がっちりBUYましょう!vol.10 クリスマスもミリタリー編

【時代を超えてカッコイイ。キリッとした海の男たち勢揃い】

ROCKHURRAH WROTE:

あまり買い物をしないROCKHURRAHとSNAKEPIPEなんだが、お互いの誕生日とクリスマスには人並みにプレゼントをし合うのが毎年の恒例。
買い物をしない、などと書くとちょっと殺伐とした人柄とか生活を想像してしまうだろうが、そういうわけじゃなくて「これは!」と思えるほど気に入ったものが少ないか、あっても高くて即座に買えないというだけの話。作れるようなモノは自作してしまう事も多いし。

あれが欲しい、と明確なものを持っているわけじゃないからクリスマスの時には何となく欲しいものがありそうなところに行って、何となく思いつきで欲しいものを買ったりしているのが毎年の事。
しかし今年は珍しくお互いに明確な欲しいものが見つかったので気が早すぎるがお互いのプレゼントにする事にした。いつものように直前になってアタフタしなかったのは良かったが、通常の人が考えるクリスマス気分とは程遠いな。

ROCKHURRAHがSNAKEPIPEに贈ったのはまたもやしつこいくらいに軍モノ、アメリカのFIDELITYというメーカーが出してるCPOシャツ・ジャケットだ。
CPOとはアメリカ海軍の兵曹長(Chief Petty Officer)の事。などと書いても軍の中の事などよくわからんし、2つ以上の役職が出てくるとどっちが偉いのかも知らないんだが、うんちくのために買ったわけじゃなっしー(パクリ)、どうでもいい事だ。
たぶん船の上で北風ピープー寒くないように厚手で風を通さないシャツというような目的なのかねえ?
厚手のメルトン素材で出来てて胸にフラップ付きのポケットが2つというシンプルなもの。裾がシャツのようにラウンドしてるから、本来はシャツなんだろうが、厚みはちょっとしたジャケット並み。

海軍といえば即座にピーコートを思い出す。
ROCKHURRAHはダブルのボタンが似合わないので自分でこれを持っていた事はないが、昔小倉にいた頃に兄が持っていたのを拝借してたまに着てたものだ。それは革のライダース・ジャケットで有名なショットのものだった。 裏地もしっかりキルティングで分厚い装甲のような固いコートだったな。確かに保温素材が昔よりも格段に進歩した現在でも、北風程度では揺らぎもしない確実な暖かさは素晴らしい。いつの時代でも廃れないのはその普遍的なデザインと品質だろう。
SNAKEPIPEはそういう片田舎出身のROCKHURRAHとは違いずっと東京をテリトリーとして育ってきたから、高校生の時に上野の中田商店で買った本当の海軍モノのピーコートを所持していたそうだ。しかし軍人が着るいかついコートだから、かなり大きいのを無理して着てたらしい。今みたいにショート丈とかレディース・サイズとかがなかったから仕方ないんだろうね。
彼女は何年か前にショットの真っ赤のピーコートも買ったんだが、やっぱりその重さに耐え切れず(虚弱体質)、暖かいんだけど動きにくいから最近はあまり着てないのが現状。

さて、いつものように話がそれてしまったが、SNAKEPIPEがちょっと前に古着屋で見て気にったのがこのCPOの形。ものすごく昔にはちょっとした古着通だったROCKHURRAH、もちろんCPOの名前と形は一致したんだが、過去にヴィンテージ古着屋とかで見てたCPOと言えばなんだかチェックだったり重くて固いウールシャツだったり、今回買ったものとは似ていても全然違った印象を個人的には持っていた。
70年代に流行ったヘビーデューティーなどというアウトドア初期の言葉が頭の中をよぎる、それがROCKHURRAHの持つCPOのイメージだったのだ。だからSNAKEPIPEがグッと来たCPOは最近めのブランドが今風にアレンジしたCPO風だと勘違いしてたわけだ。
しかし調べてみるとこのフィデリティなるメーカーは由緒正しく、上に書いたピーコートを主力商品として海軍に納入していたらしいのだ。
いやはや、ミリタリー好きなどと言ってもROCKHURRAHの知識なんてこの程度、お恥ずかしい。

この軍納入メーカーの歴史ある本物は意外なほど細身でスマートなシルエットを持っていて、ヘタなブランド品よりもずっと格好良い。フィデリティとコラボしてるブランドとかもあるくらいだしね。
本物でしかもオシャレに見えるものだからSNAKEPIPE が惚れるのもよくわかるよ。
丈の長さもSサイズならそこまで長くなくて、女性でも全然問題なく着用出来る。試しに男でも割と細身のROCKHURRAHも袖を通してみたが、ちょっと窮屈なほど。マッチョな人にはとても着れませんというレベルだな。
前にこの「がっちりBUYましょう!」の企画でMASSIF社のジャケット(米軍納入の本物)を紹介した事があったけど、あれも本当の鍛えた軍人には細すぎるでしょう、と思ったもんだ。
昔の軍服=動きやすい=太くて野暮ったいというイメージとは全然違う最近のスタイリッシュな軍服。時代はやっぱり変わったなあ。

メルトンは暖かいけど固くて重い、といったイメージはこのCPOにはなく、意外なほど柔らかくて軽いのも時代の進歩だね。
何の装飾もなく普通のウールシャツなのにおしゃれで上質に見える、こういうのがウチの大好きなものなのでSNAKEPIPEもとても気に入って喜んでくれた。いいプレゼントで良かったね。

SNAKEPIPEがROCKHURRAHに買ってくれたのはサングラスで有名なオークリーのアサルト・ブーツだ。ちょっと前にもこのコーナーでタクティカル・ブーツ特集をやってベイツと5.11のブーツを紹介したが、今回はサイドジッパーではなく、普通の編上げブーツ。しかも今まで履いた事ないショート丈の6インチ仕様。

これまた去年の記事だが、SNAKEPIPEがナイキID(ナイキがやってる特注システム)にて素晴らしいタクティカル・ブーツを購入した。なぜだか知らないが購入した直後にこの商品はカタログから消えてしまったという幻の商品なんだが、消える直前に入手出来た幸運のブーツを横目に、自分のも注文すれば良かったと後悔していたROCKHURRAHなのだ。サイドジッパーは本当に着脱が容易で履きやすいんだけど、やっぱりちゃんとした編み上げの方がスッキリしててカッコイイからね。
そんな「隣のものがうらやましい病」のROCKHURRAHが密かに憧れていたのがこのオークリーのSIアサルト・ブーツなのだった。
オークリーと言えばアメリカの軍用サングラスでも本格兵士の着用率が非常に高いメーカー(ESSという名前でも有名)。本社ビルも何だかSF映画に出てくる要塞みたいで素晴らしくカッコイイ。ミリタリー好きの人にとっては信頼度の高いブランドだと言える。その実力派メーカーのタクティカル・ブーツ、悪かろうわけがない。
しかしこれは売ってる店も少なく5.11とかよりはやや高価、サイズもなかなかないので諦めていたんだが、つい最近、とある通販サイトで電撃的特価(何と半額)のものを発見。興奮してロクに考えもせずに注文したのが今回のプレゼントというわけだ。
注文した後で「パチもんじゃなかろうか?」「キズもんじゃなかろうか?」などと色々な不安にかられもしたが、そこはミリタリー・ショップの中でも名門と言える本格的な品揃えのお店。滅多に騙される心配はなさそうだ。
以前に5.11のバッグを通販で買った時に店に在庫があるかのような書き方をしててダマサれた事があった(アメリカから取り寄せに2ヶ月近くもかかった)ROCKHURRAH。そういう意味の猜疑心は強いのだ。
もし同じパターンだったらクリスマスに間に合わないと思ったが、心配をよそに商品はあっという間に届いた。
実は今回のクリスマス・プレゼント編の「気が早過ぎる」理由がここにあったのだ。到着が非常に遅れた、または注文したけど品切れだった、とかに対応して次の行動が起こせるために早めの注文を心がけていたというわけ。

このSIアサルト・ブーツはオークリー社がU.S.SOCOM(United States Special Operation Commandの略でアメリカ特殊作戦軍の事)の要請で制作したという本格派仕様のブーツ。ただし本物はそうそう手に入るシロモノではないので、これを民間用にマイナーチェンジしたのが入手した商品となる。ふむふむ「ターミネーター4」でも使用された、などと謳い文句があるな。
最初見た感じは硬そうで重そうだったが、履いてみてビックリ。足にピッタリんこフィットして感動的な履き心地。前にベイツのブーツを履いた時に思ったのと感想はほぼ一緒だが、こちらは見た目のシャープさとは全く違う快適さで、もうメロメロに惚れてしまった。ソールはごつくて路面にピッタリと吸い付き、足音もほとんどしない感じがする。建物の中の階段だとカツカツと足音がするんだけど、外ではなぜか無音に聞こえる不思議。
ベイツのように革新的なインソール使ってるわけでもないのに、まさにハイ・テクノロジーが凝縮された高性能ブーツだと履いてみてわかるよ。自分のキック力が1.5倍になったような感じ。
ただ一点だけ、このブーツは普通の編み上げなんだが、非常に靴紐がほどけにくいようになってて、履くのに結構時間がかかるのだけが難点。本物のミリタリー・ブーツとかで採用されているスピードレースと呼ばれる金具がついた方式ではなく、あくまで原始的に穴を通した紐という普通のブーツと変わらないためだ。しかも紐の角度が途中から変わっていて、実はこれがほどけにくい原因なんだよね。考えてみれば兵士は一旦ブーツを履いたらずっと履きっぱなしが当たり前。脱ぎ履きしやすいよりはほどけにくい方がありがたいのは間違いない。
その点以外はものすごく気にって毎日でも履きたいブーツだと言える。個人的な好みだとは思うがデザインもミリタリー・ブーツとしては最高点だな。本当にありがとう、SNAKEPIPE。

これでお互いのプレゼント交換は終わったわけだが、ここで終わらないのがROCKHURRAH RECORDS流というか何と言うか。
SNAKEPIPEが入手したCPOを眺めてまたしても「隣のものがうらやましい病」にかかってしまったROCKHURRAH。気がつけばフィデリティだのCPOシャツだのを無意識で探してしまう。そんな時に偶然見つけたのが今回のオマケ、フィデリティのM65ジャケットだ。
数多くのミリタリー、タクティカル系のジャケットを所有している二人なんだが、ROCKHURRAHは個人的にM65は今まで持ってなかったのだ。最近のブランドはどこもM65みたいなものを作ってはいるが、ディティールや素材がイマイチで安っぽい。本物はでかくてブカブカのサイズが多く、これまた似合いそうにない。
しかしフィデリティのはピーコートやCPOシャツと同じメルトン素材で出来てて、やっぱりかなり細身でカッコイイ、しかもM65を作ってた実績はなくても一応本格派のメーカーなのは間違いない。チャラチャラしてない大人の逸品M65だと一目惚れしてしまった。
それならばブーツも安かった事だし、もう一つオマケでプレゼントしてあげるよ、というSNAKEPIPEの優しい申し出を受けて買ってもらったのがこの1枚。

CPOと違い、こちらは全部裏地が付いててさらに暖かそう。前に何回か書いてきた事だが、ROCKHURRAHは上着選びの運が悪くて、ちょっと寸足らずか長すぎかどっちかの上着しか持ってない不幸な星の下に生まれたようだ。もしかしたら人よりもちょっとだけ胴が長いのかも知れないが、胴の長さを合わせると絶対にぶかっとした着こなしになってしまうんだよね。
しかしこのM65はそんな事がなく、まさに誂えたかのようなジャストフィット。外側4つのポケットも完全に本物のM65と同じ仕様になっていて妙なアレンジとかも一切ない。こんなのが欲しかったんだよ、ありがとうSNAKEPIPE。

着た事ある人はみんな知ってると思うがM65とかECWCSとか陸軍仕様のミリタリー・ジャケットは前ジッパーで閉めた後にスナップ・ボタンでさらに前を留めるタイプになっている。これが非常に苦手なROCKHURRAHはいつもこの時点でアタフタしてしまう。この辺は好みや慣れの問題だろうかね?

今回のお互いのプレゼントはどれも大満足の素晴らしい質感のものだった。いつでもこんなありがとうの気持ちを持ってお互い暮らしてゆきたいものだ。
しかしブーツとM65、これを同時に着用する時は靴紐とスナップボタンで結構手間取りそう。来年の目標はこれを瞬時に着脱出来るようになる事だろうな。では特訓して来ます。

ブランカニエベス鑑賞

【ブランカニエベスのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

ついに12月7日がやってきた!
実はROCKHURRAHとSNAKEPIPEはこの日を心待ちにしていたのである。
何故ならその日はスペイン映画「ブランカニエベス」の公開日だから!
「ブランカニエベス」はスペインのモノクロ・サイレント映画。
「あのペドロ・アルモドバルが大絶賛!」とフレーズ付きで紹介されていた記事をROCKHURRAHが発見したのはかなり前のことだ。
このブログで何回か書いているけれど、最近のROCKHURRAH RECORDSでの流行はスペインなので、スペイン物でしかも「あのアルモドバルが」なんて書いてあったら観に行かずにはいられないんだよね!(笑)
新宿武蔵野館で上映が決定しても、12月に入ってからやっと上映時間のスケジュールがアップされるなんて情報が遅過ぎる。
この遅れは、もしかしたら初日に開催されるイベントのせいだったのかもしれないな。
SOPHIAのヴォーカル松岡充とヴィヴィアン佐藤が上映終了後にトークショーを行うという。
どうやらSOPHIAのPVを「ブランカニエベス」の監督であるパブロ・ベルヘルが担当したことがある縁で、ゲストとなったらしい。
SNAKEPIPEとROCKHURRAHは映画を鑑賞したいだけなので、当然ながらトークショーには全く興味なし!
初日の一番の回を狙って、新宿武蔵野館に出かけたのである。

新宿武蔵野館は今年の4月に公開されたデヴィッド・クローネンバーグ監督の「コズモポリス」を観に行って以来のSNAKEPIPE。
確かあの時も公開初日に行ったはず。
そのため武蔵野館のシステムは覚えていた。
最近では、事前にネットでチケット購入と共に座席予約ができる映画館がほとんどなのに、武蔵野館は「早く行って並んだもん勝ち!」なんだよね!(笑)
開場時間になったら整理券を配布し、その順番で劇場内に入ることができるという非常にシンプルなシステムである。
それを知っていたので、開場時間の30分前には到着して並んで待つ作戦を決行!(大げさ)
無事に武蔵野館に到着したROCKHARRAHとSNAKEPIPEは整理券番号2番と3番を入手することに成功したのである。
列に並ぼうとしたところを武蔵野館のスタッフから呼び止められ、トークショーの回を希望するか尋ねられた。
トークショー希望の場合はあちらの列の最後尾へ、と手をかざした方向を見てびっくり!
年齢層が様々な女性の長い行列が!(この微妙な言い回し!)
「あんなに大勢の女性客が初回に来るのか!」
と完全に勘違いしているROCKHURRAH。
トークショーは午後の回で、初回に彼女達は来ないから安心したまえよ。(笑)
14時からの上映後に行われるトークイベントのために9時頃から並ぶとはすごい情熱だよね!
それまでの時間は何をしてるんだろう?
変な心配をしちゃうよね。(笑) 

無事にチケットを購入した後は上映時間まで少し時間があったので、館内をブラブラしている。
公開記念ということなのか、闘牛士の衣装が展示されていた。
それにしても武蔵野館の映画のコピー「美・サイレント」って古過ぎない?(笑)

いよいよ入場できる時間になった。
早い時間から並んで入手した整理券番号順に、まずは1番から10番まで先に入ることができる仕組み。
ところがROCKHURRAHとSNAKEPIPEより明らかに後ろの番号の人に先を越されてしまった!
係員もちゃんと本当の番号順で呼んでくれたら良いのにね!
じーさんに負けるとは!とほほ!
席に座ってから周りを観察し、およその人数を確認してみると約30人程度というところか。
座席数は133席だったので、かなりガラガラ。
これは良い感じだ!(笑)
しかも観客のほとんどが一人で来ている人ばかり。
これは「どうしてもこの映画が観たい」という映画ファンに違いない。
好感が持てるなあ!

映画が始まってから気付いた。
そうか、いくらサイレント映画でも音楽や効果音は入るんだね! (笑)
登場人物のセリフ部分が文字になっているだけなんだよね。
サイレント映画を最後に観たのはいつだったのか覚えていないけれど、「戦艦ポチョムキン」やチャップリンのシリーズで観て以来かも?
「ブランカニエベス」では賑やかだけれど、どこかセンチメンタルな要素を含んだスペインの音楽を聴くことができる。
この音楽にとても哀愁を感じてしまい、何故だか泣いてしまったSNAKEPIPE。
てへっ、音楽だけで感動しちゃったみたいだよ!

「ブランカニエベス」というのはスペイン語で「白雪姫」を意味する言葉とのこと。
映画の公式サイトにも書いてあるけれど、いわゆるグリム童話の「白雪姫」を題材に、闘牛とフラメンコの要素を取り込んだスペイン版白雪姫という紹介がされている。

 ディズニーランドで有名な「白雪姫と7人のこびと」というフレーズにもあるように、やはり映画の中には7人の小人が登場するんだよね。
この中におネエ系が入っているところに笑ってしまう。
アルモドバル監督作品の影響か、スペイン映画には必ずいるタイプって感じだからね。(笑)
おネエ良い味出してたよ!

そして「白雪姫」の中で最も有名な「世界で一番美しいのは誰?」と鏡に問いかける意地悪な継母も当然のように映画に登場する。
この継母がコスプレマニアのように、いろんな衣装で登場するのが面白かった。
継母の衣装にも大注目だね!
かなり頬のこけた顔で、口が大きかったので女装したミック・ジャガーって感じなんだよね。(笑)


成長した白雪姫がどうしても80年代にヒットしたマルティカに見えて仕方がなかったSNAKEPIPE。
髪型のせいもあるだろうし、ややしゃくれ気味の顎のあたりも似てるんだよね!
マルティカがキューバ人移民の両親の元に生まれる、と書いてあって納得。
やっぱり近い感じなんだね。
え?武蔵野館のことを言えないくらい例えが古いって?(笑)

映画鑑賞後にROCKHURRAHと感想を語り合った時に驚いたこととして一致したのが「死者との記念撮影」のこと。
左の画像がまさにその記念写真なんだけど、もしかしてスペインにはこんな風習があるのかしら?
以前観た多分「アザーズ」だったと思うけど、その中にも死者の写真が出てきたように記憶してるんだけどね?
あの映画もスペイン人監督アレハンドロ・アメナーバル!
スペインでの死に対する意識について調べてみたいね。

「ブランカニエベス」の感想をもう少し書いてみようか。
SNAKEPIPEはモノクロ写真を愛好していて、自分で撮った写真を自ら暗室で焼き付けも行っていたことがある。
写真学校にも通っていたしね。(笑)
学校で習ったのは主に写真の技術的なことだったな。
例えばモノクロ写真の場合、白は印画紙の白色と同じではなく、黒は丸っきり何も見えない真っ黒ではない、といった具合だ。
つまりモノクロというのは真っ白じゃない白から真っ黒じゃないっ黒までの階調(トーン)で表現される世界ってこと。
「ブランカニエベス」はモノクロ映画だったけれど、ものすごくトーンに気を遣っていたように思う。
全然見辛いシーンがなかったから。
たまに大昔に撮影されたモノクロの邦画を観ると、目が疲れることがあるんだよね。
前述した真っ白と真っ黒が目に突き刺さるみたいで。
その点「ブランカニエベス」はさすがに良くできてたね!

もう1つ気になったのはセリフ部分のト書き。
スペイン映画なのに、何故かト書きだけ英語だったこと。
そのため「blancanieves」は「snowwhite」になってるんだよね。
ト書きにも日本語字幕が付くんだから、せっかくだったらスペイン語にして欲しかったなと思う。
どうして英語だったのかを教えて欲しいよ。

最後はやっぱり音楽。
これもまた前述したように音楽に感動して泣いてしまったSNAKEPIPEだけど、ROCKHURRAHもまた感銘を受けたようだ。
なんと帰宅してから早速フラメンコについて調べているではないの!

「すごいぞ!これはすごい!完全ノックアウトされた!」
興奮気味に叫ぶROCKHURRAHが見せてくれたのが上の映像。
ルーズベルト大統領の招きでホワイトハウスでもダンスを披露したというカルメン・アマヤの激しくキレのあるフラメンコだった。
いやあ、本当にすごい!
1930年代にこんなステップ踏む人がいるなんて!
それにしても「ノックアウト」って死語じゃないかね?(笑)

またスペイン映画で盛り上がってしまったね。
来月はアルモドバル監督最新作「アイム・ソー・エキサイテッド!」が公開されるし、まだまだスペイン熱は冷めそうにないな。(笑)

SNAKEPIPE MUSEUM #24 Jim Dine

【工具好きにはたまらないね!】

SNAKEPIPE WROTE:

過去のブログの中で何度か書いたことがあるけれど、SNAKEPIPEはピカピカ光るシルバー色が大好き!
千葉県民であるにもかかわらず、クリスマスで盛り上がるディズニーランドよりもホームセンターのほうが魅力的だと感じてしまう。
何故ならホームセンターには工具類が置いてあるから!(笑)
この「工具類好き」についてはかつて「インダスとリアル(意味不明)」なんてブログにしたこともあったっけ。
記事の中にスパナでオブジェを作り、トイレに飾っていた写真を載せている。
なかなか良い出来栄えに我ながら満足していたSNAKEPIPEだったけれど、なんと工具類をアートのモチーフとして採用していた大御所アーティストがいたとは知らなかった!

その大御所アーティストの名前はジム・ダイン
アート系に詳しい人じゃなくても左に載せたようなハートの絵は見たことあるんじゃないかな?
SNAKEPIPEもジム・ダインとはハートの人という認識しか持ってなかったんだよね。
ううっ。
ここでもまた発覚してしまったポップアートの知識のなさ!
今頃になってこんなに好みの作品を作っていることを知るとはね!

ジム・ダインは1935年オハイオ州生まれ。
ポップアートのアーティストともネオダダの運動家ともしても知られているらしい。
一番上に載せた画像「Tool Series」は1973年の制作とのこと。
どうやらジム・ダインはおじいさんの代から金物屋をやっていて、工具類には幼少の頃から親しんでいたらしい。
MoMAにもTATEにも「Tool Series」が所蔵されていて、非常に有名な作品だったと知ったよ。
SNAKEPIPEが全然知らなくてごめんなさい!
ジム・ダインは現在78歳。
でもまだまだ現役で活動しているみたいんなんだよね。

 上の作品は2008年制作の「With Aldo Behind Me」である。
1973年から35年を経てもまだ登場する工具類は、ジム・ダインにとって最も重要なモチーフの1つであり、自分の分身ともいうべき存在なんだろうね。
工具を愛する気持ちはSNAKEPIPEも同じ。
また工具使ったオブジェ作ろうかな。
もっとジム・ダインについて勉強しないとね。(笑)

映画の殿 第05号 キャリー

【嬉し泣きしているキャリーなのに、どうしても幸せそうには見えないね】

SNAKEPIPE WROTE:

映画のリメイクが流行っているようだ。
例えばジョン・ウォーターズ監督1988年の作品「ヘアスプレー」は2007年にリメイク版が公開されたよね。
大好きな作品だっただけに、オリジナルを超えるはずはあるまいと思いながらも、一応は鑑賞することにした。
結果は予想通り、オリジナルを踏襲することに懸命だったようで、オリジナル以上の出来栄えではなかったと思う。
どうしてオリジナル以上の作品を作ることができないのにも関わらずリメイク版を作るのか。
単なるネタ切れということなのかもしれないけれど、全く理解できない現象である。
そしてまたリメイク作品の情報が入ってきた。
なんと今度は「キャリー」だという。
先日ブライアン・デ・パルマ監督のオリジナル「キャリー」を鑑賞したばかり。
今回の「映画の殿」はオリジナル版の「キャリー」を特集してみたいと思う。
2013年版「キャリー」と比較する記事ではないのでよろしく!(笑)

「キャリー」はスティーヴン・キングの小説を原作とした、1976年のアメリカ映画である。
上述したように監督はブライアン・デ・パルマ。
SNAKEPIPEが一番初めに「キャリー」を観たのは、日曜洋画劇場などのテレビだったな。
まだ義務教育を受けていた年頃で、観た翌日にキャリーのモノマネをして遊んだ記憶がある。
子供の頃はいろんなモノマネやってたんだよね。(笑)
「ホラー映画好き」を公言しているROCKHURRAHは、当然のように今まで何度も「キャリー」を鑑賞している。
今回初めて2人でものすごく久しぶりに鑑賞することにしたのである。
映画の殿 第3号」で特集した「悪魔の追跡」も同じなんだけど、70年代の映画には独特の雰囲気があって、魅力的だからね!

 主人公のキャリーが左の写真である。
そばかすだらけの顔。
いつもうつむき気味で、内気な様子。
高校生という設定なのに、朗らかに友人と語らうこともなく一人でいる少女。
クラスの中で浮いてしまうのも納得してしまう。
演じていたシシー・スペイセクはハマリ役だったと思う。
怒りを爆発させた後の、目を剥いた顔はまるで別人で、本当に怖かったからね!
シシー・スペイセクが1973年に出演した「地獄の逃避行」も鑑賞してるんだけど、やっぱりこちらでも一人行動する女の子の役!
きっとそれがシシー・スペイセクの個性なんだろうね。
「地獄の逃避行」も全く古さを感じさせない映画で、いつか特集記事を書いてみたいと思っている。
余談だけど、シシー・スペイセクは1974年に映画美術監督のジャック・フィスクと結婚している。
このジャック・フィスクって名前はどこかで…。
そうだ!デヴィッド・リンチの昔からの友人で、確か「イレイザーヘッド」で 惑星を回す役でも出てたし、リンチの映画の美術も担当していた人だったはず!
うわー!こんなところでリンチにつながるとはびっくりんこ!
Wikipediaに載っているシシー・スペイセクの説明の中には、アンディ・ウォーホルの映画にも出演なんて書いてあるよ。
アート寄りの女優なんだろうね。
シシー・スペイセク、良いねー!(笑)

キャリーの母親は狂信的な信者である。
特に性に関して厳しく、キャリーという子供を授かったことに対して未だに後悔するほどの徹底ぶり。
狂信的な母親というと「サンタ・サングレ」を思い出すね。(笑)
過去の行いを懺悔するよう娘にも強要する、かなり複雑な心境の女性を演じていたのがパイパー・ローリー
おや?パイパー・ローリーにも見覚えがあるよ?
そうだ!「ツイン・ピークス」の製材所にいた、所長の妹だったよね!
またもやここでリンチにつながってしまったよ。(笑)

他の出演者で特筆するならば、若いジョン・トラボルタを観ることができる点かな。
「キャリー」はジョン・トラボルタの映画出演2作目だったようだけど、かなり重要な役どころを見事に演じていたね。
「キャリー」の翌年に「サタデーナイトフィーバー」で世界的に有名になったよね。

「キャリー」の中でトラボルタの恋人役でキャリーをいじめる同級生を演じていたナンシー・アレンが、いかにもアメリカンな70年代のイカした女の子という雰囲気で良い味出してたね。
ナンシー・アレンは監督のブライアン・デ・パルマと結婚したようだけど、数年で離婚しているみたいだね。
ロボコップ」 ではアン・ルイスという名前の巡査役で登場!
なんとこの「ロボコップ」もリメイク版が来年公開とのこと。
ぎゃーーーっ!(笑)

「キャリー」の中で印象的だったのは、キャリーが怒りを爆発させ、超能力を発揮しているシーンの見せ方。
今となってはよく見かける「画面を2分割して同時に起こっている出来事を知らせる」方式を採っているんだよね。
キャリーが目を見開き視線を動かすことで、物を動かしたり扉を閉めたりする右の画面と、それによってどんな被害があったかを示す左の画面といった具合である。
名付けるなら「before_after戦法」といった感じか。(笑)
1976年より以前にこの撮影方法を実施していた映画があったのかどうかは検証していないけれど、「キャリー」での効果は絶大だったと思う。
Wikipediaによれば「分割画面や、長回し、スローモーション、目線アングルなどを使用し凝った画作りはデ・パルマ・カットと呼ばれる」とのことなので、やっぱりデ・パルマ監督考案の見せ方なのかもしれないね?
ブライアン・デ・パルマ監督作品は何本か鑑賞しているけれど、大いに語れるほどではないので、もっと勉強してから発言しようかな。(笑)

37年も前に制作された「キャリー」は、2013年の現代でも十分通用する強烈なインパクトのある映画だと思う。
もちろん登場人物のファッションは70年代だし、車の型などは当時の物だから年代を感じるのは当たり前のこと。
CGなどで加工しなくてもこんなにすごい映像を作り出すことができるんだなと感心してしまう。
まだまだ未鑑賞の素敵な作品はたくさんあるはず。
故きを温ねて、新しきを知る映画の探索は続くよ!