映画の殿 第63号 韓国ドラマ編 part18

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【良い味出してる俳優がいっぱい】

SNAKEPIPE WROTE:

約3ヶ月ぶりに更新する「映画の殿 韓国ドラマ」編だよ!
今回は4本のドラマを紹介していこう。
ROCKHURRAH RECORDSが鑑賞した順番で書いているので、制作年順ではないからね。(笑)
新作あり過去の作品ありでお届けしよう!

「憑依~殺人鬼を追え~(原題:빙의 2019年)」は、主役のソン・セビョクが気になって観たかったんだよね。
マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜(原題:나의_아저씨 2018年)」で主役3兄弟の三男役が印象的で、他の出演作を探していて見つけたドラマ。
マイリストに登録していたけれど、やっと観ることにしたのである。

生まれながらに並外れた霊能力をもつ美女と、根はやさしいが粗野でさえない刑事。
ひょんなことから出会った2人が、時を超えてよみがえった最悪の殺人鬼に挑む。(Filmarksより)

ドラマが始まった数回はコミカルさとホラー要素が混ざった面白いストーリーだった。
回を重ねると、タイトル通り霊に憑依されて主役が別人に変化してしまい、ドラマの雰囲気も重苦しくなってしまう。
最後まで観るのが辛くなり、惰性で(?)観終えた感じ。(笑)
「霊能力がある美女」と紹介されていたゴ・ジュンヒは、せっかくヒロインに抜擢されたのに、出来の良くない展開のせいで気の毒だったよ。
「憑依」は、あまりお勧めではないドラマだね。

次は続きが気になる面白いドラマにしよう、とROCKHURRAHが選んでくれたのが「殺人者の買い物リスト(原題:살인자의 쇼핑목록 2022年)」。
「韓国No.1を探せ」などのバラエティ番組や「ライブ~君こそが生きる理由~」や「サウンド・オブ・ハート」などで馴染があるイ・グァンスが主演のドラマと聞くと期待しちゃうよ。
グァンスが出ているドラマや映画に外れなし、とSNAKEPIPEは確信しているから。(笑)
根は優しいけれど、運がないという役がピッタリなんだよね!
あらすじはこちら。

実家がスーパーを営むテソンは、子供の頃、天才的な記憶力で偽札を見つけ、母と共に犯人を捕まえる。
そして今、彼は公務員試験に何度も失敗し、彼女とは別れる寸前。
公務員を諦め、スーパーで働き始めたテソンはある日、常連客の死体を発見するが…。(UNEXTより)

日本語字幕付きの予告が見つからなくてごめんなさい。
スーパーマーケットが舞台のドラマで、購入履歴を犯人逮捕につなげていくところが面白い。
スマホの登録名が名前ではなく「鮮魚担当」「精肉担当」など、スーパー内での部署名になっているところも笑ってしまった。
出てくる人全て怪しく見えてくるので、サスペンス・ドラマとしても成功していると思う。
グァンスはいつも通り、とても良い味出していて、「殺人者の買い物リスト」もやっぱり当たりだったよ。(笑)

「もうすぐ死にます(原題:이재, 곧 죽습니다 2023年)」はウェブトゥーンが原作のファンタジー転生ドラマだという。
ファンタジーと転生と聞くと、鈴木光司の小説「楽園」を思い出すよ。(笑)
ROCKHURRAHはそれより前の「火の鳥」を連想したという。
「楽園」は壮大な恋愛小説だったけれど、「もうすぐ死にます」には試練が待ち受けていたよ。
主演は「元カレは天才詐欺師」や「主君の太陽」のソ・イングクと「三食ごはん 山村編」や「パラサイト」に出演したパク・ソダム。
ポスターではソダムの化粧が濃い目だよね。

地獄行き間際のイジェが12回の死と生を経験することになる転生ドラマ(Filmarksより)

転生して12人に生まれ変わる物語なので、回ごとに主役の顔が変わってるんだよね。
ビューティー・インサイド(原題:뷰티 인사이드 2015年)」も似たシチュエーションの映画だったことを思い出す。
「もうすぐ死にます」で転生の度に変わる主役は、ドラマや映画で観たことがある豪華キャスト!
見目姿が変わっても魂(攻殻機動隊的に言うとゴースト)は一つで、記憶が受け継がれていくんだよね。

ソ・イングク演じるイジェは、7年の就職浪人生活に嫌気がさし、自ら命を絶ってしまう。
高い自殺率の韓国ならではなのかもしれないけど、ドラマや映画での自殺シーンって多いんだよね。
思いを踏みとどまらせる意味も含めて、罰を受ける内容のドラマにしているのかもしれない。
オンマ(母親)役のキム・ミギョンは、今まで数々のドラマで観ている「国民の母」だけれど、「サウンド・オブ・ハート」が強烈過ぎて、感動シーンにイマイチ乗れなかったSNAKEPIPE。
以前の役どころのイメージが強い時に起こる現象だから仕方ないかもね?

恋のスケッチ〜応答せよ1988〜(原題:응답하라 1988 2015年)」を観る前に「花より青春 アフリカ編 〜双門洞4兄弟」を観ていたROCKHURRAH RECORDS。
「花より青春」は「恋のスケッチ」収録後の2016年にドラマに出演していた4人の俳優がアフリカを訪れたバラエティ番組だった。
野生の動物を見たり、ヴィクトリアの滝を観光する旅で面白かったよ。
プロデューサーは「三食ごはん」と同じナ・ヨンソクとのこと。
有名な俳優の素顔を見せる企画という点が共通しているよね。(笑)
「恋のスケッチ」は大人気のドラマだったらしい。
あらすじから書いてみよう。

韓国で初めてオリンピックが開催された1988年。
この年は国中がお祭りムードで活気が溢れていた。
学校の成績よりもオシャレに興味津々な普通の女子高生ドクソンは、両親と姉、弟の5人家族。
ドクソンには、小さい頃から兄弟のように育った4人の幼なじみであるサッカー好きのジョンファン、優等生のソヌ、お調子者のドンリョン、そして天才囲碁将棋のテクたちがいた。
ある日、友達からの一言がきっかけで、ドクソンはソヌを意識はじめる。
しかし、ソヌが思いを寄せていたのはドクソンではなくドクソンの姉ボラだった。
それを知ったドクソンは失恋。
そんなドクソンをそばで見ていたジョンファンは、少しずつドクソンのことが気になっていた。
さらにテクも、ドクソンのことが好きだと宣言!
そんな二人の恋のバトルは…?(Amazonプライムビデオより)

80年代のソウル道峰区双門洞を舞台に、ご近所さんたちが助け合って暮らしている。
主役の女子高生と幼馴染の男4人が繰り広げる青春ラブ・ストーリーと言ってしまえば簡単だけど、ドラマに登場する人達のキャラクターがみんな濃いんだよね!
SNAKEPIPEが気に入ったのは、母親たちの「あけすけ」な会話。
まるでアルモドバルの映画に出てくるスペインのおばちゃん達みたいなんだよね。(笑)
父親たちも負けていなくて、みんな良い味出してるの!
主役のドクソンを演じたヘリは、アイドルグループ出身とは思えない、おバカな顔を見せて笑わせてくれる。
最終回が近づいてくると恋の行方が分かってくるけれど、ドクソンが真面目になってしまい残念だった。

私たちのブルース(原題:우리들의 블루스 2022年)」は済州島が舞台で、村で暮らす人々が共同体として生活している話だった。
村と横丁の違いはあるけれど、お互いが相手の家の事情を全て知り尽くしているという状況が似ていたよ。
血がつながった親戚以上に深いつながりがあるというのは、安心感と鬱陶しさが混在しそうだよね。
「恋のスケッチ」では、「おかず」を分け合ったり、小さな子どもを交代で預かったりして、みんなで協力し合っていて微笑ましかったよ。
SNAKEPIPEは田舎が舞台のドラマが好きなのかも。(笑)
「応答せよ」は他にも「1994」と「1997」があるので、機会があったら観てみよう。

今回は4本のドラマを紹介したよ。
最初の「憑依」以外は3本とも面白かったので、お勧め!
ドラマ鑑賞は続いているので、また感想をまとめていこう。
次回をお楽しみに!

箱根初上陸続編!ガラスの森美術館 鑑賞

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【箱根ガラスの森美術館前を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

今週は「箱根初上陸!ポーラ美術館」の続編を書いていこう。

ポーラ美術館をあとにしたROCKHURRAHとSNAKEPIPEは、予約していた温泉宿へ。
露天風呂付き客室をチョイスしてもらったので、宿に着くなり体を温めることにする。
首から下はじんわり温かくて、頭は冷風に当たっていると「これぞ温泉」と感じるね。(笑)

旅館というのはどこも同じだけど、通常生活しているよりも夕食時間が早いよね。
この日も18時前には食事がスタート。
刺し身の舟盛りやしゃぶしゃぶ、キンメダイの煮付など、お腹がパンパンになるほど食べてしまった。
どうして旅館のご飯は進んでしまうんだろうね。(笑)
そんなに晩ごはんを食べたのにもかかわらず、翌日の朝食もおかわりして食べているし。
金沢に行った時もお米が美味しかったんだけど、旅行の時は食べ過ぎ注意だね。

10時のチェックアウトで、次に向かったのは「箱根ガラスの森美術館」。
ガラスに特別な興味があるわけではないけれど、宿からのアクセスが良かったんだよね。
今まで観たことがない作品に出会えることを楽しみに、行ってみることにしたのである。

歴史を感じさせる石造りの建物にエントランスがあり、チケットを購入する前にコインロッカーについて尋ねる。
ガラスの作品が多い中、荷物が少ないほうが良いからね!
「ロッカーはそちらです」と指し示されたのが、細い階段を降りた地下の場所。
ちょっと謎めいていて怖い雰囲気だったよ。(笑)
館内に入ってすぐ、見えてきたのがこの光景。
中央の池に、不思議な造形物があるよ。
これはデイル・チフーリの「パラッツォ・ドゥカーレ・シャンデリア」という作品とのこと。
タイトルにシャンデリアとあるけれど、SNAKEPIPEには未知の生命体のように見えたよ。
増殖していきそうな不気味さがとても良かった!(笑)

中庭の池を眺めながら道に沿って歩いていくとヴェネチアン・グラス美術館の館に到着する。
入ってすぐ目に入ったのが画像のヴェネチアン・マスク!
この仮面を見ると、スタンリー・キューブリック監督の映画「アイズ・ワイド・シャット(原題:Eyes Wide Shut 1999年)」を連想しちゃうんだよね。
ROCKHURRAHと交互に仮面で変装し、写真を撮る。
一番右端の仮面をかぶったROCKHURRAHが怖くて怖くて!
一瞬で別人になってしまう効果に驚いたよ。

散々撮影し合った後、ヴェネチアン・グラスの逸品が展示されている会場を歩く。
どの作品も美しくてドラマチックなんだよね!
本来の用途を超えて「これでもか」というくらい装飾し、技工を競い合っていて素晴らしい。
無駄な要素を剥ぎ取ったバウハウスも大好きだけど、TOO MUCHなデザインも良いよね!
例えるならばドラァグ・クイーンみたいな感じかな。(笑)

2つの作品を並べて載せているよ。
左のランプの豪華さったら!
土台まで贅を凝らしているのが分かるね。
右は大杯と書かれていたので置物なのかな。
ピンクと水色の色合わせが見事。
細工も細かくて匠の技を見せてくれてるね。
ガラスの森美術館は背景にも気配りされていて、タイムスリップしたような気分になったよ。

子供の道化師をモチーフにした作品。
手にランプを持ち、壁から半身を出している。
いたずらっ子みたいな無邪気さを装っているけれど、笑っている顔が非常に怖い!
このランプが似合う屋敷は、ゴシック様式だろうね。
古いタイプのホラー映画の中で、子供の目が動いたり表情が変わったりする想像をしてしまうよ。
SNAKEPIPEは「あげる」と言われても欲しくないかも。(笑)

アーティストの作品も展示されていたよ。
上がマックス・エルンストの「鵞鳥(ガチョウ)」、左下がシャガールの「農夫」、右下はピカソの「雄牛」で、それぞれデザインを担当している。
ガラスの制作はエジディオ・コスタンティーニによるもの。
エジディオ・コスタンティーニは「ガラス彫刻」の第一人者で、その創作プロジェクトはジャン・コクトーにより「フチーナ・デリ・アンジェリ(天使の窯)」と命名された、とガラスの森美術館に説明があったよ。
コクトーの働きかけでアーティストのデザインが集まったらしい。
錚々たるメンバーにより、ガラス彫刻が発展していったんだね!

ヴェネチアン・グラス美術館の鑑賞を終え、続いて現代ガラス美術館へ。
リヴィオ・セグーゾの作品は、非常にシンプルで洗練されていた。
光の当たり方で作られる影や反射はガラスならでは、だね。
大理石とガラスを使ったり、ワイヤーで吊るされた作品などもあったよ。
豪邸やホテルなど、広い空間に一点だけ飾っておきたいなあ。
もちろん適正な照明を当ててね!

モノトーンだったリヴィオ・セグーゾの展示室からカラフルな世界へ。
デイル・チフーリの作品はオレンジや黄色、深いブルーなど色とりどりで華やかだった。
画像右上は、まるで岡本太郎!
赤と緑という組み合わせとニョキニョキ生えているような形状が面白いよね。
一番最初に紹介した池に浮かんでいる「シャンデリア」もチフーリの作品だったわ!
呼吸しているような生命力を感じる作風が新鮮だね。

ミュージアム・ショップに立ち寄ってみる。
ヴェネチアン・グラスの素晴らしいランプや仮面などが販売されていたよ。
いくら気に入っても、ROCKHURRAH RECORDSの事務所にヴェネチアの仮面は似合わないなあ。(笑)
何も買わずに庭園を散歩する。
クリスタル・ガラスの粒が飾り付けられたオブジェが、そこかしこに点在している。
光が当たるとキラキラしてとてもキレイ。
雪が残る地面も良い感じだね!

「箱根ガラスの森美術館」は、来館数が多い人気のスポットなんだね。
たまたま訪れたROCKHURRAHとSNAKEPIPEも楽しんだよ!
バス乗り場まで歩いてから、ガラスの森美術館正面の写真を撮り忘れたことに気付く。
慌てて撮ったのが一番上の画像。
手前のライオンが主役みたいだよね。(笑)

一泊二日の箱根旅行、存分に満喫したよ!
憧れのポーラ美術館にも行かれたし、温泉に入って癒やされたし。
素敵なプレゼントをしてくれたROCKHURRAH、ありがとう。(笑)
またどこか旅行に行こうね!

箱根初上陸!ポーラ美術館 鑑賞

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【ポーラ美術館入口を撮影】

SNAKEPIPE WROTE:

ROCKHURRAH RECORDSでは3月にイベントがあるよ。
これまで何度も書いているので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれない。
そう、SNAKEPIPEの誕生日!(笑)
ちなみにSNAKEPIPEが4日、ROCKHURRAHのお兄さんが5日、そして大ファンの鳥飼否宇先生が6日なんだよね。
遅ればせながら、お兄さん、鳥飼先生、おめでとうございます!(笑)

SNAKEPIPEの誕生日プレゼントとして、箱根温泉旅館とポーラ美術館を巡る旅行プランを提案してくれたROCKHURRAH。
「えぇーっ!嬉しいっ!ありがとーっ!」
絶叫に近い声を出し、全身で喜びを表すSNAKEPIPE。
2022年6月に書いた「金沢初上陸!金沢21世紀美術館」続く「金沢初上陸続編!KAMU kanazawa」のように、観光とアートが融合した素敵な旅になること間違いなし。
ポーラ美術館では、5月29日まで「モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン」が開催されていて、とても気になっていたんだよね。
3月中に行かれるなら、展覧会の鑑賞も可能じゃないの!
温泉旅館の予約やポーラ美術館のチケット手配を完了し、旅行の日を迎えたのである。

箱根に行く、というのが「遠い場所を旅行する」ことだと思っていたSNAKEPIPE。
昨年10月、神奈川県に新事務所を構えたことで移動距離が変わったことを失念していた。
横浜〜小田原は1時間。
小田原〜箱根湯本は約15分!
箱根湯本〜強羅で37分くらいなので、2時間もあれば観光旅行できてしまうんだね。
「踊り子号」みたいな特別な電車に乗らなくて行かれるというのもビックリ。
旅行慣れしていらっしゃる方からみると、バカなことを言ってる、と思われるかもしれない。
神奈川県民になって約半年、車に乗ることもなく地理は苦手なSNAKEPIPEなので、驚くのも無理はないのさ。(笑)
それにしても強羅って地名、強い羅生門と連想してしまう。
いつの時代からある地名なんだろうね。

旅行の2日前には、東京でもみぞれが降っていたけれど、当日は快晴!
日頃の行いが良いからだね。(笑)
温泉旅館のチェックイン時間から逆算して、11時頃に箱根湯本に到着するような予定を組む。
来た電車に乗るだけだから、とても気楽な旅行だよ。
旅館に行く前にポーラ美術館に立ち寄ることにしよう。
ポーラ美術館には、箱根湯本、もしくは強羅からバスを利用する必要があるんだよね。
ROCKHURRAHもSNAKEPIPEも乗り物に弱いので、少しでもバスの乗車時間が短い強羅ルートを選択したよ。
すんなり箱根湯本に到着し、一旦下車。
「ぶらり途中下車の旅」みたいだよね。(笑)
駅近くの食堂で早めのランチにする。
籠清の揚げたてかまぼこ、美味しかったー!
お腹いっぱいで強羅に向かい、バスで無事にポーラ美術館に到着。

まだ雪が残る景色の中に「POLA MUSEUM OF ART」の看板が堂々と立っている。
来たかったポーラ美術館だっ!
感激して何枚も記念撮影してしまったよ。(笑)
渡り廊下を歩き正門へ。
敷地内には彫刻が点在していたよ。
近寄って観られないのが残念だね。

ポーラ美術館のチケットは予約していたので、そのまま入ろうとすると
「お荷物をロッカーにお願いします」
美術館スタッフから呼びかけられる。
会場に入る前に荷物を置く必要があるとのこと。
美術館によってロッカーの場所が違うからね。
身軽になったところで入場する。
会場は地下にあるんだね。

エスカレーターで下ると、最初に見えてきたのがこちらの作品。
これってマルセル・デュシャンの「何か」だったはず。
あやふやな記憶を頼りに発言したSNAKEPIPEだったけれど、それは正解だったみたい。(笑)
ポーラ美術館に展示されていたのは、ケリス・ウィン・エヴァンスの「照明用ガス…(眼科医の証人による)」とのことだけど、元ネタはやっぱりマルセル・デュシャンで「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(通称:大ガラス)」の中にあるモチーフ。
このモチーフは「眼科医の証人」と名付けられているんだとか。
2022年11月にアーチゾン美術館で「Art in Box マルセル・デュシャンの《トランクの箱》とその後」を鑑賞した時にも似た作品があったことを思い出した。
瀧口修造と岡崎和郎の連名で「檢眼圖」(画像左)というタイトルが付いていたよ。
確かに眼科の検査で「どの線が強く見えますか?」と質問される時、線で描かれた円を見たような?
およそ100年前に発表されたデュシャンの大ガラスが、現代にも影響を与えているんだね。

会場に入ってみよう。
「機械時代のアートとデザイン」というサブタイトルが付いている展覧会なので、1925年の機械類も展示されている。
手前の車は、まるで玩具みたいでとてもキュート!
その後ろには、当時のポスターが展示されている。
ほとんどの作品が撮影オッケーだったのに、カッサンドルのポスターは禁止されていたよ。
可/不可の基準は不明だね。

ROCKHURRAHと「とても好き!」とうなずきあったのがフェルナン・レジェの作品。
1920年から1950年代までの7点が並んでいる。
くっきりした線と美しい色使いが楽しい。
左の画像はポップで遊び心が感じられるよね!
レジェの作品は恐らく今までもどこかで鑑賞しているはずだけど、今回の展示は強く印象に残ったよ。
カンディンスキーやモホリ=ナギなどの大御所の作品を観ながら会場を歩く。
やっぱり1920年代いいよね!

中央に円形の展示コーナーがあり、中にはルネ・ラリックの香水瓶がたくさん並んでいた。
どれも美しくて一つずつ撮影していたSNAKEPIPEに「まだ先があるよ」とROCKHURRAHから少し急ぐようにと指示を受ける。
展示の前半に時間を割き過ぎて、後半は駆け足になるパターンが多かったからね。
ラリックの作品を何枚も撮ったけれど、載せたのはこれ。
人の形をした謎の香水瓶を選んでしまった!
しかもピンボケじゃないか。(笑)

マックス・エルンスト、キリコ、ダリ、ポール・デルヴォー、ハンス・ベルメールの作品が並んでいる。
ROCKHURRAHとSNAKEPIPEの大好物だらけ!
残念ながら撮影禁止だったけれど、2人でヒーヒー言いながら楽しく鑑賞したよ。
シュルレアリスム、いいよね!

マルセル・デュシャン監督、マン・レイ撮影の興味深い動画があったよ。
アネミック・シネマ(貧血症の映画)」というタイトルで1925年の作品。
Youtubeを載せておこうか。

アニメーションで制作されたのかと思ったら、Wikipediaに「回転する円盤を撮影」と書いてあったよ。
実験映画という響きだけでも惹かれてしまうSNAKEPIPE。
ぐるぐるを観続けていると「貧血」というよりは「めまい」を感じるけど、夢のコラボ作品を鑑賞できて嬉しいよ!(笑)

別会場に移動すると、今度は日本の1920年代が展示されていた。
1925年は大正14年、モダニズムの時代だよね!
杉浦非水の作品がたくさん並んでいる。
絵画の中でひときわ目を引いたのが、古賀春江の「現実線を切る主智的表情」(1931年)だったよ。
国立近代美術館に所蔵されている「海」に似たタッチなので、キャプションを確認しなくても古賀春江の作品だと分かるね。
中央に間をもたせた斬新な構図と、馬をあやつるロボットが斬新!

瑛九のフォト・コラージュも素敵だったね。
2019年3月に庭園美術館で鑑賞した「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」は、1950年代に制作されたフォト・コラージュで、当時の雑誌を素材にした切り抜きだったっけ。
瑛九の作品は1937年に制作されているので、何を素材にしたのか想像するのも面白い。
フォトグラムも制作していたとのことなので、自らの作品を切り取った可能性もあるし。
実験的でダダイズムを感じるよ!

2016年12月に鑑賞した「宇宙と芸術展」で対面したことがある空山基のセクシー・ロボットが3体展示されている。
宙返りしたり伸び上がったりするロボットは、鏡で増幅して見えて面白い。
シルバー色でピカピカ光る物が大好きなSNAKEPIPEにとっては、垂涎の的!
セクシー・ロボットが自宅に飾ってあったら嬉しいだろうね。
ありゃ、同じことを2016年の記事にも書いてるわ。(笑)

鑑賞し終えて帰ろうとした時、別の展示室があることに気付く。
展示室が5つあったとはね。
展示室4に入ると、そこはなんとリヒター・ルーム!
真っ暗な会場にポワッとライトが当たり、作品を照らしている。
リヒターを鑑賞せずに帰るところだったとは!
「グレイ・ハウス」「アブストラクト・ペインティング」「ストリップ」の3作品が並んでいたよ。
2022年7月に東京国立近代美術館で鑑賞した「ゲルハルト・リヒター展」の感想で「迫力がある作品ばかりが並んでいると、一点ごとの凄味が軽減されてしまう」と書いたSNAKEPIPE。
ポーラ美術館のリヒターはそれぞれタイプが異なる展示だったため、一点ごとの作品の重さや凄みを体感できて新鮮だったよ。
「ストライプ」が浮き上がってくるように見える効果は抜群で、ポーラ美術館の演出(?)に拍手だね。

以前よりずっと気になっていたポーラ美術館を訪れることができて大満足!
また別の企画の時に鑑賞したいと思う。
次回は近隣の散策もしてみたいな。
以前「ポーラ美術館気になるよね」と話していた、現代アート好きの友人Hにも是非お勧めよ!(笑)

ポーラ美術館鑑賞後、ROCKHURRAHとSNAKEPIPEは温泉旅館に向かう。
この続きは次週にしよう。
どうぞお楽しみに!(笑)

好き好きアーツ!#60 ミラー・アート編

【ミラーと聞いて思い浮かんだ曲】

SNAKEPIPE WROTE:

昨年の10月下旬にROCKHURRAH RECORDS事務所移転の話は何度かしたよね。
荷造りしている時、戸棚の奥から出てきたのは、段ボールで厳重にくるまれた物体。
前事務所にいる間、一度もお目見えしないまま、しまい込まれていたことになる。
中身は何なのか、しばし考え込み、鏡だったことに気付く。
かつて南方系のインテリアを好んでいたSNAKEPIPEが、一目惚れした逸品だったよ。
段ボールを外してみると記憶通りの鏡が出現!
経年劣化で木彫りのフラミンゴが美しかったインドネシア製の鏡は、色が褪せてしまい、少し寂しそうに見える。
着色し直して、もう一度飾ってみようかな!

鏡について考えていたら、鏡を使ったアートに興味が湧いてきたよ。
今まで鑑賞した展覧会でも、ミラー・アート(?)に出会っていることを思い出した。
過去に紹介した作品も含めて書いていこう!

鏡を使ったアート作品と検索すると、必ず上位でヒットするのが草間彌生なんだよね。
SNAKEPIPEも今までいくつかの草間彌生のミラー・アートを鑑賞したことがあるけれど、その中で一番印象に残ったのは、2004年に森美術館で鑑賞した「クサマトリックス」での「水上の蛍」だよ。
無限に広がる空間に、儚い光が点在している。
それはまるで死者の霊のように見えて、涙ぐみそうになったSNAKEPIPE。
「クサマトリックス」は素晴らしい展覧会だったので、アンコール展示して欲しいよ!

2022年5月にワコウ・ワークス・オブ・アートで鑑賞したアニッシュ・カプーアも忘れられない。
ステンレスを磨き上げ、鏡のようにピカピカにした作品群は、見つめていると目眩がするほどの存在感があったよ。
感想にも書いていたように、お金があったらカプーアの作品が欲しい!(笑)

2018年3月に森美術館で鑑賞した「レアンドロ・エルリッヒ展」にも鏡の作品があったよね。
「試着室」は、どこまでが本物の場所で、どれが鏡に写った光景なのか分からなくなり、不安を感じる体験型の作品だった。
まるで迷路を進んでいるようで、方向音痴のSNAKEPIPEにとっては恐怖そのもの!
アート作品を観ているのに、まるでホラーのアトラクション現場にいるよう。
2022年7月の「KAMU kanazawa」にもエルリッヒのミラー・アートがあったっけ。
「インフィニティステアケース」は、永遠に螺旋階段が続いているように見えるトリック・アートだったよ。
階段が横向きだったので、不思議な感覚に陥ったけれど、恐怖はなかったので良かったよ。(笑)

レアンドロ・エルリッヒの展覧会についてのブログにも出てきたのが、2017年1月に鑑賞した柳幸典の「ワンダリング・ポジション展」のミラー・アート。
暗い会場が迷路のようになっていて、鏡の効果で異空間に迷い込んだ気分になったんだよね。
更に鏡に自分の姿が写っていないことに気付いた時、SNAKEPIPEは絶叫しそうになったものよ。
ROCKHURRAHから「鏡の角度」について指摘されなかったら、二度と現実世界に戻れなかったでしょう。(大げさ)
恐怖の度合いでいうと、エルリッヒの「試着室」よりも格段に柳幸典が上だったね!
本当に怖かったもん。

他にも鏡を使ったアート作品はないのか検索してみる。
チリ出身の彫刻家であるIván Navarro(イヴァン・ナヴァロ)は光と鏡、電気を使用した作品を制作しているという。
画像は2016年の「Loop」という作品ね。
チリでのピノチェト独裁政権下で、人々が電気を止められ、自宅に孤立させられたらしい。
ナヴァロは、そうした恐怖や人間の行動の制御を表現しているんだとか。
監視、拷問、拘束、支配といった暗いテーマが扱われているけれど、きっと作品を目の前にしたら美しいんだろうね。
現在はニューヨークを拠点に活動しているというナヴァロの作品、一度観てみたいよ!

Chul Hyun Ahn(アン・チョルヒョン)は韓国出身で、現在はボルチモア(!)を拠点に活動しているアーティスト。
ボルチモアと聞くとジョン・ウォーターズを連想して興奮するSNAKEPIPEなんだよね。(笑)
アンは鏡と光の組み合わせを通じて、無意識の理論を探求しているんだとか。
「光の能力で自然の美を照らし、変容させる」というコンセプトを基に作品制作していると書いてあるよ。
「無限のイリュージョン」を感じることができるというアンの作品、どんな意識の変化をもたらしてくれるのか経験してみたいね!

オレゴン州ポートランドで作品を制作しているPeter Gronquist(ピーター・グロンクィスト)。
2017年のミラー・アート作品「Chrome Jets」を載せてみたよ!
縦と横の幅が152cmあるというので、かなり大型の作品だよね。
モチーフは飛行機や花で、ずっと下のほうまで続いているように見えるよ。
ちなみに花を使った作品は、$40,000、日本円で約600万円で購入可能だって。
かなりインパクトがあるだろうね!
グロンクィストは、ビデオや絵画から彫刻、特定の場所に特化したインスタレーションなど多岐に渡り制作する「一貫した独自のスタイルを持たない」アーティストだという。
「流動性と柔軟性を第一原則とする」らしいよ。
多彩なアーティストなので、いつか作品を目にする機会もあるかもしれないね。

今回は鏡をテーマに作品紹介してみたよ!
なんだかキュレーターになったみたいで面白かった。
また企画を考えてみよう。(笑)