは少し趣向が違ってて、映画の内容にはあまり肉迫しないのが特徴。

さて、今回集めてみたのはこんな3本だよ。

まずはこれ、1991年の「羊たちの沈黙」。
近年の海外TVドラマ「ハンニバル」シリーズの元祖、そして今では巷に溢れているサイコ・サスペンスと呼ばれるジャンルの元祖的な映画がこれだから、時代は古くてもこの手の映画ファンならば誰でも知ってるような作品だ。
TVシリーズではマッツ・ミケルセンが演じたハンニバル・レクター博士だが、オリジナルの映画版の方ではアンソニー・ホプキンスが強烈な印象で演じ、ハンニバルの代名詞と言えばやっぱりこちらの方だと思う。
特に拘束衣、拘束マスク(?)をつけたあのヴィジュアルは大のお気に入りで、SNAKEPIPEが時折、物マネをするほど(笑)。
アンソニー・ホプキンスは調べてみたらハンニバル以外でもケロッグ博士、ニクソン大統領、ピカソ、ヒッチコック、ハイネケン(ビール会社の社長)、プトレマイオス1世など様々な偉人を演じてる模様。ピカソはかなり似てると思うが、映画は未見。

ハンニバル・レクターが登場する映画は何作かシリーズになっているが、ROCKHURRAHはリアルタイムでは全然観てなくて、後にSNAKEPIPEの勧めで全部観ただけ。原作まで全部読んでるSNAKEPIPEとは大違いだな。

この映画で使われたらしいのがコリン・ニューマンの1stアルバム「A-Z」に収録の「Alone」という曲なんだが・・・。実はどのシーンで使われてたのか全く記憶にないんだよね。
YouTubeで探してみたが、たぶんこんなシーンでは使われてなかったような気がする。しかも途中でぶち切れ、あまり良いクリップが見つからなかったので我慢してね。ジョディ・フォスターが若い!

コリン・ニューマンは1970年代パンクの時代に活躍したワイアーのヴォーカリストだった人。大多数の人がワイヤーと表記しててたぶんそっちの方が正しいんだろうけど、ROCKHURRAHはなぜかずっとワイアーと読んでたよ。今日から急に改める気もないからこのままワイアーと呼ばせて。

ワイアーはパンクっぽい曲もあるけど、より知的でアーティスティック、ポップな面と実験的な面を併せ持った音楽性で、一味違う新しいものを求めていた若者に支持された。
それより少し後の時代に誕生したニュー・ウェイブ、ポスト・パンクへの橋渡しをしたバンドとして評価が高いね。
基本的にはワン・アイデアだけで一曲を完成させる簡素なスタイルが多かったけれど、数多くの他のミュージシャンがその音楽の切れ端からヒントを得た。alternative( 別の可能性、取って代わるもの)な音楽が誕生して発展したきっかけになったようなバンドだと思う。

分裂した後で再結成したり、後の時代も活動を続けるワイアーだが、ウチらの世代で言うとやはり初期の3枚の傑作アルバムに集約されているな。時代が目の前で変わってゆく空気感がビリビリと伝わるような音楽。
ワイアーが分裂状態になった後、80年代初頭にソロ活動を始めたコリン・ニューマンはこれまた元ワイアーの名に恥じない名曲をいくつも書いて、個人的にはとても好きなアーティストだった。
格別に特徴のあるスタイルや個性ではないけど、いそうで滅多にいないタイプの声や歌い方、これが素晴らしい。
歌詞が出てこなかったのかどうか不明だが、単に「あーーー!」という叫び声だけがメインの名曲「B」や「あーあーあー」というハミングだけで一曲モノにした傑作「Fish 1」など、今聴いても色褪せないな。文章だけだと何だか「うめき声マニア」みたいだが(笑)。

さて、次は2001年の映画「ドニー・ダーコ」だ。
これは80年代ニュー・ウェイブが効果的に使われた映画の成功例だから知ってる人も多かろう。
タイトルはヘンな響きだがそれが主人公の名前だ。
高校生ドニーを演じるのは暗い目つきのジェイク・ギレンホール、あまりさわやかさとか可愛げのない役どころだったから意外とピッタリだったのかもね。実の姉、マギー・ギレンホールが映画でも姉役で出ているな。

ドニーはある日、可愛げのない不気味なウサギ、フランクのお告げにより「世界の終わりまでの時間」を知る。
翌日、変な場所で目覚めた彼が家に戻ると、不在の間に近所で飛行機が墜落、そのエンジンが自室の屋根を突き破るというありえないような大惨事が起こっていた。ウサギに誘われて家を出なければ間違いなく死んでただろうという事態。
その後はウサギの言うがままに様々な騒動を起こしたり、転校生と恋に落ちたり、普通じゃないけど一応青春と呼べなくはない展開が色々あって、物語は世界の終わりの時まで進んでゆく・・・。
「わかりにくい」「不可解」という前評判があったが、勝手に想像したような不条理映画ではなかったな。

この映画の冒頭、主人公ドニーが自転車で峠道みたいなところを走るシーンで使われているのがエコー&ザ・バニーメンの「The Killing Moon」だ。
今の時代、このバンドについて言ってる人はあまりいないとは思うが、当時はエコバニではなくてバニーズと「通」ぶった略し方をしていたな。
1980年代に湯水のように出てきたリヴァプール発のバンドの代表格が彼らだった。これまた今では死語に近い「ネオ・サイケデリア」と呼ばれた音楽の中で最も成功したバンドのひとつでもある。

ヒネクレ者で王道嫌いなROCKHURRAHは同じリヴァプールの中では日本での人気がイマイチなティアドロップ・エクスプローズやワー!などを好んで聴いているフリをしていたが、実はバニーズにもどっぷり漬かっていた。しかし人に聞かれたらやっぱり誰も知らないようなマニアックなバンドを挙げたりする。この辺の素直になれない心理もずっと成長してないなあ。

ちなみにこの映画はバニーズのこの曲以外にもジョイ・ディヴィジョンやオーストラリアのチャーチ(多作で有名)、ティアーズ・フォー・フィアーズなど80年代音楽が使われているが、使い方のポイントがイマイチだと個人的には思う。

最後はこれ、2006年の「マリー・アントワネット」。
父親が偉大な監督、娘は七光りのように言われるのは仕方ないがフランシス・コッポラの娘、ソフィア・コッポラが監督の作品だ。

世界史に明るくない人間でも名前くらいは知ってるであろう、政略結婚でオーストリアからフランスに嫁いだマリー・アントワネットをキルスティン・ダンストが演じる。 しかしこれは歴史映画などではなく、王女になってしまった気さくな女の子が宮廷を舞台に奔放な生き様を見せるような映画で、試みとしては異色なのかも。
この手の映画としては会話も少なく、当時の最先端の宮廷ファッションや乱痴気騒ぎのパーティ・シーン、部屋でスイーツ食べながらダラダラしてるようなシーンの連続で実にライトな出来となっている。

監督の好みなのか何なのかは分からないが、この映画もパンクやニュー・ウェイブがふんだんに使われていて、しかも割とハッキリとした音量で流れるので、ROCKHURRAHにとっては音楽の部分だけは高評価だった。
せっかくの名曲なのに数秒しか使われなかったり会話でぶち切れになったり、そういう使われ方の映画が多いからね。単なるBGMでも敬意を払ってない監督が多すぎ。
上の仮面舞踏会のシーンではスージー&ザ・バンシーズの「Hong Kong Garden」がストリングスのアレンジで使われているな。他にもバウ・ワウ・ワウやアダム&ジ・アンツ、ギャング・オブ・フォーなどもまあまあ効果的に使われていて、80年代ファンならば納得出来る。

以上、タイトル画像の表紙がよくわからなかった人でも、ここまで読めば関連性が理解出来ただろう。

今回の記事には関係ないけど。
一番最後になってしまったが先週、突然世界中が悲しみにつつまれたデヴィッド・ボウイの訃報。これだけ「70年代、80年代のパンクやニュー・ウェイブ」ばかりを扱ったサイトなのにボウイについて何も思い出がないはずがない。パンクやニュー・ウェイブの誕生に最も影響を与えた一人かも知れない。
しかし本人の言葉通り、彼の音楽はいつまでも輝き続けるだろうし、知り合いのような追悼の言葉は出て来ない。
これからもROCKHURRAH RECORDSはデヴィッド・ボウイの影響を受けた一人として活動してゆくつもりだ。まるで音楽をやってる者のような語り口で偉そうだが、これがウチなりの追悼。
ではまた来週。

SNAKEPIPE MUSEUM #36 Nicholas Hlobo

【パフォーマンスしてるNicholas Hloboの動画】

SNAKEPIPE WROTE:

前回の「SNAKEPIPE MUSEUM」でも書いたけれど、最近は欧米系のアートよりも今まで観たことがないアートに関心があるんだよね。
今回は南アフリカのアーティストを紹介しようと思う。
南アフリカというと2013年に「SNAKEPIPE MUSEUM #19 Kendell Geers」を書いたことがあったっけ。
南アフリカについてほとんど知らないSNAKEPIPEは、ケンデル・ギアーズの記事の中に簡単な説明をしている。

予備知識としてWikipediaで南アフリカについて読んでみたら、アパルトヘイトは既に廃止されていること、
白人の割合が10%以下で、それ以外は有色人種であること、平均寿命が48歳(!)、更にアパルトヘイト廃止後に失業率が上がり、治安が悪化していることなどを知る。

過去に自分で調べたことなのに、読み返して「そうだったのか」と驚くSNAKEPIPEだよ。(とほほ)
ケンデル・ギアーズは南アフリカでは少数派の白人で、かなり過激な作品が特徴のアーティストだったね。
他に南アフリカを知ったといえば、「第9地区」や「チャッピー」の監督であるニール・ブロムカンプが出身地である南アフリカを舞台にしていて、その町並みや雰囲気を少しは映画で知ることができるね。
そして「チャッピー」に出演していたニンジャとヨーランディが所属しているダイ・アントワードというラップグループもケープタウン出身とのこと。
服装や髪型など、一度見たら忘れないようなスタイルのグループだったよ。
南アフリカというのは、独自の文化を生み出しているみたいだね。
今日ご紹介するニコラス・フロボも個性的な作風が特徴だよ!

最初にこの画像を見つけたROCKHURRAHが「怖い作品」と言う。
確かに現代アートの作品と聞かないと、まるでドラマ「ハンニバル」に出てきた、「どうだ」といわんばかりの殺人現場のようだよね。
コウモリの羽根のような左右の広がり、そして血のように見える赤いヒモがたくさん垂れ下がっている。
人の形に見えてしまうんだけど、違うのかな?
「Iimpundulu Zonke Ziyandilandela」という2011年の作品なんだけど、タイトルが英語じゃないので意味が解らない。(泣)
こんな犯罪めいた、不気味な作品を作っているニコラス・フロボって一体どんな人なんだろう?

ニコラス・フロボは1975年南アフリカのケープタウン生まれ。
現在はヨハネスブルグで活動しているらしいね。
2002年 Technikon Witwatersrandでテクノロジーを学ぶ。
2006年 Tollman Award for Visual Artで優勝
2009年 tandard Bank Young Artist Award
2010年 ビクター・ピンチューク財団に創設されたThe Future Generation Art Prize賞のファイナリストとなる。
調べてみると、このThe Future Generation Art Prize賞というのは、国際的に有名な現代アートの登竜門的な賞のようで、パトロンとして名を連ねているのがダミアン・ハーストやジェフ・クーンズ、更に村上隆の名前も発見してびっくりんこ!(笑)
2011年Rolex Mentor and Protégé Arts InitiativeのVISUAL ARTS部門に選出される。アニッシュ・カプーアを師匠とするコラボ作品を作る企画だったみたいだね。そしてベネツィア・ビエンナーレにも参加している。
2008年から作品は世界中で展示されているようで、テート・ギャラリーにも展示されているという。
そんな新進気鋭のニコラス・フロボ、日本での知名度はまだ低いみたいで、日本語の記事は皆無に等しかったなあ。(笑)

ニコラス・フロボは素材としてゴム製のチューブ、リボンやレースを使うことが多いようだ。
上の画像は2011年の作品「Balindile II」 で、やっぱりゴム製チューブとリボン、ホース、そして鉄材とキャンバスを使用しているという。
とても不思議な雰囲気の作品だよね。
何か意味があるんだろうけど、意味を知らなくても好きだね!(笑)

こちらも似た素材を使用した2009年の「Izithunzi」。
ゴムで圧迫され、手足を拘束されたまま放置されている人のように見えるのはSNAKEPIPEだけかしら?
やっぱり犯罪めいて見えてしまうよね。
放置プレイともいえそうだけど?(笑)

ROCKHURRAHが「これはどうしてもゴジラ対ヘドラのヘドラに見えてしまう」と言っていた作品が右上の画像。
これも上と同じ2009年の「Izithunzi」ね。
ヘドラを知らないSNAKEPIPEが検索してみたら!
確かに似てるんだよね。(笑)

南アフリカはもしかしたら想像以上に先進的な国なのかも?
まだまだ知らない国の面白いアートがたくさんありそう!
今回紹介したニコラス・フロボも是非生で鑑賞してみたいな。

好き好きアーツ!#38Alex de la Iglesia part3

【ROCKHURRAH RECOREDSが一番最初に触れたイグレシア監督作品がこれ! 】

SNAKEPIPE WROTE:

今年最初の記事なのに、通常と変わらないブログを続けるところがROCKHURRAH RECOREDS流!
時事ネタを書くのは前回のようなPOSTCARDを載せる時くらいだもんね。
ということでアレックス・デ・ラ・イグレシア監督の第3弾をまとめることにしよう。

最初はこちらの作品から。

日本では未公開の作品「オックスフォード連続殺人事件(原題:The Oxford Murders 2008年)」である。
まずはあらすじを書いてみよう。

世界的数学者のセルダム教授に憧れ、イギリスのオックスフォード大学に留学したアメリカ人青年マーティン。
セルダムの古い友人宅を下宿先にしたマーティンは、その家の夫人のもとを訪ねてきたセルダムと出会う。
一緒に夫人の部屋へ向かった2人は、そこで夫人の他殺体を発見してしまう。
セルダムのもとには連続殺人事件を思わせる謎めいたメモが届いていた…。

あらすじにあるアメリカ人マーティンを演じたのが「ロード・オブ・ザ・リング」でお馴染みのイライジャ・ウッド
いつも怯えたような困り顔をしているせいか、実年齢よりも若く見えるのが特徴か。
じゃあSNAKEPIPEも怯えた困り顔をしていれば、若く見えるかも?
えっ、違う?(笑)
実際には「オックスフォード連続殺人事件」の時に26歳くらいだったと思われるので、大学生役に無理はなかったと思う。
ただし、濃厚ラブ・シーンの時にはイライジャ・ウッドがまるっきり子供に見えてしまったね。
お相手はアルモドバル監督作品「トーク・トゥ・ハー」などに出演していたスペイン人女優レオノール・ワトリング
レオノール・ワトリングのほうが体格が良いせいもあるかもしれないけどね?

「オックスフォード連続殺人事件」での最大の見せ場と思われるのがワトリングの「裸にエプロン」なんだよね!
殿方の願望が世界共通というのがよく分かる映像。(笑)
映画の内容はともかく、このシーンのためだけに映画をレンタルしたり、購入する人がいるかもしれない。
レオノール・ワトリング、頑張りました!(笑)

世界的な数学者セルダムを演じたのが、敬愛するデヴィッド・リンチ監督作品「エレファント・マン」で主役だったジョン・ハート
と書いてはみたものの、「エレファント・マン」の時は特殊メイクだったから俳優の素顔は分からないよね。(笑)
今回は数学者というとても知的な役どころなんだけど、本当に教授に見えてしまうくらいぴったりと似合っていた。
SNAKEPIPEだけかもしれないけれど、「ロード・オブ・ザ・リング」のイアン・マッケラン(写真左)や鳥越俊太郎(写真右)、もしくは故・筑紫哲也と区別がつかなくなっちゃうんだよね。(笑)
初老の男性でやや長髪、という類似点が余計に似て蝶なんだろうけど!

ROCKHURRAHと「ヒカシューの巻上公一(写真右)に似てるよね!」と意見が一致したのがマーティンより先にオックスフォード大学に所属していたユーリ役のバーン・ゴーマン(写真左)。
こうして並べてみるとそんなに似てないし、むしろ顔としては漫才コンビ爆笑問題の太田光のほうが近いかも?(笑)
動きやセリフ回しの変態っぽさが巻上公一に近かったのかもしれないな。
あ、SNAKEPIPEはヒカシューの大ファンだからね!(笑)

もう1人特出すべき人物は「シド・アンド・ナンシー」や「ストレート・トゥ・ヘル」で有名な映画監督アレックス・コックスが俳優として出演していたことかな。
数学に没頭するあまり、廃人になってしまう役を好演していたね!
最近は映画を撮っていないのかな?


「オックスフォード連続殺人事件」は事件の謎解きに難解な数学的・論理学的要素を盛り込んだギジェルモ・マルティネスの原作が元になっているけれど、映画は全く難解ではない。
そのため何回も観なくて大丈夫!(ぷぷぷ!)
数学を知っていればもっと楽しめるのに、ということも全然ないと思われる。
もしかしたら原作はある程度の知識がないと難しいのかもしれないね?
「オックスフォード連続殺人事件」は今まで鑑賞してきたイグレシア監督の作品とは一味違う感じかな。
あまりハチャメチャじゃないし、タイトルバックも「らしくない」し。
所々で非常にスタイリッシュだな、と思うシーンはあるけどね!

続いてはイグレシア監督の一番初めに鑑賞した作品である「気狂いピエロの決闘(原題:Balada triste de trompeta 2010年)」ね!
ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)と金オゼッラ賞(脚本賞)を受賞し、ゴヤ賞では特殊効果賞やメイクアップ賞やヘアスタイル賞を受賞しているイグレシア監督の記念すべき作品なのである。

上に貼った「気狂いピエロの決闘」のリンクがWikipediaなんだけど、そこに書いてある「あらすじ」が素晴らしい!

とあるサーカス団のピエロと道化師が、美女を巡って血みどろの争いを繰り広げる

いくらなんでも短過ぎかな?(笑)
非常に簡潔でSNAKEPIPEは気に入ったよ!
一言付け加えるとすると、道化師とピエロの違いについてね。
道化師というのがクラウンを意味し、ピエロとは涙を描いているクラウンのことをいうらしい。
日本ではあまり区別しないで、全てをピエロと呼んでいるよね。
「気狂いピエロの決闘」ではクラウンとピエロの戦いが描かれているので、道化師とピエロという書き方に統一するので混乱されないように!

短いあらすじの中に出てきたピエロを演じたのが、我らがカルロス・アレセス!
アイム・ソー・エキサイテッド!鑑賞」や「映画の殿 第6号」他、数多くの記事で散々取り上げているから「またか!」と思われる方も多いかもね?(笑)
いじめられっ子が狂気を孕んでいく姿が本当にぴったり!
一番初めはそんなカルロス・アレセスの魅力に気付かず、更に他のキャストにも目を留めず鑑賞してしまったので、随分経ってから鑑賞し直したんだよね。
カルロス・アレセスの全裸シーンは本当にすごい!(笑)

こちらも何度も記事にしている「アイム・ソー・エキサイテッド!」や「カニバル」などで有名なアントニオ・デ・ラ・トーレ!
あらすじに書いてあった道化師役を演じているよ。
アントニオ・デ・ラ・トーレがカメレオン俳優であることも、今まで書いてきているんだけど、この時のアントニオ・デ・ラ・トーレは凶暴な悪い野郎を見事に演じていたよ。
あとになって調べて、初めてアントニオ・デ・ラ・トーレと判明し驚いた記憶がある。
スペインのデ・ニーロだよ、ほんと!(笑)

このピエロと道化師が血みどろの戦いを繰り広げる原因となる美女というのが曲芸師で道化師の恋人である。
演じたのはカロリーナ・バング、イグレシア監督作品の常連にして、ついに監督のワイフになってしまった女優ね!
この時のカロリーナ・バングは本当に宙吊りの曲芸を見せてるんだけど、練習したのかなあ。
とても上手だったよ。
彼女がちょっかいを出したせいで、ピエロは本気になり争いへと発展したことを考えると、一番悪いのはカロリーナ・バングかな?(笑)


前述したように、最初に観た時には出演者に気を配っていなかったので、スペインはもちろん世界各国での人気映画「トレンテ」シリーズのサンティアゴ・セグーラが重要な役で出ているところを失念してたんだよね。
ピエロのお父さんという役で、やっぱり職業はピエロ。
祖父もピエロだったというから代々受け継いでたんだね。
お父さんの時代がスペイン内戦真っ只中の1937年ということになっていて、ピエロの服装のまま戦場へと駆り出されるシーンがすごい。


かつて敬愛する映画監督デヴィッド・リンチが「Happy Violence」と提唱した、笑いと暴力の融合とでもいうのだろうか。
ROCKHURRAHが好きだったホラー映画の中にも笑いの要素があったというから、その系譜なのかもしれないけれど、恐怖と笑いがごたまぜになっている不思議なシーンがイグレシア監督のスタイルなのかな、と思う。
そしてそのシーンがとても好きだ!(笑)


人を笑わせるはずのピエロや道化師が恐怖の存在に変身する、というのも同じ原理だよね。
かわいい人形が光の当て方で怖く見えたりするような。
知っていた顔とは違う意味を持つのが怖いんだろうね。
ホラーと笑いの共存については、一度深く掘り下げて考察したいテーマかな!(笑)

「気狂いピエロの決闘」のタイトルバックも素敵なんだよね。
先に書いた1937年からピエロの時代になるまでの世界の歴史を写真で綴っていく、言ってみればフォトアルバム形式なの。
使われている写真が秀逸なので、とてもお洒落に見えるんだよね。
1枚1枚を見せる秒数はかなり短くて、少しでも気を抜くと次のシーンに移ってしまう。
右は歴史的に(スペインで?)有名な人物なのかSNAKEPIPEは知らないんだけど、その次の写真として「フラッシュ・ゴードン」のミン皇帝が映り込んでいるのが面白い。
一瞬だから気付いていなかったけれど、今回ゆっくり再生していて分かった左の画像。
下着姿のグラマーに隠れていたのは、体を槍で突かれている人物。
これもまた2つの要素の融合なんだね。
イグレシア監督も気に入ってるシーンだろうね。

今回の2作品で現在鑑賞できるイグレシア監督の映画は全て観ていることになるのかな。
本当は「どつかれてアンダルシア (仮)(原題:Muertos de risa 1999年)」のような初期の作品が観たいんだけど、残念ながらDVD化されてないんだよね。
初期の作品のDVD化を是非お願いしたいものだ!