大人社会科見学—グレートジャーニー 人類の旅—

【グレートジャーニー展のトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

いつも見ている「めざましテレビ」の次の番組である「とくダネ!」になっても消さずに、テレビをつけたままにしていた。
その時特集されていたのが「世界最古のミイラ」。
その途端に目が釘付け!
なんと「世界最古」とされるミイラはチリのチンチョロ族によるものだ、という。
エジプトが最古じゃなかったの?
更にエジプトのミイラとは違い、身分の高低に関係なくミイラが作られ、家族単位で並べられているらしい。
これはすぐにミイラ好きの友人Mに知らせなくては!
「あ、それはグレートジャーニーだよ」
とあっけなく答えられてしまう。
「とくダネ!」の特集は、上野にある国立科学博物館で現在開催されている「グレートジャーニー 人類の旅」の宣伝だったことを知るのである。
グレートジャーニー」とは、フジテレビで放映されていたドキュメンタリー番組のことで、友人Mはその全てを見ていたと言う。
「すっごい面白いから!観に行こうよ!」
是非一緒に行きたいと言うROCKHURRAHも加わり、先日の「フランシス・ベーコン展」に続き、怪しい3人組は上野に向かったのである。

上野というのは、平日でも土日・祝日と変わらない人の多さなんだね。
「グレートジャーニー」のような、ちょっと学習チックな題材には特に子供が多いだろうという予測から、春休みが終わった平日を選んで出かけたのにも関わらず、平日には平日特有の群れがあった。
女性や高齢者の団体である。
JR上野駅公園口から、信号が変わる度に大勢の人が上野公園を目指して歩いている様子にビックリ。

上野公園内には東京国立博物館、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京芸術大学美術館、恩賜上野動物園、東京都美術館、東京文化会館、下町風俗資料館、旧東京音楽学校奏楽堂、日本芸術院、日本学士院、上野の森美術館と、全く知らなかった館も含め、12もの施設があるんだね。
それに加え、不忍池や上野公園を散策するような人もいるだろうから、様々な目的を持った人達が行き来する場所ということになるよね。
前回、国立西洋美術館に来たのは2011年12月のこと。
あの時はウィリアム・ブレイクの版画展だったね。
今回の国立科学博物館は、一体何年ぶりのことになるんだろう?
恐らく子供の事に来たきりなのではないだろうか。

簡単に「グレートジャーニー」の概要だけ書いておこうかな。
探検家・人類学者・外科医である関野吉晴氏が挑んだ、通算16年、人類拡散の足跡を辿る旅の記録とのこと。
前述したように、SNAKEPIPEは「グレートジャーニー」のドキュメンタリーをテレビで見た覚えがない。
そのため今回のブログでは、「グレートジャーニー 人類の旅」に関する感想だけをまとめることになる。
もしかしたら友人Mのように、ドキュメンタリーを全て見ていたとしたら、また違う感想を持ったかもしれないけれど仕方ないね。
展覧会の構成通りに書き進めていこうと思う。

会場に進むと、恐れていた子供の姿がほとんどいないことに安堵する。
「グレートジャーニー展」が開催されてから、約1ヶ月が経過しているせいもあって会場内はそこまでの混雑ではなかった。
全体的に年齢層の高いお客さんが多い。
えっ、怪しい3人組もその中に含まれてるって?(笑)

プロローグ 遙かなる地に生まれて

アフリカ、タンザニア・ラエトリ遺跡にある、人類最古の足跡のレプリカが展示されていた。
この足跡こそ人類すべての始まりであり、ここから人類が地球上に拡散した、という。
これは360万年前のアファール猿人の足跡らしい。
父親、母親、子供という家族の物ではないかと推測し、家族で連れ立って歩いた最古の足跡化石を「グレートジャーニー」の象徴として位置づけている。
アフリカから住むのに過酷な地域に至るまで、人類はどのようにして生きてきたのかを探るのが今回の展覧会の主旨である、とのこと。
確かに足跡は二足歩行で歩いているのが解るし、足の大きさの違いも歴然としている。
人類は元々アフリカ人だった、というのは前に聞いたことがあるけれど、実際に証拠を見せられてる感じだね。(笑)

旅の始まり グレートジャーニーのスタート

熱帯、高地、極北、乾燥という4つの地帯に暮らす人々の紹介が始まる。

熱帯雨林 アマゾン 自然と共に暮らす民

熱帯雨林のジャングルの中で暮らす、アマゾンのマチゲンガ族。
自然を巧みに利用しながら調和を保ち、破壊することなく生きてきた先祖代々伝承の「密林で生き抜く知恵」について教えてくれる。

「これだけあれば生きられるセット」が展示されていた。
槍や火起こし用の棒など、アマゾンに住む人達にはそれだけで充分獲物を確保したり、調理して生活できるそうだ。
多く持っている人は、持っていない人に分け与えるのが当たり前という話も書いてあり、 「今の日本では考えられない習慣だな」と思う。
下着のトランクスを3枚持っていた関野氏は、残り2枚を村人に分け与え、代わりに槍をもらったという。
丁寧に「関野さんのパンツ」まで展示されていて大笑いする。(笑)

マチゲンガ族の住まいや食事についての展示があり、 「セキノ不動産」としてパネル展示されていたのが面白い。
築年数や間取り、部屋タイプなど、実際の不動産情報のように書いてあった。
食事については、レシピとして材料と作り方を紹介していた。
マチゲンガ族の場合はウーリーモンキーのレシピだった。
ウーリーモンキーは、とてもカワイイ動物だったので、食べることは考えにくい。
住む場所や習慣で何もかもが変わってくるんだね。

習慣が違う、ということを明確に示してくれたのが、今回の展覧会の目玉の一つである「干し首」の展示である。
(写真はInternet Museumより転用)
これは元々国立科学博物館に所蔵されていた物で、今回10年ぶりで公開されることになったという。
これが本物の人間の頭部なの?
だってその大きさ、なんと「こぶし大」しかないんだもん!
「干し首」の作り方(?)について、映像での解説があり、かなり加工して作り上げていたことが解る。
こんなに貴重な「干し首」を実際に鑑賞できるとは!
「干し首のレプリカ、ミュージアムショップで売ってるかな?」
ROCKHURRAHが真剣な表情で尋ねてきたよ。
売ってたら買う気なんだろうか?(笑)

高地 アンデス インカの伝統を残す

6,000m以上の山が連なる大山脈の高地に暮らすケロ村チュワチュワ集落の人々。
標高差3000mを賢く生活に利用し、標高4200mでアルパカ、リャマなどの家畜の放牧、標高の低いところでじゃがいも、さらに低いところでとうもろこしを栽培するという。

アンデスの標高が高いため、とても寒いために織物が発達したのかな。
飼育している動物の毛を刈り取り、織物にしていた工程が興味深い。
染色の技術も素晴らしく、発色の見事さに目を奪われる。
その昔よく通っていたのが、渋谷のチチカカ
この手の民族調モチーフは大好きなんだよね。(笑)
馴染みのあるチチカカ系の織物の作り方を教えて貰えるなんて嬉しいね。
染料はほとんどが天然の物を使用しているんだけど、時折「発酵した子供の尿」って書いてあるのが謎だった。
大人じゃダメなのかしら?(笑)

じゃがいもやトウモロコシの栽培に関しては、何種類も同時に植えて、万が一特定の種類がダメになっても、他で凌ぐことができるように工夫していたという。
知恵があったんだね。
こういうことがまさしく「生き抜いていくための知恵」ってことになるんだろうなあ。

極北 アラスカ シベリア マイナス40℃の世界に生きる

マイナス40℃が続く極北の地では生きるためにクジラ、セイウチ、アザラシ、ホッキョクグマなどの肉、皮、骨の全てを無駄にせず暮らしに役立てている。

一番初めに目に飛び込んできたのが、ホッキョクグマの剥製である。
他にもアザラシ、セイウチ、トナカイの剥製があり、その大きさにびっくりする。
こんなに大きな動物を捕獲できるとは!
セイウチ猟の様子が映像として流されていたけれど、銛で一撃だったんだよね。
そしてそれから解体作業。
最初の肉片を海の神様に捧げるシーンが印象的だった。
この映像が強烈だったせいか、この映像で作られていた保存食コパルヒンを、何故だか「とくダネ!」の小倉智昭に切り分けてもらって、食べる夢まで見てしまった!(笑)
小倉さんは「うまいよ、これ!」って言ってたけど、SNAKEPIPEはモグモグしたまま飲み込めないの。
食べたことない食物なのに、想像だけでも「ダメ!」って思ったんだろうね。
でもなんで小倉智昭だったんだろ?(笑)

他にこのブースで気になったのは、トナカイなどの毛皮を使って作った防寒着。
極寒の土地でも暖かく過ごすためには、やっぱりそこで同じく生活をしている動物の毛皮なんだね。
トナカイの毛皮は本当に暖かそうだった。
もう一つ驚いたのが、魚の皮も使って洋服作りをしていたこと。
上の写真の黄色っぽい服が、そのサケの皮を使用したタイプなんだけど、キレイな仕上がりだったよ!
防水効果に優れているらしい。
何年後かにアウトドアブランドが出したりしてね?(笑)

乾燥地帯 アタカマ、ゴビ、ヌビア、ダナキル 砂漠で生き抜く知恵

ほとんど雨が降らない寒暖差も激しいこの環境の中でも、人々はラクダを使い、砂嵐に耐え、水を確保し生きてきた。

ここでの目玉はなんといっても、アタカマ砂漠で発見された、チンチョロ族の約5000年前の子供のミイラだろう。
冒頭で書いたように、このミイラは「とくダネ!」で情報としては知っていたけれど、テレビと現物では、印象が全く違うもんね。
顔に着けたマスクが小さな穴3つだけなので、パッと見ると泥人形のようにもみえちゃうんだけど。
このミイラをCTスキャンで研究した映像が流れていたので、より理解を深めることができる。
なんとこのミイラには、背骨に沿って2本の棒が通されているため、もしかしたら立たせていたのでは、との見解もあるらしい。
「ミイラ師の技術が」などと解説で言ってるのが、おかしい!
ミイラ作りを職業にしていた人がいるのかな?(笑)
「干し首」と同様、この世界最古のミイラ鑑賞ができて、本当に来て良かったと思う。

縄文号 日本人のルーツの謎

「新グレートジャーニー」として、日本人のルーツに迫る「海上ルート」を旅するために作られた丸木舟「縄文号」が展示されている。

インドネシアのスラウェシ島から日本を目指して海を移動するプロジェクト。
なんともびっくりなことに、丸木舟は手作り!
その工程を映像で観ることができるんだけど、まずは木を伐採するための斧やトンカチのような工具を作るとことから始まるのだ。
子供の頃、砂場で磁石を使って砂鉄を集め、売りに行くと言ったら笑われた経験がある。
誰に売るつもりだったんだろうね?(笑)
このプロジェクトでは、本当に砂から砂鉄を作って、集めた砂鉄を熱で溶かして鉄にして、刀を作る要領で「鉄は熱いうちに打て」を実践しているのである。
すべて自分達の手によって作ることを、まさか砂鉄集めから始めているとは思わなかった。
10ヶ月の期間を使って丸木舟は完成!
そして3年を掛けインドネシアから石垣島までの旅を成功させるのである。
遥か昔、本当にこんな風に丸木舟に乗った人が、日本を目指して海を渡ってきたのだろうか?
ロマンを感じるねえ!

アファール猿人復元プロジェクト

プロローグで紹介されていたタンザニア・ラエトリ遺跡にある、人類最古の足跡を元に、アファール猿人を復元する。
この猿人のモデルになったのがナインティナインの岡村隆史。
あっ、確かこの話は「めざましテレビ」で見たことあるなあ!
学術的にバッチリだった、って言ってたもんね。(笑)
父親が敵を警戒しながら、子供の手を引いて一歩前を歩き、その後ろには妊娠している母親が続いている様子が復元されていた。
父親の握力は推定で、現在の成人男性の約2倍というから、驚きだね!
そのくらい力がないと、生きていかれなかった、ということなのかな。
360万年前にも、ちゃんと家族という単位で行動をして、父親が家族を守っていた姿は、頼もしく感じられた。
足跡から、ここまで作り上げるとは、お見事!

全ての展示を鑑賞し終わり、物販コーナーへ。
怪しい3人組はバラバラに、各々の興味のある品物を目指す。
足早に店内をグルッと回ったROCKHURRAH。
「やっぱり干し首、売ってないんだね」
本当に売ってると思ってたんだろうか!
ROCKHURRAH、恐るべし!(笑)
何故置いてあるのか不明だけれど、マトリョーシカ関連のグッズがいくつかあり、真剣に購入を迷っていた友人Mが、図録を観ているSNAKEPIPEに近づいてくる。
「あー、グレートジャーニーは本じゃダメなの。やっぱり映像じゃないと!」
確かに!
今回初めて「グレートジャーニー」に触れたSNAKEPIPEも、写真や文章だけでは完全に伝わっていないな、と感じていた。
DVDが出ているようなので、いつの日か関野さんの旅を追体験できたらいいな、と思っている。

好き好きアーツ!#19 DAVID LYNCH—LOST HIGHWAY

【ロスト・ハイウェイのトレイラー】

SNAKEPIPE WROTE:

2000年より前のこと、自分でHPを制作し、例えば写真作品を発表したり、観た映画の感想を書き連ねていたことがある。
あの頃はまだホームページビルダーを使ってたりして、恥ずかしいページだったんだよね。(笑)
もうどこにも残っていないことを望むなあ。
その時にも当然のように敬愛するデヴィッド・リンチ監督の映画について書いた。 「ブルーベルベット」について、かなり真剣に感想をまとめたっけ。(遠い目)
ROCKHURRAH RECORDSのブログを開始してから、リンチの様々な話題を取り上げているけれど、映画についてはほとんど書いていないことに気付いたよ!
こんなに長い間リンチの作品に触れていながら、なんたる失態!
これから少しずつ、リンチ作品を振り返って紹介していきたいと思う。

ロスト・ハイウェイ」(原題:Lost Highway 1997年)
マルホランド・ドライブ」(原題:Mulholland Drive 2001年)
インランド・エンパイア」(原題:Inland Empire 2006年)

上記の3本は「こっち」と「あっち」というような複数の世界を行き来する映画だ。
リンチは「イレイザーヘッド」より前から夢想シーンを織り交ぜた映像作りをしているし、シュールな映画は特にこの3本だけということはないけれど、ここ最近の3部作として扱っていきたいと思う。
今回は3部作の1番目「ロスト・ハイウェイ」について書いていくことにする。
1997年というと16年前になるんだねー。
割と最近観たと思ってたのに。(トホホ)

「ロスト・ハイウェイ」についてのあらすじは必要ないだろう。
妻の浮気を疑った夫が、挙句の果てに妻を殺す、という話だからね。
えっ、乱暴過ぎ?(笑)
Wikipediaに冒頭部分などの記載があるので、そちらを参考にされるとよろしい。
SNAKEPIPEは気になった部分だけを紹介していくつもり。
自分のためのメモみたいな感じかな。
それでもネタバレになることもあるので、観てない方は注意して下さい


リンチの映画には必ずといって良い程登場するのが異形の役者。
「ロスト・ハイウェイ」ではロバート・ブレイクがミステリーマンを演じている。
白塗りメイクでまばたきしないまま話をする、かなり不気味な存在!(写真左)
そのままでも充分異形なのに、逆光で見えない妻・レネエの顔が、いつの間にかミステリーマンになっているシーンがあるんだよね!
右の写真なんだけど、ロン毛のヅラを被って、女装よ!
旦那であるフレッドが「ヒィッ!」と声を上げるんだけど、これはかなり怖いよね。
どう、こんな人が隣に寝てたら?(笑)

ミステリーマンの正体は、人によって解釈があると思うけれど、やっぱりフレッドの妄想とか想像の産物ということで良いように思う。
ラスト近くでミステリーマンがフレッドに何やらゴニョゴニョと耳打ちする。
この耳打ちっていうのは、リンチファンにはお馴染みだよね。
ツイン・ピークス」でローラ・パーマーがクーパー捜査官に耳打ちする、あのシーンね。
今、Wikipedia読んで初めて知ったけど、クーパー捜査官のフルネームって
「デイル・バーソロミュー・クーパー」っていうんだね?
バーソロミューといえば、バーソロミュー・くま!
もしかしてクーパー捜査官の名前をもじったのかな?
話が脱線してしまった。(笑)

ミステリーマンは耳打ちしたあと、すっかり画面から消えちゃうんだよね。
直前まで持ってたピストルも、いつの間にかフレッドの手に渡ってるし。
それ以降は登場しない。(この表現で良いのかは疑問だけど)
「自分なりの解釈で記憶する」と話していた、フレッドの記憶にはもう出てこない、ということで良いのかしらね。


解釈が人それぞれ違ってくるだろうと思われる、もう一つはビデオテープ。
何者かによって届けられる謎のビデオ・テープは、最初はフレッド宅の外観だけを写した「不動産屋よ、きっと」レベルの軽いものだった。
一番最後に出てきたのは、上の画像のような凄惨な殺害現場。
サブリミナルのように、パッパッと画像が移り変わるので、何度も静止させながら確認すると、完全に上半身と下半身を真っ二つにされ、手足がバラバラに切断された現場を観ることができる。
カメラに向かって泣きながら大声を上げる血まみれのフレッド。
どうあがいても、このビデオが証拠で有罪判決間違いないでしょう。
ところで、このビデオテープは本当に実在してたんだろうか?


SNAKEPIPEが大好きなシーンは、ミスター・エディことディック・ロラントが交通ルールを守らないヤツをコテンパンにやっつけるところ。
後ろから来た車が煽ってきた、というのが怒りの理由。
更に追い越して行く時に、中指立てるポーズで挑発してきたところで、キレ・モードにスイッチオン!
スピード上げて前の車を追いかけ、後ろから追突すること数回。
銃を突きつけ、運転手を引きずり出し、殴る蹴るの暴行を加える。
これだけなら普通なんだけど、ここで説教するのが面白い。
「おまえみたいなバカのせいで昨年は5万人事故で死んでるんだ!」
なんて非常にマトモな演説を、強面の人が言うパラドックス的な感覚。
ここらへんがリンチの言う「ハッピー・バイオレンス」なのかもしれないね?
キレるキャラクターは、「ブルーベルベット」のフランク・ブースこと、デニス・ホッパーが秀逸だったよね。
ディック・ロラント役のロバート・ロッジアも、かなり良い味出してたね。


フレッドの妻であるレネエ(もしくはアリス)は、ポルノ女優だった!
そのポルノ映像が上の写真なんだけど、ここだけカットしてみると、マドンナに見えてしまうのはSNAKEPIPEだけかしら?
ディック・ロラントと、いかにも不健全な商売してます風の男・アンディは、ポルノ映画やスナッフ系のビデオを制作・販売していたようだ。
そこにレネエも加わり、結婚後も彼らとの関係を断ち切らなかった。
クラブで演奏をするのが生業の夫が外出すると、レネエはかつての男達に会いに出かける。
レネエの本来の姿は、フレッドの妻ではなかったのかもしれないね。
夫婦間の冷めた会話や態度、視線の動かし方は、全然フレッドを愛してるようには見えないからね。
どうしてフレッドとレネエが結婚したのか、馴れ初めを聞いてみたいよね!(笑)


ディック・ロラントとアンディが制作していたビデオを、皆で酒を飲みながら鑑賞しているシーンがある。
そのビデオは、今だったらR指定がされてしまうような内容なんだけど、その中にマリリン・マンソンが出てるんだよね。
それが上の写真!
マリリン・マンソンはこの映画のサントラにも「I Put A Spell On You」で参加していて、「アイラブユーーー」とヒステリックに叫んでる。
そんな風に愛してると言われたら、相手は逃げるわ!って感じね。(笑)
多分これはスナッフ系のビデオだと思うので、リンチファンからみると羨ましい限り!
リンチの映画に死体で出られる、もしくは殺される役をやるっていうのは憧れだもんね。(←解ってくれる人はいると思う)


上はラスト近く、フレッドが逃走を図ってる時の映像の静止画像。
流して観てる時には、フレッドの顔がカクカクしてたり、歪んでいたり、目が素早くあらぬ方向を見たりして精神や肉体が崩壊していく様を見ている気分になる。
実際、その時のフレッドは妻殺しのみならず、他に2人を殺し追われている身だから、壊れていくのは仕方ないのかもしれない。
静止画にして気になったのは、上の写真の口と、またまた登場のフランシス・ベーコン!
左の絵は口だけの部分なんだけど、良く似てるよね。
「ツイン・ピークス」の時にも、叫ぶ口を映像として取り入れていたリンチだけど、今回は歯がガタガタになってるよね。
これはもうフレッドではない、他の何者か、だね。
「Who are you?」ってミステリーマンにも尋ねられてたもんね、フレッド。

フレッド/ピート、レネエ/アリスの入れ替わりや、「ドグラ・マグラ形式」の作り、そしてミステリーマンやビデオテープの存在については、例えばリンチ評論家の滝本誠氏などが詳しく論じてくれてるから、SNAKEPIPEみたいな素人が発言することもないだろう。
「謎は謎のままでいい」
というリンチの言葉通り、シークエンスの羅列として楽しめば良いと思っている。
2007年5月の記事「かもめはかもめ、リンチはリンチ」に、少しだけ「ロスト・ハイウェイ」について書いていたSNAKEPIPE。

リンチは実際に瞑想をしているし、夢と現実の境がないような映像が得意なので、支離滅裂で筋が通ってないストーリーでも何の問題もなく提示してくる。
リンチの夢想の世界をすべて理解なんてできないのは当然だろう。

すでに6年前、なんとも簡潔に感想を要約して書いてたね。(笑)
それをもう少し掘り下げて書くことができて、良かった。
また日を改めて「好き好きアーツ!」の特集として、リンチの迷宮系3部作第2弾「マルホランド・ドライブ」を書く予定である。
今からとても楽しみだ。

SNAKEPIPE MUSEUM #20 Germaine Richier


【Germaine Richier 1946年の作品:La Mante。人?未確認生物?】

SNAKEPIPE WROTE:

先日久しぶりにIKEAに行ってきた。
今まで一度も行ったことがない長年来の友人Mのお付き合いである。
当然ながら前回行った時とはディスプレイが変わっていて、2DKの50m2用といった具合に、見る人が自宅を想像し易い商品紹介をしていたのが面白かった。
相変わらず上手い戦略立ててますな!(笑)
あんなにスッキリ部屋がまとまることはないのに、IKEAに行くと整然として清潔感溢れる、豊かな生活が実現できそうな気分になっちゃうから不思議だ。
リビングはテーブルと椅子、写真集を置くための理想的な本棚があり、ゆっくりお茶を飲みながら鑑賞できる。
そして背面には大きな壁があるから、そこには絵画や写真をドーンと飾れる。
こんな素晴らしい環境だったら、どんなに素敵かしら?
と、妄想を膨らませるSNAKEPIPE。
まんまとIKEA戦法にやられてるね。(笑)

帰宅後妄想の中での部屋のディスプレイを開始!
壁に飾る絵や写真、棚に置く良い彫刻はないかな、と探してみたのである。
ここで発見したのが上の作品。
なんとも不気味で存在感のある奇妙な形!
ものすごくSNAKEPIPEの好みである。(笑)
この作品を制作したのは誰だろう?

調べてみるとこれはGermaine Richierというフランス人の作品だった。
フランス人の名前の読み方はよく分からないんだけど、多分ジャーメイン・リシエで良いと思う。(違ってるかもしれないけど)
そしてなんとジャーメイン・リシエは女性だったんだよね!
ジャーメインといえば、パッと思い付くのがジャクソン・ファミリーのジャーメイン・ジャクソンだったから、勝手に男性だと思ってたよ。(笑)
日本でも男性なのか女性なのか判らない名前はあるもんね。
そしてジャーメイン・リシエは、日本ではほとんど知られていないアーティストのようなので、またもや(!)SNAKEPIPEが翻訳して紹介致しまする。
誤訳があったらごめんなさい。

ジャーメイン・リシエは1902年アルル近くのグランで生まれる。
モンペリエの美術学校において、ロダンの元助手だったルイス=ジャック・グイグエの元で、1929年にグイグエが亡くなるまで勉強をする。
その後パリへ。
この間にアルベルト・ジャコメッティと知り合う。
この時期にセザール・バルダッチーニとも知り合っているらしい。
二人共彫刻界での巨匠だよね!
きっと物凄い高尚な話題で盛り上がってたんだろうな。(笑)
1936年にPrix Blumenthalを獲得する。
これは若いフランス人アーティストを発掘し援助する目的で開催されていた、期間限定のパトロン企画みたいな感じなのかな。
Franco-American Florence Blumenthall財団が2年間で約10000フランの資金提供をしてくれたらしい。
お金よりも、世間的に認められたという実績のほうが大きい感じなのかな?
1951年にはサンパウロ・ビエンナーレにて彫刻賞を受賞。
1959年に死去。
リシエの作品はペギー・グッゲンハイム・コレクション(マックス・エルンストの元妻)やテートなどに所蔵されているらしい。

有名彫刻家の名前はゴロゴロ出てくるわ、所蔵されている美術館も有名所はたくさんあるわ、でお見事だよね!
こんな女流彫刻家なのに、日本語で検索しても出てこないのが不思議。
名前の日本語読みが間違っているのかしら?(笑)

ジャーメイン・リシエは、コウモリ、ヒキガエル、クモや人間と動物のハイブリッドのような創造物を彫刻として作品にする。
SNAKEPIPEが一目惚れした作品も、タイトルでは「La Mante」、英語で「The Mantis」と書いてあるのでカマキリだろうけど、人間との融合に見えないかな?
例えば古代エジプトやギリシャ神話の中に出てくる神にも人間と動物の融合体を見かけるけど、昆虫と人間のハイブリッドは珍しいよね?(笑)

上の作品は「la chauve-souris」(1946年)で、これはどうやらコウモリと人間が混ざっているように見えるよね。
「コウモリ人間」といえば「バットマン」。(笑)
「バットマン」はコミックとして初めて登場したのが1939年というから、丁度年代的には同じくらいの時期になるね。
リシエが「バットマン」に影響を受けて制作したのかどうかは謎!

ジャーメイン・リシエについての解説には一言も出てきていない単語だけれど、モチーフや作品を観る限り、SNAKEPIPEにはシュルレアリスムの影響を受けているアーティストに見えるな。

上の写真はブラッサイが1955年に撮影したジャーメイン・リシエとその作品。
ブラッサイ!
SNAKEPIPEはもちろん、ブラッサイが写真家だってことは知ってるし、写真の勉強していた時には、必ず出てくる名前だったはずなのに代表作を思い出せないよ!(笑)
ブラッサイについて書いてあるWikipediaによれば「同時代の芸術家達と親交があった」って書いてあるから、アーティストの撮影をしていたのは納得だね。

鏡を使って作品をダブルに、本人の顔を鏡の中に見せておきながら、リシエの手はこちらにあるという、なかなか凝った構図で撮影してるよね。
これもやっぱりシュールな感じでとても好き!
魅力的なポートレート写真に仕上がってるよね。
さすが、ブラッサイ!(←知ったかぶり)

ジャーメイン・リシエは彫刻以外にエッチングも手がけていたようだ。
上の作品は1948年から1951年にかけて制作された「Chauve-souris」、英語名は「Bat」である。
前述した彫刻作品と同じタイトルで、モチーフも全く同じだよね。
リシエにとって「コウモリ人間」は、かなり重要な意味を持っていたのかな。
それにしてもこの絵の雰囲気、どこかで観た気がする。

ウィリアム・ブレイクの「The Great Red Dragon and the Woman clothed with the Sun」(大いなる赤き竜と日をまとう女 1803年–1805年頃)に似てるよね?
縦位置と横位置の違いはあるけど、構図も近い。
どうやらこの作品は「ヨハネの黙示録」(新改訳:第12章:1-5)のシーンを描いたものらしく、「聖母マリアとキリストの象徴と竜との戦い」らしい。
上にいる「火のような赤い大きな竜」が下にいる妊婦が産む子供を食らうために待ち構えている図とは知らなかった。
「赤い竜」とはサタン、邪悪そのものを表しているらしい。
トマス・ハリスの「レッド・ドラゴン」にも、ここまで詳しい説明はなかったかな?
リシエが「コウモリ人間」を「赤い竜」になぞらえてモチーフにしていたとすれば、「コウモリ人間」もサタンだったり、邪悪な存在を表現していたのかもしれないね。

1940年代から1950年代に、フランスでどんな文化が流行していたのか、SNAKEPIPEはあまり詳しくない。
パッと思いつくアーティストは、ほとんどが男性だしね。
そんな中ジャーメイン・リシエは、異形モチーフを作品にする特異な存在だっただろうね。
光より闇、正義よりも悪を好んで制作していたように思われるリシエの作風は、現代でも充分通用すると思う。

また好きなタイプのアーティストに出会えて良かった。
実際に作品を鑑賞してみたくなったよ。
まさかの2週連続同じ締めくくりだけど、やっぱりロンドンのテート行かないとダメかしら?(笑)

フランシス・ベーコン展鑑賞

【フランシス・ベーコン展の看板を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

SNAKEPIPE MUSEUM #7 Francis Bacon」を書いたのは2011年1月のこと。

「どこかで展覧会やってくれないかなあ。
大量の現物を目の前で観たいものである。」

という文章で締めくくったSNAKEPIPEの希望を叶えてくれることが判ったのは去年のことだった。
情報収集能力に長けた長年来の友人Mから電話があり、
「ベーコンさん、個展やるよ!」
とまるで知人であるかのような口ぶりで教えてもらったのである。
狂喜乱舞するSNAKEPIPE!
展覧会開始の3月を心待ちにしていたのである。

東京国立近代美術館に向かったのは、開催されてから1週間を過ぎた、少し桜が咲きかけた頃である。
コートを着るには暑く、薄手のジャケットでは寒い難しい春の陽気。
SNAKEPIPEもROCKHURRAHも得意のレザージャケットを着用し、待ち合わせ場所へと向かう。
なんと友人Mも同じくレザー着用!
レザー・トリオになってしまった。(笑)
なんとなく怪しい3人組、会場へと急ぐのである。

開催されてまだ日が浅いにも関わらず、そこまでの混雑は感じられない。
押し合いへし合いで、人の頭と頭の間から絵をやっと覗き見る、なんてことにはならなかった。
SNAKEPIPE命名の「国立系」がわんさかいるかと思っていたけど。
良かった、と胸を撫で下ろすSNAKEPIPE。
待ち望んだ展覧会だもん、じっくり鑑賞したいからね!

いつものブログ通り、展覧会の進行に合わせた感想をまとめていこうか。
今回のフランシス・ベーコン展は「身体」をテーマにして年代別に括られていた。

Chapter1 うつりゆく身体 1940s―1950s

「うつりゆく身体」とはA地点からB地点への移行の状態に見えることから名付けられたタイトルとのこと。
A→Bだけではなく、B→Aの移行にも見えることが特徴だと言う。

この章の中で気になった作品が「走る犬のための習作」(1954年)。

一本の線だけで何かを表現するのはベーコン得意の技法である。
簡単に引かれたように見える線なのに、これが舗装された道で脇に側溝があると解り、きちんと情報を提供しているのがすごいよね。
SNAKEPIPEが勉強不足なのか、ベーコンが描く動物の絵を鑑賞するのは、これが初めてである。

まさに犬が走っている!
左の絵は小さいので詳細までは確認できないと思うけれど、ピンク色の舌を出して犬が走っている映像を一時停止させたみたいな絵。
犬が完全にブレているため、より動きが感じられるのである。
この絵をモノクロームにして、コントラストやや強めに、ちょっと粒子を荒くしたら大道さんみたいじゃない?(笑)

「叫ぶ教皇の頭部のための習作」(1952年)の元ネタがエイゼンシュタイン監督の「戦艦ポチョムキン」(1925年)だというので、2枚を並べてみたよ。
「戦艦ポチョムキン」、懐かしいなあ!
もう何年も前に観ているので詳細は忘れているけれど、やっぱりあの階段のシーンは見事だよね。
もちろんこの乳母の顔もしっかり覚えている。
ベーコンのアトリエには、「戦艦ポチョムキン」のスチール写真の切り抜きがあったというから、かなり重要なモチーフと考えていたようだね。
上の作品は斜めになったメガネと共に、ベーコン最大の特徴である叫ぶ口が描かれていて、まさに乳母そのもの!
このベーコンの叫ぶ口にインスパイアされたのが、デヴィッド・リンチである。
エイゼンシュタイン→ベーコン→リンチと、映画→絵画→映画の順番だよね。
この先はまだ続いていくのかな?
後継者は…難しいかもね?(笑)

Chapter 2 捧げられた身体 1960s

無神論者であったベーコンは「磔刑図」をどのように考えて制作していたのか、ということに焦点を当てる。
キリスト教とは別の原始的な宗教においては、神に捧げられた「人間の生贄」としての犠牲的な行為とも言えるのではないだろうか。
なーんて解説文を要約して書いてみたけど、キリスト教についても、原始的な宗教についても詳しくないSNAKEPIPEがあれこれ言える立場じゃないよ。(笑)
解説抜きで好きな絵ってことで良いのだ!(笑)
ところがなんとも驚いたことに、ここまで「磔刑」について書いているのに、ベーコンの磔刑関連の絵は一枚もなし!
難解な解説書いておきながら、全く意味不明だね。

この章の中で気になった作品は「ジョージ・ダイアの三習作」(1969年)かな。
空き巣だと思ってベーコン宅へ泥棒に入ったジョージ・ダイアが、制作中のベーコンにバッタリ遭遇。
そのまま居付いて、ベーコンの愛人になってしまう話はベーコンの伝記映画「愛の悪魔」で観たSNAKEPIPE。
上は、その愛人であったジョージ・ダイアを描いた作品なんだけどね。
解説には「顔面中央に弾丸を打ち込まれたかのような黒い円形」と書いてある。
SNAKEPIPEも「鼻の穴にしては大きいかも」と思って観た。
しばらくじっと観ているうちに、思い付いた。
「これは…穴だ!」
ベーコンは同性愛者だったからね。
考え過ぎだったらゴメンナサイ!(笑)

Chapter 3 物語らない身体 1970s―1992

この章では、ベーコンの特徴である3枚1組みセット(三幅対というらしい)を多く展示していた。
何故「物語らない身体」というタイトルになっているか、というのは複数の空間と人物を描いているのにストーリーの発生を忌避しているから、とのこと。
そう言われても、SNAKEPIPEは勝手にお話作ってたけどね?(笑)

今回の展覧会で鑑賞できて最も嬉しかったのが「3つの人物像と肖像」(1975年)である。
この絵はポストカードを持っていて、ずっと部屋に飾っていた作品だった。
その実物を観ることができるなんて!

この絵の解説には「複数の人物のあいだに物語を発生するような視線のやり取りや、身振りの連関を見出すことはできません」ってきっぱり言い切られちゃってるんだけどね。
左のくねってる男性が恋人のダイア、真ん中がギリシャ神話で神の裁きを伝える復讐の女神、というところまで聞くといろいろと想像をしちゃうけどな。
そして右側は円形部分に組み合う男性とその下の部分には下半身ヌード。
恋人のジョージ・ダイアが自殺してしまった後に描いた作品らしい。
思い出と懺悔がテーマなのかな。

何故ジョージ・ダイアが自殺してしまったのか。
これは前述したベーコンの伝記映画「愛の悪魔」がbased on a true storyだった場合には、自殺の原因はベーコンにあると思うから。
SNAKEPIPEは自殺というよりも「ベーコンに殺された」と言ってもおかしくないんじゃないか、と思っているくらいだからね。
失って初めてその重要性に気付いた感じがするけど、どうだろう?
Chapter 4 ベーコンに基づく身体

最後の章では、 ベーコンからの影響を身体で表現しているアーティストを紹介していた。
日本からは我らが土方巽が登場!
本当にベーコンからインスパイアされ作品を作っていたんだって。
舞踏公演「疱瘡譚」のDVD映像と共に土方巽のスクラップブックを展示していた。
ペーター・ヴェルツとウィリアム・フォーサイスはベーコンの絶筆である未完の肖像を元にその線をなぞるようなダンスを披露していた。
巨大なスクリーンがいくつも並び、ダンスする人物のアップを鑑賞しても何も感じ取ることができなかったなあ。

Chapter1の中にインタビュアーと話をするベーコンの映像が流れていた。
とても興味深いことを語っていたので、書いてみようかな。
ベーコンにはいくつかのシリーズがあって、その中の一つに「教皇シリーズ」があるが、描くきっかけになったのはベラスケスであるという。
ベラスケス?
その昔、日曜美術館でベラスケス作「ラス・メニーナス」 の解読と解説をやっているのを見たことあるけど、それほど詳しくはない画家である。
ベーコンはベラスケス作「教皇インノケンティウス10世」を「人間の感じることができる最も偉大で深遠な事象を開放する最高の肖像画」と評していたとのこと。
だからこそこの絵画から着想を得て、「教皇シリーズ」を作成したらしい。
どうやらベーコンは、「教皇インノケンティウス10世」に、恐れながらも性的に魅了された父親を投影していたようである。
ベーコンが描く教皇は、半狂乱で叫び声をあげている。
恐れながら愛し、突き落とすようなネジれたベーコンの感情が表れてるね。
評論家の中にはベーコンの「教皇シリーズ」を「父殺し」と評する人もいるらしい。 更にベーコンは「ベラスケスの作品は怖くて観られない」と続け、インタビュアーに訳を尋ねられると
「冒涜しているから」
と答えるのである。

愛と憎しみ、恐れと冒涜といった感情が、複雑に絡まって対象に向かっていることがインタビューから解る。
ベーコンにとっての愛情表現は、相手にとっては愛情とは感じられない類だったのかもしれないな、と推測できるね。
自殺してしまった愛人、ジョージ・ダイアへの態度も、思いやりを持っているようには見えなかったベーコン。
ベラスケスの絵も「最高」と言っておきながら「冒涜」し、その冒涜している行為を自覚している人物なので、愛人ダイアのことを虐めているように見えたのも愛情表現だったのかもしれないね?

もしかしてこれは、小学生くらいの男の子が好きな女の子をからかったり、イジメたりするような図式と同じなのかしら?
そう考えるとベーコンについて解り易いかもしれないね。
SNAKEPIPEが高校時代に愛読していたのがオーストリアの精神分析学者であるジークムント・フロイトの著書である。
小児から大人に至るまでの5つの性的発達段階について言及されている文章を読んだ時には、衝撃を受けたものだ。

■口唇期 出生~2歳まで 口は最初に経験する快楽の源である。
■肛門期 2歳~4歳頃まで 小児性欲の中心は肛門になる。

乳児のうちから快楽を得ようしている、という説に驚いた女子学生だったSNAKEPIPEだけれど、この2つの段階をベーコンに当てはめるとしっくりくるんだよね。
ベーコンには口だけしか描かれていない作品が多数存在する。
口に非常に強い興味を示しているよね。
そしてベーコンは同性愛者だった。
上に載せた「ジョージ・ダイアの三習作」について書いた文章の中に「肛門期」に関する記述をしているSNAKEPIPE。
解ってもらえるかしら?(笑)
ベーコンは口唇期と肛門期のまま大人になってしまった画家だったのかもしれないね。
ベーコンの伝記を読んだことがないので、単なるSNAKEPIPEの推測だから信用しないでね。(笑)

ではここで突然だけど、ベーコンの絵画にちなんだそっくりさん劇場開幕!
ベーコンの絵のモチーフに良く似ているな、とSNAKEPIPEが思った物を紹介するコーナーだよ!(笑)

左はご存知モンスターハンターに登場するフルフル。
右はベーコンの作品「ある磔刑の基部にいる人物像のための三習作」(1944年)のうちの一枚である。
モンスターハンターでフルフル見た時に、即座にベーコンを思い出したんだよね。(笑)
これはどちらも男性器をモチーフにしているから、似てしまうのは仕方ないことなのかな。
ベーコンのほうもフルフルと同じように火属性に弱いかどうかは不明!

続いては「千と千尋の神隠し」より「カオナシ」に登場してもらいましょう!
対して右側はベーコンの「人物像習作II」(1945-46年)である。
変な形に曲がった体と、顔に入った縦2本の線と顔色などが酷似しているように感じたのはSNAKEPIPEだけかしら?
ちょっと苦しい?(笑)
ではそっくりさん劇場、これにて閉幕!

今回の展覧会では33点の作品をまとめて観ることができた。
これはベーコン没後アジアでは初めてのことらしいけど?
でもね、以前からベーコン個展を切望していたSNAKEPIPEにはまだ物足りないんだよね!
解説によれば、日本国内にはなんと5点だけしかベーコンの絵が所蔵されていないとのこと。
これにはびっくりしたSNAKEPIPE!
ベーコンは日本で知名度低いのね。
だから「国立系」の客が少なかったのか、と納得してしまった。
作品来ないなら自分から行けってことかな。
ロンドンのテート・ギャラリー行かないとダメかしら?(笑)